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相対的業績評価における ウェイト設定のタイミング

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Academic year: 2022

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(1)

1.はじめに

実務では多くの企業が経営者に対する相対的業績評価を利用している。た とえば,L3HARRIS Technologies Inc.は,総株主利回りをS&P500の他社 と比較して経営者の業績を決定し,報酬とリンクさせている1)。また,金融 庁が示す記述情報の開示の好事例集によると,アステラス製薬が特定の企業 群との比較をとおして経営者の報酬を決定していることがわかる2)。このよ うに,経営者の業績評価が公開されている現在,相対的業績評価を使って経 営者をどのように評価すればよいかは重要な問題となっている。

日本でも,経営者報酬においてどのような業績評価が行なわれているかを 開示することが求められるようになった。また,アメリカでもこのような情 報開示が求められている。しかし,どちらの国でもこの情報を開示するタイ ミングについて,一定の制約はあるものの企業に任されている。これは当 然,相対的業績評価についても同様である。多くの企業が製品市場での競争 に直面する中,このような意思決定のタイミングは競争に大きな影響を与え

相対的業績評価における ウェイト設定のタイミング

1)L3HARRIS Technologies Inc.2021年度 Proxy statement より(2021年4月27 日最終アクセス)URL:https://www.l3harris.com/sites/default/files/2021-03/

L3Harris̲2021̲Proxy̲Statement.pdf

2)金融庁「記述情報の開示の好事例集:『役員の報酬等』の開示例」2019年11月 29日(2021年7月12日最終アクセス)URL:https://www.fsa.go.jp/news/r1

/20191220/02̲7.pdf

キーワード:相対的業績評価,委任ゲーム,複占競争,内生的タイミング・ゲーム,

数量競争

濵 村 純 平

87

(2)

る。このことから,以下の研究課題を設定する。

研究課題:製品市場での競争に直面する企業は,相対的業績評価における業 績指標の内容をどのタイミングで決定して開示すればよいのか。

これを分析するために,本研究はHamilton and Slutsky(1990)の内生的 タイミング・ゲームを応用する。本研究では業績評価に関する情報を公開す るタイミングと意思決定するタイミングは同じだと仮定し,数量競争に直面 し相対的業績評価を利用する企業がどのような意思決定を行なうかを分析し た3)。分析の結果,先行研究であるHamilton and Slutsky(1990)と一致し,

両企業が早いタイミングを選択することがわかった。しかし,業績評価の選 択のタイミングを分析した研究はないため,本研究は新たな知見を相対的業 績評価研究に追加しているといえる。

寡占競争を仮定した相対的業績評価研究としては,Fumas(1992)と Aggarwal and Samwick(1999)が中心的な研究であり,それ以降多くの研 究が追随している(Fanti et al.,2017;Jansen et al.,2007;Manasakis et al.,

2010;Matsumura et al.,2013;Miller & Pazgal,2001,2002など)。その中 で,Chirco et al.(2013)とHamamura(2021a),Tanaka(2014)は逐次手 番での相対的業績評価を考察している。また,Lu(2011)は公企業が存在 する混合寡占での,私企業による相対的業績評価を分析した。Lu(2011)

は内生的タイミング・ゲームを考察しているが,私企業同士での相対的業績 評価における内生的タイミング・ゲームを考えた研究はない。

本研究の貢献は,Lu(2011)を含めて,委任ゲームにおける内生的タイ

3)観察不可能な相対的業績評価は企業の行動に影響を与えないことがわかっている

(Hamamura,2021b)。したがって,決定された情報が公開されるタイミングの 方が重要な意思決定となる。各企業が予想する相対的業績評価に基づいて分析を 行なうよりも,各企業の情報公開と意思決定のタイミングが同時だとして分析を 行なう方が問題を単純に解くことができ,結果も変わらない。そのため,本研究 では,企業による相対的業績評価の決定と公開のタイミングが同じだとして分析 を行なう。

88 桃山学院大学経済経営論集 第63巻第2号

(3)

