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(1)

平成19年度 駒澤大学 医療健康科学部 診療放射線技術科学科

総合研究発表要旨

<日時>平成19年11月24日(土)

10 : 00 〜 17 : 00

<場所> 1-201 教場、1-401 教場

(2)

パントモグラフィにおける物理評価法の提案と歯科医院の現状

HK4001 望月 佑帥

今日、歯科診療を行う上で、X線検査は不可欠とされている。その中でも回転パノラマ断層X線撮影(パ ントモグラフィ)(1949年Paateroにより考案)は、顎骨曲面を1枚のX線フィルムに展開像として描出する ことができるところから、顎顔面領域の総合的診断を目的として広く歯科臨床に応用されている。

医用に用いられている一般的な断層撮影法は、患者の体形・撮影部位の形態に合わせて軌道を変え、任意の 断層面を撮影するものである。これに対しパントモグラフィはこのような断層撮影法とは違い患者の顎や歯 列弓の形状に合わせて軌道を変えることができない機構になっているため、全ての患者に対して同じ軌道に よって撮影している。このような特徴をもつパントモグラフィの画質評価は各メーカーにおいて、認定マン モファントムを用いた前歯部での視覚評価のみで行われている。そこで本研究ではパントモグラフィ撮影装 置の持つ基本の断層面と断層域を求め、スリット法による物理的鮮鋭度としてMTFの算出法を検討した。

更に求めたMTFを用いて基本断層面から断層域が前後に移動した場合の変化を比較検討した。パビリオン ファントムを用いてパントモグラフィの断層面を調べてスリット設置台を作成し、前歯部・右犬歯部・右臼 歯部・左犬歯部・左臼歯部のそれぞれの位置で10μmのスリットを断層面および前後に3,6,9mmずつずらし て撮影した。撮影したスリット像をフーリエ変換することでMTFの算出を行った。その結果、断層面での MTFが最も高く、3mm,6mm,9mmと離れていくごとにMTFが低くなった。また特に後方に比べて前方のズ レの方がMTFを下げるのに大きく影響をもたらしていることが判明した。

近隣の歯科医院のアンケート調査結果では歯科衛生士や受付係がポジショニングを行う医院が多数存在する ことが判明した。今回の実験結果より、ポジショニングのズレによる画質への影響が大きいことを考えると、

ポジショニングのトレーニングやマニュアル等の作成をし、より鮮鋭なパノラマ断層X線撮影が広く行われ ることが望まれる。

近赤外領域における分子イメージング

HK4004 守屋 里美

分子イメージングは生物を生きたままの状態で体内の生理的情報を可視化する手法である。今回、生体の 分光学的基礎データを把握するために透過光についての分光測定を行った。実験では測定したい部位にハロ ゲンランプの光を照射し、200nm〜950nmの透過光をマルチチャネル検出器を用いて透過スペクトルを測定 した。実験結果より600nmよりも長波長領域の光ならば生体を透過できることが分かった。760nmに吸収が 見られるが、これはデオキシヘモグロビンによる吸収であり、850nm付近に幅の広い比較的弱い吸収が見ら れるが、これはアクリルファントム内の骨を測定したときの吸収と一致した。また、960nm付近の吸収は、

水のOH基による吸収帯の短波長端にあたる。以上のことより、600〜900nmの波長領域の光ならば生体を 透過できることが分かった。近赤外領域における分子イメージングでは蛍光試薬を体内に投与後、体外から 励起光を照射し体外から試薬からの蛍光を検出するため、蛍光試薬としては励起波長が600nmよりも長波長 領域の光で、蛍光波長としては透過力の高い近赤外領域800nm付近での蛍光がみられる試薬であることが必 要条件となる。

(3)

圧縮処理と画像処理の順序の違いによる画質への影響

HK4006 林 大輔

画像データ保存にはJPEG2000が使用され始めており、その中でウェーブレット変換が用いられている。

医用画像データの圧縮は電子カルテ指導要項によりオリジナル画像データを保存するとされており、医療機 関ではオリジナル画像データと診断時の画像処理パラメータを個々に保存し、再出力の際に画像処理を再度 行っている。そのため、画像データの圧縮処理はオリジナル画像データに対して直接行っている。そこで、

逆転の発想をし、画像処理後の画像データに圧縮処理をしたら、オリジナル画像データの圧縮処理に対して その画質はどのようになるかを検討した。

方法は、胸部/下腿/乳房の各部位の画像において、空間周波数を制限した画像を作成し、原画像との視 覚的評価により、人の目で評価できうる各画像の最高空間周波数を検討した。また、各部位で圧縮処理順序 を変えた、圧縮画像 B(オリジナル画像データ→圧縮→画像処理)、圧縮画像 C(オリジナル画像データ→

画像処理→圧縮)と原画像との視覚的評価を行い、物理的評価としてウィナースペクトル・CTFを求めて比 較した。

視覚的評価の結果、各部位の画像に関係せず、圧縮画像 B より圧縮画像 C の方が圧縮率を高かめることが できた。物理的評価の結果、ウィナースペクトル・CTF において画質の劣化が高周波数側から影響を受けて いること、圧縮画像 B に比べ圧縮画像 C の方が画像の信号情報をより高周波数成分まで持っていることがわ かった。このことから、あらかじめ画像処理をかけることでコントラストを大きくして圧縮すれば、小さな 信号でも圧縮時の量子化に影響されず、濃度差を表現できると考えられた。

結論として、現在行われている圧縮保存後に画像処理を行う方式よりも、画像処理後に圧縮保存を行う方 式の方が画質劣化を減少できることがわかった。しかし、画像処理後に圧縮保存を行う方式は、上記指導要 綱により医用画像では使用できないが、レポート添付等の画像においては有用である。

マンモグラフィにおける撮影条件の検討

HK4007 添田 裕美

近年、乳がん罹患率・死亡率が増加しているが、マンモグラフィ検診による有用性が認められた為、乳が んの早期発見の対策として厚生労働省は40歳以上の女性にマンモグラフィ検査の受診を推奨している。

マンモグラフィは乳房の組織間のX線吸収差が小さいため、一般撮影に比べ高コントラスト・高鮮鋭度な 画像が要求される。このような良好な画質を得るためには、十分な精度管理を行うとともに、乳房厚や内部 組織を考慮に入れて適切な撮影条件のもとで撮影を行う必要がある。

本研究では乳腺ファントムを用いてモリブデン(以下Mo)ターゲット・Moフィルタを使用して管電圧を 変化させ、散乱線含有率やMTFなどの物理的評価、及びACR156ファントムを用いた視覚的評価を行い画質 の検討を行った。また、これらの因果関係を裏づけるために多重回帰分析を行った。

最初に基礎データとして、乳腺ファントム50%のファントムを用い、管電圧についてグリッドを使用し た場合と使用しない場合における散乱線含有率とMTFを測定した。またACR156ファントムを用いて管電圧 を変化させ濃度1.5±0.15となる条件で撮影し、視覚評価の試料とした。

