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Key words: infection stone, biofilm, urease, glycocalyx

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(1)

感染結石の原因 とな る細菌 の性状 に関す る検討

岡 山大 学 医学 部 泌尿 器 科(主 任:大 森 弘之 教 授)

林 俊 秀

(平成7年3月22日 受 付)

(平成7年5月8日 受 理)

Key words: infection stone, biofilm, urease, glycocalyx

要 旨

尿 路 結 石 手 術 患 者48例 よ り採 取 した 結 石 を対 象 と して,結 石 培 養 と電 子 顕 微 鏡 的 観 察 を行 っ た .結 石 培 養 よ りえ られ た 結 石 内 細 菌36株 を 一 次 性 感 染 結 石 由 来 細 菌19株(A-1群)と 代 謝 性 結 石 由 来 細 菌17株

(A-M群)に 分 け,そ のurease産 生 能 とglycocalyx産 生 能 に つ い て,結 石 表 面 付 着 菌49株(B群)と 比 較 検 討 した.glycocalyx産 生 能 は,ト ル イ ジ ン ブ ル ー 簡 易 定 量 法(以 下toluidine blue)と サ フ ラ ニ ン 染 色 法(以 下safranine)に よ り検 討 した.結 石 の 電 子 顕 微 鏡 的 観 察 で は一 次 性 感 染 結 石 の20例 全 て と代 謝 性 結 石28例 中13例(46.4%)に 細 菌biofilmの 形 成 を認 め た.結 石 単 位 で のurease産 生 率 はA-1群 が 6/14(43.9%),A-M群 が4/13(30.8%),B群 が4/32(12.5%)の 陽 性 率 で あ り,A-1群 とB群 間 に 有 意 差(p<0.05)を 認 め た.同 じ く,glycocalyx (toluidine blue)産 生 率 はA-I群 が9/14(64 .3%),A-M 群 が11/13(84.6%),B群 が10/32(31.3%)の 陽 性 率 で あ っ た.ま たglycocalyx (safranine)産 生 率 も 同 様 に,A-1群 が10/14(71.4%),AM群 が9/13(69.2%),B群 が9/32(28.1%)の 陽 性 率 で あ り, glycocalyx産 生 性 に 関 し て は,toluidine blue,safranineの い ず れ か の 方 法 に お い て もA-1群,A-M群

と もB群 に 比 して 有 意 に 高 い産 生 率 を 示 した.以 上 よ り,一 次,二 次 性 感 染 結 石 の い ず れ に お い て も, 結 石 の 形 成 な い し増 大 に細 菌 のglycocalyx産 生 能 が 強 く関 与 す る も の と考 え られ た .

近 年,尿 路 結 石 治 療 の 主 流 は,結 石 をen blocに

摘 出 す る開 放 性 手 術 か ら,結 石 を破 砕 して摘 出 な

い し排 出 さ せ る 内 視 鏡 的 治 療 やExtracorporeal

shock wave lithotripsy (ESWL)へ

と移 行 した.

その 結 果,結

石 内細 菌 の 存 在 が,術

中,術 後 の感

染 症 の発 症,残

存 結 石 の増 大 お よ び結 石 の 再 発 に

大 き な影 響 を及 ぼす 問 題 と し て注 目 を 浴 び る よ う

に な った1)2).

struviteやcarbonate

apatiteな ど の い わ ゆ る

一 次性 感 染 結 石 で は

,従 来 よ りそ の 形 成 にurease

産 生 菌 の 密 接 な 関 連 性 が 注 目 さ れ て き た3)が,蔭

酸 カ ル シ ウム や 尿 酸 な どの代 謝 性 結 石 の結 石 培 養

に お い て も,そ の 約1/4に 結 石 内細 菌 を認 め る との

報 告 が あ る4).ま たurease活

性 を示 さな い細 菌 が

結 石 中 よ り分 離 さ れ る頻 度 も決 し て低 くな く5),

これ ら結 石 内細 菌 の,結 石 形 成 そ の もの に及 ぼ す

重 要性 が 指 摘 さ れ て い る.

