LastUpdate: 2003.4.12
目 次
1 ホモロジーとコホモロジー 5
1.1 鎖複体のホモロジーとコホモロジー . . . . 5
1.1.1 ホモロジー . . . . 5
1.1.2 コホモロジー . . . . 6
1.2 普遍係数定理とKunnethの定理 . . . . 8
1.2.1 TorとExt . . . . 8
1.2.2 普遍係数定理 . . . . 10
1.2.3 Kunnethの定理 . . . . 10
1.3 位相空間のホモロジーとコホモロジー . . . . 11
1.3.1 単体的(コ)ホモロジー . . . . 11
1.3.2 特異(コ)ホモロジー . . . . 12
1.3.2.1 定義 . . . . 12
1.3.2.2 普遍係数定理 . . . . 14
1.3.2.3 空間対の(コ)ホモロジー完全系列 . . . 14
1.3.2.4 切除定理とMayers-Vietorisの定理 . . . . 16
1.3.3 CW複体の(コ)ホモロジー . . . . 17
1.3.4 Cechの(コ)ホモロジー . . . . 19
1.3.5 様々な(コ)ホモロジーの関係 . . . . 20
1.3.6 局所系の(コ)ホモロジー . . . . 22
1.3.7 無限チェインのホモロジー . . . . 23
1.3.8 コンパクト台のコホモロジー . . . . 23
1.4 (コ)ホモロジーの積演算 . . . . 24
1.4.1 積の(コ)ホモロジー . . . . 24
1.4.2 カップ積とキャップ積 . . . . 25
1.5 例 . . . . 28
1.5.1 Euler数とLefschetz数 . . . . 28
1.5.2 多様体 . . . . 29
1.5.2.1 連結和 . . . . 29
1.5.2.2 RPn . . . . 30
2.1.1 コンパクトLie群 . . . . 32
3 Manifolds 33 3.1 位相多様体 . . . . 33
4 微分位相幾何学 34 4.1 歴史 . . . . 34
4.2 モース関数 . . . . 35
4.3 5次元以上の多様体 . . . . 36
4.3.1 h同境定理 . . . . 36
4.3.2 Poincare予想 . . . . 37
4.4 4次元多様体 . . . . 39
4.4.1 基本事項 . . . . 39
4.4.2 Rokhlinの定理 . . . . 39
4.4.3 4次元位相多様体の分類 . . . . 40
4.4.4 Donaldson理論 . . . . 41
4.5 同境理論 . . . . 41
5 ファイバー束 43 5.1 ベクトル束 . . . . 43
5.1.1 K理論 . . . . 43
5.1.2 乗法列とChern指標 . . . . 50
5.1.3 Clifford束 . . . . 53
5.1.4 スピノール束 . . . . 55
5.1.5 Dirac作用素 . . . . 57
5.1.6 Rnの擬微分作用素 . . . . 59
5.1.7 ベクトル束の擬微分作用素 . . . . 61
5.1.8 Atiyah-Singer指数定理 . . . . 63
5.1.8.1 整数型指数定理 . . . . 63
5.1.8.2 楕円型作用素の族 . . . . 67
6 特性類 67 6.1 分類空間 . . . . 67
6.1.1 実ベクトルバンドル . . . . 67
6.1.2 複素ベクトルバンドル . . . . 69
6.2.1 Poincar´e-Hopfの定理 . . . . 71
6.2.2 Euler類とThom同型. . . . 73
6.2.3 Z2-Euler類とThom同型 . . . . 76
6.2.4 Stiefel-Whitney類 . . . . 79
6.2.5 Chern類 . . . . 81
6.2.6 Pontrjagin類 . . . . 82
6.2.7 障害類 . . . . 84
6.2.8 スピン構造 . . . . 86
7 Knots and Links 87 7.1 正則表示 . . . . 87
7.1.1 数論的不変量 . . . . 87
7.1.1.1 最小交点数 . . . . 87
7.1.1.2 絡み数(linking number) . . . . 88
