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中央学術研究所紀要 第44号 057庄司史生「現存梵本『八千頌般若』はいかに形成されたか」

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庄 司 史 生

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庄 司 史 生

1.問題の所在 2.〈般若経〉の展開と諸文献  2.1 『十万頌般若』について  2.2 『二万五千頌般若』について  2.3 『一万八千頌般若』について  2.4 『一万頌般若』について  2.5 『八千頌般若』について 3.漢・蔵諸〈拡大般若経〉の配列  3.1 経録等における漢訳〈拡大般若経〉(玄奘訳『大般若』)の配列  3.2 目録における蔵訳〈拡大般若経〉の配列  3.3 目録等における現存漢・蔵訳〈拡大般若経〉の配列の対比 4.〈拡大般若経〉の編纂過程解明に関する研究課題の所在  4.1 《課題Ⓐ》〈拡大般若経〉の原初的形態に関する研究  4.2 《課題Ⓑ》旧『八千頌般若』と新『八千頌般若』との比較研究  4.3 《課題Ⓒ》 『四千頌般若』と旧『八千頌般若』との比較研究  4.4 《課題Ⓓ》 新・旧『二万五千頌般若』の比較研究  4.5 《課題Ⓔ》 『八千頌般若』~『十万頌般若』への展開に関する研究 5.現存梵本『八千頌般若』の形成  5.1 蔵訳『八千頌般若』(系統 B)経文  5.2 『仏母の伝承に随順した解説』釈文  5.3 蔵訳『八千頌般若』(系統 A)経文  5.5 用例のまとめ 6.結語 7.文献  7.1 第一次文献  7.2 第二次文献 8.注

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1.問題の所在

 本研究は、現存する〈般若経〉の内、特に『八千頌般若』(Ast4 4asāhasrikā Prajñāpāramitā)

を中心とする〈拡大般若経〉1の編纂過程解明を目的とするものである。数ある大乗経 典の中において、最初期の成立として扱われる『八千頌般若』(以下、『八千頌』)であ るが2、古形を保持する梵語(あるいはプラークリット)原典が完本としては現存せ ず、現存する梵本『八千頌』は11世紀以降のネパール系写本である。梵・蔵『八千頌』 とそれに同定される漢訳諸本との詳細な比較読解研究を行った辛嶋静志3は、『八千頌』 諸本のうち、梵本が『八千頌』諸本の中で後期のテキストであることを指摘している4 [表1 『八千頌』諸本の分類](辛嶋[2014]より) (一)最初期テキスト群『摩訶般若鈔経』(3世紀後半訳)ガンダーラ写本、『道行般若経』(西暦179年訳)、支謙訳(222⊖257年訳)、 (二)中期テキスト群 鳩摩羅什訳(408年訳)、玄奘訳第五会(660⊖663年訳)、バーミヤン出土梵語写本断簡(紀元後2~3世紀) (三)後期テキスト群 (11世紀以降)、チベット語訳玄奘訳第四会(660⊖663年訳)、施護訳(982年訳)、ネパール出土梵本写本  なお、上記表中の「(三)後期テキスト群」は、さらに以下の通り①と②に分類され るべきであることを、筆者はその後指摘した5 [表2 『八千頌』「(三)後期テキスト群」の詳細](庄司[2014]より) (三)後期テキスト群 ①玄奘訳第四会≒チベット語訳系統 A ②施護訳≒ネパール系梵本≒チベット語訳系統 B  要するに、『八千頌』の原初的形態は、最初期の大乗経典としていったん成立してい たが、その後約1000年にわたり経文の増広・改編が繰り返された。そしてその結果と して形成されたものが現存するネパール系梵本『八千頌』であると推定される6  現存梵本『八千頌』よりも古形の原初的形態を明示するためには、支婁迦讖訳『道 行般若経』(後179年訳)をはじめとする上記の計7種の漢訳との比較研究がなされるべ きであり、それはすでになされてきた7。また『道行般若経』よりもさらに古形を保持 するガンダーラ語〈般若経〉断簡が近年発見され、それらの研究は既に着手され、そ の成果も公表されている8。それら近時の研究成果により、1900年代初頭に開始された 〈般若経〉の原初的形態を解明するための研究は今もなお着実に進展しているといえる。  冒頭に述べた通り、本研究の目的は〈拡大般若経〉編纂過程の解明にある。より具 体的には、現存する梵本『八千頌』の形成過程の解明を目的とする。先述した近時の 研究成果が、初期大乗仏教研究(或いは大乗仏教の成立に関する研究)の文脈内で『八 千頌』を扱った研究であるのに対し、本研究では初期から後期大乗仏教研究(或いは

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大乗仏教の展開に関する研究)の文脈において『八千頌』を扱うものである。  本稿では、〈拡大般若経〉の編纂過程を明らかにするために、全体と部分の両面から アプローチを試みる。すなわち、全体とは仏典目録の観点からであり、部分とは実際 の経文の観点からである。以下に〈般若経〉の展開と諸文献について概観した上で、 〈拡大般若経〉の編纂過程に関してなされるべき研究課題を提示し、特に現存『八千 頌』の編纂過程について考察する。

2.〈般若経〉の展開と諸文献

 〈拡大般若経〉を含む〈般若経〉諸本の展開について、現在の通説に従って概観する と次のようになる9   [1]初期般若経典の形成期(紀元前100年~後100年)   [2]経典の増広期(紀元後100年~300年)   [3]教説の個別化と韻文化の時期(300年~500年)   ||||[4]密教化の時期(500/600年~1200年)  従来の研究では、基本として以上の[1]の中で『八千頌』が扱われてきたが、本 研究では以上の[1]から[4]までの範囲において『八千頌』を扱う。範囲を拡大 した意図は、現存梵本の形成過程を明らかにするためである。  ところで〈般若経〉諸本の全体像について、先行研究では次のように提示されてい る10。本稿では「⑴通常の般若経」中の「①拡大般若経」内に属する『八千頌』を扱う。   ⑴ 通常の般若経(Ordinary Prajñāpāramitā)

