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中央学術研究所紀要 第32号 048杉浦孝蔵「森林文化論 -森林と人とのかかわり-」

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Academic year: 2021

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全文

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森林と人とのかかわり

はじめに

I 森 林 と 文 化

1 森 林 の 概 念

2 文 化 の 概 念

3 森 林 文 化

H 森 林 文 化 論

1 我 が 国 の 森 林

2 森 林 の 機 能

3 森 林 資 源 の 多 目 的 利 用

m 森 林 文 化 の 持 続 性

1 多 目 的 機 能 持 続 の た め の 諸 作 業

2 森 林 資 源 を 活 用 し た 体 験 学 習

3 森 林 ・ 林 業 の 理 解

おわりに

は じ め に 森 林 と 人 類 の か か わ り は 、 人 類 が 地 球 上 に 誕 生 し た 時 点 か ら は じ ま っ た と 推 察される。 地 球 上 に は 、 草 原 、 森 林 、 湖 沼 、 河 川 、 海 洋 な ど の 資 源 が 存 在 す る 。 人 類 は 、 資 源 の 多 少 に か か わ ら ず 当 初 は 、 生 活 を 維 持 す る た め に 、 第 一 に 食 糧 を 確 保 し 、 住 居 を っ く り 、 さ ら に 衣 服 を 必 要 と し 生 活 を 維 持 し た で あ ろ う 。 自 然 の 巨 大 な 産 物 で あ る 森 林 お よ び 森 林 地 域 に は 、 草 原 ・ 湖 沼 や 河 川 も 存 在 し 、 そ こ に は 動 植 物 を は じ め 、 多 様 な 資 源 が 豊 富 に 存 在 して い た と 推 察 さ れ る 。 森 林 文 化 と 言 え ば 、 一 般 に は 第 3 次 産 業 の 視 点 か ら 検 討 し た 森 林 資 源 の 利 用 論 が 中 心 で あ る 。 し か し 、 森 林 資 源 を 持 続 的 に 利 用 す る に は 、 資 源 の 育 成 、 管 理 す な わ ち 、 産 業 面 か ら の 考 察 も 必 要 不 可 欠 で あ る と 考 え る 。 し た が っ て 、 本 報 も 森 林 資 源 を 総 合 的 に と ら え 、 今 日 的 視 点 か ら 我 が 国 森 林 の 持 続 的 利 用 の 在 り 方 を 検 討 す る 。 4 8

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森林文化論 I 森 林 と 文 化 森 林 と 文 化 に 触 れ る 前 に 、 森 林 の 概 念 を 示 す。 1 森 林 の 概 念 森 林 の 定 義 に つ い て は 、 諸 説 あ る が 、 一 般 的 な 概 念 と し て は 、 森 林 の 主 体 は 樹 木 で あ り そ れ は 密 生 して い る ( 樹 木 の 群 落 ) 状 態 1 ) で あ る 。 さ ら に 、 森 林 に は 動 物 や 土 壌 生 物 も 含 ま れ る ( 生 物 の 生 息 戸 。 一 方 、 林 学 的 な 視 点 は 、 同 じ 樹 木 の 群 落 で も そ れ は 高 木 で あ る 呪 そ し て 、 森 林 法 に よ る と 、 森 林 は 樹 木 が 集 団 で 生 育 し て い る 土 地 お よ び そ の 土 地 の 上 に あ る 立 木 竹 も 含 ま れ る 。 要 す る に 、 森 林 と は 高 い 樹 木 ( 林 木 ) が 広 範 囲 に わ た っ て 生 育 し て い る 状 態 と 土 地 ( 林 地 ) お よ び そ の 土 地 に 生 自 、 して い る 樹 木 を 含 め た あ ら ゆ る 生 物 の 生 息 状 態 の 総 称 と 考 える 。 2 文 化 の 概 念 広辞苑4)によると、文化とは「世の中が進歩し文明になること」。また、「人間 が 学 習 に よ っ て 、 社 会 か ら 習 得 し た 生 活 の 仕 方 の 総 称 」 。 ま た 、 「 衣 食 住 を け じ め 技 術 ・ 学 問 ・ 芸 術 ・ 道 徳 ・ 宗 教 な ど 物 心 両 面 に わ た る 生 活 形 式 の 様 式 と 内 容 を 含 む 」 と あ る 。 筆 者 は 「 人 間 が 社 会 生 活 を と お し て 学 習 し 、 そ の 結 果 を 自 然 に 働 き か け 、 自 然 か ら 得 ら れ た 衣 食 住 を は じ め と す る 技 術 ・ 学 問 ・ 芸 術 ・ 宗 教 ・ 政 治 な ど の 物 心 両 面 の 成 果 を 再 び 社 会 生 活 に 活 用 す る こ と に よ っ て 、 社 会 が 改 善 さ れ 、 過 去 よ り 一 層 安 楽 な 社 会 生 活 が 形 成 さ れ る こ と 」 と 考 え る 。 3 森 林 文 化 筒 # 5 ) は 、 森 林 文 化 と は 人 間 と 森 林 が ひ と つ に 融 け 合 っ てっ く り あ げ た 文 化 で あ る 。 人 間 と 森 林 が 融 け 合 う 関 係 と は 、 「 自 然 」 と して の 森 林 ( 山 と 木 ) を 畏 れ 、 尊 び 、 愛 し 、 そ の 森 林 の 自 然 性 を 活 か す こ と に 人 間 の 生 き が い を 見 出 し 、 ま た 、 そ の 山 と 木 を 人 の 暮 ら し の 中 で 活 か す 方 法 や 仕 組 み を つ く る 関 係 の こ と で あ る 。 そ し て 、 こ の 関 係 を っ く り 維 持 す る た め に 投 じ た 精 神 的 営 為 ( 知 恵 や 工 夫 ) の 総 体 を 「 森 林 文 化 」 と 定 義 して い る 。 ま た 、 林 業 白 書 6 ) は 「 森 林 や 木 材 と 密 接 な か か わ り の 中 で 森 林 を 保 全 し な が ら こ れ を 有 効 に 利 用 し て い く た め の 知 恵 や 技 術 、 制 度 及 び こ れ ら を 基 礎 と し た 生 活 様 式 」 を 森 林 文 化 と 呼 んで い る 。 筆 者 は 、 森 林 文 化 は 一 言 で 表 現 す れ ば 「 人 類 が 地 球 上 に 誕 生 し て 以 来 、 今 日 ま で の 森 林 と 人 類 の か か わ り で あ る 」 と 考 え る 。 す な わ ち 、 人 類 が 地 球 上 に 誕 生 し 1)新村出編(1971):広辞苑、岩波書店、1166頁 2)広井敏男(1972):万有百科大事典(植物)、小学館、335∼336頁 3 ) 木 平 勇 吉 編 ( 相 場 芳 憲 ) ( 1 9 9 4 ) : 森 林 科 学 論 、 朝 倉 書 店 、 1 ∼ 2 頁 4)新村出編(1971):広辞苑、岩波書店、1976頁 5 ) 筒 井 迪 夫 ( 1 9 9 5 ) : 森 林 文 化 へ の 道 、 朝 日 新 聞 社 、 8 頁 6)林野庁(2001):平成12年度林業白書、日本林業協会、229頁 49

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て 以 来 、 生 存 す る た め の 基 本 的 な 生 活 資 源 で あ る 「 衣 ・ 食 ・ 住 」 は 森 林 を 中 心 と し た 自 然 か ら 求 め た が 、 一 方 、 森 林 ( 自 然 ) は 野 生 鳥 獣 を リ = 1 心 と し た 動 物 の す み か で も あ り 常 に 危 険 と の 戦 いで あ っ た 。 こ の よ う に 、 人 間 に と っ て は 「 衣 ・ 食 ・ 住 」 を 求 め な が ら 学 習 に よ っ て 社 会 と 森 林 と の か か わ り を 維 持 し 、 一 部 は 人 間 の 精 神 的 な 修 練 の 場 と し て 森 林 を 求 め 、 そ れ ぞ れ の 生 活 様 式 に 反 応 し な が ら 森 林 と の 共 生 を 求 め て き た 。 さ ら に 、 最 近 で は 、 「 レ ジ ャ ー 」 を 加 え た か か わ り も 森 林 文 化 で あ る と 考 える 。 Ⅱ 森 林 文 化 論 森 林 と 人 間 の か か わ り を 検 討 す る た め に は 、 我 が 国 の 森 林 を 理 解 す る こ と が 必 要 で あ る の で、 そ の 概 要 を 記 す。 1 我 が 国 の 森 林 我が国の森林資源7)をみると、面積は全体で約2、515万haで国土面積の約 67%を占めている。その内訳は、国有林が784万ha、公有林が273万haおよび私 有林の約1、457万haで、私有林が森林全体の58%を占めている。次に蓄積をみる と、全体で34億8、323万m3である。その内訳は、国有林が9億1、207万m3、公 有林が3億5、906万m3および私有林の:2?2億1、210万m3で私有林が面積同様に 蓄積も全体の約64%を占めている。また、人工林が総面積で1、040万ha(国有 林:245万ha、公有林:121万ha、私有林:674万ha)、蓄積は全体で18億9、199 万m3(国有林:2億9、223万m3、公有林:1億9、859万m3、私有林:14億117 万m3)である。これに対して、天然林の総面積は1、338万haで(国有林:474万 ha、公有林:143万ha、私有林721万ha)その蓄積は全体で1E5fjl9、002万m3(国 有林:(5億1、871万m3、公有林:1億6、042万m3、私有林:S3億1、089万m3) である。一方、無立木地が全体で面積は121万4千ha(国有林:66万ha、公有 林:8万3千ha、私有林:47万1千ha)、さらに竹林が全体で15万2千ha(公 有林:5千ha、私有林:14万7千ha)を占めている。 こ の よ う な 森 林 に 対 し 、 国 民 は ど の よ う な 期 待 を し て い る の か 推 察 す る と 図 18)に示すとおり、その内容は多様化している。すなわち、1980年は木材生産に 対 す る 期 待 は か な り 高 か っ た が 、 そ の 後 は 減 少 す る 一 方 で あ る 。 こ れ に 対 して 、 災 害 防 止 な ど 国 土 保 全 機 能 や 水 資 源 か ん 養 機 能 な ど は 引 き 続 き 期 待 が 大 き い 。 特 に 近 年 は 地 球 温 暖 化 防 止 、 大 気 浄 化 、 騒 音 緩 和 な ど 地 球 規 模 で の 環 境 問 題 に 期 待 が 高 ま っ て い る 。 こ の よ う に 、 森 林 に 対 す る 国 民 の 要 請 は 、 経 済 社 会 の 発 展 に 伴 い 今 後 も 一 層 多 様 化 、 高 度 化 して い く と 考 え ら れ る 。 7)林野庁(2003):平成14年度森林・林業白書、日本林業協会、190頁 8)林野庁(2001):平成12年度林業白書、日本林業協会、51頁 50

