2014 年、鉄を含有する初のリン吸着薬であるクエン酸第二鉄水和物(製品名:リオナ®錠 250mg)が日本で発売されたことを機に、リン代謝と鉄代謝の密接な関連に光が当てられて いる。リオナは登場以来、これら2 つの代謝に影響を与える薬剤として注目されており、同時 に慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)治療は新たな時代に入ったといえる。
一方で、鉄投与による血清フェリチン値上昇を懸念する声もある。しかし、日本人透析患者 の血清フェリチン平均値に対し、同じアジア人である台湾では多くの患者が日本よりも高めで 管理されているにもかかわらず、日台の透析患者の生命予後に大差はないという報告もある。
こうした背景を踏まえ、日本と台湾の透析患者におけるリンと鉄管理の違いやクエン酸第二 鉄の臨床試験成績について比較を行い、日本の透析医療が抱える問題点を明らかにするため、
本座談会を開催した。台湾からは CKD-MBD 診療および腎性貧血治療ガイドライン策定にも 携わられた Wu 先生をお招きし、平方先生の司会の下、日本の腎臓・透析領域分野のエキス パートである、横山先生、秋澤先生と討議を行った。
Ferric Citrate
in Taiwan and Japan
平方 秀樹 先生
福岡腎臓内科クリニック 院長 司会
Mai-Szu Wu 先生
Professor, Division of Nephrology, Department of Internal Medicine, Taipei Medical University
横山 啓太郎 先生
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授
秋澤 忠男 先生
昭和大学医学部内科学講座 腎臓内科学部門 客員教授
出席者座談会 2016年10月15日(土)
宮崎観光ホテル
2017年4月作成 RIO TJ029A
使用上の注意
注1)注意−医師等の処方箋により使用すること
気密容器、室温保存(「取扱い上の注意」参照)
3年(外箱等に表示の使用期限を参照のこと)
貯 法 使用期限
リオナ®錠 250mg Riona®Tab. 250mg
87219
承 認 番 号 承 認 年 月 薬 価 収 載 販 売 開 始 販 売 元 製 造 販 売 元
22600AMX00005000 2014年1月
2014年4月 2014年5月 鳥居薬品株式会社 日本たばこ産業株式会社 和 名
洋 名 商 品 名
一 般 名 日本標準商品分類番号
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 組成・性状
効能・効果 慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
用法・用量
通常、成人には、クエン酸第二鉄として1回500mgを開始用量とし、1日3回食直後に経口 投与する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日 6,000mgとする。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
・本剤投与開始時又は用量変更時には、1〜2週間後に血清リン濃度の確認を行う ことが望ましい。
・増量を行う場合は、増量幅をクエン酸第二鉄として1日あたりの用量で1,500mgまで とし、1週間以上の間隔をあけて行うこと。
包 装
リオナ®錠250mg:100錠(10錠×10 PTP包装)、500錠(10錠×50 PTP包装)、1,000錠
(10錠×100 PTP包装)
取扱い上の注意 アルミピロー開封後は湿気を避けて保存すること。
クエン酸第二鉄水和物を無水物として(クエン酸第二鉄として)250mg含有
白色のフィルムコーティング錠
長径 約14.9mm、短径 約6.9mm、厚さ 約4.6mm JTP 751
セルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、
ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロ ピルセルロース、クロスポビドン、ステアリン酸Ca、ヒプロメロース、酸化チタン、タ ルク、ポリエチレングリコール
有 効 成 分
( 1 錠 中 )
添 加 物
性 状 ・ 剤 形
外 形
サ イ ズ 識 別 コ ー ド
注2)透析療法を受けている患者へは投与禁忌である。
1. 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1)消化性潰瘍、炎症性腸疾患等の胃腸疾患のある患者[病態を悪化させるおそれが ある。]
(2)ヘモクロマトーシス等の鉄過剰である患者[病態を悪化させるおそれがある。]
(3)C型慢性肝炎等の肝炎患者[病態を悪化させるおそれがある。]
(4)血清フェリチン等から鉄過剰が疑われる患者[鉄過剰症を引き起こすおそれがあ る。]
(5)他の鉄含有製剤投与中の患者[鉄過剰症を引き起こすおそれがある。]
(6)発作性夜間血色素尿症の患者[溶血を誘発し病態を悪化させるおそれがある。]
2. 重要な基本的注意
(1)本剤は、血中リンの排泄を促進する薬剤ではないので、食事療法等によるリン摂取 制限を考慮すること。
(2)本剤は、定期的に血清リン、血清カルシウム及び血清PTH濃度を測定しながら投 与すること。血清リン、血清カルシウム及び血清PTH濃度の管理目標値及び測定 頻度は、学会のガイドライン等、最新の情報を参考にすること。低カルシウム血症の 発現あるいは悪化がみられた場合には、活性型ビタミンD製剤やカルシウム製剤の 投与を考慮し、カルシウム受容体作動薬が使用されている場合には、カルシウム受 容体作動薬の減量等も考慮すること。また、二次性副甲状腺機能亢進症の発現あ るいは悪化がみられた場合には、活性型ビタミンD製剤、カルシウム製剤、カルシウム 受容体作動薬の投与あるいは他の適切な治療法を考慮すること。
(3)本剤は消化管内で作用する薬剤であるが、本剤の成分である鉄が一部吸収される ため、血清フェリチン等を定期的に測定し、鉄過剰に注意すること。また、ヘモグロ ビン等を定期的に測定し、特に赤血球造血刺激因子製剤と併用する場合には、
過剰造血に注意すること。
臨床症状・措置方法 機序・危険因子 薬剤名等
これら薬剤の作用を減弱させるおそれが あるので、併用する場合にはこれらの薬剤 の作用を観察すること。
これら薬 剤と結 合 し、吸収を減少させ るおそれがある。
甲状腺ホルモン剤 レボチロキシン等 キノロン系抗菌剤 シプロフロキサシン等
他のクエン酸製剤との併用で血中アルミニ ウム濃度が上昇したとの報告があるので、
同時に服用させないなど注意すること。
クエン酸との併用に より、吸収が促進され るとの報告がある。
テトラサイクリン系抗生物質 テトラサイクリン等 セフジニル
エルトロンボパグ オラミン 経口アルミニウム製剤注2)
水酸化アルミニウムゲル 合成ケイ酸アルミニウム 抗パーキンソン剤 ベンセラジド・レボドパ等
2%以上 2%未満
下痢(10.1%)、便秘(3.2%)、
腹部不快感(2.5%)
腹部膨満、腹痛、十二指腸潰瘍、排便回数増 加、胃腸障害、悪心、嘔吐、便通不規則 胃腸障害
赤血球増加症、肝機能異常、食欲減退、そう痒 症、高血圧
臨床検査
その他
血清フェリチン増加(2.7%) 血中アルミニウム増加、γ-グルタミルトランスフェ ラーゼ増加、ヘマトクリット増加、ヘモグロビン増加 3. 相互作用
併用注意(併用に注意すること)
5. 高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に 投与すること。