さらに、半価層と視覚評価で使用した撮影条件で表面入射線量を測定し、Sobolの近似式、補間多項式よ り吸収線量変換係数を求め、平均乳腺線量を算出した。多重回帰分析は統計ソフトを用いて算出した。

本研究より、画像の物理的評価と視覚的評価、平均乳腺線量の測定などの結果を通してマンモグラフィの 撮影条件について検討することができた。軟線撮影領域でも低い電圧が組織の描出能は優れており、描出率 は最もX線エネルギーに左右されると考えられる。

(4)

シミュレーションを用いた病室撮影時における散乱線分布の算出

HK4008 片井 文義

移動型X線撮影装置による撮影の場合、遮蔽壁がないので術者ばかりでなく同室の患者さんや看護師も被 曝する可能性がある。病室撮影における被曝の可能性を定量的に理解しておくことは、自分の身を守るだけ でなく、診療放射線技師としての責務でもある。しかし、実測による散乱線の測定には限界がある。測定に よる評価が困難な場合にコンピューターシミュレーションが用いられる。

本研究では、EGS5というコンピュータープログラムを用いてモンテカルロシミュレーションを行い、病 室撮影時における散乱線分布の算出を行った。まず始めに放射線管理学実験で行った病室撮影における被曝 管理の実験データとシミュレーション結果の比較をした。両者の結果はほぼ一致し、今回行った計算シミュ レーションの信頼性が確認された。次に実験を行っていない距離を一定としたときの散乱線線量の角度分布 の算出を行った。距離50cm、100cm、150cm、200cmでの計算を行った結果、どの距離においても角度が大 きくなるにつれて散乱線線量が増加し、増加率も大きくなった。この結果から距離200cmを基準とし、距離 の逆二乗則を用いて各距離における角度分布を算出し、シミュレーション結果との比較を行った。どの距離 においても距離の二乗則の結果とシミュレーション結果はほぼ一致したが、ファントムとの距離が近づくに つれて差が大きくなった。これはファントムとの距離が近いと点線源と見なせず、ファントムの形状の影響 が生じたためだと考えられる。シミュレーションを用いた散乱線分布の算出は、測定困難な場合に有効であ り、今回の手法を用いることで病室撮影時の散乱線分布を推定できることがわかった。

超常磁性酸化鉄粒子(SPIO)の緩和時間の静磁場変化

HK4009 平間 清和

本研究ではフェルカルボトラン(商品名;リゾピスト)溶液を蒸留水で0、0.1、0.2、0.5、1.0[mmol/l]

に希釈したファントム、フェルカルボトラン溶液と陽イオン交換樹脂(三菱化成工業MCI GEL CK08P H型)

を混合させたファントムを作成し、磁場強度が0.2、0.5、1.0、1.5、3.0TMR(magnetic resonance)装置を 使用して、反転回復(inversion recovery;IR)法を用いてTl緩和時間、スピンエコー(spinecho;SE)法を 用い、T2緩和時間を算出し、それぞれの緩和度を計算した。また、磁場強度の依存性を検討するため、SE 法を用いてTl、T2強調画像を撮像し、信号強度比を求めた。その結果、Tl緩和時間およびT2緩和時間は造 影剤が高濃度なほど短縮した。

Tl,T2緩和時間は溶液ファントムにおいて磁場の増加に対する特徴的な傾向は見られなかったが、樹脂に

おいては磁場の増加と共に短縮する傾向が見られた。Tl緩和度(rl)は樹脂では溶液に比してr1は高値(2 倍)を示し、とくに3.0Tでは樹脂のr1は0.0258と溶液のr1に比して約6倍となった。T2緩和度(r2)は、溶 液でのr2は樹脂と比べて約5倍大きかった。溶液では磁場によるr2の大きな変動はなく、樹脂では磁場上昇 に応じてr2の増加がみられる。r2/rlは高磁場に比較して低磁場では大きくなる傾向があった。

T2強調画像における信号強度比の静磁場強度への依存性については、造影剤の濃度が、0.1〜0.5[mmol/l]

にかけて、信号強度比が低くなり、それよりの濃度が高くなっても、信号強度比の変化は少なかった。また、

静磁場強度が高い方が、信号強度比が低い傾向になった。

(5)

画像処理ワークステーションにおけるレンダリングの精度評価

― 仮想内視鏡マップの測定値について ―

HK4011 飯田 友紀

本研究は、画像処理ワークステーションに搭載されているVEソフトで処理した内視鏡マップを用い、画 像上より求めた測定値と実測値との比較・検討を行う。更に、CTの撮像条件が測定値に及ぼす影響につい て考察することを目的とした。方法は、隆起性病変を有する消化管に見立てた円柱ファントムを試作しマル チスライスCTヘリカルスキャンにてデータ収集を行った。撮像条件は、管電圧120kV、スライス厚0.5mm を一定にして再構成間隔0.3mm0.5mmのときに管電流を20,50,100,150,200mAに可変し撮像した。次に、

再構成間隔が1.0mm2.0mmのとき管電流50mA一定にデータ収集した。そのデータよりVE画像処理を行 う。処理後、隆起性病変を想定した球体の実測値と3次元処理画像上での球体の計測値について比較・検討 した結果、①CTの管電流の違いによる球の測定値に変化は見られなかった(p<0.01)。②再構成間隔が

1.0mm以上になると描出画像及び測定値の信頼性が低くなった。③オパシティを高値にすると模擬ポリープ

であるアクリル球の大きさは過小評価し、低値にすると過大評価となった。以上より、CTの再構成間隔を

0.5mm以下にして撮像し、オパシティ値の基準化を構築することで定量性を含めた信頼性の高い仮想内視鏡

画像を得ることが示された。

医療用イメージングプレートを用いた二次元線量分布測定

HK4012 増田 裕太

医療用イメージングプレート(IP)を用いて二次元線量分布の測定を行った。まず正確な線量分布の測定 を行う為にIPの基礎特性を調べた。IPの線量情報を得るためには、EDRをする前のQLを読み取った。QL

とはQuantum Levelの略で1画素の生データの値で機器が読み取った発光量を濃度階調で表したものである。

最初にIPにはフェーディング現象が起こるのでその特性について調べた。IPに照射してから測定するまでの 時間を段階的に変化させて調べたところ、照射後すぐは減少が急だが40分後からは徐々に緩やかな減少と なった。又、温度によるフェーディングの差も見られた。QLと空気カーマの関係を調べた結果、QLと空気 カーマは片対数表示で直線的であることが分かった。線質依存性については、同一線量で管電圧を変化させ て照射したところ管電圧が上がるにつれてQLも高くなることが分かった。IPの場所依存性の測定として、