一 方

,最 近 で は,結 石 成 分 の 如 何 を 問 わ ず,結

石 内 に存 在 す る細 菌 自体 の 産 生 す るglycocalyx

に被 覆 さ れ た 細 菌 の コ ロ ニ ー で あ るbiofilmが,

感 染 結 石 の 形 成 に重 要 な 役 割 を果 た し て い る可 能

性 も指 摘 され て い る6)7).

今 回著 者 ら は,電 子 顕 微 鏡 的 に尿 路 結 石 内 の細

菌biofilm形

成 の有 無 を観 察 す る と と も に,結 石

培 養 よ りえ られ た 結 石 内 細 菌 のurease産

生 能 お

よびglycocalyx産

生 能 に つ い て 検 討 を加 えた .

材 料 と方 法

1. 対 象

1991年2月

よ り1993年11月 まで の 間 に 岡 山 大 学

別 刷 請 求 先:(〒700)岡 山 市鹿 田町2-5-1 岡 山大 学 医学 部 泌尿 器 科 学教 室 林 俊 秀

(2)

医 学 部 泌 尿 器 科 お よび その 関 連 病 院 に て,術 前 の

尿 培 養 に て細 菌 が103/ml以

上 認 め られ た も の,な

い し尿 培 養 が103/ml未

満 で も尿 中 白 血 球 数 が5

コ/HPF以

上 で あ っ た も の で,尿

路 結 石 手 術

(ESWLを

含 む)を 施 行 さ れ た48症 例 を対 象 と し

た.な

お,検 尿,尿

培 養 は,カ テ ー テ ル 非 留 置 の

患 者 で はカ テ ー テ ル 尿 な い し中 間 尿 で,カ

テ ー テ

ル 留 置 中 の 患 者 で は カ テ ー テ ル 尿 で行 っ た.

2.結 石 培 養

採 取 した 結 石 は 原則 と して3分 割 し,1片

を結

石 分 析(赤

外 線 分 光 分 析)に,1片

を走 査 型 電 子

顕 微 鏡 観 察 に,あ

との1片

は 結 石 培 養 に供 した.

結 石 培 養 はNemoy

and Stamyの

方 法8)に準 じ て

施 行 し た.す

な わ ち,採 取 した 結 石 片 を無 菌 的 生

理 食 塩 水 で3回 洗 浄 の 後,生 理 食 塩 水 中 で 結 石 を

crushし,そ

の液 を直 ち に培 養 し,え られ た細 菌 の

菌 数 が,crush直

前 の 洗 浄 液 の 培 養 よ り え られ た

細 菌 数 よ り10倍 以 上 多 く,し か も,走 査 型 電 子 顕

微 鏡 に て そ れ に相 当 す る結 石 内細 菌 が 認 め られ た

場 合,同 定 され た 細 菌 を結 石 内細 菌(A群)と

て 採 用 した.一 方,crush前

の洗 浄 液 の 培 養 よ りえ

られ た 細 菌 の う ち,crush後

の 培 養 に て 分 離 され

な か っ た菌 種 を結 石 表 面 付 着 菌(B群)と

して 集

計 した.ま た,crush後

の 細 菌 数 がcrush前

の細 菌

数 よ り少 な く,し か も,走 査 型 電 子 顕 微 鏡 に て そ

れ に相 当 す る菌 種 が 認 め られ な い場 合 も結 石 表 面

付 着 菌(B群)と

して採 用 した.な お 上 記 に 該 当

しな い 分 離 菌 は今 回 の 解 析 か ら除 外 した.

3.走 査 型 電 子 顕 微 鏡 に よ る観 察

結 石 の電 子 顕 微 鏡 標 本 は,2.5%グ

ル タ ー ル ア ル

デ ヒ ド-Phosphate buffer saline(以 下PBS,pH

7.4)で37℃2時

間 固 定 し,2%タ

ンニ ン酸-PBS

(pH7.2)お

よび1%四

酸 化 オ ス ミウム-PBS(pH

7.4)で 二 重 固 定 後,ア

ル コー ル 系 列 で 脱 水.酢

イ ソア ミル に 置 換 後 臨 界 点 乾 燥,白

金 パ ラ ジ ウム

イ オ ン コ ー テ ィ ン グ を経 て,走 査 型 電 子 顕 微 鏡(日

立 製 作 所S-570型)に

て 観 察 した.

