英語ライティングに見る高校生の文法発達の様子
─中学導入の文法に注目して─
著者 大田 悦子
著者別名 Etsuko Ota
雑誌名 白山英米文学
巻 46
ページ 15‑41
発行年 2021‑03
URL http://doi.org/10.34428/00012904
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
Abstract
This paper reports a study of quantitative and qualitative analyses of Japanese senior high school (hereafter called SHS) studentsʼ writing data collected over three years. Combined with the findings in the previous studies the researcher got involved in, the paper reports the following things; (1) Some of grammar items introduced in SHS (e.g. subjunctive mood, past perfect, and relative adverb) cannot be rarely found even in 12th grade studentsʼ composition. (2) Some of basic grammar items introduced in junior high school (hereafter called JHS)(e.g. relative pronouns, present/past participle, present perfect, and passive) can be found just infrequently. (3) It is considered that quite a few SHS students still cannot produce a simple post- modification phrase/clause. (4) It is highly possible that studentsʼ English writing process can be a lot interfered by their first language especially when unfamiliar and complicated topic is given. In such situation, more ungrammatical sentences can be produced due to their heavy dependency of Japanese pre-modification rule. This tendency is considered to have been caused by limited amount of English input and infrequent opportunities of output in class. More frequent opportunities should be given to them for their better writing skills. This research has also reaffirmed the fact of inappropriate learning of basic grammar by Japanese SHS students. Most importantly of all, reviewing of the basic grammar that students were once instructed in JHS but have not fully learned should be prioritized in SHS English class. The results from this study are expected to help English grammar teaching in SHS become more productive.
Key Words:高校生,ライティング,中学英文法,母語依存,文法発達
英語ライティングに見る高校生の文法発達の様子
─中学導入の文法に注目して─
大 田 悦 子
1.本研究の背景
筆者はこの10年,高校英語教育改革プロジェクト1に関与している。そこで は,高校の英語教育の現状とこれからの英語教育に向けた課題点を,ほぼ週1 のペースで議論している。日本の英語教育において,近年最も注目を集めてい るのは「小学校英語」の早期化や教科化であろう。そのような時期に,あえて
「高校」の英語教育に注目するのはなぜか。それは,高校の英語教育には,見 過ごせない大きな問題があると考えているからである。その一つが,高校の英 語授業の変化・改革のペースの遅さである。大学で担当する教職科目(英語科 指導法)の授業で,高校で受けた授業形態について毎年学生に質問しているが,
10年前も現在も「文法訳読式」と回答する学生が多数を占めるのが実状である。
平成21年告示の高等学校行学習指導要領(外国語編・高校編)では,科目 構成が変更され,4技能を総合的に育成することを目標に据えた「コミュニケー ション英語Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」が新設された。コミュニケーションへの関心・意欲・
態度の育成はもとより,英語によるコミュニケーション能力そのものの育成に も大きな期待が寄せられることとなった。そして,2022年度には新高等学校 学習指導要領(平成30年告示)が施行される。そこでは外国語科の目標がさ らに高いものに設定されており,改訂の基本方針の中には,「主体的で・対話 的で深い学び」や「アクティブ・ラーニング」というワードが登場した。知識・
技能を習得させることのみを目標とせずに,理解したことをどう使わせるか,
どう社会で応用させるかも考慮し,授業を改善していくことが求められている。
いかにして,従来の教師主導の英語授業形態から生徒主体への授業形態へとシ フトすべきか,また,英語授業のどの場面で生徒の主体性や対話能力を伸ばす ことが可能なのか,現場の教師に大きな課題が与えられたことになる。
確かに,「知識・技能を習得させる」だけを学校教育の目標として据えるべ きではないかもしれない。小・中・高の学修を終えた後,より多くの人々と積 極的に関わり,社会に貢献できる人間になるためには,「生きる力」も身につ けさせるべきであろう。ただ,目標をここまで引き上げるのであれば,「知識・
技能を習得させる」が達成可能という前提が必要である。しかしながら,これ までの様々な報告書や資料を読む限り,英語の知識や技能が十分に習得されて いるとは言い難い。例えば,文部科学省の『令和元年度 英語教育実施状況調
1 ㈱アルクのサポートを受け行っている高校英語教育改革プロジェクト(Sherpa: Senior High English Reform Project ALC)
2 外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語 共通参照枠
査(高等学校)』の結果(概要)によると,高3でCEFR2のA2レベル(英検 準2級相当)以上を取得している生徒,あるいは受験していないもののCEFR A2レベル相当以上の英語力を有すると思われる生徒の割合は,両者合わせて も全体の半数には届かない43.6%(26.7%+16.9%)である。確かに,経年変 化に注目すれば調査開始の平成25年度の31%から徐々に増加傾向にはあるも のの,文部科学省が目標としている50%には未だ到達していないのが現状で ある。
2.先行調査(1)
筆者が関与している高校英語教育改革プロジェクトに話を戻す。そこで取り 組んできた主なものが,(1)(文法訳読式しか知らない教師のための)新たな授 業モデルの開発,(2)高校生の英語力の実態調査である。本研究はこの2つ目 のトピックと大きな関わりがある。前節で述べた,高校の英語授業の変化・改 革のペースが遅いという実状,CEFR A2レベル相当の英語力を有する高校生 の割合がまだ50%未満という実状には,複数の要因が関与していると考えら れる。その一因としてプロジェクトで着目しているのが,中・高の英語指導の 接続である。高校では,中学で導入された文法の定着よりも新しい語いや文法 の投入が優先される傾向にあり,ここに高校生の英語力が効率的に伸びない一 因があると推測する。