IP全体に均一な線量を照射出来る様に工夫し、IPの場所依存性のみが反映するようにした。この結果として、

最大で6.1%の感度の場所依存性の存在を確認した。二次元線量分布の測定として、乳房撮影装置における 照射野内線量分布の測定を行った。その測定結果に場所依存性の補正を行うことで、IPの感度の場所依存性 を除いた線量分布を得ることが出来た。又、大焦点絞りを用いて小焦点と大焦点の測定を行った。小焦点で は照射野全体にエックス線を照射出来ない事が分かった。大焦点ではヒール効果の影響により線量は陽極側 の方が陰極側より最大で35%程度低くなることが分かった。

(6)

X 線 CT 画像による内臓脂肪面積測定の基礎的検討

― 撮像条件が算出値に与える影響について ―

HK4015 土谷 貴大

本研究は、X線CTの撮像条件が内臓脂肪面積値に及ぼす影響について考察するとともに、マルチスライ CTノンヘリカルスキャン(以下、MSCT/NHS)とヘリカルスキャン(以下、MSCT/HS)の走査方式の違 いによる内臓脂肪面積値について比較・検討を行った。方法は、予め実寸面積の分かっているアクリル円筒 内にショ糖入り寒天とラード入り円筒のファントムを作成しXCTの撮像条件を任意に変えて撮像する。

得られたデータより、ワークステーションに搭載されている体脂肪測定ソフトにて脂肪面積値を導出した。

その結果、①管電圧100mA・スライス厚2mmの撮像条件が実寸面積値に最も近い算出値であった。②CT スライス厚が薄いか、低電流のときに画像上にノイズが増大して体脂肪測定ソフトの脂肪部分における自動 推定が内臓脂肪部分を適正に認識しなかった。③スライス厚が厚くなるほど脂肪部分の検出誤差も大きくな った。④今回使用したファントムにおいて内臓脂肪値の算出が可能となったデータと実寸脂肪面積との誤差 率を求めた結果、5〜10%(1.6cm2以下)の範囲となった。次に、CTの走査方式の違いによる脂肪面積の 算出値は、MSCT/NHSMSCT/HSの両者においてR2=0.92と高い正の相関関係にあった。以上のことより、

他の検査目的にて撮像された腹部単純XCTデータを利用しても充分有用な内臓脂肪測定処理が可能であ り、被ばく低減の視点からもX線CTによる内臓脂肪測定は簡便で有用な方法であることが示された。

胸部撮影における金属フィルタ効果について−被曝線量と画質について−

HK4017 宮崎 恭助

胸部単純X線撮影では、一般的に被ばく低減のため付加フィルタが使用される。付加フィルタを使用する ことによって軟X線が除去され被ばく低減効果が得られるが、その反面コントラストの低下が問題となる。

本研究においては、原子番号の異なる数種類の付加フィルタを使用し、それらの特性について実験を行っ た。測定内容は、被ばく線量、実効エネルギー、散乱線含有率、X線スペクトル、コントラストおよび視覚 的評価で、さらにエクセル統計ソフトを用いて測定結果について重回帰分析を行った。

結果的に原子番号が高く、フィルタが厚いほどX線スペクトルの低エネルギー成分が除去された。低エネル ギー成分をより多く除去するフィルタでは被ばく線量は減少するが、実効エネルギーが増加するとともにコ ントラストの低下が目立った。散乱線含有率に関してはフィルタ間に大きな差は見られず、視覚評価の結果 には、ほぼコントラストの結果が反映された。また重回帰分析では、散乱線含有率より実効エネルギーの変 化の方がコントラストに与える影響は大きいという結果が得られた。

以上より、Ⅹ線スペクトルの低エネルギー成分はコントラストの形成および被ばく線量の増加に関係があ ることを確認することができた。画質を重視するとCu0.05mm+Al0.5mmおよびTi0.1mmのフィルタが優れて いると言え、最も被ばく線量が低減したMo0.1mmフィルタは、コントラストの劣化が目立つので胸部撮影 領域で使用することは困難なことが推測される。従って被ばく低減を前提に、画質をどこまで追求するかに よってフィルタは選択されるべきである。

本研究では、被ばくおよび画質はフィルタによる線質硬化の影響を大きく受けていることが分かった。今 回は胸部撮影領域を選んで120kV一定の条件下で実験を行ったが、管電圧を低下させることによって、より フィルタ間の線質硬化の影響の差が顕著に見られるのでないかと思われる。

(7)

3.0TMRI を用いたマウスにおける T2 強調画像の撮像パラメータの最適化

― 実験腫瘍マウスの測定と擬似ファントムの作成 ―

HK4018 h

MRIによる実験腫瘍マウスのIn vivo Imagingにおける最適撮像パラメータを得るために擬似ファントムの 作成のための基礎的検討を行った。最初に実験腫瘍マウスの3.0T MRI装置での腫瘍および筋肉、腫瘍周囲 の浮腫巣のT1値とT2値の測定を行い、次にアガロース溶液と硫酸銅溶液による擬似ファントムの作成を行 った。T1値測定には反転回復(inversion recovery;IR)法を用い、T2値測定にはスピンエコー(spin echo SE)法を用いた。得られた腫瘍および筋肉、浮腫のT1値はそれぞれ1004、930、1678[msec]で、T2値は 52、30、180[msec]であった。擬似ファントムの組成は、腫瘍で1.8[%]アガロース溶液+0.5[mM/l]硫 酸銅水溶液、筋肉で3.5[%]アガロース溶液+0.5[mM/l]硫酸銅水溶液、浮腫で0.5[%]アガロース溶液

+0.1[mM/l]硫酸銅水溶液であった。ファントムにおけるT2値への寄与はアガロース溶液が硫酸銅水溶液

に比して圧倒的に強く、T1値への寄与には両者の相互作用があると考えられた。今後は組織間のプロトン 密度などを考慮したファントム組成の検討が必要であると考えられた。

胸部・腹部 CT 撮影における小児被爆

HK4021 辻村 洋範

日本は、世界で一番放射線を用いた検査件数が多いことにより、医療被曝が一番多い国となっている。医 療被曝のうちCT検査での被曝が高い割合を占めているが、手軽で迅速に行え、高性能で信頼性が高いため に多く利用されている。そこで、成人に比べて放射線感受性が臓器で2〜5倍高いと言われていて余命の長 い小児の将来に少しでも不安が減るように、小児CT撮影での被曝線量の低減を目的とした。AECを利用す ることによってどの程度線量が低減できるかを調べるため、小児胸部CT検査と小児腹部CT検査の小児の中 心部分と体の表面付近の線量を一般的な条件とAECをかけた条件との比較を行った。

実験の結果、胸部CT撮影でAECをかけることによって吸収線量は中心部で平均38%、最大49%の低減、

表面付近では平均41%、最大50%の低減となった。AECをかけたとき、肺野の上部で電流値が最大となっ ていた。これは、ファントム腕の影響により電流値が大きくなってしまったからである。腹部CT撮影で AECをかけることによって吸収線量は中心部で平均49%、最大58%の低減、表面付近では平均49%、最大 59%の低減となった。また、胸部でも腹部でも中心と表面では、線量の差があまり生じなかった。これは、