4.結 石 培 養 検 出 菌 の 性 状 の検 討

結 石 培 養 よ りえ られ た細 菌(A群)と

結 石 表 面

付 着 菌(B群)と

し て 同定 され た細 菌 につ き,そ

れ ら のurease産

生 能 とglycocalyx産

生 能 に つ

い て 比 較 検 討 し た.ま た,A群 の 細 菌 に つ い て は, 結 石 形 成 に 細 菌 が 強 く 関 与 し て い る と考 え られ て い る 一 次 性 感 染 結 石(Infection stone:I群)由 来 の 細 菌(A-I群)と,結 石 形 成 の 段 階 に 細 菌 が 直 接 関 与 し な い と考 え ら れ て い る 代 謝 性 結 石(Meta-bolic stone:M群)由 来 の 細 菌(A-M群)に 分 け て 比 較 検 討 し た.

urease産 生 能 はurease確 認 用 尿 素 培 地(栄 研 化 学)を 用 い て 定 性 的 に 判 定 し た.glycocalyx産 生 能 は,以 下 の2種 類 の 方 法 で 検 討 し た.(1)ト ル イ ジ ン ブ ル ー 簡 易 定 量 法9)(以 下toluidine blue); Trypticase soy agar(以 下TSA)で20時 間 培 養 後 の 細 菌 を,試 験 管 に 分 注 し た0.25%glucose含 有 のTrypticase soy broth(以 下TSB)中 に 混 和 し,McFarland No.2の 濁 度 に 調 整 し た.こ れ を 37℃ で24時 間 静 置 培 養 し た 後,菌 液 を 捨 て,1mlの 蒸 留 水 で2回 洗 浄 後,0.1%ト ル イ ジ ン ブ ル ー 液 を 加 え て 室 温 で30分 静 置.蒸 留 水 に て2回 洗 浄 後, 0.1%HCl lmlを 加 え 室 温 で30分 間 静 置 し た 後, 590nmの 吸 光 度 を 測 定 し た.な お 判 定 は 吸 光 度 0.400未 満 を(-),0.400以 上0.600未 満 を(+), 0.600以 上 を(++)と し た.(2)サ フ ラ ニ ン 染 色 法(以 下safranine); Christensenら の 方 法10)に 従 い, TSAで20時 間 培 養 後 の 細 胞 を,ポ リ ス チ レ ン 製 容 器(24穴 マ ル チ ウ エ ル プ レ ー ト,Falcon(R))に 分 注 し たTSB中 に 混 和 し,McFarland No.1の 濁 度 に 調 整 し た.こ れ を37℃ で24時 間 静 置 培 養 し た 後,菌 液 を 捨 て,PBS(pH7.0)に て1回 洗 浄 後, 0.1%サ フ ラ ニ ン 液 を 加 え て 室 温 で30分 静 置. PBSで2回 洗 浄 後,プ レ ー ト壁 へ の 付 着 の 程 度 を (-)(±)(+)(++)の4段 階 に 肉 眼 的 に 判 定 し た. 成 績 1.対 象 症 例 の 背 景 対 象 症 例 は48例 で,性 別 は 男 性30例,女 性18例 で あ っ た.年 齢 は 男 性33∼90歳(平 均62.4歳),女 性41∼83歳(平 均62.9歳)で,結 石 存 在 部 位 は 腎 が27例 と最 多 で,尿 管7例,膀 胱14例 で あ っ た. 腎 結 石27例 の う ち12例 は 珊 瑚 状 結 石 で あ っ た.ま た こ れ ら の 結 石 症 例 の う ち,体 外 留 置 カ テ ー テ ル (腎 痩,尿 管 痩,尿 道 カ テ ー テ ル)の 留 置 中 で あ っ

(3)

Fig. 1 SEM of cut surface of urinary stones: (a) S. epidermidis biofilm embedded in apatite

bladder stone (Group I), (b) K. Pneumonia and E. faecalis biofilm embedded in struvite renal

stone (Group I), (c) MRSA biofilm embedded in renal stone of calcium oxalate (Group M),