7.1.1.3 橋指数(bridge index) . . . . 88
7.1.1.4 組み紐指数(braid index) . . . . 89
7.1.1.5 結び目解消数(unknoting number) . . . . 89
7.2 Seifert曲面 . . . . 89
7.2.1 数論的不変量 . . . . 90
7.2.1.1 種数(genus) . . . . 90
7.2.1.2 符号数(signature)と退化次数 . . . . 90
7.3 絡み目群 . . . . 91
7.4 不変多項式 . . . . 92
7.4.1 Alexander-Conway多項式 . . . . 92
7.4.1.1 Skein関係による定義 . . . . 92
7.4.1.2 構成的定義 . . . . 93
7.4.2 Jones多項式. . . . 94
7.4.2.1 Skein関係による定義 . . . . 94
7.4.2.2 Stateモデル. . . . 95
7.4.3 Homfly多項式 . . . . 96
7.4.3.1 Skein関係による定義 . . . . 96
7.4.4 Q-多項式 . . . . 97
7.4.4.1 Skein関係による定義 . . . . 97
7.4.5 Kauffman多項式 . . . . 98
7.5.1 抽象テンソル表示 . . . . 98
1
ホモロジーとコホモロジー[LastUpdate: 2005.12.30]
1.1
鎖複体のホモロジーとコホモロジー1.1.1 ホモロジー
【定義 1.1 (チェイン複体の圏)】 次数付R加群C∗ = (Cj)とその準 同型∂ = (∂j),
· · · −−−→∂j+2 Cj+1 −−−→∂j+1 Cj −−−→∂j Cj−1 −−−→ · · ·∂j−1
は∂2 = 0を満たすとき,チェイン複体といい,C∗ = (Cj, ∂)と表 す.2つのチェイン複体の次数付R加群の準同型φ : C∗ → D∗ が
∂φ =φ∂を満たすとき,φをチェイン写像といい,対象をチェイン 複体,射を複体写像とする圏をチェイン複体の圏と呼ぶ.
【定義 1.2 (チェインホモトピー)】 チェイン複体C∗, D∗の射f, g : C∗ →D∗に対して,R線形写像の列Φn:Cn→Cn+1が存在して,
f −g =∂n+1◦Φn+ Φn−1◦∂n
が成り立つとき,Φ∗をfとgを結ぶチェインホモトピーという.こ のとき,f∗ =g∗ :H∗(C∗)→H∗(D∗)となる.
【定義 1.3 (ホモロジー関手)】 チェイン複体C∗に対して,
H∗(C∗) =Z∗(C∗)/B∗(C∗); Z∗(C∗) = Ker∂, B∗(C∗) = Im∂
により,次数付きR加群H∗(C∗) = (Hj(C∗)), Z∗(C∗) = (Zj(C∗)), B∗(C∗) = (Bj(C∗))を定義する.H∗(C∗)をC∗のホモロジー群,その元をホモ ロジー類,Z∗の元をサイクル,B∗の元をバウンダリーと呼ぶ.さ らに,任意のチェイン写像φ:C∗ →D∗に対して,ホモロジー写像 と呼ばれるR準同型φ∗ : H∗(C∗) → H∗(D∗)がφ∗([c]) = [φ(c)]によ り誘導される.チェイン複体にそのホモロジー群を,チェイン写像 にそれから誘導されるホモロジー群のR準同型を対応させることに より定義される,チェイン複体の圏から次数付きR加群の圏への関
手をホモロジー関手H∗と呼ぶ.
【命題 1.4 (連結準同型とホモロジー完全系列)】
1) 3つのチェイン複体(A, ∂),(X, ∂),(Y, ∂)の間の完全系列を 0 −−−→ A −−−→f X −−−→g Y −−−→ 0 とする.このとき,y∈Zn(Y)に対して,
∂∗[y] = [f−1◦∂ ◦g−1(y)]
によりR-線形写像∂∗ :Hn(Y) → Hn−1(A)が定まる.この写像を,
連結準同型という.さらに,次の完全系列が成り立つ:
· · · −−−→∂∗ Hn(A) −−−→f∗ Hn(X) −−−→g∗ Hn(Y) −−−→∂∗ Hn−1(A) −−−→ · · ·f∗ 2) 2組の完全系列の間の可換図式
0 −−−→ A −−−→ X −−−→ Y −−−→ 0
⏐⏐
φ ⏐⏐ ⏐⏐ψ
0 −−−→ A −−−→ X −−−→ Y −−−→ 0 に対して,∂∗ ◦ψ∗ =φ∗◦∂∗ :H∗(Y)→H∗(A)が成り立つ.
