Newsletter of The National Museum of Modern Art, Tokyo [Oct.-Nov. 2015] │ 14
昨年︑東京国立近代美術館は国立西洋美術館︑国立新美術館︑東京文化財研究所とともに﹁平成二十六年度文化庁文化芸術振興費補助金︵地域と共働した美術館・
歴史博物館創造活動支援事業︶﹂により︑﹁海外日本美術資料専門家︵司書︶の招へい・研修・交流事業﹂︵通称
AJ Lプロジェクト︶
を実施した﹇註
1﹈︒ 本年度も︑﹁平成二十七年度文化庁文化芸術振興費補助金︵地域の核となる美術
館・歴史博物館支援事業︶﹂を得て︑引き続
き
AJ Lプロジェクトは二年目に入ろうと
している︒以下︑本プロジェクト誕生の機縁︑概要および公開ワークショップ︵以下︑
WS︶について︑初年度である昨年の模様
をお伝えし︑あわせて来月十一月に予定
されている二年目の
AJ 二十七日︵金︶に開催予定の 招へい者︵八月十日選考決定︶および十一月 Lのプログラムと 紹介したい︒ WSの計画を AJ L
誰
プロジェクト名称にある
AJ
術に関わる資料に携わる専門家であり︑ art librarian︶とは︑海外において日本美 Japanese-L︵ 料に携わる専門家﹂という点は︑﹁本プロ 国籍は問わない︒﹁日本美術﹂および﹁資
ジェクトにおいては︑日本美術の範囲に
は写真・映像・マンガ・デザイン・建築等
の視覚芸術全般を含み︑これらに関わる視覚資料の扱いを専らとする図書館員
ならびにアーキビスト︑ヴィジュアル・リ
ソース・キュレータ等も招へいの候補者
に含められるもの﹂とし︑募集要項にお
いては︑応募資格を次の項目において設定した︒
a日本国外において右記の日本美術
の範囲に関わる文献および視覚資料の扱いを専らとする図書館員︒
b日本国外において右記の日本美術
の範囲に関わる文献および視覚資料の扱いを専らとするアーキビス
ト︑ヴィジュアル・リソース・キュ
レータ︒
c日本国外において右記の日本美術
の範囲に関わる文献および視覚資料を用いて日本研究に従事してい
る者︒
さらに次の二項の条件を付加している︒・日本語による議論が可能な語学力
を有する者︒特に日本語での日常 会話ができ︑日本語での電子メール
での連絡ならびにワードプロセッサ
およびプレゼンテーション・ツールの操作が可能であること︒・所属機関からの推薦を受けた者︒
AJ L目的
AJ 外美術関係機関︑研究者に伝達されてい 書誌情報の発信が︑有効かつ効果的に海 提供およびライブラリサービスならびに 機関が﹁今日行っている所蔵美術文献の 京国立近代美術館ほかプロジェクト参加 Lの目的は募集要項において︑東
るかを検証するために︑海外において実地に日本美術資料を扱う専門家︵司書︶を招へいし︑日本の現況の知悉理解を促す研修を実施する
とともに︑広く日本側関係者と
も交流して︑そ
の上で日本の美術図書館が海外からの更なる
ニーズの開拓を果たすための課題を明確にする ことにあり⁝⁝この課題解決は同時に国内美術研究者への情報サービスの向上に
も直結するものであると考え﹂ると示し
ている︒
さらに︑本事業最終日の昨年十二月十一日に開催された公開ワークショップ﹇図 1・ 2﹈
の題目を﹁日本美術の資料に関わ
る情報発信力の向上のための提言﹂とし
た背景には︑本プロジェクトを通じて︑
1日本
と海外の
AJ Lのネットワーク
を構築する︒
2海
外の
AJ Lのネットワークを促進
する︒
3日
本の美術情報資料の基盤を客体化する︒
という三点の目論見があった﹇註
2﹈︒
水谷長志A J L プ ロ ジ ェ ク ト ﹁ 海 外 日 本 美 術 資 料 専 門 家 ︵
司書︶ の 招 へ い ・ 研 修 ・ 交 流 事 業 ﹂
二〇一四から二〇一五へ│
報告と展望 情報資料図1 WS開会式(左より市川/岩瀬/足立/加茂川 実行委員会委員長/藤田/長谷川/吉村/平野、
2014年12月11日、東京国立近代美術館講堂)
図2 WSパネルディスカッションの様子
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AJ L
誕生機縁
右に
AJ Lプロジェクトの目的と特に
