(1)令和
2
年度
前 期 日 程 入 学 試 験 間 題
総合問題
B
(
イ
)
注意事項
1 試験開始の合図があるまで, この冊子を開いてはいけません。
2 問題冊子 (27ページ)には,物理,化学,生物の各問題があり,解答
用 紙 ( 物 理2枚,化学3枚,生物2枚)及び下書き用紙 (1枚 ) が 挟 み
込んであります。試験開始の合図があったら,直ちに中を確かめ,印刷
や枚数の不備などがあった場合,監督者に申し出なさい。
3 物 理 化 学 , 生 物 か ら 1科目を選択し,解答しなさい。
4 問 題 冊 子 の 間 に 挟 み 込 ん で あ る 選 択 し た 科 目 の 解 答 用 紙 を 取 り 出 し,
選択した科目のすべての解答用紙の所定欄に受験番号を記入しなさい。
5 解答は,すべて解答用紙の所定欄 ー(横書き)に記入しなさい。
6 句読点は, 1字と数えなさい。
7 試験室で配付された問題冊子等は,提出する解答用紙をのぞいて退出
時に持ち帰りなさい。
(2)物理
3
ペ
ー
ジ
,
.
.
.
.
,
_
_
,
9
ページ
化学
1
1
ペ
ー
ジ
,
.
.
.
.
,
_
_
,
1
7
ページ
生物
1
9
ページ
,
.
.
.
.
,
_
_
,
2
7
ページ
(3)(4)口
I
環境配慮の観点などから, 自動車の燃費改善に関する様々な取り組みが行われて
いる。こうした取り組みにおいては,物体の運動に関する検討が必要不可欠となる。
このことをふまえて,以下の問いに答えなさい。なお,解答を導く過程も記述する
こと。
乗用車A が,水平でまっすぐな道を走行している。この乗用車は,停止した状
態から動き出し,速度叩〔km/h〕に到達し,一定の速度を保った。乗員を含めた
乗用車A の質量を m A改g〕,また,路面と自動車のタイヤとの動摩擦係数をμ とし,
空気抵抗等はないものとする。なお,重力加速度の大きさをg〔m心 門 と す る゜
問l 乗用車Aの加速度を a改m/h打 と す る。一 定 速 度 叩 〔km/h〕に達するま
でに要した時間 t〔h〕を求めなさい〇
問2 乗用車Aの速度が狐〔km/h〕に達した後,そのままの速度で30分間走行した。
この30分間の走行で,乗用車AはLA孔〕の燃料を消費した。この時の燃費
eA (燃料lLあたりの走行した距離)を求めなさい。ただし,解答に tは用い
ないこと。
問3 水平でまっすぐな道の走行を経て,水平面とのなす角が〇〔rad〕の坂道を
一定速度のままのぼった。次の問いに答えなさい。
(1) 水平な道を走行した場合と坂道を走行した場合の動摩擦力をそれぞれ求め
なさい。
(2) 坂道での走行における燃費は,水平な道での走行時の何倍になるかを求め
なさい。
(5)口
問4 乗 用 車Aはガソリンエンジンのみをもつ。一方,ガソリンエンジンと電動
モーターを装備するハイブリッド乗用車Bがあるとする。乗員を含めた質量は,
乗用車Aが m A改g〕,乗用車Bが mB〔肱〕である(ただし, mA<mBとする)。
乗用車A, Bが,あるテストコースを同じ速度で並走したと仮定する。このと
き,乗用車Bは乗用車Aの走行時の運動エネルギーのx %を回収し,モーター
で利用できる。次の問いに答えなさい。
(1) 乗 用 車Bで利用できる走行時の運動エネルギーは,乗用車Aの走行時の
運動エネルギーの何倍になるかを求めなさい。
(2) m A < mBであることにより,乗用車Bの運動エネルギーは乗用車Aのそ
れの何倍になるかを求めなさい。