6. 妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人、産婦及び授乳婦には、治療上の有益性 が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[これら患者への投与に 関する安全性は確立していない。]
7. 小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。
8. 適用上の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。
(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜に刺入し、更には穿孔をおこして縦隔 洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。)
9. その他の注意
(1)本剤の投与により便が黒色を呈することがある。
(2)腹部のX線又はMRI検査で、本剤が存在する胃腸管の画像に未消化錠が写る可能性がある。
(3)イヌを用いた長期反復投与毒性試験において、最大臨床用量の鉄として約5倍に 相当する用量より、鉄の過剰蓄積に伴う肝臓の組織障害(慢性炎症巣、細胆管の 増生及び肝実質の線維化)が認められた。これらの変化は休薬による回復性はな く、休薬期間中に病態の進行が認められた。
4. 副作用
国内における本剤の主要な臨床試験において、801例中204例(25.5%)に副作用が認め られた。主な副作用は、下痢、便秘、腹部不快感、血清フェリチン増加であった。(承認時)
その他の副作用
下記の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場 合は適切な処置を行うこと。
**2016年1月改訂(第5版)
*2015年5月改訂
クエン酸第二鉄水和物
(Ferric Citrate Hydrate)
種類 頻度
上面 側面
詳細は添付文書をご参照ください。
禁忌を含む使用上の注意の改訂に十分にご留意ください。
クエン酸第二鉄水和物(Ferric Citrate Hydrate)錠
® 登録商標
鳥居薬品株式会社 お客様相談室 TEL
FAX
0120-316-834 0120-797-335 資料請求先 製造販売元
東京都中央区日本橋本町3ー4ー1 販売元
国際比較にみる台湾の透析事情
台湾における
クエン酸第二鉄の臨床試験
クエン酸第二鉄の国内長期試験
リオナ特定使用成績調査の中間報告
酸第二鉄の用量依存的なリン低下効果が示された。
台湾の透析患者の血清フェリチン値は日本に比べて高値で 管理されている。本試験においても投与開始時の血清フェリ チン値(中央値)は 300ng/mL を超えていた。ベースライン からの 4g/ 日群、6g/ 日群の投与 8 週後の血清フェリチン値 の増加量はそれぞれ 73.9ng/mL、103.4ng/mL であった。
トランスフェリン飽和度(TSAT)は4g/ 日群、6g/ 日群ともに約 5%上昇し、ヘモグロビン値は用量依存的な上昇が認められた。
プラセボ群と比べて有意に多い有害事象は黒色便のみで あった(4g/ 日 群、6g/ 日 群、プラセボ 群 の 順 に、37.3%、
37.5%、5.6%)。消 化 器 症 状 で は 主 に下 痢 が みられ た が
(4g/ 日 群、6g/ 日 群、プ ラ セ ボ 群 の 順 に、6.7%、4.2%、
5.6%)、プラセボ群と比較し有意差は認められなかった。黒色 便自体は有害ではないが、患者の不安感を引き起こすことが あるため、処方時には予め説明が必要である。
引用文献
1)The 2015 USRDS Annual Data Report Volume2 Chapter13: International Comparisons 2)Lee, CT. et al.: J Nephrol 28(1): 105-13, 2015
米 国 腎 臓データベ ースシステム(USRDS) による 52 カ 国の透析医療統計データ比較では、2013 年末における人 口 100 万 人 あたりの 透 析 患 者 数が、台 湾は 1 位で 3,138 人であり、2 位が日本の 2,411 人、3 位が米国の 2,043 人 であった1)。
同時期の 100 万人あたりの新規透析導入患者数でも台湾は 1 位で 458 人であり、3 位米国(363 人)、5 位日本(286 人)
と1)、台湾は世界的にみても透析大国であることがわかる。過 去数年間、台湾の新規透析導入患者は漸増を続けていたが、最 新の台湾腎臓データベースシステム(TWRDS:台湾全国の透 析患者 11 万人以上のデータベース)によると、2014 年末の 新規透析導入患者は 455 人で、増加に歯止めが掛かっている。
しかし、依 然 として 慢 性 腎 臓 病(CKD)から 末 期 腎 不 全
(ESRD)への進展は、台湾にとって大きな経済負担にもなって おり、その予防と治療は非常に重要である。
台湾ではリン吸着薬として、1980 年代初めまではアルミニ ウム含有製剤、90 年代からはカルシウム含有製剤が使用され ていたが、その後、いずれの成分も含まない製剤が登場し、
2015 年、クエン酸第二鉄を主成分とするリン吸着薬が使用 されるようになった。
Taiwan Nephoxil Trials では、高リン血症を呈する台湾 人血液透析患者 183 例を対象に、クエン酸第
二鉄(製品名:Nephoxil カプセル 500mg)を 4g/ 日、6g/ 日、またはプラセボを 8 週間投与 し、血清リン濃度低下効果および安全性を無作 為化二重盲検法により検討した(図 1)2)。PPS 症例 166 例の解析では、4g/ 日群の投与開始 時 の 血 清リン濃 度 は 6.96mg/dL で あり、投 与開始 1 週で 5.58mg/dL まで速やかに低下 した(図 2)2)。投与 8 週後の血清リン濃度の低 下量は 1.60mg/dL であった。6g/ 日群では、
投与開始時の血清リン濃度は 6.95mg/dL で あり、投 与 開 始 1 週 で 4.94mg/dL まで 速や かに低下した(図 2)2)。投与 8 週後の血清リン 濃 度 の 低 下 量は 2.27mg/dL で あり、クエン
1 月〜 2016 年 1 月;対象 289 例)4)によると、1 日平均投与 量は 500 〜 1,000mg が 41.2%、1,500 〜 2,000mg が 41.5%であった。このようにリオナの投与量は治験時の投与 量に比して少なく、比較的慎重に投与されていることから、他 のリン吸着薬との併用が一般的であることが示唆された。
血 清リン濃 度 はベ ースラインの 6.30mg/dL から 4 週 で 5.64mg/dL に 低 下 し、血 清 カ ル シ ウ ム 濃 度 や 血 清 intact-PTH 濃度に変化はみられなかった。一方、鉄・貧血関 連 検 査 値 に つ い て は、24 週 時 点 で TSAT は 25.0% から 35.8%、ヘモグロビン値は 10.72g/dL から 11.52g/dL、
血清フェリチン値は 51ng/mL から 128ng/mL へ上昇して いた。
なお、承認時に最も頻度の高かった下痢の副作用(10.11%)1)
は、本中間報告では 2.42%であった。
上記の結果から、リオナは実臨床において血清カルシウム 濃度や血清 intact-PTH 濃度に影響を与えずに、既存治療で リンコントロールが不十分な症例(血清リン濃度 6mg/dL 以上)
を管理することができる薬剤であるといえる。
引用文献
1)Yokoyama, K. et al.: J Ren Nutr 24(4): 261-7, 2014 2)Lee, CT. et al.: J Nephrol 28(1): 105-13, 2015 3)Lewis, JB. et al.: J Am Soc Nephrol 26(2): 493-503, 2015