小児の体厚が小さく、中心の線量計と表面付近の線量計の位置があまり離れていなかったためである。胸部 よりも腹部のほうが被曝低減の効果が大きい結果となったが、これは電流値の差が胸部よりも腹部のほうが 大きかったためであると考えられる。

AECを利用することによって平均で4050%、最大で5060%ほどの被曝低減ができた。AECを利用 することによって放射線感受性の高い小児に対して大きな効果が得られることがわかった。

(8)

CT 撮影における電流変調の被曝低減効果

HK4022 金子 豊

医療において診断、治療のリスクはそれを上回る利益があれば許容される。実際に放射線を用いた検査で は被曝よりそれ以上の被験者の利益が予想され許容されているが被曝というリスクは最小限にとどめる必要 がある。日本の医療における放射線被曝は世界でもっとも高いレベルにあり、その原因としてCTによる医 療被曝の増加が考えられる。CT検査は被曝線量が大きいことで問題になっており、CT検査の被曝線量を適 正に管理するためには、電流変調機能(以降AECと記す)の使用が有用であるとされている。そこで、人 体に近い組織で構成されたランドファントムを用いて胸部CT撮影と腹部CT撮影でAECを使用したときの 吸収線量の測定を行った。また、胸部CT撮影と腹部CT撮影で管電流値一定のときの吸収線量の測定を行い、

被曝低減効果の検証をした。その際、ランドファントムに使用するガラス線量計の基礎特性についても調べ た。

ガラス線量計は、基礎特性測定において変動係数が3.0%以下のものを使用した。線質依存性の影響が大 きいこともわかったが、今回の研究はCT撮影なので管球の位置によって体厚が変わってしまい校正が正確 に行えないため、今回は補正を行なわなかった。胸部CT撮影、腹部CT撮影においてAECを使用すること で、胸部CT撮影では平均で約17%また最大約30%、腹部CT撮影では平均で約25%また最大約40%の被曝 低減ができた。以上のようにAECによる被曝低減効果を定量的に確認することができた。

モンテカルロ法を用いた診断用 X 線領域における散乱線の影響の算出

HK4024 三松 真

近年、シミュレーション技術の進歩により実際の条件と同等の精度で、目的の計算を算出することができ るようになった。シミュレーションプログラムの一つであるEGS5は、ユーザーの増加とともに診断、治療、

放射線検出シミュレーション、遮蔽計算等、様々な分野での報告がされている。特に散乱線は、実験での測 定には限界があり、モンテカルロ法を用いた計算プログラムであるEGS5を用いることは、非常に有用とさ れている。皮膚表面線量をファントムを用いないで算出する場合は、後方散乱係数BSFが必要である。この 値は、現在モンテカルロ法によって求められた値を用いるとされているが、公表されている照射野、エネル ギーには限りがあり、必要とする条件におけるBSFを用いることができない場合もある。そこで今回は、ま ず光子の減弱曲線を算出し、散乱線の算出にEGS5を用いることの妥当性を検討した後、BSFの算出を行っ た。モンテカルロ法によって算出した減弱曲線は、減弱係数μより計算した減弱曲線と比較すると、散乱線 の影響によって減弱割合が小さかった。そこで、散乱線の影響を低減した計算を行ったところ、ほぼμから 計算した減弱曲線と一致し、信頼性のあるデータが得られていることが示された。BSFは入射線量と表面線 量を算出することで求めた。結果は過去の論文の結果と一致した。これによって、任意のエネルギー、照射 野でのBSFを算出することが可能である。しかし、照射野が広くなると誤差が大きくなってしまうため改善 策として、光子数を増やし統計精度を高めることが必要である。また、本実験では、単一エネルギーで計算 を行っていたので、連続エネルギーX線で計算を行うことによって、より現実の条件での算出が行うことが でき、実用可能な値に近づくと思われる。

(9)

イメージングプレートの発行強度減衰に対する励起波長依存性

HK4025 鈴木 崇之

最近の医療現場で、多く用いられているイメージングプレート(IP)ST-VNは輝尽性発光体として BaFBr0.85I0.15:Eu2+が用いられている。今回、ST-VNについて、波長の異なる3種類の励起光をあて続けたとき の発光強度の時間変化を調べる実験をおこなった。その結果、輝尽発光・励起スペクトルから輝尽発光極大

波長が400nm付近であることと、励起波長の極大が685nmであることが確認できた。輝尽励起スペクトルか

ら、今回の時間変化を調べるための励起波長を、主としてF,Br,IFセンターの寄与が強いと考えら

れる580nm,685nm,740nmに決定した。また、時間変化を測定するにあたり決定した励起波長の強度がそ

れぞれ違うため、励起光の強度を測定した。各励起波長についての発光強度の時間変化を調べた結果、3種 類の励起波長に対する減衰は指数関数的なものではなく、いずれも緩やかなカーブを描き、ほぼ同様なパタ ーンで減衰していくがその詳細はわずかに異なることがわかった。これは、BaFBr0.85I0.15:Eu2+に存在するF Br,IFセンターの捕獲準位としての特性の違いを反映していると考えられる。

PET/CT 装置における利点と問題点

HK4028 我妻 慧

20064月にPET/CT装置による検査が保険適用されました。それにより現在PET単独装置を購入する施 設よりPET/CT装置として新たに購入する施設が増えてきている。しかしCTMRIと比較すると、PET/CT 装置はいまだ一般的な装置とは言えず、核医学関連の書籍にも詳しくは記載されていないことが多い。そこ で、現在までに発表された論文・文献からPET/CT装置の利点と問題点について調べた。

利点は、①CT画像との融合画像を精度良く手軽に作成可能,②CTの使用によって吸収補正の短時間化,③ 外部線源交換による費用が不要,などが挙げられる。一方問題点としては、①被検者の放射線被曝がPET 置と比べて最大で6.0倍となる(FDG:300MBq投与),②呼吸により融合画像に若干のズレが存在する,③ 義歯や体内金属、ヨード性造影剤などの体内高原子番号物質でアーチファクトが発生,などが挙げられる。

PET/CT装置はPET装置にCTが加わったために、CTによる問題点が目立っている。しかし、利点は臨床上 や経済上で非常に有意性があると考えられる。これらの利点と問題点を理解し、利用することが重要であ る。

(10)

マイクロフォーカス CT の試作

HK4030 新井 知大

近年の急速な科学技術の進歩に伴い、非破壊検査においてマイクロフォーカスX線管により、数?mの空 間分解能の画像取得が可能になり、さらにCT画像処理技術により3次元構造の解析も可能となった。従来、