2016年に新規プロジェクトとして,延べ25の高校の約5000人の高校生を 対象に,中学英語(中学で導入される語いと文法)を使った計6種類のテスト:
速読,Listening,Dictation,和文英訳,Picture Description 2種類(以下,PD1・
PD2)を実施した3。筆者はそこでPD2の分析を担当し,高校生の「書く力」
の実態に直面することになる。
PD2の結果に言及する前に,PD1の結果から紹介する。PD1は,多くの人 が街中で活動している様子が書かれた1枚の絵を見て,5分間でできるだけ詳 細に英語で説明する作文課題である。高校1~3年生570名の英作文の分析で 分かったことは, 対象の高校生が5分間で書けた語数は平均で約28語,文数 でいうと平均約4文という結果であった。5文以上(=1分に1文以上)書け たのは,全体の半数には届かない約4割(101名)だった(第6章,p.128)。
一方PD2は,6コマ漫画を見て,15分間でその内容を英語で描写する作文
3 『高校生は中学英語をつかいこなせるか?基礎定着調査で見えた高校生の英語力』
(2017,アルク選書)
課題である。PD1とは異なり,連続する6つの絵にストーリーが存在する。採 点(A・B・Cの3段階評価)では,ストーリーの主な情報をどれだけ分かり 易く説明できているかを重視した。文法の正確性に関する細かい評価基準は特 に設けず,文法エラーをどの程度許容する/しないかは採点者に委ねられた。
結果的に,書いている内容の理解に大きく影響すると判断されたglobal error
(例:語順)は許容されなかったもの,理解にさほど支障のないと判断された local error(例:動詞の時制・名詞の単複の誤り,前置詞の欠落など)は許容 された。PD2の英作文はPD1とは別の生徒によって書かれたものであったが,
出てきた結果はPD1の傾向と類似したものだった。対象の高校1~3年生286 名が15分間(PD1の3倍の時間)で書いた語数は平均で約69語,文の数でい うと約10文,ストーリーのカバー率を優先した3段階評価(文法エラーの許
容度高ver.)では全体の77%がA評価だったものの,文法エラーに対する許
容度低ver.の評価では,A評価の割合が39%に下がった(第7章,pp.132-
156)。これらPD1・PD2を含む高校生中学英語定着調査の結果から見えてき
た全体的傾向は,
✓ 中学英語を自由に使えるようにはなっていない。
✓ 単純な英文でも書ける量は少なく,スピードも遅めで,正確性は低い。
というものであった(第9章,p.178)。
2.先行調査(2)
その3年後,再び高校生の英語力の現状把握および授業改善の提案を目的に,
新規プロジェクトを始動した。コミュニケーション主体・生徒主体の授業形態 を目指す上でも大切な「文法指導」について,まず長い時間をかけて議論した。
その後,文法解説にあまり時間を割かない授業形態を取っている中学校・高校 の英語教員に対し,英語指導方法や生徒の態度・英語力が以前の文法訳読式授 業の頃と比べてどう変わったか,数回にわたってインタビューした。並行して,
同じく文法解説にあまり時間を割いていない「コミュニケーション英語」の授 業を受けている別の高校の生徒の英作文を使い,中学英文法の定着度合を観察 した4。
なぜ「文法指導」に注目したのか?それは,「文法を教える」といった場合 の「文法」や「教える」のイメージが教員間で必ずしも一致していない,ある いは「文法」や「教える」の意味を非常に狭い意味で捉えている教員が多いの
4 『高校英語授業における文法指導を考える』(2020, アルク選書)
ではないかという疑念が浮かび上がってきたからである。もしある教師が,文 法を「文法用語4 4 4 4」あるいは「参考書に書かれている4 4 4 4 4 4規則」といった狭義で捉え ていたり,「教える」イコール「解説する」というイメージに固執し続けたり すると,その教師の授業ではこの先も,ある一定時間は解説に割かれることに なるだろう。しかし,新学習指導要領が強調する「情報や考えなどを的確に理 解したり,適切に表現し合ったり伝えあったりするコミュニケーションを図る 資質・能力」の育成を真剣に考えるならば,限られた授業時間の使い道はこれ までとは変わる必要がある。「文法指導」に着眼したのは,そのような経緯か らである。
インタビュー・英作文分析から分かった主なことは,
✓ 活動量を十分に確保すれば,文法解説に多くの時間を割かなくても,中2 までの文法は中学卒業までに「使う」レベルに持っていくことは可能であ る。
✓ ただし,中3導入の文法は,高校で「使える」ようになるかは不明。
の2点である(第6章,p.202)。第3章Part 2の高校生の英作文の分析結果(第 3章,p.102)をもう少し具体的に補足すると,
✓ 中3で導入される後置修飾(分詞・関係詞)は,高校3年の自由英作文に 殆ど出現しない。
✓ 同じ中3導入の現在完了形や受け身も,同様の傾向にある。
✓ トピックが難しくなると,日本語につられた表現が増える傾向にある。
本研究では,これらの傾向が,新たに分析対象とする英文にも該当するのかど うかを見ていくことにする。
3.本研究の目的
高校生の英作文を,中学導入文法事項の定着状況を中心に,より詳細に観察 する。
4.対象とする英作文
国内のある公立高校の生徒40名が1年~3年で書いた英作文を対象とした。
1) 金谷・臼倉・大田・鈴木(2020)で使用した高校生40名の英作文(※追 加分析)
2) 1)の高校生40名によって書かれた新規英作文
1)について。先行研究(2)(金谷・臼倉・大田・鈴木,2020)では,プロジェ
クト全体のテーマに関係ない文法項目や,並行して実施した文法性判断テスト では対象としなかった項目については,英作文の分析結果の中には含めなかっ た。今回は,金谷・臼倉・大田・鈴木(2020)では詳細に述べることができな かった観点をまず取り上げ,その考察から行う。
2)について。金谷・臼倉・大田・鈴木(2020)で扱った高校生の英作文は,
全て外部英語検定のライティングデータであった(1年次:2017,2年次:
2018,3年次:2019)。ただし,トピックは毎回異なっていた。同一生徒の文
法力の変化を公平に比較するためには,同一テーマで書かれたもので比較する のがより好ましいという判断から,この外部試験検定で使われた1年次のト ピックを3年次の9月に再び生徒に提示し書かせた。それが上記2)である。
本研究は,対象校の特定学年の中の「40名」の英作文のみ分析対象として いるが,彼らを含む学年全体の英語力(3年次:2019)の度数分布をCEFR-J5 で示すと,表紙1のようになる。
表 1 CEFR-Jで示す対象校・対象学年 3 年次(2019)の英語力の度数分布(%)
CEFR-J B2 B1.2 B1.1 A2.2 A2.1 A1.3 A1.2 A1.1
Total 0.6 5.3 27.6 57.1 8.8 0.6 0
Writing 1.2 15.3 8.8 35.9 18.2 18.8 1.2 0.6
Speaking6 1.2 2.9 5.3 70.6 16.5 2.9 0 0
この表から,今回の集団は3年次で平均A2レベルということがわかる。1 年次はリーディング,リスニング,ライティングの3技能を受験したが,2年 次からはスピーキングも追加受験している。そのためトータルスコアでの経年 比較はできないが,高2(2018)→高3(2019)だけでいうと,A2.1からA2.2 へ1段階上昇し,スピーキングも同様にA2.1からA2.2へ上昇している。ライ ティングは3カ年でA2.1(2017)→A2.2(2018)→A2.2(2019)と変動している。
すでに述べた通り,この高校では英語の授業での解説の時間を最小限にし,生 徒に英語を使わせる時間をできるだけ多く取るという授業スタイルを1年次か ら続けてきた。その指導形態が,生徒のライティング力やスピーキング力の向
5 欧州共通言語参照枠(CEFR)を基に,日本の英語教育での利用を目的に構築された 英語能力の到達度指標(http://www.cefr-j.org/cefrj.html)。
6 Speakingではスコア0のためPre-A1に分類された生徒が1名いたが,特殊事情による結 果と判断し,表には含めなかった。
上に現れたと推察される。
5.結果
5.1 中学 3 年・高校導入の文法を使った生徒はどれくらいいるか?