4)リオナ錠 250mg 特定使用成績調査(調査期間:2015 年 1月〜 2020 年 1月)中間報告
高リン血症を呈する血液透析患者 180 例を対象にクエン酸 第二鉄(リオナ)を 52 週間投与した日本の第Ⅲ相長期投与試 験1)では、リオナ投与後、投与開始時に 6mg/dL 台であった 血清リン濃度が低下し、投与終了時まで日本透析医学会のガ イドラインで定める管理目標値内で維持された(試験終了時の 血 清リン濃 度 平 均 値 5.42±1.32mg/dL)。平 均 投 与 量 は 2.73g/ 日で、台湾の試験2)や米国の長期試験3)に比べると少 ない用量でリンが良好に管理されていた。
リオナ投与後に一部鉄の吸収が認められ、TSAT は 16 週後 に約 40%に達した 後に、血 清フェリチン値 は 28 週 後に約 250ng/mL に達した後にそれぞれ定常化した。血清フェリチ ン平均値の上昇は用量依存的で、1.5g/ 日の投与では試験期 間を通じて 200ng/mL を超えることはなかった。また、投与 開始後に、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)は減量され、多く の症例で静注鉄製剤が中止された(図 1)1)。
リオナの使用実態をまとめた特定使用成績調査(調査期間:
2015 年 1 月〜 2020 年 1 月)の第 1 回中間報告(2015 年
F e r r i c C i t r a t e
下効果が示された。
Mai-Szu Wu
先生Professor, Division of Nephrology, Department of Internal Medicine, Taipei Medical University
台湾の透析事情と
クエン酸第二鉄の臨床試験について
F e r r i c C i t r a t e
横山 啓太郎
先生東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授
日本における
クエン酸第二鉄の臨床試験と 特定使用成績調査について
図 2 クエン酸第二鉄投与後の血清リン濃度の推移〈海外データ〉
図 1 台湾におけるクエン酸第二鉄の臨床試験デザイン〈海外データ〉
8
7
6
5
4
(mg/dL)
8-week, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled
3 treatment arms(2:2:1)
・ ferric citrate 6g/day
・ ferric citrate 4g/day
・ placebo
Lee, CT. et al.: J Nephrol 28(1): 105-13, 2015より作図 Lee, CT. et al.: J Nephrol 28(1): 105-13, 2015より作図
7.53
4.94
7.65
5.60
4.85
7.42
5.38
4.69
−1.60mg/dL
−2.27mg/dL 7.37
6.96 6.95
5.58
Subject
Design
183 ESRD patients on Hemodialysis
0 1週 4週 8週
血 清 リ ン 濃 度
図 1 鉄・貧血関連検査値の推移
300
250
200
150
100
50
0 100
50
0
(ng/mL)
-1 0 2 4 6 8 10 12 16 20 24 28 36 44 52(週)
0~12週
12~28週 28~52週 70
60
50
40
30
20
10
0
(%)
12.5
12
11.5
11
10.5
10
(g/dL)
6000
5000
4000
3000
2000
1000
(IU/週)
血 清 フ ェ リ チ ン
TSAT ヘモグロビン ESA
4週あたりの静注鉄投与量
(mg)
Adapted from J Ren Nutr, Vol24(4), Yokoyama, K. et al. Long-term safety and efficacy of a novel iron-containing phosphate binder, JTT-751, in patients receiving hemodialysis., 261-7, Copyright 2014, with permission from Elsevier 日本薬学会 YAKUGAKU ZASSHI 第135巻4号当該ページより転載(Fig.2を着色・和訳改編)
(血液透析患者 平均投与量 2.73g/ 日:n=180)
*ESA 換算量…遺伝子組換えヒトエリスロポエチン:ダルベポエチン アルファ:エポエチン ベータ ペゴル=1:200:200で換算量を算出 TSAT
ヘモグロビン ESA換算量* 血清フェリチン
平均値
対 象
試験デザイン
方 法
評 価 項 目
:高リン血症を呈する維持血 液透析施行中の慢性腎臓病 患者 180 例
:多施設共同、非盲検、非対 照試験、長期投与試験
:1 週 間 の 観 察 期 終 了 後、
リオナを1日3 回、食直後に 52 週間投与した。投与量は 1.5g/日から開 始し、1.5 〜 6g/日の範囲で用量を調節、
血清リン濃度の推移および 安全性を検討した。
:主 要 評 価 項目:
血清リン濃度 副次的評価項目:
血清補正カルシウム濃度、
血清 intact-PTH 濃度など 6g/日群
(n=66)
4g/日群
(n=72)
プラセボ群
(n=28)
自国データに基づくガイドラインで リン管理を優先
透析患者の予後を考慮した治療戦略 : Iron-Anemia-CKD-MBD balancing
透析患者の約60%が血清フェリチン値 300〜800ng/mLだが生命予後は良好
CKD-MBD GLで血清リンとカルシウム濃度の 9分割図を用いて治療管理法を示す
日本では潜在的鉄不足の患者が多い
新しい腎性貧血治療GLでは鉄補充の要件を緩和
者の 5 年生存率をみると、日本と台湾では両者間に大差はな い。日本ではこれまで血清フェリチン高値は生命予後不良に関 連すると考えられてきたが、台湾における患者の生命予後と血 清フェリチン管理状況は、血清フェリチン値と生命予後との関 連性について再考する必要性を示唆している。
透 析 患 者 の 生 命 予 後を考 慮した 治 療を行うには、鉄、貧 血、CKD-MBD の 3 要素を連動させて管理することが重要 で あり、これ を 新 た な 治 療 概 念“Iron-Anemia-CKD-MBD balancing”として提唱したい。この概念に沿った治療を行う ためには、次の 3 つに留意する必要があると考える。
第 1 に、鉄欠乏は有害であり不足している患者には積極的に 鉄 を 投 与 する必 要 が ある。CKD 患 者 で は 鉄 が 欠 乏 すると fibroblast growth factor(FGF)23 上昇を介して心不全の リスクとなる可能性が示唆されている。
第 2 に、鉄の補充は経口で行うことが好ましく、経静脈投与 は安全性の観点から推奨することができない。経静脈的に投与 された鉄は、経口投与された鉄に比べ生体利用率が高く即効性 があるとされるが、その一方で有害な非トランスフェリン結合 鉄(NTBI)が血中に存在することによる酸化ストレス5)や感染 症6,7)、心血管疾患6)など、多くのリスクを伴うといわれている。
第 3 に、高リン血症患者にはリン吸着薬を投与してリン管理 を厳格に行う必要がある。透析患者に対するリンの有害作用は 周知の事実であり、透析患者の生命予後は、高リン血症に対す る治療により良くも悪くもなる可能性があるこ とを念頭に置く必要がある。
このように CKD-MBDと腎性貧血には、さま ざまな要素が複雑に関連しており、1 つの要素 に介入して対処できるものではない。常に前述 の 3 条件に留意し、CKD-MBD と鉄欠乏性貧 血、鉄補充の全てにバランス良く対処すること を心掛けなければならない。