1.1.2 コホモロジー
【定義 1.5(コチェイン複体)】 次数付R加群C∗ = (Cj)とその準同 型δ= (δj),
· · · −−−→δj−2 Cj−1 −−−→δj−1 Cj −−−→δj Cj+1 −−−→ · · ·δj+1
はδ2 = 0を満たすとき,コチェイン複体といい,C∗ = (Cj, δ)と表 す.2つのコチェイン複体の次数付R加群の準同型φ:C∗ →D∗が δφ=φδを満たすとき,φをコチェイン写像といい,対象をコチェイ ン複体,射をコチェイン写像とする圏をコチェイン複体の圏と呼ぶ.
【定義 1.6 (コホモロジー関手)】 コチェイン複体C∗に対して,
H∗(C∗) =Z∗(C∗)/B∗(C∗); Z∗(C∗) = Kerδ, B∗(C∗) = Imδ
により,次数付きR加群H∗(C∗) = (Hj(C∗)), Z∗(C∗) = (Zj(C∗)), B∗(C∗) = (Bj(C∗))を定義する.H∗(C∗)をC∗のコホモロジー群,その元をコ
ホモロジー類,Z∗の元をコサイクル,B∗の元をコバウンダリーと 呼ぶ.さらに,コチェイン写像φ :C∗ →D∗は,φ∗[u] = [φ(u)]によ りコホモロジー群の間のR準同型φ∗ :H∗(C∗)→H∗(D∗)を誘導す る.コチェイン複体にそのコホモロジー群を,コチェイン写像にそ れから誘導されるコホモロジー群のR準同型を対応させることによ り定義される,コチェイン複体の圏から次数付きR加群の圏への関 手をコホモロジー関手H∗と呼ぶ.
【命題 1.7 (連結準同型とコホモロジー完全系列)】
1) 3つのコチェイン複体(Y, δ),(X, δ),(A, δ)の間の完全系列を 0 −−−→ Y −−−→f X −−−→g A −−−→ 0
とする.このとき,a∈Zn(A)に対して,
δ∗[a] = [f−1◦δ◦g−1(a)]
によりR-線形写像δ∗ :Hn(A)→ Hn+1(Y)が定まる.この写像を,
連結準同型という.さらに,次の完全系列が成り立つ:
· · · −−−→δ∗ Hn(Y) −−−→f∗ Hn(X) −−−→g∗ Hn(A) −−−→δ∗ Hn+1(Y) −−−→ · · ·f∗ 2) 2組の完全系列の間の可換図式
0 −−−→ Y −−−→ X −−−→ A −−−→ 0
⏐⏐
φ ⏐⏐ ⏐⏐ψ
0 −−−→ Y −−−→ X −−−→ A −−−→ 0 に対して,δ∗◦ψ∗ =φ∗◦δ∗ :H∗(A)→H∗(Y)が成り立つ.
1.2
普遍係数定理とKunneth
の定理1.2.1 TorとExt
【定義 1.8 (加群のねじれ積)】 Rを単項イデアル整域とする.
1) R-加群Aに対して,R-自由加群F0, F1とR線形写像d:F1 →F0, : F0 →Aが存在して,
0 −−−→ F1 −−−→d F0 −−−→ A −−−→ 0
が完全系列となるとき,この短完全系列をAの左自由分解という.
2) R加群A, BおよびAの左自由分解1)に対して,チェイン複体 0 −−−→ F1⊗RB −−−→d⊗1 F0⊗RB −−−→ 0
の1次ホモロジー群をAとBのねじれ積とよび,TorR(A, B)と表す:
TorR(A, B) = kerd⊗1 このとき,次の完全系列が成り立つ.
0 −−−→ TorR(A, B) −−−→ F1⊗RB −−−→ F0⊗RB −−−→ A⊗RB −−−→ 0 ねじれ積は自由分解の取り方によらず同型を除いて一意的である.
【命題 1.9 (加群のねじれ積の性質)】 加群のねじれ積は次の性質を
持つ.
i) C をR加群の圏とするとき,TorはC ×C からC への関手で,い ずれの変数についても共変的である.
ii) Tor(A, B) = Tor(B, A).
iii) Tor(A⊕B, C) = Tor(A, C)⊕Tor(B, C).
iv) Aが自由加群の時,TorZ(A, B) = 0.
v) Kが標数0の体,Aが有限生成加群のとき,TorZ(K, A) = 0.
vi) TorZ(Zm,Zn)∼=Zd (m, n >0, d=GCD(m, n)).
vii) Kが体の時,TorK(A, B) = 0.
