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地域商社による「地域の稼ぐ力の向上」を実現する ための重要な要素とそれに基づく有効策

著者 中村 郁博

著者別名 Fumihiro NAKAMURA

雑誌名 東洋大学PPP研究センター紀要

巻 12

ページ 1‑34

発行年 2021‑03

URL http://doi.org/10.34428/00012763

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

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1 投稿論文

地域商社による「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための 重要な要素とそれに基づく有効策

中村 郁博

株式会社価値総合研究所執行役員経営企画部長兼事業部長

【目 次】

頁 第1章 序論 2

1 研究の背景 2 研究の目的

3 研究の枠組み・方法

第2章 DMOが「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための重要な要素 4 1 DMOに求められる重要な要素についての3つの先行研究

2 DMOが「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための重要な要素

第3章 地域商社が「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための重要な要素の検証 7 1 安定的な運営資金の確保・財務基盤の確立

2 地域全体の利益の最大化 3 高度な経営管理・戦略の実行 4 地域内の関係者との連携 5 小括

第4章 地域商社が「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための有効策の検討 19 1 地方公共団体による地域商社

2 地域住民による地域商社 3 民間企業による地域商社 4 個人起業による地域商社 5 小括

第5章 まとめ 30 1 結論

2 今後の課題

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2

【本 文】

第 1 章 序論

本章では、国による政策動向や先行研究を踏まえ、本研究の目的と枠組み・方法を明確 にする。

1 研究の背景

近年、国の政策において、「地域の稼ぐ1力の向上」が重要な目標となっている。2015年8 月に公表された国土形成計画(第二次国土形成計画)にて「稼げる国土」の形成が政策目 標となり、地域活性化政策の中核をなす地方創生においても、以下のとおり重視されよう になった。

2019年12月に国により示された、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(地方創 生総合戦略)では、2015年度より実施されてきた第 1期の地方創生の基本的方向性を踏襲 しながらも、その業績評価を踏まえ、より実践的なものへの改善が試みられている。この 改善の一つが、第 1 期においては長期ビジョンとして「成長力の確保」と、国全体の GDP 成長率を示したに過ぎなかったものが、第 2 期においては目指すべき将来として「地域の 外から稼ぐ力を高めるとともに、地域内経済循環を実現する」と、「地域の稼ぐ力の向上」

を特記したことである。

背景には、第 1 期に掲げた「人口減少」と「東京一極集中」への対応という政策目標が 達成できなかったことがある。第2 期地方創生総合戦略は、第 1期の戦略成果の検証の基 に作成されており、基本目標1「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」と 基本目標4「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連 携する」については、「目標達成に向けて進捗している」と評価された。一方、基本目標2

「地方への新しいひとの流れをつくる」、基本目標3「若い世代の結婚・出産・子育ての希 望をかなえる」については、「各施策の進捗の効果が現時点では十分に発現するまでに至っ ていない」とされた。前者は東京圏への一極集中是正であり、後者が人口減少対策である。

第2期地方創生総合戦略においては、これらを強力に推進するために、「地域の稼ぐ力の向 上」が追加された。

そして、「地域の稼ぐ力の向上」の具体的推進を図る政策パッケージにおいて、「地域の 特性に応じた、生産性が高く、稼ぐ地域の実現」のために、①地域企業の生産性革命の実 現、②地域経済を牽引する企業に対する集中的な支援、③農林水産業の成長産業化、④地 域の魅力のブランド化と海外の力の取り込み、⑤継続的な地域発イノベーション等の創出、

1 本研究においては、内閣府「地域の経済2017 -地域の「稼ぐ力」を高める-」と中小企 業庁「中小企業白書 小規模企業白書 2020年版」における用法にならい、「稼ぐ」を「付加 価値を生み出す、あるいは獲得する」と定義する。

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3

⑥地域産業の新陳代謝促進と活性化、⑦地域金融機関等との連携による経営改善・成長資 金の確保等の合計7つの戦略が提示されている。

このうち、⑤より⑦については、既に技術力や収益力を確立した企業を、地域の中核企 業へと成長させ、さらには地域産業として高度集積を図り、国際競争力を有したものへ育 成を図るものであり、地域産業の発展モデル2に基づくと、既に中期段階にある企業をさら に発展させるための戦略の方向性や支援インフラの整備に関するものとなる。②について は、経済産業省にて推進されている、既に実績のある企業の中から選抜された地域未来牽 引企業および地域経済牽引事業への支援の重点化を示したものである。

一方で、①、③、④については、地域生活課題解決産業、観光交流産業、新地域基幹産 業といった、「地域の稼ぐ力」を新しく創出するための戦略である。そこで重視されている も の が 、 地 域 商 社 と 観 光 地 域 づ く り 法 人 (DMO:Destination Management/Marketing Organization)の活用である。

地域商社と DMO は、地域が、地域の外から稼げるようになるための主体として期待され ており、両者とも、地域性に基づく魅力をマーケティングし、顧客への販売を通して、地 域に利益と情報を還元し、情報分析に基づき次の戦略を策定し、実行していく、つまり、

地域の利益の拡大に向けた一連のビジネスサイクルの中核に位置付けられている。また、

自社の経済性のみならず、地域全体の経済の拡大を含めた地域の社会性も追求する点が特 徴となっている。

両者の差異は、主にターゲットにある。DMOは、観光客、つまり地域外から当該地域へ訪 れる人々を顧客とするのに対し、地域商社は、観光客も内包した地域外の人々の全体(つ まり、当該地域を訪れていない人々も含む)、さらには地域の人々も顧客として想定する事 業である。従って、地域商社の事業のうちターゲットを観光客に絞り込んだものが DMO で あり、DMOは地域商社の部分集合と言うことも可能である。

