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PDMS中空球状足場材の成形に用いる加熱回転台の製 作

林, 大吾

九州大学応用力学研究所

http://hdl.handle.net/2324/1956602

出版情報:九州大学応用力学研究所技術職員技術レポート. 19, pp.11-15, 2018-10. 九州大学応用力学 研究所

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権利関係:

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PDMS 中空球状足場材の成形に用いる加熱回転台の製作

林 大吾

要旨

長期派遣先であるエネルギー変換工学分野では、人工材料と細胞組織から成る複合構造体の製作およ びその力学特性評価を通じて再生医療用材料の開発に係る研究を行っており、現在その一環として、心 筋組織の拍動を動力とするポンプ様デバイスの製作を行っている。当該デバイスの作製においては、心 筋細胞の足場材となる樹脂を中空球状に成形する必要があるため、足場材樹脂成形用の加熱回転台を製 作した。本稿では、加熱回転台の製作過程について記すとともに、ポンプ様デバイスの製作手順に関す る概要について説明する。

キーワード

バイオアクチュエータ 心筋ポンプ 金属加工 樹脂成形

1. 心筋組織を用いたポンプ様デバイスについて 1-1. 概要

九州大学応用力学研究所エネルギー変換工学分野では、人工材料と細胞組織から成る複合構造体の製 作およびその力学特性評価を通じて、再生医療用材料の開発に係る研究を行っている。現在取り組んで いるテーマの一つが、心筋組織の拍動を動力とするバイオアクチュエータの開発であり、その一環とし て、心筋細胞を用いたポンプ様デバイス(以下、心筋ポンプ)の製作を行っている。心筋ポンプの概略 図を図 1に示す。心筋ポンプとは、中空球状に成形したポリジメチルシロキサン(以下、PDMS)にキ ャピラリーを固定したものを足場材として、シート状に培養した心筋細胞を貼り付けたものである。心 筋組織の拍動によって球内部の容積が変化することで、ポンプのように機能する。

1-2. 心筋ポンプの製作手順概要

心筋ポンプの製作については、2006 年に東京大学のチームによって論文が発表されている[1]。今回 我々は、当該論文にて紹介されている手法を用いて心筋ポンプの製作を試みた。心筋ポンプの製作にお いては、まずPDMS製の中空球状足場材(以下、足場材)を作製し、その後、心筋細胞シートの貼り付 けを行う。足場材の製作手順に関する概要を図2および以下に示す。

① グルコース粉末を直径5~6mmの球状に成形し、精密ボール盤を用いて穴を開ける。開けた穴に キャピラリー(外径0.4mm、内径0.2mm、PFA製)を通し、加熱融解させた飴状のグルコースを 用いて、グルコース球とキャピラリーを接合する。

② PDMS硬化前原液をグルコース球に塗布する。

1 心筋ポンプ概略図 (左)俯瞰図 (右)断面図

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PDMS 中空球状足場材の成形に用いる加熱回転台の製作 林 大吾

③ PDMSを塗布したグルコース球を定速で回転させながら加熱し、PDMSを硬化させる。

④ PDMSの硬化後、キャピラリーを引っ張って抜去する。ただし、完全には抜去せず、端を球内部 に残す。また、反対側から新たにキャピラリーを挿入する。エポキシ接着剤を用いて、キャピラ リーとPDMS球を接合する。

⑤ キャピラリーの片側から、シリンジを用いて水を注入する。球内部のグルコースは注入された水 に溶解し、反対側のキャピラリーから排出される。最終的にグルコースが全て溶出し、PDMSの 中空球が形成される。

2 PDMS中空球状足場材の製作手順概略(番号は本文中のものに対応)

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2. 加熱回転台の製作

前項の手順③におけるPDMSの硬化では、グルコース球を回転させながら加熱を行っている。足場 材のPDMS膜は厚さが均一であることが望ましく、粘性のあるPDMS硬化前原液を使用して膜厚を均 一に成形するには、塗布した原液がグルコース球上を満遍なく流れながら硬化していくことが求めら れるためである。回転速度に関しては、速すぎると原液が流れずに飛散し、遅すぎると膜厚が均一で なくなる。今回は先述の論文を参考に、約20rpmで回転させることを目標とした。以上の点を勘案 し、加熱回転台製作における要件を以下に示す。