【定義 1.10 (Ext)】 Rを単項イデアル整域,A, BをR加群とする.
Aの左自由分解
0 −−−→ F1 −−−→d F0 −−−→ A −−−→ 0 から誘導されるコチェイン複体
0 −−−→ HomR(F0, B) −−−→dT HomR(F1, B) −−−→ 0 の1次コホモロジー群をExtR(A, B)と定義する:
ExtR(A, B) = HomR(F1, B)/ImdT. このとき,次の完全系列が存在する.
0 −−−→ HomR(A, B) −−−→ HomR(F0, B) −−−→ HomR(F1, B) −−−→ ExtR(A, B).
ExtR(A, B)は,Aの自由分解の取り方によらず同型を除いて一意的
に定まる.
【命題 1.11 (Extの性質)】 加群のExt積は次の性質をもつ.
i) C をR加群の圏とするとき,ExtはC ×C からC への関手を与え,
第1変数について反変的,第2変数について共変的である.
ii) 任意のR加群A, B, Cに対して,
ExtR(A⊕B, C)∼= ExtR(A, C)⊕ExtR(B, C), ExtR(A, B⊕C)∼= ExtR(A, B)⊕ExtR(A, C).
iii) 任意の加群Aに対して,
ExtZ(Z, B) = 0, ExtZ(Zm, B)∼=B/mB (m >0).
1.2.2 普遍係数定理
【定理 1.12 (普遍係数定理(ホモロジー))】 Rを単項イデアル整域,
C∗を自由R加群のチェイン複体,GをR 加群とするとき,自然な 短完全系列が存在する:
0 −−−→ Hn(C∗)⊗G −−−→ Hn(C∗⊗G) −−−→ TorR(Hn−1(C∗), G) −−−→ 0.
この完全系列は分解する.
【定理 1.13 (普遍係数定理(コホモロジー))】 Rを単項イデアル整
域,C∗を自由R加群のチェイン複体,GをR 加群とするとき,次 の短完全系列が存在する:
0 −−−→ ExtR(Hn−1(C∗), G) −−−→ Hn(HomR(C∗, G))
−−−→ HomR(Hn(C∗), G) −−−→ 0.
この短完全系列は分解する.
1.2.3 Kunnethの定理
【定理 1.14 (K¨unnethの定理(ホモロジー))】 Rは単項イデアル整 域,C∗は自由R加群のチェイン複体,D∗はR加群のチェイン複体 とする.このとき,短完全系列
0 −−−→
p+q=nHp(C∗)⊗RHq(D∗) −−−→× Hn(C∗⊗RD∗)
−−−→
p+q=n−1TorR(Hp(C∗), Hq(D∗)) −−−→ 0
が存在する.D∗も自由R加群のチェイン複体のときには,この間
全系列は分解する.
【定理 1.15 (K¨unnethの定理(コホモロジー))】 Rは単項イデアル 整域,C∗は自由R加群のコチェイン複体,D∗はR加群のコチェイ ン複体とする.このとき,短完全系列
0 −−−→
p+q=nHp(C∗)⊗RHq(D∗) −−−→× Hn(C∗ ⊗RD∗)
−−−→
p+q=n+1TorR(Hp(C∗), Hq(D∗)) −−−→ 0
が存在する.D∗も自由R加群のコチェイン複体のときには,この
間全系列は分解する.
1.3
位相空間のホモロジーとコホモロジー1.3.1 単体的(コ)ホモロジー
【定義 1.16 (単体複体)】
1) 集合Kとその部分集合の属Σが次の2条件を満たすとき,組(K,Σ) を単体複体という:
i) s ∈Σに対して,s ⊂s(s =∅)なら,s ∈Σ.
ii) 任意のv ∈Kに対して,{v} ∈Σ.さらに,∅ ∈Σ.
s∈ΣがKの(n+ 1)この元からなるとき,sをn(次元)単体,とく に0単体を頂点という.また,Kの濃度が有限,可算,任意の頂点 を含む単体が有限個,可算個のとき,それぞれ有限,可算,局所有 限,局所可算単体複体という.
