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佛教大學大學院紀要 28号(20000301) 001兼岩和広「『選擇集』と『逆修説法』」

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Academic year: 2021

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﹃選

﹃逆

-︹抄 録 ︺ 本 稿 は ﹃ 選 擇 集 ﹄ の 第 一 章 か ら 第 三 章 ま で を 草 稿 本 と さ れ る ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ を 踏 ま え な が ら ﹃逆 修 説 法 ﹄ と 比 較 検 討 し 、 ﹃選 擇 集 ﹄ の 成 立 に つ い て 考 え る も の で あ る 。 ﹃ 選 擇 集 ﹄ は 兼 実 の 要 請 や 当 時 の 他 宗 へ の 配 慮 も 含 め た 上 で の 構 成 で 出 来 て お り 、 法 然 の 教 義 的 遺 文 の 中 で も 最 も 優 れ た も の と さ れ る が 、 少 な く と も 第 一 章 か ら 第 三 章 に 関 し て は ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ を 参 照 し て 執 筆 さ れ た こ と が 明 か で あ る 。 し か し 、 こ の 対 応 の 有 無 に 従 っ て ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ の 執 筆 状 況 は 様 々 な 訂 正 を 伝 承 し て い る 。 そ れ ら の 訂 正 を 考 察 す る こ と に よ っ て 第 一 筆 と さ れ る 安 楽 房 が 第 二 筆 真 観 房 に 交 替 す る 理 由 も 含 め 、 そ れ ら の 章 の 執 筆 状 況 を 考 え な が ら ﹃選 擇 集 ﹄ の 成 立 を 明 ら か に す る 。 キ ー ワ ー ド " ﹃ 選 択 集 ﹄ 、 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 、 ﹃逆 修 説 法 ﹄ 、 安 楽 房 、 真 観 房 法 然 教 学 の 原 点 と な る 法 然 自 身 の 思 想 を 研 究 す る に 当 た り 、 そ の 最 も 重 要 な 資 料 と な る の が ﹁ 三 部 経 釈 ﹂ ・ ﹃逆 修 説 法 ﹄ ・ ﹃ 選 擇 集 ﹄ の 三 つ の 教 義 的 な 遺 文 で あ る 。 こ れ ら に つ い て は 既 に 多 く の 研 究 成 果 が あ げ ら れ 、 さ ら に 多 く の 研 究 が 続 い て い る が 、 そ の 殆 ど は 先 学 の 研 究 へ   げ を 背 景 と し た 結 論 を 導 き 出 す こ と に 終 始 す る 所 謂 ﹁ 思 想 先 行 型 ﹂ の 論 攷 に 留 ま っ て い る よ う な 気 が す る 。 こ の ﹁ 思 想 先 行 型 ﹂ の 論 攷 が 生 む 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 八 号 ( 二 〇 〇 〇 年 三 月 ) 学 問 的 停 滞 を 打 破 す る た め に は 、 ま ず 原 典 批 判 と 原 典 解 釈 を 行 う 本 来 の 文 献 学 に 立 ち 戻 り 、 そ れ ぞ れ の 遺 文 に つ い て 新 た な 角 度 か ら 再 検 討 、 再 確 認 す べ き で あ る 。 そ の 結 果 が 総 合 さ れ て 初 め て 法 然 自 身 の 思 想 と い う 大 き な 問 題 を 解 明 す る た め の 方 向 性 が 導 き 出 さ れ る と 考 え る 。 現 在 筆 者 は ﹃選 擇 集 ﹄ の 草 稿 で あ る ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ を 加 え る こ と に よ っ て       ﹃ 選 擇 集 ﹄ の 執 筆 が ど の よ う に ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ と 関 わ っ て い る か を 再 検

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﹃選 擇 集 ﹄ と ﹃逆 修 説 法 ﹄ (兼 岩 和 広 )   ヨ 討 し て い る が 、 本 稿 で は ま ず 安 楽 房 の 筆 と さ れ る 第 一 章 か ら 第 三 章 を 考 察 し 、 法 然 の 思 想 研 究 の 資 料 と し た い 。 ﹃ 選 擇 集 ﹄ 第 一 章 と ﹃逆 修 説 法 ﹄ ﹃ 選 擇 集 ﹄ 第 一 章 は 浄 土 宗 の 教 判 を 順 序 立 て て 述 べ た も の で あ る 。 今 、 そ の 内 容 を 確 認 す る と 、 ① 安 楽 集 の 引 用 聖 道 浄 土 の 二 門 を 明 か す 。 ② 立 教 の 不 同 を 明 か す 。 ③ 浄 土 宗 名 の 証 拠 を 明 か す 。 ④ 聖 道 門 に つ い て 明 か す 。 ⑤ 浄 土 門 に つ い て 明 か す 。 ( 三 經 一 論 の 事 ) ⑥ 聖 道 を 捨 て 浄 土 に 入 ら し む る 事 を 明 か す 。 ⑦ 師 資 相 承 を 明 か す 。 と い う 構 成 に な っ て い る 。 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ で は ⑦ ﹁ 師 資 相 承 を 明 か す ﹂ の 段 落 が 全 て 後 の 挿 入 と な っ て い る こ と を は じ め と し て 、 そ の 他 に も 細 か な 異 同 が い く つ か 存 在 す る 。 そ の 中 で も 注 目 す べ き も の と し て 、 第 五 丁 表 の 七 行 目 に 見 ら れ る 線 で 囲 ま れ た 部 分 が 挙 げ ら れ る 。 そ こ に は し 、 .", , 、 專 ' 曽 二 と い う 記 述 が み ら れ る 。 こ の 文 章 は 第 一 章 の ④ ﹁ 聖 道 門 に つ い て 明 か す ﹂ の 段 落 の 最 後 と ⑤ ﹁ 浄 土 門 に つ い て 明 か す ( 三 經 一 論 の 事 ) ﹂ の 段 落 の 文 頭 に あ た る 。 そ の 間 に 記 さ れ た 線 で 囲 ま れ た 部 分 は 、 後 の ﹃選 擇 集 ﹄ で は 単 な る 間 違 い と し て 削 除 さ れ て お り 、 こ れ ま で 注 目 さ れ る こ と は な か っ た 。 も ち ろ ん こ の 部 分 を そ の ま ま ﹁ 此 の 集 の 中 に 聖 を 立 つ ﹂ と 読 ん で も 意 味 を な さ な い 。 む し ろ こ の 文 章 か ら す れ ば ﹁ 此 の 集 の 中 に 聖 道 浄 土 二 門 を 立 つ ﹂ と 記 そ う と し た と 考 え た 方 が 自 然 で あ る 。 つ ま り は ⑥ ﹁ 聖 道 を 捨 て 浄 土 に 入 ら し む 事 を 明 か す ﹂ の 段 落 の 冒 頭 に 来 る 文 章 を 念 頭 に 置 い て い た と 考 え ら れ る 。 す な わ ち 初 め は ⑤ を 飛 ば し て ⑥ を 記 そ う と し た 形 跡 を 残 し て い る の で あ る 。 そ こ で こ の 第 一 章 の 内 容 に 従 っ て ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 中 に 一 致 す る 部 分 を 探 し 出 し て み る と 、 具 体 的 な 平 行 文 は 見 出 せ な い も の の 、 内 容 的 に 一 致 す る 文 章 は ほ ぼ 全 体 に わ た っ て 見 出 せ る 。 以 下 に 前 掲 の 第 一 章 の   ぎ 内 容 に 対 し て 、 そ の 対 応 箇 所 を 記 し て お く 。 ﹃選 擇 集 ﹄ ﹃逆 修 説 法 ﹄ ① 対 応 無 し 。 ② ﹁ 六 七 日 ﹂ 2 i 1 諸 宗 の 立 教 開 宗 (昭 法 全 二 七 〇 頁 十 行 目 ) ③ ﹁初 七 日 ﹂ 5 宗 の 名 を 立 つ る こ と (昭 法 全 二 三 亠ハ 頁 六 行 目 ) ④ ﹁ 六 七 日 ﹂ 2 -2 1 1 1 1 聖 道 浄 土 (昭 法 全 二 七 〇 頁 十 二 行 目 ) ⑤ ﹁初 七 日 ﹂ 4 三 部 経 (昭 法 全 ≡ 二 五 頁 十 六 行 目 ) ⑥ ﹁ 六 七 日 ﹂ 2 r 2 i 2 難 易 二 道 (昭 法 全 二 七 〇 頁 十 四 行 目 ) ⑦ ﹁初 七 日 ﹂ 6 師 資 相 承 (昭 法 全 二 三 六 頁 九 行 目 )