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(順位) 2 3 4 5 6 7 8 G J 1980 1986 1993 1999年 災害防止 水資源かん養 大気浄化・ 騒音緩和 野生動植物 野外教育 保健休養 林産物生産 木材生産 0 温 暖 化 防 止 資料:内閣府「森林・林業に関する世論調査」(昭和55年)、「みどりと木に関する世論調査」 (昭和61年)、「森林とみどりに関する世論調査」(平成5年)、「森林と生活に関する世論 調査」(平成11年) 注 : 1 ) 回 答 は 、 選 択 肢 の 中 か ら 3 つ を 選 ぶ 複 数 回 答 で あ り 、 期 待 す る 割 合 の 高 い も の か ら 並べている。 2)選択肢は、特にない、わからない及びその他を除き記載している。 図 1 森 林 に 対 す る 期 待 の 推 移 し た が っ て 、 林 野 庁 は 国 有 林 野 を 対 象 に 国 民 の ニ ーズ に 応 え る た め に 、 従 来 の4つ(森林空間利用林:64万ha、自然維持林:141万ha、国土保全林:143万 ha、木材生産林:413万ha)の機能類型区分を3つ(水土保全林:約390万ha、 森林と人との共生林:約200万ha、資源の循環利用林:約160万ha)に区分し 1 9 9 9 年 か ら 区 分 に 応 じ た 森 林 整 備 に 取 り 組 んで い る 。 我 が 国 全 体 の 基 本 計 画 で は、それぞれ1、300万ha、550万haおよび660万haと見込んでいる。 2 森 林 の 機 能 森 林 は 整 備 さ れ て 健 全 な 形 で 存 在 す れ ば 、 そ れ ぞ れ の 機 能 を 果 た し て い る と 推 察 さ れ る 。 し か し 、 機 能 に 関 す る 視 点 や 評 価 等 は 、 社 会 や 経 済 情 勢 お よ び 国 民 の 認 識 に よ って 異 な る 。 林 野 庁 は 、 森 林 の 多 面 的 機 能 を 森 林 所 有 者 お よ び 国 民 に わ か り や す く 示 す 手 法の一っとして、森林の公益的機能の経済評価に取り組み、1972年に第1回(表 1)9)、1981年に第2回(2r5sJじ4、300億円丿、1991年に第3回(;39兆2、000億円) そして、2000年に第4回(表1)1o)の試算結果を公表している。 9)杉浦孝蔵(1985):森林の公ji益性について、全測連、17巻4号、全国測量業団体連合会、7 16頁 10)林野庁(2001):平成12年度林業白書、日本林業協会、52∼53頁 51

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表1森林の公益的機能の評価額(年間) (単位:億円)

ズjJよ/こ

1972年(゛ 2000年o 帽 考 水 資 源 か ん 養 16,100 271,200 森 林 の 土 壌 が 、 降 水 を 貯 留 し 、 河 川 へ 流 れ 込 む 水 の 量 を 平 準 化 し て 洪 水 、 渇 水 を 防 ぎ 、 さ ら に そ の 過 程 で 水 質 を 浄 化 す る 役 割 土 砂 流 出 防 止 22,700 282,600 森林の下層植生や落葉枝が地表の浸食を抑制する 役割 土 砂 崩 壊 防 止 500 84,400 森 林 が 根 系 を 張 り 巡 らす こ と に よ って 土 砂 の 崩 壊 を防ぐ役割 保 健 休 養 22,500 22,500 森 林 が 人 に や す ら ぎ を 与 え 、 余 暇 を 過 ご す 場 と し て 果 た し て い る 役 割 野 生 鳥 獣 保 護 17,700 37,800 森 林 が 果 た し て い る 野 生 鳥 獣 の 生 息 の 場 と し て の 役 割 酸素供給・大気浄化 48,700 E51,400③ 森林がその成長の過程で二酸化炭素を吸収し、酸素 を供給している役割 合 計 128,200 749,900 注 ①「森林の公益的機能計量化調査」に基づく林野庁計画課試算(昭和47年10月)。公益的機能を数量的 に評価する一手法として試算したものである。 ② 資 料 : 林 野 庁 業 務 資 料 ・ 1)評価額については、林野庁が独自の資料等によって「森林がないと仮定」した場合と、現存する 森林を比較することにより算出したもの。 2)森林の有する公益的機能については、地形条件、気象条件及び森林の種類などにより発揮される 効 果 は 異 な り 、 ま た 、 洪 水 や 渇 水 を 防 ぐ 役 割 に つ いて は 、 人 為 的 に 制 御 で き な い た め 、 期 待 さ れ る 時に必ずしも常に効果が発揮されるものではないことに留意する必要がある。 ③2000年では、「酸素供給・大気浄化」を「大気保全」と呼称。 すなわち、当初の評価額は12JU18、200億円であったが、28年後には約75兆円と な っ た 。 保 健 休 養 以 外 は 試 算 の た び に 評 価 額 は 大 き く な っ た 。 2 0 0 0 年 の 評 価 額 を 国 民 1 人 当 た り に 換 算 す る と 、 国 民 は 年 間 約 6 0 万 円 相 当 の 恩 恵 を 受 け て い る ことになる。 林 野 庁 で は 、 現 時 点 で は 定 量 的 評 価 手 法 が 十 分 に 確 定 さ れ て い な い こ と な ど か ら 、 幅 広 い 学 術 分 野 か ら 農 業 お よ び 森 林 の 多 面 的 機 能 の 評 価 に つ いて、 2 0 0 0 年12月に農林水産省から日本学術会議に諮問を行った。その結果、2001年11月 に 「 地 球 環 境 ・ 人 間 生 活 に か か わ る 農 業 及 び 森 林 の 多 面 的 な 機 能 の 評 価 に つ い て」の答申を受けた。 すなわち、答申は11)、人類の登場以前から形成されている森林が、本質的には 人 類 生 存 の 前 提 と な る 自 然 環 境 の 一 部 を 構 成 して い る こ と に 触 れて い る 。 ま た 、 森 林 は 「 存 在 す る こ と 」 だ け で な く 「 利 用 さ れ る こ と 」 に よ っ て も 人 類 の 生 活 向 上 と 社 会 発 展 に 貢 献 し て い る こ と 、 日 本 人 の 生 活 と 精 神 ・ 文 化 に も 大 き な 影 n)林野庁(2002):平成13年度森林・林業白書、日本林業協会、54∼55頁 52

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森林文化論 響 を 与 えて き た こ と に つ い て 言 及 して い る 。 要 す る に 、 森 林 の 公 益 的 機 能 は 上 記 の よ う に 肉 視 不 可 能 な 面 も あ る が 、 森 林 が 存 続 す る 限 り 表 1 に 示 す よ う に 1 日 も 休 む こ と な く 永 久 に 発 揮 さ れ る も の で あ り 、 そ の 価 値 は 極 め て 高 い も の で あ る と い え る 。 3 森 林 資 源 の 多 目 的 利 用 森 林 資 源 の 多 目 的 利 用 を 検 討 す る た め に 、 生 活 の 基 本 的 事 項 と し て 、 衣 服 ・ 食 糧 ( 薬 草 を 含 む ) ・ 住 居 を 中 心 に 平 常 の 生 活 と 冠 婚 ・ 葬 祭 な ど の 7 項 目 を 挙 げ、 さ ら に 、 森 林 お よ び 森 林 地 域 に 賦 存 す る 資 源 と し て 、 動 物 、 植 物 ( 菌 類 を 含 む ) お よ び 鉱 物 を 取 り 上 げ た ( 表 2 ) 。 生 活 素 材 は 、 こ れ ら 資 源 が 現 在 利 用 さ れ て い る 状 況 と 往 時 に 利 用 さ れ た で あ ろ う と み な さ れ る も の を 含 め て 検 討 し た が 、 森 林 資 源 と 人 類 の か か わ り は こ れ が す べ て で は な い の で 、 別 途 改 め て 検 討 したい。 1 ) 衣 服 衣 服 は 、 元 来 は 暑 さ 、 寒 さ 、 風 雨 な ど の 気 象 災 害 を 防 ぎ 、 さ ら に 刺 の あ る 植 物 あ る い は 蛇 や 蜂 な ど か ら 身 体 を 守 る の が 目 的 で 、 実 用 性 の も の で あ っ た が 、 そ の 後 人 間 社 会 の 変 遷 や 経 済 活 動 な ど の 変 化 に よ り 、 装 飾 を 兼 ね だ り 、 フ ア ツ 表2森林資源と生活のかかわり 対象資源 生 活 の 基 本 的 事 項 と 素 材 衣 服 食 糧 住 居 光 熱 什 器 冠婚葬祭 娯楽・スポーツ 動 物 A:天蚕、 獣 皮 、 獣 毛 などの天然 繊 維 D:哺乳類、 鳥 類 、 ㈹ 虫 類、両生類、 魚 類 、 甲 殻 類 、 昆 虫 類 な ど の 天 然 産 物 G:羊毛 J:野生獣 類の油脂 M : 貝 U 街 乳 類 の 骨 P:哺乳類 お よ び 魚 類 の 天 然 産 物 S:哺乳類、 鳥 類 、 魚 類 な どの 天 然 産物 植 物 B:草本の 茎 お よ び 樹 皮 な どの 天 然繊維 E:草本、 木 本 植 物 の 茎 葉 、 花 、 実 、 根 系 お よ び き の こ な ど の 天 然 産 物 H:草本の 茎( )、葉、 樹 木 の 幹 お よ び 皮 な ど の天然およ び人工的産 物 K:草本、 木本桔物の 脂 、 実 、 樹 木 の 幹 な ど の天然およ び人工的産 物 N:樹木の 葉 、 枝 、 幹 などの天然 お よ び 人 工 的産物 Q:樹木の 葉、実およ び幹などの 天然産物 T:草本、 木 本 植 物 お よび草本、 樹 木 の 実 や 幹 な どの 天 然 お よ び 人 工的産物 鉱 物 C:石油、 石炭などの 天然産物を 素材とした 人 工 的 繊 維 F : 天 然 の 水 、 氷 T:大理石、 鉄 平 石 、 粘 土 な どの 天 然産物およ び粘土など の 天 然 産 物 を素材とし た、れんが、 瓦 な どの 人 工的産物 L:石油、 ガス、亜炭、 石 炭 の 天 然 産 物 ○:石、大 理 石 な どの 天然産物、 粘 土 な どの 天然産物お よび粘土な どを素材と した人工的 産物 R:石、大 理 石 な どの 天 然 産 物 お よび人工的 産物 U:石、大 理 石 な どの 天 然 産 物 お よび人工的 産物 53