金谷・臼倉・大田・鈴木(2020)では「中3導入」の文法項目に限定し,そ れらが生徒の高校3年間の英作文にどの程度出現するかを見た。2.先行調査
(2)で概要を報告したが,詳細は表2(①②③)となる。関係代名詞と受け身 については,高3時点で自発的に使用する例がわずかに確認されたものの,分 詞と現在完了については,使用例はともに0件だった。
これらに2019年9月時の新規英作文の分析結果も追加した(表2の④)。
2019年6月の外部検定でのトピックが「職場での英語公用化」であり,その3 か月後の9月の授業内で1年次の指定トピックだった「自分にとって大切な人 物」について書かせた形となる。トピックがより身近な話題になったことで,
各項目の出現数に変化が出ることも多少期待されたが,大きな変化は見られな かった。③と④のタイムラグが3か月足らずであり,④の実施のタイミングが 夏季休暇直後であったことが影響した可能性もある。
表 2 分詞・関係代名詞を使用した生徒の数 導入時期 ①2017(1年)
40名 ②2018(2年)
40名 ③2019(3年)
34名 ④2019(3年)
37名(再)
分詞 中3 0 0 0 0
関係代名詞 中3 2 3 9 7
現在完了 中3 1 3 0 1
受け身 中3 4 7 8 4
(①-③は金谷・臼倉・大田・鈴木, 2020, p.84とp.88を再編集)
今回,これらの分析に補足する形で,「高校導入」の文法項目の使用例も見た。
着目したのは「仮定法」「関係副詞」「動詞過去完了」の3項目である。中3導 入の文法の使用状況が表2で示した通りであるため,「仮定法」「関係副詞」「動 詞過去完了」は,授業での導入のタイミングがさらに遅いということ,使用を 回避してもコミュニケーションを破綻させるような類の用法ではないことを考 慮すれば,英作文に登場する頻度がさらに低くなることが予想された。
分析の結果,やはり表3に示したわずかな件数しか確認できなかった。ただ,
対象校の年間指導計画によれば,高1の外部検定のタイミング(6月)では,
実はこの3項目はまだ授業で導入されていなかった。よって,2017(1年次)
が0件なのは当然といえる。ただ,そこから1年後の2018年(2年次),2年 後の2019年(3年次)でも0件~3件しか使われなかった。たった40名の英 作文の結果から一般的傾向を導くことはできないが,生徒が「習った」ことを スピーキングやライティングで自由に使えるようになるまでには相当の時間が 必要であることが,今回の結果でも示されたことになる。
表 3 「仮定法過去」「関係副詞」「過去完了」を使用した生徒の数 導入時期 ①2017(1年)
40名 ②2018(2年)
40名 ③2019(3年)
34名 ④2019(3年)
37名(再)
仮定法過去 高1 0 2 0 2
関係副詞 高1 0 1 2 3
過去完了 高1 0 0 0 0
文科省『令和元年度 英語教育実施状況調査(高等学校)』の結果を思い出 していただきたい。高3でCEFRのA2レベル(英検準2級相当)以上の英語 力を有すると判断できる生徒の割合は43.6%である。表1に示した通り,今回 の集団は平均してちょうどその位置にいるといってよい。当該校では,解説の 時間を最低限にし,その分を生徒に英語を使わせる時間にあてるという授業ス タイルを1年次から続けている。そのような活動重視の指導形態をとっていて も,「高校導入」の文法はもとより「中学3年」で導入した文法が,一部の生 徒の英作文の中にしか登場しない,というのが実状である。理解したものを生 徒が自由に自己表現の中で正しく使えるようになるまでには,繰り返し触れた り使ったりする時間が不可欠であるといえる。
5.2 日本語に影響を受けた表現はどれくらいあるか?
金谷・臼倉・大田・鈴木(2020)では,あまり文法解説をせず,生徒に英語 を使わせる時間をできるだけ多く確保することを目指した授業を実践している 教員へインタビューを行った。この授業形態を中学から継続している高校(中 高一貫校7)の教員に対し,高校で指導する中で,例えば “I sometimes go to
7 この中高一貫校は,中3卒業時に生徒の85%が英検準2級(=CEFR-J A2レベルに相当)
を取得している集団であることから,本研究の英作文分析対象校よりも上位の集団と 判断できる。
near my house stand.”(家の近くのフードスタンドに時々行きます)のような英 文を書く生徒はいるかどうかを尋ねた(p.49)。本来「家の近くのフードスタ ンド」は,I sometimes go to a food stand (stall) near my house.のように,後置修 飾で表現すべきものである。その部分を,日本語の語順と同じように「前置修 飾」にしてしまう場合があるか,というのが質問の意図であった。質問を受け た教員は,(少なくともその高校の生徒の中には)あまり見られない,と回答 していた。
同じく,日本語の影響により発生すると考えられる “I like sport is tennis.”(私 が好きなスポーツはテニスです)や “I get up is six.”(私が起きるのは6時です)
のような英文,つまり,一つの英文に動詞が2つ登場する(=述語動詞のbe 動詞とは別の動詞が主語の一部に出てきてしまう)パターンの出現傾向につい ても尋ねた。それに対しては,高校生になると “I like sport is tennis.” のように 書く生徒はいないものの,状況によって,例えばそこに比較の要素が加わって,
一文の中で複数の文法を「組み合わせて」使わないといけないような状況にな ると,“I like music is better than sport.” のように誤って書いてしまうかもしれな い,と回答していた(p.50)。
もう一つ,日本語の影響から起こりうる誤りとして,主題と主語の混同があ る。“Home is relax.”(家だとリラックスできる),“Home can talk.”(家だと〔映 画を見ながらでも〕話せる)などが,その例として挙げられる。この主語と主 題の混同に関しても,通常だとそういう誤りは見られないものの,「トピック が難しくなる」と見られる現象,という回答であった(p.50)。トピック次第 では,英語での表現を考える際に日本語の影響を受け,結果的に語順を誤って しまうことがあることを示唆している。
生徒が日常的にイメージしたり考えたりしているような話題,例えば,家族 や友達についてだったり,学校で所属している部活動についてであったりすれ ば,アイディアが浮かぶまでそれほど時間はかからないかもしれない。一方で,
「選挙権年齢引き下げ」とか「英語公用化」問題となると,おそらく殆どの高 校生は日常的にはそういうことを考えてはいないだろう。仮にそういうトピッ クが提示された場合,生徒は,日頃使い慣れている決まり語句やフレーズを並 べるだけでは文を完成できないことに気づく。そうなると,英文を一から組み 立てなければならない。そこで頼るものが,日本語4 4 4をベースにした “ 言いたい こと ” なのかもしれない。時間がたっぷり与えられてる状況であれば,自分の 頭の中のデータベースから,使えそうな言い回しや表現を拾うことが可能かも しれない。しかし,注意資源をその手前で使い果たしてしまい,使えそうな表