(3) 乗 用 車Bの 燃 費 が 乗 用 車Aの そ れ よ り も よ く な る た め の mBの条件を求
めなさい。
(6)口
1
1
波に関する以下の問いに答えなさい。
〔
1
〕
問
1
波には,反射などいくつかの特有な性質がある。反射以外に共通する性質を
3
つ示し,それぞれ
5
0
字以内で簡潔に説明しなさい。
問2 次の文中の(ア)∼(エ)に適する式を答えなさい。また,(オ),(力)
については,高,低のどちらかを答えなさい。
図lのように,右向きを正として,音源と観測者の両方が一直線上を正の方
向に移動する状況を考えてみる。なお,ここでは,音源が観測者を追い越さな
い場合を考える。
音源と観測者の速度をそれぞれv
廷
m/s〕,加〔m/s〕とし,音の速さを V[m/s,〕
音源の振動数を
f
田
z〕とする。音源から発せられた音は,音源の移動によっ
て 波 長 が ( ア ) 〔
m
〕の波となり,その振動数は(イ)〔
Hz
〕となる。また,
如〔m/s〕で正方向に移動している観測者が観測する波の波長は(ウ)〔m〕
であることから,観測者が聞く音の振動数は(エ)〔
Hz
〕となる。音源の速
度が観測者のそれより大きく,音源が観測者に近づいている場合,音源が発す
る音に対して観測者が聞く音は(オ)<聞こえる。逆に,音源の速度が観測
者のそれより小さく,観測者が音源から遠ざかる場合,音源が発する音に対し
て 観 測 者 が 聞 く 音 は ( 力 ) < 聞 こ え る。
音 源
>
観測者
>
/
口
A
'
図l
(7)口
〔2〕次の文章を読んで,以下の問いに答えなさい。なお,解答を導く過程も記述す
ること。
ドップラー効果は,物体の移動速度の測定や人感センサー等,様々な分野で応用
されている。例えば,野球で投手が打者にボールを投げる際,そのボールの速さを
測定するスピード測定装置にも利用される。マウンド(投手がボールを投げる位置)
からホームベースに向けて,投手の後方にスピード測定装置を設置し,装置から発
せられる波(一般には電磁波が使用される)が投手が投げたボールにあたり,装置
に戻ってくる反射波の振動数を測定することによってボールの速さを算出する。こ
こでは,図2のようにスピード測定装置,マウンド,ならびにホームベースが水平
面上に直線に位置し,ホームベースの方向を正とする。また,スピード測定装置か
ら発せられた波およびボールからの反射波は,投手によってその進行が妨害されず,
進行中の波の減衰も生じないと仮定する。投手が投げるボールの速さを%〔mis,〕
スピード測定装置から発せられる波の振動数を
!
1
〔
H
幻’その速さを c[m心〕とする゜
スピード測定装置 投手 打者
マウンド ホームベース
図2
問3 スピード測定装置から発せられる波の波長〔m〕を答えなさい。
問4 ボールが受ける波の振動数J2
旧z
〕を, Vp, f1, Cを用いて答えなさい。
問5 ボールからの反射波の振動数必〔Hz〕を, Vp,f1, Cを用いて答えなさい。
問6 スピード測定装置によって
f
3旧
z〕を測定すれば,投手が投げるボールの
速さ%〔mis〕を求めることができる。Vpを
f
1
,f
3
,
Cを用いて答えなさい。
(8)口
m
同じ質量の水と油(ともに液体とする)に同じ熱量を加えた場合, どちらの方が
温度が上がりやすいであろうか。これは,両物質の比熱を比較すればよい。ここで
は次の方法で実験を行い,その結果から油の比熱を算出したい。ただし,水の比熱
を
4
.