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シ ョ ン 性 を 備 え る も の ま で み ら れ る よ う に な っ て 今 日 に 至 っ て い る 。 こ こ で は 、 帽 子 、 手 袋 、 履 物 な ど 身 体 に つ け る も の は 含 め ず 、 身 体 の 躯 幹 部 に 着 装 す る も の を 対 象 と し た 。 A : 衣 服 の 素 材 は 、 天 然 繊 維 と し て 動 物 性 の も の を 挙 げ る と 、 ① 天 蚕 ( ヤ マ マ ユ ) 、 ② 獣 皮 や 魚 皮 な ど が あ る 。 獣 皮 は ク マ 、 シ カ 、 ノ ウ サ ギ 類 を は じ め 哺 乳 類 が 多 か っ た が 、 現 在 は ヒ ツ ジ 類 の 人 工 飼 育 さ れ た も の も 資 源 と し て 利 用 し て い る 。 魚 皮 は 、 ア ム ー ル 川 や 西 シ ベ リ ア の オ ビ 川 、 ア ラ ス カ の ユ ー コ ン 川 な ど 大 河 川 流 域 の 漁 労 民 が 使 用 し て い た と 言 う 1 2 ・ 1 3 ) 。 サ ケ、 コ イ、 ナ マ ズ や チ ョ ウ ザ メなど大型魚類が資源とされていた12・13)。 B : 植 物 性 の も の は 、 日 本 の 代 表 的 な 織 物 で あ る ① 芭 蕉 布 ( バ シ ョ ウ の 偽 茎 ) 、 ② 布 ( ク ズ の つ る ) 、 ③ 科 布 ( シ ナ ノ キ の 樹 皮 ) を は じ め ア オ ソ 、 ア サ 、 ク ワ の 皮 や ワ タ 種 子 の 毛 な ど が あ る 。 そ の 他 珍 し い も の と し て は 、 ゼ ン マ イ の 綿 毛 を 用 い た 織 物 も あ る 。 C : 鉱 物 性 を 素 材 と し た も の に は 、 石 油 、 石 炭 な ど か ら 作 る 合 成 繊 維 が あ る 。 現 代 の 衣 服 繊 維 は 大 部 分 が こ の 人 造 繊 維 で あ る 。 2 ) 食 糧 食 糧 は 、 現 代 の 科 学 で は 生 物 の 生 存 上 に 必 要 不 可 欠 な も の で あ る 。 し た が っ て 、 食 糧 を 獲 得 す る に は 、 推 定 不 能 な 多 く の 人 々 の 犠 牲 が あ っ て 今 日 に 至 っ て い る 。 そ こ で 、 こ の 食 文 化 を 継 承 す る よ う に 務 め な け れ ば な ら な い と 考 え る 。 D : 森 林 地 域 に 賦 存 し て い る 動 物 関 係 で 、 食 糧 と し て 利 用 さ れ て き た 主 な も の を 挙 げ る 。 哺 乳 類 で は 、 イ ノ シ シ 、 エ ゾ シ カ 、 ニ ホ ン ジ カ 、 ニ ホ ン ツ キ ノ ワ グ マ 、 ヒ グ マ 、 タ ヌ キ な ど が 挙 げ ら れ る 。 現 在 も イ ノ シ シ 、 シ カ 類 、 ク マ 類 は 食 糧 と し て 利 用 さ れ て い る 。 鳥 類 を み る と 、 ス ズ メ 、 ツ グ ミ 、 カ モ 類 、 キ ジ や ヤ マ ド リ な ど の 成 鳥 と 卵 が 利 用 さ れ て き た 。 こ の ほ か に 陸 上 動 物 と し て は 、 ㈹ 虫 類 の シ マ ヘ ビ 、 ア オ ダ イ シ ョ ウ 、 マ ム シ や ハ ブ な ど を 食 べ て き た 。 最 近 は 薬 用 と し て の 利 用 が 多 い と 考 え る 。 ま た 、 両 生 類 は 一 般 に 少 な く 食 糧 の 対 象 と さ れ て い た の は 、 ヒ キ ガ エ ル 、 サ ン シ ョ ウ ウ オ で あ ろ う 。 こ れ も 薬 用 と し て の 利 用 も あ っ た と 考 え る 。 昆 虫 類 は 、 イ ナ ゴ の 成 虫 、 ク ロ ス ズ メ バ チ 、 ス ズ メ バ チ や ト ビ ケ ラ の 幼 虫 な ど が 食 べ ら れ て い る 。 12)北海道立北方民族博物館(1991):北海道立北方民族博物館展示解説、北方文化振興会、21∼ 28頁 13)北海道立北方民族博物館(1996):北海道立北方民族博物館総合案内、北海道立北方民族博物 館、18∼22頁 54

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利 用 地 域 も 限 ら れ る が 、 生 息 数 も 減 少 傾 向 に あ る 。 魚 類 と し て 食 べ て い る の は 、 コ イ 、 フ ナ 、 ア ユ 、 ヤ マ メ 、 イ ワ ナ 、 カ ジ カ 、 ア ジ メ ド ジ ョ ウ な ど が 挙 げ ら れ る 。 甲 殻 類 と し て 食 べ て い る の は 、 サ ワ ガ ニ 、 ケ ガ ニ な ど で 少 な い 。 ま た 、 生 息 数 も 激 減 の 傾 向 に あ る 。 E : 植 物 関 係 を み る と 、 利 用 の 種 類 は 動 物 に 比 較 し て 多 い 。 す な わ ち 、 従 来 か ら 農 山 村 地 域 を 中 心 に 植 物 の 山 菜 的 利 用 や 薬 用 と し て の 利 用 が あ る 。 筆 者 は 1 9 8 0 年 頃 か ら 全 国 を 対 象 に 森 林 や 原 野 な ど に 自 生 し て い る 草 本 、 木 本 植 物 の 利 用 状 況 を ア ン ケ ー ト や 現 地 調 査 に よ っ て 取 り ま と め て い る 。 現 状 ま で の 調 査 資 料 を 整 理 す る と 次 の と お り で あ る 。 我 が 国 に は 、 約 1 、 0 0 0 種 1 4 ) の 植 物 が 食 べ ら れ る と 言 わ れ て い る 。 筆 者 は 有 毒 植 物 を 除 い て 、 味 覚 の よ し あ し を 別 に す れ ば 食 用 可 能 種 は 約 2 、 0 0 0 種 と 推 測 し て い る 各地区ごとに主な山菜をみると次のとおりである15j6・17J)。 ○ 北 海 道 地 区 : カ タ ク リ 、 ギ ョ ウ ジ ャ ニ ン ニ ク 、 ア カ ザ お よ び ワ サ ビ は 全 草 を 食 用 に す る が 、 季 節 に よ っ て 、 若 芽 ・ 茎 や 葉 お よ び 根 も 食 用 と し て い る 。 特 徴 的 な も の は 、 ギ ョ ウ ジ ャ ニ ン ニ ク を は じ め エ ゾ ノ リ ュ ウ キ ン カ 、 エ ゾ エ ン ゴ サ ク 、 エ ゾ タ ン ポ ポ お よ び エ ゾ ニ ュ ウ な ど 北 海 道 産 の も の で あ る 。 そ の 他 、 高 山 植 物 と し て も 知 ら れ て い る ク ロ マ メ ノ キ 、 コ ケ モ モ お よ び ツ ル コ ケ モ モ の 実 が 挙 げ ら れ る 。 ○ 来 北 地 区 : カ タ ク リ 、 ア カ ザ 、 ア サ ツ キ 、 ウ ワ バ ミ ソ ウ 、 ギ ョ ウ ジ ャ ニ ン ニ ク 、 ス ベ リ ヒ ユ 、 セ リ お よ び ミ ツ バ な ど は 、 全 草 を 食 用 に す る が 、 若 芽 ・ 葉 ・ 花 お よ び 根 な ど も 食 用 に し て い る 。 サ ン シ ョ ウ 、 フ キ お よ び ワ ラ ビ は 若 芽 ・ 若 葉 の ほ か 季 節 に よ っ て は 根 ( ワ ラ ビ ) 、 花 ( フ キ ) 、 実 ( サ ン シ ョ ウ ) を 利 用 し て い る 。 特 徴 的 な 山 菜 と し て は 、 ア オ ミ ズ 、 ミ ツ バ ア ケ ビ 、 ア サ ッ キ 、 ウ コ ギ 、 ウ ワ バ ミ ソ ウ 、 ギ ョ ウ ジ ャ ニ ン ニ ク 、 ジ ュ ン サ イ 、 ス ペ リ ヒ ユ 、 ゼ ン マ イ 、 バ ン ダ イ キ ノ リ 、 ミ ヤ マ イ ラ ク サ 、 ワ ラ ビ な ど が あ る 。 ○ 北 関 東 地 区 ( 北 関 東 ・ 東 山 ・ 北 陸 ・ 山 陰 地 区 ) : ア カ ザ 、 ウ ワ バ ミ ソ ウ 、 カ タ ク リ 、 セ リ 、 ノ ビ ル 、 ミ ツ バ 、 ユ キ ノ シ タ お よ び ワ サ ビ な ど は 全 草 を 食 用 と す る ほ か 、 若 芽 ・ 茎 ・ 葉 ・ 根 お よ び 花 な ど も 利 用 し て い る 。 サ ン シ ョ ウ は 若 芽 お よ び 実 、 フ キ は 花 、 茎 や 葉 な ど の 利 用 が み ら れ る 。 特 徴 的 な 山 菜 は カ タ ク リ 、 14)宮渾文吾・田中長三郎(1948):有用植物図説、養賢堂、4∼6頁 1 5 ) 杉 浦 孝 蔵 ( 2 0 0 3 ) : 山 菜 資 源 の 活 用 に よる 山 村 地 域 の 振 興 、 日 本 特 用 林 産 振 興 会 、 1 ∼ 2 1 頁 16)杉浦孝蔵(1984):これからの山菜経営、全国林業改良普及協会、110∼132頁 17)杉浦孝蔵(1987):植物生産システム実用事典、フジ・テクノシステム、4∼31頁 18)杉浦孝蔵(1999):山菜文化と地域振興・山林、大日本山林会、N0.1384、24∼35頁 55