現に気づくことすらできない状況に陥ることもあるかもしれない。そんな場合 に頼るのが母語なのだろう。
ここからは,金谷・臼倉・大田・鈴木(2020)のインタビューで話題に挙がっ たこれら3つの「日本語につられる誤り」が,今回対象とする英作文にも同様 に出現しているのか,その場合の出現頻度は「トピックの難しさ」の程度によっ て変化しているのかどうか,1年次と2年次の英作文に限定し,その2つを比 較する。注目する誤りの3パターンは表4の通りである。
表 4 日本語に影響をうけて出現すると思われる誤りのパターン 分
類 パターン 特徴
A
I like sport is tennis. / I get up is six.系
「好きなスポーツはテニスです」
「私が起きるのは6時です」
主語の中に述語動詞とは別の動 詞を置く。
B
Home is relax. / Home can talk.系
「家だとリラックスできる」
「家だと話せる」
主語の代わりに主題を置く。
C near my house stand 系
「家の近くのフードスタンド」 後置修飾ではなく前置修飾にする。
ここで,金谷・臼倉・大田・鈴木(2020)での英作文のトピックを振り返る。
1年時:自分にとって重要だと思う人物(+理由)
2年時:海外留学について賛成か反対か(+理由)
日常生活との親密度という点で考えると,1年の「自分にとって大事な人」(≒
家族の一員,クラスメート,同じ部活に所属している友人など)の方が,「海 外留学」よりも日常生活の範疇にあるといえそうである。トピックへの親和性 には個人差があるだろうが,一般的には「自分にとって重要な人物についての 説明」よりも「海外留学についての賛成・反対の意思表明」の方が,生徒にとっ ては「難しいトピック」だと思われる。
まず1年次の英作文の結果から述べる。下記表5.にまとめた通り,A,B,
Cいずれのパターンも出現した。40名が書いた総英文数は490文で,その中 で日本語の語順や文構造の影響を受けたと思われる文を書いたは下記に挙げた 9名(延べ11文)だった。A(=主語の中に述語動詞とは別の動詞を挿入)は 2名(2文),B(=主語ではなく主題を配置)も2名(2文)だった。最も多かっ
たのは,語順(=後置修飾ではなく前置修飾)に関するエラーCの5名(7文)
であった。490文の中の11文は出現率にすると2%相当であるため,さほど多 い印象はない。ただ,これがもう少し「難しいトピック」になった場合どうだ ろうか。
表 5 「日本語に影響された」可能性のある表現例( 1 年次:自分にとって大切な人物)
分
類 表現例 (文脈から判断して)
たぶんこう伝えたい?
A When they rowing is very fast. (3)8 先輩がボートを漕ぐ時はとても 速い。
A I need people is a my father. (13) 私が必要とする人は,私の父です。
B Next month, my mother is birthday. (6) 来月,母は誕生日です。
B But me and her is different school. (18) でも,私と彼女(=友達)は別々の 学校です。
C I heared that very happy. (6)
I hear that always fine. (6)
私 は そ れ を 聞 い て と て も 嬉 し かった。
私はそれ(=母の励まし)を聞く といつも元気が出る。
C I like her plays music. (27) 私は,友達が演奏する音楽が好き
です。
C When I eat her make lunch, Iʼm very happy. (30)
Her make lunch is very good. (30)
母が作る弁当を食べる時,とても 幸せです。
母が作る弁当は,とてもおいしい です。
C That time is I like time. (33) その時間は私の好きな時間です。
C I was happy when these words heard. (40)これらの言葉を聞いて,私は嬉し かった。
下記の表6が2年次の英作文に出現した「日本語に影響された」可能性のあ るエラーである。今回は15名(延べ21文)で,1年次よりも「日本語に影響 された」可能性のある英文を書いた生徒の数が増えたことになる。ちなみに,
8 (カッコ)内の数字は各生徒に任意に割り当てた番号。同一番号は同一生徒によって書 かれたものである。
40名が書いた英文の平均総語数は,1年次85.6語,2年次102語であり,平均 で20語近く増え,また1文の語数も,平均で1年次7.1語だったのが2年次 は9.5語となり(金谷・臼倉・大田・鈴木,2020,pp.104-105),全体的傾向と しては,書く量が増えていると解釈できる。よって,習得のペースが止まった,
あるいは後退したということは考えにくい。それにもかかわらず 「日本語に 影響された」かもしれない表現が増えてしまった理由として,「トピックの難 しさ」が影響したとは考えられないだろうか。難しいトピックに対応しようと したり,より長い文を書こうとしたりする中で,日本語への依存度がより高まっ てしまったと推察される。
表 6 「日本語に影響された」可能性のある表現例( 2 年次:海外留学)
分
類 表現例 (文脈から判断して)
たぶんこう伝えたい?
A I think that many students go abroad to study is very good. (18)
私は,多くの学生が海外留学する ことはとてもいいと思います。
A I think that a lot of students should go to abroad is good idea. (22)
多くの学生が外国に行くべきだと いうことはいい考えだと思います。
A
I think that many students should go overseas and study something is good.
(31)
多くの生徒が海外に行って何か を学ぶことはいいことだと思いま す。
A I think “many student go to the overseas”
idea is interesting and exciting. (35)
“ 多くの生徒が海外に行く ” とい う考えは面白いし,エキサイティ ングだと思います。
B English can use anywhere. (2) 英語はどこでも使える。
B In 2020 will start orinpic in Japan. (18) 2020年は日本でオリンピックが 始まります。
C
We can play game with many country player.
We can enjoy with another country people.