引用文献
1)2015 台湾慢性腎臓病臨床診療指引 2)Lin, YC : PloS One 10(6): e0129737, 2015 3)Hung, SC. et al.: Nephrology 19(12): 735-9, 2014 4)日本透析医学会 : 2015 年版「慢性腎臓病患者における腎性貧血
治療のガイドライン」. 透析会誌 49(2): 89-158,2016 5)Farrow, EG. et al.: Proc Natl Acad Sci USA 108(46):
E1146-55, 2011
6)Kuo, KL. et al.: J Am Soc Nephrol 25(11): 2596-606, 2014
7)Agarwal, R. et al.: Kidney Int 88(4): 905-14, 2015
台 湾 の CKD-MBD 診 療 ガ イド ラ イ ン(GL)1)は、日 本 の CKD-MBD 診療 GL 同様、自国のデータベース(TWRDS:台 湾全国の透析患者 11 万人以上のデータベース)2)を用いてミ ネラルの管理目標値を設定している。血清リン濃度の管理目 標値は CKD ステージ 3 〜 4 の患者で 2.7 〜 4.6mg/dL、ス テージ 5 の透析患者で 3.5 〜 5.5mg/dL であり、台湾でも日 本と同様にリンのコントロールをカルシウム、intact-PTH に 優先して行っている。
2015 年の台湾の腎性貧血治療 GL3)では、全ての腎臓病 の 一 般 診 療において、血 清フェリチン管 理 目 標 値を 300 〜 500ng/mL、TSAT 管理目標値を 30 〜 50%としている。
こ れ は、鉄 補 充 療 法 の 開 始 基 準 を、血 清 フ ェリ チ ン 値 100ng/mL 未満かつ TSAT20%未満(鉄利用率を低下させる 病態が認められない場合は、血清フェリチン値 100ng/mL 未 満 ま た は TSAT20 % 未 満)と し、血 清 フ ェ リ チ ン 値 が 300ng/mL 以上となる鉄補充療法は推奨しない日本の腎性貧 血治療 GL4)とは大きく異なる。この結果、台湾では、患者の約 60%が血清フェリチン値 300 〜 800ng/mLに管理されてい る(図 1)3)。
このように鉄管理は、日本の場合と大きく異なるが、透析患
これまでわが国の腎臓内科医は鉄過剰を過度に懸念し、血 清フェリチン低 値を保 つ 管 理を推 奨してきた。2008 年 版 GL3)では「鉄補充療法の開始基準は TSAT20%以下、および 血清フェリチン濃度 100ng/mL 以下とする」とされ、この結 果、2012 年末時点でわが国の透析患者は TSAT20%未満、
血清フェリチン値 50ng/mL 未満の患者がいずれも 35%に 達した2)。血 清フェリチン値が 100ng/mL 未 満 の 患 者は約 60% であり、これは血清フェリチン平均値が約 800ng/mL の米国はもとより4)、同じアジア人である台湾の透析患者の約 6 割が血清フェリチン値 300 〜 800ng/mL に管理されてい る5)ことに鑑みると、日本では潜在的な鉄欠乏患者の多さが際 立っているといえる。
2015 年版 GLでは、鉄利用率を低下させる病態がない場 合、「血清フェリチン値100ng/mL 未満または TSAT20%未 満」で鉄補充を行うことが新たに提案され、血清フェリチン値、
TSAT のどちらか一方の基準を満たした場合に鉄補充が推奨 された6)。これは 2008 年版 GL では、
血 清フェリチン値 100ng/mL 以 下と TSAT20%以下の両方を満たさなけれ ば鉄補充を推奨しなかったことを考慮す ると、鉄補充療法の開始基準が緩和さ れたといえる。今後、鉄補充を必要とす る患者に適切に鉄を投与しやすくなった と考えられる。
引用文献
1)日本透析医学会:2012 年「慢性腎臓病に伴う骨・ミネ ラル代 謝 異 常の診 療ガイドライン」. 透 析 会 誌 45(4):
301-56,2012
2)日本透析医学会 : 図説 わが国の慢性透析療法の現 況 2012 年 12月31日現在
3)日本透析医学会: 2008 年版「慢性腎臓病患者におけ る腎性貧血治療のガイドライン」. 透析会誌 41(10): 661-716, 2008
4)Ricardo, AC. et al.: Clin J Am Soc Nephrol 10
(10): 1757-66, 2015
5)Hung, SC. et al.: Nephrology 19(12): 735-9, 2014 6)日本透析医学会: 2015 年版「慢性腎臓病患者におけ る腎 性 貧 血 治 療 のガイドライン」.透 析 会 誌 49(2): 89-158, 2016
「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライ ン(CKD-MBD GL)1)」で最も重視されているのはリンの管理
(目標値:3.5 〜 6.0mg/dL)であり、次いでカルシウム(目標 値:8.4〜10.0mg/dL)と副甲状腺ホルモン(PTH)(目標値:
60 〜240pg/mL)とされている。
日本では現在、6 種類のリン吸着薬が臨床応用されており、
そのうちクエン酸第二鉄(リオナ)、ビキサロマー、炭酸ランタ ン、炭酸カルシウムの 4 剤が透析患者、非透析患者の両方に 使用可能である。これらのリン吸着薬をはじめとする治療管理 法について、日本の CKD-MBD GL では、血清リン濃度と補 正カルシウム濃度による 9 分割図で示している(図 1)1)。 国 内 の 透 析 患 者 を 対 象とした 2012 年 末 国 内 統 計 調 査
(Japan Renal Data Registry:JRDR)における各管理目 標値の達成状況の検討では、血清リンが約 7 割、血清補正カ ルシウムが約 8 割、PTH は約 6 割で、指標ごとの達成率は比 較的良好であった2)。しかし、リンとカルシウムとPTH の 3 指 標全てが目標値内にあった患者は約 3 分の 1 と低く、総合的 なコントロールの難しさも示された2)。
M a n a g e m e n t o f C K D - M B D a n d R e n a l A n e m i a
台湾における
CKD-MBDと腎性貧血の マネジメント
M a n a g e m e n t o f C K D - M B D a n d R e n a l A n e m i a
日本における
CKD-MBDと腎性貧血の
マネジメント 秋澤 忠男 先生
昭和大学医学部内科学講座 腎臓内科学部門 客員教授
と台湾では両者間に大差はな
Mai-Szu Wu
先生Professor, Division of Nephrology, Department of Internal Medicine, Taipei Medical University
Hung, SC. et al.: Nephrology 19(12): 735-9, 2014©John Wiley and Sons 100
80
60
40
20
0
(%)
1995 1996 1997 1998 1999 2004 2005 2006 2007 2008 2009 201 0
2011 2012
Cumulative Percent of Patients
>800
300
~800
<300
(ng/mL)
Ferritin
32
51 17
36
41 23
40
32 27
45
30 26
46
27 27
49
31 19
49
31 20
59
25 6
61
26 5
59
27 5
60
26 5
61
26 5
60
27 5
60