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カ ワ モ ズ ク 、 ギ ョ ウ ジ ャ ニ ン ニ ク 、 ゼ ン マ イ 、 ワ ラ ビ な ど が あ る 。 ○ 南 関 東 地 区 ( 南 関 東 ・ 東 海 り 頼 戸 内 地 区 ) : ノ ビ ル 、 ワ サ ビ 、 ア カ ザ 、 ア サ ツ キ 、 カ タ ク リ 、 シ ロ ツ メ ク サ 、 セ リ 、 ド ク ダ ミ 、 ナ ズ ナ 、 バ イ カ モ 、 ミ ツ バ 、 ユ キ ノ シ タ 、 レ ン グ ソ ウ な ど が 全 草 利 用 や 若 芽 ・ 茎 ・ 葉 ・ 花 や 根 を 利 用 し て い る 。 サ ン シ ョ ウ 、 ウ ワ ミ ズ ザ ク ラ 、 ク コ 、 ツ リ ガ ネ ニ ン ジ ン 、 フ キ お よ び ヤ マ ノ イ モ は 、 若 芽 ・ 茎 の ほ か に 花 丿 艮 や 実 な ど の 利 用 が み ら れ る 。 特 徴 的 な 山 菜 と し て は 、 ア シ タ バ 、 イ タ ド リ 、 カ ワ モ ズ ク 、 ワ サ ビ な ど が あ る 。 ○ 四 国 ・ 九 州 地 区 ( 四 国 ・ 九 州 ・ 南 海 地 区 ) : ノ ビ ル 、 ワ サ ビ 、 セ リ 、 タ ネ ッ ケ バ ナ 、 ハ コ ベ な ど は 全 草 を 食 用 と し て い る が 、 若 芽 ・ 茎 ・ 葉 ・ 根 お よ び 花 な ど も 食 用 と し て い る 。 こ の ほ か 、 サ ン シ ョ ウ は 若 芽 ・ 実 を フ キ は 花 ・ 茎 な ど を 食 用 と し て い る 。 特 徴 的 な 山 菜 と し て 、 ア シ タ バ 、 イ タ ド リ 、 オ カ ヒ ジ キ や ム ベ な ど が 挙 げ ら れ る 。 次 に き の こ 類 を 挙 げ る と 、 日 本 産 の き の こ の 推 定 種 数 は 4 、 0 0 0 あ る い は 5 、 0 0 0 種 1 9 ) と い わ れ 、 森 林 内 1 こ は 7 0 0 種 以 上 あ る と さ れ 、 い ず れ も は っ き り して い な い 。 こ の う ち 、 食 用 と し て 用 い ら れ て い る の は 約 1 0 0 種 と 推 測 さ れ る 。 主 な も の を 挙 げ る と 、 ア カ ハ ツ 、 ア ミ タ ケ 、 エ ノ キ タ ケ 、 オ ウ ギ タ ケ 、 オ オ ツ ガ タ ケ 、 オ オ モ ミ タ ケ 、 カ ヤ タ ケ 、 キ ク ラ ゲ 、 キ シ メ ジ 、 キ ヌ ガ サ タ ケ 、 ク ギ タ ケ 、 ク リ タ ケ 、 コ ウ タ ケ 、 サ ク ラ シ メ ジ 、 サ ク ラ シ メ ジ モ ド キ 、 サ マ ツ モ ド キ 、 シ イ タ ケ 、 シ ャ カ シ メ ジ 、 シ モ フ リ シ メ ジ 、 ス ギ ヒ ラ タ ケ 、 ナ メ コ 、 ナ ラ タ ケ 、 ヌ メ リ イ グ チ 、 ヌ メ リ ス ギ タ ケ 、 ハ ツ タ ケ 、 ハ ナ イ グ チ 、 ヒ ラ タ ケ 、 ブ ナ シ メ ジ 、 ブ ナ ハ リ タ ケ 、 ホ ウ キ タ ケ 、 ホ ン シ メ ジ 、 マ イ タ ケ 、 マ ツ タ ケ 、 ム キ タ ケ 、 ム ラ サ キ ナ ギ ナ タ タ ケ 、 ヤ ギ タ ケ 、 ヤ マ ブ シ タ ケ な ど で あ る 。 エ ノ キ タ ケ は カ キ 、 エ ノ キ 、 コ ナ ラ な ど の 枯 木 や 切 り 株 に 発 生 す る 。 キ ク ラ ゲ 、 ク リ タ ケ 、 シ イ タ ケ 、 ナ メ コ 、 ヌ メ リ ス ギ タ ケ 、 サ ク ラ シ メ ジ 、 シ ャ カ シ メ ジ 、 ヒ ラ タ ケ 、 ブ ナ シ メ ジ 、 ブ ナ ハ リ タ ケ 、 ホ ウ キ タ ケ 、 マ イ タ ケ 、 ム キ タ ケ 、 ヤ ギ タ ケ 、 ヤ マ ブ シ タ ケ な ど は 、 ク リ 、 ク ヌ ギ 、 コ ナ ラ 、 ミ ズ ナ ラ 、 ブ ナ な ど の 広 葉 樹 林 内 、 広 葉 樹 の 倒 木 、 切 り 株 な ど に 発 生 す る 。 サ ク ラ シ メ ジ モ ド キ 、 サ ツ マ モ ド キ は ス ギ 、 マ ツ な ど の 針 葉 樹 林 や 腐 朽 木 に 、 ス ギ ヒ ラ タ ケ は ス ギ の 古 い 倒 木 や 切 り 株 に 、 ア カ ハ ツ 、 ア ミ タ ケ 、 ホ ウ キ タ ケ 、 カ ヤ タ ケ 、 ク ギ タ ケ 、 ヌ メ リ イ グ チ 、 ハ ツ タ ケ 、 ム ラ サ キ ナ ギ ナ タ タ ケ は ア カ マ ツ 、 ク ロ マ ツ な ど の マ ツ 林 に 発 生 す る 。 マ ツ タ ケ は ア カ マ ツ 、 ツ ガ 、 エ ゾ マ ツ な ど の 林 内 に 、 オ オ モ ミ タ ケ は ト ド マ ツ 、 ウ ラ ジ ロ モ ミ 林 内 に 、 ア オ ツ ガ タ ケ は ツ ガ 林 内 に 、 ハ ナ イ グ チ は カ ラ マ ツ 林 内 に 、 キ ヌ ガ サ タ ケ は 竹 林 内 に そ れ ぞ れ 発 生 す る 。 オ オ ツ ガ タ ケ は ツ ガ 林 に 、 コ ウ タ ケ 、 シ モ フ リ シ メ ジ 、 ナ ラ タ ケ 、 ホ ン シ メ ジ は 19)今関六也・大谷吉雄・本郷次雄(1996):日本のきのこ、山と渓谷社、15頁 56