2) 単体複体(K,Σ),(K0,Σ0)に対して,K0 ⊂KかつΣ0 ⊂Σが成り立 つとき,K0をKの部分複体という.
3) K, Lを単体複体とし,φ :K → Lを頂点集合の写像とする.K の 任意の単体s={v0,· · · , vn}に対して,{φ(v0),· · · , φ(vn)}から重複 する頂点を取り除いたものがLの単体となるとき,φを単体写像と いう.さらに,単体複体K, Lの間の全単射φで,φとφ−1が共に単 体写像となるものが存在するとき,KとLは同型であるという.
3) Kを単体複体とし,そのq単体sとする.sの頂点の列の集合にお いて偶置換で移り合うものは同値という同値関係を与えたとき,各 同値類をsの向きという.向きの与えられたq単体を向きのついた q単体と呼び,σと表す.sの頂点が{v0,· · · , vq}のとき,対応する 向きのついた単体をσ= [v0,· · · , vq]と表記しする.
【定義 1.17 (単体的ホモロジーとコホモロジー)】
1) 単体複体K の各単体に向きを与え,向きのついたq単体全体から 生成される自由Abel群をCq(K)とする.さらに,線形写像∂q : Cq(K)→Cq−1(K)を
∂q([v0,· · · , vq]) = q k=0
(−1)k[v0,· · · , vk−1, vk+1,· · · , vq]
により定義する.ただし,σqの向きを反転した単体は−σqと同一 視する.これにより定義されるチェイン複体C∗ = (Cq, ∂q)のホモ ロジー群をHq(K)と表し,単体複体K の整係数ホモロジー群とい う.また,R加群Gに対して,R加群のチェイン複体C∗⊗ZGから 定義されるホモロジー群H∗(K;G)をKのG係数ホモロジー群と いう.さらに,R 加群のコチェイン複体C∗ = HomZ(C∗, G)のコホ モロジー群H∗(K;G)をG係数コホモロジー群という.
2) 単体分割可能な位相空間Xに対して,Kをその単体分割とするとき,
H∗(K;G), H∗(K;G)は単体分割Kの取り方によらない.H∗(K;G) およびH∗(K;G)をXの単体的ホモロジー群,単体的コホモロジー 群という.
1.3.2 特異(コ)ホモロジー
1.3.2.1 定義
【定義 1.18 (特異チェイン複体)】
1) 位相空間Xに対して,Rn+1の標準単体ΔnからXへの連続写像 σ : Δn→X
をX のn-特異単体という.その全体から生成される自由加群を
Sn(X) として,その直和として定義される次数付加群をS∗(X) = (Sn(X))とおく.ただし,n <0に対してSn(X) = 0.∂n:Sn(X)→ Sn−1(X)を
∂n(σ) = n
j=0
(−1)jσ◦j, σ ∈Sn(X)
により定義する.ここでjは,Δn−1の頂点ek(k = 0, n−1)にΔn の頂点ek(k ≤j),ek+1(k > j)を対応させることにより定義される,
Δn−1からΔnへのアファイン写像である.S∗(X) = (Sj(X), ∂)は チェイン複体をなし,特異チェイン複体と呼ばれる.
2) 位相空間の対(X, A)(A ⊂ X)に対して,チェイン複体 S∗(X),
S∗(A)から新たなチェイン複体
S∗(X, A) :=S∗(X)/S∗(A)
が定義され,自然に位相空間の対の圏からZ-チェイン複体の圏への 共変関手S∗が得られる.また,R加群Gに対して,チェイン複体 C∗にC∗ ⊗GおよびHomZ(C∗, G)を対応させると,それぞれ自然 にチェイン複体の圏からR-チェイン複体への共変関手⊗G,および R-コチェイン複体への反変関手Hom(∗, G)が得られる.関手の結合 H∗◦⊗G◦S∗で得られる共変関手をG係数特異ホモロジー関手,それ による(X, A)の像H∗(X, A;G)を空間対(X, A)のG係数特異ホモ ロジー群と呼ぶ.同様に,H∗◦Hom(∗, G)◦S∗で得られる反変関手を G係数特異コホモロジー関手,それによる(X, A)の像H∗(X, A;G)
を空間対(X, A)のG係数特異コホモロジー群と呼ぶ.すなわち,
H∗(X, A;G) =H∗((S∗(X)/S∗(A))⊗G), H∗(X, A;G) = H∗(Hom(S∗(X)/S∗(A), G)) である.以下,
S∗(X, A;G) = (S∗(X)/S∗(A))⊗G, S∗(X, A;G) = Hom(S∗(X)/S∗(A), G) と略記する.また,R=G=Zの時,Gを省略する.