(d) E. faecalis and non-fermentative

gramnegative

rod biofilm embedded in renal stone of

calcium oxalate (Group M)

(a) (c) (b) (d)

た もの は,腎 結 石9例,尿

管 結 石1例,膀

胱 結 石

8例 の 計18例(37.5%)で

あ った.治 療 法 別 で は

腎,尿 管 結 石 で は 経 皮 的 腎尿 管 砕 石 術 が そ れ ぞ れ

19例,6例

と大 半 を 占 め て い た .膀 胱結石 で は9

例 が 経 尿 道 的 砕 石 術,5例

が 膀 胱 高 位 切 開 に よ る

膀 胱 切 石 術 で あ っ た.

(4)

Table 1 Classification of bacteria studied according to stone culture and SEM results

結 石 分 析 の 結 果 は,燐 酸 マ グ ネ シ ウ ム ア ン モ ニ ウ ム(MAP,struvite)を 主 成 分 とす る も の4例, 燐 酸 カ ル シ ウ ム(Ca-P, carbonate apatite)を 主 成 分 とす る も の10例,ま た そ れ ら の 混 合 結 石6例 で あ り,I群 の 結 石 が20例(41.7%)を 占 め て い た. ま た 蔭 酸 カ ル シ ウ ム(Ca-Ox)な い し蔭 酸 カ ル シ ウ ム を 主 体 と す る 混 合 結 石 が24例,尿 酸 が2例,シ ス チ ン が2例 で あ り,M群 の 結 石 は28例 で あ っ た. 2.結 石 割 面 の 電 顕 的 観 察

Fig.1(a)はCarbonate apatite膀 胱 結 石(I群) 例 の 電 顕 像 で あ る.結 石 割 面 の 全 体 に 球 菌biofilm を 認 め た.細 菌 と結 晶 部 分 は 連 続 性 に 移 行 し そ の 境 界 は 判 然 と せ ず,細 菌biofilm自 体 が 結 石 そ の も の の 様 に 観 察 さ れ た.な お,こ の 症 例 は 結 石 培 養 に てStaphylococcus epidemidisが 同 定 さ れ た. Fig.1(b)はMAP-とCa-Pよ り な る 珊 瑚 状 結 石(1群)例 の 電 顕 像 で あ る.球 菌 と桿 菌 の 混 在 す るbiofilmが 結 石 割 面 の 全 体 に 認 め ら れ,結 晶 表 面 お よ び 結 晶 間 に は 線 維 状 の 構 造 物 を 認 め た.こ の 症 例 で は 結 石 培 養 に てurease産 生 性 のKleb-siella pneumoniaeとEnteroccocus faecalisが 分 離 さ れ た.

Fig.1(c)は 術 前 の 尿 培 養 と 結 石 培 養 に て methicillin-resistant Stophylococcus aureus(以 下 MRSA)が 検 出 さ れ た,Ca-Oxを 主 成 分 とす る 腎 結 石(M群)例 で あ る.結 石 割 面 の 観 察 で は, Ca-Oxの 結 晶 の 間 に,一 部 結 石 構 造 の 異 な る 部 分 が 存 在 し,球 菌 の 集 籏 像 で あ る と こ ろ のbiofilm

と,そ れ をマ トリ ッ ク ス と した 結 石 層 を認 め た.

また球 菌 の ぬ け た鋳 型 と思 し き陥 凹 像 も多 数 認 め

た.経 過 よ り,代 謝 結 石 手 術 の た め の尿 路 操 作(経

皮 的 腎砕 石 術)の 際,MRSAが

感 染 し二 次 的 感 染

(5)