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森林文化論 コ ナ ラ 、 ア カ マ ツ な ど 針 広 葉 樹 混 交 林 に 発 生 し て い る 。 ま た 、 エ ノ キ タ ケ、 キ ク ラ ゲ、 シ イ タ ケ、 ナ メ コ 、 ヌ メ リ ス ギ タ ケ、 ヒ ラ タ ケ、 ブ ナ シ メ ジ、 マ イ タ ケ は そ れ ぞ れ 原 木 や 菌 床 栽 培 を 行 っ て い る 。 そ して 、 ヒ ラ タ ケ は 「 し め じ 」 、 ブ ナ シ メ ジ は 「 ほ ん し め じ 」 と して 生 産 出 荷 して い る 。 こ の ほ か に 、 き の こ に は 薬 用 と し て 利 用 さ れ て い る も の が あ る 。 カ ワ ラ タ ケ ( 炎 症 、 腫 瘍 な ど ) 、 チ ョ ウ レ イ マイタ ケ ( 解 熱 、 止 渇 、 利 尿 な ど ) 、 ブク リ ョ ウ ( 鎮 静 ・ 利 尿 な ど ) 、 フ ク ロ タ ケ ( 壊 血 病 予 防 ・ 降 圧 作 用 な ど ) 、 マ ン ネ ン タ ケ (高脂血症・狭心症・不整脈など)2o)などがある。 F : 鉱 物 関 係 の 食 糧 は 極 め て 少 な く 、 天 然 の 水 と 氷 が 挙 げ ら れ る 。 水 は 人 類 の 生 存 上 に 食 糧 と 共 に 飲 料 水 、 調 理 用 の 水 と し て 不 可 欠 な も の で あ る 。 氷 は 天 然 の も の は 夏 期 に 嗜 好 品 と し て 食 べ る が 、 こ れ ら は 、 い ず れ も 天 然 の 降 雨 に よ っ て 得 ら れ る も の で あ る 。 現 在 は 大 部 分 が 人 工 氷 で あ る と 推 測 す る 。 3 ) 住 居 住 居 と は 、 人 間 が 休 養 ・ 睡 眠 ・ 食 事 ・ 排 泄 ・ 入 浴 ・ 教 養 ・ 育 児 ・ 収 納 ・ 接 客 お よ び こ れ ら に 伴 う 家 事 労 働 な ど が 行 わ れ る 建 物 を い う 。 さ ら に 、 衣 服 同 様 に 精 神 的 に 物 理 的 に 個 人 や 家 族 を 気 象 災 害 、 他 種 族 や 野 獣 な ど の 外 敵 か ら 守 る た めの建造物でもある。 し た が っ て 、 住 居 は 建 造 物 の 規 模 、 素 材 や 工 法 な ど は 居 住 者 の 環 境 、 社 会 、 経 済 的 条 件 に よ っ て 大 き く 異 な る 。 G : 動 物 を 素 材 と し た 住 居 は 少 な い が 、 代 表 的 な も の が 「 パ オ 」 で あ る 。 パ オ は モ ン ゴ ル 一 帯 の 遊 牧 民 が 用 い る テ ン ト で 、 楊 柳 や ニ レ の 枝 を 骨 組 み と して 、 そ の 上 に 羊 毛 で つ く っ た フ ェ ル ト を 張 っ た も の で あ る 。 H : 植 物 を 素 材 と し た 住 居 は 極 地 を 除 け ば 世 界 各 地 に 見 ら れ る 。 樹 上 生 活 の 場 合 は 、 樹 木 の 枝 、 樹 冠 を 活 用 し た 簡 易 な も の か ら 、 水 上 生 活 の 船 、 そ し て 陸 上 生 活 で は 、 草 本 植 物 の 葉 、 っ る や 木 本 植 物 の 、 樹 木 の 幹 ( 木 材 ) を 素 材 と した建造物である。 我 が 国 で は 、 植 物 を 用 い た 建 築 は 、 登 呂 、 姥 山 や 最 近 の 丸 山 遺 跡 に 見 ら れ る 竪 穴 住 居 で 、 丸 太 の 柱 を 用 い 、 屋 根 は 樹 皮 や 草 で 葺 い た 「 天 地 根 元 造 」 で あ っ た 。 鉄 器 時 代 は 豪 商 は 高 床 住 宅 を 造 っ た 。 そ し て 、 奈 良 時 代 に は 仏 教 の 伝 来 と と も に 寺 院 建 築 の 大 工 が 渡 来 し 、 法 隆 寺 の 伝 法 堂 や 紫 辰 殿 が 建 築 さ れ 、 平 安 時 代 は 寝 殿 造 で 貴 族 の 住 居 は 桧 皮 葺 き を 用 い た が 、 庶 民 は 板 葺 き 、 卑 賤 は 草 葺 き の 粗 末 な 掘 っ 建 て 小 屋 で あ っ た と い う 。 室 町 時 代 は 書 院 造 り が 見 ら れ 、 江 戸 時 代 に な っ て 数 寄 屋 造 り が 普 及 し た 。 明 治 時 代 に 入 り 洋 風 住 宅 が 出 現 し 、 住 居 に 20)菅原龍幸・服部津貴子(監修)(2001):きのこう建康食材としてー、日本特用林産振興会、24 ∼25頁 57

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大 き な 変 化 が あ ら わ れ た 。 そ し て 、 大 正 時 代 に 入 っ て 洋 風 応 接 間 が 独 立 し 、 接 客 用 と し て 造 ら れ た 。 第 二 次 大 戦 後 は 急 激 に 多 様 化 し 今 日 に 至 っ て い る 。 建 築 の 素 材 は 、 一 般 に ス ギ 、 ヒ ノ キ を 構 造 材 お よ び 造 作 材 と し て い る が 、 寺 や 神 社 な ど は ケ ヤ キ 、 ク リ な ど の 広 葉 樹 林 を 用 い て い る 。 ま た 、 地 域 に よ っ て は 、 カ ラ マ ツ、 ヒ バ 類 、 エ ゾ マ ツ、 ト ド マ ツ な ど を 用 い て い る 。 屋 根 は ス ギ 、 ヒ ノ キ な ど の 樹 皮 、 板 や ス ス キ を 用 い た が 、 現 在 は 鉱 物 的 素 材 に 変 わ っ た 。 I : 鉱 物 を 素 材 と し た 住 居 は 洞 穴 を 利 用 し た も の で 古 く か ら み ら れ た 。 建 築 と し て は 、 中 世 ヨ ー ロ ッ パ に み ら れ た 石 造 建 築 が あ る 。 我 が 国 に も 奈 良 時 代 に 瓦 を 焼 く 職 人 が 渡 来 し た の で 、 寺 院 、 宮 人 や 武 士 の 家 屋 の 屋 根 は 植 物 的 素 材 の ほ か に 瓦 が 用 い ら れ た 。 明 治 時 代 に な っ て 、 洋 風 の 石 造 り や 瓦 造 り の 住 居 が 造 ら れ る よ う に な っ た が 、 一 般 的 に は 植 物 を 素 材 と し た 建 築 で 、 ご く 最 近 に 至 っ て 鉱 物 的 素 材 を 利 用 し た 建 築 が 増 加 し た 。 4 ) 光 熱 人 類 の 誕 生 当 初 は 、 光 熱 は 太 陽 の 明 か り と 日 射 を 利 用 し た と 推 察 さ れ る 。 そ の 後 、 徐 々 に 生 活 を 繰 り 返 し て い く 段 階 で 食 料 を っ く る 熱 と 寒 さ か ら 身 体 を 守 る た め の 暖 を 取 る た め に 天 然 産 物 を 求 め た 。 J : 動 物 を 素 材 と し た 光 熱 は 、 現 在 生 息 す る 森 林 動 物 に は 見 ら れ な い が 、 野 生 獣 類 の 体 内 か ら 油 脂 を 採 っ た と 推 察 さ れ る 。 そ れ は 、 ク ジ ラ 、 ア ザ ラ シ な ど の海獣油を灯油2町こしたことからも推察できよう。 K : 植 物 を 素 材 と し た 光 熱 は 多 数 あ る 。 ハゼ ノ キ の 実 か ら 取 る 「 ろ う 」 で ロ ー ソ ク を つ く り 、 ま た 、 ア サ 、 ア ブ ラ ナ の 実 か ら も 灯 油 を つ く っ た 。 一 方 、 草 本 や 木 本 植 物 そ の も の を 燃 焼 し て 食 料 を っ く り 、 ま た 寒 さ か ら 身 体 を 守 る た め に 暖 を 取 っ た 。 さ ら に 、 ナ ラ 類 、 カ シ 類 を け じ め 樹 幹 を 素 材 と し た 「 木 炭 」 は 食 料 を っ く る 熱 や 寒 さ か ら 身 体 を 守 る 暖 を 取 る の に 必 要 で あ っ た 。 L : 鉱 物 を 素 材 と し た 光 熱 は 、 石 油 、 石 炭 、 亜 炭 な ど が あ り 、 石 油 は 灯 油 と し て ロ ー ソ ク と 同 様 に 明 か り と し て 活 用 し た 。 ほ か に 、 食 料 や 暖 を 取 る た め に 現 在 も 利 用 さ れ て い る 。 石 炭 は 家 庭 用 の 風 呂 の 熱 源 と し て 長 く 用 い ら れ た 。 5)イ十器 什 器 は 、 日 常 使 用 の 家 具 ・ 道 具 を 指 す が 、 主 に 食 物 を の せ た り 入 れ た り す る 器 で 、 身 近 に あ る も の を 使 っ た り ま た 加 工 して 使 用 し た 。 M : 動 物 を 素 材 と し た 食 料 を っ く る 道 具 、 食 事 の 際 の 食 器 な ど の 什 器 類 は 、 貝 殻 や 魚 類 ・ 哺 乳 類 の 骨 が あ る 。 N : 植 物 を 素 材 と し た 什 器 類 に は 、 器 と し て は 草 本 や 木 本 植 物 の 大 き い 葉 を 21)北海道立北方民族博物館(1996):北海道立北方民族博物館総合案内、北海道立北方民族博物 館、28∼37頁 58