28 5 図 1 台湾の血液透析患者における血清フェリチン分布の経時変化〈海外データ〉
6.0 3.5
10.0
8.4
炭酸Ca↓
Ca非含有リン吸着薬↑
活性型ビタミンD↓
シナカルセト↑*
日本透析医学会: 2012年「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」. 透析会誌45(4): 301-56, 2012
1
Ca非含有リン吸着薬↑
炭酸 Ca↑
活性型ビタミンD↓
シナカルセト↑*
2
炭酸 Ca↑
Ca非含有リン吸着薬↑
シナカルセト↓**
3
炭酸 Ca↓Ca非含有リン吸着薬へ切り替え 活性型ビタミンD↓
シナカルセト↑*
4
リン、Ca 管理目標値
5
炭酸 Ca↑
炭酸 Ca の食間投与 活性型ビタミンD↑
シナカルセト↓**
6
炭酸 Ca↓Ca非含有リン吸着薬↓
活性型ビタミンD↓
7
Ca非含有リン吸着薬↓
炭酸 Ca↓
活性型ビタミンD↑
8
Ca非含有リン吸着薬↓
炭酸 Ca の食間投与 活性型ビタミンD↑
シナカルセト↓**
9
(mg/dL)
血清リン値(mg/dL)
「↑」は開始または増量、「↓」は減量または中止を示す。
*血清 PTH 濃度が高値、**もしくは低値の場合に検討する。
十分な透析量の確保 食事指導(リン制限)
食事摂取量および 栄養状態の評価 透析液
Ca濃度の 変更を検討
高Ca血症の 要因検索 透析液Ca濃度の
変更を検討
血清補
正
Ca
値
図 1 リン、カルシウムの治療管理法『9 分割図』
平方 秀樹 先生
福岡腎臓内科クリニック 院長
司会 出席者
出席者 出席者
秋澤 忠男 先生
昭和大学医学部
内科学講座 腎臓内科学部門 客員教授
Mai-Szu Wu 先生
Professor,
Division of Nephrology, Department of Internal Medicine, Taipei Medical University
横山 啓太郎 先生
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授
平方(司会)
本日は、日本と台湾における透析医療の現状につ
いて、リン管理や鉄管理を中心に先生方よりお話を伺います。先ほど、Wu 先生より透析患者の生命予後を考慮した治療と して、Iron-Anemia-CKD-MBD balancing という新たな概 念を提唱いただきました。高リン血症治療剤として上市された クエン酸第二鉄は、一部の鉄が吸収されることが分かっており、
改めてリン代謝と鉄代謝を考えるきっかけとなりました。この 概念もクエン酸第二鉄の登場が一つのきっかけになったので はないでしょうか。
Wu クエン酸 第 二 鉄はこれらの 要 素に影 響を及 ぼすリン吸 着 薬 で あり、透 析 患 者 に 対 す る Iron-Anemia-CKD-MBD balancing を考慮した一つの選択肢となり得ると考えます。
平方 日本でクエン酸第二鉄(リオナ)の開発に中心的に携わっ てこられた横山先生より、リオナの使用状況についてお話を伺
いたいと思います。
横山 リオナ の 特 定 使 用 成 績 調 査 第 1 回 中 間 報 告1)からは、
約 95% の 患 者 が 平 均 投 与 量 2,000mg/ 日未 満 で比 較 的 慎重に使用されていたこともあり(図 1)、実臨床での下痢の 副 作 用 は 2.42% でし た。血 清 リン 濃 度 は 投 与 4 週 後 に 5.64mg/dL と管理目標値内にコントロールされており、鉄・
貧 血 関 連 検 査 値 で あ る ヘ モ グ ロビ ン 値 は、24 週 時 点 で 10.72g/dL から 11.52g/dL へ 上 昇して いました(図 2)。
実臨床においては副作用の頻度を高めることなく、上手にリン コントロールができていると考えられます。
平方 Wu 先生、台湾でのクエン酸第二鉄の使用状況はいかが でしょうか。
Wu 台湾でも日本と同様にクエン酸第二鉄を投与すると血清リ ン濃度の低下と鉄・貧血関連検査値の上昇が認められました2)。 血清フェリチンや TSAT が上昇することから、台湾の腎性貧血 ガイドライン3)に則って、血清フェリチン値 300ng/mL 未満、
TSAT30% 未満の患者に適正に使用するようにしています。
平方 リン吸着薬としての使い方はどうでしょうか。
Wu 台湾では国の健康保険で使用が認められているリン吸着 薬は、カルシウム製剤とアルミニウム製剤に限られているため、
主にカルシウム製剤を使用しても十分なリンコントロールがで きない場合に、クエン酸第二鉄を含めた他のリン吸着薬が使用 されます。
秋澤 近年、過剰なカルシウム負荷が血管石灰化を助長し生命 予後を悪化させることが示されています。日本透析医学会の ガイドラインでは炭酸カルシウム製剤の投与量の上限を 3g/
日とするように推奨されています4)。台湾の医師は、透析患者 におけるカルシウム過剰についてどう考えていますか。
Wu 台湾はカルシウム製剤の投与量の上限は 10g/ 日であり、
透析患者のカルシウム濃度は以前に比べ上昇傾向にあります。
これに対してわれわれは、透析液のカルシウム濃度を下げる、
あるいは保険の問題がクリアされれば、積極的にクエン酸第二 鉄などのカルシウム非含有製剤の服用を勧めています。
日本と台湾のクエン酸第二鉄の使用状況
CKD患者における高リン血症/腎性貧血治療戦略
〜リン・鉄・ESAの観点から〜
Ferric Citrate in Taiwan and Japan
座談会
2016年10月15日(土) 宮崎観光ホテルリオナ錠 250mg 特定使用成績調査(調査期間:2015 年 1月〜 2020 年 1月)中間報告 リオナ錠 250mg 特定使用成績調査
(調査期間:2015 年 1月〜 2020 年 1月)中間報告
図 2 リオナ特定使用成績調査におけるリオナ投与による鉄・貧血関連検査値の推移
図 1 リオナ特定使用成績調査におけるリオナの 1 日平均投与量
9
8
7
6
5
4
3
2 0 n=273
4週 261
12週 267
16週 53
24週 49
(mg/dL)
血 清 リ ン 濃 度
6.30
5.64
5.28 5.38 5.55
14
13
12
11
10
9 0 n=289
4週 272
12週 276
16週 53
24週 50
(g/dL)
ヘモグロビン
10.72
11.14
11.52 11.52 11.47
平均値±標準偏差 平均値±標準偏差
ヘモグロビン値の推移 血清リン濃度の推移
1日投与量の分布
1,500mg≦
<2,000mg
41.5
% 2,500mg≦ <3,000mg0.3
%3,000mg≦
0.3
% 2,000mg≦ <2,500mg4.5
%<500mg
3.1
%1,000mg≦
<1,500mg
9.0
% 500mg≦<1,000mg
41.2
%平方 台湾では透析患者の鉄関連検査値の管理目標値は血清 フェリチン値 300 〜 500ng/mL、TSAT30 〜 50% であり、
鉄補充について比較的寛容な考えであることが分かりました。
保存期 CKD 患者への鉄補充に対する考え方も同じでしょうか。
Wu 鉄は生体に必須の元素であり、鉄欠乏は好ましくありませ ん。これは透析患者でも保存期 CKD 患者でも同様です。台湾 の 全 民 健 康 保 険 研 究 デ ー タ ベ ー ス(Taiwan National Health Insurance Research Database)に登録され、赤 血球造血刺激因子製剤(ESA)投与を受けている保存期 CKD 患者 31,971 名を対象に、鉄剤投与群と非投与群で予後を比 較した前向き観察研究の結果、鉄剤投与群は非投与群に比し て有意に生命予後が優れており(図 3)、入院率も低下しました
