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言葉に敏感であれ

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Academic year: 2021

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東京交通短期大学

2005

学生論文集

(2)

書くことに慣れる

現代社会で自分の存在感を示し、生きていくには、自分の考え方をしっかりと持ち、それを正

しく相手に伝えることが必要です。そうした意味で、現代こそ、書く力が求められている時なの

です。

書く力の必要性は理解していても、なかなか書けない、ペンと用紙を前にして、書こうとして

も、どのように書いてよいかわからないうちに、気持が萎えてしまうことがあります。よく言葉

は人の心を裏切るといわれます。感じたことや、考えたことを言葉で表現すると、どこか気持ち

と違いが生れます。言葉はなかなか心を正直に伝えてくれません。

さて、書くことには、文章を書く、日記を書く、手紙を書く、説明文を書く、感想文を書く、

小論文を書く等があります。文章を書くには、手順があり、書く内容を大枠でとらえる、話題に

そって内容を考える、文章の構成を工夫する、文体とことばに留意する、などに従って書けば、

より豊富な文章になることでしょう。日記を書くには、何をどう書かなければならないという決

まりはなく、約束ごともない、あるとすれば、日記を書く人が自分に書こうとする書き方だけで

す。自由に日々書き記すことが日記になるのです。手紙を書くには、前文(書き出しの言葉)、

主文(用件)

、末文(終わり、結びのことば)の三段落構成から成り立っています。説明文を書

くには、ものごとを見つめ、その対象の全体像を正確に相手に伝え、説明文が写実的要素を必要

とすることが多いのです。感想文を書くには、対象から受けた自分の思いを、感想として表現し、

主観性の強い心情的要素を多く含んでいます。小論文を書くには、論文の形を借りた意見文で、

自分の意見を公にした文章と考えてよいと思います。身近に知られるのは、新聞社の社説があり

ますが、書き方の勉強には、社説の「要約」が適切です。それは文章の論理構造を読みとる訓練

に最適の素材といえます。最近の大学入試の小論文課題は、広範囲で多彩な話題には事欠きませ

ん。

以上、「書くこと」について簡単にまとめてみましたが、「書くこと」に慣れることによって、

言葉の使い方、文章表現などの力が付いてきますので、まずは、書くことに慣れましょう。

2005 年3月8日

東 京 交 通 短 期 大 学

学長

阿 部 敏 彦

(3)

2005年 学 生 論 文 集

目 次

〔学籍番号〕〔所属ゼミ〕

○交通

日本のバス事業研究

田 中 秀 幸 (203063) 交 通 論 ゼ ミ ··· 4

タクシー事業のあり方

種 村 泰 国 (203064) 交 通 論 ゼ ミ ··· 11

大都市を支える環状鉄道

∼山手線と大阪環状線∼ 福 田 智 志 (203085) 交 通 論 ゼ ミ ··· 20

鉄道施設における点字ブロックの

配置についての研究

(駅構内における配置を中心に考える) 石 黒 真太郎 (203010) 都市・地域交通論ゼミ ··· 34

公共交通機関のバリアフリー化

∼鉄道におけるバリアフリーについて∼ 野 坂 尚 史 (203077) 都市・地域交通論ゼミ ··· 50

コミュニティバスの現状と課題

藤 原 崇 (203087) 都市・地域交通論ゼミ ··· 61

二輪車の違法駐車と駐輪場整備の

実態

斉 藤 裕 介 (203043) 交通判例分析ゼミ ··· 68

鉄道人身事故の起因とその対応策

剣 持 良 (203038) 交通判例分析ゼミ ··· 75

○観光

稲生川と共に歩んだ十和田市

吹 越 優 樹 (203084) 観光地理研究ゼミ ··· 81

廃線沿線を歩く

−三河線猿投∼西中金−

瀨 戸 大 輔 (203056) 観光地理研究ゼミ ··· 89

江戸から東京「水の都」の歴史と

観光を探る

奥 田 将 光 (203023) 旅 行 論 ゼ ミ ··· 96

函館観光の魅力と現状

岸 寿 志 (203032) 旅 行 論 ゼ ミ ··· 104

水上温泉の課題とその対策について

柳 堀 雄 二 (202112) 旅 行 論 ゼ ミ ··· 110

(4)

〔学籍番号〕〔所属ゼミ〕

○社会・経済・文化

阪神大震災後の歩みについて

澤 井 桐 文 (203047) 基礎経済学ゼミ ··· 114

鉄道車両製造と経済

佐 藤 翔 太 (203045) 基礎経済学ゼミ ··· 120

コミュニケーションの手段、

その変化と今後のあり方について

吉 田 裕 (203104) 社会政策研究ゼミ ··· 125 身体・言語を手がかりとする

〈ケツだけ星人〉試論

伊 藤 知 彦 (203014) 欧米文化論ゼミ ··· 132

ビオトープでニッポンの自然を

再生せよ

松 本 康 義 (203094) 欧米文化論ゼミ ··· 140

遺言書の種類と

それぞれの長短について

石 川 幸 作 (203007) 民 事 法 ゼ ミ ··· 147

罪刑法定主義が必要であった歴史を

調べ、その内容を説明せよ

萩 尾 能 広 (202092) 民 事 法 ゼ ミ ··· 151

(5)

1

日本のバス事業研究

田 中 秀 幸

(交通論ゼミ) はじめに 本稿では、前半は日本のバス事業の概要についてまとめ、 後半は下町を走行する都営バス・京成バス・京成タウンバ スの具体的な路線改善案等についてまとめた。都内では既 にバス輸送がある程度行き渡っているため、それほど改善 の余地がないが、下町は路線の設定次第で、バス輸送が飛 躍的に伸びる可能性があると考えられる。そこで今後この 地域の路線運営者はどのような対策をとればよいのか論じ た。 Ⅰ バス輸送の現状 1.バス輸送の現状 乗合バスの平成14年度の輸送人員は45億273万人(前年46 億3,301万人、前年2.8%増{前年度比3.5%増})で、輸送人 キロは275億人キロ(前年268億人キロ、対前年比2.9%増{前 年0.7%減})である。 貸切バスの平成14年度の輸送人員は2億7,230万人(前年2 億6,096億人、対前年4.3%増{前年4.3%増})で、輸送人キ ロは429億人キロ(前年427億人キロ、対前年0.6%増{前年 0.2%増})である。 2.大都市圏地域でのバス輸送 一時減少傾向を見せたものの、最近ではようやく減少に 歯止めがかかったのではないか。一定規模の鉄道駅までの フィーダー輸送が必要であること、道路混雑、駐車場の不 足、自家用車が利用しにくいことなどからである。だから 比較的に高い輸送需要に恵まれている。またコミュニティ バスのように、従来のバスサービスがカバーしてこなかっ た地域への進出、いわば「守り」から「攻め」の経営での 拡大の可能性を見せている。 3.地方都市圏でのバス輸送 全体としてはまだ減少が続いている。その中で、地方中 核都市では、「オムニバスタウン事業」に見られるように、 バスのサービス改善、魅力性向上により、街づくりと一体 となってバスの利用を図ろうとする動きもある。だが、過 疎地域や地方都市の周辺地域では、自家用車の普及や人口 の減少傾向が進んでいることから、利用者は急減少し、バ ス路線廃止の動きが見られ、いかに補助のシステムを整備 し存続を図るかが問題となりつつある。 4.都市間高速バス輸送 大方にして3つのパターンに分かれる。第1に空港間輸 送が挙げられる。例えば、立川から羽田行の鉄道ダイヤを 組むことは出来ない。しかしバスならこの区間の路線設定 は可能になる。第2にかつて国鉄の急行が走っていた区間 に沿った路線を走行するケースが多い。第3に中小都市間を 結ぶ傾向にある。仙台―山形、函館―札幌、仙台―福島、 博多―小倉、岡山―仙台、大阪からしまなみ街道経由で四 国に向かう便、などが挙げられる。運賃ばかりの競争だと、 経営体力が消耗するだけである。そのため、サービスに変 化をつけるなどといった、目に見える差別化が必要ではな いか。また競争に生き残った会社が、不当に運賃の引き上 げを行わないように、地方運輸局は注視しなければならな い。 Ⅱ バス事業の経営 1.バス事業の特性 バス事業は極めて地域性の強い性格を持っている。その ため、鉄道の駅と駅を結び、団地間のフィーダー輸送を行 うことにより、細かい輸送需要を拾いに行ける。またフレ キシブな輸送体制を組みやすい。他に最も人件費がかから ない輸送手段であること、乗降の際間に障害が入るものが 少ない、バリアフリーに最も適した交通機関と言える。 2.乗合バス事業の現状 (1) 乗合バス事業の収支現況(平成14年度) ①概況 経常収支率は90.7%(前年度89.7%)で、全体の赤字 額は84億円(135億円改善)、民間バスの収支率は95.5% (平成以来最高)となった。 ②収支状況 経常収支について、収入(収入全体の減少率)は対前 年度3.3%(前年度減少率2.7%)で、支出(支出全体の 減少率)は、対前年度4.3%(前年度減少率3.0%)であ った。ちなみに、原価の約7割を占める人件費は前年度と 比較して7.2%減少(前年度減少率4.7%)になった。黒 字事業者は68者(前年度より8事業者増)、事業者率は 26.3%増(前年度24.6%)となり、黒字総額は136億円(前 年41億円増加)に収まった。一方赤字事業者の赤字総額 は982億円(前年度94億円減少)となった。