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利 用 し 、 木 本 植 物 の 枝 を に 、 幹 で 唵 、 飯 わ ん 、 汁 わ ん を つ く っ て 用 い た 。 現 在 で も 、 ホ オ ノ キ や サ サ の 葉 、 タ ケ の 皮 な ど は 食 べ も の を 包 む の に 利 用 さ れ て い る 。 か し わ も ち の 葉 は カ シ ワ ノ キ の 葉 で 、 さ さ だ ん ご の 葉 も 森 林 植 物 で あ る 。 O : 鉱 物 を 素 材 と し た も の に は 、 石 や 大 理 石 な ど の 天 然 産 物 を 加 工 し た も の や 粘 土 を 素 材 と し た 焼 き 物 が あ る 。 6 ) 冠 婚 葬 祭 冠 礼 ・ 婚 礼 ・ 葬 儀 お よ び 祖 先 の 祭 は 人 生 の 4 大 儀 礼 で あ る が 、 こ の ほ か に 出 産 ・ 五 節 な ど を 含 め て 検 討 し た 。 P : 動 物 的 素 材 は 海 産 物 が 多 く 、 森 林 動 物 を 用 い た 祭 り は ク マ 祭 り が あ る 程 度 で 少 な い 。 長 野 県 の 山 村 で は お 祝 い に 川 魚 の オ イ カ ワ を 食 べ る と い う 。 Q : 植 物 的 素 材 の 使 用 は 多 く 、 地 鎮 祭 や 神 式 の 挙 式 で は サ カ キ の 枝 葉 を 用 い る 。 正 月 の 門 松 に は マ ツ の 枝 葉 と タ ケ の を 飾 り 、 鏡 は ヒ ノ キ の 三 方 に ウ ラ ジ ロ と ユ ズ リ ハ の 葉 、 海 産 物 の コ ン ブ 、 ホ ン ダ ワ ラ を 乗 せ を 三 段 に 重 ね そ の 上 に ダ イ ダ イ を 飾 る 。 ウ ラ ジ ロ と ユ ズ リ ハ は 森 林 植 物 で あ る 。 正 月 の 七 草 粥 に 用 い る 七 草 、 「 セ リ 、 ナ ズ ナ 、 ゴ ギ ョ ウ 、 ハ コ ペ ラ 、 ホ ト ケ ノ ザ 、 ス ズ ナ 、 ス ズ シ ロ 」 の う ち 、 セ リ 、 ナ ズ ナ 、 ゴ ギ ョ ウ ( ハ ハ コ グ サ ) 、 ハ コ ペ ラ ( ハ コ ペ ) 、 ホ ト ケ ノ ザ ( コ オ ニ タ ビ ラ コ ) は 小 川 や 原 野 な ど に 生 育 し て い る 草 本 植 物 で あ る 。 次 に 夏 の 七 草 で あ る 「 ヒ ユ 、 ア カ ザ 、 シ ロ ツ メ ク サ 、 ヒ メ ジ ョ オ ン 、 ス ペ リ ヒ ユ 、 イ ノ コ ズ チ 、 ツ ユ ク サ 」 は 道 端 や 原 野 な ど に 生 育 し て い る 1 年 生 草 本 植 物 で あ る 。 秋 の 七 草 「 は ぎ の 花 ( ハ 引 、 お ば な ( ス ス キ ) 、 く ず 花 ( ク ズ ) 、 な で し こ の 花 ( ナ デ シ コ ) 、 お み な え し ( オ ミ ナ エ シ ) 、 ま た ふ じ ば か ま ( フ ジ バ カ マ ) 、 あ さ が お の 花 ( キ キ ョ ウ ) 」 は 観 賞 の 草 花 と し て 詠 ま れ た と 推 測 さ れ る が 、 ハ ギ 、 ク ズ は 食 べ ら れ る し 、 キ キ ョ ウ は 薬 用 と し て 用 い ら れ て い る 。 冬 の 七 草 は 、 筆 者 が お 節 料 理 や 正 月 の 雑 煮 用 食 材 と し て 、 各 地 で 比 較 的 多 く 用 い ら れ て い る も の の 中 か ら 選 ん だ も の で あ る 2 2 ) 。 そ れ は 、 「 ク ワ イ 、 コ ン ニ ャ ク 、 サ ト イ モ 、 ゼ ン マ イ 、 ワ ラ ビ 、 ネ マ ガ リ タ ケ 、 ミ ツ バ 」 の 7 種 で あ る 。 こ の う ち 、 ゼ ン マ イ 、 ワ ラ ビ 、 ネ マ ガ リ タ ケ 、 ミ ツ バ は 森 林 お よ び 原 野 に 生 育 し て い る 山 菜 で あ る 。 ひ な 祭 り の 人 形 は 植 物 素 材 が 大 部 分 で あ っ た 。 端 午 の 節 句 も シ ョ ウ ブ 、 ヨ モ ギ l t う 谷 槽 に 入 れ た り 、 玄 関 の 屋 根 に 挿 し た り し て い る 。 七 夕 祭 り の 竹 、 短 冊 も 植 物 資 源 で あ る 。 葬 儀 関 係 で は 、 棺 は モ ミ ノ キ 、 マ ツ 、 ヒ ノ キ な ど の 白 い 材 の 木 が 用 い ら れ た 。 神 式 の 葬 儀 で は 、 サ カ キ を 供 え る 。 ま た 、 仏 式 で は 、 墓 地 や 仏 壇 に は シ キ ミ や コ ウ ヤ マ キ を 供 え た り 、 墓 地 に は シ キ ミ を 植 え る こ と も あ る 。 イ ム 壇 、 仏 具 も 大 22)杉浦孝蔵(2002):七草文化について、山林、大日本山林会、N0.1423、44∼47頁 59

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部 分 は 木 製 品 で あ る 。 仏 像 は ヒ ノ キ 、 ク ス ノ キ 、 カ ツ ラ 、 ケ ヤ キ 、 サ ク ラ な ど を 用 い て 作 っ て い る 。 線 香 は ス ギ の 葉 、 抹 香 は シ キ ミ の 葉 な ど を 用 い て い る 。 こ の ほ か に 、 位 、 笏 も 木 本 植 物 で 作 る 。 R : 鉱 物 的 な も の は 、 石 、 大 理 石 な ど の 天 然 産 物 を 加 工 し た も の が 用 い ら れ ている。 7 ) 娯 楽 ・ ス ポ ー ツ 娯 楽 ・ ス ポ ー ツ 関 係 を 挙 げ る と 枚 挙 に い と ま が な い の で 、 こ こ で は ① い け 花 、 ② 茶 道 、 ③ 囲 碁 、 ④ 将 棋 、 ⑤ 書 道 、 ⑥ 釣 り 、 ⑦ 狩 猟 、 ⑧ ス キ ー を 挙 げ る 。 S : 動 物 的 素 材 は 、 囲 碁 の 白 石 は 蛤 で つ く る 。 ま た 、 書 道 に 用 い る 筆 の 穂 先 2 3 ) は 羊 毛 、 馬 毛 、 鹿 毛 、 招 毛 や 狸 毛 な ど 動 物 の 毛 か ら で き て い る 。 釣 り と 狩 猟 の 対 象 資 源 は 動 物 で あ る 。 釣 り は 、 渓 流 釣 り の ヤ マ メ 、 イ ワ ナ 、 ウ グ イ 、 イ ト ウ な ど で 、 下 流 の 河 川 で は ア ユ や オ イ カ ワ が 対 象 と な る 。 狩 猟 が で き る 獣 類 は 1 8 種 2 4 ) で 、 ノ ウ サ ギ 、 タ イ ワ ン リ ス 、 シ マ リ ス 、 ヒ グ マ 、 ツ キ ノ ワ グ マ 、 ア ラ イ グ マ 、 タ ヌ キ 、 キ ツ ネ 、 テ ン ( ツ シ マ テ ン を 除 O 、 雄 イ タ チ 、 ミ ン ク 、 ア ナ グ マ 、 ハ ク ビ シ ン 、 イ ノ シ シ 、 シ カ 、 ヌ ー ト リ ア 、 ノ イ ヌ 、 ノ ネ コ で あ る 。 鳥 は 2 9 種 で 凰 ゴ イ サ ギ 、 マ ガ モ 、 カ ル ガ モ 、 コ ガ モ 、 ヨ シ ガ モ 、 ヒ ド リ ガ モ 、 オ ナ ガ ガ モ 、 ハ シ ビ ロ ガ モ 、 ホ シ ハ ジ ロ 、 キ ン ク ロ ハ ジ ロ 、 ス ズ ガ モ 、 ク ロ ガ モ 、 エ ゾ ラ イ チ ョ ウ 、 ウ ズ ラ 、 コ ジ ュ ケ イ 、 ヤ マ ド リ ( コ シ ジ ロ ヤ マ ド リ を 除 O 、 キ ジ 、 コ ウ ラ イ キ ジ 、 バ ン 、 ヤ マ シ ギ ( ア マ ミ ヤ マ シ ギ を 除 O 、 タ シ ギ 、 キ ジ バ ト 、 ヒ ヨ ド リ 、 ニ ュ ウ ナ イ ス ズ メ 、 ス ズ メ 、 ム ク ド リ 、 ミ ヤ マ ガ ラ ス 、 ハ シ ボ ソ ガ ラ ス 、 ハ シ ブ ト ガ ラ ス で あ る 。 T : 植 物 的 素 材 を 挙 げ る と 、 い け 花 、 茶 道 で は 、 共 に 四 季 に 応 じ て 野 生 の 植 物 を 利 用 し て い た が 、 近 年 は 栽 培 種 が 多 く 、 特 に 外 国 産 の も の が 多 く な り 国 産 の 植 物 が 減 少 し つ つ あ る 。 ま た 、 茶 道 具 は 「 な つ め 」 は 木 製 品 で あ り 「 茶 」 、 「 茶 せ ん 」 は 竹 製 品 で あ る 。 囲 碁 、 将 棋 の 盤 は 共 に カ ヤ 、 カ ツ ラ 、 イ チ ョ ウ が 用 い ら れ た 。 将 棋 の 駒 は ツ ゲ 、 ツ バ キ 、 マ キ 、 ヤ ナ ギ な ど を 用 い て い る 。 書 道 の 紙 、 筆 の 軸 は 植 物 資 源 で あ り 、 釣 り 竿 も 従 来 は 竹 を 利 用 し て い た が 、 手 づ く り は 高 級 品 で あ る か ら 、 今 日 は 大 量 生 産 さ れ る グ ラ ス ロ ッ ド を 使 っ て い る 。 狩 猟 の 鉄 砲 の 銃 床 材 は オ ニ グ ル ミ で あ る 。 ス キ ー の 板 も ヒ ッ コ リ ー 、 ア ッ シ ュ な ど 木 材 を 使 っ て い た が 、 現 在 は グ ラ ス フ ァ イ バ ー や メ タ ル 製 が 多 く 、 ス ト ッ ク も 竹 製 か ら ス チ ー ル や グ ラ ス フ ァ イ バ 一 製 に 代 わ っ た 。 U : 鉱 物 的 資 源 の 活 用 と し て は 、 い け 花 の 花 器 お よ び 茶 道 の 碗 、 水 指 、 建 水 な ど は 天 然 の 粘 土 を 素 材 と し た 焼 き も の が 多 か っ た 。 ま た 、 囲 碁 の 碁 石 は 、 昔 23)植村和堂(1975):万有百科大事典(生活)、小学館、294頁 24)由井正敏(2001):森林・林業百科事典、丸善、437∼439頁 6 0