DMO については、国による登録制度が創設されたほか、先行研究も積み上げられている。

藤田(2017)は DMOの役割と機能について考察しており、八島ら(2018)はDMO の収入構 造を、井上と谷口(2019)は地域の「稼ぐ力」の促進のための DMO のあり方について、明 らかにしている。また、3つの先行研究の中では、DMOによる「地域の稼ぐ力の向上」を実 現するための重要な要素も指摘されている。

一方、地域商社については、国は登録制度を設けず、地域商社が「地域の稼ぐ力の向上」

を果たすためにどのような課題にどのように取り組むべきか、具体の方策は示されていな い。地域商社に関する先行研究も極めて少ないが、中村(2020)は、地域商社の仕組みを 対象にして、地域商社が求められる経済的、社会的理由を分析した上で、地域商社の役割

2 経済産業省は、「産業構造ビジョン2010」にて、地域生活課題解決モデルから、観光交流 発展化モデル、新地域基幹産業育成モデル、地域産業集積高度化モデル、国際競争力拠点 化モデルへと進む産業発展モデルを提示している。

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やビジネス戦略を中心に考察している。ただし、地域商社による「地域の稼ぐ力の向上」

を実現するための重要な要素に関する研究はなく、その研究の深化が求められている。

2 研究の目的

第1期地方創生より展開されてきた地域商社とDMOであるが、DMOは外国人観光客向けの ビザ発給の緩和や国の積極的な国際プロモーション等によるインバウンド観光客の急増、

日本版DMOの登録制度の創設と登録DMO向けの手厚い助成施策もあり、多くの地域で創設、

あるいは創設検討が行われてきた。結果、DMOに関する研究も積み上げられている。

一方で、地域商社は、観光産業に限定しない、より汎用的な地域経済の活性化手法であ るものの、登録制度がなく、同制度に紐づけられた集中的な助成施策もないため、地域関 係者等からの注目度が、DMOに比し低く、研究実績も十分には積み上がっていない。

以上を踏まえ、本研究では、第 2 期地方創生総合戦略で追加された「地域の稼ぐ力の向 上」の主体として期待される地域商社と DMO のうち、より汎用性の高い地域商社に焦点を 当て、地域商社が「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための重要な要素が何であるのか、

そしてどのような方策が有効であるのかについて、明らかにする。このために、まず重要 な要素を導出し、次にその要素を実現させるための有効策を考察するが、有効策について は、地域商社の主体ごとに変化する特徴や、要素の実現状況を踏まえ、主体別に細分化し 分析していくことが重要となる。

3 研究の枠組み・方法

本研究においては、まず、DMOを対象とする先行研究より、DMOの「地域の稼ぐ力の向上」

に重要な要素を明確にする。次いで、その要素が地域商社においても重要であるかを検証 する。より具体的には、DMOでの重要な要素を、中村と倉本(2017、2018)による「地域商 社による産業活性化調査」と「地域商社の成長に向けた戦略調査」にて対象とした地域商 社の先駆的事例30社に適用し考察する。さらに、個別の地域商社において、重要な要素が 発揮されている過程や方法を分析することにより、地域商社の「地域の稼ぐ力の向上」を 実現するための一般的な方策を抽出する。

第2章 DMO が「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための重要な要素

DMO にかかる先行研究の中で重要な要素とされる点を整理すると、「安定的な運営資金の 確保」、「地域全体の利益の最大化」、「高度な経営管理・戦略の実行」、「地域内の関係者と の連携」の4点にまとめることができる。以下、4点について説明する。

1 DMOに求められる重要な要素についての3つの先行研究

DMOについては、多くの研究が積み上げられている。その中で、DMOの役割と機能に関す

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る研究を行った藤田(2017)は、DMOに求められる機能として「標的市場に対するコミュニ ケーション活動のみならず、マーケティング計画策定のための情報探索、STPの設定、デス ティネーション開発、コミュニケーション活動、マーケティング評価等」の一連の高度な 経営管理、戦略実行を挙げている。また、「DMO は観光関連事業者の活動を支援する機能を 担うわけだが、この機能を果たすためには、前提に DMO が観光関連事業者を調整できる関 係性や仕組みが築かれていなければならない。」と、自社に留まらず他の観光関係者への支 援および連携の必要性を指摘している。さらに、「DMO がこれらの役割と機能を果たすため には、盤石な組織基盤が必要」であり、「安定的な運営資金の確保はDMOの自律的、継続的 な組織運営に貢献する」と、考察している。

DMOの収入構造について研究を行った八島ら(2018)は、DMOの「戦略的地域経営の柱と して収益事業収入を位置付けることは持続的な経営にとって重要である。」とした上で、「収 益性や成長性のみならず、公益性や地域における互恵性にまで配慮した地域経営を実務的 に進める」ために、「外部環境や内部環境の分析を踏まえた地域課題の見える化を行い、関 係者のコミットメントを引き出すために、定期的な振り返りの機会を設け、合意形成に向 けたコミュニケーションの円滑化を図る必要がある。」とした。加えて、「日本版 DMO 候補 法人が地域コミュニティとどのように関わるかについて、ミッションや役割、成功要因な どをあらかじめ検討する戦略的な方法で取り組む必要がある。」ともしている。 八島ら

(2018)の研究は、地域全体の利益の拡大、関係者との連携、それらを含めた高度な経営 管理の必要性を指摘していると解することができる。

DMOによる「地域の稼ぐ力」の促進について海外事例を中心に分析した井上と谷口(2019)