   ① 拡大般若経(The large Sūtra): 『十万頌般若』『二万五千頌』『一万八千頌』 『一万頌』『八千頌』    ||② 短縮形般若経(Abbreviations): 『善勇猛般若』『文殊般若経』『金剛般若経』 『五十頌般若経』『般若心経』など   ⑵ 特殊な般若経(Special Texts):『濡首般若経』『仁王般若経』『開覚自性般若経』    など   ⑶ 密教系般若経(Tantric Texts)    ① 経典類(Sūtras):『般若理趣経』『小字般若経』『帝釈般若経』など    ② 祈願文(Litanies):『百八名般若経』『二十五門経』など    ③ ダラニ集(Dhāran4īs):『般若陀羅尼集』『七頌般若』『一字般若』など   |||||||||||||||||| ||||④ 儀軌類(Rituals):『陀羅尼集経』『般若成就法』など  以上のうち、本稿で取り上げる〈拡大般若経〉の諸文献について、概略を述べる11

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2.1 『十万頌般若』について  『十万頌般若』には梵本・蔵訳・漢訳が現存している。梵本Śatasāhasrikā-prajñāpāramitā は詳細には全72章である。全体を分けて四部分としている。ネパール系梵本に基づく 校訂本の刊行は、1902年よりゴーシャが五種の写本を用いてはじめたものの、現在も 未完のままである12。近年に至り木村高尉が五種の写本を用い、残された部分の校訂に 着手し、その成果を順次刊行している13。梵本からの全訳は未だなされていない。漢訳 には玄奘訳『大般若波羅蜜多経:初会』(400巻79品)14のみが現存し、これには国訳も

存する15。蔵訳Shes rab kyi pha rol tu phyin pa stong phrag brgya pa(全72章300巻)はカ

ンギュルに収められている16 2.2 『二万五千頌般若』について  梵本・蔵訳・漢訳が現存している。梵本は1934年にダットが四種の写本を用い、後 述する第一現観の箇所のみの校訂本を刊行し17、残された部分は木村高尉が四種の写本 を用いて校訂を完結された18。そこで用いられた写本はネパール系のものであり、それ は『現観荘厳論』からの影響を受け、経文間に同論科段の挿入を含む。そのため、木 村校訂本は『現観荘厳論』における八現観の区分に従い、⑴一切相智者性、⑵道智者 性、⑶一切智者性、⑷一切相現等覚、⑸頂に至ったもの、⑹次第のもの、⑺一刹那現 等覚、⑻法身の八部に分割されている。以上の他に『現観荘厳論』からの影響を受け ていない『二万五千頌』(あるいは『一万八千頌』か)として現存する梵語写本とし て、敦煌、中央アジアやギルギット出土写本、またアヌラーダプラのジェータヴァナ ヴィハーラ跡から九世紀頃のシンハラ文字で記された黄金の板に書写された七枚の写 本が発見されているが、それらはいずれも完本ではない19。梵本からの和訳は、第一現 観部のみある20  漢訳には⑴無羅叉訳『放光般若経』(20巻90品)21、⑵竺法護訳『光讚経』(10巻27 品)22、⑶鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』(27巻90品)23のいわゆる『大品般若経』、⑷ 玄奘訳『大般若波羅蜜多経:第二会』(78巻85品)24、の四種が現存する。ただし、以上 四種の漢訳が『二万五千頌』に相当するものか、『一万八千頌』に相当するものか、厳 密には明らかではない。  蔵訳には、カンギュル所収の『二万五千頌』(83巻76章)25と、テンギュル所収のもの (74巻76章)26の二種が現存している。前者は諸漢訳や非ネパール系の梵本と近似すると 推定されるが、後者は『現観荘厳論』による科段の挿入を含み、ネパール系の梵本と 近似する。資料の扱いに注意が必要である。なお、『二万五千頌』のネパール系梵本と カンギュルとテンギュルの二種蔵訳の各第72章「分別菩薩学品(byang chub sems dpa'i bslab pa rab tu dbye ba)」、そして蔵訳『一万八千頌』第83章「分別菩薩学品(byang chub sems dpa'i bslab pa rab tu dbye ba)」では三性説が説かれていることが指摘され、同箇所

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の全和訳がなされている27。同箇所はバーヴァヴィヴェーカ(500~570頃)著『中観心 論註思択炎』28に〈般若波羅蜜多〉からの経文として引用され、〈般若経〉における三性 説説示の根拠とされている29 2.3 『一万八千頌般若』について  『一万八千頌般若』には、梵本(部分のみ)・蔵訳・漢訳が残されている。梵本はギ ルギット写本の校訂本(第55~82章まで)が英訳とともに出版されている30。漢訳には 玄奘訳『大般若波羅蜜多経:第三会』(59巻31品)31がある。  蔵訳はカンギュル般若部に所収されている(60巻87章)32。蔵訳『一万八千頌』に第

83章として挿入された「分別菩薩学品(byang chub sems dpa'i bslab pa rab tu dbye ba)」 では三性説が説かれるが、これはギルギットの梵文写本や玄奘訳『第三会』には見い だされない。さらに、蔵訳には第84章として「輯略偈品(sdud pa tshigs su bcad pa)」と 称する章(=『宝徳蔵般若(Ratna-gun4a-sam4caya-gāthā)』)が挿入されている。