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以 上 の よ う に 、 ① ﹁安 楽 集 の 引 用 聖 道 浄 土 の 二 門 を 明 か す ﹂ の 段 落 は ﹃逆 修 説 法 ﹄ に 対 応 箇 所 が 見 ら れ な い が 、 ② か ら ⑦ の 私 釈 段 全 文 に つ い て は 、 ﹁初 七 日 ﹂ と ﹁ 六 七 日 ﹂ に 内 容 的 に 一 致 す る も の が 見 出 せ る 。 こ れ を 踏 ま え て 、 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 第 五 丁 表 に 見 ら れ る 筆 記 問 違 い を ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ に よ っ て 確 認 す る と 、 ④ ﹁聖 道 門 に つ い て 明 か す ﹂ と 対 応 す る ﹃逆 修 説 法 ﹄ ( ﹁ 六 七 日 ﹂ 2 1 2 i l 1 1 聖 道 浄 土 ) 初 聖 道 門 者 三 乘 一 乘 得 道 也 即 於 此 娑 婆 世 界 斷 惑 開 悟 之 道 也 惣 分 有 二 謂 大 乘 小 乘 聖 道 也 別 論 者 有 四 乘 聖 道 謂 聲 聞 乘 縁 覺 乘 菩 薩 乘 佛 乘 (  ) ⑥ ﹁ 聖 道 を 捨 て 浄 土 に 入 ら し む る 事 を 明 か す ﹂ と 対 応 す る ﹃逆 修 説 法 ﹄ (﹁ 六 七 日 ﹂ 2 1 2 1 2 難 易 二 道 ) 立 此 二 門 者 非 道 綽 一 師 曇 鸞 法 師 引 龍 樹 菩 薩 十 住 毘 婆 沙 論 立 難 行 易 行 二 道 難 行 道 如 陸 地 歩 行 易 行 道 如 乘 船 譬 給 立 此 二 道 不 限 曇 鸞 一 師 天 台 十 疑 論 同 引 釋 給 又 迦 才 淨 土 論 同 引 其 難 行 道 者 即 聖 道 門 也 易 行 道 者 即 淨 土 門 也 加 之 又 慈 恩 大 師 云 親 逢 聖 化 道 悟 三 乘 福 薄 因 疎 勸 歸 淨 土 云 々 此 中 三 乘 者 即 聖 道 門 也 淨 土 即 淨 土 門 也 難 行 易 行 三 乘 淨 土       聖 道 淨 土 其 言 雖 異 其 意 皆 同 凡 一 代 諸 教 不 出 此 二 門 也 こ の よ う に ﹃選 擇 集 ﹄ の ④ と ⑥ の 内 容 は ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ に お い て は ほ ぼ ハ   ソ 連 続 し て 伝 承 さ れ て い る 。 し た が っ て こ こ で は ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 執 筆 時 に 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 八 号 (1 10 0 0 年 三 月 ) ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 順 序 に 従 っ た も の を 参 照 し な が ら 筆 記 し た と 考 え ら れ る 。 す な わ ち ④ ( 11 ﹁ 六 七 日 ﹂ 2 1 2 -1 1 1 聖 道 浄 土 ) を 筆 記 し た 時 点 で 、 本 来 は ﹁ 初 七 日 4 三 部 経 ﹂ に 戻 っ て 、 ⑤ に 当 た る 部 分 を 筆 記 し な け れ ば な ら な い の に 、 誤 っ て そ の ま ま ⑥ ( H ﹁ 六 七 日 ﹂ 2 1 2 1 2 難 易 二 道 ) を 続 け て 筆 記 し た と 思 わ れ る 。 そ し て ﹁ 此 集 之 中 立 聖 ﹂ と 記 し た 時 点 で 間 違 い に 気 づ き 、 そ の 部 分 を 線 で 囲 っ て 見 せ 消 ち し た 後 、 ﹁ 初 七 日 ﹂ に 戻 っ て ﹁ 次 往 生 浄 土 ﹂ と 続 け た と 考 え ら れ る       の で あ る 。 す な わ ち ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 第 一 章 の 執 筆 は ﹃逆 修 説 法 ﹄ を 中 心 と し て 行 わ れ た と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 確 認 の 為 に ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ に 見 ら れ る 他 の 異 同 に つ い て も 見 て い く こ と に す る 。 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 第 一 章 に は こ の 書 写 ミ ス 以 外 に も 、 い く つ か の 書 き 込 み が 見 ら れ る 。 ﹃選 擇 集 ﹄ 第 一 章 の 内 容 が ほ ぼ 全 体 を 通 し て ﹃逆 修 説 法 ﹄ と 対 応 す る が 、 文 章 を 詳 細 に 見 る と 、 参 照 さ れ た と 思 わ れ る ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 文 章 と 文 章 を 繋 ぐ た め の 増 広 が 見 ら れ る 。 す な わ ち ﹃選 擇 集 ﹄ 第 一 章 の 中 に ﹃逆 修 説 法 ﹄ と 対 応 す る 部 分 と 、 必 然 的 に 増 広 さ れ た 対 応 し な い 部 分 が あ る の で あ る 。 対 応 す る 部 分 で は ハ ユ ﹁廬 山 寺 本 ﹂ の 書 き 込 み が 非 常 に 少 な い が 、 逆 に 増 広 部 分 に は 執 筆 時 に 起 こ っ た で あ ろ う 明 か な 筆 記 ミ ス が 多 く 見 ら れ る 。 そ の い く つ か を 例 に 挙 げ る と 、 ﹁廬 山 寺 本 ﹂ 第 五 丁 裏 に ニ

一肅

一者

と あ り 、 ま ず ﹁ 正 明 ■ ﹂ の 三 文 字 分 が 塗 り つ ぶ し て 削 除 さ れ て い る 。 三

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﹃選 擇 集 ﹄ と ﹃逆 修 説 法 ﹄ (兼 岩 和 広 ) こ の 三 文 字 目 に つ い て は 途 中 ま で し か 記 さ れ て い な い の で 確 認 す る こ と が で き な い が 、 痕 跡 か ら ﹁ 彳 (ぎ ょ う に ん べ ん ) ﹂ を 記 す 途 中 で あ っ た と 思 わ れ る 。 前 の 二 文 字 に つ い て は 明 ら か に ﹁ 正 明 ﹂ と 記 さ れ て い た こ と が 分 か る 。 さ ら に そ の 右 上 に は コ ﹂ の 文 字 を 挿 入 し 、 後 に 削 除 さ れ た 跡 が 残 っ て い る 。 こ の 三 文 字 に つ い て は 、 文 章 構 造 上 初 め は ﹁ ⋮ 有 二 正 明 往 生 浄 土 之 教 傍 明 往 生 浄 土 之 教 ﹂ と 記 そ う と し た に 違 い な い 。 し か し 最 終 的 に 文 を 分 け て ﹁ 一 者 正 明 往 生 浄 土 之 教 、 二 者 傍 明 往 生 浄 土 之 教 ﹂ と 記 す こ と に な り 、 削 除 さ れ た と 考 え ら れ る 。 た だ 、 右 上 に ﹁ 一 ﹂ の 文 字 が 挿 入 さ れ 、 さ ら に 削 除 さ れ て い る こ と 、 あ る い は 三 文 字 の 削 除 の 筆 の 跡 か ら 考 え る と 最 終 的 な 文 章 が ま と ま る ま で に 幾 分 か の 時 間 が か か っ た と 思 わ れ る 。 と こ ろ で そ の 前 に は ﹁ 之 ﹂ の 文 字 が ﹁ 此 ﹂ に 書 き 換 え ら れ て い る 。 こ の ﹁ 此 ﹂ と 記 す べ き 文 字 を ﹁ 之 ﹂ と し て し ま っ た ミ ス は 、 ロ 述 筆 記 の 場 合 に 見 ら れ る も の で あ り 、 文 献 書 写 の 場 合 に は 起 こ り 得 な い 。 こ の よ う な 口 述 筆 記 で 起 こ る 間 違 い は 他 に も 見 ら れ る 。 ま ず 、 第 六 丁 裏 に で

へ器

一 と あ り 、 ﹁ 去 ﹂ が 後 の 挿 入 と な っ て い る 。 こ れ は 、 訓 読 み で ﹁ 大 聖 を 去 る こ と ⋮ ﹂ と 口 述 さ れ た も の を 書 き 手 が 漢 文 体 で 記 す 場 合 に 起 こ す 間 違 い で あ る 。 同 様 に 第 九 丁 裏 に も 四

,

.

' と し て ﹁應 ﹂ を 見 せ 消 ち し ﹁ 於 ﹂ を 挿 入 す る 部 分 が あ る が 、 こ の 箇 所 に つ い て も 訓 読 み さ れ た も の を 漢 文 体 で 口 述 筆 記 す る 場 合 に 起 こ る ミ ス で あ り 、 文 献 書 写 の 場 合 に は 起 こ り 得 な い 間 違 い で あ る 。 こ れ ら の 用 例 を 考 え あ わ せ る と ﹃逆 修 説 法 ﹄ と 対 応 し な い 箇 所 、 す な わ ち ﹃逆 修 説 法 ﹄ に 対 応 す る 文 章 問 を 連 結 す る 文 章 内 で 起 こ る 筆 記 ミ ス は 、 そ の 内 容 を そ の 場 で 考 え な が ら 口 述 さ れ た も の を 漢 文 体 で 筆 記 し た た め に 起 こ っ た も の と 考 え ら れ る 。 従 っ て ﹃往 生 論 註 ﹄ や ﹃ 西 ハ ぬ 方 要 決 ﹄ の よ う な 引 用 の 際 に 参 照 し た 文 献 を 除 く と 、 ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 他 に は 書 写 す べ き 具 体 的 な 資 料 は な か っ た と 考 え ら れ る 。 ﹃ 選 擇 集 ﹄ 第 二 章 と ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ 前 章 に お い て ﹃選 擇 集 ﹄ 第 一 章 が ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ を 中 心 的 な 資 料 と し て 執 筆 さ れ て い た こ と を 明 ら か に し た が 、 本 章 で は 続 く 第 二 章 を 見 て い く 。 ま ず 、 ﹃ 選 擇 集 ﹄ 第 二 章 と 対 応 す る ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 箇 所 を ま と め て お く 。 ﹃選 擇 集 ﹄ ﹃逆 修 説 法 ﹄ ① ﹃観 経 疏 散 善 義 ﹄ 引 文 対 応 箇 所 な し