によれば、DMOの「役割・機能としては非営利的な活動が主になるが、DMOが成果として期 待されることは、観光を通じて地域の「稼ぐ力」を引き出し、地域に継続的な経済効果を 産むことにある」と指摘し、海外の成功事例においては、「TID3によって運営資金を確保し ている。こうして、継続的な運営資金の確保は、DMOが中心となって観光に関する様々なス テークホルダーを巻き込んで、ポジティブなスパイラルの経済効果を産んでいくことによ ってはじめて達成される。」と、運営資金の確保の重要性を指摘し、そのために、観光関係 者との連携と地域への経済波及の実現が必要と考察している。

2 DMOが「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための重要な要素

前節における先行研究は、DMOによる「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための重要な要 素を直接に研究したものではないが、考察結果を整理すると、以下の4つの要素を挙げる ことができる。

3 Tourism Improvement District:地域の宿泊企業など参加企業に対する賦課金で、地域の

マーケティング活動などにかかる独自財源の安定的な確保を目的に作られた仕組み。

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(1) 安定的な運営資金の確保

井上と谷口(2019)は、DMOは「活動を通じて自らの運営資金を確保し続けていくことが 存続の要件となっている」と、「安定的な運営資金の確保」の必要性を指摘している。一般 的には、「自らの運営資金の確保」とは、自ら収益事業を確立し、収支相償を確保すること が基本となる。しかし、DMOの登録において求められているものは、持続的な活動のための 安定的な資金確保であり、法定外目的税等を原資とした地方公共団体からの助成金や会員 からの会費収入なども容認されている。

また、DMOにおいては、経済的利益の重要性を指摘されるが、利益の帰属先をDMOに限定 していなく、DMOが利益獲得の舵取り役になるも、帰属先は地域内の別の主体となることも 想定している。実際の登録 DMOで見受けられるように、それぞれの DMO が活動する地域に より、事業環境も取り組むべき観光課題もさまざまで、運営資金を公的助成金等で安定的 に獲得できるのであれば、自らによる収益計上を必須とする必要はない。従って、先行研 究において指摘されているものは、収益の確保ではなく、「安定的な運営資金の確保」とま とめることができる。

ただし、八島ら(2018)が「DMO をめぐる政治性には課題」があり、「従来型の行政的な 運営管理では持続性の確保は十分ではなく、資金確保のための経営戦略策定とその成果を 見える化することが必要」と分析しているように、地方公共団体の助成施策は、首長、議 会により変更される政治リスクも内在している。つまり、行政施策に依拠した DMO の運営 資金確保の安定性は絶対ではない点には、留意する必要がある。

(2) 地域全体の利益の最大化

前節での先行研究にて示されているように、DMOの役割の大きなものは、地域全体の利益 の拡大を効率よく推進し、地域企業に広範囲に利益を分配し、地域内経済循環を加速させ ることである。また、組織単体の利益の追求を否定するものではなく、組織単体の利益追 求により、事業が自立的に継続され、事業継続を通じて地域が成長し、地域全体の利益の 拡大となることも考えられている。以上を踏まえ、この要素は「地域全体の利益の最大化」

としてまとめることできる。

「地域全体の利益の最大化」の取り組みを確認する視点としては、地域の観光ビジネスの インフラの提供や事業高度化支援の有無のほか、より直接的に地域内経済循環の促進等が 考えられる。

加えて、観光庁の定義にもあるとおり、DMO には、地域の経済的利益に留まらず、「地域 への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」」と非営利面での成果も期待されている。従って、

「地域全体の利益」とは、経済的利益に留まらず社会的利益も内包したものとなる。

(3) 高度な経営管理・戦略の実行

先行研究における考察に加え、観光庁においても、「各種データ等の継続的な収集・分析、

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7

データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPIの設定・

PDCAサイクルの確立」が、DMOの基礎的な役割と機能として挙げられている。実際、DMOと しての登録申請において、これらへの具体の取り組みの明記が求められている。

このように、DMOにおいては、マーケティングやブランディングの、計画や戦略の策定と 実行でのPDCAサイクルの実施といった、組織経営を高度かつ適確に行っていくことが求め られており、本研究ではこれを「高度な経営管理・戦略の実行」とする。

一方で、「高度な経営管理・戦略の実行」に必要な高度な経営技術を有した人材を、全て 組織内で確保するのは困難である。加えて、経営戦略の実行のためには、地域外の企業と の連携や、時には同企業から支援を受けることが実務的な対応ともなる。第 2 期地方創生 総合戦略においてもこの課題は認識されており、プロフェッショナル人材の地域への派遣 等の施策も拡充されている。従って、「高度な経営管理・戦略の実行」は、地域外を含んだ 専門家や企業等との協働による高度化が、実現の有無を確認する一つの視点となる。

(4) 地域内の関係者との連携

最後に、先行研究より確認できるDMOに求められる機能は「関係者との連携」である。観 光庁のDMOの定義においても、「観光地域づくり法人を中心として観光地域づくりを行うこ とについての多様な関係者の合意形成」や「関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合 性に関する調整・仕組みづくり、プロモーション」を DMO の重要な役割・機能として挙げ ている。特に、「地域社会とのコミュニケーション・地域の観光関連事業者への業務支援を 通じた多様な関係者との戦略の共有」、「地域が観光客に提供するサービスを、維持・向上・

評価する仕組みや体制の構築」、「地域一体となった戦略に基づく一元的な情報発信・プロ モーション」を具体的要件としているように、より地域内での連携性を重視している。

以上を踏まえ、本研究においては、「地域内の関係者との連携」を求められる重要な要素 とする。同時に、地域外の関係者、特に経営技術を有した専門家との連携については、前 項での考察のとおり「高度な経営管理・戦略の実行」の一部として整理する。また、「地域 内の関係者との連携」の実現の有無に関しては、地域ネットワーク(地域内の関係者によ るネットワーク)の中から、協働プロジェクトを創出しているかという視点が有効と思わ れる。