十万頌 二万五千頌 一万八千頌 八千頌 欠 ** 欠 欠 分別菩薩学品 分別菩薩学品 欠 欠 欠 輯略偈品 欠 * * * * 詳細は庄司[2015b]を参照されたい *  常啼菩薩品、法上菩薩品、嘱累品。蔵訳『十万頌』諸本中、北京版、デルゲ版、トクパ レス写本では、常啼・法上品を欠く。ただしナルタン版には両品が存在する。 **『八千頌』には一部抜ける箇所がある。 [図1 蔵訳〈拡大般若経〉の章構成概念図](一万頌を除く) 2.4 『一万頌般若』について  『一万頌般若』には、梵語原典が現存せず、またこれに相当する漢訳もなく、唯一蔵 訳のみが現存している(33巻33章)33。蔵訳はすでに全て和訳され34、『一万頌』が『二 万五千頌』を再構成して編纂されたものであることが指摘されている。 2.5 『八千頌般若』について  『八千頌般若』には、梵本・蔵訳・漢訳が現存している。ネパール系写本に基づく梵 本校訂本には、六種の写本を用いて校訂した Mitra 本35、Mitra 本にシルヴァン・レヴ

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させた Vaidya 本37の三種がある。この他に断片であるが、スコイエン・コレクション 所収、バーミヤーン出土・ブラーフミー文字の写本38がある。また近年では最古の漢訳 『道行般若経』よりも遡る内容を有するガンダーラ語写本の存在が発表され、研究が進 められている39。梵本からの全訳にはネパール系梵本からの英訳40と和訳41がある。  漢訳には七種が現存している。⑴支婁迦讖訳『道行般若経』(10巻30品)42、⑵支謙訳 『大明度無極経』(6巻30品)43、⑶曇摩蜱共竺佛念訳『摩訶般若波羅蜜鈔経』(5巻13 品)44、⑷鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』(10巻29品)のいわゆる『小品般若経』45、そ して⑸玄奘訳『大般若波羅蜜多経:第四会』(18巻29品)46、⑹同『第五会』(10巻24 品)47、この玄奘訳には国訳が存する48。さらに⑺施護訳『佛母出生三法蔵般若波羅蜜多 経』(25巻32品)49である。  以上のうち、⑶『道行般若経』について辛嶋静志が『道行般若経校注』を刊行され た50。蔵訳にはカンギュル所収(24巻32品)51のものの他に、東洋文庫所蔵本など、単独 で流布した写本も多く現存する。またそれらには『現観荘厳論』からの影響の有無の 相違により、旧新二種の系統がある52。なお、『八千頌般若』には同経典を偈頌のみに まとめたいわゆる『宝徳蔵偈』がある。これには梵本53と蔵訳(26巻32章)54、漢訳(法 賢訳『佛母宝徳蔵般若波羅蜜経』二巻55があり、これに国訳がある56。また梵本からの 全和訳が刊行されている57

3.漢・蔵諸〈拡大般若経〉の配列

 〈拡大般若経〉とは、漢訳では玄奘訳『大般若波羅蜜多経』初會から第五會まで、ま た蔵訳では各カンギュル般若部所収の『十万頌般若』から『八千頌般若』までを指す。 3.1 経録等における漢訳〈拡大般若経〉(玄奘訳『大般若』)の配列  まず、玄奘訳『大般若』の初會から第五會までの配列と偈頌数の表記について、経 録等の漢文文献を参照すると以下の通りとなる。漢文文献における梵本の偈頌数との 対比の明示は、『法苑珠林』に始まるであろう。 [表3 玄奘訳『大般若』初會から第五會までの配列とそれに対する経録等の釈文] 『法苑珠林』58 (7c.) 『開元録』 59 (8c.) 『貞元録』 60 (8-9c.) 『至元録』 61 (13c.) 初會 梵本一十三萬 二千六百頌 單譯 新譯單本 梵文一十三萬 二千六百頌 新譯單本 梵文一十三萬 二千六百頌 蕃本十萬頌般若對同 第二會 梵本二萬五千頌 重譯 新譯重本梵文二萬五千頌 新譯重本梵文二萬五千頌 蕃本二萬五千頌般若對同

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第三會 梵本一萬八千頌 單譯 新譯單本梵文一萬八千頌 新譯單本梵文一萬八千頌 蕃本一萬八千頌般若對同 第四會 梵本八千頌 重譯 新譯重本梵文八千頌 新譯重本梵文八千頌 蕃本八千頌般若對同 第五會 梵本四千頌 單譯 新譯單本梵文四千頌 新譯單本梵文四千頌 蕃本八千頌般若對同 ※大般若各會の「序」(西明寺玄則による)には偈頌に関する言及はない。 ※ 『至元録』は、玄奘訳『大般若』と蔵訳(蕃本)とを対比させる。『至元録』では蔵訳四千頌が存在し ていなかったことがわかる62 3.2 目録における蔵訳〈拡大般若経〉の配列  次に蔵訳〈拡大般若経〉は、仏典目録『パンタンマ』(9世紀前半)63『デンカルマ』 (9世紀前半)64、チョムデンリクレル(1227⊖1305)『仏教史』目録65、プトン『仏教史』 目録(14世紀)66では、以下の通り配列されている。 [表4 目録上における蔵訳〈拡大般若経〉の配列](表中の番号は各目録 No.) パンタンマ デンカルマ リクレル目録 プトン目録 十万頌 1 1 3.1 105 二万五千頌 2 2 3.2 106 一万八千頌 3 3 3.3 107 一万頌 4 4 3.4 108 八千頌 5 5 3.5 109 四千頌 681* 730A** 3.6*** **** *   『パンタンマ』では「翻訳中」とある(川越[2005:33])。 **  『デンカルマ』では「校正中」とある(HERRMANN-Pfandt[2008:684])。 ***  リクレル目録では「ひとつだけある」とある(SCHAEFFER & KUIJP[2009:117])。 ****  プトン目録では「入手不可」とある(西岡[1980:69])。現存の諸カンギュルに『四千 頌』は収められていない。 3.3 目録等における漢・蔵訳〈拡大般若経〉の配列の対比  先に示した〈拡大般若経〉の配列について、梵本と漢訳との対比は『法苑珠林』、漢 訳と蔵訳との対比は『至元録』を用い、両者をさらにまとめると以下の通りとなる。 [表5 漢を中心にした梵・漢・蔵〈拡大般若経〉に関する記述の対比] 『法苑珠林』 (7c.) 『至元録』(13c.) |||||||||||||||||||||| 梵本 『大般若』玄奘訳 蕃本(蔵訳) 蔵訳(『パンタンマ』(9c.)など) 132,600頌 = 初會 = 100,000頌 100,000頌