その
美術情報資料の基盤を客体化する﹂こと WSの第三の目論見として﹁日本の
があったと述べた︒
その理由は︑一九八〇年代半ばから︑例えば︑・一九八四年東京国立博物館資料館︵東京都美術館美術図書室の開室は 一九七六年︶・一九八六年国際図書館連盟︵IFLA︶東京大会美術図書館分科会開催・一九八九年アート・ドキュメンテー
ション研究会︵現学会︶創立・一九八九年横浜美術館美術図書室開室
などの実績を通じて︑日本の美術情報資料の環境の整備開拓が徐々にでも進展し
ながら︑依然︑国内においても︑ましてや海外関係機関への訴求力においても︑一向
に向上の気配が見られないことへの閉塞的な気分があったことが大きい︒また︑九〇年代から二〇〇〇年代にかけて︑各所で
いささか野放図に作られたかのような多数
の美術情報システムが︑近年謂ゆる﹁ガラ
パゴス︵ガラケー︶化﹂していく気配が濃厚
であるように感じられてきたことがある︒
﹁日本の美術情報資料の基盤﹂を﹁客体化する﹂ために︑外からの目であらためて
レビューする機会を設ける︒そのためには 海外日本美術関係機関から
AJ 日本での視察見学の機会を用意し︑交流 Lを招き︑
することによって︑この閉塞感がいくらか
でも晴らされんことを︑
AJ Lプロジェク
トにおいて目標として計画し︑目指した︒
ここに私的体験を記すことはいささか憚
られるが︑筆者は一九九〇年に米国政府の国際ビジター・プログラムの招きによりア
メリカのアートライブラリを当時望みえる最良のプログラムによって視察できた﹇註
美術館あるいは国立新美術館のアートラ 3﹈︒その体験が少なくとも東京国立近代
イブラリの開室に役立ったことがある︒
また恩師の
F先生︵図書館情報大学名誉
教授︶が手掛けた海外日本研究図書館の創設と整備の事業︵多くは国際交流基金の
資金によるものだが︶︑その一端の北京日本学研究センターとローマ国立図書館での作業に連なった体験が︑
AJ Lという事業
の立ち上げを構想させたように思われる︒
AJ L二〇一四招者 昨年度当初に文化庁からの補助金交付
の通達を得て︑四月九日に第一回実行委員会開催︑五月二十八日に募集要項の告知に至り︑八月末日に募集締切︒九月八日に招へい者選考委員会によって七名を決定した︒
AJ 集要項をグローバルかつ応募の可能性のあ Lプロジェクトの開始と募
る
AJ
Lに情報を的確に伝えるために重 要で効果のあったのが︑以下の機関が持つ
メーリングリスト︵
ARLIS/NA・北米美術図書館協会︵︶ IFLAART分科会よる﹁﹂ IFLA・国際図書館連盟︵︶美術図書館 ML︶への投稿であった︒ による﹁ARLIS│L﹈・北米日本研究資料調整協議会︵NCC︶による
ML
・日本資料専門家欧州協会︵EAJRS︶
による
ML AJ L二〇一四 初年度招へい者は東京国立近代美術館でのイントロダクションおよびアートラ
イブラリでの研修見学を皮切りに﹇図
図書館から京都の国際日本文化研究セン 財研究所︑国立情報学研究所︑国立国会 西洋美術館︑東京国立博物館︑東京文化 同フィルムセンター︑国立新美術館︑国立 3﹈︑
ター︑奈良国立博物館を回り︑残り
の時間を最終日の
WSへ向けた準備
に費やした︒
WSにおける招
へいプレゼンターの氏名︵所属︶と﹁提言のタイトル﹂は次の通りである︒ ・長谷川│Sockeel 正子︵フランス
国立ギメ東洋美術館図書館︶﹁Věra Linhartováの仕事と蔵書から学ぶもの﹂・岩瀬加奈子︵ハワイ大学マノア校美術
学部︶﹁海外における日本美術画像資料の利用促進に向けて﹂﹇図
4﹈
・カワイアイエア・藤田幸代︵ホノルル
美術館図書館︶﹁アメリカ側から見た日本 収集?公開?そして未来へ
のビジョンは?﹂・吉村玲子︵米国スミソニアン協会フリー
ア美術館図書館︶﹁北米における日本美術研究と図書館現況と課題﹂・足立アン︵フリーランス︶﹁
19 60│
19 品のアーカイブ︑保存と配布日本 70年代の実験映画とビデオ作
に適した取り組みと問題について﹂・平野明︵セインズベリー日本藝術研究所
図書館︶﹁日沒處の日本美術図書館﹂
図3 東京国立近代美術館アートライブラリでの研修風景
図4 岩瀬加奈子氏によるプレゼンテーション・スライド
(抜粋)