2
J
/
(g・K)
とする。
①水(あるいは油)を入れた容器に電熱線を浸し,電池可変抵抗,ならびにスイッ
チからなる直列回路を作った。回路には電流計および電圧計が取り付けられ,電熱
線に流れる電流およびかかっている電圧を測定できる。また,可変抵抗の抵抗値を
変化させて,電流およびかける電圧を調整できる。なお,容器には温度計が取り付
けられており,内部の水(あるいは油)の温度を随時測定できるようにした。容 器
外面は断熱性素材で覆われており,電熱線に発生した熱は,容器外には逃げないも
のとする。
実験結果は,次の表のようになった。 以下の問いに答えなさい。 なお,問 2~5
については解答を導く過程も記述し,それぞれ有効数字
2
桁で答えなさい。
表 実験結果
(液体の) 質量 電流計の 電圧計の 通電時間 液体および容器の温度(℃)
種類 (g) 読み (A) 読み (V) (分)
実験前 実験後
水
2
0
0
1
.
0
1
2
.
0
1
3
.
0
1
0
.
5
2
0
.
5
油
2
0
0
3
.
0
4
.
0
6
.
5
8
.
5
1
8
.
5
問
1
下線部①について, どのような回路を組めばよいか。回路図の概略を解答欄
に図示しなさい。ただし,電池など,以下の記号を使用すること。
器具 電池 容器(電熱線, 可変抵抗 電流計 電圧計 スイッチ
温度計を含む)
記号
7
r
二
二
R R
-if
(9)口
問2 水あるいは油を用いた実験で,電熱線で発生した熱量をそれぞれ答えなさい。
問3 容器の熱容量を答えなさい。
問4 実験結果から,油の比熱を答えなさい。
問5 問 4の結果を用いて,同じ質量の水と油に同じ熱量を加えた場合, どちらが
何倍早く温度上昇するか,答えなさい。
(10)(11)口
化 学
(化学基礎・化学)
(注意事項)
計算に必要な場合は,次の値を用いなさい。
原子量
A
l
=
2
7
.
0
(12)口
I
図lに示す芳香族化合物の分離と合成に関する以下の問いに答えなさい。分離操
作には分液ろうとを使用したものとする。
化合物P 化合物Q 化合物R 化合物
s
6
6
゜
H
O
0
←—操作 (a)
層(2)
匹
6
g
□
O
H
□
←—操作 (c)
層(4)
g
6
O
H
6
←—操作 (e)
図
1
問1 図 1の 4種類の化合物 P,
Q
,
R, Sがジエチルエーテル(以下,エーテル)
に溶解している。
4
つの化合物の名称をそれぞれ記しなさい。
(13)口
問2 それぞれの操作 (a)~(f) にあてはまる適切な操作を(ア)~(力)の中から選び
記号で答えなさい。ただし, その操作を加える前の溶液が, エーテル溶液の場
合は(ア)∼(ウ)の中から,水溶液の場合は(エ)∼(力)の中から選ぶこと。
(ア) 、うすい水酸化ナトリウム水溶液を加えて振り混ぜる
(イ) うすい塩酸を加えて振り混ぜる
(ウ)
(エ)
(オ)
(力)
炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて振り混ぜる
うすい水酸化ナトリウム水溶液とエーテルを加えて振り混ぜる
うすい塩酸とエーテルを加えて振り混ぜる
炭酸水素ナトリウム水溶液とエーテルを加えて振り混ぜる
問3 分 離 さ れ た 各 層 (1),...__, (6)は,
どちらかをそれぞれ記しなさい。
分液ろうと中に生じる二層(上層, 下層) の
問4 化 合 物
P
は ベ ン ゼ ン を 原 料 に 次 に 示 す
3
つの経路で合成される。(
︵
︵
と
び
k
)にあてはまる語句を答えなさい。また, (
) ∼(
h
--- (j
ょ
g
ぉ
、
\
ー
/
n )にあてはまる化学構造式を書きなさい。
熱
n u .