Table 3 Urease activity among bacteria isolated from stones

*p<0 .05

Table 4 Glycocalyx (toluidine blue) producibility

among bacteria

iso-lated from stones

*p<0 .05, **p<0 .001 結 石 を 生 じ た も の と考 え ら れ た. Fig.1(d)もCa-Oxを 主 成 分 とす る 腎 結 石(M 群)例 で あ る.結 石 表 面 に 球,桿 菌 よ り な るbiofilm が 存 在 し,そ の 間 隙 に 線 維 状 構 造 物 な い し 無 構 造 物 質 が 存 在 し 結 石 基 質 を 構 成 し て い た. 以 上4症 例 を 始 め と し た48結 石 全 て に つ い て 電 顕 的 に 詳 細 に 観 察 し,biofilm形 成 の 有 無 を 判 定 し た.1群20例 全 て に,M群28例 中13例(46.4%)に そ れ ぞ れ 細 菌biofilmの 形 成 を 認 め た(p< 0.001). 3.結 石 培 養 検 出 菌 の 性 状 対 象 結 石48結 石 中,A群 細 菌 の み 検 出 さ れ た も の14結 石,B群 細 菌 の み 検 出 さ れ た も の18結 石, A群B群 と も に 検 出 さ れ た も の13結 石,A群B 群 と も に 検 出 さ れ な か っ た も の3結 石 で あ っ た (Table1).A群 細 菌 の 内 訳 は,グ ラ ム 陽 性 球 菌 (Gram-positive cocci:GPC)17株,グ ラ ム 陰i生 桿 菌(Gram。negativerods:GNR)19株 の 計36株 で あ り,菌 種 で はE.faecalis 9株,Pseudomonas aeruginosa 6株,S.aureuss 5株(MRSA1株 を 含 む)の 順 で 多 数 を 占 め た.ま たA-I群 細 菌 は19 株,A-M群 細 菌 は17株 で あ り,菌 種 に 関 し て は, P.aeruginosaがA-I群 で5株 で あ る の に 対 し, A-M群 で1株 で あ っ た 以 外 は 明 ら か な 差 を 認 め な か っ た.一 方B群 細 菌 は49株(GPC8株,GNR 41株)で あ っ た(Table2). A-1群19株,A-M群17株 お よ びB群49株 に つ い

て,urease産 生 率,glycocalyx産 生 率 をTable3 ∼

5に 示 し た.urease産 生 率 は,A群 で11/

36(30.6%),B群 で6/49(12.2%)の 陽 性 率 を 示 し,A群 の 方 に 産 生 率 が 高 か っ た.特 にA-I群 で は7/19(36.9%)と 陽 性 率 が 最 も 高 か っ た. glycocalyx(toluidine blue)産 生 率 は,A-I群 で 11/19(57.9%),A-M群 で13/17(76.5%),B群 で13/49(26.5%)と,A-M群 が 最 も 陽 性 率 が 高 く, A群 とB群 の 比 較 で はA群 の 方 が 有 意 に 陽 性 率 が 高 か っ た(P<0.001).強 陽 性 株 の 割 合 もA-M 群 が11/17(64.7%)の 陽 性 率 で あ り,A4I1群4/ 19(21.1%),B群4/49(8.2%)の 陽 性 率 に 比 し て 有 意 に 高 い 結 果 で あ っ た(p<0.05,p<0.001). ま たglycocalyx(safranine)産 生 率 も 同 様 に,A-I 群10/19(52.6%),A-M群13/17(76.5%),B群 12/49(24.5%)とA-M群 が 最 も高 い 陽 性 率 を 示 し た.特 に 強 陽 性 株 はA-I群 で3株(15.8%),

感染症学雑誌

第69巻 第6号

(6)

Table 5 Glycocalyx (safranine) producibility among bacteria isolated from stones

Table 6 Comparison of urease and glycocalyx producibility between GPC and GNR

Urease

Glycocalyx (toluidine blue)

Glycocalyx (safranine)

A-M群 で5株(29.4%)に 認 め た の み でB群 で は

認 め な か っ た.

Table6はA群 細 菌 に つ い て,そ のurease産 生 率,glycocalyx (toluidine blue)産 生 率, glycocalyx (safranine)産 生 率 をGPC, GNR別 に み た も の で あ る が,glycocalyx (safranine)産 生 率 で はGPCの 方 がGNRよ り 有 意 に 陽 性 率 が 高 か っ た(p< 0.05). 考 察 感 染 を 伴 う尿 路 結 石 は,感 染 結 石 と し て 以 前 よ り難 治 性 尿 路 感 染 症 の 原 因 の1つ と し て 問 題 と さ れ て き た11).広 義 の 感 染 結 石 で あ る と こ ろ の infection stoneは,一 次 性 感 染 結 石(primary infection stone)と 二 次 性 感 染 結 石(secondary