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(2) バス事業の現状 マイカーの普及や都市部での渋滞、地方部の人口減少な どにより経営環境が悪化しきっている。また環境対策や交 通バリアフリー対策、安全輸送対策などのためのコスト増、 収支のいかに関わらず課せられる税金など、事業者にとっ ての負担が多いため、倒産するバス会社も出て来た。 3.公営バス事業の経営 労働条件や給与水準が民営バスと比較して、かなり高い。 赤字を解消するため、最近では不採算路線の一部を民営の バス会社やタクシー会社に移管している。その結果、経営 環境がようやく本格化してきた。ニュータウン輸送で、利 用者が増えた一事業者は黒字を計上しており、黒字=公営 という固定概念を打ち破った。ちなみに函館市交通局は全 て民営バスに、また都営バスは杉並・臨海営業所をはとバ スに業務移管した。 Ⅲ 交通政策とバス事業 1.規制緩和政策とバス政策 (1) バス事業の需給調整規制廃止による事業参入容易化 と運賃規制緩和 これまでは地方運輸局が政府の需給調整による免許制で 行ってきたため、他の事業者が参入することが出来なかっ た。しかし昭和26年から続いた道路運送法が平成14年2月 1日に改正され、安全など一定条件を満たせば容易に参入 出来る。異業種の参入や増車を促進し、競争原理を本格的 に取り入れ、運賃の弾力性も認める。バスは上限以下なら 自由に届け出ることが可能になる。タクシーは認可制を維 持するが、上限運賃以下なら弾力的に設定出来、一連の措 置で値下げやサービス改善を促進する。撤退についてタク シーは事後、バスは半年前までの届出制になる。またタク シーについては、安全性などが損なわれる恐れがある場合、 一時的に新規参入と増車を停止出来る。 (2) 規制緩和政策のもたらしたもの 運賃設定が柔軟になったことがまず挙げられる。それは 儲かる路線は本数を多く増やし、そうでない路線は廃止す るという現象が起きる。参入が容易なら、撤退も容易であ るため、地方では大事な交通手段が奪われる事態になって しまった。また、当初の予想では山手線内に民営バス会社 が参入すると思われていたが、実際バス事業に参入してき たのはタクシー会社だった。バス事業は比較的人件費がか からないので、事業拡大が理由として挙げられる。 2.補助政策 (1) 地方バス路線維持政策 ①政策の背景・施策 国民の必要最低限の交通手段(ナショナルミニマム) 補填のため、補助金の支出が主な政策である。 ②乗合バスの現状 乗合バスは地域住民の日常を支える公共交通機関とし て、重要な役割を果たしてきている。しかしマイカーの 普及、地下鉄の整備、自動車利用の進展、渋滞などによ る走行環境の悪化から、昭和40年代半ばをピークに利用 者は減少し続けており、現在74%の乗合バス事業者の経 営環境が以前厳しい状況にある。しかし、地域住民の日 常生活を支える交通手段としての役割を果たすことが期 待されている一方、地域においては過疎地域を中心に、 営利サービスとして成立しにくくなっている状況から、 全体として生活交通を確保していくことが大きな課題と なっている。平成14年2月に施行された改正道路交通法 により、これまでの需給調整規制を背景とした内部補助 での路線維持は限界にきており、生活交通としての必要 なサービスが効率的で多様な形で提供可能なシステムの 確立を図ることが重要である。 ※地域協議会とは、地域住民の生活に必要な旅客輸送 確保のため、主体の都道府県、地方運輸局、市町村、 バス会社などからなる協議機関を指す。「生活交通確保 のための枠組みづくり」や「その他の生活交通」につ いて、審議する。また具体的な路線に係わる生活交通 路線に関する計画策定の審議の中で、運行負担や助成、 廃止、代替について協議され、そこで調整されたもの は配慮される。 ③国の地方バス路線維持補助制度 地方協議会で認められ、都道府県指定の生活交通路線 の維持・確保について、支援する制度である。平成15年 度から、より地域密着の効率的施策が実施出来るよう、 補助制度の経由が、都道府県(間接補助)から地方運輸 局(直接補助)に改定された。ここで対象となるのが生 活維持路線である。これは複数市町村に跨り、キロ程が 10キロ以上、1日の輸送量が15から150人、1日の運行回 数が3回以上など用件を満たす、広域・幹線的路線を指す。 (例:都バスの梅70柳沢駅―青梅車庫) ④生活交通確保対策を講じる地方財政措置 平成14年2月の需給調整規制の廃止に伴い、地方公共 団体が地域協議会における結論などに基づき、地域の足 確保・街づくりの観点から、地域実情に応じて、路線バ スの維持、行政バスの運行、車両購入などの生活交通確 保対策のため、必要経費に対し、所要の地方財政措置を 講じる。補助対象事業者の用件は乗合事業者で、国と都 道府県持ちで補助対象経費が出る。路線維持費補助は補 助対象経常費用と経常利益の差額(補助対象利益ごと) で、車両購入費補助は実費購入費から10%控除した額(た だし一定の限度額を設定)になる。補助率は国と都道府 県で折半である。