ミング・ゲームの研究を参照することでより明確になる。委任ゲームは Vickers(1985)やFershtman and Judd(1987)に端を発する。彼らの研究 に基づき,いくつかの委任ゲーム研究で内生的タイミング・ゲームが分析さ れている(Matsumura & Ogawa,2014;Pal 1998など)。特に混合寡占研 究では,Lu(2011)のほかにも内生的タイミング・ゲームを応用した研究 が多い。そのため,相対的業績評価研究にも内生的タイミング・ゲームを応 用することは可能だと考えられるが,これまでに応用されていないため,本 研究はこれまでの研究と異なる新たな取り組みを行なっているといえる。

過去の内生的タイミング・ゲームを応用した委任ゲーム研究では,その均 衡の性質が注目されている。たとえば,Pal(1998)は混合寡占を考えたと き,均衡において逐次手番が発生することを示している。このように混合寡 占研究では,先行研究であるHamilton and Slutsky(1990)と異なる結果が 提示されている。本研究は分析の結果,両企業が先発者優位を得ようとした 結果,早いタイミングで相対的業績評価を決定することがわかった。この結 果は確かにHamilton and Slutsky(1990)と同様の結果である。しかし,

Hamilton and Slutsky(1990)は戦略変数を選択するタイミングを考えてい るのに対し,ここでは業績指標を選択するタイミングを考えている。これは 管理会計に関連する指標を考慮しているといえるため,管理会計研究に対し て一定の貢献をもつといえるだろう。

2 .モデル

市場に企業が2社存在し,両企業とも経営者とオーナーにわかれている。

ここでは,オーナーが経営者に経営を委任する委任ゲームを考える。経営を 委任された経営者は,オーナーによる業績評価に基づいて意思決定を行な う。2つの企業を企業1と2としたとき,企業

"

(=1,2)の利潤

"

"は,

"

"

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"

! ! " $

", (1)

となる。このとき,#"は企業

"

の製品の市場価格,!

!#

は製品を製造する

相対的業績評価におけるウェイト設定のタイミング 89

(4)

際の限界費用,)&は企業

&

の製品の数量を表わす。オーナーは式(1)で表わ される利潤を最大にしたいと考えている。

続いて,オーナーによる経営者の業績評価を設定する。本研究では,オー ナーは経営者に対して相対的業績評価を適用していると仮定する。つまり,

自社の利潤だけでなく,ライバル企業の利潤を利用して業績が決定される。

ここで経営者は,

!

&

#%

&

" $

&

%

', (2)

により業績が決定される。このとき,$&は企業

&

の経営者に対する業績評価 における,ライバル企業の利潤へのウェイトである。そのため,経営者は式

(2)を最大にするように意思決定を行なう。

本研究では,市場で数量競争が起こっていると仮定する。これから,両企 業は需要関数,

(

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, (3)

に直面すると仮定する。ただし,#

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は需要関数の切片,$

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は需要 関数の傾き,&は製品の代替性の程度!#

"& $$"

,)'はライバル企業の数 量だとする。

本研究は,オーナーが業績評価を決定して発表するタイミングを内生化す る。そうすると,全部で4つの段階があると考えることができる。まず,第 1段階でオーナーは業績評価を決定するタイミングを決める。このとき,

オーナーは早く決める(公開する)"

#$

か,遅く決める(公開する)

" #%

を選択できる。もし,企業

&

"

&

#$

を選択したとき,第2段階では企業

&

のオーナーによってライバル企業の利潤へのウェイト

$

&が決定される。続 いて,もし企業

&

"

&

#%

を選択したとき,第3段階で企業

&

のオーナーに よってライバル企業の利潤へのウェイト

$

&が決定される。なお,"

#$

を 選択した企業は第3段階において,"

#%

を選択した企業は第2段階におい てそれぞれ意思決定を行なわない。加えて,すべての企業は相対的業績評価

90 桃山学院大学経済経営論集 第63巻第2号

(5)

が決定されたタイミングで開示も行なう。そして,第4段階では両企業の経 営者が数量を決定する。なお,先に決定された変数はあとの段階から観察可 能で,変更できないと仮定する。加えて,本研究では情報を公開するタイミ ングと意思決定するタイミングは同じだと仮定する。

3 .分析

ここでは設定したモデルの分析をバックワード・インダクションにより行 なう。オーナーが決定したタイミングが同時手番か逐次手番かによってわ け,その結果を比較する。なお,

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#

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$

" # !# ! #"

のケースと

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#

! !