If we go study abroad, we have chance to meet change my life parson. (3)
(ネットゲームの話をしていて…)
多くの国のプレーヤーとゲームできる。
別の国の人達と楽しむことができる。
もし留学すると,自分の人生を変え てくれる人に会うチャンスがある。
C Japan is comed by many other country the people.(6)
日本は多くの外国人に訪問しても らえる(?)
C We learned difficult countory culture.
(13)
私達は色んな国の文化を学んだ。
※おそらくdifficultとdifferentを混同。
C
Not only study, we can know about other countries cultures and traditions.
There are many chances to talk with other countries students. (15)
(留学すると)勉強だけでなく,他 の国の文化や伝統を知ることもで きる。
他の国の学生達と話す機会が多 くある。
C
I would talk different langurge people.
I can talk different country friend and TV in English. (18)
色んな言語(を話す)人達と話した い。
色んな国の友達と話したり,英語で TVを観ることができたりします。
C
Talking with different country people and studying with them make me strong my mental.
Second, if we talk other country language, it become learning for me. (19)
色んな国の人達と話したり学んだ りすることは,私のメンタルを強 くしてくれます。
もし他の国の言語を話したら,私 にとって学びになるでしょう。
C We will well speaking English and we make many country friends. (27)
私たちは英語を話すのが上手に なるし,多くの国の友達を作るこ とができます。
C First, if we go to foreign country, we can make different countryʼs friends. (28)
第一に,外国に行けば,色々な 国の友達を作ることができます。
C
First reason is we can comunicat other country student.
Second reason is we make many other country friend. (35)
1つ目の理由は,他の国の生徒と コミュニケーションが取れるから です。
2つ目の理由は,私たちは多くの 外国の友達を作れるからです。
1年次は9名のうち2名がAタイプのエラー(主語2つ),2名がBタイプ のエラー(主語/主題),5名がCタイプのエラー(後置/前置)であった。2 年次の15名の内訳は,4名がAタイプ,2名がBタイプ,9名がCタイプの エラーであった。エラーの傾向としては,概ね以下の2種類に集約できる。
1. “I think that many students go abroad to study is very good.”(表4の分類 A)
=従属節(that節)内の主語の位置に述語動詞とは別の動詞が登場する。
興味深いことに,2年次に登場したAタイプの誤りは,全てthat節内で起こっ ている。かなりの生徒の英作文の中にI think that~で始まる文があった。特に thatの後に△△ is good/badを置き,I think that △△ is good/bad.というパターン で書いたものが多く見つかった。これを書いた生徒は,おそらく,先に頭の中 で用意した「XがYなのはよい/悪いことだと思う」の日本語を頼りに,X とYの部分にS+Vのセットをそのまま当てはめてしまったのであろう。結果 的に,一般動詞とbe動詞の動詞2つが一つの節の中に登場することになって しまった。
この学校では,コミュニケーション英語の授業で活動を多く取り入れている。
さらに,全レッスン中2つのレッスンでは,1レッスンにかける授業時間数を 増やし,パフォーマンステストまで行うことで,教科書本文の内容と英語表現 を繰り返し使わせる工夫をしている。1年次はトークショー,2年次はディベー ト(3年次はディスカッション)を実施している。その表現活動が円滑に進む よう,生徒には練習用のワークシートが提供されている。その中の基本文の一
つI think that △△ is good.というパターンが,この英作文課題でそのまま使わ
れた可能性が高い。
一方で,1年次で見られた文の大枠のSVCのSの部分に動詞を入れてしま う誤り(例:I need people is a my father.)は,2年次の英作文では該当するも のがなかった。4名全ての事例が,I think that X is Y.の従属節内での誤りであっ た。
2. “different country people”(表4の分類 C)
=後置修飾で表現すべき部分を,全て前置修飾で表現してしまう。
「色々な国の人達」を英語で表現すると,people in different countriesが正しい 語順である。おそらく,生徒達はこのような前置詞句は見慣れているはすであ ろう。「色々な国の人達」のみを英訳する指示が出たとしたら,people in different countriesと書けるかもしれない。しかし今回は,people in different countriesのような後置修飾ではなく,different country peopleのといった前置修 飾での事例が数多く見られた。
理由の一つとして,知っている表現であるはずだが,その状況下では「内容」
に注意の大半が向いてしまい,「形式」面へは十分に注意が向かず,結果とし て正しい語順で表現できなかった可能性がある。ただ,仮にこの予想が正しい としても,適切なタイミングで適切に使用できないということ自体が,定着し
ていないことを意味することになる。
もう一つは,そもそも,後置修飾の概念をきちんと理解しないまま,高校2 年まできてしまったという可能性である。見出しで例に挙げた “different country people”(色々な国の人々)であれば,前置詞を使いpeople in different countriesという後置修飾を作ることになる。“different language people”(色々な 言 語 を 話 す 人 達 ) で あ れ ば,people who speak different languages / people speaking different languagesのように,関係詞や分詞を使わないと正しい表現に はならない。場所などシンプルな情報であれば前置詞句で片付くが,説明した い内容によっては分詞や関係詞を使った後置修飾が必要となる。いずれの理由 にしろ,今回の分析を経て,中学で導入された「前置詞句」「不定詞句」「分詞 句」「関係詞節」の後置修飾の概念を正しく認識できていない生徒が多数いる ことが明らかになった。
5.3 高校 3 年間の学習成果はどこに現れうるか?─個人の英作文に注目して─
ここまで先行研究の振り返りを含め言及した点を,改めて整理する。
1. 高校導入の文法は,高校生の自由英作文にほとんど出現しない。
2. 中学3年導入の文法も,同じく高校生の自由英作文に出現する頻度は低 い。
3. トピックが難しくなると,前置修飾(=日本語の語順につられる表現)
が頻出する。
4. つまり,後置修飾を使いこなせない生徒が多数いる。
これらを通して,外国語習得の道のりがいかに平たんではないかが分かる。
本研究では,一人当たり計4種類の英作文を分析用に採用した。以下の表7の
①②③(表2,3の①②③に対応)は外部英語検定のライティングデータであり,
この検定のタイミングは各年度の6月である。表7の④(表2,3の④)は,
同一テーマで期間をあけて再び書いた場合どういう変化が見られるかを検証す るため,①のトピックを再利用して3年次の9月に書かせたものである。
表 7 英作文の総語数,文の数, 1 文の長さの平均の推移
①2017(1年) ②2018(2年) ③2019(3年) ④2019(3年)
テーマ 自分にとって 大切な人物
海外留学 についての意見
職場英語公用化 についての意見
自分にとって 大切な人物(再)
総語数(語) 85.6 102 99.7 103.6 文の数 12.4 11.1 10.2 12.6
1文の語数 7.1 9.5 10.1 8.6
Max 179 201 184 232
Mix 20 57 68 47
SD 29.7 26.4 24.0 38.8
結果として,40名の平均総語数は1年次より20語近く上がり,最も多く書 いた生徒の総語数(232語)も①~④を通しての最高値を記録した。同時に標 準偏差も最高値を記録した。つまり,個人差が広がったことになる。一因とし て,すでに進路を確定している生徒にとっては,3年の9月という時期は英語 学習へのモチベーション(特に大学受験という外的動機づけ)を維持するのが 難しかったことが推測される。
ここまで「全体的には」「平均でいえば」という見方をしてきたため,結果 的には,中学で導入された表現が「正しく使用されていない」側面を強調する ことになった。しかしながら,英語力の変化には個人差がある。個々の英作文 を詳細に見ることで,「何ができないのか」ではなく,「何ができるようになっ ているか」に着目したい。
ここからは,同一生徒の1年次の英作文①と3年次の英作文④を比較してい く。学習意欲が1年次より維持されており,順調に英語学習が進んでいると担 任教員が判断している6名の生徒の英作文に注目し,1年から3年への英作文 の変化を記述していく。(注:英文内に登場した固有名詞については,その部 分を削除しXXXXとした。)
生徒A【担当教員の初見:得意,意欲高,動機づけ強】
I think that my mother is important for me. Because my mother cooks breakfast and lunch. Also, my mother helps me. So, I feel happy now. Iʼm going to say “Thank you” and “I love you”. When I was sad, she said to me “Fight”, So, I think that my mother is important for me to live in the world.(60)
I think my mother is important person for me. I have three reasons. First, my mother make my lunch every school days. If she do not, I spend much money for lunch.