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② 往 生 の 行 相 を 明 か す ③ 正 行 を 明 か す ④ 雜 行 を 明 か す ⑤ 二 行 の 得 失 を 明 か す (五 番 相 対 ) ⑥ 純 雑 の 義 の 証 拠 を 明 か す ⑦ ﹃往 生 礼 讃 ﹄ 引 文 ⑧ 雑 を 捨 て 専 を 修 す こ と を 明 か す 対 応 箇 所 な し 対 応 箇 所 な し 対 応 箇 所 な し ﹁ 六 七 日 ﹂ 2 -4 専 雑 二 修 の 得 失 (五 番 相 対 ) (昭 法 全 二 七 二 頁 四 行 目 ) 対 応 箇 所 な し ﹁ 六 七 日 ﹂ 2 -4 -6 ﹃往 生 礼 讃 ﹄ の 義 (昭 法 全 二 七 三 頁 三 行 目 ) 対 応 箇 所 な し ﹃選 擇 集 ﹄ 第 二 章 に お け る ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ と の 対 応 箇 所 は 、 章 の 後 半 部 分 、 つ ま り ⑤ ﹁ 二 行 の 得 失 を 明 か す ﹂ と ⑦ ﹁ ﹃往 生 礼 讃 ﹄ 引 文 ﹂ を 述 べ る 部 分 の み に 限 定 で き る 。 ま ず ⑤ ﹁ 二 行 の 得 失 を 明 か す ﹂ 中 で 、 ﹁ 五 番 相 対 ﹂ に お け る 両 者 の 対 応 を 見 る と 、 共 に 同 じ ﹃観 経 疏 ﹄ の 文 章 を 引 用 し 、 そ の 前 後 の 解 説 に つ い て も 多 少 の 文 字 の 異 同 は 有 る も の の 、 内 容 的 に は 同 一 で あ る と 考 え て 差 し 支 え な い 。 ま た ⑦ ﹁ ﹃往 生 礼 讃 ﹄ の 引 用 ﹂ に つ い て も ﹃逆 修 説 法 ﹄ で は 部 分 的 に 省 略 さ れ て い る 箇 所 も あ る が 、 全 体 と し て は 同 じ で あ る 。 し た が っ て こ の 後 半 部 分 は 、 既 に 指 摘 し た ﹃選 擇 集 ﹄ 第 一 章 と 同 様 、 明 ら か に ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ と の 関 パ リ 連 性 を 示 唆 し て い る 。 で は ﹃選 擇 集 ﹄ の そ れ 以 外 の 箇 所 、 す な わ ち ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ と 対 応 し な い 第 二 章 の 前 半 部 分 (① ∼ ④ ) は ど の よ う に 成 立 し た の で あ ろ う か 。 第 二 章 の 前 半 で は 、 あ ら か じ め ① の 引 用 段 に ﹃ 観 経 疏 ﹄ を 引 用 し て 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 八 号 ( 1 10 0 0 年 三 月 ) お き な が ら 、 続 く 私 釈 段 (② ∼ ④ ) の 中 で 解 釈 す る 際 に 、 そ の 内 容 に 沿 っ て 必 要 な 箇 所 を 再 度 引 用 し 直 し て い る 。 こ の よ う な 方 法 は ﹃ 選 擇 集 ﹄ の 他 の 章 に は 見 ら れ ず 、 第 二 章 前 半 の 大 き な 特 徴 と 言 え る 。 そ こ で こ の 私 釈 段 に 引 用 さ れ た ﹃ 観 経 疏 ﹄ に 重 点 を お き な が ら 、 第 二 章 前 半 の 成 立 の 状 況 を 見 て み る 。 ま ず は 、 引 用 段 と 私 釈 段 の 必 要 箇 所 の 対 照 を 挙 げ て お く 。 (引 用 段 ) 觀 經 疏 第 四 云 就 行 立 信 者 然 行 有 二 種 一 者 正 行 二 者 雜 行 言 正 行 者 專 依 往 生 經 行 行 者 是 名 正 行 何 者 是 也 一 心 專 讀 誦 此 觀 經 彌 陀 經 無 量 壽 經 等 一 心 專 注 思 想 觀 察 憶 念 彼 國 二 報 莊 嚴 若 禮 即 一 心 專 禮 彼 佛 若 ロ 稱 即 一 心 專 稱 彼 佛 (私 釈 段 ︿傍 線 引 用 文 ﹀ ) 善 導 和 尚 意 往 生 行 雖 多 大 分 爲 二 一 正 行 二 雜 行 第 一 讀 誦 正 行 者 專 讀 誦 觀 經 等 也 即 文 云 一 心 專 讀 誦 此 觀 經 彌 陀 經 無 量 壽 經 等 是 也 第 二 觀 察 正 行 者 專 觀 察 彼 國 依 正 二 報 也 即 文 云 一 心 專 注 思 想 觀 察 憶 念 彼 國 二 報 莊 嚴 是 也 第 三 禮 拝 正 行 者 專 禮 彌 陀 也 即 文 云 若 禮 即 一 心 專 禮 彼 佛 是 也 第 四 稱 名 正 行 者 專 稱 彌 陀 名 號 也 即 文 云 若 口 稱 即 一 心 專 稱 彼 佛 是 也 五

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﹃選 擇 集 ﹄ と ﹃逆 修 説 法 ﹄ (兼 岩 和 広 ) 若 讃 歎 供 養 即 一 心 專 讃 歎 供 養 是 名 爲 正 又 就 此 正 中 復 有 二 種 一 者 一 心 專 念 彌 陀 名 號 行 住 坐 臥 不 問 時 節 久 近 念 念 不 捨 者 是 名 正 定 之 業 順 彼 佛 願 故 若 依 禮 誦 等 即 名 爲 助 業 除 此 正 助 二 行 已 外 自 餘 諸 善 悉 名 雜 行 若 修 前 正 助 二 行 心 常 親 近 憶 念 不 断 名 爲 無 間 也 若 行 後 雜 行 即 心 常 間 斷 雖 可 廻 向 得 生 衆 名 疎 雜 之 行 也 第 五 讃 歎 供 養 正 行 者 專 讃 歎 供 養 彌 陀 也 即 文 云 若 讃 歎 供 養 即 一 心 專 讃 歎 供 養 是 名 爲 正 是 也 初 正 業 者 以 上 五 種 之 中 第 四 稱 名 爲 正 定 之 業 即 文 云 一 心 專 念 彌 陀 名 號 行 住 坐 臥 不 問 時 節 久 近 念 念 不 捨 者 是 名 正 定 之 業 順 彼 佛 願 故 是 也 次 助 業 者 除 第 四 口 稱 之 外 以 讀 誦 等 四 種 而 爲 助 業 即 文 云 若 依 禮 誦 等 即 名 爲 助 業 是 也 次 雜 行 者 即 文 云 除 此 正 助 二 行 已 外 自 餘 諸 善 悉 名 雜 行 是 也 次 判 二 行 得 失 者 若 修 前 正 助 二 行 心 常 親 近 憶 念 不 斷 名 爲 無 間 也 若 行 後 雜 行 即 心 常 間 斷 雖 可 回 向 得 生 衆 名 疎 雜 之 行 即 其 文 也 こ の よ う に 第 二 章 前 半 で は 、 引 用 段 の 文 章 の ほ ぼ 全 文 を 私 釈 段 に お い て 再 度 引 用 し な お し て い る 。 さ ら に 私 釈 段 の 内 容 は 引 用 段 で 挙 げ る ﹃ 観 経 疏 ﹄ の 文 章 に そ っ て 解 釈 さ れ て い る 。 こ の ス タ イ ル は 伝 統 的 な 経 典 の 語 義 解 釈 と 同 じ 方 法 で 、 少 な く と も 教 義 的 に は 法 然 の 理 解 が 善 導 に 則 し て い る こ と を 示 す 最 も よ い 方 法 と 考 え ら れ る 。 と こ ろ が こ の 語 義 解 釈 と い う 方 法 は 執 筆 時 に 俄 に 作 成 す る こ と が 出 来 る よ う な 単 純 な 解 説 で あ る と も 言 え る 。 事 実 こ の 部 分 に お け る 私 釈 段 で の ﹃観 経 疏 ﹄ の 引 用 以 外 の 文 章 を 見 れ ば 、 ﹃ 観 経 疏 ﹄ の 文 章 を 繋 ぐ 為 の 連 結 文 や 、 六 ﹃ 観 経 疏 ﹄ の 内 容 を 言 い 換 え た だ け の 文 し か 存 在 し な い 。 す な わ ち こ の 前 半 部 分 の 内 容 は 、 単 に ﹃観 経 疏 ﹄ を 説 明 し 直 し た だ け に 留 ま っ て お り 、 ﹃ 選 擇 集 ﹄ 執 筆 時 に 新 た に 作 成 さ れ た よ う に 思 わ れ る 。 そ こ で こ の 第 二 章 が 執 筆 さ れ た 状 況 は ど の よ う で あ っ た の か 、 そ の 痕 跡 を 残 す ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ か ら 確 認 し て み る 。 以 下 に ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ に 見 ら れ る い く つ か の 事 例 を 挙 げ 、 そ こ か ら 検 討 を 加 え て い き た い 。 例 一 (十 一 丁 表 三 行 目 ∼ 四 行 目 )

