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医療機関の連携と共同診療についての考察

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(1)

医療機関の連携と共同診療についての考察

西 良 区

1  .はじめに

医療のシステム化さらに医療機関の連携の必要が広くいわれているにもかか わらず,それぞれの概念が必ずしも明確にされていない。そのような状況のも とで,在宅ケアの推進の名のもとで多くの患者が病院から退院を余儀なくされ ている。退院した患者の多くが,在宅で連携された診療,看護,介護を受けら れないままに家族の犠牲の上で療養生活を送らざるを得ないのが実態である。

このような現状を踏まえて,医療機関の連携と共同診療について考察を加えた ので報告する。最初に,医療という言葉を用いず,診療,看護,介護を使用し

たことの説明を行い,次いで,診療行為の現状と課題から『主治医~.共同診

療の必然性を説明し,最後に診療契約について論じた。

時間的な制約もあり,文献的な考察は次の報告の機会に譲り,敢えて試論的 な見地から考察をまとめた。

2 . 診療,看護,介護の区分

)診療,看護,介護とは

医療の概念は拡大され,健康にかかわる事項の総てを包括する包括医療とし て,健康増進,予防,治療, リハビリテーションを含む用い方がされている

O

そこでは医師以外の専門職のみならず非専門職が単独で行える行為が含まれて

いる

O

また,他方では,従来からの医師のみに許されている狭い意味での医療

という用い方もされている

O

このため,ここでは医療という多義的な言葉を用

(2)

いずに,行為をなす人を明らかにし得る意味で,診療,看護,介護を下記のよ うに定めて使用する。なお,特定の場合以外には医療という言葉は用いないこ ととする。

診療とは,医師のみに行うことが許されている行為で,通常は医療行為また は医行為と呼ばれている。ここでは,医療行為の代わりに診療行為とし寸

O

看護とは,保健婦助産婦看護婦法に定められ看護専門職の行う行為で,医師 の指示による診療の補助と,看護独自の療養上の世話がある。前者の行為は,

医師の指示の下にあって診療の補助となる行為である

O

後者は,看護独自の行 為である。しかしながら後者の行為の対象者の多くが傷病者であることから,

診療と整合した療養上の世話でなければならならず,医師との連絡が密で,必 要な指示を受けていることが重要なことといえる

O

介護とは,その他の行為で,専門的な訓練を受けていなくとも行うことがで きる。近年,介護福祉士の制度ができてはいるが,業務独占ではない。

以上の区分を組み合わせたものが,現在広く言われているケアであり,医療 である。なお,医療関係に従事する多くの専門職は,診療及び看護を支援する かその周辺の一部を担当するするものといえよう

O

現在の医療施設,特に病院では,医師,看護婦,その他の医療関連の専門職 さらに社会福祉関係の専門職等を含めたチームによって診療等が行われている。

すなわち,医師一人の診療から,各種の専門職より成るチームを構成して診療,

看護,介護を行うように発展してきている。

最近では,在宅患者に対しでもチームによる診療,看護,介護が提供される

ようになってきている

O

ただし,医療施設内にみられるように同じ医療施設に

勤務するもので構成されるチームと異なり,チームを構成する専門職は,それ

ぞれ所属する機関,団体が異なっている。保健所,その他の行政機関,民間団

体,さらにボランテイア等の多様な機関,団体からなるチームを編成しまとめ

ていくことの責任の所在が必ずしも明確でなく,何等かの秩序づくりが期待さ

れている。今回の報告は,診療を中心として,看護,介護に関する事項は別の

機会に譲ることとする。

(3)

)診療行為と医学

医師の任務は, I 医師法第

1

条 医師は,医療及び保健指導を掌ることによっ て公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保するもの とする。」と規定され,業務についても,医師法に規定されている

O

医師は,高度な専門職であるのみならず,公共性の高い職業であることから,

専門分野の学問に限らず、広い範囲の学問についての生涯学習に勉めるとともに 絶えず教養を高める努力が期待されている。特に,患者の自己決定権の尊重に 基づいた医師患者関係を正しく認識して診療に従事しなければならない。本来,

医師と患者とは,たとえ医学の知識技術には大きな違いがあろうとも,人間と して対等平等でなければならない。

医学は,細胞病理学を基盤として発展した分析的な科学であることもあって,

人間総体を把握することの必要性が強調されている

O

しかしながら,そのため の方法論の開発には,従来の分析的な科学からの脱却が前提に必要であるとい えよう

O

現在の医学における概念としての疾病は,その疾病をもたらす単数ま たは複数の病因によりもたらされた人体の構造または機能の変化とそれに伴う 所定の反応系とされ,この概念に基づいて疾病体系が構築されいている