Second, I donʼt good at getting up early, so, sometimes I canʼt get up at six. But, my mother wake me up at seven. Thanks to her this action, I can go to the school in time. Third, when I was elementary school student. I had been teached by my mother. In these reasons, I think my mother is key person for me.(95)
・ 語数が増えている。
・ 3年次の英作文では,If she do not,~やI donʼt good at getting up earlyなど,
do/doesの使い分けやbe動詞と一般動詞との使い分けがまだうまくできない
様子である。
・ 過去(was taught)で表現すべき部分を過去完了(had been teached)と表現して いることから,過去と完了の使い分けを正しく理解できていない様子である。
・ このように,3年次でも多くの誤用があるが,習ったものを使おうとする「チャ レンジ」の姿勢が見られる。
生徒B【得意,意欲高,動機づけ強,こつこつ型】
I like XXXX very much. I have three reasons. First, he practices kendo very hard every day. I practice it hard too.
Second, he makes me happy. when I play with him he always makes me happy.
Third, he is so kind to me. One day, when I did not understand math, he taught me.
As a result, I get good score for test. So XXXX is very important and we are best friend. (74)
XXXX is the most important person for me, because I can play soccer well and I love soccer thanks to him. He and I met 10 years ago. When I was 8, I joined XXXX Football Club. He taught me various kinds of soccer skills and basic rules. I knew a lot of thing about soccer.
He treats me like his brother so I like him.
He is little crazy. He always makes everyone happy, so I want to be a person who make everyone happy like him. (89)
・ 語数に大きな変化はないが,1文の平均語数が長くなっている。(7.4→11.1)
・ 1年次から目立ったlocalエラーはなく,3年次もその傾向を維持している。
・ 3年次の英作文には,関係代名詞を使った文が登場している。
生徒C【得意,授業集中型,センスあり】
My brother is important for me. My brother and I like fishing. We often go fising together. Itʼs fun. My brother teach me many things. when I talk to my brother, I enjoy talking. We like beetles too, so I often talk about beetles. My brother often help me. My brother is very kind. My brother is important for me.
(60)
My father is important for me. There are two reasons. First, when I was child, My father taught me interests of nature, and answered my question about forests, the sea and the earth. My father let me to go fishing, and catching insects. Now, I hope to become professions about nature. So, I decided by these experiences. If it had not been for experiences in childfood, I would not be interested in the sea. Second, My father is kind. He seldom shouts in daily life. When I make mistakes, he teach me how to solve the problem, but shout with anger. For these reasons, I think my father is important for me. (112)
・ 語数が飛躍的に増え,1文の平均語数も長くなっている。(6.0→10.2)
・ Nature, forests, the sea, the earth, insectsなど自然に関する語いを多用している。
(担当教員によると,自然に対する関心が高い生徒であるということである)
・ 3年次の英作文に,仮定法(仮定法過去と過去完了の組み合わせ)を使った 文が登場している。
・ 1年次の英作文ではʻmy brotherʼが最後まで代名詞に代わることはなかったが,
3年次の英作文では,代名詞(he)が所々で使用されている。
・ seldom, professions, shoutなど,高校で導入されたと思われる語彙が登場して いる。
生徒D【得意,意欲高,動機づけ強】
I think that my sister is very important person. Because she is funny. So she makes me happy. I often talk with her.
She likes anime, comic and voice actor. I like too. So it is a lot of fun to talk with her. And we play volleyball on weekends.
She belongs to volleyball club. She plays volleyball well. Playing volleyball with her is very exciting. When Iʼm sad, she often gives me a smile. When Iʼm busy, she often help me. So I like my sister very much. (89)
I think my sister is a most important person for me because Iʼm happy when we talking. My sister name is XXXX. She is a junior high school student grade 2.
She likes anime, games and BOCALOID.
When we have a free time, we often talk about it. In addition, sheʼs club activity is volley ball. When I was a elementary school student and a junior high school student, my club activity was volley ball too, so I usually advice her about playing volley ball. I have go to Hokkaido the season become April. Iʼm so sad to leave my sister. However she cheers for me so I want to study hardly in university. At last I want to work a company of game and making game for her. (129)
・ 語数が飛躍的に増え,1文の平均語数も長くなっている。(6.4→11.7)
・ 1年次の時点で,三単現s,代名詞(she / her),動名詞主語の文を作ること ができている。
・ 1年次は単文の文頭でBecauseを使っていたが,3年次には複文従属節で使 用している。
・ その一方で,より複雑な文を書こうとする「チャレンジ」ゆえの誤りか,1 年次では見られなかった語順の誤りが3年次では確認された。(“I have(φ)
go to Hokkaido(φ)the season become April.” について,おそらく「季節が4月 になったら北海道に行かないといけない」を表現したかったものと思われる)
生徒E【得意,意欲高,学習内容を着実に定着】
My sister, XXXX is very important for me. She is very kind. When Iʼm sick, she takes care of me. And my mother works hard every day, so XXXX sometimes writes a letter for her. Also, I like singing with her. XXXX is a great singer. Two weeks ago, XXXX became sick. Then, she went to the hospital and didnʼt come home. I couldnʼt see her for about two weeks. I missed her. Yesterday she came home! I was very happy to see her.