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こ の ﹁ 五 種 正 行 ﹂ の 名 目 を 挙 げ る 箇 所 で は 、 そ の 第 一 ﹁ 讀 誦 正 行 ﹂ と 第 五 ﹁讃 歎 供 養 正 行 ﹂ と に お い て ﹁ 者 ﹂ の 文 字 が 記 さ れ 、 後 に 削 除 さ れ て い る 。 す な わ ち 不 必 要 な ﹁ 者 ﹂ の 文 字 を 記 し て し ま っ た と い う 事 例 で あ り 、 他 人 の 口 述 を 筆 記 し た が ゆ え に 起 こ る 間 違 い で あ る 。 つ ま り ﹁ ひ と つ に は ﹂ と ロ で 言 わ れ れ ば 、 ﹁ 者 ﹂ の 文 字 が 入 る の か 入 ら な い の か が わ か ら な い 。 も し 、 他 の 文 献 を 横 に 置 き な が ら 書 写 す る の で あ れ ば 、 こ の よ う な ミ ス は 起 こ り 得 な い 。

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例 二 ( 十 一 丁 裏 一 行 目 ∼ 二 行 目 ) と 考 え ら れ る 。 例 四 (十 四 丁 表 五 行 目 ) 次 に コ 心 専 念 の 文 ﹂ で あ る が 、 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ に お い て は ﹁ 不 問 ﹂ の 文 字 が 後 の 挿 入 と な っ て い る 。 こ の ミ ス も 前 述 と 同 じ よ う に ﹁行 住 坐 臥 に 時 節 の 久 近 を 問 わ ず ﹂ と ロ で 言 わ れ 、 そ れ を 筆 記 す る か ら こ そ 文 頭 に く る は ず の ﹁ 不 問 ﹂ の 文 字 を 抜 か し て し ま う の で あ り 、 漢 文 を 書 写 し た の で あ れ ば こ の よ う な ミ ス は 起 こ ら な い 。 ま し て 、 ﹁ 一 心 専 念 の 文 ﹂ と い う 最 も 重 要 な 文 章 を こ の よ う に 間 違 う に は 、 訓 読 体 か ら 漢 文 体 へ と い う 作 業 だ か ら こ そ 起 こ り 得 た 結 果 だ と 考 え ら れ る 。 例 三 (十 二 丁 裏 六 行 目 )

..

次 に ﹁ 具 に 述 ぶ る に 遑 あ ら ず ﹂ と い う 部 分 で あ る が 、 ﹁ 不 ﹂ の 文 字 で 何 ら か の 文 字 を 書 き 直 し た 痕 跡 を 残 し て い る 。 こ の 文 字 を 詳 細 に 見 る と 、 ﹁ 具 ﹂ の 文 字 を 書 き 始 め て 、 途 中 で ﹁ 不 ﹂ と 改 め た の で は な い か と 推 測 さ れ る 。 つ ま り こ の 事 例 も ﹁ 具 に 述 ぶ る に 遑 あ ら ず ﹂ と 口 述 さ れ 、 そ れ を 漢 文 体 で 記 す か ら こ そ 起 こ り 得 た 現 象 で あ る 。 ﹁ 具 ﹂ と 書 き 始 め た 時 に ﹁ ・ ⋮ 遑 あ ら ず ﹂ と 言 わ れ て 、 慌 て て 書 き 直 し た 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 八 号 (1 10 0 0 年 三 月 ) こ れ は 、 ﹁ 付 ﹂ を ﹁ 就 ﹂ と 書 き 直 す 訂 正 で あ る が 、 ど ち ら の 字 も ﹁ つ い て ﹂ と 読 む た め に 起 こ っ た 間 違 い で あ る 。 本 来 ﹁ 就 ﹂ と 記 す べ き 所 を ﹁ 付 ﹂ と 記 し た ミ ス は 漢 字 の 間 違 い で あ り 、 他 の 文 献 を 見 な が ら 書 写 す る 時 に は 絶 対 に 起 こ ら な い 現 象 で あ る 。 他 に も 様 々 な 書 き 込 み が 存 在 す る が 、 こ れ ら の 校 正 作 業 に 共 通 し て 言 え る こ と は 、 そ の 執 筆 時 の 状 況 が 全 て ロ 述 筆 記 で あ っ た か ら こ そ 起 こ っ た 現 象 で あ る と 考 え ら れ る 。 し か も 訓 読 み で ロ 述 さ れ た も の を 漢 文 体 で 記 す 時 に 起 こ る 現 象 な の で あ る 。 以 上 の こ と か ら 考 え て 、 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 第 二 章 前 半 部 分 の 執 筆 状 況 は ﹁ 口 述 筆 記 ﹂ に よ る も の で あ っ た と 考 え ら れ る 。 し か し 、 こ れ ら の 書 き 込 み は 前 半 に 集 中 し て お り 、 先 に 述 べ た 後 半 の ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ と 対 応 す る 部 分 に 関 し て は 、 間 違 い に よ る 訂 正 は 無 く 、 わ ず か に ﹃ 観 経 疏 ﹄ ハ ヨ の 引 用 を 再 確 認 し た 跡 が 見 ら れ る だ け で あ る 。 で は ロ 述 筆 記 さ れ た 前 半 部 分 は 、 何 を 元 に 作 ら れ た の で あ ろ う か 。 先 に 述 べ た ﹃逆 修 説 法 ﹄ の ﹁ 二 行 の 得 失 ﹂ を 明 か す 部 分 の 前 に は 然 者 依 此 經 意 今 捨 聖 道 入 念 佛 也 就 其 往 生 淨 土 亦 其 行 是 多 依 之 善 導 七

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﹃ 選 擇 集 ﹄ と ﹃逆 修 説 法 ﹄ (兼 岩 和 広 ) 和 尚 立 專 雜 二 修 判 諸 行 勝 劣 得 失 給 則 此 經 疏 云 就 行 立 信 者 然 行 有 二 種 一 正 行 二 雜 行 云 々 專 修 彼 正 行 云 專 修 行 者 不 修 正 行 而 修 雜 行 申 雜 ホ ね 修 者 也 と い う 文 章 が あ る 。 こ の 内 容 は ま さ し く ﹁善 導 和 尚 、 正 雑 二 行 を 立 て 、 雑 行 を 捨 て 正 行 に 帰 す 文 ﹂ と い う 第 二 章 の 章 題 で あ り 、 さ ら に ﹁ 行 に 就 い て 信 を 立 つ と は 、 然 る に 行 に 二 種 有 り 。 一 に 正 行 、 二 に 雑 行 。 ﹂ の 部 分 は 第 二 章 の 前 半 を 意 味 す る 。 す な わ ち ﹃選 擇 集 ﹄ と ﹃逆 修 説 法 ﹄ が 対 応 し な い と 思 わ れ た 前 半 部 分 に つ い て も 実 際 に は 前 述 の ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ の 文 章 が 元 に な っ て い た こ と が 理 解 で き る 。 そ し て こ れ を 元 に ﹃観 経 疏 ﹄ の 引 用 を 織 り 交 ぜ な が ら 拡 大 す る こ と に よ っ て ﹃ 選 擇 集 ﹄ 第 二 章 の 前 半 が 著 述 さ れ た 。 こ の よ う に 考 え る と 、 章 題 、 前 半 の ﹁ 五 種 正 行 ﹂ 、 後 半 の ﹁ 五 番 相 対 ﹂ 、 全 て が ﹃逆 修 説 法 ﹄ と の 関 連 に お い て 解 き 明 か さ れ た こ と が 分 か る 。 つ ま り 第 二 章 に お い て も ﹃逆 修 説 法 ﹄ が 中 心 的 資 料 と な っ て い る こ と が 明 ら か に な っ た が 、 こ こ で は 、 そ の 元 資 料 と な る ﹃逆 修 説 法 ﹄ に 既 に 説 か れ て い る 内 容 に つ い て は そ の 多 く を 書 写 し 、 逆 に 未 だ 説 か れ て い な い 内 容 に つ い て は 執 筆 時 に 考 え な が ら 口 述 筆 記 に よ っ て 記 さ れ て い っ た の で あ る 。 こ の こ と は 第 一 章 に お い て も 想 定 で き た が 、 第 二 章 は そ の 状 況 が よ り 顕 著 で あ る 。 ﹃ 選 擇 集 ﹄ 第 三 章 と ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ こ れ ま で の 考 察 に よ っ て ﹃選 擇 集 ﹄ の 執 筆 に ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ が 深 く 関 八 与 し て い た こ と は 明 か で あ る 。 そ こ で 、 次 に は 第 三 章 に つ い て こ れ ま で 同 様 ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ と の 関 連 を 見 て 行 く が 、 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ の 第 一 筆 と さ れ る 安 楽 房 と の 関 わ り に つ い て も 検 討 し て い く 。 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 第 三 章 は 、 そ の 半 ば で 筆 跡 が 変 わ っ て い る 。 ﹃ 勅 修 御 ハ お 傳 ﹄ や ﹃決 疑 鈔 直 牒 ﹄ の 伝 承 に 依 れ ば 第 一 章 か ら こ の 箇 所 ま で の 筆 が 安 楽 房 で あ り 、 こ の 箇 所 か ら 真 観 房 に 交 替 さ れ る の で あ る 。 今 、 そ の 箇 所 を ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ に よ っ て 確 認 す る と 、 多 念 佛 能 令 瓦 礫 變 成 金 ( 已 上 ) 問 日 以 念 仏 一 為 夲 願 其 義 実 可 然 未 審 其 願 已 為 成 就 将 為 未 成 就 答 日 其 願 已 成 就 成 仏 以 来 於 今 十 刧 故 無 量 壽 経 下 巻 願 成 就 文 云 諸 有 (二 十 八 丁 裏 ) 衆 生 聞 其 名 字 [ 号 ] 信 心 歓 喜 乃 至 一 念 至 心 迴 向 願 生 彼 國 即 得 徃 生 住 不 退 転 ( 已 上 ) 又 善 導 釈 云 彼 仏 今 現 在 世 成 佛 當 知 夲 誓 重 願 不 虚 衆 生 稱 念 必 得 徃 生 (已 上 ) [加 之 往 生 礼 讃 云 ] ( 二 十 八 丁 表 ) 彼 佛 因 中 立 弘 誓 聞 名 念 我 惣 迎 来 不 簡 貧 窮 将 富 貴 不 簡 下 智 与 高 才 不 簡 多 聞 持 浄 戒 不 簡 破 戒 罪 根 深 但 使 迴 心 問 日 一 切 菩 薩 雖 立 其 願 或 有 已 成 就 亦 有 未 成 就 未 審 法 蔵 井 四 十 八 願 已 為 成 就 将 為 未 成 就 也 答 日 法 蔵