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25,000頌 = 第二會 = 25,000頌 25,000頌 18,000頌 = 第三會 = 18,000頌 18,000頌 10,000頌* 8,000頌 = 第四會 = 8,000頌 8,000頌 4,000頌 =  第五會** 8,000頌 4,000頌*** *  『一万頌』は蔵訳のみ現存(内容は『大品般若』に近似すると指摘されている)67 **  玄奘訳『大般若』第五會の原典は失われた『四千頌』か68 *** 『パンタンマ』などの目録によると、梵本『四千頌』の存在が示唆される。

4.〈拡大般若経〉の編纂過程解明に関する研究課題の所在

 大小種々のヴァージョン(『八千頌』~『十万頌』)を含む〈拡大般若経〉の成立に関 する研究は、1908年に渡邊海旭69による「縮小説」(大→小)が出された後、1918年には 椎尾弁匡70が「拡大説」(小→大)を唱え、1910年代~1930年代にかけては、他の学者71 を巻き込んだ両説が混在していた。やがて1944年の梶芳光運72の研究により、再度「拡 大説」が主張され、それが現在の定説となっている73。なお、干潟龍祥は1925年には 「縮小説」の立場をとっていたが、1958年に至り「拡大説」へと転向した74。干潟によ る同著が英文であったこともあり、「拡大説」は欧米の学界にも知れわたることとなり、 〈般若経〉研究者として知られるエドワード・コンゼ75をはじめ、世界的に「拡大説」 (小部の『八千般頌若』がより大部の『二万五千頌』、さらに『十万頌』へと発展したとす る)が現在の主流となっている。ただし、今日的にみると、そこで用いられた文献資 料には限界があり、近年ではその後新たに利用が可能となった文献を用いた研究が発 表され、従来の研究成果に対して若干の修正が必要となっていることも事実である76  〈拡大般若経〉の編纂過程を解明するために、仮説として想定した「図2〈拡大般若 経〉編纂過程推定図」を図示し、現在なされている課題、なすべき課題を示すと次の とおりである。本図はチベット語訳諸本に基づき単純化した概念図である。 図2[〈拡大般若経〉編纂過程推定図]

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 〈拡大般若経〉の編纂過程を明らかにするための研究課題と、研究の結果得られる 〈拡大般若経〉の編纂過程を推定すると上記のとおりになる。   《課題Ⓐ》〈拡大般若経〉の原初的形態を明らかにするための研究   《課題Ⓑ》旧『八千頌般若』と新『八千頌般若』との比較研究   《課題Ⓒ》『四千頌般若』と旧『八千頌般若』との比較研究   《課題Ⓓ》新・旧『二万五千頌般若』の比較研究   ||||||《課題Ⓔ》『八千頌般若』~『十万頌般若』への展開に関する研究  これらの各研究課題について、以下に略述する。 4.1 《課題Ⓐ》〈拡大般若経〉の原初的形態に関する研究  近年では辛嶋静志による『道行般若経』研究が行われ77、また辛嶋とハリー・ファル クによる現存最古のガンダーラ語般若経写本の読解研究がある78 4.2 《課題Ⓑ》旧『八千頌般若』と新『八千頌般若』との比較研究  筆者がこれまで継続して行っているもので、チベット語訳『八千頌般若』諸本の比較 研究である。既に、ジャガッダラニヴァーシン著(12世紀)『仏母の伝承に随順した解 説(*Bhagavatyāmnāyānusārin 4ī-nāma-vyākhyāna)』(D3810, P5209)が、新・旧二種の 『八千頌般若』の経文を引用し注釈を与えていること、そこで引用されている二種(系 統 A と系統 B)の『八千頌般若』が蔵訳として現存していることを、川合(山口)務 と磯田煕文による先行研究に基づいて指摘した79  そこでは二種の蔵訳『八千頌般若』の比較と、『仏母の伝承に随順した解説』の注釈 に基づき、それら二種の梵語原典自体の相違を指摘した。さらに、二種の訳語上の相 違についても考察を行い、より古形が『翻訳名義大集(Mahāvyutpatti)』(9世紀)で 規定された訳語と一致し、より新形はその規定とは一致しないことを指摘した80 4.3 《課題Ⓒ》 『四千頌般若』と旧『八千頌般若』との比較研究  岸一英が玄奘訳『五会』を『四千頌』と想定する指摘がなされ81、さらに筆者によっ て漢文文献の他に、チベット文献を用いて『四千頌般若』に関する研究が行われた82 玄奘訳『大般若波羅蜜多経』第四会(≒旧『八千頌般若』)と第五会(≒『四千頌般 若』か)との比較研究がなされるべきである83 4.4 《課題Ⓓ》 新・旧『二万五千頌般若』の比較研究  『二万五千頌般若』とその注釈書である『現観荘厳論』との影響関係を明らかにする