ヵ
酸
硫
濃
。
。
。
(h)
(g)化
プロペン (CH2=CH-CH3)
NaOH NaOH (固体) ・ ニ酸化炭素• 水
> (i) >(J)
中和 300℃ 程 度
鉄粉・塩素 NaOH水溶液
>(l) >(j)
(k)化 高温・高圧
(m)
二酸化炭素• 水
中和 合 物 p
ー
ヒ
O
H
6
イ
中和 物 p
O
H
□
鱈
付加反応
酸素
(クメン) )クメンヒドロペルオキシド
酸化
+
p
物
合
/
イ
O
H
人
口
﹀
ヒ
一
躙 (n) (副生成物, ヨードホルム反応陽性)
(14)口
問
5
化合物
P
の検出方法を
1
つ答えなさい。
問6 次の一連の反応は,ベンゼンから化合物Rと化合物Sを得るための合成経
路を示している。( 0 ) と ( p )にあてはまる語旬を答えなさい。また, ―
( q )にはあてはまる化学構造式を書きなさい。
N02
゜
I 濃硫酸と濃硝酸
>
\
/
ロ
ニ
ニ
!
.
.
.
(q)
二
:
'
(0)化 (p)反応 中和
口
化合物
s
化合物R
問7 化合物Rを 塩 酸 存 在 下 で 亜 硝 酸 ナ ト リ ウ ム と 低 温 で 反 応 さ せ る と (
r )
が得られる。これに化合物Pのナトリウム塩を加えてカップリングさせると,
とう
赤 橙 色 の 染 料 の 一 種 で あ る ( s ) (p-ヒドロキシアゾベンゼン・アゾ染料)
が生じる。( r )と( s )にあてはまる化学構造式をそれぞれ書きなさい。
(15)口
I
I
次の文章を読んで,以下の問いに答えなさい。
_ . /
環境中の水の酸と塩基を理解する一例として,降水の化学組成がある。降水の化
学組成に関する調査は,酸性雨が大きな問題となっているため,多くの場所で実施
され,多くのデータが蓄積されている。
なお,酸性雨として問題となっているのは, '人間活動から排出される窒素酸化物
(
N
O
x
)
やイオウ酸化物
(
S
O
x
)
によって降水が酸性化する現象をいい,
pH<5
.
6
の降水をいう。これは,大気中の二酸化炭素
(CO
り と 平 衡 す る
pH
が
5
.
6
である
ことによる。①C切は水に溶解すると弱酸性を呈する。また,雨以外の降水(雪,
あられ,みぞれなど)も酸性化しており,霧や降下塵などの酸性化も問題となって
いるので,「酸性雨」よりも 「酸性沈着」や「酸性化」という言葉を使うことの方
が多い。
一般に,溶液の酸性度を把握する指標としては,水素イオン濃度の逆数の常用対
数である
pH
がまず問題にされる。しかしながら,降水や降下塵の酸性化を考える
場合,
pH
のみでは,不確かな議論になるとされている。なぜならば
pH
は酸と
塩基のバランスを表しているにすぎないからである。
『よくわかる水環境と水質』武田育郎著,株式会社オーム社2010年 よ り 一 部 改 変
問l 下線部①に書かれているように,二酸化炭素が水に溶けると弱酸性を示す。
この反応式を書きなさい。
問
2
酸性雨の問題を解決するためには何をしなければいけないかを
3
0
字以内
で書きなさい。
問3 降水の
pH
のみではなく化学組成(含まれている陽イオンと陰イオンの種類
と量)も調べている理由を
7
0
字以内で説明しなさい。
(16)口
m
次の文章を読んで,以下の問いに答えなさい。
クラーク数というものがある。米国の地球化学者クラークが,地球上の地表付近
を岩石圏,気圏,水圏に分類し,それぞれにおいて存在する元素を調査し,その合
計の割合を質量パーセント濃度で表したものだ。
クラーク数では一番多いのは酸素 (49.5)で,次にケイ素(シリコン) (25.8),
そしてアルミニウム(以下 「アルミ」)の (7.56) と続く。 4位の鉄 (4.70) に対し
比重が1/2弱であることを考え合わせるとこの数字は,アルミが随ーといっていい
ほど豊富に存在する金属であることを物語っている。
現在のところ,多くの意味でアルミは鉄に次ぐ第二の金属の地位にある。鉄と比