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森林文化論 は竹や木を用いたが、身分のある者は「水晶」、「メノウ」、「ヒスイ」、「ルビー」 などの宝石を用いたようだが25)、現在は黒石は那智黒である。 以 上 、 森 林 資 源 と 生 活 の か か わ り の 概 略 を 示 し た が 、 人 間 生 活 と 森 林 と の か か わ り 、 す な わ ち 、 森 林 文 化 は 人 類 の 生 存 上 に 必 要 不 可 欠 で あ る と 考 え る 。 Ⅲ 森 林 文 化 の 持 続 性 多 目 的 な 公 益 的 機 能 を 保 持 し 、 人 類 の 生 活 に 不 可 欠 な 森 林 資 源 を 持 続 的 に 活 用 す る に は 、 今 日 の 社 会 に お い て も 、 基 本 的 に は 天 然 依 存 型 産 業 で あ る 。 し た が っ て 、 森 林 に 対 す る 高 度 な 技 術 的 対 応 が 求 め ら れ る 。 1 多 目 的 機 能 持 続 の た め の 諸 作 業 我 が 国 森 林 の 4 1 % は 人 工 林 で あ る 。 こ の よ う な 森 林 の 造 成 に は 、 一 般 に ① 更 新、②保育、②収穫などの諸作業が不可欠である26)。 1 ) 更 新 更 新 は 、 森 林 造 成 の 始 め の 作 業 で 、 地 ご し ら え か ら は じ ま る 。 す な わ ち 、 苗 木 の 植 付 け 作 業 が 容 易 で あ り 、 植 付 け た 苗 木 が 活 着 ま た は 、 地 面 に 落 下 し た 種 子 が 発 芽 、 生 育 し や す い よ う に 造 林 地 の 低 木 や 草 本 植 物 を 除 去 す る 作 業 で あ る 。 山 地 で は 、 花 壇 や 公 園 の よ う に 苗 木 を 植 付 け た 後 に 潅 水 を し て 活 着 を 容 易 に す る こ と は 不 可 能 で あ る か ら 、 更 新 に 当 た っ て ば 、 森 林 造 成 の 目 的 、 立 地 条 件 に 応 じ て 樹 種 、 植 付 け 時 期 、 植 付 け 方 法 の 選 択 な ど の 技 術 が 求 め ら れ る 。 ま た 、 植 付 け し 、 枯 死 す る 本 数 が 多 い 場 合 に は 2 年 後 に 補 植 を 行 う 。 2 ) 保 育 保 育 は 、 更 新 し た 樹 種 が 目 的 に 沿 っ て 成 長 し 、 諸 機 能 が 発 揮 で き る よ う に 人 為 的 に 補 助 す る 作 業 で 、 主 に ① 下 刈 り 、 ② つ る 切 り 、 ③ 枝 打 ち 、 ① 除 伐 、 ⑤ 間 伐 な ど で あ る 。 な お 、 立 地 条 件 や 造 林 木 の 成 長 が 不 良 の 場 合 に は 、 施 肥 や 薬 剤 を 散 布 す る こ と も あ る 。 下 刈 り 作 業 は 、 更 新 後 数 年 間 は 毎 年 1 回 ま た は 2 回 行 う 。 つ る 切 り は 、 下 刈 り 作 業 の 終 了 後 に 行 う 。 枝 打 ち は 、 森 林 資 源 の 生 産 目 標 に よ っ て 異 な る 。 付 加 価 値 の あ る 木 材 の 生 産 は 、 3 ∼ 数 回 に わ た り 行 う こ と も あ る 。 除 伐 は 生 産 目 標 に 適 し な い 樹 種 や 不 良 木 、 支 障 木 な ど を 伐 採 除 去 す る 。 間 伐 は 、 付 加 価 値 の あ る 木 材 生 産 の た め の 保 育 並 び に 林 分 の 密 度 管 理 の た め に 行 う 作 業 で 、 生 産 目 標 に よ っ て は 3 ∼ 数 回 に 分 け て 行 う 。 樹 種 、 林 齢 に よ っ て は 市 場 価 の あ る 資 源 が 得 ら れ る こ と も あ る が 、 今 日 で は 難 し い 。 こ の ほ か に 、 地 力 の 一 時 的 増 進 や 病 害 虫 、 獣 害 を 防 止 す る た め に 、 薬 剤 の 散 布 や 工 作 物 を 導 入 す る 作 業 も あ る 。 25)河野直達(1975):万有百科大事典(生活)、小学館、28頁 26)杉浦孝蔵(1975):週刊アルファ大世界百科、日本メール・オーダー、6065∼6068頁 61

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3 ) 収 穫 森 林 か ら の 資 源 ( 木 材 ) の 収 穫 は 、 樹 幹 ( 立 木 ) が 市 場 価 を 有 す る よ う に な っ て 伐 採 さ れ る 。 市 場 価 は ① 樹 種 、 林 齢 、 保 育 な ど に よ る 立 木 の 評 価 、 ② 伐 採 、 搬 出 コ ス ト 、 伐 採 地 か ら 市 場 ま で の 距 離 や ③ 社 会 、 経 済 的 条 件 、 ④ 需 給 動 向 お よ び ⑤ 原 木 市 場 の 地 域 性 な ど に よ っ て 左 右 さ れ る 。 現 状 で は 、 ③ お よ び ④ が 市 場 価 決 定 の 大 き な 要 因 と な っ て お り 、 収 穫 作 業 は 皆 伐 よ り も 択 伐 的 作 業 が 多 く なりつつある。 2 森 林 資 源 を 活 用 し た 体 験 学 習 1 ) 森 林 は 巨 大 な 教 室 で あ り 偉 大 な 師 で あ る 森 林 は 自 然 の も の も あ る が 、 里 山 を 含 め 居 住 地 に 近 い 森 林 は 人 工 の 加 わ っ た も の も 多 い 。 し か し 、 森 林 は 植 物 を 中 心 と し た 生 物 の 集 団 で あ る か ら 、 子 供 の 遊 び 場 や 大 人 の 憩 の 場 と な っ た り 散 策 の 場 に も な る 。 ま た 、 季 節 に 応 じ て 植 物 が 発 生 、 成 長 し 、 開 花 、 結 実 、 そ し て 落 葉 も す る 。 さ ら に 、 昆 虫 、 小 鳥 を は じ め 小 動 物 の 生 息 の 場 で も あ る 。 表3森林資源を活用した体験学習の内容 学習名 季節 期間 学 習 内 容 ワ ラ ビ ゝ i 学 園 春 1日 動 横 物 の 息 吹 や 生 態 観 察 学 習 、 摘 み 草 、 山 菜 料 理 試 食 夏 1日 動 植 物 の 成 長 と 川 魚 の 生 態 観 察 学 習 、 川 魚 釣 り と 川 魚 試 食 秋 2泊 3日 色彩豊かな秋の紅葉観察、きのこ狩り、木の実等の収穫の喜び体験、きの こ料理試食 杉 の 子 学 園 春 2泊 3日 動 楠 物 の 生 態 観 察 と 森 林 資 源 の 活 用 状 況 学 習 、 山 菜 採 り と 山 菜 料 理 試 食 夏 4泊 5日 動 植 物 の 採 集 、 天 体 観 測 等 の 学 習 、 川 魚 釣 り 、 登 山 、 川 魚 試 食 秋 2泊 3日 森 林 と 生 活 の 学 習 、 木 工 品 づ く り 学 習 、 木 の 実 採 集 、 き の こ 狩 り 、 木 の 実 ときのこ料理試食 冬 4泊 5日 冬 山 、 雪 の 美 し さ と 恐 ろ し さ お よ び 越 冬 の 学 習 、 ス キ ー ・ ス ケ ー ト の 体 験 、 田 舎 料 理 試 食 山 村 大 学 春 2泊 3日 森 林 資 源 の 多 目 的 利 用 の 学 習 と 山 菜 採 り 、 山 菜 料 理 試 食 夏 4泊 5日 山 村 文 化 の 学 習 、 川 魚 釣 り 、 登 山 お よ び 下 刈 り 作 業 体 験 、 川 魚 試 食 秋 2泊 3日 食文化の学習、木の実の採集、きのこ狩り、漬物づくり、 つきおよび や き の こ 料 理 試 食 冬 4泊 5日 植 物 文 化 の 学 習 、 ス キ ー ・ ス ケ ー ト の 体 験 、 雪 お ろ し 作 業 体 験 、 木 工 や つ る 細 工 の 民 芸 品 づ く り 、 田 舎 料 理 の 実 習 お よ び 試 食

春 1泊 2日 食 文 化 の 学 習 と 山 菜 採 り 、 山 菜 料 理 試 食 秋 2泊 3日 山村文化の学習、水の実採集、きのこ狩り、漬物づくり、田舎料理および 漬 物 、 き の こ 料 理 な どの 試 食 冬 3泊 4日 植物文化の学習、食文化の学習、木工やつる細工の民芸品づくり、 つき お よ び 、 田 舎 料 理 な どの 試 食 62