infectionstone)に わ け ら れ る.一 次 性 感 染 結 石 は,proteusやPmdomonasな ど のurease産 生 菌 に よ る尿 素 分 解 の 結 果,尿 の 性 状 の 変 化,す な わ ち 尿 の ア ル カ リ 化,ア ン モ ニ ウ ム イ オ ン (NH4+)お よ び 炭 酸 イ オ ン(HCO,-)の 増 加 が 生 じ,こ れ ら が 尿 中 のCa2+,Mg2+,H2PO4.と 結 合 し,リ ン 酸 マ グ ネ シ ウ ム ア ン モ ニ ウ ム のstruvite や リ ン 酸 カ ル シ ウ ム のcarbonate apatiteの 結 晶 が 析 出 し形 成 さ れ た 結 石 で あ り,女 性 に 多 く,全 尿 路 結 石 の15∼20%を 占 め る と 報 告 さ れ て い る12).ま た 二 次 性 感 染 結 石 は,蔭 酸 カ ル シ ウ ム や 尿 酸 な ど の 代 謝 性 結 石 に 二 次 的 に 感 染 が 合 併 し,そ の 細 菌 を 核 と し て リ ン 酸 系 結 晶 が 析 出 し,形 成 さ れ た 結 石 で あ る.

(7)

一 次性

,二 次 性 感 染 結 石 の如 何 を問 わ ず,こ れ

ら結 石 内 に存 在 す る細 菌 は抗 菌 剤 治 療 に抵 抗 し結

石 内 で 生 き続 け8),尿 路 感 染 は 結 石 が 除 か れ る ま

で持 続 す る.こ の 理 由 と して,結 石 内細 菌 が 形 成

す るbiofilmの

関 与 が 指 摘 さ れ13),い わ ゆ る

biofilminfectionと

して の 慢 性 尿 路 感 染 症 が持 続

す る こ とが 明 らか とな っ て きた.

今 回 の検 討 に お い て も,一 次 性 感 染 結 石(A-1

群)の20例 全 て と代 謝 性 結 石28例 中13例 に 電 顕 的

に明 らか なbiommの

形 成 を認 め た.通 常,biomm

を構 成 す る菌 体 外 のglycocalyxは

多 価 の 陰 イ オ

ン と して の 性 質 を有 して お り,固 体 表 面 へ の付 着

に関 与 す るだ け で な く,一 種 の イ オ ン交 換 樹 脂 と

し て作 用 す る と考 え られ て い る.こ の 作 用 に よ り

外 部 の 無 機 お よ び 有 機 物 質 をbiofilm内

に 取 り込

む こ とが で き る た め,結 石 に付 着 した 細 菌 の産 生

す るglycocalyxが

尿 中 のCa2+,Mg2+を

始 め と し

た 無 機 イ オ ン を引 き寄 せ,ム

コ蛋 白,血 球 成 分,

血 小 板,fibrinな

ど の有 機 物 質 を取 り込 ん で 結 石

の 増 大 を促 す と考 え られ る.以 上 の様 に,結 石 内

にbio丘1mと

し て棲 息 す る細 菌 は,感 染 結 石 の 抗

菌 剤 に対 す る抵 抗 性 の み な らず,結 石 の 発 生,増

大 に も重 要 な役 割 を演 じて い る と考 え られ る.

感 染 結 石 の電 顕 所 見 に つ い て は い くつ か の 詳 細

な報 告 が あ る が6)14),今回 の検 討 に お い て も,一 次

性 感 染 結 石 に お い て は 中心 部 の核 の 周 りに 同 心 円

構造 を と りなが ら結 石 基 質 と結 晶 が 配 列 され る傾

向 に あ った.こ

の均 質 に み え る結 石 基 質 中 に は,

多 数 の細 菌 が 無 構 造 な い し線 維 状 の 周 辺 基 質 を伴

い 集 塊 を な し て,す

な わ ちbiofilmを

形 成 し て存

在 して い た.ま

た結 石 基 質 中 の細 菌 は,時 に鋳 型

と して観 察 され た が,鋳 型 の形 成 機 序 と して は,

鋳 型 内 の細 菌 が 電 顕 用 試 料 作 成 の 前 処 理 の段 階 で

飛 び 散 っ た もの と思 わ れ,細 菌 と結 晶 の 固 着 の程

度 に よ り鋳 型 とな っ て観 察 され た もの と想 像 さ れ

る.