べて軽く,単位質量あたりの強度も強く, ①美しい銀白色の耐食性の肌をもち,展性・
延性という柔軟性に富む,魅力的な金属である。そのため,建築材料, 日用品,家
電製品など,幅広い用途に供されている。
アルミの年間生産量は,全世界で約3800万t。日本は第三位の消費国であるが,
地金自給率はいまや 1%もない。実は戦後30年ほどは,国産アルミでほほ自給で
きていた時代もあった。その状況をストップさせたのはオイルショックである。
②原料のボーキサイトからのアルミの精錬には,大量の電気エネルギーが必要にな
る。したがってエネルギー小国で電力料金も高い日本では,輸入地金に産業として
太刀打ちできなくなってしまい, 1977年の約 120
万
tをピーグに精練は減少,衰
退していった。
(中略)
アルミ精錬に大量の電力が必要になることは先述した。しかし, ③リサイクルと
いう面からみると,アルミは環境保全の優等生である。
現在日本では,年間450万tほどのアルミが消費されているが,そのうちの約半
分がリサイクルによる再生地金でまかなわれている。特にアルミ缶では,
9
割を超
すリサイクルがすでに実現している。リサイクルにあたっては,新たな精錬に比べ
てかかるコストやエネルギー消費もほかに例がないほど格段に小さく ,排出する温
室効果ガスも少ない。
(17)口
ところで,おなじみの④1円玉もほほ純粋なアルミである。 1円玉は lg。原子
にすれば
2
.
2
X
1
0
2
2
個分である。手のひらの上の
1
円玉に, 「重み」を感じてみる
のもいいかもしれない。
『決定版感動する化学 未来をひらく化学の世界』,‘‘軽くて美しいアルミはリサイクルの優等生”
日本化学会編,東京書籍2010年 よ り 一 部 改 変
問
1
下線部①に書かれた 「銀白色の耐食性の肌」は,金属アルミニウムを空気中
に放置したり,濃硝酸に触れさせると生じる。この状態を何というか答えなさ
い。また,他に濃硝酸に対して同様の性質を示す金属元素を 1つ元素記号で示
しなさい。
問
2
下線部②にあるアルミニウム精錬の第一段階は,鉱物のボーキサイトからの
アルミニウム成分の抽出である。この抽出は,鉱山から掘り出された鉱物ボー
キサイトの主成分の酸化アルミニウム(アルミナ)を水酸化ナトリウム水溶液
で溶解させて抽出し,テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウム Na[Al(OH)4]
を得る反応を指す。その化学反応式を書きなさい。
問3 下線部③で筆者が「リサイクルという面からみると、環境保全の優等生」と
述べている理由を,本文から読み解き
7
5
字以内で説明しなさい。
問
4
下線部④に示したように
1
円玉は純粋なアルミニウムである。本文の数字に
基づくと,
1
円玉
1
0
0
万枚は何モルになるか計算し,整数で答えよ。解答欄に
は計算過程も示しなさい。
(18)(19)(20)口
1
課題文
l
および課題文
2
を読んで,以下の問いに答えなさい。
課題文l
食物を最初に作りはじめた狩猟採集民たちは,果実ができるだけ大きく,味に苦
みがなく,果肉部分がたくさんあり,油分が多く,繊維組織が長いなどといった,
実際に自分で検証できる特性に着目した。そして,それを基準として野生種のなか
から選抜し,それらの好ましい特性に優れている個体を何世代か繰り返し収穫しつ
づけることで,意識しないままにその植物の分布を助けるとともに,野生種を栽培
種に変化させてきたのである。
(中略)
その特性のひとつは,種子をばらまく仕掛けにかかわる野生種と栽培種のちがい
である。多くの植物は種子をばらまく仕掛けを持っている。そのため,狩猟採集民
は,植物の種子を効果的に集めることができなかった。彼らが効率よく手に入れる
ことができたのは,そうした仕掛けを持たない突然変異種だけであり,そうした個
体を採集しつづけた結果,種子をばらまく仕掛けを持たない個体が栽培種の原種と
なったのである。
わかりやすい例がエンドウである。われわれが食べるエンドウの種子(豆の部分)