【注 1.19】
1. c∈Sn(X)に対して,
[c]∈Zn(X, A) ⇔ ∂c∈Sn(A),
[c]∈Bn(X, A) ⇔ ∃c ∈Sn+1(X) s.t. c−∂c ∈Sn(A)
2. 一般に,R加群の短完全列0→A→B →Cに対して,Hom(C, G)→ Hom(B, G) → Hom(A, G) → 0はやはり短完全列となる.これよ り,Sn(X, A;G)の元はu∈Hom(Sn(X), G)でu|Sn(A) = 0となるも のと一対一に対応する.この対応の元で,< δ[u],[c]>=< u, ∂c >.
よって,
[u]∈Zn(X, A;G) ⇔ < u, ∂c >= 0∀c∈Sn+1(X),
[u]∈Bn(X, A;G) ⇔ ∃[u]∈Hom(Sn−1(X), G) s.t. < u, c >=<
u, ∂c >∀c∈Sn−1(X).
1.3.2.2 普遍係数定理
【定理 1.20 ((コ)ホモロジーの普遍係数定理)】 (X, A)を空間対,
Gを加群とする.
1) 空間対のホモロジーに対して,自然な短完全系列
0→Hn(X, A;Z)⊗G→Hn(X, A;G)→TorZ(Hn−1(X, A;Z), G)→0 が存在する.この短完全系列は分裂する.
2) 空間対のコホモロジーに対して,自然な短完全系列
0→ExtZ(Hn−1(X, A;Z), G)→Hn(X, A;G)→Hom(Hn(X, A;Z), G)→0 が存在する.この短完全系列は分裂する.
1.3.2.3 空間対の(コ)ホモロジー完全系列
【定理 1.21 (空間対のホモロジー完全系列)】
1. 空間対(X, A)に対して,次の完全系列が成り立つ:
· · · −−−→ Hn+1(X, A;G) −−−→∂∗ Hn(A;G) −−−→i∗ Hn(X;G)
j∗
−−−→ Hn(X, A;G) −−−→∂∗ · · · . 特に,A=∅のとき次の完全系列が成り立つ:
· · · −−−→ Hn+1(X, A;G) −−−→∂∗ H˜n(A;G) −−−→i∗ H˜n(X;G)
j∗
−−−→ Hn(X, A;G) −−−→∂∗ · · · .
これらの完全系列は,空間対の連続写像に対して共変的関手性を もつ.
2. 空間の三つ組みB ⊂A⊂Xに対して,次の完全系列が成り立つ:
· · · −−−→ Hn+1(X, A;G) −−−→∂∗ Hn(A, B;G) −−−→i∗ Hn(X, B;G)
j∗
−−−→ Hn(X, A;G) −−−→∂∗ · · · .
この完全系列は,空間の3つ組の連続写像に対して共変的関手性を もつ.
【定理 1.22 (空間対のコホモロジー完全系列)】
1. 空間対(X, A)に対して,次の完全系列が成り立つ:
· · · −−−→ Hn−1(A;G) −−−→δ∗ Hn(X, A;G) −−−→j∗ Hn(X;G)
i∗
−−−→ Hn(A;G) −−−→δ∗ · · · . 特に,A=∅のとき次の完全系列が成り立つ:
· · · −−−→ H˜n−1(A;G) −−−→δ∗ Hn(X, A;G) −−−→j∗ H˜n(X;G)
i∗
−−−→ H˜n(A;G) −−−→δ∗ · · · .
これらの完全系列は,空間対の連続写像に対して反変的関手性を もつ.
2. 空間の三つ組みB ⊂A⊂Xに対して,次の完全系列が成り立つ:
· · · −−−→ Hn−1(A, B;G) −−−→δ∗ Hn(X, A;G) −−−→j∗ Hn(X, B;G)
i∗
−−−→ Hn(A, B;G) −−−→δ∗ · · · .