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ために、今後なすべき課題である84。方法としては、蔵訳カンギュルとテンギュルとに 所収されている二種の『二万五千頌』の比較研究が主となる。 4.5 《課題Ⓔ》 『八千頌般若』~『十万頌般若』への展開に関する研究  梶芳光運による全体的研究が既になされたが、今後は各個別資料の研究がなされる べきである(たとえば、玄奘訳『大般若』第二会と第三会との比較研究、『一万八千頌 般若』と『二万五千頌般若』との比較研究)。現状では『一万八千頌』と『二万五千 頌』との明確な相違点を指摘することができないといった問題点がある。梵本『十万 頌般若』の校訂研究は他の研究者によりなされている85  本稿では、〈拡大般若経〉の編纂過程を解明するために必要となる上記《研究課題 Ⓑ》について後に考察する。

5.現存梵本『八千頌般若』の形成

 本研究は、『八千頌』の形成過程を中心とした、〈拡大般若経〉の編纂過程を明らか にすることを目的とするものである。筆者は既に蔵訳諸本を用いた調査・考察によっ て、蔵訳『八千頌』には、二種の系統のテキストがそれぞれ現存していることを指摘 した86。結果のみを示すと以下のとおりである。 [表6 蔵訳『八千頌般若』の暫定的系統分類(筆者による)] 系統 蔵訳諸本 対応する漢訳等 系統 A Fc K L T ≒玄奘訳『第四会』 系統 B C D Fa Fb H N P S U ≒施護訳『佛母』≒ネパール系梵文写本 略号は本稿参考文献を参照  つまり、蔵訳『八千頌』には、『現観荘厳論(Abhisamayālam4kāra)』からの影響を受 けて改編がなされたテキスト(=系統B)と、影響を受ける前のテキスト(=系統A) とが現存しており、かつ両系統がそれぞれ依拠した梵語原典は異なるものであると考 えられる87。ネパール系梵本と近似する系統 B にみられる経文の改変・付加について は、ジャガッダラニヴァーシンによる『仏母の伝承に随順した解説』が『八千頌』の 経文について、この文は『現観荘厳論』との結びつけを意図して付加されたものであ るが、古い系統のテキストにはこの文は存在しない、等と説明を付している88。『八千 頌』第1章の用例を取り上げる。

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5.1 蔵訳『八千頌般若』(系統 B)経文    [1.1]それは何故か。[1.2]具寿舎利弗よ、一切法は起こったものではなく、生じ たものではないのである。[1.3]具寿舎利弗よ、このように行じる菩薩摩訶薩は 一切智性に近づくだろう。 一切智性に近づくように 、成熟衆生、身心清浄、相清 浄、仏国土清浄、そして仏陀にも近づくだろう。[1.4]具寿舎利弗よ、このよう に菩薩摩訶薩が般若波羅蜜を行じることは一切智性に近づくことである。89  梵本は、系統 B、また施護訳『仏母』とほぼ一致しており、ここでは翻訳は省略す る90。次にこれについて『随順』を見ると、次のように説明している。 5.2 『仏母の伝承に随順した解説』釈文    また、実際には「 一切智性に近づくように 」等〔の経文〕が混入して読まれ、繰 り返し補足が述べられるが、〔この〕節もまた、前の諸本(sngar gyi po ti rnams) に存在しないのである。それによって『現観〔荘厳論〕』に結び付けるために〔経 文が〕施設されたのであろう。91  このように『随順』は、『八千頌』の経文を引用し、その経文が前の諸本には存在し ないこと、そして『八千頌』と『現観荘厳論』とを対応させるために経文が付加され たことを指摘している。上記引用文に関して、系統 A の蔵訳『八千頌』を提示する。 5.3 蔵訳『八千頌般若』(系統 A)経文    [1.1]それは何故か。[1.2]具寿舎利弗よ、一切法は起こったもの、生じたもので はなく、[1.3]om.[1.4]そのように行じるとき、尊者舎利弗よ、菩薩摩訶薩は一 切智性に近づくのである。92  このように、系統 A では『随順』が前の諸本に存在しないと指摘していた箇所を含 む[1.3]の経文を欠く。このことから、『随順』が前の諸本として引用する経文と系 統 A の経文は一致している。つまり、前の諸本≒系統 A ≒『四会』と考えられる。  要するに、系統 B には『随順』が前の諸本に存在しないと指摘している箇所を見出 すことができる。従って、『随順』の指摘によるならば、系統 B は『現観荘厳論』と の結び付けのための経文の付加がなされた後のテキストということになろう。 5.5 用例のまとめ  以上の用例より、『随順』が前の諸本と指摘するものが、系統 A と一致しているこ とが確認される。系統 B は梵本と一致している。要するに、次のように分類される。

(13)

   系統 A =『随順』が前の諸本と指摘するもの(≒玄奘訳『四会』)    ||系統 B =梵本『八千頌般若経』(≒施護訳『仏母』)  また、系統 A と系統 B との比較によると、両者間の差とは、用例[1.3]の経文自 体の有無ということになる。なお、『随順』は系統 B に対する経文の増広が『現観荘 厳論』との結び付けのためになされたということを明示している。換言すれば、系統 A と B における差異とは、『現観荘厳論』からの影響の有無にあるということになる。 この箇所の『現観荘厳論』対応偈を確認すると、用例[1.3]における「清浄であるこ と」が取り上げられており93、系統 A にはそれに対応する経文が存在しなかったため に、付加がなされたことが『随順』の指摘に基づき裏付けられる。また『現観荘厳論』 は「道(mārga)」の立場から修道論的に『二万五千頌』に注釈を与えたものであるが94 上記用例に該当する『二万五千頌』を確認すると、用例[1.3]等の経文を見出すこと ができる95  以上のように、蔵訳に存する二種の『八千頌』について、『随順』の指摘をもって裏 付けることができる。  また先述したとおり、蔵訳『八千頌』両系統間において一部の訳語が相違し、古系 統に属するものが『翻訳名義大集』に規定される訳語と一致している96  なお、蔵訳系統 A と近似するテキストは、漢訳では玄奘訳『第四会』であり、それ 以前に遡ることはできない。ただし、系統 A の蔵訳に相応する完本の梵語原典の現存 を確認することはできないことから、現存するネパール系梵本『八千頌』のテキスト の形成過程を明らかにする「《研究課題Ⓑ》旧『八千頌般若』と新『八千頌般若』との 比較研究」において、蔵訳諸本は参照されるべき有益な資料といえる。