はサヤに他まれたままだが,野生のエンドウは種子をサヤからはじけさせる。エン
ドウは,種子をサヤからはじけさせて地面に放つ遺伝子を持っているのだが,この
遺伝子に突然変異を起こした個体のサヤははじけない。野生の状態では,はじけな
い個体の種子はサヤのなかでしなびてしまい,はじける個体だけが遺伝子を残せる。
しかし,この自然の摂理とは反対に,人間の手に入るのは,はじけることなくサヤ
の中に種子を宿している個体だけである。こうした突然変異を起こした個体を人間
が持ち帰るようになって,それが栽培種の原種として選択されたというわけである。
(中略)
こうして収穫に好都合な突然変異を起こした個体の実(種子)を幾世代にもわ
と う た
たって栽培しつづけることで, ⑦人間は自然淘汰町)のベクトルを完全に反転させ
てしまった—それまで種の存続に必要とされた遺伝子が死を招くものとなり,死
(21)□
①人類が植物に施した最初の重要な「改良」であった。肥沃三日月地帯注2)の農業は,
この改良の結果起きた変化に端を発している。
②発芽のタイミングに関する特性も,狩猟採集民たちが野生種を採集し,その種
子(実)を育成するようになったことがきっかけで変化した特性のひとつである。
この変化は,種子をばらまく仕掛けの変化よりずっと検証しにくいものだった。一
年生植物(一年草)の野生種は,予測不能の天候異変に対応するために,すべての
かんばつ
種子を同じタイミングで発芽させない。さもないと,発芽した自分の子孫が干魃や
結霜でやられてしまい,種の存続があやぶまれるからである。そのため,彼らの多
くは発芽抑制メカニズムを発達させ,いかなる天候異変が発生しても生き延びられ
るようにリスクを分散させている。一年生植物の場合,この発芽抑制メカニズムに
よって,翌年いっせいに発芽するのではなく,何年かにわたって順ぐりに発芽させ
る。とんでもない天候異変があって,それまでに発芽した個体の大部分が死滅して
しまったとしても,いくつかの種子は発芽せずに天候異変をやりすごし,やがて発
芽し,種を残せるようになっているのである。
『銃 ・ 病 原 菌 ・ 鉄 上』ジ ャ レ ド ・ ダ イ ア モ ン ド 著 倉 骨 彰 訳 , 草 思 社2012年 よ り 一 部 改 変
注1) 自然淘汰は, 自然選択と同義である
注2)メソポタミア文明が栄えた一帯
課題文2
A君と Bさんは,以下の材料と手順で形質転換の実験をおこなった。さらに,そ
の結果を得て議論をおこなった。
材 料 : 形 質 転 換 用 大 腸 菌 液40μl(凍結保存されたもの), GFP注3)遺 伝 子 を 含 む
DNA溶 液(0.04μg/μl), 大腸菌培養用のLB注4)寒天培地を適量入れたシャー
レ,大腸菌培養用
s
o
c
注5)液体培地
注3) GFPは,紫外線照射で緑色の蛍光を発するタンパク質の略称
注4) LBは,大腸菌の培養によく用いられる培地の略称
(22)口
注5)
s
o
c
は,形質転換処理後の培養に用いられる培地の略称
手順: 1) マイクロチューブ (1.5ml容量)に入っている大腸菌液を氷中で溶かす。
2) DNA溶液2μlをマイクロピペットを使ってを大腸菌液に加える。マイ
クロチューブを指ではじいて軽く混ぜ,氷上で約 10分間冷やす。
3) マイクロチューブを 42℃に温めた温水に 50秒間つける。
4) すぐにマイクロチューブを氷中へ移し約10分間冷やす。
5) あらかじめ37℃にあたためた大腸菌培養用SOC培地400μlをマイク
ロチューブに加え, 37℃に設定した恒温器内に約 10分間入れる。
6) マイクロチューブ内の大腸菌液10μlをマイクロピペットで吸い取って,
新しいマイクロチューブにとる。そこにSOC培地 1,000μlを加えて希釈
する。
7) 希釈した大腸菌液からマイクロピペットで 100μlを吸い取ってシャー
レの寒天培地上に移し,滅菌したコンラージ棒で培地表面全体に塗りひろ
げる。
8) シャーレを恒温器に入れ, 37℃で24時間培養する。
9) シャーレを自然光および紫外線照射下におき,大腸菌コロニー数,紫外