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(2) 運輸事業振興助成交付金制度の創設 昭和51年4月から2年間、軽油取引税の税率が30%引き 上げられたことに伴い、営業用バス、トラックについては、 輸送力確保、輸送コスト上昇などの抑制などを図るための 施策として、公共輸送機関の輸送力確保、輸送サービスの 改善、安全運行確保を目的として創設された。昭和51・52 年度に税負担の15/130の額が、各都道府県から地方自治法 第232条の2の規定に基づく補助金として、関係公益法人(公 営バスは別途)に交付されることになった。また交付金の 内40%(現在は20%)に相当する額が、中央出損金として 中央団体に補助されることになった。 (3) 交付金制度 平成15年度の税制改正により、軽油取引税の暫定税率の 適用期間が更に5年間延長されたことに伴い、平成14年度 までとされていた交付金制度についても、平成19年度まで 5年間延長されることになった。交付金事業に関しては、 地方バス協会から出損された平成9年度までの出損金(当初 は交付金総額の40%、昭和58年度から30%、平成3年度から 20%)により設置された特別基金や、融資斡旋事業を同基 金及び平成10年度以降の出損金を基に、利子補給事業及び バス輸送改善推進事業を実施している。 (4) バス輸送改善推進事業 バス輸送に係わる輸送力の確保、輸送サービスの改善、 安全輸送の確保などを図る事業をさす。融資斡旋事業特別 基金の運用収益の一部を活用して、地方バス協会が実施す る「研究事業」については昭和61年度から、「活性化事業」 については、平成15年度から助成金を交付している。平成 10年度からは、地球温暖化対策、高齢化社会への対応など、 バス業界全体で取り組む事業を支援するため、中央出損金 を財源として、「人と環境にやさしいバス等普及事業」を実 施した。平成15年度は、環境条例に基づくディーゼル車の 走行機関が実施され、粒子状物質(PM)の排出基準に適合 しないバス・トラックは初度登録から7年間の猶予期間経 過後は、指定されたディーゼル車微粒子除去装置(DPF・酸 化触媒)を装着しなければ、1都3県内を通行出来ないこと となり、緊急時に対策を講じる必要があることから、「ディ ーゼル微粒子除去装置事業」を実施した。バス事業者の経 営基盤の安定確保を目的とする資金についての融資斡旋事 業として、融資斡旋事業特別基金を基にして行う一般融資、 同基金の運用収益の一部を活用して行う災害等特別融資 (昭和五七年創設)、交通活性化特別融資(平成3年度創設) がある。融資斡旋内容は、バス車両購入資金、バス事業に 係わる施設整備資金、バス事業従業員の退職金支払い資金、 運転資金などが挙げられる。 Ⅳ 環境問題とバス事業 1.環境問題とバス事業における対応 最近は環境問題を無視して、バス事業を運営していくの は不可能な状態にある。尼崎市や名古屋市のなどにおける 公害訴訟判決や、平成9年の世界規模の京都議定書の採択、 平成14年10月の自動車Nox(窒素酸化物)・PM法の施行、平 成15年10月の1都3県環境確保条例制定などの影響が大き い。例えば、東京都の環境保護条例から見ると、対象地域 は都区内全域(島しょは除く)で、規制内容は、平成15年 10月から、粒子状物資(PM)排出基準に適合しないディ ーゼル車の通行禁止(基準は最新規制値の一段階前の規制 値)である。猶予期間は初度登録日から7日間となる。1 都3県ではDPFなどの装置に対する相応の助成措置がとら れ、国の助成も受け入れられる。その他の県では、一部を 除いて特段の助成措置を設けていない。このエリアから規 制区域に向け運行するバス事業者に、日本バス協会は平成 15年度に会員事業者のDPF装置に対し、所要な助成を行った。 2.グリーン経営の推進 定義は、CO2などの排出ガスの削減・大気汚染問題解決は 言うまでもなく、コスト削減と安全確保を図ることを指す。 手法としては、『バス事業のためのグリーン経営推進マニュ アル』に基づき、認証基準に適合するバス事業者について、 グリーン経営の認証を与え、環境保全運動を計画的に進め ていくものである。グリーン経営認証制度とは、バス事業 におけるグリーン経営を進めるために創設された制度で、 普及方策として、認証取得事業者をグリーン経営の認証が 進むよう検討している。 3.低公害車普及促進対策の予算 大都市部における大気汚染問題に対応するため、地方公 共団体などと協調して、低公害車、DPFの導入に対する支援 措置を講じる。具体的には、使用過程にあるディーゼル車 のCNG車への改造を補助対象に追加した。また道路特定財源 の低PM認定車導入の活用が挙げられる。 Ⅴ 交通バリアフリーとバス事業 1.交通バリアフリー法への施行 目的は高齢者や、身体障害者などが公共交通機関を利用 した際の移動の便利性・安全性の向上を促進する。義務と して、乗降口のうち1以上は幅80cm以上であり、スロープ 板を備えること(ただしリフト付きバスはリフト乗降口が 80cmであれば基準に適合)や、乗降口の床面の高さが地面 から65cm以上とすること、また1以上のいすスペースを確 保することなどが挙げられる。ノンステップバスなどの導 入状況は、バス事業者の協力、国や地方公共団体による補 助制度、日本バス協会の交付金事業による助成措置の充実 などにより、徐々に導入が進んでいる。最近では次世代(普 及型)ノンステッブの標準仕様のバスが増えた。交通バリ アフリー法の施行に伴い、普及し始めた。特徴として、車 いすスペース2箇所確保、ピクトグラム(絵文字)の採用、

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車室内の段差、20cm以下などの高齢者の配慮、通路、握り 棒など見やすい色使いを採用した視覚障害者への配慮、2.3 m幅車両をベースにし、従来(2.5m幅)車と比べ、価格低下 と燃費向上などが、挙げられる。日本バス協会は、平成15 年「ノンステップ仕様」を会員事業者に周知し、導入促進 に努めた。また超低床ノンステップバスやリフト付きバス、 低床スロープ付きバスの新車購入に際して、200万円、低床 スロープ付きバス50万円(1台当たりの助成限度額)の助 成を行った。 2.公共交通移動円滑化対策予算 第1に標準仕様ノンステップバスの導入を挙げる。高齢 者、身体障害者などが、公共交通機関を利用しやすくする ために、標準仕様ノンステップの認定導入制度と共に、認 定された標準仕様ノンステップバスに補助を重点化するこ とで普及を促進する。第2にバス・鉄道相互の共通ICカー ドシステム整備促進である。ICカード導入で乗継時間が短 縮され、利用者の利便性向上に役立つ。そのために必要な センターシステムの構築について、国が補助することによ り、整備を促進する。第3に外国人観光客が利用しやすい、 バス交通の実現に向けた実証実験が該当する。系統が複雑 でわかりにくいことや、行先表示に外国語表記がないこと などが原因で利用困難な状況にあるため、観光推奨バス路 線指定制度創設や、車両や路線図のカラーリング、行先表 示に外国語表記を加えるなどの実証実験を行い、外国語が 利用しやすい交通実現を図る。 Ⅵ バスの未来 1.今後のバス事業の課題 バス輸送人員逓減による旅客輸送シェアが低下しても、 国民生活に果たす役割の重要性は変わらない。今後のバス 事業は、事業活性化・合理化、CO2削減など地球環境問題、 走行環境改善などのバス輸送サービスの充実に努める必要 がある。 2.都市交通問題とバスについて (1) 都市バス輸送の問題点及び改善対策 問題点は交通円滑化対策として交差点の改良、交通情報 提供の充実、違法駐車の排除などの諸対策が講じられてい ない。鉄道を補完するバスなどの大量公共交通機関中心の 交通体系の整備する方向に向かうべきではないか。そのた め輸送効率が悪く、道路混雑の原因となっている自家用自 動車を中心に交通量を減らすことが、大きな課題として挙 げられる。バスなどの公共交通機関を優先させ、交通機関 の有効活用、低公害などを目指した、都市交通の改善政策 を進めていくべきである。 改善対策としては、バス輸送サービスの具体的な改善措 号の導入といった、バスの走りやすい交通環境づくりであ る。第2は利用者に高度なサービスを提供するための措置を 挙げる。具体的にはバスロケーションシステムの導入、停 留所の改善、バス車両の低床化、幅広ドア、冷暖房化、運 行管理などを含めたバス路線総合システムの導入、バスタ ーミナルの整備、などになる。第3に都市構造・需要構造の 変化に対応した輸送力確保対策が考えられる。これはバス 路線再編や新住宅地を走行する循環路線の開設、終車延長、 買物バスの運行、デマンドバス、ミニバスの運行などにな る。今後の交通環境改善対策として、オムニバスタウン整 備総合対策事業、バス路線フレッシュアップ事業などが該 当し、これらを導入することにより、バスの信頼性の回復 と地球環境の改善が期待出来る。 (2) バス利用促進等総合対策事業 自動車事故を防止し、安全な自動車交通の実現を図るこ とが、交通需要や交通の円滑性と密接に関連する。そのた めに車両点検や、整備講習などの自動車事故防止対策、バ スなどの公共交通機関の利用促進、トラック輸送効率化が 考えられる。自家用車や公共交通機関などのバランスの取 れた交通体系を作ることが重要な課題である。目的はバス の利用や共同輸配送の促進など、都市交通の安全・円滑化 を行うことを挙げる。定義はオムニバスタウン整備総合対 策事業、コミュニティバスといった先駆的交通システムな どの整備、バスロケーションシステムなどの利用促進事業 やコミュニティバス導入に関連する事項を補助対象とし、 これらの事業実施に要する経費の一部を地方公共団体と協 調して補助する制度を指す。 3.地方交通問題とバスについての概要 自家用車を中心としたモータリゼーションが大都市以上 に進展しており、自動車公害の増大、道路交通の混雑激化 などによる都市交通問題が深刻化しつつある。そのため、 定時性が確保出来ず、利用者の信頼を失い、バス離れ現象 を進めている。特に過疎地域における人口流失に起因する 輸送需要減少に加え、自家用自動車の世帯当たりの普及率 が他地域より高い。そのためバス輸送が年々減少し続けて いる。経営状況に深刻な影響を与えており、路線によって 維持していくことが困難なのが実情といえる。今後の課題 としては、環境問題の観点から公共交通機関を充実し、利 用者を自家用車から公共交通機関に誘導する施策を講じる 必要がある。また自家用自動車を利用することの出来ない 老人、子供(交通弱者)に対して、生活の足を確保するた めに、地域住民のシビルミニマムとしての公共輸送機関の 役割を明確にし、地域の実情に応じた輸送力を確保してい くことが重要と言える。