(図 4)5)。鉄欠乏を伴う心不全患者に鉄を補充すると疲労スコ アの改善が報告6)されているように、私も貧血患者への鉄補充 により同じことを経験したことがあります。
秋澤 大規模な研究であり、鉄補充が生命予後に好影響をもた らすことを支持するエビデンスと考えます。
Wu 腎性貧血の治療法は 2 通りあり、一つは鉄補充療法、もう 一つは ESA の投与です。鉄補充療法において、鉄欠乏を避け るのはもちろんのこと、鉄の投与方法にも配慮しなければなり ません。台湾では一般的に透析ごとに 100mg の静注鉄を 6 週間にわたって投与しますが、これは日本に比べてかなり投与 量が多いといえます。前述の通り、鉄の経静脈投与は酸化スト
レスや感染症など安全性が懸念されます。今後台湾でも鉄の 投与方法を再考しなければならないと思っています。
横山 日本でも鉄の経静脈投与による酸化ストレスの影響が懸 念されており、最近になり経口投与が見直されています。最近 では高リン血症を呈する血液透析患者に対してリオナを投与し た場合、酸化ストレスの産生が抑制されたとの報告もあります
(図 5)7)。
平方 ESA の使い方についてはどうお考えでしょうか。
Wu 可能な限り低用量の ESA でヘモグロビンの管理目標値を 維持すべきと考えます。これは医療経済的な観点のみならず、
高用量の ESA は脳心血管疾患や感染症のリスクとなることが 知られているためです8)。結局のところ、鉄も ESA も便益と弊 害を考慮して適切に投与することが大事なのです。なお、腎性 貧血の治療の際には患者の炎症状態にも留意する必要があり ます。患者に炎症があると血清フェリチン値は上昇するので、
正しく鉄の評価を行うことが困難です。また、炎症は ESA 抵抗 性(ERI)の上昇にも関与します9)。そのため炎症がある状態で ESA の投与を行うと、結果的に過剰な ESA の投与に繋がる恐 れがあります。
平方 やはり鉄欠乏は避けるべきであり、適正に補充しなけれ ばいけないということですね。しかし、日本では腎性貧血の治 療に輸血を行っていた時代の名残もあり、いまだに鉄過剰症を 過度に懸念し、鉄補充に対してかなり消極的な考えを持った医 師がみられるようですが、先生方はいかがお考えですか。
秋澤 日本には透析患者の血清フェリチン値が100ng/mLを超えた 症例で予後が悪化10)したという観察研究を根拠に、血清フェリチン 値が高くならないような治療を意識する風潮が見受けられます。
平方 2015 年版腎性貧血治療 GL9)で鉄剤の中止基準である 300ng/mL が設定されるまでは、鉄剤の中止基準を血清フェ リチン値 100ng/mL であると思い込む医師もいました。しか し、鉄投与と予後の関係を血清フェリチン値で判断することは 妥当なのでしょうか。
秋澤 前述の通り、日本には血清フェリチン値が高値の患者は ほとんどおらず、血清フェリチン値が高く予後が悪かった患者 の中には感染症や悪性腫瘍等があるなど、特殊な症例が含ま れています。各種の観察研究の結果にも大きなバイアスがか かっているわけで、このように偏った集団を対象とした観察研 究から血清フェリチン高値=予後が悪い、と一方的な認識が生 じているわけです。
平方 結局のところ、鉄投与により予後が悪化するというわけで はないのですね。
Wu この問題に対して言えることは、血清フェリチンが鉄投与に よる透析患者の予後を反映する指標として、適したものではない ということです。各種の日本の観察研究の結果は特殊な集団に対 しては当てはまるのかもしれませんが、先に示した台湾の現状も 考慮すると、普遍的に適用できるかどうかは疑わしいといえます。
平方 実際のところ、クエン酸第二鉄の用量調節は血清フェリチ ン値を目安に行われているきらいがあります。台湾ではクエン 酸第二鉄の用量調節はどのようになされているのでしょうか。
Wu 台湾のクエン酸第二鉄は500mgカプセルあたり、105mg の第二鉄を含有しています。そのため、クエン酸第二鉄の開始用 量(台湾:4g/日、日本:1.5g/日)で比較すると、台湾では日本の 2倍以上の鉄を投与していることになります。しかし、血清フェリチ ン値の劇的な上昇はみられず、たいていの場合は2週間で定常状 態に達しています2)。台湾の腎性貧血治療 GL(表 1)における血
腎性貧血治療は鉄とESAの 包括的な治療が重要である
血清フェリチン高値だけで、
鉄投与=悪とはいえない
予後予測・鉄評価基準としての 血清フェリチンについて考える
C C
Ci i i i i it tr ra a at t te e e e F
F F F F
Fe er rr ri i ic c c C C C i i in n n T T Ta a a ai i i iw w wa a an n a an n nd n d d d d d J J Ja a ap p pa a an n
Kuo KL. et al., Iron supplementation associates with low mortality in pre-dialyzed advanced chronic kidney disease patients receiving erythropoiesis-stimulating agents:
a nationwide database analysis, Nephrology Dialysis Transplantation, 2015, 30, 9, 1518-25, by permission of Oxford University Press
Kuo KL. et al., Iron supplementation associates with low mortality in pre-dialyzed advanced chronic kidney disease patients receiving erythropoiesis-stimulating agents:
a nationwide database analysis, Nephrology Dialysis Transplantation, 2015, 30, 9,
1518-25, by permission of Oxford University Press 2015台湾慢性腎臓病臨床診療指引
1.00
0.75
0.50
0.25
0.00
Years
Number at risk
Mortality-free survival
Iron user Iron nonuser
0 1 2 3 4 5
20361 11610
6846 4498
2518 1921
1118 868
505 378
214 139
1.00
0.75
0.50
0.25
0.00
Years
Number at risk
Hospitalization-free survival
Iron user Iron nonuser
0 1 2 3 4 5
20361 11610
3883 2822
1271 1062
477 426
184 178
82 58 Log-rank test P<0.001 Log-rank test P<0.001
Ferritin TSAT
300〜500ng/mL 30〜50%
Ironnonuser Ironuser
Ironnonuser Ironuser
60
50
40
30
20
10
0
投与期間
アルブミン酸化度
管理目標値
Taiwan Guideline 2015
Fraction of Cys-Cys34-HSA (ESI-TOF MS)
0 6
*:P<0.05 vs 0ヵ月 Paired Studentʼs t-test
表 1 台湾の腎性貧血治療ガイドライン 2015 における 血清フェリチン値、TSAT の管理目標値
Reproduced in part with permission from Biol.Pharm.Bull. Vol.39 No.6.