線照射下で発光しているコロニー数を確認する。
結果: 1) シャーレの培地上に大腸菌が1,200コロニー形成された。
2) 紫外線を照射すると, 1,200コロニーのうち, 120コロニーに蛍光が認
められた。
議論 :上記の結果についてA君とBさんは以下の議論をおこなった。
A君 :この実験結果から蛍光を発したコロニーが観察できたので, GFP遺伝子
が大腸菌に導入されたといえるね。
Bさん:そうかしら,大腸菌を冷やしたり,温めたりして大腸菌にストレスを与え
たために大腸菌が本来もっているなんらかの遺伝子が発現し,それが紫外線
(23)二
Bさん:この実験で使った大腸菌がすでに形質転換により GFP遺伝子をもってい
て,その大腸菌を使ったかも知れないわよ。
A君 :う∼ん。それなら,( ③ )実験が必要だね。
B
さん:そうね,そうすればいいね。
問
1
課題文
l
で述べられた「突然変異」と,課題文
2
で述べられた「形質転換」とは,
ともに元の形質とは異なる形質をもつ個体が生じる現象であるが,原理的には
それぞれ異なったしくみによるものである。突然変異と形質転換の違いについ
て,
1
4
0
字以内で説明しなさい。
問
2
課題文
1
の下線部①で記述された
1
万年以前の農業の 「改良」に対し,現在
の農業における「改良」には, どのような手法があるか,特に,課題文2のよ
うな原理をもちいた技術やこれに関連する技術を含む視点で,
1
0
0
字以内で述
べなさい。なお,農業は,食料生産,健康,医療,環境などと関連づけて幅広
くとらえてよい。
問
3
課題文
1
にある下線部②の発芽のタイミングに関する特性について,下線部
⑦で述べるように自然淘汰111)のベクトルが反転したとすると,栽培品種の形
質は, どのような形質となっていると考えられるか述べなさい。また,イネや
コムギが発芽の抑制(休眠)や促進をするしくみについて,以下の語句を用い
て
2
0
0
字以内で説明しなさい。
「ジベレリン」,「アブシシン酸」,「アミラーゼ」
問4 課題文2にあるBさんの発言内容に対し, A君 が 答 え た 空 欄 ( ③ ) の 内 容
について課題文2の実験に加えて,あなたはどのような実験がさらに必要と考
えるか,具体的な実験手法を
6
0
字以内で述べなさい。
(24)□
1
1
次の課題文および図を読んで,以下の問いに答えなさい。
課題文
ヒトの iPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製からさかのぼること約 10年前の
はいせい
1
9
9
8
年。この年, 「ES細胞(胚性幹細胞)」が,ヒトで初めてつくられました。ES
からだじゅう
細胞は,かぎりなく増殖できるうえ,体中の細胞へ変化することができます。その
ため, ヒトのES細胞の作製成功は,再生医療への期待を高める大きな出来事だっ
たのです。 夏‘後輩”にあたる iPS細胞の能力は,ES細胞とそっくりです。
2010年には,アメリカでES細胞が初めて臨床応用町)され,安全性が確認され
ま ひ
ました。その対象は,下半身の麻痺などをともなう「脊髄損傷」の患者でした。以
後,ES細胞の臨床応用は数十例もあり,今もいくつも進行中だと報告されています。
iPS細胞の臨床応用は, まだ2例です (2017年7月現在)。
自身とは別の種類の細胞を新たに生みだす能力をもつ細胞は,体のいろいろな場
所にもそなわっています。これらの細胞は, 「体性幹細胞」とよばれます。体性幹
細胞はES細胞やiPS細胞とはことなり,生みだせる細胞の種類は一般にかぎられ
ますが,組織を再生可能です。
そこで体性幹細胞を使って,歯や毛などの再生を試みる研究も進められています。
もともと体にある細胞を使う点で,体性幹細胞は ES細胞や iPS細胞より安全性は
高いとされます。ただし,法令違反で②根拠のない“幹細胞治療注2)" を行う医療
機関もみられます。幹細胞治療は,白血病に対する造血幹細胞の移植などを除くと,
必ずしも確立された治療とはいえません。