この完全系列は,空間の3つ組の連続写像に対して反変的関手性を もつ.
1.3.2.4 切除定理とMayers-Vietorisの定理
【定義 1.23 (切除的)】 位相空間Xの部分空間X1, X2に対し,包 含写像
S(X1) +S(X2)→S(X1∪X2)
がチェインホモトピー同値写像であるとき,組{X1, X2}は切除的で あるという.Y =X1∪X2におけるXiの内部をintYXiと書くとき,
Y = intYX1 ∪intYX2
ならば,{X1, X2}は切除的である.
【定理 1.24 (Mayers-Vietoris完全系列)】 Xを位相空間,{X1, X2} をXの切除的な空間の組とするとき,関手性をもつ次の加群の完全 系列が存在する:
· · · −−−→Δ Hn(X1∩X2;G) −−−−−−→i1∗⊕(−i∗2) Hn(X1;G)⊕Hn(X2;G)
j1∗+j2∗
−−−−→ Hn(X1∪X2;G) −−−→Δ Hn−1(X1 ∩X2;G) −−−→ · · ·,
· · · −−−→Δ Hn(X1∪X2;G) −−−−→j1∗⊕(j2∗) Hn(X1;G)⊕Hn(X2;G)
i∗1−i∗2
−−−→ Hn(X1∩X2;G) −−−→Δ Hn−1(X1∪X2;G) −−−→ · · · また,X1∩X2 =∅であるときは,Hq(Hq)を簡約ホモロジー(コホ モロジー)H˜q( ˜Hq)で置き換えた完全系列が存在する.
【定理 1.25 (切除定理)】 U ⊂ A⊂Xを位相空間Xの部分空間の 列とし,部分空間V でV A¯ ◦かつ,X−V からX−U への変位レト ラクションrtでrt(A−V)⊂A−V となるものが存在するなら,包 含写像i: (X−U, A−U)→(X, A)は任意の係数群Gに対してホモ ロジー群とコホモロジー群の同型
i∗ :Hn(X−U, A−U;G) −−−→∼
= Hn(X, A;G), i∗ :Hn(X, A;G) −−−→∼
= Hn(X−U, A−U;G)
を誘導する.
1.3.3 CW複体の(コ)ホモロジー
【定義 1.26 (CW複体)】
1) Hausdorff空間の部分集合eに対して,相対同相写像φ: (Dn, Sn−1)→ (¯e,e)˙ が存在するとき,eをn(次元)胞体,φをその特性写像という.
2) Hausdorff空間Xの胞体の集合{eλ| λ∈Λ}は,次の条件を満たす ときXの胞体分割という.
i) eμ∩eν =∅(μ=ν).
ii) X =∪λ∈Λeλ.
iii) Xq :=∪μ:dimeµ≤qeμとおくとき,dimeμ=q+1ならばe˙μ⊂Xq. 3) 胞体分割の与えられたHausdorff空間Xを胞体複体,その0胞体を 頂点,Xqをq切片という.また,Xの部分集合Aと交わるXの胞 体eに対してe¯⊂Aが成り立つならば,Aと交わる胞体の全体はA の胞体分割を与える.この胞体分割をもつAをXの部分複体とい う.Xの胞体の数が有限,可算のときそれぞれ有限複体,可算複体 という.また,各点x∈Xに対して,x∈intAとなる有限(可算)
部分複体Aが存在するとき,Xは局所有限(可算)であるという.
4) 胞体複体Xから胞体複体Y への連続写像fは,f(Xq)⊂Yqを満た すとき,胞体写像という.
5) 胞体複体Xは,次の2条件を満たすときCW複体という:
C) Xの各胞体eに対してeを胞体として持つ有限部分複体が存在 する.
W) Xの集合U は,Xの各胞体eに対してU ∩¯eがe¯の開集合の ときしかもそのときに限り開集合である.
【命題 1.27 (CW複体の性質)】 CW複体は次の性質を持つ.
1) 局所有限な胞体複体はCW複体である.(逆は成り立たない.)
2) CW複体Xの胞体複体としての部分複体Aは閉集合であり,再び
CW複体となる.
3) CW複体はパラコンパクトな正規空間で,局所可縮である.