生体材料等の軟物質は、X線吸収係数が小さいため高コントラスト画像を取得する事が困難であった。

しかし、マイクロフォーカスX線管は低エネルギー成分を多く含むX線スペクトルである為、高コントラス トの画像が取得できる期待がある。

そこで、我々は生体材料の解析と臨床医学への応用を目的として、マイクロフォーカスX線管を用いた CT装置の試作を行った。マイクロフォーカスX管装置は透過型タングステンターゲットで焦点寸法は7, 20, 50μm、管電圧は10kVから150kV、管電流は10A500?Aである。X線管窓は200mのベリリウム窓 を有している。[1]

本研究では、マイクロフォーカスX管装置のX線スペクトルを求め、各種フィルタによるX線の単色化を 目的として基礎特性を測定した。結果より、タングステンL殻の特性X線により10keV付近にピークを有す るものとなり、線質は極めて軟質であった。したがって、低原子番号の生体材料等の高コントラスト画像取 得が可能である。また、各種フィルタのK吸収端によりX線の単色化の可能性を見出した。

そこで、本装置のシステムを踏まえた上で実際に生体材料の腰椎撮影を試みた。管電圧80kV、管電流 100mAで焦点・サンプル間距離を100mmに対し焦点・検出面系距離を500mmとして拡大率は5倍となるよ うに撮影した。海面骨の形状を明瞭に把握する事が出来た。今後の展望として、X線管のターゲットを銅に して、軟X線の成分が多くなるマイクロフォーカス線源の開発を計画している。

FCR システムを用いた

2shot 法のエネルギーサブトラクションによる検出能の検討

HK4031 滝井 剛

現在実用されているディジタルX線撮影における画像処理の一つとして、エネルギーサブトラクション処 理(Energy Subtraction:以後ES処理と記す)がある。ES処理には現在FujiFilm社(FCR:XU-D1)1)にて 実用されている1shot ES法と、撮影する管電圧を変化させ短時間の間隔にて2度撮影することによって画像 を得る2shot ES法がある。しかしFCRシステムで1shot ES法として実用化されている処理法は、そのSNR

(Signal to Noise Ratio)の低さから広く普及していない。改善の手段としてエネルギー分離、粒状性に優れる 2shot ES法が有力な方法と考えられる。

本実験では物理的な視点を中心に最適な2shot ES法の撮影条件を検討し、その検出能を他撮影法と比較検 討した。ES処理の画質改善においてエネルギー分離の大きさとX線線量による粒状性という2つの視点が考 えられる。ただし、ES処理における粒状性は差分に利用する画像のX線量子モトルだけでなく、差分の際 の係数が大きく起因するのではないかという考えから、その係数を決定する差分画像のコントラストを定量 化し、最も画質の改善する条件を検討した。実験の結果、SNR、視覚的検出能では、模擬腫瘤陰影の検出能 は単純X線撮影法とTS処理法が最も高くなった。この原因として

① サブトラクション処理することでノイズが増大するためES、TS処理法のSNR比が低下すること

② 一様濃度中に陰影画像が在るため、"隠蔽効果"の除去が不要である画像であったこと

にあると考えられる。特にサブトラクション処理はES処理法もTS処理法も、視覚系の"隠蔽効果"除去によ る読影時の検出能の向上が狙いであるため、各撮影法を比較するための今回のSNR比及びタフラングファ ントムによる実験は不適であったと考えられる。また今回規定した視覚評価では1shot ES法に対する2shot

ES法の優位性が認められた。X線被曝線量の関係から低圧撮影において1shot ES法以上に差分前の画像の粒

状性は悪化するが、その係数から処理後の画質は1shot ES法を上回ることができるのではないかと考えられ る。

(11)

高エネルギー X 線における解像力測定の最適なジオメトリーについて

HK4035 鳥澤 啓子

LG画像とは照射野と周辺臓器の位置確認を行なうために撮影する画像である。しかし現在放射線治療で 用いる高エネルギーX線では、解像力測定におけるジオメトリーは確立されているとはいえない[1]。緻密な 放射線治療を行なう際にはエッジの鮮鋭さやアーチファクトのない画像が重要となる。このような画像を評 価するため、本研究では高エネルギーX線における解像力測定のジオメトリーについて検討を行った。

実験はリニアックで4MVX線を使用し、検出器はIP、ファントムはアクリル、タングステン、タフウォー ターを用いてエッジ法を行った。エッジ法は各材質ともエッジを中心とした10x10㎝2の等しい照射野とし、

線減弱を等しくするためにファントム厚はアクリル4.4㎝、タングステン0.3㎝、タフウォーターは2㎝と5

㎝を重ねた。ファントムとカセッテ間の距離dはアクリルとタングステンの場合は0.0㎝、2.5㎝、4.5㎝、タ フウォーターの場合は2.5㎝、4.5㎝にて撮影を行った。解析は得られた画像のプロファイルカーブからファ ントム境界のFWHMとMTFを求めて行った[2]

ファントムとカセッテ間の距離が近い場合にMTFが1を超える周波数成分が出現し、距離が近いほどピー クは高く高周波側に出現した。この理由はMTFのグラフではエッジ効果の影響により低周波成分である散 乱線が影響したためピークが1を超え、距離を離す事で散乱線の分布が広がったためだと考えられる。また 4.5cmでは異なる材質間で有意な差は見られないが、0.0cmと2.5cmではタングステンの方がアクリルよりも ピーク値が高周波側に出現したが、タフウォーターの場合は2.5cm4.5cmとも有意な差は見られなかった。

この理由はファントムが薄いタングステンの方が散乱線は狭い分布になりエッジ効果が強調されるためだと 考えられる。タフウォーターの場合はアクリルよりもファントムが厚いため散乱線の分布が広くなり、MTF の距離による依存が小さくなったと思われる。FWHMについては短い撮影距離では一定の相関は見られな かったが、距離を離す事で評価が可能となり簡易的な評価法になると思われる。

6 列 MDCT の低線量撮影による画像評価

HK3037 大西 秀幸

マルチディテクタCT(MDCT )の画像評価においては、スライス厚やビームピッチ等の体軸方向(Z軸 ) の分解能に対して影響を及ぼす因子を考慮する必要がある。本研究はSIEMENS社製MDCTSOMATOM Emotion 6を用いて、アルミ製針金を径1 mm2 mmのものを用意し、グラニューを糖質量パーセント濃度 10%程度に調整した寒天の中心に15 mmから1 mmまで1 mm間隔で計16 本配置した2つの自作ファントム を作成し、設定スライス厚を1 mm,2 mm、ビームピッチを0.5,1.0,1.5,1.8、管電流時間積( mAs )を60 mAs,32 mAs,16 mAs,11 mAs,9 mAsと変化させ、それらの撮影を行った。得られた画像の視覚評価とプロファ イルカーブを用いた物理的評価で、被験者の被曝を考慮した上での最適撮影条件を導き出した。検討の結果、

