基調講演 東アジア統合とASEANの役割 (特集 国際
シンポジウム 東アジア地域統合と日本 -- 国家・
市場・人の移動)
著者
Surin Pitsuwan
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
164
ページ
10-11
発行年
2009-05
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00004754
アジ研ワールド・トレンド No.64(2009. 5)― 0
●
漸
進
主
義
の
効
用
と
A
S
E
A
N
の
歴
史
東 南 ア ジ ア そ し て 東 ア ジ ア に お い て こ の 五 〇 年 間 、 共 同 体 と い う 感 覚 を 培 う 上 で 、 日 本 貿 易 振 興 機 構 ( ジ ェ ト ロ ) は 大 き な 役 割 を 担 っ て き た 。 ま ず 、 一 九 六 〇 年 代 、 一 九 七 〇 年 代 に は 日 本 の 企 業 が こ の ア ジ ア 地 域 に 出 て い く 支 援 を し た 。 そ し て 、 最 近 の 二 〇 年 間 に ジ ェ ト ロ は そ の 役 割 を 変 え 、 よ り 広 い 東 ア ジ ア の 統 合 を 促 進 し て き た 。 東 ア ジ ア 地 域 の 国 々 は さ ま ざ ま な 側 面 に お い て 違 い が あ る 。 こ の 多 様 性 は こ の 地 域 の 特 性 で あ る 。 し た が っ て 、 こ の 地 域 で は 「 イ ン ク リ メ ン タ リ ズ ム 」( 漸 進 主 義 )、 つ ま り 、 一 気 に と い う わ け で は な く 一 つ 一 つ 積 み 上 げ て 一 つ の ア ー キ テ ク チ ャ を 作 り 上 げ 、 そ れ が で き あ が っ た ら 次 に 行 く と い う 方 法 し か 道 は な い 。 A S E A N は そ の 中 心 に い る 。 今 か ら 四 一 年 前 、 A S E A N の 協 力 は 経 済 開 発 と 社 会 文 化 協 力 と い う 大 変 控 え め な 目 標 を 持 っ て 始 ま っ た 。 た だ 、 A S E A N は 外 か ら の 強 制 に よ っ て 設 立 さ れ て い な い 点 で 東 南 ア ジ ア 条 約 機 構 ( S E A T O ) と は 異 な っ て い た 。 A S E A N は 最 初 は 五 カ 国 で 始 ま っ た が 、 そ の 後 、 イ デ オ ロ ギ ー 対 立 や 地 域 の 紛 争 が 終 わ り 、 東 南 ア ジ ア 地 域 の 一 〇 カ 国 が A S E A N を 形 成 す る に 至 っ た 。 中 小 国 家 の 集 ま り で あ る 私 た ち A S E A N は 開 放 的 に 外 か ら の 貢 献 あ る い は プ レ ー ヤ ー を 受 け 入 れ る 姿 勢 を 持 ち 、 誰 に も 脅 威 を 与 え ず に 、 我 々 A S E A N の フ ォ ー ラ ム に ど う ぞ 参 加 を し て く だ さ い と い う 姿 勢 で 臨 ん だ 。 だ か ら こ そ 、 A S E A N は 東 ア ジ ア 協 力 に お い て 中 心 的 な 役 割 を 果 た す こ と が で き た の で あ る 。 日 本 や オ ー ス ト ラ リ ア な ど の 国 家 が そ う し た A S E A N か ら の 呼 び か け に 積 極 的 に 応 え た 結 果 、 ア ジ ア 太 平 洋 経 済 協 力 ( A P E C ) や A S E A N 地 域 フ ォ ー ラ ム ( A R F ) が で き た 。●
日
本
・
A
S
E
A
N
関
係
と
A
S
E
A
N
+
3
東 南 ア ジ ア に 日 本 が 関 わ っ た 当 初 は 東 南 ア ジ ア 諸 国 側 に 日 本 の 役 割 や 貢 献 に つ い て 多 少 の 懸 念 も あ っ た 。 一 九 七 七 年 、 日 本 は 「 福 田 ド ク ト リ ン 」 を 発 表 し 、 日 本 は 東 南 ア ジ ア の 国 々 と 透 明 性 を 持 っ て 心 と 心 で 通 じ 合 い 、 対 話 す る 用 意 が あ る こ と を 伝 え 、 そ の 懸 念 を 払 拭 し た の で あ る 。 こ の 福 田 ド ク ト リ ン が 日 本 ・ A S E A N 関 係 の 土 台 を 作 っ た 。 そ れ か ら 三 〇 年 。 今 年 ( 二 〇 〇 八 年 ) 初 め に 、 福 田 前 首 相 が 二 番 目 の 福 田 ド ク ト リ ン 、「 福 田 ド ク ト リ ン Ⅱ 」 を 発 表 し た 。 最 初 の 福 田 ド ク ト リ ン が 日 本 と 東 南 ア ジ ア の 関 係 を 対 象 に し て い た の に 対 し 、 東 ア ジ ア 全 体 を 対 象 に し て い る の が 福 田 ド ク ト リ ン Ⅱ の 特 徴 で あ っ た 。 東 ア ジ ア の 協 力 は 一 九 九 七 年 の 通 貨 ・ 金 融 危 機 に 端 を 発 し て い る 。 一 九 九 七 年 の 危 機 の 際 、 東 南 ア ジ ア の リ ー ダ ー た ち は こ の 競 争 の 激 し い グ ロ ー バ ル 化 の 時 代 に 東 南 ア ジ ア あ る い は A S E A N が 自 分 た ち の 力 だ け で 競 争 を 勝 ち 抜 く こ と は 不 可 能 だ と 考 え た 。 か つ て 、 マ レ ー シ ア の マ ハ テ ィ ー ル 前 首 相 が 東 ア ジ ア 経 済 協 議 体 ( E A E C ) と い う 構 想 を 提 案 し た が 、 関 係 諸 国 か ら 全 く 支 援 が 得 ら れ ず 実 現 で き な か っ た 。 し か し 、 一 九 九 七 年 、 マ レ ー シ ア は ち ょ う ど A S E A N の 議 長 国 で 、 マ ハ テ ィ ー ル 前 首 相 が 議基
調
講
演
東
ア
ジ
ア
統
合
と
A
S
E
A
N
の
役
割
スリン・ピッスワン
特
集
特
集
国際シンポジウム
東アジア地域統合と日本
―国家・市場・人の移動
―アジ研ワールド・トレンド No.64(2009. 5) 長 と し て A S E A N 首 脳 会 議 を 仕 切 り 、 日 本 、 中 国 、 韓 国 の 首 脳 を A S E A N に 招 い た 。こ れ が 、A S E A N + 3 の 始 ま り で あ っ た 。 A S E A N + 3 に 代 表 さ れ る 東 ア ジ ア 協 力 は 金 融 ・ 通 貨 危 機 が あ っ た か ら こ そ で き た も の で あ る 。