6.結語

 本稿では数ある〈般若経〉のうち、〈拡大般若経〉の編纂過程に関する研究課題を提 示し、その中で特に『八千頌』の形成過程を中心に考察を行なった。  〈拡大般若経〉の編纂過程に関する現在までの通説では、『八千頌』→『一万八千頌』 →『二万五千頌』→『十万頌』というように、小部のものがより大部のものへと直線 的に発展したと理解されていた。しかしながら、本稿で明示したように〈拡大般若経〉 の編纂過程に関して、12世紀のジャガッダラニヴァーシンによる『仏母の伝承に随順 した解説』による釈文と、実際に現存する二種の蔵訳『八千頌』の経文の2点を裏付 けとして『二万五千頌』→『八千頌』への影響関係を明確に指摘することが可能とな った。このことに基づいて、図2[〈拡大般若経〉編纂過程推定図]のとおり、〈拡大 般若経〉の編纂過程を推定した。

(14)

 要するに、ネパール系梵本『八千頌』とその蔵訳である系統Bは、〈拡大般若経〉の 中で、もっとも新しい形態を示すものであり、そのように現在のテキストへと改編が なされた理由として、『現観荘厳論』との結び付けを意図したものであったことが明ら かになった。  なお、以上の推定をさらに裏付けるために、二種の蔵訳『八千頌』の対照テキスト 作成が必要となる。第1章については校訂テキストを作成済であり、残された第2章 ~第32章については、古系統(系統 A)に属するテンパンマ系カンギュルのロンドン 写本のテキストデータ作成を進めている。

7.文献

7.1 第一次文献

 1.サンスクリット本『八千頌般若』(Ast4 4asāhasrikā Prajñāpāramitā)

  Mitra[1888]   Vaidya[1960]   Wogihara[1932⊖35]

 2.チベット語訳『八千頌般若』('Phags pa shes rab kyi pha rol tu phyin pa brgyad stong pa)

  テンパンマ系統(ウランバートル写本には『八千頌』が収められていない)    L ロンドン写本= Sher dkar(London)No.647(1712年書写)

   S トクパレス写本= sTog Palace No.15(1729年書写)

   T 東洋文庫所蔵・東京写本= Tokyo No.31(河口慧海将来, 1858⊖78年書写)   ツェルパ系統(リタン版カンギュルは筆者未見)

   P 大谷大学所蔵・北京版= Peking No.734(1717/20年開版)    C チョネ版= Co ne No.1001(1721/31年開版)

  混合系統

   N ナルタン版= sNar thang No.13(1730/32年開版)

   D デルゲ版=sDe dge No.12(1733年開版)(U:ウルガ版=Urga(1911)No.12)    H ラサ版= Lha sa(1934)No.11

  独立系統

   Fa プダク写本= Phug brag No.838(1697⊖1705年頃書写)    Fb プダク写本= Phug brag No.839(同上)

   Fc プダク写本= Phug brag No.840(同上)   単独本

(15)

 3.漢訳「小品系(=道行系)般若経」   支婁迦讖譯(後漢179⊖180年)『道行般若經』10巻30品(T.No.224)。   支謙譯(呉225年)『大明度無極經』6巻30品(T.No.225)。   曇摩蜱共竺佛念譯(秦382年)『摩訶般若波羅蜜鈔經』5巻13品(T.No.226)。   鳩摩羅什譯(後秦408年)『摩訶般若波羅蜜經』10巻29品(T.No.227)。   玄奘譯『大般若波羅蜜多經 第五會』10巻24品(T.No.220(5))。   玄奘譯(唐660⊖663年)『大般若波羅蜜多經 第四會』18巻29品(T.No.220(4))。   施護譯(宋985年)『佛母出生三法藏般若波羅蜜多經』25巻32品(T.No.228)。 7.2 第二次文献 磯 田熙文1994「『Amnāyānusārin4ī』における十六空性説について」『日本佛教学会年報 59, pp.37⊖50。   1996「『十万般若広注』と『三母広注』」『勝呂信靜博士古稀記念論文集』東京:山 喜房佛書林, pp.(17)⊖(29)。   1997「三母と Abhisamayālam4kāra」『印佛研』46(1), pp.(156)⊖(161)。 宇井伯壽1958『陳那著作の研究』東京:岩波書店。 梶山雄一・丹治昭義1974~1975『八千頌般若経Ⅰ』~『同Ⅱ』東京:中央公論社。 梶芳光運1933a「小品般若經に於けるその構成要素について」『智山学報』新4, pp.176 ⊖198。   1932b「般若經に現れたるその原始形態について」『宗教研究』新10(5), pp.121⊖ 144。   1980『大乗仏教の成立史的研究』山喜房佛書林(初版1944年『原始般若経の研 究』)。 金 倉圓照1975/76「一万八千頌般若の梵本〔ギルギット写本によるConzeの出版〕」『鈴 木学術財団研究年報』11/12, pp.147⊖149。 加納和雄2015「写本と挿絵入装飾経」『般若経大全』東京:春秋社。 辛嶋静志2014「大乗仏教とガンダーラ:般若経・阿弥陀・観音」『国際仏教学高等研究 所年報』17, pp.449⊖485。 川合(山口)務1980「東洋文庫所蔵・写本チベット訳『八千頌般若経』について」『印 仏研』28(2), pp.150⊖151。