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4.乗合バス運賃(平成15年度)について (1) ICカードシステムの導入状況 従来の磁気カードでは、記憶容量の制約により、交通機 関での利用困難性、セキュリティの低さ、定期入れから取 り出す必要性が生じる不便さなどがある。ICチップ内臓カ ードでは、高度のセキュリティ向上や記憶容量が大きくな ったことによる、大量の情報蓄積が可能になる。また規格 が定められ、定期入れに入れたままカードリーダーにかざ すだけで、運賃収受が可能になり、利用者や乗務員の負担 が軽減される。そのメリットを生かし、異なる交通事業者 間での相互利用の普及により、公共交通機関(特に利用者 の減少が続いているバス)利用者の増加が期待される。(平 成18年度からバス共通カードがICカード化される予定) (2) 普通乗り継ぎ運賃制度 バス路線同士又は鉄道などと異なる交通機関を乗り継い で利用する場合には路線ごと、あるいは交通機関ごとにそ れぞれの運賃が合算されるため、乗り継ぎ客に割高感が生 じている。都市交通においては、必然と乗り継ぎ利用する 機会が多いため、利用者の減少に歯止めをかけ、バスのネ ットワークが十分利用されるよう、平成15年10月現在、全 国32の事業者で実施されている。都営バスでは90分以内に 乗り継ぐと100円割引になる「都営バス専用乗り継ぎカー ド」が2,000円で販売されている。 (3) デパート・商店街とバスの連携 バス利用促進のため、集客性の高い中心商店街との連携 を図り、一定額以上の買物客に対して、バス補助券などの 発行を平成15年10月現在、全国32の事業者で実施されてい る。 (4) 100円運賃、高齢者向け定期券、環境定期券について ①100円運賃の設定(ワンコインバス) 鉄道駅から1kmなどの近距離区間で運賃を100円に引き 下げ、割安感とワンコインの便利さにより、バスの利便性 と利用者増を図ろうとするもので、平成15年4月1日現在、 全国214事業者(うち公営事業者14者)が実施している。 ②高齢者向け定期券の実施(シルバー定期券) 65・70歳以上の高齢者を対象として発行される低廉な全 額定期券である。小銭の心配をせず自由に乗降出来、高齢 者のバス利用促進を図るのが目的で、平成15年4月1日現 在、119事業者(うち公営事業者3者)が実施している。 ③環境定期券の実施(エコ定期券) 通勤定期券の持参人と共に乗車する同居家族について、 土日祝日に大人100円、小人50円といった運賃とすることに より、マイカーからバスへの転換を図り、環境保全に寄与 するもので、平成15年4月1日現在、174事業者(うち公営 事業者20者)が実施している。 (5) 乗合バスの定期の利用状況 週休2日制普及や自宅で仕事するようになり出社しない 通勤利用客、学生数減少による定期利用客の減少により、 定期利用客は減少してきている。最近では多摩などにある 大学のキャンパスをまた都心に戻そうという動きがあり、 その周辺地域のバス会社にとって、頭が痛い問題である。 Ⅶ ケーススタディ、都市近郊バスの現状と課題 江戸川周辺の下町一帯走る、都営バス、京成バス、京成 タウンバスの各路線をケーススタディ調査し、以下のよう な改善が必要であると認識した。 1 亀29の合併(都営) 両28は葛西橋行が1番多い。そこでほぼ運行区間が被る亀 29と合併して1つの系統とし、城東・宇喜田地区から西葛 西駅へのアクセスを向上させる方が、利用者が増えるので はないか。また亀29の西葛西駅から中葛西5丁目間は西葛 20の西葛西駅から中葛西6丁目、新小30の中葛西6丁目か ら中葛西5丁目間に振り替える。「両国駅―錦糸町駅―(一 部亀戸駅発)―亀戸駅通り―西葛西駅―臨海車庫・なぎさ ニュータウン」と考える。 2 亀24折返と急行04の復活(都営) まず亀24は亀戸駅を出発し、東大島駅を経由して葛西橋 を終点とし、出入庫便は葛西駅まで運行する。新小21は船 堀駅から現在の臨海22のルートで西葛西駅を目指す。つま り廃止になった急行04を復活させる。(主に平日の朝夕・休 日の日中) 3 始発・最終の両28(始発、最終)(都営) 第六葛西小学校が葛西駅から離れているので、使いづら い。そこで最終を深夜バスに格上げし、江戸川車庫を経由 して葛西駅始発着とする。 4 新小20(都営・京成タウン) まず新小20を一之江駅から葛西駅に延長することで、大 杉地区から葛西方面へのアクセス向上を目指す。そのため 本数を毎時2本とする。 5 臨海28乙(江戸川)と葛西22出入(臨海)の併合(都 営) 一之江駅から臨海車庫まで同じルートにも関わらず、系 統番号が違う状況になり、利用者にはわかりにくい状態に ある。そこで、両系統を「臨海29」として共同運行とし、 現在の「臨海28甲」を「臨海28」にする。 6 瑞75(京成) 以前運行していた一之江駅からの便を一部復活させ、瑞 江駅からの便を増やす。江戸川スポーツランド行を一之江 駅、瑞江駅に分散させることで、都営新宿線沿線から新浦 安への利用機会を増やす。 7 錦37の延長(都営) 現在の終点である青戸車庫を金町駅まで延長する。半蔵 門線が使いづらいのを逆手にとって、金町・四ッ木地区か ら総武線への交通移動の機会を増やす。