Copyright 2016 The Pharmaceutical Society of Japan
(%)
(ヵ月)
*
対 象
方 法
評 価 項 目
:既 存のリン吸 着 薬を1 年 以 上 服 用している血 液 透 析 施 行 中の安 定した CKD-MBD 患者 15 例
:服用中のリン吸着薬(炭酸カルシウム8 例、セベラマー塩酸塩 7 例、ビキサロマー 2 例、炭酸ランタン2 例)からリオナに切り替え、適宜用量を調節した。
:リオナ開始時(0ヵ月)、切り替え後 6ヵ月時のCys-Cys34-HSA 率
図 3 鉄の使用と生存率の関係
図 4 鉄の使用と入院率の関係
図 5 透析患者へのリオナ 6 ヵ月投与による酸化ストレスの変化
清フェリチン値 の 管 理 目 標 上 限 値3)は 500ng/mL ですが、
500ng/mL を超えたらすぐに投 与を中 止するのではなく、
600ng/mL になるまで様子をみるようにしています。
横山 リオナの第Ⅲ相長期投与試験11)では血清フェリチン値はリ オナの用量依存的に上昇しました。血清フェリチン値の上昇はリ オナ 3g/ 日投与群でも日本の腎性貧血治療 GL の鉄剤の中止基 準である300ng/mLに達することはありませんでした(図 6)。
平方 これまでのお話から、血清フェリチン値は複数の要因で 上昇するため、鉄過剰状態を示すマーカーとしては適切ではな いという問題が示唆されます。
秋澤 血清フェリチン低値は鉄欠乏の指標といえるでしょうが、
血清フェリチン高値は貯蔵鉄量や鉄の有害性を示す指標として 信頼できるものではありません。
平方 しかし、各国で使用され続けているということは、他に鉄 の有害性を示すマーカーがないということでしょうか。
秋澤 現時点で他に CKD 患者の鉄量・鉄状態を推定できる簡 便で適切な指標は存在しないと考えています。
Wu 私も同感です。体内鉄量についての最良の予測方法につ いては検討が続けられているようですが、現時点で提案できる ような指標は思い浮かびません。
秋澤 血清フェリチンに関するもう一つの問題点は、日本におけ る血清フェリチン値の測定系です。日本医師会が約 1,200 施設 の協力を得て、29 の血清フェリチン測定キットについて施設間 および測定キット間での差を検討したところ、測定キット間の測 定値のばらつきが 2 倍近く認められました(図 7)12)。血清フェリ チン値の測定値自体が測定キットによって異なるため、先述のよ うな観察研究から得られた結果に対しても、どの程度信憑性が あるのかが、疑問になります。本来ならば 1 点に集約するはずの 数値が、同じ検体を測っても倍ほども違っているのです。今後は 血清フェリチン値の測定方法の標準化など何か新しい方法論を 統一した上で、適正値を再検証する必要があると思います。
平方 そうすると、血清フェリチン値のみで生命予後を論じるこ とは不十分であるといえますね。
秋澤 Wu 先生からも紹介いただいたように、台湾人の約 60%
は血清フェリチン値が 300 〜 800ng/mL に管理13)されてい るにもかかわらず、平均血清フェリチン値が約 150ng/mL14)
の日本と生命予後に大きな差がない、という事例はそのことを 端的に表しているのではないでしょうか。
平方 問題を少しでも解消するた めに、横山先生、何か良い方策は ございますか。
横山 日本では 2015 年版腎性貧 血治療 GL において、鉄剤の中止 基 準 値として 血 清 フェリチン 値 300ng/mL が 設 定 さ れ ました
(図 8)9)。しかし、この 値 が 妥 当 なのかというと現時点では根拠と なるデータはないと言ってもよい でしょう。今後われわれ腎臓内科 医が、きちんと答えを出せるよう な研究と臨床を行っていく必要が あると考えます。
秋 澤 同 感です。クエン酸 第 二 鉄 で治療中の高リン血症を呈する患 者 の 中 で、血 清 フェリチン 値 が 300ng/mL を 超 え て 上 昇 す れ ば継続投与を躊躇する医師もい ます。現在、世界的にこの問題を 解決すべくさまざまな研究や解析
が 進 ん で い ま す。そ の 一 つ が DOPPS 研究であり、同研究の日本 人を対象とした解析結果15)から、血 清フェリチン値 100 〜 250ng/mL で死亡率が最も低いことが示されて います。血清フェリチン値の信頼性の 問題は残りますが、このようなさまざ まなエビデンスが今後蓄積されてく ると、日本においても血清フェリチ ンに対する見方が変わってくるので はないでしょうか。
さらに、英国の MacDougallらが、
透析患者を対象に静注鉄の積極的投 与と反応を見極めながらの低用量投 与で、全死亡や非致死的心血管疾患 リスクなどを比較するランダム化比 較 試 験(RCT)PIVOTAL※16)を進め ています。こうした RCT から血清フェ リチンについても問題解決に進展を もたらす有望な結論が出されること に期待しています。
平方 大変有意義な討論をありがと うございました。CKD-MBD と鉄代 謝の両方に影響を与えるクエン酸第
二鉄の登場は、これまで深く議論されることのなかった 日本の透析医療の課題に向き合うきっかけとなりまし た。今回の座談会を通じて日本、台湾両者の透析医療 のさらなる発展が期待されます。
※PIVOTAL:Proactive IV irOn Therapy for haemodiALysis patients
(EudraCT Number: 2013-002267-25)
引用文献
1)リオナ錠 250mg 特定使用成績調査(調査期間:2015 年 1月〜 2020 年 1月)
中間報告
2)Lee, CT. et al.: J Nephrol 28(1): 105-13, 2015 3)2015 台湾慢性腎臓病臨床診療指引
4)日本透析医学会:2012 年「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療 ガイドライン」. 透析会誌 45(4): 301-56,2012
5)Kuo, KL. et al.: Nephrol Dial Transplant 30(9): 1518-25, 2015 6)Ponikowski, P. et al.: Eur J Heart Fail 17(3): 329-39, 2015 7)Tanaka, M. et al.: Biol Pharm Bull 39(6): 1000-6, 2016 8)Hung, SC. et al.: Kidney Int 86(4): 676-8, 2014
9)日本透析医学会 : 2015 年版「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイ ドライン」.透析会誌 49(2): 89-158,2016