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と あ り 、 こ の 中 で 実 際 に 筆 跡 が 変 わ っ て い る の は 、 削 除 を 指 示 し た 線 で 囲 ま れ た 文 章 の 後 か ら で あ る 。 一 般 的 に 考 え れ ば 各 章 の 終 わ り ま で を 筆 の 務 め と す る で あ ろ う か ら 、 何 ら か の 理 由 で 急 遽 交 替 を 余 儀 な く さ れ た こ と が わ か る 。 そ こ で 、 そ の 理 由 を 見 出 す べ く 、 筆 が 交 替 す る 前 後 の 文 章 を 見 て み る と 、 削 除 さ れ た 交 替 前 の 文 章 (安 樂 房 執 筆 ) 問 日 以 念 佛 為 本 願 其 義 實 可 然 未 審 其 願 已 為 成 就 將 為 未 成 就 答 日 其 願 已 成 就 成 佛 以 來 於 今 十 劫 故 無 量 壽 經 下 卷 願 成 就 文 云 諸 有 衆 生 聞 其 名 號 信 心 歡 喜 乃 至 一 念 至 心 廻 向 願 生 彼 國 即 得 往 生 住 不 退 轉 已 上 又 善 導 釋 云 彼 佛 今 現 在 世 成 佛 當 知 本 誓 重 願 不 虚 衆 生 稱 念 必 バ リ 得 往 生 交 代 後 の 文 章 (真 観 房 執 筆 ) 問 日 一 切 菩 薩 雖 立 其 願 或 有 已 成 就 亦 有 未 成 就 未 審 法 藏 四 十 八 願 已 為 成 就 將 為 未 成 就 也 答 日 法 藏 誓 願 一 々 成 就 當 知 何 者 是 也 極 樂 界 中 既 無 三 悪 趣 當 知 是 即 成 就 無 三 悪 趣 之 願 也 以 何 得 知 即 願 成 就 文 云 亦 無 地 獄 餓 鬼 畜 生 諸 難 之 趣 是 也 又 彼 國 人 天 壽 終 之 後 無 更 三 悪 趣 當 知 是 即 成 就 不 更 悪 趣 之 願 也 以 何 得 知 即 願 成 就 文 云 又 彼 乃 至 成 佛 不 更 悪 趣 是 也 又 極 樂 國 人 天 既 以 無 有 一 人 不 具 三 十 二 相 好 醜 之 別 當 知 是 即 成 就 具 三 十 二 相 願 有 好 醜 之 願 也 以 何 得 知 即 願 成 就 文 云 生 彼 國 者 皆 悉 具 足 三 十 二 相 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 八 号 (二 〇 〇 〇 年 三 月 ) 是 也 如 是 初 自 無 三 悪 趣 願 終 至 得 三 法 忍 願 一 々 誓 願 皆 以 成 就 第 十 八 念 佛 往 生 願 豈 孤 以 不 成 就 乎 然 則 念 佛 之 人 皆 以 往 生 以 何 得 知 即 念 佛 願 成 就 文 云 諸 有 衆 生 聞 其 名 号 信 心 歡 喜 乃 至 一 念 至 心 廻 向 願 生 彼 國 即 得 往 生 住 不 退 轉 是 也 凡 四 十 八 願 莊 嚴 浄 土 花 池 寶 閣 無 非 願 力 何 於 其 中 獨 可 疑 惑 念 佛 往 生 願 乎 加 之 一 々 願 終 云 若 不 尓 者 不 取 正 覺 而 阿 弥 陀 佛 成 佛 已 來 於 今 十 劫 成 佛 之 誓 既 以 成 就 當 知 一 々 之 願 不 可 虚 設 故 善 導 云 彼 佛 今 現 在 世 成 佛 當 知 本 誓 重 願 不 虚 衆 生 稱 念 必 得 往 生   り (已 上 ) 削 除 す べ き 交 替 直 前 の 文 章 で は 第 十 八 願 成 就 の 問 題 だ け の 内 容 で あ っ た も の が 、 交 代 後 の 文 章 で は 他 の 本 願 に つ い て も 具 体 的 に 願 成 就 の 文 を 挙 げ る な ど し て 、 弥 陀 の 四 十 八 願 の 全 体 の 成 就 を 明 か し て い る 。 こ の こ と か ら 、 削 除 さ れ た 安 楽 房 の 筆 で あ る 文 章 を 詳 し く 書 き 直 し た も の が 、 交 代 後 の 文 章 で あ る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 こ れ ま で と 同 じ よ う に ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ と の 比 較 に よ っ て そ の 原 因 を 探 っ て い く 。 ま ず は 、 第 三 章 と ﹃逆 修 説 法 ﹄ と の 対 応 を 挙 げ て お く 。 ﹃選 擇 集 ﹄ ﹁廬 山 寺 本 ﹂ ﹃逆 修 説 法 ﹄ ① ﹃無 量 寿 経 ﹄ 引 文 該 当 個 所 な し ② ﹃観 念 法 門 ﹄ 引 文 該 当 個 所 な し ③ ﹃往 生 礼 讃 ﹄ 引 文 該 当 個 所 な し ④ 弥 陀 の 本 願 興 起 を 明 か す ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 1 1 弥 陀 の 因 位 の 願  ヨ (昭 法 全 二 五 一 頁 六 行 目 ) ⑤ 選 擇 の 相 を 明 か す ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 1 1 弥 陀 の 因 位 の 願 (昭 法 全 二 五 一 頁 六 行 目 ) 九

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﹃ 選 擇 集 ﹄ と ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ ( 兼 岩 和 広 ) ⑥ 本 願 の 内 容 を 明 か す ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 i l 1 1 無 三 悪 趣 の 願 (昭 法 全 二 五 一 頁 十 三 行 目 ) ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 1 1 1 2 不 更 悪 趣 の 願 ( 昭 法 全 二 五 一 頁 十 三 行 目 ) ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 1 1 1 3 悉 皆 金 色 の 願 ( 昭 法 全 二 五 一 頁 十 五 行 目 ) ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 1 1 1 4 無 有 好 醜 の 願 ( 昭 法 全 二 五 一 頁 十 五 行 目 ) ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 -1 i 5 念 仏 往 生 の 願 ( 昭 法 全 二 五 一 頁 十 五 行 目 ) ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 -1 -6 来 迎 引 摂 の 願 ( 昭 法 全 二 五 一 頁 十 五 行 目 ) ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 -1 1 7 係 念 定 生 の 願 ( 昭 法 全 二 五 一 頁 十 五 行 目 ) ⑦ 念 佛 が 生 因 で あ る 理 由 ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 -6 称 佛 を 本 願 と す る 理 由 ( 昭 法 全 二 五 三 頁 二 行 目 ) ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 1 6 1 1 殊 勝 の 功 徳 な る が 故 ( 昭 法 全 二 五 三 頁 三 行 目 ) ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 i 6 1 2 修 し 易 き 故 ( 昭 法 全 二 五 三 頁 五 行 目 ) ⑧ 第 十 八 願 の 成 就 に つ い て ( 削 除 ) ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 ⋮ 7 本 願 の 成 就 ( 昭 法 全 二 五 三 頁 十 五 行 目 ) ⑨ 諸 々 の 本 願 成 就 に つ い て 該 当 個 所 な し ⑩ 第 十 八 願 の 成 就 に つ い て ﹁ 五 七 日 ﹂ 5 1 5 決 定 往 生 ( 昭 法 全 二 六 六 頁 十 二 行 目 ) ﹁ 五 七 日 ﹂ 5 1 4 善 導 の 釈 ( 昭 法 全 二 六 六 頁 十 行 目 ) ⑪ 十 念 に つ い て 釈 す 該 当 個 所 な し ⑫ 乃 至 に つ い て 釈 す 該 当 個 所 な し ⑬ 念 佛 往 生 の 願 の 名 を 釈 す 該 当 個 所 な し 一 〇 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ に お け る 第 三 章 を 全 部 で 十 三 の 項 目 に 分 け 、 そ れ に 対 応 す る ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ の 箇 所 を 示 し た 。 こ の 中 で ⑧ が 削 除 す べ き 線 で 囲 ま れ た 文 章 で あ り 、 そ こ ま で が 安 楽 房 の 筆 で あ る 。 そ し て ⑨ 以 降 が 真 観 房 の 筆 で あ る 。 引 用 段 を 除 い て ⑧ ま で の 安 楽 房 の 範 囲 に 関 し て は 、 文 章 自 体 は 違 う も の の ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ の ﹁ 三 七 日 ﹂ の 内 容 と 一 致 し 、 さ ら に は ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ に 説 か れ た 順 序 と 同 じ 順 序 で 説 か れ て い る 。 こ の こ と か ら 第 三 章 に お い て も 、 ﹃逆 修 説 法 ﹄ ﹁ 三 七 日 ﹂ を 参 照 し な が ら ﹁廬 山 寺 本 ﹂ が 作 ら れ て い た こ と が わ か る 。 し か し 、 筆 が 真 観 房 に 変 わ っ て か ら は 、 ⑩ ﹁ 第 十 八 願 の 成 就 に つ い て ﹂ の 文 に 関 し て の み ﹃逆 修 説 法 ﹄ の ﹁ 五 七 日 ﹂ に 一 致 す る 箇 所 が 見 出 せ る 。 す な わ ち 執 筆 交 替 を 境 に ﹃逆 修 説 法 ﹄ と の 関 係 が 変 化 す る の で あ る 。 そ こ で 、 ま ず は ﹃逆 修 説 法 ﹄ と 対 応 す る 、 執 筆 交 替 前 後 の い つ れ に も 見 ら れ る ⑧ と ⑩ の ﹁ 第 十 八 願 の 成 就 に つ い て ﹂ 明 か す 部 分 を 比 較 し て み る 。 ﹃選 択 集 ﹄ ﹃逆 修 説 法 ﹄ 対 応 箇 所 ⑧ 第 + 八 願 の 成 就 に つ い て (削 除 ) 交 替 前 ﹁三 七 日 ﹂ 3 1 7 本 願 の 成 就 問 日 以 念 佛 為 本 願 其 義 實 可 然 未 審 其 願 雖 立 如 此 誓 願 其 願 不 成 就 者 非 正 可 憑 然 彼 已 為 成 就 將 為 未 成 就 法 藏 菩 薩 願 一 々 成 就 既 成 佛 其 中 此 念 佛 往 答 日 其 願 已 成 就 成 佛 以 來 於 今 十 劫 故 無 生 願 成 就 文 云 諸 有 衆 生 聞 其 名 號 信 心 歡 喜 量 壽 經 下 卷 願 成 就 文 云 諸 有 衆 生 聞 其 名 乃 至 一 念 至 心 回 向 願 生 彼 國 即 得 往 生 住 不 號 信 心 歡 喜 乃 至 一 念 至 心 廻 向 願 生 彼 國 退 轉 云 々 即 得 往 生 住 不 退 轉 已 上 又 善 導 釋 云 彼 佛 今 現 在 世 成 佛 當 知 本 誓 重 願 不 虚 衆 生 稱