$

" # !$ ! $"

のケースでは結果が変わらないので同時手番のケースでまとめて分析する。

また,利潤関数の対称性から,

! !

#

! !

$

" # !# ! $"

のケースを分析し,その結 果について

#

$

を読みかえれば!

!

#

! !

$

" # !$ ! #"

のケースの結果も得るこ とができるので,逐次手番のケースとしてまとめて分析する。なお,それぞ れのケースでの結果を変数に上付文字!

!

#

! !

$

"

をつけて表わす。

3.1 同時手番

まずは同時手番のケースを分析する。最初に第4段階の数量決定から考え る。つまり,式(2)で表わされる目的関数を最大化する経営者の意思決定を 考える。式(2)に需要関数を代入し,数量について微分して両企業の一階の 条件を求める。そしてその結果を連立して解くと,

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"

, (4)

を得る。

続いてオーナーによる

"

の決定を考える。このとき,

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#

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$

" # !# ! #"

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#

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$

" # !$ ! $"

では結果が同じになることには注意が必要である。そのた

め,ここでは!

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#

! !

$

" # !# ! #"

のケースのみを考える。式(4)の結果を企業 の利潤関数である式(1)に代入し,"%について最大化する。そうすると,

相対的業績評価におけるウェイト設定のタイミング 91

(6)

図1.RPEがないときの最適反応関数

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図2.RPEがあるときの最適反応関数

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, (5)

となる。つまり,このケースでは,Aggarwal and Samwick(1999)の伝統 的な結果と同様の結果を得る。すなわち,数量競争においては,ライバル企 業の利潤に負のウェイトを乗せるとわかる。

第1段階における,##

#

$の戦略的関係を特定すると,

&

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$

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, (6)

となる。これから,##

#

$は戦略的代替関係にあるとわかる。したがっ て,競争相手がウェイトを上げると,自身はウェイトを下げることになる。

以下の図1と2を利用して,負の

#

を設定するメカニズムを説明する。

図1には相対的業績評価(RPE)がないときの,通常の数量競争における 最適反応関数が描かれている。この図から,戦略的代替関係にある競争で は,企業1が数量を

%

%!から

%

%#

に増加させると,ライバル企業は数量を

%

&!

から

%

&#へと減らし,均衡での数量が"

%

%#

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&#

#

となる。戦略的代替関係にあ

る競争では,自社が数量を増やせばライバル企業の残余需要を奪うことがで

92 桃山学院大学経済経営論集 第63巻第2号

(7)

きるため,両企業は数量を高めることで市場シェアを得たいと考えている。

しかし,コミットメント・デバイスがなければ数量を増やすことが難しい。

これに対して,企業は相対的業績評価を利用できれば式(4)のように最適反 応関数が変化させることができる。このとき,相対的業績評価はライバル企 業に攻撃的な戦略をとることを知らせるコミット・デバイスとして機能して いる。これから,両企業が負の

"

を選択する。図2は,両企業が負の

"

を 利用して多くの数量を供給することにコミットできることを示している。負 の

"

は最適反応関数を

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'から

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に変化させ,

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%!!

#

が均衡で選択さ れる。実は,これから本研究で得られる結果は,このように

"

が最適反応 関数を変化させる効果から説明できる。すなわち,企業はライバル企業の残 余需要を奪い,市場シェアを高めて利潤を改善したいと考えている。

式(5)の結果を利用して,このケースでの結果を求めると,

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を得る。この結果を利用して,オーナーによる最適な意思決定のタイミング を考える。

3.2 逐次手番

続いて,逐次手番のケースを考える。ここでは,

" #

$

! #

%

# # "$ ! %#

のケー スのみを分析し,その結果の1と2を読みかえることで逐次手番での結果を 求める。ただし,このケースでも第4段階での両企業による数量決定の結果 は変わらない。したがって,ここでは式(4)の結果を利用して分析を進める。