第3章 地域商社が「地域の稼ぐ力の向上」を実現するための重要な要素の検証

中村と倉本(2017、2018)にて調査された先駆的地域商社30社の概要は、表1のとおり にまとめられる。これに基づき、前章にて確認したDMOに求められる4つの重要な要素が、

地域商社において同様に求められるものであるかを個別に検証する。具体的には、30 の地 域商社を対象に、中村と倉本(2017、2018)による先行研究および最新の各社HPによる情 報をもとに、要素ごとに合致しているかどうかを評価する。評価は筆者が行い、要素の達

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8 地域商社30社の概要(表1) その1

No 地域

商社 所在 開始年 主な設立者 設立経緯 事業概要 特徴

1 北海道 どさんこ プラザ

北海道

札幌市 1999 北海道

北海道内で製造、

加工された食品、飲 料、民工芸品の展 示・販売を通じて、道 内企業へマーケティン グ支援を実施するた め設立

北海道により設立された北海道産品 のアンテナショップであり、北海道から道 内百貨店等に運営を委託する形式に て全国で6店舗、加えて通販事業を 展開する。

道内の14振興局を通じ新商品のテス ト販売制度に応募し、登録された商 品は店頭にて3か月間のテスト販売を 行う。販売実績が良かったものは、最 終的には各店舗のプロパー商品として 採用され、悪かったものは販売データと コンサルティングの還元とともに店頭から 淘汰される。こうして、店舗の新鮮さも 維持され、持続的な集客力の創出が 実現される。

2 北海道 総合商 事(株)

北海道

札幌市 2015 (株)北海道銀行他

北海道銀行を中心 に、ロシア向け事業の プラットフォームの構 築を目指し、道内の9 社にて設立

ロシア極東を中心に、道産食品と建 材、農業資材を輸出する。加えて、地 域の技術競争力を活かし、現地で、

野菜栽培用の温室施設を整備し野 菜を販売するプロジェクトを実施する。

北海道企業の新しい市場としてロシア 極東市場に注目し、北海道銀行のロ シアビジネスの専門家(社長として派 遣)を中心に、為替や国際決済など 金融サービスとも連携した現地ビジネ スノウハウも提供する。

3

(株)

Wakka Japan

北海道

札幌市 2013 個人

香港、シンガポールで 日本産米の小売事 業を開始した後、輸 出体制と管理体制 の強化のために設立

香港、シンガポール、台湾、ホノルルの 各現地法人経由で、北海道産米を 中心に、長野、新潟等の他地域産米 の卸・小売事業を展開する。日本の 米輸出の約1割のシェア(2017年時 点)を占める。

各国で日本式炊飯方法の教室を開 催し市場の拡大を図るほか、日本にお いては農業生産者との直接取引(同 所得向上)を重視し、長野県の中山 間地域の活性化も狙った自社自然栽 培事業にも参入する。

4 (株) ファースト

インター ナショナ

青森県 八戸市 1994

八戸商工会議所

(同所属地域企業の 一部)

停滞していた地域経 済の活性化を図るた め、地元産品の輸出 を支援する商社機能 の確立を求める地域 企業からの声により、

設立

東北地方で最初の国際定期コンテナ 航路の開設を契機に木材・建材の輸 入が始まり、2002年より地域産品のリ ンゴ、長芋等のアメリカ・アジアを中心と した輸出実績を有する。

地域ネットワークのハブにある商工会 議所が主体となっていることで、地域の 戦略商品の発掘と販売拡大に成功 する。当初、大手総合商社から経験 者を役員に招聘し、輸出入事業のノ ウハウ修得から始めた。

5 (有)三陸

とれたて 市場

岩手県 大船渡

2002 個人

地域の大学水産学 部の卒業生が、漁業 者が付加価値の多く を逸失している課題 を解決するため、起

従来の鮮魚流通では漁業者と消費 者が分断されていることが問題との意 識を持ち、漁業者からの直接仕入れ、

ネットオークションでの販売や、新冷凍 技術の導入とそれを用いたホテル・飲 食店との直接取引といった流通変革 を進める。

事業に協働する漁業者を「三陸漁業 生産者組合」として組織化し、仕入値 を引き上げることで利益を還元する。

6 岩手県産(株) 岩手県盛岡市 1964 岩手県

県産品の販売促進 を目的として、第三セ クターとして設立

3つの直営店(盛岡、平泉、仙台)の ほか、東京と福岡での自治体アンテナ ショップの運営を行う。これらを活用した 卸・小売事業のほか、県産品の物産 展を全国の百貨店等で実施する。

(2020年3月 売上高5,175百万円)

県外での卸・小売事業を通じて獲得 された商品ニーズを県内企業に還元 し、商品の開発・製造を支援、自社ブ ランドとしても販売、ロングセラー兼ヒッ ト商品(オリーブオイル漬サバの缶詰 等)も創出する。

7

(株)あき た森の宅 配便

秋田県

小坂町 2006 個人

地域住民の地域活 性化の話し合いの中 から出てきた事業アイ デアを個人が起業、

県助成金も活用し 成長

一般的な山菜の通販と差別化を図る ため、地域の高齢者を「山の名人」

(30名が登録され、HPにてプロフィール も公開)と命名し、注文を先行させ

「天然山菜採り代行サービス」と位置 づける。結果、山の名人からの山菜買 取価格は、近隣の直売所の1.2~1.3 倍で、販売価格はもう一段の引き上 げを成功させる。

創業者の子がUターンして経営を継 承、発展させる。コミュニティビジネスか ら成長させ、地域外から付加価値を 獲得するに至る。過度な成長を追わ ず、地域生産力と見合った規模にて 経営される。