XXXX looked happy too. XXXX makes me happy. I really love her. (96)
One of the important persons for me is my mother. She has been affecting my life and my way of acting and thinking. When I am worried about something or I get into trouble, I always ask my mother for advice. Then she tells me what she thinks about my problem and what I should do.
After hearing her advice, I feel my problem is small and I do not have to worry so much. In addition, my mother has given me a lot of good experiences.
When I was in the second grade at XXXX Junior High School, for example, She told me to apply for the Jr. Ambassader of XXXX City. At first, I did not want to do that, but now I think it was really good experience for me, I want to become a person like my mother in the future. (145)
・ 語数が飛躍的に増え,1文の平均語数も長くなっている。(6.4→18.1)
・ 1年次から殆どエラーは見られず,動詞の使い分けを含めて文法の正確性に は抜群の安定感が見られる。3年次でもその傾向を維持している。
・ 1年次の英作文では,中学文法を駆使して表現ができている。
・ 3年次になると,現在完了・現在完了進行・分詞構文といった高校導入の文 法も登場し,表現にバリエーションがでてきている。担当教員の初見にある 通り,学習内容を着実かつ確実に身につけている様子が,この英作文にもき ちんと反映されている。
・ また,前置詞句・関係詞節も使用しており,後置修飾の用法を正しく理解し
ていると判断できる。
生徒F【得意,意欲高,動機づけ強】
I love my friend. She is very important person for me because she always helps me when I am sad. I like to play volleyball with my friend. Also, she teaches me math. She teaches me again and again. She is very kind. She makes me happy. So, I want to make her happy when she will be sad. I am very happy because she always stands be me. She likes to sing a song. Her boice is very beautiful. When I am sad, her boice gives me a lot of power. So, I love her very much. I want to be like her. I want to be a person who can give everyone a lot of power. This is my dream. Thanks for her, I became to have my dream. So, my important person is my friend like an engel. (141)
It is my mother who helps me whenever I am in difficult. I owe her to live now. So, She is very important for me. Now I am high school student. without her help, I couldnʼt have studying now. When I was a child, I would often catch a cold. She always get to hospital and she didnʼt take a rest. I was grew up by her. She always think about my future and my family. She is always worry about them. I want her to be happy in the future. I am going to built our house and travel with my family. She loves onsen, so I want to get her. I must study hard in order to do them. (121)
・ 1年次の時点でwhen節やbecause節を使った複文や,関係詞節を作ることが できている。
・ 語数・1文の長さに大きな変化は見られないものの,want 人 to do,be going toなどが登場するなど,表現にバリエーションがでてきている印象を受ける。
・ owe A to Bや仮定法など,誤用ではあるが習ったものを使おうとする「チャ レンジ」の姿勢が,この生徒にも見られる。
以上,いわゆる「英語が得意」で「動機づけ高」の6名の英作文例を一つず つ見てきた。担当教員の観察を通して,3年間の英語学習が “ うまく進んでい る/成功している ” と判断される生徒の英作文を並べてみたことで,英語学習 の進歩がどのような形で現れうるかについて示唆が得られた。これまでに挙げ た特徴をここで整理すると,
・ 一度に書ける量が増える。(語数の増加)
・ 1文の長さが長くなる。(単文から接続詞を使った複文へ)
・ 動詞の時制や相の使い分けに意識を向けるようになる。(ただし正確性が伴 うわけではない)
・ 中3導入文法(関係詞,現在完了,受け身)などがようやく現れはじめる。
・ 習ったことを積極的に使ってみようというチャレンジの姿勢が見られる。
上記6名の英作文には,この中のいずれかまたは複数の特徴がみられたことに なる。
最後に,「英語は不得意」であるものの,「動機づけ・意欲高」を維持し続け た生徒の英作文に注目したい。
生徒G【苦手,意欲高,動機づけ強】
My mother is important for me. Because
(φ) make break fast every day. It is important for me to eat break fast every day. I have a basketball team. When I
(φ) nervous in tornament, (φ) always follow me. Iʼm very happy. I help my mother every day. my mother said me,
“Thank you.” I heared that very happy.
Next month, my mother is birthday. Iʼll give a present for her. Iʼll buy a watch.
My mother wash the dishes every day.
And, make a dinner every day. It is delicious. I am very happy. My mother said me, “Never give up!” I hear that always fine. I donʼt understand about science. My mother taught me science.
My mother is very kind. (119)
My mother is the best important person for my life. I have a few reason. First, my mother cooks every day. In fact, my mother have a job. In spite of she cooks every day. She seems that very busy, but she doing it. Secound, when I was young, she always hand dawn a interesting story to me. So, I am interested in read books.
Actually, books give me many advantage.