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念 必 得 往 生 ⑩ 第 十 八 願 の 成 就 に つ い て 交 替 後 ﹁五 七 日 ﹂ 5 1 5 決 定 往 生 第 十 八 念 佛 往 生 願 豈 孤 以 不 成 就 乎 然 則 彼 願 成 就 文 在 此 經 下 卷 其 文 云 諸 有 衆 生 聞 念 佛 之 人 皆 以 往 生 以 何 得 知 即 念 佛 願 成 其 名 號 信 心 歡 喜 乃 至 一 念 至 心 廻 向 願 生 彼 就 文 云 諸 有 衆 生 聞 其 名 号 信 心 歡 喜 乃 至 國 則 得 往 生 住 不 退 轉 云 々 凡 四 十 八 願 莊 嚴 一 念 至 心 廻 向 願 生 彼 國 即 得 往 生 住 不 退 淨 土 花 池 寶 閣 無 非 願 力 其 中 獨 不 可 疑 念 佛 轉 是 也 凡 四 十 八 願 莊 嚴 浄 土 花 池 寶 閣 無 往 生 願 極 樂 淨 土 若 淨 土 者 念 佛 往 生 亦 決 定 非 願 力 何 於 其 中 獨 可 疑 惑 念 佛 往 生 願 乎 往 生 也 加 之 一 々 願 終 云 若 不 尓 者 不 取 正 覺 而 阿 ﹁五 七 日 ﹂ 5 1 4 善 導 の 釈 弥 陀 佛 成 佛 已 來 於 今 十 劫 成 佛 之 誓 既 以 法 藏 菩 薩 立 彼 願 兆 載 永 劫 間 難 行 苦 行 積 功 成 就 當 知 一 々 之 願 不 可 虚 設 故 善 導 云 彼 累 徳 既 成 佛 給 者 昔 誓 願 一 々 不 可 疑 而 善 導 佛 今 現 在 世 成 佛 當 知 本 誓 重 願 不 虚 衆 生 和 尚 引 此 本 願 文 日 若 我 成 佛 十 方 衆 生 稱 我 稱 念 必 得 往 生 (已 上 ) 名 號 下 至 十 聲 若 不 生 者 不 取 正 覺 彼 佛 今 現 在 世 成 佛 當 知 本 誓 重 願 不 虚 衆 生 稱 念 必 得 往 生 云 々 こ の よ う に 、 安 楽 房 が 記 し 後 に 削 除 さ れ た 文 は ﹃逆 修 説 法 ﹄ の ﹁ 三 七 日 ﹂ 3 1 7 (本 願 の 成 就 ) の 内 容 と 一 致 し 、 真 観 房 執 筆 の 第 十 八 願 成 就 の 文 章 は ﹁ 五 七 日 ﹂ 5 -5 (決 定 往 生 ) と ﹁ 五 七 日 ﹂ 5 1 4 (善 導 の 釈 ) の 内 容 と 一 致 す る 。 こ の 両 者 に お け る ﹃逆 修 説 法 ﹄ と の 内 容 的 な 共 通 を 考 え れ ば 、 そ れ ぞ れ の 執 筆 の 際 に ﹃逆 修 説 法 ﹄ が 参 照 さ れ て い た こ と は 明 か で あ る 。 し か し 、 そ の 参 照 さ れ た ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 内 容 が 執 筆 交 替 の 前 後 で は ﹁ 三 七 日 ﹂ か ら ﹁ 五 七 日 ﹂ に 変 更 さ れ て い る の で あ る 。 さ ら に 、 ﹃ 選 擇 集 ﹄ 第 三 章 で の 執 筆 交 代 後 の 内 容 を 見 て み る と 、 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 八 号 ( 二 〇 〇 〇 年 三 月 ) ⑪ 十 念 に つ い て 釈 す ⑫ 乃 至 に つ い て 釈 す ⑬ 念 佛 往 生 の 願 を 定 め る と あ る よ う に 、 全 て が 第 十 八 ﹁ 念 佛 往 生 の 願 ﹂ に 関 す る 内 容 で あ る 。 つ ま り 、 ⑩ 真 観 房 執 筆 の 範 囲 に 記 さ れ た 内 容 は 、 ⑧ 交 替 前 に 安 楽 房 が 記 し た 部 分 を よ り 詳 細 に 記 し た こ と と な る 。 す な わ ち 、 は じ め 安 楽 房 が ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ の ﹁ 三 七 日 ﹂ に 説 か れ た ﹁ 本 願 成 就 ﹂ を 明 か す 部 分 を 筆 記 し て い た が 、 そ の 内 容 を 詳 細 に 増 広 す る こ と と な り 、 参 照 し て い た 資 料 を 変 更 し て ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ の ﹁ 五 七 日 ﹂ の 内 容 が 元 に な っ た 。 そ の 際 、 ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 内 容 だ け で な く 、 第 十 八 願 に つ い て 、 そ こ に 説 か れ る ﹁ 十 念 ﹂ や ﹁ 乃 至 ﹂ 或 い は そ の 願 お   名 に つ い て も 詳 細 に 記 さ れ て い っ た の で あ る 。 こ の 参 照 し た ﹃逆 修 説 法 ﹄ の わ ず か な 内 容 を 増 広 す る と い う 状 況 は 、 既 に 述 べ た 第 二 章 の 前 半 に も 見 ら れ た 。 そ れ と 同 じ な ら ば 、 真 観 房 の 範 囲 に 関 し て は そ の 殆 ど が 執 筆 の 時 点 で 作 ら れ た と 考 え る こ と も で き る 。 そ こ で 再 度 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ を 見 て み た い 。 真 観 房 の 筆 の 箇 所 に は 多 く の 訂 正 等 の 書 き 込 み が 見 ら れ る 。 そ の 中 で も 注 目 す べ き こ と と し て 、 ⑨ ﹁ 諸 々 の 本 願 成 就 に つ い て ﹂ 明 か す 部 分 に は ﹁無 有 好 醜 の 願 ﹂ と 記 し て い た も の を ﹁ 具 三 十 二 相 の 願 ﹂ と 訂 正 し て い る 箇 所 が 見 ら れ る 。 ( 原 初 形 態 ) 又 極 樂 國 人 天 既 以 無 好 醜 之 別 。 當 知 、 是 即 成 就 無 有 好 醜 之 願 也 。 一 一