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(16)

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〈キーワード〉大乗経典、『八千頌般若』、カンギュル

(19)

究―『八千頌般若経』を中心に―」(研究課題番号:26770023)の一部である。

8.注

1  〈拡大般若経〉は、漢訳では玄奘訳『大般若』の初會から第五會までを指す。これ らの解題については、CONZE[1978]、梶芳[1980]、三枝[1971]、渡辺章悟[1995] などに詳しい。なお、〈拡大般若経〉という呼称は近現代につけられた名称である (渡辺章悟[2015])。エドワード・コンゼはThe Large Sūtraと呼び(CONZE[1978])、

また以前には〈大部般若経〉と呼ばれている(渡邊海旭[1908])。 2 CONZE[1978:1]などを参照。 3 KARASHIMA[2010]、[2011]を参照。 4 辛嶋[2014]を参照。 5 庄司[2014]を参照。 6  現代のネパールにおいて、梵本『八千頌』写本の経文を、1960年刊行のいわゆる Vaidya本を用いて補修・修復していることが指摘されている。EMMRICH[2009]、吉 崎[2014]を参照。 7 梶芳[1944]を参照。

8 FALK & KARASHIMA[2012~2013]を参照。 9 CONZE[1978:1]渡辺章悟[2013]を参照。 10 CONZE[1978:31⊖92]渡辺章悟[2015]を参照。 11  〈拡大般若経〉の解題については、庄司[2015a]、注釈文献解題については鈴木 [2015]を参照。 12 GHOS4A[1902~13]。 13 KIMURA[2009~2014]。 14 『大正蔵』第5~6巻、No.220(1)。 15 『国訳一切経:般若部1~4』。 16 デルゲ版 No.8、北京版 No.730。 17 DUTT[1934]。 18 KIMURA[1986~2009]。

19  ZACCHETTI[2005]、SUZUKI & NAGASHIMA[2015]を参照。なお、般若経の写本 類については加納[2015]に網羅されている。

20 副島[1973~1998]。

21 『大正新脩大蔵経』(以下、『大正蔵』)第8巻、No.221。 22 『大正蔵』第8巻、No.222。

(20)

24 『大正蔵』第7巻、No.220(2)。 25 デルゲ版 No.9、北京版 No.731。 26 デルゲ版 No.3790、北京版 No.5188。 27 袴谷[1975]。 28 デルゲ版 No.3856、北京版 No.5256。 29 山口[1941]、IIDA[1966]を参照。 30   CONZE[1962]、[1974]、CHOONG[2006]が あ る。他 に 金 倉[1975/76]、定 方 [1999]を参照。 31 『大正蔵』第7巻、No.220(3)。 32 デルゲ版 No.10、北京 No.732。 33 デルゲ版 No.11、北京版 No.733。 34 林[2000]。 35 MITRA[1888]。 36 WOGIHARA[1932~35]。 37 VAIDYA[1960]。 38 SANDER[2000][2003]。

39 FALK & KARASHIMA[2012~2013]。

40 CONZE[1958]。 41 梶山&丹治[1974~1975]。 42 『大正蔵』第8巻、No.224。 43 『大正蔵』第8巻、No.225。 44 『大正蔵』第8巻、No.226。 45 『大正蔵』第8巻、No.227。 46 『大正蔵』第7巻、No.220(4)。 47 『大正蔵』第7巻、No.220(5)。 48 『国訳一切経:般若部五』。 49 『大正蔵』第8巻、No.228。 50 KARASHIMA[2011]。 51 デルゲ版 No.12、北京版 No.734。 52 庄司[2009a]を参照。 53 YUYAMA[1976]。 54 デルゲ版 No.13、北京版 No.735。 55 『大正蔵』第8巻、No.229。 56 『国訳一切経:釈経論部五ノ下』。 57 真野[1992]。

(21)

58 『法苑珠林』(『大正蔵』第53巻、No.2122、1024b⊖c)。 59 『開元釈教録』(『大正蔵』第55巻、No.2154、594a⊖b)。 60 『貞元新定釈教目録』(『大正蔵』第55巻、No.2157、910a⊖b)。 61 『至元法宝勘同総録』(『昭和法宝総目録』第1巻、No.25、181c⊖182a)。 62  『四千頌般若』について『パンタンマ』(9世紀前半)では「翻訳中」、『デンカル マ』(9世紀前半)では「大校閲未了」とあり、チョムデンリクレル『仏教史』目録 (13世紀)では「ひとつだけある」とあり、プトンの『仏教史』目録(14世紀)では 「現在入手不可」となっている。『四千頌』に関する漢文文献、蔵文文献での記述と そのまとめについては、庄司[2012:61⊖68]を参照。 63 川越[2005]を参照。 64 HERRMANN-Pfandt[2008]を参照。

65 SCHAEFFER & KUIJP[2009]を参照。 66 西岡[1980]を参照。 67 林[2000]を参照。 68 庄司[2012:61⊖68]を参照。 69 渡邊海旭[1908]。 70 椎尾[1918]。 71  干潟[1925]。鈴木宗忠[1932a]、[1932b]。梶芳[1933a][1932b]。渡邊媒雄 [1933]。 72 梶芳[1980]。 73 庄司[2012:3⊖25]。 74 HIKATA[1983]。 75 CONZE[1978]。 76  研究対象は異なるものの、パーリ三蔵の編纂順序について、従来の研究による「論 蔵最終成立説」を否定し、新たに「経蔵最終再編説」も提示されている(馬場[2008: 155⊖195])。 77 KARASHIMA[2010]、[2011]。