(中略)
このところ,体にそなわっている体性幹細胞を使う再生医療の治験注3)が続々と
はじまろうとしています。その多くが, ヒトの骨髄で
1
9
9
9
年に発見された「間葉
系幹細胞」を利用するものです。間葉系幹細胞は,傷ついた組織にとって栄養とな
る成分を放出します。その居場所は骨髄のほか,脂肪の中や,歯の中(歯髄),ヘ
その緒などです。
(中略)
(25)~
ます。また間葉系幹細胞は,別系統の細胞,たとえば神経細胞にも変化しうること
からも注目されています。
体性幹細胞の臨床応用は,実用化されたものは少なく,ほとんどがあくまで試験
段階です。極端な例ではありますが,アメリカでは承認を受けた治療の試験といつ
わって眼に細胞移植が行われた結果,失明に至って しまった例が2017年3月に報
告されています。安易に移植を受けることは推奨されません。
『実用化へと進む多彩な幹細胞ーiPS細胞以外にも有力な細胞や戦略あり一』
松田壮一郎著, Newton2017年10月号より一部改変
注 1)実際の診療に使われること
注2) 幹細胞を使用し,疾患を治療または予防すること
注3)治療の臨床試験
問1 課題文の下線部①で示した 2つの細胞のうち, iPS細胞は体細胞(皮膚や血
液などの細胞)からつくられるが, ES細胞は初期胚(胚盤胞)の将来胎児に
なる部分(内部細胞塊)からつくられる。この2つの細胞を比較して, もとに
なる細胞の違いからもたらされる iPS細胞の長所を, 150字以内で説明しなさ
い。
問2 課題文の下線部②について,具体的に 100字以内で説明しなさい。
(26)口
問
3
図
1
は,母の年齢
(
5
歳階級)の構成を子どもの出生年別に示している。図
2は,生殖補助医療を受けた女性の妊娠率と流産率を年齢別に示している。こ
の2つの図から,現在または将来おこりうる問題を, 日本の社会的な背景もふ
まえながら考察し, 80字以内で説明しなさい。
100
D
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ロ
ロ
ヽ
因不詳
80
[IJ1s~19歳
60
総
□
20~24歳
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40
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3
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"
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4
4
歳
1975 1985 1995 2005 2017
(
年
)
日 45~49歳
図
1
.
子どもの出生年別にみた母の年齢
(
5
歳階級)の構成(厚生労働省「人口動
態統計年報」を参考)
(27)口
平
蜘
姻
寧
碑
函
碑
函
叫
成
暉
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妊娠率 口流産率
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1
•
•
注4) 総治療数に対する妊娠数の割合とみなしてよい
注5) 妊娠数に対する流産数の割合とみなしてよい
100%
900/o
800/o
700/o
600/o
50%
400/o
300/o
20%
100/o
0%
屈将制胆
26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48
女性の年齢(歳)
図
2
.
生殖補助医療を受けた女性の年齢別妊娠率と流産率(日本産科婦人科学会
2
0
1
6
年データを参考)
問4 マウスでは,
i
P
S
細胞から卵子をつくり出せることが示されたが,現時点で
ヒトに応用することは大変危険である。
べき問題点を
9
0
字以内で説明しなさい。
ヒトに応用する際にあらかじめ解決す