8 (株) ファー マーズ・

フォレスト 栃木県 宇都宮

2007 個人、(株)クリーン工

農林公園「ろまんちっ く村」を運営する第三 セクター解散後の民 間受皿企業として設

宇都宮市は、農業振興やレジャーの 拠点を運営していた第三セクターを解 散、民間企業傘下の個人専門家を 中心に設立した当社に運営を委託す る。当社は、同拠点を道の駅に改変 し、拠点事業、農業事業から、地域 商社事業、着地型旅行業、ブルワリー 事業と、地域活性化を総合的プロ デュースする。(2019年時点 従業員 数300名)

地域外の専門家による地域拠点事 業の再生が事業の開始であり、当初 は地域内連携に苦労するが、地元生 産者との協働が構築された後、高度 な経営により成長が加速。現在におい ては、地域商社の成功モデルと認識さ れ、そのノウハウを、全国の地域企業 にも提供する。事業目的として、地域 農業生産者の所得向上とローカルブラ ンドの総合的プロデュースを掲げる。全 国の地域商社を連携させ、新しい全 国流通網の構築も目指す。

出所:筆者作成

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9 地域商社30社の概要(表1) その2

No 地域

商社 所在 開始年 主な設立者 設立経緯 事業概要 特徴

9

(公財)

燕三条 地場産 業振興 センター

新潟県 燕市 三条市

1986 三条市、燕市

燕三条駅観光物産 センターを前身とし、

洋食器・刃物の物産 館「メッセピア」と新技 術・新商品開発支 援機能「リサーチコ ア」の整備を契機に、

現組織が誕生

燕三条エリアの優れた金属加工技術 を基に、開発支援(技術支援、デザイ ン支援)から販売・PRまで多様な産業 振興を展開している。企業向けに留ま らず、工場を活用した観光事業等で 消費者に直接に地域ブランドを訴求 する。

国内向けにおいては各工場の生産現 場を見学解放するイベント「燕三条工 場の祭典」(産地観光イベントとして、

当地より全国に拡大)、海外向けにお いては国際展示商談会への参加等を 通じ、国内外で「燕三条ブランド」を確 立、国内外からバイヤーや購入者が当 地に訪れ、国際的にも有名な企業、

商品が創出される。

10 越中富 山お土 産プロ ジェクト

「幸のこ わけ」

富山県

富山市 2011 富山県総合デザイン センター

富山県総合デザイン センターに招聘された ディレクターにより、県 産品の魅力の県外 訴求のために企画

観光客の土産品、県外への贈答品と して、県産加工食品を選別し「幸のこ わけ」ブランドを付して販売する。事業 はデザインセンターが企画・管理し、富 山県いきいき物産(県の第三セクター)

が流通・販売を担う。2017年には工芸 品による「技のこわけ」ブランドも立ち上 げる。

プロジェクト内の地域の有識者により 構成された委員会を中心に、ブランド を付す商品を審査、コンサル等のブラ ンドコントロールを実施する。北陸新幹 線の開業により、金沢駅構内や新幹 線車内販売での人気商品を輩出す る。(2017年時点 「幸のこわけ」県内 24事業者、「技のこわけ」同10事業者 と連携)

11

(株)地 域商社 とっとり

鳥取県

鳥取市 2017 (株)山陰合同銀行、

(株)鳥取銀行

連携中枢都市圏に 指定される鳥取県内 の5市町と地域金融 機関が中心となり設

県内の農水産品、加工食品を主に県 外に売り出すこと、県外で訴求できる 商品開発を支援すること、市町が連 携して大阪に出店しているアンテナ ショップを運営することを担う。

地域と大消費地の両方にネットワーク を有する地域金融機関が中核となり、

設立間もなく(2017年時点)、主に地 域内の約80事業者から仕入れを行 い、県外の10のデパート・量販店での 販路を確立する。プライベートブランド 商品も開発する。

12

(株)吉 田ふるさ と村

島根県

雲南市 1985 地域住民(旧吉田 村)

地域住民が地域活 性化のために企画 し、旧吉田村の出資 も受けながら地域住 民出資にて設立

地域産餅米を活用した餅つきの実演 販売等の小規模な食品加工から開 始し、全国的にもヒット商品となった

「たまごかけごはん専用醬油「おたまは ん」」の開発、製造、販売と事業を拡 大する。あわせて、水道管補修事業、

バス事業など、市場が小さいために一 般の企業には魅力の乏しい地域の公 益事業にも取り組む。(2020年時点 従業員数82名、株主数126)

地域住民が自ら立ち上げた地域課題 を解決するための企業である。経営者 も従業員も地域住民により構成され、

長年の事業実績を通じ、地域住民自 ら経営技術を磨き上げてきた。補助 金を活用した機械設備の取得は、固 定費を抱え込む一方で商品ニーズの 変化に機動的に対応できないと回避 し、地域内経済効果、機動性の確 保、「手作り」による商品競争力の向 上のため、地域住民の雇用を優先す る。

13

(株)離 島キッチ

島根県

海士町 2016 個人、(一社)海士町 観光協会

観光協会の外商担 当者公募に応じた個 人のアイデアに基づ き、同協会の外商部 門を分社化して設立

海士町の商品だけでは限定的である ため、全国の他の離島から食材を調 達したレストラン事業を札幌、東京、

海士にて4店舗展開する。店舗の設 置主体は観光協会で、当社が運営を 担う(札幌は、地域NPOが運営)。

職員が各離島を往訪し、現地の食 材、メニュー、文化等を勉強した上で 取引を開始する(2017年時点 71 島)。取組内容、食材の良さから店舗 も有名となり、海士町(ブランド)の認 知度も向上する。