また 二 次 性 感 染 結 石 は,Ca-Oxや

尿 酸 の 結 晶 部

分 の 様 に 均 一 な 結 晶 構 造 を 示 し,全

く細 菌 や

biommを

認 め な い 部 分 と,無 構 造 で比 較 的 均 質 な

基 質 中 に細 菌 の 集 籏 像 で あ る と こ ろ のbiofilmや

細 菌 の 鋳 型 を認 め る部 分 よ り構 成 さ れ て い た.す

な わ ち 二 次 性 感 染 結 石 に お い て も 細 菌 がbiofilm を 形 成 し,結 石 基 質 を 構 成 し て い る部 分 で は 一 次 性 感 染 結 石 と ほ ぼ 同 様 の 所 見 を 呈 し て お り,代 謝 性 結 石 の 感 染 結 石 化 が こ の 部 分 で 生 じ て い る こ と が 伺 え た. urease産 生 菌 の,一 次 性 感 染 結 石 形 成 の 初 期 の 段 階 に お け る 重 要 性 に つ い て は,従 来 よ り指 摘 さ れ て い る と お り で あ り3),Thompsonら15)は 一 次 性 感 染 結 石49例 中45例(91.8%)に お い て,竹 内 ら4)は,52例 中32例(61.5%)に お い てurease産 生 株 を 認 め た と 報 告 し て い る.今 回 の 我 々 の 検 討 で はA-1群14結 石 中6結 石(43.9%)中 にurease 産 生 菌 を 認 め,B群 に 比 し て 有 意 差 は 認 め た も の の,や や 低 いurease産 生 菌 の 検 出 率 で あ っ た.こ の 原 因 と し て は,Ureaplasma urealyticumや Corynebacterium sp.な ど 通 常 の 培 養 に て 検 出 さ れ な い 微 生 物 の 関 与 や,結 石 形 成 の 初 期 の 段 階 で 存 在 し たurease産 生 菌 が,抗 菌 化 学 療 法 に よ り除 菌 さ れ た 結 果 菌 交 替 が 生 じ,P. aemginosaやE faecalisと い っ た 薬 剤 耐 性 の 強 い 菌 が 残 存 し た と い っ た こ と も予 想 し う る が,対 象 結 石 数 が14症 例 と や や 少 な か っ た こ と も 影 響 し て い る と 思 わ れ る. glycocalyxの 染 色 剤 と し て は,塩 基 性 色 素 で あ るtoluidine blue,酸 性 色 素 で あ るsafranine, ruthenium red等 に つ い て の 報 告 が あ る が16)∼18),Chingら18)は,染 色 の 安 定 性 と 再 現 性 の 点 で,toluidine blueとsafranineが 最 適 で あ っ た と 報 告 し,小 野9)は,glycocalyxをtoluidine blue で 染 色 し 未 固 定 の ま ま 直 接HCIで 抽 出 す る 簡 易 定 量 法 の 有 用 性 を 報 告 し て い る.著 者 も 小 野 の 方 法 に 準 じ て 検 討 し た が,A群 で のglycocalyx産 生 率 は24/36(66.7%)とB群 の13/49(26.5%) に 比 し て 有 意 に 高 い 結 果 で あ っ た.ま た 強 陽 性 株 はA群 で15/36(41.7%)で あ っ た の に 対 し,B群 で4/49(8.2%)と,や は り有 意 にA群 で 高 い 結 果 と な り,結 石 内bio創m形 成 性 細 菌 のglycocalyx 産 生 性 の 高 さ を 示 す 結 果 と な っ た. ま た,主 と し てCoagulase-negative Sta-phylococcus (CNS)が 産 生 す る 菌 体 外 多 糖 に つ い て は,Christensenら の 報 告10)に あ る よ う

に,sa-感染症学雑誌 第69巻 第6号

(8)

franine染 色 の ほ う が 検 出 感 度 が 高 い と 考 え て, toluidine blueと 同 様 に 検 討 し た.そ の 結 果, glycocalyx (safranine)陽 性 株 は,A群 で は23/