① PDMSを塗布したグルコース球を熱源上に保持する。

② 加熱中、約20rpmでグルコース球を回転させ続ける。

上記要件を満たすため、加熱回転台の構成要素として、熱源およびフレーム部、キャピラリーの保持 具、回転動力部を準備・製作した。

2-1. 熱源・回転台フレーム

熱源には当該分野において所有しているホットプレート(図3)を使用し、フレーム(図4)はアルミ 材をフライス盤で加工して製作した。ホットプレートの寸法に合わせ、グルコース球が天板の2cm上に 位置するようフレームを設計した。フレームには、後述のキャピラリー保持具を取り付けるためのベア リングが装着されており、その対面にはキャピラリーを保持するため、1mm径の穴をあけた樹脂パーツ を取り付けた。この樹脂パーツは当初付いておらず、アルミ板に 1mm 径の穴を開けただけのものであ ったが、長時間回転させた際にアルミ材とキャピラリーの摩擦によりキャピラリーが断裂する恐れがあ ると考え、摩擦低減のために樹脂パーツを作成し取り付けた。

2-2. キャピラリー保持具

0.4mm 径のキャピラリーを保持するため

に、マイクロドリル用のピンバイス(図5)を 使用した。フレームに取り付けたベアリング の径に合わせて、硬質の樹脂でスリーブを製 作し、ピンバイスに取り付けている。後述の回 転動力を用いて、キャピラリーを保持したピ ンバイスを回転させることにより、熱源上で グルコース球が回転する。

3 ホットプレート 4 アルミ製回転台フレーム

5 キャピラリー保持用ピンバイス

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PDMS 中空球状足場材の成形に用いる加熱回転台の製作 林 大吾

2-3. 回転動力部

参考論文では、回転動力としてエバポレータの回転駆動部 を使用していた。エバポレータは回転速度の調整が容易に可 能であるため、当初はこれに倣い、当該分野において所有し ているエバポレータの駆動部(図 6)を使用する予定であっ た。しかし、当該のエバポレータは回転部をピンバイス接続 位置まで回転させることができず、ピンバイスを直接接続す ることが不可能であった。解決策としてプーリーを用いた動 力伝達等を検討したが、回転中の脱輪や装置の肥大化が懸念 されたため、動力としてのエバポレータ使用を断念した。

検討の結果、動力部としてタミヤ製6速ギアボックス(図 7, 8)を使用した。当該のギアボックスは、ギア比を変更する ことで回転数を調整することが可能であり、今回はギア比を 505.9:1に設定し、回転数を約20rpmに調整した。

ギアボックスの回転軸に樹脂製のスリーブを取り付け、そ こに保持具のピンバイスを接合した(図9)。これにより、回 転軸の回転が保持具のピンバイスに直接伝達されるようにし ている。

3. 足場材作製実験における使用

製作した加熱回転台を使用して、足場材の 作成実験を行った。フレーム樹脂パーツ側の キャピラリーについては、結び目を作ること でストッパーとした。しかし、使用中の問題点 として、キャピラリーの結び目とフレームの 樹脂パーツの間に摩擦が起こり、キャピラリ ーにねじれが発生することがあった。これに 対処するため、樹脂パーツの穴およびキャピ ラリーの結び目付近にシリコンオイルを塗布 したところ、摩擦が軽減し、スムーズに回転す るようになった。

6 エバポレータ駆動部外観

7 回転動力部外観 8 フレームに取り付けた際の様子

9 加熱回転台全体図

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4. おわりに

今回、心筋ポンプに用いる足場材成形のため、加熱回転台を製作した。製作の過程で、動力の選定に 悩む場面もあったが、結果的に安価かつ簡便な方法を選択することができた。しかし、足場材の作製実 験においては、PDMS塗布量の多寡や加熱温度・時間等、調整すべき点が多々残っている。今後、この 加熱回転台を用いた実験で最適解が見出せるよう、取り組んでいく所存である。

参考文献

[1] Yo Tanaka, Kae Sato, Tatsuya Shimizu, Masayuki Yamato, Teruo Okano and Takehiko Kitamori, Lab Chip, 2007,7, 207-212

謝辞

本機材製作の機会を与えて頂いた、九州大学応用力学研究所エネルギー変換工学分野の東藤貢准教授 に深く感謝いたします。また、機械工作に関してご指導くださいました禅院実氏に、この場を借りて厚 く御礼申し上げます。

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参照

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