78 FALK & KARASHIMA[2012~2013]。

79 川合[1980]、磯田[1994]、庄司[2009a]。 80 庄司[2010a]。 81 岸[1975]。 82 庄司[2009b]。 83 庄司[2008]。 84  庄司[2010b]を参照。既に LETHCOE[1976]によって、問題点として取り上げ られている。

(22)

85 KIMURA[2009~2014]。

86 庄司[2009b]を参照。

87  現行のネパール系梵本(MITRA[1888]、WOGIHARA[1932⊖35]、VAIDYA[1960])

と近似するのは系統 B である。系統 A・B 間には、①原典の相違、②訳語・訳文の 相違が認められる。庄司[2009]、[2010a]、[2010b]、そして庄司[2013a]、[2013b] を参照。なお、梵本が現存するチャンドラキールティ(600⊖650)造『浄明句論 (Prasannapadā)』に引用される『八千頌』の経文が、現存梵本『八千頌』とは異な り、古系統のチベット語訳『八千頌』のみと一致する(庄司[2011b])。これは古系 統のチベット語訳に対する梵語原典の存在を傍証するものである。 88 磯田[1994]、庄司[2009]等を参照。

89  [1.1]de ci'i phyir zhe na /[1.2]tshe dang ldan pa shā ri'i bu chos thams cad ni nges par 'byung ba med cing ma skyes pa'o //[1.3]tshe dang ldan pa shā ri'i bu de ltar spyod pa'i byang chub sems dpa' sems dpa' chen po ni thams cad mkhyen pa nyid la nye bar 'gyur ro // ci lta ci ltar thams cad mkhyen pa nyid la nye bar gyur ba de lta de ltar sems can yongs su smin pa'i phyir / lus dang sems yongs su dag pa dang mtshan yongs su dag pa dang sangs rgyas kyi zhing yongs su dag pa dang sangs rgyas dang nye bar yang 'gyur ro //[1.4]tshe dang ldan pa shā ri'i bu byang chub sems dpa' sems dpa' chen po de ltar shes rab kyi pha rol tu phyin pa la spyod pa ni thams cad mkhyen pa nyid la nye ba yin no // (C8a8-b4; D6a7-b3; Fa11b6-12a2; Fb10a6-b1; H11b4-7; N9b4-10a1; P6b8-7a3; S8b7-9a4; U6a7-b3) 90  [1.1]tat kasya hetoh4 /[1.2]ajātā hy anirjātā hy āyus4man Śāriputra sarva-dharmāh4 /[1.3]

evam4 carata āyus4man Śāriputra bodhisattvasya mahāsattvasya sarvajñatā āsannī-bhavati /

yathā-yathā sarvajñatā āsannī-bhavati tathā-tathā sattva-paripācanāya kāya-citta-pariśuddhir laks4an4a-pariśuddhir buddha-ks4etra-śuddhir buddhaiś ca samavadhānam4 bhavati //[1.4]evam4

ca punar āyus4man Śāriputra bodhisattvo mahāsattvah4 prajñā-pāramitāyām4 caran

sarvajñatāyā āsannī-bhavati // (M11.5-11; V6.10-14; W56.10-57.8)

91  slar yang yang dag par ni ci lta ci ltar thams cad mkhyen pa nyid la nye bar 'gyur zhes bya ba la sogs pa'i 'dres par du bklags nas yang dang yang du nye bar bsdu ba 'don par byed de 'dres pa'i yang ni sngar gyi po ti rnams la yod pa ma yin no // de bas na mngon par rtogs pa la sbyar ba'i don du rab tu gzhag pa 'byung bar 'gyur ro // (C35b7-36a2; D34b1-2; G46a4-5; N37a6-b1; P38b8-39a2)

92  [1.1]de ci'i phyir zhe na /[1.2]tshe dang ldan pa shā ri'i bu chos thams cad ni ma byung ma skyes pa ste /[1.3]om.[1.4]de ltar spyod na tshe dang ldan pa shā ri'i bu / byang chub sems dpa' sems dpa' chen po thams cad mkhyen pa nyid la nye ba yin no / / (Fc11a1-3; K8b6-7; L9b8-10a1; T8b7-8)

(23)

  rūpāder asvabhāvatvam4 tad abhāva-svabhāvatā / tad ajātir aniryān4am4 śuddhis tad animittatā //

31 //tan nimittānadhist4 4hānānadhimuktir asam4jñatā / (AA)

  〔下品の忍の所縁は〕色などの無自性性であり、〔行相は〕その〔色などの〕無を自 性とすることである。〔中品の忍の所縁は〕それら〔色など〕の不生と不滅であり、 〔行相は身などの〕浄化である。〔上品の忍の所縁は〕それら〔色など〕の無因相性 であり、〔行相は〕それの因相によらない無勝解と無相である。(兵藤[2000]によ る) 94  蔵訳『二万五千頌般若』には、カンギュル所収のものとテンギュル所収の二種が 現存している。この二種のうち、前者は『現観荘厳論』以前のものであり、後者は 『現観荘厳論』(≒ネパール系梵本)以後のものである。筆者がすでに指摘したよう に、『二万五千頌般若』と『現観荘厳論』とをあわせた注釈書を著した論師たちは、 テンギュル所収の『二万五千頌般若』を使用していた(庄司[2010b]を参照)。 95  梵本『二万五千頌』は DUTT[1934:137.19⊖138.17]= KIMURA[2007:177.6⊖ 178.5]に対応する(諸漢訳、蔵訳との対応箇所は同[2007:204⊖205]を参照)。 96 庄司[2010a]を参照。

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