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﹃選 擇 集 ﹄ と ﹃逆 修 説 法 ﹄ (兼 岩 和 広 ) 故 願 成 就 文 云 、 生 彼 國 者 皆 悉 具 足 三 十 二 相 。 (訂 正 後 ) 又 極 樂 人 天 既 以 無 有 一 人 不 具 三 十 二 相 。 當 知 、 是 即 成 就 具 三 十 二 相 願 也 。 以 何 得 知 、 即 願 成 就 文 云 、 生 彼 國 者 皆 悉 具 足 三 十 二 相 是 ハ ヨ 也 。 原 初 形 態 の 状 況 か ら 見 て 、 ﹁廬 山 寺 本 ﹂ で は 初 め 第 四 ﹁ 無 有 好 醜 の 願 ﹂ の 成 就 に つ い て 記 そ う と し て い た に 違 い な い 。 し か し 、 続 く 教 証 で は ﹁ 故 に 願 成 就 の 文 に 云 う ﹂ と し て 、 ﹃ 無 量 寿 経 ﹄ 下 巻 の ﹁ 彼 の 国 に 生 ず る も の は 、 皆 悉 く 三 十 二 相 を 具 足 す ﹂ と い う 文 章 を 挙 げ て い る の で あ る 。 そ れ ぞ れ の 願 と 願 成 就 の 文 の 対 応 が 文 献 に 明 確 に 示 さ れ る の は 、 筆 者 の 知 る 限 り 了 慧 の ﹃無 量 寿 経 鈔 ﹄ を 待 た ね ば な ら な い 。 ﹃選 擇 集 ﹄ 執 筆 時 に 第 四 ﹁ 無 有 好 醜 の 願 ﹂ の 成 就 を 明 か す つ も り で 記 し て い た が 、 そ れ に 対 応 す る 願 成 就 の 文 を 即 座 に 確 定 す る 資 料 が 手 元 に な か っ た の で は な か ろ う か 。 第 三 章 前 半 の 本 願 を 明 か す 部 分 で は 第 一 ・ 第 二 ・ 第 三 ・ 第 四 、 乃 至 、 第 十 八 の 願 と い う 順 で 記 さ れ て い る の で あ る か ら 、 こ の 願 成 就 を 明 か す 部 分 で も 、 本 来 そ れ に 即 し て 第 一 ・ 第 二 ・ 第 三 ・ 第 四 と 進 む べ き で あ る 。 に も か か わ ら ず 、 第 三 願 の 成 就 を 抜 か し 、 第 四 願 を 訂 正 し て 、 第 十 八 願 を 飛 び 越 し た 第 二 十 一 願 を 挙 げ る 状 況 に は 何 ら か の 理 由 が あ る は ず で あ る 。 お そ ら く 、 突 然 の 執 筆 交 替 か ら 考 え る と 第 三 願 成 就 の 文 を 俄 に 確 定 す る 資 料 も な く 、 第 四 願 成 就 の 文 を 記 そ う と し た が 判 然 と せ ず 、 結 果 、 最 も 分 か り や す い 第 二 一 二 十 一 ﹁ 具 三 十 二 相 の 願 ﹂ の 成 就 に 書 き 換 え た と 思 わ れ る 。 こ の 箇 所 で は 、 あ   如 是 初 自 無 三 悪 趣 願 終 至 得 三 法 忍 願 一 々 誓 願 皆 以 成 就 と い う よ う に 、 こ こ で は 弥 陀 の 四 十 入 願 の 全 体 が 成 就 さ れ た こ と を 示 す の が 本 意 で あ り 、 一 々 の 願 の 成 就 の 具 体 性 に こ だ わ る 必 要 は な か っ た の で あ る 。 い ず れ に せ よ こ の 箇 所 に 関 し て 内 容 的 に 参 照 し た よ う な 文 献 は 無 く ﹃選 擇 集 ﹄ 撰 述 時 に 俄 に 考 え ら れ た 文 章 で あ る こ と に な る 。 す な わ ち 第 三 章 で の 真 観 房 の 筆 の 範 囲 は 、 ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ の ﹁ 五 七 日 ﹂ を 元 と し て 、 更 に 詳 細 な 内 容 を 考 え な が ら 記 さ れ た の で あ る 。 た だ 、 前 述 し た 第 二 章 の 状 況 と 違 う こ と は 、 ﹁ ﹃ 観 経 疏 ﹄ を 織 り 交 ぜ な が ら ﹂ と い う 単 純 な 作 業 で は な く 、 第 十 八 願 と い う 短 い 文 章 に 対 し て 、 そ の 語 義 解 釈 を 詳 細 に 行 っ て お り 、 考 え な が ら 執 筆 し な け れ ば な ら な い 箇 所 が 非 常 に 多 い 事 で あ る 。 以 上 の 考 察 に よ っ て ﹃選 擇 集 ﹄ 執 筆 時 に ﹃逆 修 説 法 ﹄ が 参 照 さ れ て い た こ と は 明 ら か に な っ た が 、 第 一 章 が ﹁ 六 七 日 ﹂ と ﹁ 初 七 日 ﹂ 、 第 二 章 は ﹁ 六 七 日 ﹂ 、 第 三 章 は ﹁ 三 七 日 ﹂ に 対 応 す る こ と を 考 え る と 、 ﹃選 擇 集 ﹄ の 構 成 そ の も の は 、 当 然 ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ の 構 成 を 元 と し た も の で は な く 、 別 の コ ン セ プ ト で 成 立 し た も の で あ る 。 ﹃ 選 擇 集 ﹄ 各 章 の 内 容 や 全 体 の 構 成 は か な り 整 え ら れ た も の で あ り 、 法 然 の 遺 文 の 中 で も 最 も 完 成 さ れ た も の で あ る 。 お そ .ら く は ﹃選 擇 集 ﹄ 執 筆 の 起 因 と

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な っ た 兼 実 の 要 請 や 当 時 の 他 宗 へ の 配 慮 も 含 め た 上 で の 構 成 と 考 え ら れ る 。 法 然 は 自 分 の 考 え た こ の 構 成 に 従 っ て 、 ま ず 、 以 前 自 分 が 話 し た 内 容 で あ る ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ を 元 に 、 真 観 房 を 中 心 と し た 幾 人 か の 弟 子 達 に ま と め 直 さ せ た の で あ ろ う 。 少 な く と も 今 回 本 稿 が 扱 っ た ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ と 最 も 対 応 す る 第 三 章 ま で が 安 楽 房 の 筆 で あ る と い う 事 実 、 中 で も ﹃逆 修 説 法 ﹄ に 対 応 し な い 部 分 で は 口 説 を 筆 記 し た 痕 跡 、 更 に は 第 三 章 後 半 に 至 っ て ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ の 支 持 が 無 く な る と 真 観 房 に 筆 が 替 わ る こ と を 考 え る と 、 ま ず 、 ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ が 父 親 の 法 会 で あ り 、 他 の ど の 弟 子 達 よ り も 身 近 な も の で あ る 安 楽 房 が 第 一 筆 に 選 ば れ 、 ﹃逆 修 説 法 ﹄ と の 対 応 が 無 く な る に つ れ 、 そ の 任 を 解 か れ た と 考 え ら れ る 。 第 一 章 や 第 二 章 に お い て 執 筆 時 に 創 作 さ れ た で あ ろ う 箇 所 に は 、 必 ず 口 述 筆 記 さ れ た 痕 跡 を 残 し て い た に も か か わ ら ず 、 第 三 章 後 半 の 真 観 房 の 範 囲 に 関 し て は そ の よ う な 跡 は 見 出 せ な い 。 真 観 房 の 範 囲 に 見 ら れ る 多 く の 書 き 込 み は 、 全 て 文 章 の 挿 入 や 書 き 換 え 等 の 訂 正 で あ り 、 第 一 章 や 第 二 章 で 見 た よ う な 口 述 筆 記 の 状 況 を 表 す 書 き 間 違 い で は な い 。 こ の こ と は 少 な く と も 安 楽 房 の 範 囲 に 存 在 し て い た 口 述 者 が 真 観 房 の 範 囲 で は い な く な る こ と を 意 味 す る 。 突 然 の 交 替 と い う 状 況 を 考 え 合 わ す と 、 安 楽 房 は 真 観 房 の 口 述 を 筆 記 し て い た が 、 後 半 で は 真 観 房 自 身 が 筆 を 取 り 始 め た と い う 状 況 を 考 え る の が 最 も 合 理 的 で あ ろ う 。 し か し な が ら こ の こ と は 定 説 と な っ て い る ﹃選 擇 集 ﹄ の 執 筆 状 況 と は 別 の 状 況 を 想 定 し な け れ ば な ら ず 、 真 観 房 の 筆 の 範 囲 全 体 、 す な わ ち 第 三 章 後 半 か ら 第 十 二 章 、 及 び 第 十 六 章 を 考 察 し た 上 で 改 め て 論 じ な け れ ば な ら な い 大 き な 問 題 だ と 考 え る 。 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 八 号 (二 〇 〇 〇 年 三 月 ) 注 ( 1 ) 湯 山 明 ﹁ 仏 教 文 献 学 の 方 法 試 論 ﹂ 、 ﹃ 水 野 弘 元 博 士 米 寿 記 念 論 集 パ ー リ 文 化 学 の 世 界 ﹄ 、 平 成 二 年 六 月 、 春 秋 社 参 照 。 ( 2 ) 現 存 の ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ 諸 本 は 、 全 て 逆 修 法 会 そ の も の の 記 録 と し て で は な く 、 後 の 時 代 に 書 物 と し て ま と め ら れ た も の で あ る 。 し た が っ て 現 状 で は ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 原 初 形 態 と し て 扱 う こ と が で き る 文 献 は 存 在 し な い 。 現 存 す る 資 料 の 中 で 最 も 信 頼 で き る 古 本 系 の ﹃逆 修 説 法 ﹄ を 資 料 と し て 用 い る こ と と す る 。 ( 3 ) 拙 稿 ﹁廬 山 寺 蔵 ﹃選 択 集 ﹄ の 草 稿 的 位 置 づ け を め ぐ っ て ﹂ 、 ﹃佛 教 文 化 研 究 ﹄ 第 四 十 二 ・ 四 十 三 合 併 号 、 平 成 十 年 九 月 、 浄 土 宗 教 学 院 参  Q ,o m , ( 4 ) 資 料 の 中 で ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 箇 所 に は 、 現 存 す る 古 本 系 の ﹃逆 修 説 法 ﹄ を も と に 科 段 に 分 け 、 そ の 科 段 の 番 号 と 項 目 名 を 挙 げ て お く 。 ま た 、 便 宜 上 ﹃昭 和 新 修 法 然 上 人 全 集 ﹄ (石 井 教 道 篇 、 昭 和 三 十 年 三 月 、 平 楽 寺 書 店 。 ) の 頁 数 及 び 行 数 を 明 記 し て お く 。 尚 、 以 下 の 第 二 章 、 第 三 章 に お い て も 同 じ 方 法 で 作 成 し た 資 料 を 挙 げ る 。 ( 5 ) ﹃昭 法 全 ﹄ 二 七 〇 頁 十 二 行 目 ∼ 。 ( 6 ) ﹃昭 法 全 ﹄ 二 七 〇 頁 十 四 行 目 ∼ 。 ( 7 ) 現 存 ﹃逆 修 説 法 ﹄ で は こ の 間 に ﹁ 浄 土 門 ﹂ に つ い て 記 さ れ た 部 分 が 一 行 存 在 す る 。 し か し 、 他 の 内 容 的 な 一 致 を 考 慮 す れ ば 、 ﹃逆 修 説 法 ﹄ を 逐 一 書 写 す る の で は な く 、 必 要 箇 所 の み を 書 写 し て い た と 考 え ら れ る 。 ( 8 ) 見 せ 消 ち さ れ た 文 章 と 、 続 く ﹁ 次 往 生 浄 土 ﹂ の 間 に は 先 に 見 せ 消 ち を お こ な っ た で あ ろ う こ と を 示 唆 す る わ ず か な ス ペ ー ス が 存 在 す る 。 こ の こ と か ら 考 え る と 、 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 執 筆 時 に 参 照 し た も の の 間 違 い を 踏 襲 し て 後 に 訂 正 し た の で は な く 、 執 筆 の 時 点 で 初 め て 起 こ っ た 間 違 い で あ る こ と を 示 し て い る 。 ( 9 ) わ ず か に 見 ら れ る 書 き 込 み を 見 る と 、 第 九 丁 裏 一 行 目 に ﹁ 三 乗 者 即 是 聖 道 門 意 也 浄 土 者 即 是 浄 土 門 (○ 意 ) 也 ﹂ と あ り ﹁ 意 ﹂ が 後 か ら 挿 入 さ れ て い る 。 ﹁ 聖 道 門 ﹂ に は ﹁意 ﹂ が 記 さ れ て い る こ と か ら 、 そ ち ら 一 三