4) (胞体近似定理) CW複体の間の任意の連続写像に対して,それとホ
モトープな胞体写像が存在する.
5) CW複体とその部分複体との対は,任意の位相空間に対してホモト
ピー拡張性質をもつ.
6) CW複体は任意のファイバー空間に対して被覆ホモトピー性を持つ.
7) CW複体X, Y の積複体X ×Y は,XとY のいずれかが局所有限
ないし両方が局所可算ならば,CW複体となる.
8) CW複体X, Y に対して,その積複体X×Y はあるCW複体にホモ
トピー同値である.
9) 多面体|K|はその開単体全体の集合を胞体分割として,正則(¯eq ∼= Dq)なCW複体となる.逆に,任意のCW複体に対して,それとホ モトピー同値な多面体が存在する.
【命題 1.28】 CW複体Xとその部分複体Aの対(X, A)に対して,
X¯q =Xq∪Aとおく.任意の係数群Gに対して Hq( ¯Xn,X¯n−1;G) = 0 (q=n),
λ∈Λn
φλ∗ :
λ∈Λn
Hn(Dnλ, Sλn−1;G)−→∼= Hn( ¯Xn,X¯n−1;G)
が成り立つ.特に,Hn( ¯Xn,X¯n−1)は自由加群となる.
【定義 1.29 (CW複体のチェイン複体)】
1) 加群Cn(X, A)を
Cn(X, A) :=Hn( ¯Xn,X¯n−1)
により定義する.さらに,∂ : Cn(X, A) → Cn−1(X, A)を空間対 ( ¯Xn,X¯n−1)に対する連結準同型∂∗と射影準同型j∗を用いて
∂ :Hn( ¯Xn,X¯n−1)−→∂∗ Hn−1( ¯Xn−1)−→j∗ Hn−1( ¯Xn−1,X¯n−2) により定義する.このとき,(C∗(X, A), ∂)はチェイン複体となる.
これをCW対(X, A)のチェイン複体という.
2) CW対(X, A)に対して,そのチェイン複体C∗(X, A)から定義される
ホモロジー群H∗(C∗(X, A)⊗G)およびコホモロジー群H∗(Hom(C∗(X, A), G) をCW対の胞体ホモロジー群および胞体コホモロジー群という.
1.3.4 Cechの(コ)ホモロジー
【定義1.30( ˇCechの(コ)ホモロジー)】 位相空間Xの開被覆U に対 して,U に属する各開集合を頂点,共通部分が空でないnコの開集合 の組をn単体と定義すると,U から単体複体K(U)が作られる.X とその部分空間Aに対して,このようにして得られる単体複体の対を (K(U), L(U))とすると,そのホモロジー群H∗(K(U), L(U);G)
およびコホモロジー群H∗(K(U), L(U);G)が定義される.次に,X の開被覆全体の属は,細分により擬有向集合となり,これらのホモ ロジー群とコホモロジー群はこの擬有向集合に対して,それぞれ射 影系および帰納系となる.それらの射影極限および帰納極限をそれ ぞれ,空間対(X, A)に対するCechˇ のホモロジー群およびコホモロ ジー群という:
Hˇ∗(X, A;G) = lim
← H∗(K(U), L(U);G), Hˇ∗(X, A;G) = lim
→ H∗(K(U), L(U);G)
1.3.5 様々な(コ)ホモロジーの関係
【定義 1.31 (Eilenberg-Steenrodの公理)】
1) 次の3つの関数の集合をH∗で定義する:
i) 各位相空間対(X, A)と各整数qに対して,Abel群Hq(X, A)を 対応させる関数.
ii) 各連続写像f : (X, A) → (Y, B)と各整数qに対して,準同型 f∗ :Hq(Y, B)→Hq(X, A)を対応させる関数.
iii) 各位相空間対(X, A)と各整数qに対して,準同型δ∗ : Hq → Hq+1(X, A)を対応させる関数.
H∗が次の7つの公理を満たすとき,H∗を位相空間対の圏上のコホ モロジー理論という.
I) 1∗ = 1
II) f : (X, A) → (Y, B),g : (Y, B) → (Z, C)ならば,(g◦f)∗ = f∗◦g∗.
III) (ホモトピー公理) f g : (X, A)→(Y, B)ならば,f∗ =g∗.