ビームピッチを変化させた場合、実効スライス厚の増加と寝台移動速度の増加によるパーシャルボリューム 効果の影響を受け、針金の間隔3 mm以下のところでプロファイルカーブのピークにかぶりが生じ、画像上 で針金間隔3 mm以下の針金を表示できる条件はなかった。mAsを変化させた場合も、線量低下によるノイ ズの増加によって低コントラスト分解能に影響を及ぼし、針金の間隔3 mm以下のところでプロファイルカ ーブのピークにかぶりが生じ、画像上で針金間隔3 mm以下の針金を表示できる条件はなかった。以上のこ とから、物理的評価と視覚評価の評価基準を針金の間隔4 mmまでの13 本を有効と判断した結果、設定スラ

イス厚2 mm、ビームピッチ1.0、16 mAsの条件が、被検者の負担を考慮した上で最も適した撮影条件であ

ると考えた。この条件で健常ボランティアを対象に撮影を行い、横断像、冠状断像について、臨床施設の標 準撮影条件の画像と研究から導き出した撮影条件の画像を放射線専門医とともに評価を行った。肺野条件で あれば、設定スライス厚2mm,ビームピッチ1.0,16 mAsの条件でも診断上問題は無いという評価を得た。以 上のことから、SIEMENS社製 SOMATOM Emotion 6を使用した場合、設定スライス厚2mm,ビームピッチ

1.0,管電流時間積16 mAsの条件が、被検者の負担を考慮した上で最も適した撮影条件であることがわかっ

た。

(12)

モンテカルロシミュレーションによる平均乳腺線量の算出

HK4038 若林 貴子

モンテカルロ法とは、乱数を用いて、ある事象の起こる確率を繰り返しシミュレーションする事により、

その事象の近似解を得る計算方法である。EGS5(Electron Gamma Shower Version 5)は、X線と物質との 相互作用の確率についてモンテカルロ計算を行い、物質中での光子や陰陽電子の輸送計算をシミュレーショ ンするコンピュータープログラムであり、様々な分野で応用されている。そこで、本研究ではこのEGS5 用いて乳房被曝についてのシミュレーションを行った。

乳ガンの多くが乳管という乳腺組織から発生するため、乳腺の被曝線量が問題となる。現在最も多く用い られているACRの乳房被曝の評価法では、半価層、管電圧やフィルタなどをパラメータとした表から求め られる入射線量1Rあたりの平均乳腺線量(mradR)を用いて、その値に入射線量(R)をかける事により、

平均乳腺線量(mrad)を求めている。本研究ではEGS5を用いて、コンピュータ上に作成した乳房ファント ムにX線を入射をし、入射線量1Rあたりの平均乳腺線量(mrad/R)の算出を行った。この計算値とACR の値とを比較し、モンテカルロ計算結果の妥当性を評価した。また、ACRの方法では、乳腺50%。脂肪 50%のファントムに対して測定を行うが、シミュレーションでは任意の割合で行えるため、ACRの方法で は求める事のできない乳腺含有率における平均乳腺線量を算出した。

入射線量1Rあたりの平均乳腺線量の計算値は、ACRの値と非常に近い値を示したが、少し小さい値とな った。これは用いた線質の違いによるものと考えられ、妥当な結果であると考えられた。

また、乳腺密度が高くなるほど、入射1Rあたりの平均乳腺線量は小さくなることがわかった。

2 次元治療計画装置と 3 次元治療計画装置の 計算アルゴリズムの違いによる線量分布の差異

HK4040 福田 由美

放射線治療に於いて、放射線の線量計算を行なう治療計画装置は欠かせないものであるが、治療計画装置 の種類によって採用されている計算アルゴリズムが異なるため、機種ごとに算出される線量分布計画も異な ると考えられる。そこで、本研究では肺野モデルファントムを自作し、2種類の治療計画装置を用いて治療 計画を算出し、フィルム法による線量分布の実測との差異について調べ各種の計算アルゴリズムの問題点に ついて検討した。

使用した治療計画装置は、3次元治療計画装置のEclipse(VARIAN社)、2次元治療計画装置のModulex

(CMS社)である。計算アルゴリズムは、EclipseにはAAA法およびPencilBeamConvolution法(不均質補正 法はBathoPowerLaw法)が採用されている。また、ModulexではRatio-TAR法、PowerLaw法、Clarkson法及

Equivarent-TAR法が採用されている。それぞれの比較は深部線量率と、アイソセンタ面の線量分布で行っ

た。

その結果、各計算アルゴリズムで深部線量率および線量分布が異なった。実測と比較すると、深部線量率 と線量分布の形が最も近いものはEclipseAAA法であった。また、誤差の大きさは均質部と不均質部で大 きく異なった。特に空気層ではRatio-TAR法、Clarkson法、Equivarent-TAR法で約30%の非常に大きな誤差 が見られた。

一般に治療計画装置と実際の線量との差異は5%以内であることが条件とされているが、本実験ではアイ ソセンタでの誤差はどの計算アルゴリズムでも最大約1%と小さく問題ないものであった。しかし低密度部

(特に不均質物質の境界部分)では誤差が大きくなるため、特に第4世代(Convolution法)より前のアルゴ リズムを使用するときは注意が必要である。そのため計算アルゴリズムを導入する時には実測との比較を行 い、予めそれらの誤差や限界を知っておく必要があるといえる。

(13)

マンモグラフィにおける撮影条件の検討

HK4041 小野 朱美

近年、乳がんは女性のがん罹患率のトップとなり、1960年代には約2000人程度であった死亡者数は約1 人にまで増加した。乳がんは早期発見で治療を受ければ10年生存率が非常に高いがんである。厚生省は平 12年以降乳がん検診にマンモグラフィを推奨するなど、最近日本でも早期発見の為に検診が盛んになっ てきている。ゆえに、どんな陰影であっても明瞭に観察できる最適な条件で画像を提供し、かつ受診者の被 ばくを可能な限り低減することが診療放射線技師の役割である。

本研究ではマンモグラフィにおける撮影条件の検討し、更に組織陰影の描出性を左右する要因について評 価した。まず、乳腺50%ファントムの3〜5cmを用いてグリッド使用の有無について散乱線含有率、MTFを 測定した。次に、ACRファントムを撮影し、管電圧ごとに得られた画像について視覚評価を行った。また、

物理的な値と視覚評価の関連性を評価するために、重回帰分析を行った。次に半価層を測定し、Sobolの近 似式を用いて変換係数を求め、表面乳腺線量から平均乳腺線量を算出した。

グリッド使用の有無の比較では、グリッドを用いない場合は画質が極度に劣化した。コントラストは管電 圧の上昇と共に低下したが、30kV付近からその割合が大きくなった。また視覚による評価においても模擬 組織の描出性は30kV以上の管電圧において低下が見られた。以上よりマンモグラフィに用いる管電圧領域 においても低い電圧の方が描出率は高いことが分かった。