それでは,

" #

$

! #

%

# # "$ ! %#

のケースを考える。このとき,第3段階で企 業2が意思決定を行ない,第2段階で企業1が意思決定を行なう。そのた め,まずは企業2の意思決定を考える。企業2は第3段階で最大化問題,

相対的業績評価におけるウェイト設定のタイミング 93

(8)

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(8)

に直面する。これを解くと,

"

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#

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& ! !$ " $ "!# " "

#

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, (9)

となる。

次に,企業1による第2段階での

"

#の決定を考える。式(9)を企業1の利 潤関数に代入して,企業1のオーナーの最大化問題を考える。そうすると,

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(10)

となる。これを解くと,

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$

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となる。

以上の結果を利用して最終的な結果を求めると,

"

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(12)

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94 桃山学院大学経済経営論集 第63巻第2号

(9)

を得る。なお,ライバル企業の利潤へのウェイト

%

を除くすべての変数が

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%

! '

&

$#

において正になる。この

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の閾値を

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としておく。

ここで

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について考えると,先発者が設定する

%

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%

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は常に負に なるが,後発者が設定する

%

$!%!$"

%

%!$!%"

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において正になる。

この結果はHamamura(2021a)が示した結果と一致する。戦略的代替関係 下では,不利な企業(フォロワー)はリーダーが先発者優位を得るので,多 くの市場シェアを取ることができない。このとき,不利な企業の数量は

'

の増加に伴って減少する。相対的業績評価を使用すると,各企業は攻撃的な 戦略にコミットすることで相手企業の残余需要を減らすことができる。ここ では,リーダーが大きく市場シェアを獲得するために

%

を小さくすること で,フォロワーの残余需要を減らす。このリーダーの行動を前提にすると,

戦略的代替性からリーダーが

%

を小さくしたとき,フォロワーは

%

を大き くする。特に,製品の代替性の程度

'

が大きいとこの効果は強くなる。そ の結果,フォロワーはリーダーの極端な

%

に対抗して,正の

%

を設定する。

このように

'

が大きいとき,リーダーが設定する

%

! $

よりも小さく なっている。このような極端な負の

%

により,フォロワーが正の

%

を選択 する。すなわち,リーダーの極端に攻撃的な戦略は,フォロワーが少しでも 相対的業績評価を利用して不利を解消しようとするため,フォロワーの協調 を引き出すことになる。

3.3 比較

それでは,これまでの結果を利用してオーナーによる最適な意思決定のタ イミングを考える。そのために,各企業の最適反応戦略を考える。まず,企 業2が

!

%

#$

を選択しているときの企業1の最適反応戦略を考えるために,

&

$!$!$"

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$!%!$"

を計算する。そうすると,

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$!$!$"

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(13)

相対的業績評価におけるウェイト設定のタイミング 95

(10)

となる。これから,$$!$!$"

"$

$!%!$"

だとわかり,ライバル企業が

!

%

#$

を選 択しているときには,自身も

!

$

#$

を選択するのが最適だとわかる。これ は,相手が

!

%

#$

を選択しているときに自身が

!

$

#%

を選択すると,ライ バル企業に製品市場で先発者優位を与えてしまうためである。このとき,ラ イバル企業はウェイト

#

%を利用して,自社の残余需要を減らす戦略を選択 する。その結果,自社の利潤が低下してしまう。なお,ここでは企業1の最 適反応戦略を考えたが,利潤関数の対称性から,企業2も同様の最適反応と なる。そのため,企業2は相手が

!

$

#$

を選択しているときに,!%

#$

を 選択するのが最適になる。

次 に,企 業2が

!

%

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を 選 択 し て い る と き を 考 え る。そ の た め に,

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を計算すると,

$

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(14)

となる。したがって,$$!$!%"

"$

$!%!%"

となり,ライバル企業が

!

%

#%

を選択 しているときには,企業1は

!

$

#$

を選択するのが最適だとわかる。これ はやはり,ライバル企業が

!