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﹃選 擇 集 ﹄ と ﹃逆 修 説 法 ﹄ (兼 岩 和 広 ) に 統 一 し た の で あ ろ う 。 そ こ で こ の 文 章 と 対 応 す る ﹃逆 修 説 法 ﹄ を 見 て み る と 、 ﹁ 此 中 三 乘 者 即 聖 道 門 也 淨 土 即 淨 土 門 也 ﹂ と あ り ﹁ 意 ﹂ の 文 字 は 伝 承 さ れ て い な い 。 ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 執 筆 時 に ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ を 参 照 し 、 ﹃選 擇 集 ﹄ に は ﹁ 意 ﹂ を 含 ん だ 文 章 と し て 記 す つ も り で あ っ た が 、 そ の 参 照 し た 資 料 に つ ら れ て ﹁意 ﹂ を 抜 か し て し ま っ た と 考 え ざ る を 得 な い 。 少 な く と も こ の ミ ス は 文 章 の 体 裁 を 整 え る た め に 書 き 換 え ら れ た も の で あ る こ と に 違 い な い 。 ( 10 ) ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ 第 一 章 に お い て 、 ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ と 対 応 し な い 箇 所 の 中 に は 、 ﹃往 生 論 註 ﹄ や ﹃ 西 方 要 決 ﹄ と い っ た 法 然 の 著 作 以 外 の 引 用 が み ら れ る が 、 そ の 部 分 に 関 し て は ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ に 送 り が な 、 返 り 点 等 が 無 い こ と か ら 考 え る と 、 お そ ら く は 原 典 か ら 引 用 さ れ た で あ ろ う か ら こ こ で の 考 察 に は 含 ま な い 。 ( 11 ) ⑥ ﹁純 雑 の 義 の 証 拠 を 明 か す ﹂ 部 分 は 、 内 容 的 に ﹃選 擇 集 ﹄ 全 体 に 見 ら れ る ﹁他 宗 へ の 配 慮 ﹂ と し て の 文 章 で あ る と 考 え ら れ 、 ⑧ ﹁ 雑 を 捨 て 専 を 修 す こ と を 明 か す ﹂ 部 分 は ﹁ ま と め ﹂ の 文 章 で あ り 、 比 較 の 対 照 と し な い 。 (12 ) ﹁ 五 番 相 対 ﹂ の 第 三 無 間 有 間 対 を 明 か す 部 分 に ﹃観 経 疏 ﹄ の 引 用 に 関 す る 書 き 込 み が 見 ら れ る 。 ﹁廬 山 寺 本 ﹂ で は 始 め ﹁故 云 若 後 雜 即 心 常 間 断 ﹂ と 記 し て い た も の を 、 後 に ﹁若 後 雜 即 ﹂ を 削 除 し て 、 ﹁心 常 間 断 ﹂ の み を 残 し て い る 。 削 除 し て い る 部 分 を 詳 細 に 見 る と 、 ﹁ 行 ﹂ の 字 を 挿 入 し た り 、 ﹁若 ﹂ や ﹁ 雜 ﹂ の 文 字 を 見 せ 消 ち で 消 し た り と 、 何 度 か 手 が 加 え ら れ て い る こ と が 分 か る 。 さ ら に 同 じ 箇 所 で は 一 度 挿 入 し た 後 に 、 塗 り つ ぶ し て 削 除 し て い る も の が ニ カ 所 み ら れ る が 、 か す か に 残 る ル ビ の 状 況 か ら ﹁疏 ノ 上 ノ 文 }こ と 記 そ う と し た こ と が 推 測 さ れ 、 執 筆 時 点 で 未 だ 訂 正 を 加 え る べ き 要 素 が あ っ た こ と が 伺 え る 。 し か し 、 い つ れ の 訂 正 に し て も ﹃観 経 疏 ﹄ の 引 用 に 関 し て で あ り 、 ﹃観 経 疏 ﹄ の 引 用 に 関 す る 部 分 の み 、 原 点 か ら 再 確 認 し た こ と に よ っ て な さ れ た 書 き 込 み で あ る と 考 え ら れ る 。 (13 ) ﹃昭 法 全 ﹄ 二 七 二 頁 四 行 目 ∼ 。 ( 14 ) ﹃法 然 上 人 行 状 畫 圖 ﹄ 巻 第 十 一 (井 川 定 慶 篇 ﹃法 然 上 人 伝 全 集 ﹄ 、 四 一 四 九 ∼ 五 〇 頁 ) 。 ﹃決 疑 鈔 直 牒 ﹄ ( ﹃浄 全 ﹄ 七 巻 、 五 四 七 上 、 八 ∼ 十 五 行 目 ) 。 (15 ) ﹁廬 山 寺 本 ﹂ 二 十 八 丁 表 四 行 目 ∼ 二 十 八 丁 裏 四 行 目 。 (16 ) ﹁廬 山 寺 本 ﹂ 二 十 八 丁 裏 五 行 目 ∼ 三 十 丁 表 七 行 目 。 ( 17 ) こ の 箇 所 の ﹃ 無 量 寿 経 ﹄ の 引 用 は ﹁ 五 七 日 ﹂ 5 1 3 ﹁ 弥 陀 の 選 択 を 明 か す ﹂ 部 分 に も 一 部 略 し て 繰 り 返 さ れ る 。 ( 18 ) ﹃ 逆 修 説 法 ﹄ 当 時 の 状 況 を 考 え る な ら ば 、 ﹁ 三 七 日 ﹂ に お い て 説 か れ た 内 容 を ﹁ 五 七 日 ﹂ に 再 度 詳 し い 形 で 説 法 さ れ た こ と に な り 、 説 法 者 で あ る 法 然 は 共 に 同 じ 資 料 に 基 づ い て い る は ず で あ る 。 し か し な が ら 、 ﹁ 三 七 日 ﹂ ﹁ 五 七 日 ﹂ 両 者 の 内 容 を ﹁ 廬 山 寺 本 ﹂ が 伝 承 し て い る こ と を 考 え る な ら ば 、 執 筆 時 に は 既 に ﹃逆 修 説 法 ﹄ の 筆 録 を 参 照 し て い た こ と に な り 、 法 然 が ﹃逆 修 説 法 ﹄ を し た 元 の 資 料 に 基 づ い て い る と は 考 え ら れ な い 。 (19 ) ﹁廬 山 寺 本 ﹂ 二 十 九 丁 表 六 行 目 ∼ 二 十 九 丁 裏 二 行 目 。 (20 ) ﹁廬 山 寺 本 ﹂ 二 十 九 丁 裏 二 行 目 ∼ 四 行 目 。 (か ね い わ か ず ひ ろ 文 学 研 究 科 仏 教 学 専 攻 博 士 後 期 課 程 ) 一 九 九 九 年 十 月 十 五 日 受 理

参照

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