これらの結果について多変量解析を行うと、コントラストと模擬組織の描出性は散乱線含有率の変化より X線エネルギーの変化に左右されることが推測された。即ち、軟線撮影でもグリッドを使用して散乱線を 多く除去しているために、フィルムに到達する散乱線の影響が少ない。従って最終的な被写体コントラスト は管電圧の方に依存していると言える。

写真濃度から平均乳腺線量を推定する方法の信頼性について

HK4042 落合 恵美

診断用X線に起因するがんのリスクは、日本において3.2%と諸外国と比較して極めて高いという報告が ある。更に、マンモグラフィのような低エネルギー領域で悪性形質転換を増強する報告も見られ、診断用X 線における被ばく線量については社会的にも関心が高まっている。

本研究では、昨年学内で報告された、アルミや銅の写真濃度から乳腺の被ばく線量を推定する方法につい て追加実験を行いこの方法の信頼性について評価した。

最初に乳腺ファントムと0.06mm0.08mmの薄い銅板を同一面で照射し、銅板の濃度とコントラストから 撮影条件を推定した。次に、乳腺含有率30%、50%、70%のファントムの厚さに応じた入射線量を測定し、

半価層、Sobolの近似式、補間多項式より換算係数を求め、入射線量に乗じて平均乳腺線量を算出した。更 にこれらの基礎データを基に、濃度から撮影条件、及び平均乳腺線量への換算表を作成した。また、臨床に 近い試料を得るため、挽き肉にラードを混入したものをファントムとして撮影し、得られた換算表よりこの 方法の信頼性について評価した。その結果、被写体が厚い部分では多少の誤差が生じたものの、ほぼ良好な 比例関係が得られた。

この方法は管電圧、被写体厚の変動によって推定を誤りやすく、最終的にはそれが乳腺線量の推定値に反 映される。この誤差を少なくするための対策として銅の階段数を増加し、撮影条件に応じて測定する厚さを 変えるなどの方法が考えられる。また使用した受光系は常に同じもので、全く同じ濃度が得られる増感紙を 用いたが、実験は何日にも及び、経時的な自動現像機の変動が別の誤差の原因となった。

銅階段の写真濃度から簡易的に平均乳腺線量を推定する方法の信頼性について評価した。この方法は精度 の良い品質管理を行うことによって、臨床現場でも充分使用可能である。

(14)

胸部撮影における金属フィルタの効果について

HK4043 増田 明宏

胸部単純撮影において、金属フィルタは患者の被ばく線量を左右する低エネルギー領域のX線を減少させ る目的で使用される。本研究では、一般的に用いられている金属フィルタ(Cu+Al)と原子番号の異なる金 属フィルタ(Ti,Mo)、また同金属の厚みの異なるフィルタを用いて、線質の比較、画像の物理的評価およ び視覚的評価を行い、金属フィルタの効果について検討した。

撮影線量は使用フィルタの原子番号が大きくなるにつれ増加した。実効エネルギーも使用フィルタの原子 番号が大きくなるにつれ高くなった。散乱線含有率は原子番号が大きいフィルタを使用するとやや増加した が、大きな差は見られなかった。X線スペクトルに関しては、原子番号が高くなると低エネルギー領域のX 線の光子数が減少した。画像のコントラストは、Cu+Alフィルタに比べ原子番号が大きくなるにつれ低下し、

特にMoフィルタを使用すると極端に低下した。しかし、Tiフィルタに関しては差が見られず、同様なコン トラストとなった。画質の物理的評価では大きな差は生じなかったが、Cu0.2,MoフィルタのみMTFは低 下し、RMS粒状度も劣化が見られた。ランドルト環チャートを用いた視覚的評価においては、コントラス ト、物理的評価と同様に、原子番号が大きくなるに従って正答率は低下した。これらの相関性を証明する重 回帰分析では、散乱線含有率の変化より、実効エネルギーの変化の方がコントラストに与える影響が大きく、

粒状度の変化よりコントラストの変化の方が視覚評価の正答率に与える影響が大きい、という結果が得られ た。

フィルタを用いると、低エネルギー領域のX線が除去されることによって、コントラストが低下するとと もに、視覚的評価の数値も低下した。従って、実効エネルギーがあまり高くならないフィルタを使用するこ とが重要である。画質と被ばくの両面から考慮すれば、今回使用したフィルタの中ではCu+Al,Tiフィル タを使用することが望ましい。

シャウカステン表示した医用画像の検出能に対する偏光の効果

HK4045 a 橋 寛臣

シャウカステン表示した画像とLCD表示した画像は,前者の方が表示輝度のダイナミックレンジが後者 10倍程度,あるいはそれ以上広いにもかかわらず,コントラスト検出能を比較すると両者はほぼ同程度 であるという報告がある[1] 。この点に対して疑問を持ち,両者の画像表示において偏光状態が異なって いること,つまり,シャウカステン表示系はランダム偏光,LCD表示系は直線偏光で観察している[2] と いうことが何らかの影響を及ぼしている可能性があるのではないかと着想した。そして,シャウカステンに 偏光板を組み合わせて表示,観察することにより,シャウカステン単独で表示,観察する場合に比べて検出 能を向上させることができるのではないかと考え,実験を行った。

実験は,CDファントム画像をシャウカステン単独の表示系(SCH系),およびシャウカステンに偏光板を 組み合わせた表示系(SCH/POL系)にて,シャウカステンの蛍光灯の明るさを変化させて視覚物理的評 価を行い,CD曲線,コントラスト(C)検出能,空間的サイズ(D)検出能について比較した。

その結果,コントラスト検出能についてSCH/POL表示系はSCH表示系よりも優れていた。空間的検出 能については両者の差は認められなかった。コントラスト検出能の向上が真に観察光を直線偏光化したこと によるのか否かを調べるために,2つの検証実験を行った。まず,観察光の偏光状態を変化させてコントラ スト検出能を評価した結果,観察光の直線偏光成分比率が高くなるに従ってコントラスト検出能は向上した。

また,偏光板に代えてNDフィルタを挿入することにより,観察光を直線偏光化することなく偏光板を用い た時と同程度に減光されるSCHND表示系について評価した。その結果,この系では検出能の改善は認め られなかった。これらの結果は,偏光板の偏光作用がコントラスト検出能の向上に寄与したことを支持す る。

本実験より,シャウカステン表示した医用画像の検出能に対する偏光の効果は,わずかではあるがコント ラスト検出能の向上に寄与するものであると言うことができる。

(15)

小児股関節撮影における撮影線量低減の検討

HK4048 田村 正人

近年、医療被曝に対する関心が高まってきており、付加フィルタを用いて画像形成に寄与しないX線の長 波長成分を除去するなど被曝低減の試み1)がなされている。胸腹部撮影などの一般的な検査に用いられるX 線量の人体への影響は明確にはされていないが、日本での医療被曝による発癌のリスクは他の医療先進国に 比べ倍以上高いという報告2)もあり、さらなる被曝低減が求められる。