14 つやま産

業支援 センター

岡山県

津山市 1995 津山市

地元中小企業の支 援機関として設立さ れ、ステンレス加工 メーカーの育成等にお いて成果

地域の中小企業向けに生産性向 上、販路開拓、マーケティング向上等 の支援を実施する。その中から、テント 素材とそれを支える専用金具の共同 開発による膜天井システムや、大手ア パレルメーカーのOEMを請け負っていた 企業のオリジナルブランドの確立などの 成果を挙げる。

企業間の技術や製品をコーディネイト できる専門家を外部より招聘、その専 門家を中心に地域内企業200社以 上を訪問し、各社の技術力や経営方 針、そして信頼関係を構築すること で、コンサルティングの実効性を向上さ せる。

15 地域商 社やまぐ ち(株)

山口県

下関市 2017 (株)山口フィナンシャ ルグループ

山口県による地方創 生総合戦略の策定 を受け、県産品の販 売強化と地域商社 機能の構築のために 設立

地域の中小企業では営業に手が回ら ない既存商品の売り込み、大手商社 が参入しない少量多品種の商品開発 や販路開拓など、マーケティングの支 援と営業代行、「やまぐち三ツ星セレク ション」という県下統一ブランドを構築 し、販売する。

地域金融機関からの出向者を中心に 同機関との連携により、競争力のある 県産品の発掘と磨き上げを行い、商 品ブランドに組み込むことで売り込む力 を強化する。セレクト商品の通販と営 業代行により、当社の在庫リスクを排 除する。

出所:筆者作成

(11)

10 地域商社30社の概要(表1) その3

No 地域

商社 所在 開始年 主な設立者 設立経緯 事業概要 特徴

16 ながと物産(合) 山口県長門市 2014 長門市

県内外の有識者から なる「ながと成長戦 略検討会議」からの 提言を受け、「ながと 成長戦略指針」、

「同行動計画」を策 定し、それに基づき設

長門市が中心となり設立した、農水 産物の直売所、レストラン等を有する 道の駅の指定管理のほか、地元産品 の首都圏レストラン・ホテル向けの卸売 事業を実施する。

公募した経営者は、外部のネットワー ク開拓に積極的に取り組み、設立間 もなく約100の販売先を開拓した。一 方で、地域ネットワーク形成と信頼構 築が図られるまでの間、地域内調整に 苦労した。

17 とくしまマルシェ 徳島県徳島市 2009

(公財)徳島経済研 究所(阿波銀行系シ

ンクタンク)

徳島経済研究所が 取りまとめた「徳島県 の農業ビジネス活性 化構想」に基づき企

徳島市中心部を流れる新町川沿いの 遊歩道にて、毎月最終日曜日に行わ れる地元産農産品と同加工品等の 産直販売イベント(イベント実務は、地 域のイベント企画会社が担当)。大手 小売事業者からも注目され、徳島県 内のショッピングセンターへの専用販売 コーナーへの無償招聘を受ける。

地域金融機関系シンクタンクが中核と なることで、大規模マルシェの開催が可 能となり、そこから実店舗も誕生するな ど、波及効果が生まれる。出店希望 は多いものの、事務局からの「出展者 逆指名方式」で決められ、事業全体 の魅力向上の観点からテナントミックス が戦略的に実施される。

18

(株)内 子フレッ シュパー クからり

愛媛県

内子町 1997 地域住民(内子町)

内子町による、今後 の農業のあり方を考 える「内子町知的農 村塾」の活動から設

道の駅を拠点に、特産物直売所、レ ストラン、加工食品販売、農産加工の 4事業を展開する。来場者の8割は松 山市からと地域外からの集客に成功 する。(2019年度 売上高681百万 円、レジ通過者数40.4万人、2020年 時点 従業員数72名、株主数677)

事業目的が、地域農業の活性化であ り、その手段として地域商社を設立。

農産品のトレーサビリティシステムの構 築など、農業の活性化に取り組み、

出荷者運営協議会メンバーは404名 となる。平均1百万円/年・農業生産 者の所得増を実現する。地域に戻っ てきたUターン者の雇用受皿になってい るほか、子供向け自然教育事業等も 実施する。

19

(株)四 万十ドラ

高知県 四万十

1994

地域住民(旧大正 町、旧十和村、旧西

土佐村)

旧大正町、旧十和 村、旧西土佐村の3 町村により設立、

2005年に地域住民 出資等にて民営化

農業の6次産業化による高付加価値 型の商品開発(高級スイーツ等)と販 売、そして農業生産者への生産技術 支援のほか、地域外の人々を含めた 会員制度「RIVER」を構築し、地域の 文化やライフスタイルの地域ブランドを 確立する。(2005年民営化時 株主 数140)

高級スイーツ等への加工を通じ付加 価値を増加させ、生産技術支援によ る原材料の農産品の質と仕入値を引 き上げ、10百万円超の年間所得とな る農業生産者を多数輩出する。2017 年に10年間指定管理を受託していた 道の駅の運営を失注した際、経営者 と地域住民の協働により、クラウドファ ンディングによる資金調達も行い、新た な加工・販売拠点を設立するなど、高 度な経営も展開する。

20 九州農 産物通 商(株)

福岡県

福岡市 2008 福岡県

福岡県が福岡県農 協中央会とともに福 岡県産農産物の輸 出のために設立

福岡県産農産物の輸出事業として取 り組んだが、それだけでは輸出が伸び ないため、九州産、農産物以外のもの に、取扱品を拡大する(これを受けて、

福岡農産物通商から社名を変更)。

また、卸売市場での仕入れでは価格 競争力が生まれないため、産地での直 接仕入れも拡大し、香港、台湾、タ イ、シンガポールへ輸出を拡大する。

輸出のための特殊なノウハウの獲得の ために、地域外から経営者を招聘し、

左記のとおり柔軟に経営改革を進め てきた。結果、当初、30~50百万円 の輸出額で、県より赤字補填がされて いたものが、4億円(2017年度)にまで 成長する。

21 九州農 水産物 直販

(株)