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8 小55,56の運賃値下げ(京成) 小岩駅から京成小岩駅入口まで100円とする。総武線と京 成線の乗り換え客が意外と多く、値下げ効果が期待出来る。 9 ミニバスの運行(都営) 平23が平井駅止まりになってしまったことで、葛西駅ま で直接行けなくなった。また東大島駅行も来るが、平日に ごく僅かしかだけである。ただ、AL01の成功から見ると、 バス利用の潜在需要がある。そこでかつて東京駅周辺で走 っていたミニバスの活用を挙げる。大型バスでは席が余り そうだが、ミニバスならちょうど良い。平井・小松川は島 状のため、100∼150円の循環系統が適していると考える。 10 新小21、錦25に3扉バス使用(都営) 京成バスの幕張地区で使用されている連節バスがあるが、 都内では厳しいので、3扉バスで乗客を捌く必要性がある。 混雑が多いとバスの利用者がいつ乗っても座れないと思い、 かえって減少する可能性もある。 11 錦25出入(都営) それなりに本数も多いので、この区間だけ100円にして利 用者を増やし、少しでも運賃収入を増やす方が得策である。 Ⅷ まとめ(これからのバスのあり方) 1.地域主権で町づくり 地域主権(ローカルアジェンダ)という言葉がある。自 分たちの街の日常生活に関わることは自分たちでやろう、 という考え方である。つまりバス路線を自主的に決めるこ とも当てはまる。そこで地域住民とバス会社が色々なアイ デアを出し合って、本当に必要なバスを適正運賃でもって 路線を開設していくことが考えられる。今まではバス会社 が全ての負担をしてきた。そのため、採算が合わないから 廃止しようとすると、地域住民から反対が起こる。これか らはバス会社に全てお任せではなく、自分達もそれ相応を 負担する必要があるのではないか。バスが地域に溶け込む ことで住民に自分たちの移動の足として、愛着を持って利 用してもらうきっかけになる。例えば商店街でバス利用者 に買い物の割引券を配布することで利用者も得する、お店 も儲かる、バス会社も儲かる、3者にとってメリットが大き い。都バスでもお台場でスタンプラリーを期間限定で始め た。1日乗車券を協賛のお店や施設で使用することでスタン プをもらえ、プレゼントを渡すものである。 2.出入庫路線の活用 これらの路線は路線図に乗っていないことが多い。事業 者側は単なる回送であっても、地域住民にとってはものす ごく便利な路線かもしれない。距離が短いものについては、 運賃を安くして少しでも乗客に乗っていただき、空席を無 くし運賃収入を増やすことが重要である。 3.規制緩和による影響 規制緩和でタクシー事業者が、四国では船会社がバス事 業に参入してきた。競争が起きることでサービスが向上す ることは良いことだが、採算が見込めるところばかりに運 行が集中してしまい、生活路線要素が濃いところが廃止に なってしまう危険性もある。選択と集中で儲けを出すこと と、交通弱者のための生活路線の維持とをうまくバランス をとることが大事と言える。 4.ダイヤの見直し バス輸送の根幹として、鉄道駅と鉄道駅と結ぶ結節点輸 送がある。鉄道の連絡が悪く、列車から降りた瞬間バスが 出発してしまうこともある。また金曜日の夜などは臨時便 を出して例え深夜料金を徴収しても、それなりの利用客が 存在するのではないか。 結び バスは高齢化時代に最も適した乗り物である。なぜなら 自分のいるところの近くまで来て乗せ、その上障害になる ものが少ない贅沢な交通手段と考える。バスに与えられた 役割は交通空白地域に参入するだけでなく、地域住民のコ ミュニケーションの潤滑油になることではないか。都内を 見ても下町地域はバスの路線設定次第で、バス利用が伸び る数少ない市場と言える。これは私が下町地域のバスを乗 り歩いて感じた結論である。 参考文献 ①「都バス路線案内みんくるガイド2004年4月版」 東京都交通局発行 (http://www.kotsu.metro.tokyo.jp) ②「都電・都営バス時刻表2004年8月版」 「都営バス・系統別データ集2002」(8月発行) 「都営バス・系統別データ集2003」(8月発行) 都営バス資料館 (http://pluto.pobox.ne.jp/bus/index.shtml) ③「京成電鉄路線バス時刻表vol.2」(2003年9月発行) 「京成タウンバス時刻表vol.6」(2004年5月発行) 全国路線バス時刻表制作委員会 バス旅舎(http://www.rakuten.co.jp/personal-bustabi/) ④「都バス車両データ集2004」(8月発行) 都バス資料編纂委員会編集・発行 都営交通友の会編集協力 ⑤「東京都内乗合バスルートあんないvol.12」(2003年2月 発行) 東京バス協会 ⑥「バスラマインターナショナルNo.82」(2004年2月発行) 「年鑑バスラマ2004→2005」(2004年12月発行)

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⑦「別冊ベストカー バスマガジンvol.5」(2004年6月発行) 株式会社三推社編集、株式会社講談社販売 ➇「路線バスの現在・未来」(2001年1月発行) 「路線バスの現在・未来 PART2」(2001年12月発行) 鈴木文彦著、グランプリ出版 ⑨「バス産業の規制緩和」(2002年1月発行) 寺田一薫著、日本評論社 ⑩「別冊ベストカー THE路線バス」(2001年5月発行) ベストカー ⑪「平成16年度 国土交通白書」(2004年4月発行) 国土交通省編集、株式会社ぎょうせい発行 ⑫「2004年版 日本のバス事業」(2004年6月発行) 社団法人日本バス協会編集、全国バス事業協同組合連合 会発行 ⑬「都バス東京旅情」<東部編>(1984年8月発行) 林 順信著、大正出版 ⑭「バスジャパンニューハンドブックスNo.36 京成電鉄」 (2002年4月発行) BJエディターズ発行、星雲社発売 ⑮「京成バスグループ・バス路線図」(2003年10月発行) 京成バス (http://www.keiseibus.co.jp) ⑯「くらしの便利帳 平成16・17年度」(2004年4月発行) 江戸川区経営企画部広報課編集発行 (1)「日本経済新聞2002年1月29日朝刊13面」 (2)「日経産業新聞2002年7月16日朝刊22面」 (3)「日本経済新聞2003年5月27日朝刊35面」 (4)「日経流通新聞2003年1月23日朝刊1面」 (5)「日本経済新聞2002年1月29日朝刊3面」 (6)「日刊工業新聞2002年2月20日朝刊28面」 (7)「交通新聞2004年3月18日4面」 (8)「交通新聞2004年9月24日1面」 (9)「交通新聞2004年9月28日2面」 (10)「交通新聞2005年1月1日3面」 ※グングン10秒クイズ 京成バスグループガイドブック (http://homepage2.nifty.com/mimomi_aihara/t/kd)

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タクシー事業のあり方

種 村 泰 国

(交通論ゼミ) 目次 はじめに 第1章 タクシーの歴史 (1) 銀座の街に日本で初めてのタクシー走る (2) 円タク”時代の幕開け (3) 戦時中のタクシー (4) 戦後の混乱のなかのタクシー (5) 高度成長期のタクシー (6) 現在のいろいろなタクシー 第2章 タクシー運賃のしくみと規制 (1) タクシー運賃のしくみ (2) タクシー運賃改定のしくみ (3) 規制の概要 第3章 日本と諸外国の運賃制度について (1) 諸外国との比較 (2) 内外価格差の現状とその解消に向けて 第4章 今後のタクシー事業のあり方 (1) 介護タクシー (2) タクシー運賃は高いのか、安いのか はじめに 口々に公共料金と言っても、その種類や料金の決定の仕 方など、分からないことがたくさんある。公共料金という と、すぐに思い浮かぶのが電気、ガス、水道といったとこ ろだが、公共料金は38品目にも及ぶ。総務省の調査による と、公共料金は一般家庭の支出の15%を占めているといっ たように、様々な形で私たちの生活にかかわっている。中 でも高い運賃をとりながらも大幅な赤字を出し、なおかつ 労働条件も悪いと言われるタクシー事業について、調べて みようと思った。皆さんにとって「タクシー」というもの は、どういう存在なのだろうか。高いと言われるタクシー 運賃も、その運賃が設定されているのには、それなりの理 由があるだろうし、もしかしたら高いとはいえないかもし れない。果たして現在のタクシー運賃は、高いといえるの だろうか、 それとも安いといえるのだろうか。通勤、通学 に対しては十二分な存在があるのである。しかし、普段生 活するにあったて目にすることは多い。こんなに不景気の 現在に対し、需要があるのだろうか。需要があるからこそ たくさんのタクシーが走り、目にすることが多いのだろう が。高いと言われるタクシーは、どのように成長していっ か。どのように活動していくだろうか。 第1章 タクシーの歴史 タクシーの歴史を考え、原点として私がパッと思いつい たのが、江戸時代の「町駕籠」や明治時代の「人力車」と いったところだった。日本での原点と考えたらその二つだ ろう。しかし、今でいう「タクシー」ということになると、 「一般乗用旅客自動車運送事業」となっているので、現在 のタクシーとなると自動車の出現以降となる。今では町の 至る所で走っているタクシーも、初めから現在のような車 両数があった訳でもなく、誰でも乗れる乗り物であった訳 ではない。 (1) 銀座の街に日本で初めてのタクシー走る 日本に初めて自動車が入ってきたのが、1898年(明治34 年)2月7日。その約13年後、早くもタクシーは誕生した。 1912年(大正元年)8月5日、数寄屋橋のかたわらに本社 を置く「タクシー自働車株式会社」がT型フォード(写真 1)を6台そろえて営業をスタート(タクシー業界では8 月5日を記念し「タクシーの日」として、いろいろなイベ ント等を行うなど、タクシーのPRに努めている)。料金メ ーターはドイツ製のブルーン、料金はメーターを基本とし て算出された。他にも割引チケット制度を導入するなど、 当時としては画期的なものだった。ちなみに料金は最初の 1マイル(約1.6km)が60銭、そのあと半マイルごとに10 銭。当時の山手線の一区間が5銭、市電が4銭だったこと を考えれば、タクシーはやはり高価な乗り物だったと言え そうだ。そして、はじめは6台でスタートしたタクシーも、 1915年(大正3年)第一次世界大戦にともなう好況に便乗 して、各地のタクシー事業は第一次全盛期を迎え、次々と 新会社が設立されていった。数年後の1921年(大正10年) には、1205台までにもふくらんだ。 写真1 T型フォード