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森林文化論 こ の よ う に 、 森 林 は 人 間 が 自 然 を 学 び 、 ま た 感 性 豊 か な 人 間 形 成 に は 必 要 不 可 欠 な 資 源 で あ り 、 生 き た 教 材 が 豊 富 な 教 室 で あ る と 同 時 に 偉 大 で 経 験 豊 か な 師でもある。 筆 者 は 、 山 村 や 森 林 に お け る 体 験 学 習 の 1 例 と し て 、 表 3 に 示 す よ う な 行 事 を提案している27)。すなわち、幼児を対象とした体験は、春は日帰りで動植物の 生 態 観 察 と 摘 み 草 、 昼 食 は 山 菜 料 理 を 試 食 す る 。 夏 も 日 帰 り の 日 程 で 動 植 物 の 成 長 と 川 魚 の 生 態 観 察 や 川 魚 捕 り 、 昼 食 は 川 魚 料 理 の 試 食 で あ る 。 秋 は 2 泊 3 日 か 1 泊 2 日 の 日 程 で 秋 の 紅 葉 を 観 賞 す る 。 こ の ほ か に 、 き の こ 狩 り や 木 の 実 拾 い な ど を 通 し て 収 穫 の 喜 び と 秋 の 味 覚 を 賞 味 す る 。 さ ら に 、 地 元 在 住 の 古 老 に よ る 昔 の 生 活 や 民 話 な ど を 聞 き な が ら 地 元 住 民 と の 交 流 を 図 る 。 体 験 学 習 の 直 接 の 指 導 は 引 率 者 が 当 た る が 、 野 外 に お け る 体 験 学 習 と 共 同 生 活 は 経 験 豊 富 な 地 元 在 住 の 古 老 に 協 力 を 得 て 行 う 。 自 然 の 楽 し さ 、 厳 し さ や 恐 ろ し さ な ど の 体 験 を 古 老 か ら 聞 く こ と も 必 要 で あ る と 考 え る か ら で あ る 。 小 学 生 の 体 験 学 習 は 、 「 ワ ラ ビ 学 園 」 よ り も 滞 在 日 数 を 長 く 、 さ ら に 冬 期 の 学 習 を 加 え 四 季 を 通 し た 内 容 の 「 杉 の 子 学 園 」 を 薦 め る 。 ま た 、 青 年 層 に は [ 山 村 大 学 ] を 通 し て 、 山 村 と 都 市 住 民 の 交 流 に よ り 山 村 の 理 解 を 深 め る こ と に よ って、 過 疎 化 現 象 の 歯 止 め を 図 り た い 。 そ して、 熟 年 者 に は 「 山 村 文 化 セ ミ ナ ー 」 で 植 物 文 化 や 山 村 の 食 文 化 の 学 習 を 目 的 と し た 。 2 ) 体 験 学 習 の 早 期 実 施 筆 者 は 人 間 形 成 の 基 礎 教 育 は 満 3 歳 児 か ら 始 め る べ き で あ る と 主 張 し て き た 。 満 3 歳 児 教 育 は 特 に 根 拠 も 理 論 も な い が 、 一 人 前 の 人 間 に 育 て る こ と は 、 成 人 し た 段 階 で 社 会 生 活 に 適 応 で き る 人 間 に 育 て る こ と で あ る と 考 え る か ら で ある。 O ∼ 3 歳 の 子 供 を 持 つ アメ リ カ の 両 親 の 4 2 % は 、 「 子 育 ての 最 大 の 目 標 は 、 子 供 を 道 徳 心 の あ る 人 間 に 育 て る こ と 」 。 ま た 、 3 8 % は 「 子 供 に 幸 せ な 人 生 を 送 ら せる こ と 」 で、 「 勉 強 の で き る 子 供 に 育 て る こ と 」 は 1 4 % で あ っ た 2 子 供 は 生 ま れ て く る と き に 、 す で に 視 覚 、 聴 覚 、 触 覚 、 嗅 覚 、 味 覚 を あ る 程 度 そ な え て い る 。 し か し 五 感 が 完 全 に 機 能 す る よ う に な る の は 、 ま だ 先 だ 。 乳 幼 児 期 に 受 ける 刺 激 に よ って 微 調 整 が 行 わ れ る 2 8 ) 。 そ して、 外 部 か ら の 刺 激 が 必要としている。 ワ シ ン ト ン 大 学 の 発 達 心 理 学 者 ア ン ド ル ー ・ メ ル ツ ォフ は 、 赤 ん 坊 は 貪 欲 に 情 報 を 吸 い 取 り な が ら 「 日 常 の 些 細 な 経 験 や 遊 び 」 に よ っ て 学 ん で い く と 考 え 2 7 ) 杉 浦 孝 蔵 ( 2 0 0 3 ) : 森 で 遊 び 、 森 に 学 ぶ 一 体 験 学 習 は 早 め に ー 、 山 林 、 大 日 本 山 林 会 、 N0.1425、42∼45頁 2 8 ) ニ ュ ーズ ウ ィ ー ク 日 本 版 ( 2 0 0 0 ) : 新 ・ O 歳 か ら の 教 育 、 T B S ブ リ タ ニ カ N 0 . 7 3 7 、 5 0 ∼ 6 9 頁 6 3

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る 。 「 赤 ん 坊 は 寝 た ま ま 3 歳 児 に な る わ け で は な い 。 そ の 間 に 外 部 か ら の い ろ い ろ な 刺 激 を 受 け 、 そ れ を 観 察 し た り 遊 ん だ り し な が ら 情 報 を 集 め て 認 知 能 力 を 発達させる。情報が子供の心を変えていく」29)と言っている。 大島蘭三郎3o)によると、3歳児は「運動機能的には、全身運動が目だって発達 す る 」 。 そ して 、 「 知 能 的 に は 、 記 憶 力 と か 、 身 近 な も の へ の 関 心 も 深 ま り 、 も の ご と の 違 い も 区 別 で き た り 、 仮 定 の 場 面 を 考 え る こ と も 可 能 に な る 」 。 さ ら に 「 喜 び 、 怒 り 、 恐 れ な ど い ろ い ろ の 情 緒 面 の 発 達 も み ら れ る 。 言 葉 も 日 常 会 話 が ほ と ん ど で き る よ う に な り 、 お と な や 友 だ ち を 通 し て の 社 会 性 が い ち だ ん と 進 め ら れ る 」 と 言 って い る 。 人 間 が 生 を 受 け て 備 えて い る 1 4 0 億 の 脳 細 胞 は 、 新 生 児 に は 機 能 的 に は き わ め て 未 熟 で あ る が 、 外 部 か ら い ろ い ろ な 刺 激 を 受 け る こ と に よ っ て 、 脳 細 胞 ど う し が 相 互 に か ら み 合 い な が ら 機 能 す る 。 つ ま り 、 脳 細 胞 が 相 互 に か ら み 合 い 機 能 し は じ め る の が 、 お お よ そ 3 歳 ま で で あ る と い わ れ て い る 。 3 森 林 ・ 林 業 の 理 解 我 が 国 の 林 家 数 約 2 5 0 万 戸 お よ び 森 林 ・ 林 業 な ど に か か わ る 人 々 は 、 森 林 の 造 成 、 森 林 資 源 の 生 産 並 び に 環 境 保 全 な ど に 懸 命 に 努 力 して い る に も か か わ ら ず、 林 業 ・ 木 材 関 連 産 業 は 低 迷 し 山 村 は あ ん た ん と し て い る 。 そ の 結 果 、 山 村 地 域 か ら 若 者 は 都 市 地 域 へ 流 出 し 、 山 村 地 域 は 高 齢 化 ・ 過 疎 化 が 進 む 一 方 で あ る 。 その原因の一つは、国産材需要量の激減である。1967年は約5、300万m3であ ったのが、2001年は1、700万m3に低下し戦後最低となった。用材自給率も1967 年は61%であったが、2001年は18%に低下した。一方、生産コストの上昇によ り採算性が大幅に悪化し、林家の所得率は1970年の65%から大幅に縮小し、2000 年には24%まで低下しか31)。この結果、林家の経営意欲は減退し、林業の生産活 動 は 停 滞 し 、 我 が 国 の 私 有 林 経 営 は 極 め て 厳 し い 状 況 に あ る 。 こ れ が 直 接 に 森 林 の 管 理 や 経 営 並 び に 整 備 に 影 響 す る 。 強 い て は 、 森 林 の 多 目 的 機 能 の 発 揮 が 危ぶまれる。 林木が成熟するのには、現代の科学では50∼80年あるいは100年の歳月を経過 し て よ う や く 森 林 の 諸 機 能 を 発 揮 す る よ う に な る 。 し た が っ て 一 部 の 国 民 に 「 な ぜ、 林 家 は ス ギ や ヒ ノ キ な ど の 建 築 資 源 の み を 生 産 し 、 広 葉 樹 を 植 え な い の か」と急に言われても、森林の状態を急変することは不可能である32)。 森 林 資 源 の 造 成 に は 、 国 の 内 外 の 情 勢 お よ び 立 地 に 応 じ た 長 期 施 業 計 画 が 必 29)ニューズウィーク日本版(2000)、新・O歳からの教育、TBSブリタニカN0.738、56頁 30)大島蘭三郎(1973):万有百科大事典(医学)、小学館、231頁 31)林野庁(2003):平成14年度森林・林業自書、日本林業協会、46∼47頁 32)杉浦孝蔵(2001):私有林経営の展望と課題、山林、大日本山林会、N0.1402、2∼10頁 64

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森林文化論 要である。 森 林 ・ 林 業 の 理 解 や 認 識 は 3 2 ) 、 晴 天 時 の 林 業 作 業 や 短 期 間 の 山 村 滞 在 で は 一 部 の 理 解 し か 得 ら れ な い 。 し た が っ て 、 季 節 に 応 じ て 、 し か も 長 年 月 を 通 し て 幼 児 期 か ら 山 村 住 民 と 交 流 し 山 村 の 生 活 を 体 験 す る こ と に よ っ て は じ め て 理 解 が 深 ま り 正 し い 認 識 が さ れ る の で は な い だ ろ う か 。 学 校 教 育 の 教 材 に 森 林 ・ 林 業 の 実 態 を 取 り 挙 げ る と 同 時 に 家 庭 や 地 域 教 育 に も 産 業 的 視 点 か ら の 取 り 組 み が 必 要 で あ る と 考 える 。 森 林 資 源 の 持 続 的 な 造 成 は 森 林 所 有 者 の 義 務 で あ り 、 所 有 者 自 ら 広 く 国 民 に 森 林 ・ 林 業 の 理 解 を 得 る た め に 是 非 と も 積 極 的 な 活 躍 を 期 待 し た い 。 お わ り に 衣 食 住 を 中 心 と し た 生 活 と 森 林 資 源 の か か わ り に つ い て 検 討 し た 。 項 目 ご と に 全 国 の 事 例 を 挙 げ、 利 用 の 変 遷 を 論 述 の 予 定 で あ っ た が 、 今 回 は そ の 一 端 を 総 説 的 に 取 り ま と め た 。 地 球 の 温 暖 化 、 森 林 資 源 の 乱 獲 や 土 地 の 乱 開 発 な ど の 影 響 で 森 林 資 源 の 消 滅 や 減 少 が 地 球 規 模 で 見 ら れ る 。 こ の 現 象 が こ の ま ま 進 行 す れ ば 森 林 資 源 の 多 目 的 機 能 の 発 揮 は 危 ぶ ま れ る 。 1992年、リオ・デ・ジャネイロの「国連環境開発会議(地球サミット)」で採 択 さ れ た 「 森 林 原 則 声 明 」 は 国 際 的 な 課 題 と し て 位 置 づ け ら れ 、 各 国 で 生 活 文 化 や 社 会 ・ 経 済 事 情 を 超 え て 「 持 続 可 能 な 森 林 経 営 」 の 推 進 に 向 け て 、 取 り 組 む こ と の 重 要 性 が 認 識 さ れ た 。 我 が 国 も 森 林 所 有 者 を 含 め 国 民 は 、 地 球 環 境 に 配 慮 し た 生 活 を 維 持 し 、 森 林 資 源 の 持 続 的 利 用 を 図 る べ き と 考 え る 。 そ の た め に は 、 ① 森 林 の 保 育 に 務 め 、 ② 国 民 の 森 林 に 対 す る 理 解 を 深 め る た め に 、 幼 児 期 か ら の 森 林 体 験 を 行 う 。 そ し て 、 山 村 の 活 性 化 を 図 る た め に は 、 ③ 都 市 住 民 と 山 村 住 民 と の 交 流 を 図 る べ きと考える。 65

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