福岡県

福岡市 2015 九州経済連合会

九州内の農協、農 業生産法人からの要 望を受け、農協と民 間企業の出資を受け て設立

九州経済連合会での市場調査の結 果、海外現地での直接販売はリスクが 高いことから回避し、アジア最大手小 売事業者と組み、同社からの発注を 受け、九州経済連合会の地域ネット ワークにより九州産の農産品を中心に 調達し、香港の同社物流センターへ輸 出する事業を確立する。

九州経済連合会の地域内外のネット ワークにより、アジア最大手の小売事 業者とつながり、九州での商品の仕入 れ、国際物流も九州経済連合会の 地域ネットワークにて実施する。

22 糸島農 業協同 組合「伊 都菜彩」

福岡県

糸島市 2007 糸島農業協同組合

従来型の系統流通 に加え、直販という販 売チャネルを作ること で、農業生産者の農 業所得向上を図るた めに直売所「伊都菜 彩」を設立

大消費地への近隣性という利点に加 え、水産物や地元加工品等の品揃え を充実させ、広域集客に成功する。

(2016年 売上高約40億円、来場者 数135万人、糸島市以外からの来店 者数の割合7割)

プライベートブランド商品の開発のほ か、レストランで消費する食材も糸島 産(うどんの麺に使用する小麦も糸島 産)にこだわるなど、農産品の質の高さ に留まらず、取扱い商品の魅力向上と 差別化に注力する。結果として、広域 集客に成功する。

出所:筆者作成

(12)

11 地域商社30社の概要(表1) その4

No 地域

商社 所在 開始年 主な設立者 設立経緯 事業概要 特徴

23 もとDMC(株)くま 熊本県熊本市 2016 (株)肥後銀行

県とともに観光と特 産品開発に注力して いたところ、熊本地震 からの復興も加速さ せるために設立

食と観光で、地域をマーケティングする ため、通販、商談会開催のほか、地域 企業向けにビッグデータを活用した調 査・分析とマーケティング支援を行う。

また、地域連携DMOとして着地型観 光商品の企画・販売、県内のDMO設 立支援も実施する。

実際に店舗を運営するのではなく、地 域産食品と観光の領域にて、デジタル 技術を中心にした分析と、地域金融 機関と地域ネットワークからもたらされ る情報・ノウハウを基としたコンサルに て、地域企業を支援し、地域の活性 化に取り組む。

24

(株)

KASSE JAPAN

熊本県

熊本市 2017 九州産業交通ホール ディングス(株)

県が策定した「くまも と県南フードバレー構 想」に基づく同協議 会への参加を通じ、

県南商品の販路拡 大とマーケティングを 担うものとして設立

グループの広範な経営資源を活用す るものとして当社が設立され、グループ 内のリテール事業や不動産会社が有 する商業施設での販路の提供、プライ ベートブランドの新商品の開発、バス 事業を活用した小ロット物流サービス の提供等が行われる。

協議会により県南産品の販路開拓も 進展したが、小ロット・多品種、そして 人出不足・高齢化が進む地域課題を 解決するために、グループの広範な経 営資源を活用した事業を展開する。

25 Oita Made

(株)

大分県

大分市 2017 (株)大分銀行

別府を中心にアート イベントを手掛ける NPOが行っていた県 内特産品のセレクト 商品の販売事業を 地域金融機関が継 承し、高度化

NPOにより開始されたプロジェクトを、

地域金融機関によりブランドコンセプト を明確化、取扱商品を拡大し、卸・小 売事業を行う。大分市中心部にある 歴史的建築物「旧大分銀行本館(赤 レンガ館)」を直営店舗に改修し、販 売に加え、地域住民、観光客の交流 拠点としても運営する。

有力な地域金融機関が主体となり、

地域内外での事業コーディネイトを加 速させ、複数企業の高度な生産技術 を組み合せ企画・生産する万年筆、

ボールペン、ペンケースなどのオリジナル なコラボレーション商品を開発し、国内 にとどまらず海外からも注文が寄せら れる。

26 (株)一平

「九州パ ンケー

キ」

宮崎県

宮崎市 2006 個人

中心市街地(油津 商店街)活性化で活 躍した個人が、九州 ブランドを確立するた めに起業

九州ブランドの構築を目的に、九州各 県産の雑穀を一種類ずつ入れた「九 州パンケーキ」の販売、カフェ等を運営 する。さらに、廃校小学校を買い取り、

地域ベンチャー企業等のコミュニティ拠 点施設も運営する。

大手通販サイトで部門別月間販売額 トップにもなった「九州パンケーキ」事業 を中心に、リージョナルプロダクト事業

(農産加工品)、レストラン事業、コミュ ニティ事業(地域拠点運営)を展開す る。

27

(株)くし まアオイ ファーム

宮崎県

串本市 2013 個人

地域の農業生産者 が、収入を増やすた め系統流通から離 れ、全国での営業活 動を展開する中で輸 出事業を開始し設

生産している5品種のさつまいもをブラ ンディングし、生産、加工、卸・小売

(通販)に取り組む。輸出事業にも取 り組み、輸出取扱量で国内トップシェ アを誇る。(2020年 取扱量5,000ト ン、2019年 輸出量1,025トン(全国 シェア約4割))

自らの所得向上のために取り組んでき た販路開拓を、拡大とともにその他の 生産者にも提供し、最先端の出荷場 の新設など、実需を伴った成長戦略を 実施している。地元大学農学部との 共同研究講座による人材育成、契約 農業生産者の事業支援にも取り組 む。