10)Hasuike, Y. et al.: Clin Exp Nephrol 14(4): 349-55, 2010 11)Yokoyama, K. et al.: J Ren Nutr 24(4): 261-7, 2014
12)日本医師会「平成 25 年度(第 47 回)臨床検査精度管理調査結果報告書」
13)Hung, SC. et al.: Nephrology 19(12): 735-9, 2014
14)日本透析医学会 : 図説 わが国の慢性透析療法の現況 2012 年 12月31 日現在
15)Karaboyas, A. et al.: American Society of Nephrology 48th Annual Meeting
16)http://www.kidneyresearchuk.org/pivotal
血清フェリチン値は
生命予後の規定因子としては不十分である
r ri i
Fe er rric C Ci it tr rate i in n T Ta aiwan a a an n n n a an nd d d J Ja ap pa an n
日本医師会「平成25年度(第47回)臨床検査精度管理調査結果報告書」
535.0
478.0
421.0
364.1
307.1
250.1
193.1
フェリチン試料
13
31.8 43.0 54.3 65.5 76.7 88.0 99.2
Reprinted from J Ren Nutr, Vol24(4), Yokoyama, K. et al. Long-term safety and efficacy of a novel iron-containing phosphate binder, JTT-751, in patients receiving hemodialysis., 261-7, Copyright 2014, with permission from Elsevier リオナ4.5<〜≦6g/日(n=15)
リオナ1.5<〜≦3g/日(n=87)
リオナ3<〜≦4.5g/日(n=39)
リオナ≦1.5g/日(n=39)
平均値±標準偏差
図 7 フェリチンの双値図
-10 2 4 6 8 10 12 16 20 24 28 36 44
800
700
600
500
400
300
200
100
0
(ng/mL)
(週)
52
血 清 フ ェ リ チ ン
試料13平均 399.46ng/mL
試料11平均 63.99ng/mL
フェリチ ン 試 料 11
対 象
試験デザイン
方 法
評 価 項 目
:高リン血症を呈する維持血液透析施行中の慢性腎臓病患者 180 例
:多施設共同、非盲検、非対照試験、長期投与試験
:1 週間の観察期終了後、リオナを1日3 回、食直後に52 週間投与した。投与量は1.5g/日から開始し、1.5 〜 6g/日の範囲で 用量を調節、血清リン濃度の推移および安全性を検討した。
:主 要 評 価 項 目:血清リン濃度
副次的評価項目:血清補正カルシウム濃度、血清intact-PTH濃度など
図 6 リオナ投与による血清フェリチン値の推移
ルミパルスプレストフェリチン[32]
ルミパルスフェリチン-N(F)[18]
ルミパルスフェリチン-N(G)[57]
ビトロスフェリチン[15]
STEテスト「TOSOH」Ⅱ (フェリチン)[44]
スフィアライトフェリチン[10]
HISCLフェリチン試薬[11]
アーキテクト・フェリチン[257]
Centaur-フェリチンⅡ[50]
LZテストʻ栄研ʼFER[141]
FER-ラテックスX2「生研」CN[244]
N-アッセイLAフェリチン ニットーボー[51]
イアトロフェリチン[81]
LTオートワコーフェリチン[41]
エクルーシス試薬フェリチン[91]
鉄補充療法 鉄補充療法
Hb目標値 Hb目標値
*このステートメントは、作成ワーキンググループ会議にて全会一 致ではなく2/3以上の合意をもって採択された唯一の記載で ある。したがって、この内容に関してはまだ議論が多く残されて いると考えている。
1)日本透析医学会: 2008年版「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」. 透析会誌 41(10): 661-716, 2008 2)日本透析医学会: 2015年版「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」. 透析会誌 49(2): 89-158, 2016
2008年版1) 2015年版2)
・開始基準 TSAT≦20%、
および 血清フェリチン濃 度≦100ng/mL とする
透析患者:
10〜11g/dL 保存期・PD・
腎移植患者:
11〜13g/dL
・ESA製剤も鉄製剤も投与されていない 血清フェリチン値<50ng/mLの場合、
ESAに先行して行う
透析患者:10g/dL以上12g/dL未満 保存期・PD・腎移植患者:11g/dL以上 13g/dL未満
・十分なESA治療を行っている 血清フェリチン値<100ng/mL かつ TSAT<
※鉄利用率を低下させる病態がない場合*
血清フェリチン値<100ng/mL または TSAT<
・鉄補充療法の推奨値*
血清フェリチン値≧300ng/mLには 鉄補充療法を推奨しない
図 8 2015 年版腎性貧血治療ガイドラインステートメントの主な改訂ポイント
鉄
Hb目標値 鉄補充療法
Hb目標値
鉄補充療法 鉄補充療法
Hb目標値 Hb目標値
*このステートメントは、作成ワーキンググループ会議にて全会一 致ではなく2/3以上の合意をもって採択された唯一の記載で ある。したがって、この内容に関してはまだ議論が多く残されて いると考えている。
2008年版1) 2015年版2)
鉄 鉄補充療法
・開始基準 TSAT≦20%、
および 血清フェリチン濃 度≦100ng/mL とする
法 鉄補充療法 鉄補充療法法 鉄補充療法 鉄補充療法
透析患者:
10〜11g/dL 保存期・PD・
腎移植患者:
11〜13g/dL
・開始基準 TSAT≦20%、
および 血清フェリチン濃 度≦100ng/mL とする
透析患者:
10〜11g/dL 保存期・PD・
腎移植患者:
11〜13g/dL
鉄補充療法
*このステ トメントは 作成ワ キンググル プ会議にて全会
・ESA製剤も鉄製剤も投与されていない 血清フェリチン値<50ng/mLの場合、
ESAに先行して行う
透析患者:10g/dL以上12g/dL未満 保存期・PD・腎移植患者:11g/dL以上 13g/dL未満
・十分なESA治療を行っている 血清フェリチン値<100ng/mLかつTSAT<20%
※鉄利用率を低下させる病態がない場合*
血清フェリチン値<100ng/mLまたはTSAT<20%
・鉄補充療法の推奨値*
血清フェリチン値≧300ng/mLには 鉄補充療法を推奨しない