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(2) 円タク”時代の幕開け 1923年(大正12年)の関東大震災で、自動車は唯一動け る交通機関として注目をあつめ、その流れに乗ってタクシ ーも飛躍的に発展した。タクシーは人力車にかわって都会 では主役の輸送機関となる。しかし、この頃は料金がまち まちで70種類にもなっていたため、混乱も多く、乗客から の苦情も絶えなかった。そこで登場したのが、市内一円均 一のいわゆる“円タク”だ。1925年(大正14年)に大阪で 登場したのを皮切りに、東京でも1927年(昭和2年)から 警視庁の後ろ盾で走り出した。競争の激しい東京では、1 円なら虎ノ門から明治神宮間(約10キロ)を走った。しか し、実際は乗客と運転手の掛け合いで料金が決まることが 多く、50銭、30銭と値切るのが常識だった。 (3) 戦時中のタクシー 戦時体制が整うにつれて、最も心配されたのは石油資源 だった。1987年(昭和12年)その翌年にはガソリンが切符 制になるなど少しずつ規制が強化されていった。そして、 太平洋戦争の始まった1941年(昭和16年)、ついにハイヤ ー・タクシーおよびバスのガソリン使用が全面的に禁止さ れた。力もなく、業界にとっては大きな痛手となった。こ こでタクシーの燃料はすべて木炭、薪などの代用燃料に切 り替わることになるが、代用燃料車はガス発生炉の取り付 けに費用がかかるうえ馬営も益々深刻化し、軍の微用、特 注などの合間を縫って闇で仕入れた木炭で細々と走り続け るタクシー(写真2)は、「欲しがりません、勝つまでは」 の戦時標語に悲惨な経営だった。動けないガソリン車は、 国民更生金庫が強制的に買収し、軍用、又は不足する鉄材 のスクラップとなった。そして、戦火が激しくなるにつれ て、タクシー会社の統合がすすんでいったのだった。 写真2 木炭タクシー (4) 戦後の混乱のなかのタクシー 戦後の1947年(昭和22年)、終戦で焼け残ったタクシーは わずか1565台となった。旧道路運送法の公布により、自動 車運送事業は内務省から運輸省(現国土交通省)に移管さ れ、タクシー事業も新たな免許制度、運賃の認可制に改ま り、1948年(昭和23年)には、戦後初の新規免許が生まれ る体制となり、生き残ったタクシー会社の中には、改めて 免許を受ける会社などもあった。またこの頃からタクシー 営業形態にも、大きな変化がはじまっていた。それは「流 し営業」という、従来では考えられない営業形態の登場で ある。終戦後再発足したタクシーも、営業形態は戦前のタ クシー同様に車庫待ち営業が主体で、注文に応じて出庫す る形がとられ、タクシーの新規免許も、この営業形態を基 本に、事業計画にある営業所を中心に、その地域の需要を 予測して審査され、また、免許を受けた事業も、申請地区 の需要に対応することが義務付けられている、と解釈され ていた。1949年(昭和24年)に戦後統制令が解かれるとタ クシー会社数、台数はアッという間に増え、さらに1950年 (昭和25年)の朝鮮動乱による特需ブーム、ガソリン統制 解除などの好条件を背景にまた勢いを取り戻していった。 (5) 高度成長期のタクシー 1955年(昭和30年)に入り、経済の復興が本格化するにつ れて、タクシーは、従来までの高級・贅沢な乗り物から、 大衆の、ごく一般的、便利な乗り物というように利用者の 意識も変化し、わざわざ営業所に電話して呼ぶより通りす がりのタクシーを手軽に拾う客が年々増加し、都心部では、 いわゆる「流しタクシー」というのが新時代の営業形態と して年々拡大し、定着していった。「流しタクシー」利用客 の増加は、タクシー営業形態に大きな変化をもたらすと同 時に、思わぬ副産物もうんだ。「白タク」の発生である。「流 しタクシー」が都心部での営業主流になるにつれ、夜の酔 客を狙って白ナンバーのタクシーが現れ数を増やした。そ れに加え、収入を増やすためには距離を増やすしかなくな ったため、無謀運転が一般化した。これがいわゆる“神風 タクシー”である。マスコミが騒ぎ、国会でも取り上げら れるほどの騒ぎになった。そうした状況を打破するため、 1957年(昭和27年)には 「神奈川乗用自動車協会」が、1960 年(昭和35年)には「東京乗用旅客自動車協会」という、 業界の一本化団体ができた。そしてさらなるタクシーのサ ービスの向上のため、1970年(昭和45年)には東京タクシ ー近代化センターが誕生、時間距離メーターと深夜早朝割 り増し料金を盛り込んだ料金改定を実現させると、まず人 身事故が激減した。しかし、その他昭和48年にはオイルシ ョックが勃発し、日本経済が大混乱に陥り、タクシー業界 もその影響を大いに受けたことは言うまでもない。このよ うに、様々な事件や時代の流れに沿ったり、逆らいつつ、 今では公共的な交通機関としての重要な役割を果たしてい る。こうして、“世界一安全な日本のタクシー”への道を 歩きだしたのである。 (6) 現在のいろいろなタクシー 業界一本化、近代化センターの設立によるタクシーサー ビスの向上はめざましい勢いで実を結び、“日本のタクシ ーは世界一”と呼ばれるまでとなった。 さらなる利便性を高めるため、ワゴンタクシー、寝台タ クシー、福祉タクシー、そして1996年(平成8年)1月に は災害時に機動力のあるタクシーの強みを生かした「タク