36(63.9%)と,B群 の12/49(24.5%)に 比 し て 有 意 に 高 く,強 陽 性 株 はA群 に の み8株 認 め ら れ た の み で あ っ た.ま たA群 のGPC17株 の う ち14 株(82.3%)にglycocalyx (safranine)産 生 能 を 認 め て い る が,池 田 ら19)がSaureus及 びCNSの 598株 中 約40%の 株 に,Christensenら20)がCNS の37%の 株 にslimeの 形 成 を 認 め た と報 告 し て い る の に 比 し て,感 染 結 石 中 にbiofilmと し て 存 在 す るGPCのslime産 生 性 の 高 さ を 示 唆 す る 結 果 と な っ た.以 上 の 成 績 よ り,感 染 結 石 の 形 成 に 関 与 す る 細 菌 側 の 因 子 と し て は 細 菌 のglycocalyx 産 生 能 が 極 め て 重 要 で あ り,特 に 二 次 性 感 染 結 石 の 形 成 に お い て はurease産 生 能 よ り も重 要 な 因 子 と な る こ と が 示 唆 さ れ た. 稿 を終 え るに あ た り,御 指 導,御 校 閲 頂 い た恩 師 大森 弘 之 教授,直 接御 指 導 頂 い た公 文 裕 巳助 教 授,な らび に研 究 遂行 に あた り御 協 力 頂 い た大 野勝 雄 技 官,光 畑 律 子 お よ び 的野 由夏 技術 補 佐 員 に深 謝 いた し ます: 本 論 文 の 要 旨 は,第64回 日本感 染 症 学 会西 日本 地 方会 総 会 に おい て 発表 した.

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(9)

Studies on Characteristics

of Bacteria which cause Infection Stone

Toshihide HAYASHI

Okayama University, Medical School

Culture of stones and electrical

microscopic

observation

were performed

with stones

col-lected from forty-eight

patients who underwent

surgery for urolithiasis.

Thirty-six

strains

of

bacteria in the stones obtained from stone culture were classified as nineteen strains of bacteria

deriving from primary

infection stones (Group A-I) and seventeen strains

of bacteria

deriving

from metabolic stones (Group A-M). As for their ability to produce urease and glycocalyx, they

were studied in comparison with forty-nine strains of stone surface-adhering

bacteria (Group B).

Glycocalyx producing ability was examined by the provisional

quantitative

toluidine blue assay

and safranine

straining

method. As for the electrical

microscopic

observation,

formation

of

biofilm bacterium was observed in all twenty cases of primary infection stones and in thirteen

cases (46.4%) of twenty-eight

cases of metabolic stones. Urease producing ability per stone was

6/14 (43.9%) in Group A-I, 4/13 (30.8%) in Group A-M and, 4/32 (12.5%) in Group B. There was

a significant difference (p <0.05) between Group A-I and Group B. Similarly for the glycocalyx

producing ratio (toluidine blue assay), the values were 9/14 (64.3%) in Group A-I, 11/3 (84.6%)

in Group A-M and 10/32 (31.3%) in Group B. As for the glycocalyx

producing ratio (safranine

method), the values were 10/14 (71.4%) in Group A-I, 9/13 (69.2%) in Group A-M and 9/32

(28.1%) in Group B. As for the glycocalyx

producing ability, Group A-I and Group A-M both

showed significantly

higher production

ratios compared

to Group B for both toluidine blue

method and safranine method. From the above reuslts, it was suggested that both in the primary

and secondary

infection stones, the formation

or growing of stones was strongly related to the

glycocalyx

producing ability of the bacteria.

Fig.  1  SEM  of  cut  surface  of  urinary  stones:  (a)  S.  epidermidis  biofilm  embedded  in  apatite bladder  stone  (Group  I),  (b)  K
Table  1  Classification  of  bacteria  studied  according  to  stone  culture  and  SEM  results
Table  3  Urease  activity  among  bacteria  isolated  from  stones
Table  6  Comparison  of  urease  and  glycocalyx  producibility  between  GPC  and  GNR Urease

参照

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