そこで今回、現在普及しているディジタル系の利点の一つである画像処理に着目し、低線量撮影で問題と なる画質の悪化を画像処理にて改善することを試みることにした。被曝線量で特に考慮すべきケースは放射 線感受性の高い小児である。中でも股関節の撮影は頻度が高く撮影部位に生殖腺が含まれることから、放射 線障害を考えた場合撮影線量は可能な限り低く設定する必要がある。側彎症や股関節脱臼などの検査では側 彎の角度や位置関係などが確認できればよく、粒状性は大きな問題とはならないため撮影線量を低く設定す ることが可能である。3)しかし、ペルテス病や化膿性股関節炎などの疾患の診断を目的とした撮影では、粒 状性の悪化による見落としが問題となることが考えられ撮影線量を低減できない。そこで、今回は小児股関 節撮影について被曝線量低減の可能性を検討することにした。

検討の手順としては、診断医が小児股関節画像の読影/診断をどのような所に視点をおいているかを調べ、

その結果をもとに模擬ファントムを作製した。このファントムを使って、X線撮影線量とファントム画像の 検出能を調べ、画像処理による被曝線量低減の可能性を検討した。さらにその結果を基に小児ファントム画 像を作成し、医師による評価を行い、確認を行った。

その結果、2割程度のX線撮影線量低減の可能性が見出せた。X線撮影線量を低減することで増加するX 線量子ノイズが画像に与える影響は大きく、信号が認識できても粒状性が悪いと診断には適さない画像とな った。このことより大幅な撮影線量の低減は見込めなかった。

マンモグラフィにおける画像処理手法の検討

HK4049 永井 良明

近年、我が国の乳癌発生率は年々上昇してきており、将来的にも、死亡者数、罹患者数がさらに増加する ことが予想されている。そのため、初期の乳がんの発見に有効な乳房X線撮影(マンモグラフィ)による乳 癌検診が推奨され、多くの自治体でマンモグラフィの集団検診が行われている。しかし乳房を構成する組織 はすべて軟部組織でできているためX線吸収の差が小さく、情報を得ることが難しい。よって出力装置には 高いコントラスト分解能が必要であるために、マンモグラフィの特性曲線はアナログ画像形成システム、デ ィジタル画像形成システム共に高ガンマ、高Dmax(最高濃度)で出力して診断に用いている。それでも、

画像の読影、診断には多くの知識と経験が必要である。またマンモグラフィもディジタル化が進み、画像処 理手法の研究開発が進められ、今後さらにディジタル化が進むにつれて、読影時に診断しやすい画像を表示 する画像処理手法が必要になると考えられる。

そこで、本研究では、腫瘤の強調を目的とし、コンピュータ支援診断で研究されている勾配ベクトルを用 いた画像処理手法による腫瘤の強調処理手法を検討する。腫瘤陰影はその中心部ほど濃度が低くなる特徴を 持っていることから、濃度の勾配ベクトルは腫瘤の中心を向く。従って、点集中度フィルタによって勾配ベ クトルの集中度を計算すれば、腫瘤を検出できる。これを原画像に加えることで、腫瘤のコントラストを強 調した。実験では、臨床の様々な状況を想定して、点集中度フィルタの性能評価を行い、原画像に足し合わ せるときの強調係数を特定した後、臨床画像に適応して、画像処理によって生じる問題点とその解決方法を 検討した。その結果、低濃度部で腫瘤陰影の強調が低いことや、腫瘤中心部で点集中度フィルタの検出能が 落ちることが問題点として挙がった。この解決のため、濃度ごとに強調係数を変化させることや、点集中度 の平滑化処理を組み込んだ、新たな画像処理工程を提案した。

(16)

PET 検査の吸収補正〜外部線源と X 線 CT による吸収補正法の比較〜

HK4050 宇野 和也

近年、注目されているPET(Positron Emission Tomography)検査において、悪性腫瘍の診断を行う際に定 量性が重要とされている。定量性を確保するためにはγ線の吸収や散乱による影響を補正が必要となる。

PET検査の吸収補正には、外部線源を用いた方法とXCTを用いた吸収補正法がある。そこで各吸収補正 法について調べ、利点や問題点などを比較・検討した。

外部線源を用いた吸収補正には68Ge/68Ga線源を用いた方法と137Cs線源を用いる方法がある。これらの外 部線源による吸収補正法では、被ばく線量は低く抑えることができるが、十分な吸収補正データを得るため には長時間のトランスミッション撮影が必要となるため患者の負担が増大する。

XCTによる吸収補正の利点は、短時間で統計誤差の小さい減弱マップが得られることやトランスミッ ションとエミッションのデータのズレが少ないことが利点として挙げられる。さらに、PET画像とCT画像 を融合させることで診断能の向上が期待できる。欠点としてアーチファクトによる影響や被ばく線量の増加 が挙げられる。

吸収補正には定量性や正確性,臨床現場では短時間での撮影が求められる。この点ではXCTが最も優 れており、PET検査における吸収補正法でX線CTが最も有用であると考えられる。しかし、被ばく線量が 増加するため、被ばく線量を低く抑えるような配慮が必要であると考えられる。

LCD によるフィルムレス化の検討

HK4053 金澤 崇史

近年、医療現場でのディジタル化は目覚しいものがある。中でもレントゲン写真は、フィルム/スクリー ン(以下、F/Sシステムと記す)からディジタル画像形成システムに、また最近ではフィルムを必要としな い医用モニタ上での読影・診断が増えつつある。

しかし、このような医用モニタは画素数から来る空間周波数域、輝度から来る濃淡の再現性としてのダイ ナミックレンジ等の読影能について不安との声も多々聞かれる。

そこで、次の実験を行うことで、LCDによるフィルムレス化が可能であるかどうかを検討した。

F/Sシステム画像とFCRシステムによるフィルム出力画像の比較

FCRシステムによるフィルム出力画像とLCD表示画像の比較

①の評価法としては、物理的画質評価である特性曲線、MTF、RMS粒状度で評価を行い、また、視覚評

価としてCD-RADファントムを使った評価を行なった。②の評価法としては、①と同様にCD-RADファント

ムを使って視覚的画質評価を行い、物理的画質評価としては、市販されている高解像度のディジタルカメラ を使用し、FCRプリント出力画像及び、1M、3M、5MのLCDに表示された矩形波チャートの画像を撮影す ることによってMTFを算出し比較を行なった。結果、次のようなことが明らかとなった。

FCRプリント出力画像はF/Sシステムとほぼ同等以上の画質であった。

・LCD表示画像は、5MではFCRシステムプリント出力画像とほぼ同等であったが、1M、3Mの LCDでは描出能の低下が見られた。

以上のことから、LCDによるフィルムレス化は、5MのLCDであれば、問題なく可能であるが、1M、3M LCDには問題があると考えられる。1M、3MのLCDについては撮影される画像の最大空間周波数等を考 慮した用法を(例えば拡大を取り入れた患者への説明や撮影室での確認モニタ等)を検討する必要があろ う。

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