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シー防災レポーター制度」も発足。今、タクシーは名実と もに“世のため人のため”、日夜町を走り続けているので ある。 第2章 タクシー運賃のしくみと規制 タクシーの全国での総運送収入は年間約3兆円、1日あ たり75億円を超え、年間利用者も約32億人と公共的な交通 機関として生活に欠くことのできない役割を果たしている。 私たちは、タクシーを利用する場合、どんどん上がってい く料金に対しドキドキした経験はないだろうか。ちなみに 私がタクシーに乗った場合は、メーターを凝視し値段が上 がるごとに舌打ちをする始末だ。そこで、タクシー運賃の しくみはどのようになっているのか、その運賃の具体的な 決定の仕方、どのような規制に縛られ、規制はどの方向に 進んでいるのかをこの章では述べることにする。 (1) タクシー運賃のしくみ 運賃は、各地域によって異なっていて、全国に82の運賃 ブロックがあり、それぞれの地域で同じ運賃が設定される 同一地域同一運賃が用いられている。これは価格競争がお きると、料金上のトラブルの発生、長時間運転など運転手 の労働条件の悪化や、安全性の低下などが考えられるため である。タクシーの運賃は地域ごとに上限値があり、一定 の範囲内で、各社の裁量により自由に決めることができる。 たとえば、2004年12月現在、東京都区部では初乗り660円で ある。しかし、規制緩和により、ある程度運送会社の自由 裁量が認められている。一部の会社では初乗り500円の所も ある。また、タクシーの運賃には消費税がかかっているが、 個人営業のタクシーでは消費税を免除されている(売り上 げが規定以下のため)消費税分安くなっている。また運賃 の種類には距離制運賃、時間制運賃、時間距離併用運賃が ある。以下それぞれを説明すると、 < 距離制運賃> 通常タクシーに適用されている運賃制度。初乗り運賃と それ以降の加算運賃が車の大きさごとに設定されており、 走行した距離に応じた運賃となる。初乗り運賃は、初めの 1.5キロメートルから2キロメートルまで、加算運賃は300 メートルから500メートルごとに一定額が加えられていく。 <時間制運賃> 所要時間に応じた運賃制度で、距離制運賃が適用しがた い場合の特例的なもの。実際には走行していないが、タク シーを拘束したり、観光地の周遊などに用いられる。運賃 設定の方法は、距離制で20キロメートル走行した場合の運 賃の半分が、時間制の30分の運賃に相当するというもの。 <時間距離併用運賃> 速度が一定以下になった場合、その所要時間を距離制メ ーターに換算するシステム。これによってタクシー会社の 採算が合わなくなったり、運転手の労働条件が低下するこ 他にも例外として、 <深夜割増運賃> 22時(一部大都市圏では23時)から翌5時まで加算される 運賃。通常2∼3割加算される。この時間帯は、表示灯に青 く「割増」と表示されることから「アオタン」とも言われ る。 <冬季割増運賃> 北海道や東北、北陸信越地方などで、冬季の道路状況が 劣悪になることに鑑みて、特定の地域を走行するタクシー において、厳冬期間に限って終日加算される運賃。通常2 割加算される。 <割引運賃> 一定金額以上の場合に割引される運賃 <障害者割引> 障害者は障害手帳を提示することにより、地域にもよる がおおむね運賃が1割引となる場合が多い。 などもある。 (2) タクシー運賃改定のしくみ タクシー運賃を決定するには、国土交通省の認可(運賃 認可制度は、個々の企業の個別の認可申請が適切かどうか を行政当局が判断するもの)が必要である。タクシーの運 賃は2年ごとに見直される。改定される運賃は、最低2年 間は維持できるように設定され、そして2年経過した後に、 見直しが必要かどうかを検討するようになっている。 運賃改定を求める申請書は、2年後に予想される収支を 各社が算出し作成する。これは、原価(人件費、燃料費、 保険料など)に2∼3%の公正報酬をプラスして申請され る。こうして作られた申請書に基づいて、すべての会社が 査定されるのではなく、いくつかの基準を満たしている標 準能率事業者が選び出され検討されることになる。 国土交通省が検討した結果、料金の改定が妥当だと判断 されると、標準能率事業者の中から車両規模別に50%以上 (10∼20社)を抽出し、さらに査定が行われる。このよう な手続きを経て料金改定は認可されるが、最終的に事業者 の公正報酬率は1.5%ほどまでに抑えられることが多い。 タクシーの場合、原価に占める人件費の割合が非常に高 い(表1参照)という特徴がある。よってコスト削減が難 しく、業務環境の悪化や、安全性の低下につながりかねな い為、料金改定には大きな問題が含まれていると言えるだ ろう。またもう一つの問題には、料金を改定する際、メー ターを交換したり、料金表示シールを貼りかえる等、諸経 費がかなりかかると考えられることから、事業者側にとっ てデメリットも大きいと言える。

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表1 タクシー事業の原価構成(昭和63年度) 項 目 構成費 人 権 費 76.5% 燃 料 費 5.0% 車 両 償 却 費 2.7% 車 両 修 繕 費 2.3% 保 険 費 1.8% そ の 他 9.5% 営 業 外 費 用 2.2% <タクシー運賃改定手続き> 原則として最初の申請があった時から2ヶ月の期間の間 に申請を受け取ることとし、申請事業者の車両数の合計が 全体車両数の半分を超えることを前提として以下の手順で 運 賃改定要否の検討を開始する。検討の開始にあたっては 関東運輸局において事案の公示を行う。 標準能率事業者の選定 標準能率事業者として下記基準に該当しない者を選択す る。 1、個人タクシー及び5両未満の小規模事業者 2、車齢の特に高い事業者 3、サービスの著しく不良な事業者 4、実働率の低い事業者 5、生産性の低い事業者 6、生産性の低い事業者 運賃改定要否の判定 被準能率事業者の実績年度又は翌年度の収支率が100% 以下の場合運賃改定の要がある。 原価計算対象事業者の選定 被準能率事業者から車両規模別に抽出。 査定 1、輸送力の査定 2、原価の査定 3、所要増収率の査定 4、運賃改定率の査定 処分 標準処理期間は事案の公示後4ヶ月。 注)以上のほか、値下げ申請等の個別申請については具体 的内容に応じて個別に判断する。 (3) 規制の概要 タクシー事業を行うにあたっては、道路運送法に基づい て様々な規制がある。 タクシー事業は道路運送法において、 一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約により乗車定員 10人以下の自動車を貸し切って旅客を運送する一 般自動 車運送事業)と規定され事業への参入(免許制)および撤 退(許可制)、さらに運賃(認可制)などについて同法によ る規制がなされている。道路運送法は昭和26年制定、細部 の規定は施行令(政令)施行規則(国土交通省令)に委任し ているが、施行令においてさらに地方運輸局長に対する権 限の委任を行っており、地方運輸局長が公示などにより具 体的な基準を決める。 この他、大都市圏など指定地域におけるタクシー運転者 の登録やタクシー近代化センターの設置を定めた昭和45 年のタクシー業務適正化臨時措置法、同施行令(政令)お よび施行規則(国土交通省令)や、道路運送車両法および 関係法令などがタクシー事業を規制している法律としてあ げられる。 道路運送法では、第一条において「道路運送事業の適正 な運営及び公正な競争を確保するとともに、道路運送に関 する秩序を確保することにより、道路運送の総合的な発達 を図り、もって公共の福祉を増進すること」となっている。 そしてこの目的を達成するため、行政機関が関与・規制を 行う権限を規定している。 タクシー事業への参入にあたっ ては事業区域ごとに国土交通大臣の免許を得る必要がある。 (道路運送法第4条) 審査基準として、 1.事業が輸送需要に対して適切であり需給の不均等 をもたらさないこと。 2.事業者に適切な計画と遂行能力があること等があ げられている。(同第6条) また増車などは事業計画の変更にあたり、第6条を準用 した審査を経て国土交通大臣の認可を得なければならない (同第18条)。 事業からの撤退(事業の一部又は全部の休止又は廃止) についても国土交通大臣の許可を得なければならないが、 公衆の利便が著しく阻害される恐れがある場合以外は認め られるとされている。(同第41条) 運賃については国土交通大臣の認可が必要であり、認可 基準として、 1.料金が適正な原価を償い、適正な利潤を含むもの であること。 2.旅客の負担能力にかんがみ、利用を困難にするお それがないこと。 3.他の事業者との間に不当な競争をひきおこすおそ れがないこと。 等があげられている。(同第8条)また運賃の割戻しは禁 止されている。(同第9条) この他、発着いずれもが営業区域外にある運送の禁止(同 第24条)や年齢による運転者の制限(同第27条)などの規 定がある。