%

#%

に意思決定をしていれば,!$

#$

を選択 することで先発者優位を得ることができるためである。

以上の結果から,

! !

$

! !

%

" # !$ ! $"

が均衡において選択されることがわか る。この結果は両企業が先発者優位を得ようとした結果である。逐次手番の ゲームでは,フォロワーは大きな市場シェアを得ることができないとわかっ ており,%が大きいとき,この不利は正の

#

を選択することでやっと緩和で きるようになる。加えて,逐次手番の結果から,リーダーは

#

を使って大 きな優位性を得ることができる。数量とウェイトの戦略的代替性よりリー ダーが大きな市場シェアを得るとき,フォロワーは市場シェアを大きく明け 渡すことになる。したがって,次の段階でリーダーは多くの製品を供給する ために,自分が有利になる小さな

#

を設定する。その結果,リーダーは数 量競争で有利になる。この優位性を得るために両企業が

!

%

#$

を選択する。

すなわち,相対的業績評価の最適反応関数をシフトさせる効果がこの結果を

96 桃山学院大学経済経営論集 第63巻第2号

(11)

導いている。第3.1節でのべたように,企業はコミットメント・デバイスを 利用して市場シェアを得ようとする。これから,企業はコミットメント・デ バイスとして先に選択することを決定する。なお,戦略的代替関係にある競 争で両者が早いタイミングで動くという結果 はHamilton and Slutsky

(1990)と一致する。

4 .議論

本研究では,ライバル企業の利潤へのウェイトを決めるタイミングを内生 化して,数量競争での相対的業績評価を分析した。その結果,各企業が早い タイミングで意思決定を行なうことがわかった。これは,先行研究である Hamilton and Slutsky(1990)と整合的な結果である。

本研究の重要な貢献は,相対的業績評価における業績評価のタイミングの 決定を考えたことそのものである。会計研究に対して,内生的タイミング・

ゲームはこれまでほとんど応用されていない。そのため,本研究は会計研究 への内生的タイミング・ゲームの応用可能性を提示しているのである。この 結果に基づけば,会計の実証研究に対して新たな含意を提供できる可能性が ある。たとえば,Yasukata(2019)は「日本企業において,決算日とその内 容を決算短信で報告するタイミングを考えると,その差は短くなってきてい る」(Yasukata,2019,88,筆者訳)とのべている。これについてHamilton and Slutsky(1990)をそのまま適用することは難しいが,本研究を利用す れば説明できる可能性がある。これは,本研究が会計で公表される情報を公 開するタイミングに焦点を当てているからである。

ただし,本研究にはいくつかの限界がある。本研究の結果は数量競争のみ で 得 ら れ た 結 果 な の で,価 格 競 争 に つ い て は 考 慮 し て い な い。ま た,

Hamamura(2021a)のように両企業にコストの差があると仮定した研究を 行なうこともできる。これらは将来の研究として考えることができるだろ う。

相対的業績評価におけるウェイト設定のタイミング 97

(12)

付記

本研究はJSPS科研費JP18K12909およびJP21K13409の助成を受けた成果の 一部である。

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95.

(はまむら・じゅんぺい/経営学部准教授/2021年7月15日受理)

相対的業績評価におけるウェイト設定のタイミング 99

(14)

Endogenous Decision Timing of the Weight Placed on Competitorʼs Profit Under Relative

Performance Evaluation

HAMAMURA Jumpei

Abstract

This study examines relative performance evaluation by application of a delegation game in which a firm owner delegates management to a manager. In earlier relative performance evaluation studies, the timing of the ownerʼs weight placed on the competitorʼs profit is given exogenously.

By contrast, in this study, we endogenously assume the decision for relative performance evaluation. We show that two firms facing a duopoly make the earliest relative performance evaluation decisions under quantity competition. Although this result is not surprising, this study not only suggests the applicability of endogenous timing games in accounting research; the results might also provide a theory to explain why firms announce their earnings earlier.

Keywords : relative performance evaluation, delegation game,

duopoly competition, endogenous timing, quantity competition

100 桃山学院大学経済経営論集 第63巻第2号

参照

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