For example, intelligent, method of thinking about society, and calm. It is no wonder that my mother makes what I am today. More over, my mother have else have to do things. I think that, my mother is very strong. If I were her position, I wouldnʼt do such things completely. I am look up to my mother. (129)
・ 1年次の時点で「たくさん」書いている。その前向きな姿勢は3年次でも維 持している。
・ 語数に大きな変化はないが,1文の平均語数は長くなっている。(5.7→8.6)
・ 1年次は,主語やbe動詞の脱落,日本語の語順や主題が主語になっている 文が多く見られた。
・ しかし,3年次では,else have to do things「他にしないといけないこと」を 除けば,主語の脱落や日本語に大きく依存した表現はほとんど見られなかっ た。
・ 仮定法過去,It is no wonder ~や advangate, in spite of, intelligent, method,
morevoerを使用していることから,高校導入の語い・文法を積極的に使用
しようというチャレンジの姿勢が見られる。
先に見た生徒A~Fの6名と同じく,この生徒についても,習ったものを 積極的に使う姿勢を確認することができる。日本語につられた前置修飾がほと んどなくなっている点も,非常に興味深い。誤用も混ぜながらとにかく「たく さん書く」という前向きな姿勢が,個人の英語力の伸長に大きく貢献したと考 えられる。
6.考察とまとめ
今回,ある公立高校の生徒が1年~3年で書いた英語ライティングデータ(計 4種類)を使い,中学導入の文法の発達の様子を観察した。今回の分析の対象 としたのは,学年全体の1クラス分の人数(40名)にすぎない。また,各回 トピックが異なっていたため,そのことがライティングパフォーマンスを左右 した可能性も考慮しなければならない。今回の結果のみで結論を導くことはで きないため,今後の再分析や追調査の結果を待たなければならない。しかしな がら,先行研究と本研究を経て,今後の英語指導への示唆が何点か得られたと 考えている。ここまで議論してきたことを,ここでもう一度整理する。
1. 高校導入の文法は,高校生の自由英作文にほとんど登場しない。
2. 中学3年導入の文法も同様に,ごく一部の自由英作文にしか登場しない。
3. トピックが難しくなると,日本語に依存したと思われる表現が頻出する。
4. 基本的な後置修飾であっても,正確に使えない高校生が多数存在する。
5. ただし習得が進んでいないわけではない。例えば,英作文を介して,生徒 の文法発達の様子を垣間見ることは可能である。
4.の状況を改善できるか否かは,高校の授業でどのような指導をするかに かかってくるだろう。特に高校1年の授業で指導の優先順位を変えることで改 善は可能だと考えられる。
春休みや年度初めに問題集やワークブックを使い,中学英語を「復・ ・習す・ ・る」
する機会は,これまでも設けられていたかもしれない。しかし,金谷ほか(2017, 2020)と今回の調査結果から,多くの高校生が中学英語を身につけてない(=
自由に使えるレベルにはない)ということは明らかである。つまり,従来のそ のような形での復習では十分ではないということである。
今回の詳細な英作文分析を経て,中1導入の前置詞句のようなごく基本的な 後置修飾であっても,注意資源を分散しなければならない状況下になると,正 確に使えない生徒が多数存在することが分かった。従来の「復習」用の問題集 やワークブックでは,不定詞や動名詞や関係詞などが別々の項目として提示さ れ,必ずしも「後置修飾」という括りで整理されているわけではない。果たし て生徒は,前置詞・不定詞・分詞・関係詞を後置修飾という観点で「類似した 役割を担う」文法と認識できているのだろうか。
ここで,中学検定教科書(NEW CROWN 3 ENGLISH SERIES New Edition)
から,修飾について整理させるために用意されているページを紹介したい。
修飾についてのまとめのページ(一例)
Review 修飾することば
●前置修飾(名詞を前から修飾する言い方)
①形容詞 My sister has a new computer.
②動詞の-ing形 The swimming girl is Aki.
③動詞の過去分詞形 I like boiled eggs.
(ここで「前置修飾は日本語の言い方とよく似ているね」というコメントを補足)
●後置修飾(名詞を後ろから修飾する言い方)
①名詞+<主語+動詞~>の形 The place I want to visit is Kobe.
②関係代名詞 I know a person who speaks French.
I found the letter which she wrote.
③動詞の-ing形 The boy playing with the dog is Tom.
④動詞の過去分詞形 I have a camera made in Japan.
⑤不定詞の形容詞用法 Yokohama has many things to see.
⑥前置詞句 My father works at a bank in Osaka.
(ここで「後置修飾は,名詞を説明することばを後ろに付け加えているね」
というコメントを補足)
NEW CROWN 3 ENGLISH SERIES New Edition.(三省堂)p. 81 を編集 注: 図の中の矢印は 2 か所だけであるが,実際の教科書では,修飾関係が分かるよう 全ての英文の下線と波線の間に矢印が付けられている。今回はその一部だけを図 内に再現した。
すでにこのような「整理」のコーナーが,中学検定教科書には用意されてい る。高校生も中学3年の際に,このような形で後置修飾の用法を整理する機会 を与えられただろう。しかし,それが一度だけだとすると,それでは記憶には 残らないだろう。このような機会は,高校の英語の授業でも繰り返し生徒に与 えられるべきである。もし,高校1年の授業で,不定詞や分詞や関係詞を「別々」
に復習する機会しかなく,後置修飾という共通の役割を担っている「同類」と して認識する機会がないのであれば,そのような機会が是非与えられるべきで ある。
今回7名の英作文を詳細に見て分かったことがいくつかある。英語力の変化 がまず総語数に現れる生徒もいれば,語数はさほど増えないが,1文の長さが 徐々に長くなっていく(例えば,単文の羅列だったのが接続詞を使って複文を 書けるようになるなど)生徒がいた。また,動詞を現在形(あるいは原形)し か使わない段階から,現在や過去,進行相や完了相などを混ぜて使う段階へ移 行している生徒もいた。誤用もあるものの,誤りながらも時制や相を区別しよ うと模索する姿が英作文を通して想像できた。
生徒の誤りに直面した場合,どう対応するのが正解なのか。この答えは一つ ではないだろう。少なくとも言えることは,誤りを常に負の現象として捉えて しまうのは適切ではないということである。金谷ほか(2017)では,A・B・
Cの3段階評価評価で採点された高校生の英作文において,評価の高い英作文 ほど動詞の時制が使い分けられている傾向にあり,評価の低い英作文ほど動詞 の時制がほとんど変化していない傾向があると報告している。区別しないある いは区別できないまま一種類の言い方で通すよりも,間違いも犯しつつ使い分 けを試みる方が,学習段階としては一段階先にいるのではないかと推察される。
6.冒頭で言及した2番目の観点「中学3年導入の文法もごく一部の自由英 作文にしか登場しない」の「ごく一部」が,今回の生徒A~Fに概ね該当する。
彼らの英作文から分かることは,習得の道のりは確かに長いものではあるもの の,教師が適切な授業設計を行い,生徒が英語学習へのモチベーションを維持 し日々の学習の成果を確実に積み重ねていけば,中学英語を高校で「使える」
レベルにまで引き上げることは可能であるということである。英語が得意・不 得意のいずれの場合でも,英語学習への意欲が維持されれば,生徒は習ったこ とを使ってみようと思うはずである。
本研究では,高校生のライティングデータを使用し,中学導入文法を中心に 文法発達の様子を見てきた。最後に,以下4点を提案し本論文を締め括りたい。
高校における英語指導での教師の役割は,
① 中学英語を使わせながら復習させる。何もしなければ3年間あっても定着は 厳しい。
② 話す/書く機会をできるだけ多く与える。機会が少ないと生徒は「チャレン ジ」しない。
③ 間違ってもよい雰囲気を作る。誰にでも失敗したくないという気持ちはある。
「チャレンジ」しようと思わせるための,心理的プレッシャーの軽減に努める。
④ 活動場面を日常的に提供し観察眼を鍛える。生徒の変化はどこにどのタイミ ングで現れるか分からない。
References