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このように、タクシー事業は様々な規制に縛られ、とい うか考え方によっては保護されてきたが、国土交通省は事 業者の競争促進、利用者利便の向上の観点から規制の緩和 を推し進めている。新規参入を容易にして業界を活性化し、 サービスや価格競争を促す面から、国土交通省は交通、物 流の全分野で今後、こうした需給調整に関する規制を廃止 する方針を打ち出し、進められている。 第3章 日本と諸外国の運賃制度について 日本のタクシー運賃についてはある程度知る事ができた が、日本のタクシー料金が安いか高いかを知る手がかりと して、諸外国と比較することも重要であると思ったので、 調べてみることにした。 (1) 諸外国との比較 1、主要都市における規制政策 先進国の大都市に限ってみれば、タクシーに全く規制し ていない都市は存在しないようだ。ほとんどの都市では参 入は免許制であり、ニューヨークではタクシー車両数は固 定されている。ロンドンではタクシーの数量規制は行って いないが、資格要件としての厳しい免許規制が行われてい る。また、運賃については、同一地域同一運賃が採られて いるようだ。(表2参照) 表2 諸外国のタクシーに対する規制 都 市 参入規制 運賃規制 ニューヨーク 1、タクシー事業を営むに は、市のタクシー・リム ジン委員会、(以下委員 会」という)から免許を 受けなければならない。 2、免許車両総数は、71 年から11,787両に固定さ れている。 3、タクシーには標識を 表 示 し な け れ ば な ら な い。標識は委員会の認可 を受けて譲渡することが できる。 1、71年の市の条 例により定額で決 定され、その後の 改定は、業界の申 請により委員会が 公聴会を行った後 定額で決定する。 ロンドン 1、タクシー事業を営む には、内務大臣の委任を 受けた警視副総監の免許 を 受 け な け れ ば な ら な い。免許の有効期間は1年 である。 2、免許に当たっては、 申請人の資力・信用等、 当該車両がタクシー条件 に基づく基準に適合して い る か 否 か が 審 査 さ れ る。 1、運輸大臣が定 額 で 決 定 す る 。 2、運輸大臣は事 業者団体の改定の 要求に基づき年1 回見直しを行うこ とが最近の慣行と なっている。改定 に当たっては、警 視総監等の関連政 府機関の意見を聞 かなければならな 2、各国における運賃の比較 タクシー運賃については、欧米各国では、人数割増制や チップの習慣があることから、単純な比較は困難であるが、 日本に比べて割安となっている。これは、タクシー事業の 場合、コストの大部分が人件費であり、各国の運転手の賃 金の差が運賃の差に現れているとも考えられる。特に、諸 外国においては、運転手に多数の移民労働者等の低賃金労 働者を採用していると考えられることも頭に留めておく必 要があると思う。 表3 東京とニューヨークの比較 東 京 ニューヨーク 初乗り ・ 2㌔ まで 660 円( 消 費税5%加算) ・1/5マイルまで2㌦ 運賃 加 算 ・274m毎に80円 ・時速10km以下走行 時1分40秒まで毎に 80 円 ( 消 費 税 5 % 加 算) ・1/5マイル毎に30㌣ ・停車及び低速時(9、 6マイル/時)1分につき 30㌣ 夜 間 ・ 23 時から5 時まで3 割増 ・日曜日と20時から6 時まで1回の乗車の つき50㌣ 割増 その他 ・チップ15∼20%程度 3、米国の規制緩和 米国のいくつかの中小都市で行われたタクシーの規制緩 和政策の要点は参入・退出の自由化、運賃の自由化である。 なお、規制緩和を実施した都市の中には、いったん規制 を緩和した後、弊害の発生により再規制を行った例もあり、 これらの規制緩和に対する評価は一様ではない。しかし、 規制緩和が失敗した理由は、質的規制に対する十分な配慮 や、空港タクシーにおける著しい情報の不完全性に対する 十分な配慮の不足によるものであるので否定できない。 ここでアトランタとシアトルで行われた規制緩和がどう いう影響を及ぼしたかの例をのせておくことにする。 <アトランタの例> アトランタでは免許制でタクシー規制を行っていたが、 1965年サービス規制・社会的規制の撤廃を含むタクシーの 全面的自由化を行った。 しかし、自由以後、参入が増大した反面、タクシーの質 の低下、空港やホテルなどへの集中による混乱などの問題 が生じ、この規制緩和は失敗した。このため、1981年に量 的参入規制の実施、個人タクシーの禁止、地理試験の実施 等を内容とする再規制が導入された。アトランタの場合、 質的規制についての配慮が不足していたこと等に問題があ ったと考えられる。

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<シアトルの例> シアトルで、1979年に規制を緩和し、参入自由化と運賃 の自由化を行った。しかし、悪質な個人タクシーが多数参 入し、サービスの質の低下があった上、運賃は上昇した。 また、空港においてもタクシー運賃の自由化を行ったため、 旅行者を中心として混乱が起こり、その結果、市当局は最 高運賃制を導入した。 このように自由化を行うことで、正当な競争を行うこと はとても難しく、両者ともタクシーの質が低下し、利用者 の混乱が生じていることから、やはり規制はある程度行わ れるべきではないか…。 (2) 内外価格差の現状とその解消に向けて 1、価格の現状 政府・与党内外価格差対策推進本部の申し合わせに基づ き行われた運輸省の「旅客運賃等の内外価格差調査」によ ると、東京のタクシー運賃は欧米の諸都市に比べて割高と なっている。(表4参照) 表4 タクシー運賃の各国比較 (東京を100とした指数。運輸省調べ、チップ込み、為替レ ート:1米ドル=150円50銭、1英ポンド=248円80銭、1西 独マルク=89円10銭、1仏フラン=26円30銭) 注)参考文献により平成2年5月調べのもの 時間帯 距離 東京 ニューヨーク ロンドン パリ 昼 間 2km 5km 100 100 96 71 81 73 82 52 夜間20時 から23時 2km 5km 100 100 112 78 101 81 98 69 夜間23時 以 降 2km 5km 100 100 87 62 78 65 75 55 注) ・チップはニューヨーク15%、ロンドン、パリ10% として加算した。 ・夜間割増は、ニューヨーク、ロンドンでは20時か ら、パリでは19時30分から加算される。なお、ロ ンドンの夜間割増は平日のもの。 ・旅客割増、荷物割増無しで計算した。 2、当事者の見解 <内外価格差について> ・運輸省(現国土交通省)の見解 タクシーは典型的な労働集約型の産業であり、経費に占 める人件費の割合は8割である。近年は運賃改定を控えて きたので、タクシー運転手の実質賃金は目減りしており、 その水準は国内の平均賃金と比べて低い。こういう点を勘 案すれば日本のタクシー料金は高くない。そもそも各国の 価格をそのまま比較してもあまり意味はない。タクシーの サービスの質について国際比較をした場合、日本は世界一 であるとの評価は高いが、価格だけでなくこういった質の 面も見て欲しい。サービス水準をさらにレベルアップさせ ていくために、タクシー近代化センターは大きな役割を果 たしている。(規制緩和を実施していくにあたっては、サー ビスの悪化や安全上の問題を利用者の立場に立ってチェッ クする機能を果たしている。) ・事業者および個人タクシー運転手の見解 各国間の価格を単純に比較するには無理がある。国内で は値上げをしていなくても為替レートが大きく動いたため にドル建てに換算すると高くなることもある。ある銀行の 換算では、タクシーを5キロメートル乗るためには日本で は37分の労働が必要だが欧州ではもっと長く、この基準で 各国比較すると日本のタクシー料金は決して高くない。ま た従来2年おきに運賃値上げをしてきたが、これはコスト に占める人件費の割合が多く合理化努力によるコスト圧縮 が難しいため、インフレによる所得の目減りを防ぐために は仕方のない措置であった。 <運賃認可制、同一地域同一運賃の原則について> ・運輸省(現国土交通省)の見解 同一地域同一運賃は利用者保護の観点からなされている。 タクシーの選択は情報が不足している中で行われるため、 利用者は価格によりタクシーを自由に選択することができ ず、競争原理は適正に機能しない。また価格がばらばらだ と混乱が起こりかねない。 ・事業者および個人タクシー運転手の見解 どの車に乗っても料金が同じというのは利用者の利便に かなっている。同一地域同一運賃の原則は必要だ。タクシ ーは即時財であるため、消費者はどのタクシーを利用する か選択できない場合が多い。タクシーによって料金が違っ ても競争原理は働かないし、かえって混乱を招くだけだ。 ただ、利用者の嗜好やニーズは多様化しており、たとえば 車のグレードによる運賃格差などはもっと認めていったほ うが良い。ハイヤーはタクシーに比べて5倍も高いが、需 要は大きい。 <参入規制について> ・運輸省(現国土交通省)の見解 タクシー事業は公益性の強い事業であるため、免許審査 にあたっては事業者が事業を的確に遂行する能力があるか を厳しく審査している。これに加え、事業が需要に対して 適当であるかも審査している。増車など事業計画の変更も 認可が必要だが、増車は特にタイミングが肝要なため、認 可処理はすぐに行われている。 ロンドンのタクシーは運転手の資格試験が難しいので実 態として新規参入はあまり起こっていない。その他、外国 は何年もタクシーの台数を固定化している例がある。日本 は需給に応じて常に台数の見直しを行っているので外国に 比べると参入は容易である。ただ、実際にはまったくの新 規参入はあまりなく、ほとんどが既存の事業者の増大であ

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