28

(株)沖 縄県物 産公社

沖縄県

那覇市 1993 沖縄県

県内企業の販路開 拓ノウハウが乏しこ と、物流コストが高い こと等の条件不利を 克服するため、沖縄 県、県内主要民間 企業により設立

県内で3店舗の直営店、県外で5店 舗の直営店と3店舗の特約店、通販 事業を運営し、県産品の卸・小売事 業を営む。

県内企業は中小企業が多く、小ロット の移出になるため物流コスト負担が重 いため、県産品の安定的な供給体制 の確立、県外市場開拓を目指して設 立された。地域金融機関からの助言 等のほか、営業活動を継続していく中 で販路も拡大、設立初年度の取扱額 10億円程度から現在の取扱高(2019 年度 総取扱高5,390百万円)に至 る。

29 沖縄県 農業協 同組合

「ファー マーズ・

マーケッ ト」

沖縄県

那覇市 2006 沖縄農業協同組合

県内27農協の合併

(2006年)を機に、小 規模農業生産者を 含む多様な農業生 産者が直接消費者 に農産物を販売する 場所として設立

島野菜は地域農業の活性化と沖縄 の食文化を伝えるために重要である が、生産量が少ないため大手流通で は取扱いが難しい。このような小規模 農業生産者にも販売機会を提供する ものとして「ファーマーズ・マーケット」が 設立され、現在11店舗が展開され る。

仕入価格と販売価格を統一する「A コープ」店舗とはブランドを分け、販売 スペースの賃貸事業として整理すること で生産者による自由な価格設定の競 争原理を導入、地域経済の活性化を 図る。また、一般的には流通量が少な い島野菜が豊富に取り扱われることか らも、人気を博す。

30

(株)竹 富町物 産観光 振興公

沖縄県

石垣市 2015 竹富町商工会

新石垣空港ターミナ ルにて竹富商工会に よる店舗が開設、一 定の結果が出た後 に、同商工会を中心 に竹富町の出資も受 けて発展的に設立

零細が多い竹富町の企業では、観光 消費の中心地である石垣市での販売 拠点の確保が難しいため、商工会が 中心となり新石垣空港における店舗 での直販および通販を行う。同様の課 題を抱える与那国町からの依頼を受 け、同町産品も取り扱う。

パイロット事業を実施し、その結果を踏 まえ、ターゲット(観光客)と商品開発 方針(高単価でも受容される商品)を 明確にし、事業を発展させる。事業環 境が極めて厳しい日本の最果ての地 における地域産品のマーケティング事 業として、挑戦を継続する。

出所:筆者作成

(13)

12

成度に応じて、「十分に実現」、「実現」、「概ね実現」の 3 段階とする。(表2、なお、表中 の主体別事業形式については次章にて考察)

1 安定的な運営資金の確保・財務基盤の確立

「安定的な運営資金の確保」については、事業の安定性を確保し、継続性を自ら確立でき るように、収益事業を確立済、あるいはほぼ収支相償となっているかという、まずは一般 的な視点で地域商社30社の「実現」を検証する。そして、地域商社については、既に事業 実績を積み、PL(損益計算書)だけでなく借入やクラウドファンディングによる資金調達 での資産取得などBS(貸借対照表)を活用した事業に取り組むものもあるため、「安定的な 運営資金の確保」に「財務基盤の確立」を追加する。その上で、「十分に実現」するものと しては、自主事業として十分な利益を計上、配当実績、内部留保蓄積などとする。一方、

収益事業を未確立、あるいは収支相償が確保できていなくとも、地方公共団体やスポンサ ー企業からの助成金等で「安定的な運営資金の確保」を実現可能という特徴も踏まえ、こ れを「概ね実現」と評価する。

この視点に基づくと、地域産品の移輸出という一般的な卸・小売業で収支を確保している

「ファーストインターナショナル」や「くしまアオイファーム」のほか、「三陸とれたて市 場」は水産物の新冷凍技術を活用して流通経路を変革し、「あきた森の宅配便」は収穫シー ズン前に受注し、天然山菜の通信販売を山菜採り代行サービスへと事業ポジションを変更 して、価格の引き上げも図っている。他にも、通信販売を主軸に据えて在庫リスクを圧縮 するなどの工夫に基づき、多くの地域商社が「安定的な運営資金の確保・財務基盤の確立」

を実現させており、地域商社による「地域の稼ぐ力の向上」において重要な要素であると 言える。

その中には、事業の多角化や拡大に成功し、「ファーマーズ・フォレスト」や「糸島農業 協同組合「伊都菜彩」」のように十分な利益を確保するほか、「岩手県産」、「吉田ふるさと 村」、「内子フレッシュパークからり」のように配当の実績を有するもの、「四万十ドラマ」

のようにクラウドファンディング等で資金調達を行い固定資産に投資するなど、「十分に実 現」と評価されるものが存在する。

一方で、地域商社による事業での採算よりも、「北海道どさんこプラザ」、「燕三条地場産 業振興センター」、「つやま産業支援センター」、「とくしまマルシェ」のように地域全体で の利益を優先させているものもある。ただし、これらのケースも、地方公共団体やスポン サー企業からの助成金等の継続的な財政支援を受け、「地域の稼ぐ力の向上」へと結びつく 事業を展開している。特に地方公共団体による産業振興策に位置づけられ、事業支援の財 政負担よりも地域全体の利益が大きく、財政支援に関する地域コンセンサスが形成される 場合においては、「安定的な運営資金の確保・財務基盤の確立」が、必ずしも組織単体での 収益確保を求めているわけではないことも確認できる。

参照

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