O 実際

の病人とは,このような疾病にり患している人間である

O

人間は,り患した疾 病に対して,医学に定義された疾病としての反応体系以外にも人間総体として

の反応を示すものである

O

このため,患者が求める診療目的を達成するには,

医学に基づく診療行為のみならず医学の範ちゅうを越える領域での患者が期待 する診療行為が必要である

O

従来の診療における中心課題であった急性症に対 しては,患者の生活を犠牲にすることを前提とした診療行為を行うことが社会 的に医師に認められていたといえよう。然るに,長期慢性の疾患における診療 行為は,患者の生活の一部であることを承知していなければならなくなってき

ている。このような,診療対象の変化が,分析的な医学からの脱却を期待して いる一因といえよう

O

現在の診療は,医学を修めた医師のみに業とすることが許されている

O

医師

は,診療を求めに来た患者を対象に,まず医学に基づいて定められて技術手順

(4)

に従い観察,検査,その他必要な行為により患者から多くのデータを収集し,

解析する。その結果に基づいて,その患者の変化を,抽象的,概念的な疾病体 系の中より選んだ特定の疾病によるとものと判断する。そのことを確定診断と 呼んでいる

O

さらに,患者がおかれている疾病の段階及びその状態を定め,将 来の予測を行うことが診断であり,治療はその結果に基づいて行われる。もち

ろん,診断が確定しなくとも,病態の変化に応した治療を行っている

O

診断,

治療の過程では,患者の総体である人間としての患者を無視した分析的な情報 のみを収集しているものではなく,経過に応じて人間としての患者への対応が なされ,診療行為の一部として行っている

O

しかしながら,前述のように,現 在の医学においてそのような総体としての人間把握の方法論が未熟であること から,この分野の診療行為は,基礎となる医学が確立しているとは言えない。

最近になり,ょうやく,対象となる患者の総体としての把握に加えて医師と患 者の人間関係の研究がなされてきている

O

しかしながら,そこで開発研究され た成果が普遍的なものとは言えず,多くが経験的に資料が蓄積されている段階 に留まっているといえよう

O

例えば,がん告知を含めた診療行為にかかわる事 項において,そこでの基本的な理論を欠いたままでケースパイケースという意 見が少なくない。すなわち,そこで言われるケースパイケースとは,医師個人 の経験,さらには人生観に依拠するという非科学的な根拠によっていることが 少なくない。さらに,医学に基づかない患者の人間把握を基盤の弱さに加えて,

医師患者関係においてもいわゆるパターナリズム(家父長主義)的な傾向が強 く,患者の自己決定権の行使への配慮を欠く例が少なくない。

医学,診療技術の進歩により,科学としての医学が拡大されれることにより,

いわゆる古典的な名医を少なくする方向にある

O

このことは,従来個々の医師

が単独で患者に対応していたことから,そのような技術を習得した医師達と連

携し共同して診療を行うことにより,進歩した医学の恩恵を広く患者に提供す

ることが可能になってきているといえよう

O

そこでは,医学の限界を十分に承

知していることが重要である。なお,医学の限界には,分析科学としての限界

と人間総体としての把握の限界との両面があり,それを明確に区分しているこ

とが必要である。前者の限界は,適正な連携のもとで診療を行っている医師全

(5)

てに共通にみられることで,適正な行為である限り医師による変化は小さくな る方向にある。然るに,後者についての限界は,特にその分野を専門に研究し ている医師を除けば,現状では医師の個性によるかかわりが大きく,そのよう な医師を選択するための普遍的な根拠を見いだし難いといえよう

O

現状の医学 教育では,医師と患者との人間関係を適正に保持することを専門に研究する研 究者も少なく,医科大学にそのような専門講座も設置されていない。ここでは,

医学以外の学問経験に依存する事項についての考察は可能な限り避けることと する

O

3  .診療行為における現状と課題

1  )患者が求める診療行為

自由診療体制のもとにあるわが国において,人々は,自由に医療施設を選択 することができる

O

特定の医療施設を選択し,その医療施設を訪れる目的は,

自分の苦痛を癒すため,分娩のため,自分の最後を安心して看取ってもらうた め,或は自分の健康状態の確認のため等々である。このような診療目的の達成 が,患者にとって最も重要であり,かっ基本的なことである。このため,診療 経過にみられる,多少の苦痛,不快感をもいとわないことが多い。しかし,実 際には診療経過にも大きな関心がはらわれているもので,とくに,経過が長期 にわたるときには,目的自体も変更され,療養中の診療行為自体が適正である ことがより期待されるようになる

o

診療目的が達成でき難いと判断すると他の 医療施設に転医するか,転医を望んでいる。しかし,転医は,その他にも当該 医療施設の何等かの環境が好ましくない,馬が合わない,さらに特別な理由が ない場合にもみられている

O

ここでは,患者が求める診療行為の期待すること を大きく

4

つに整理して説明しよう。

①受診目的が達成できる診療行為を期待する。

②患者が自己流に描いた医学に適合する診療行為を期待する。

③人間の尊厳を侵さない診療行為を期待する。

④快適な環境での診療行為を期待する。

(6)

(1) 

受診目的が達成できる診療行為を期待する。

受診目的達成は,患者に取って最も重要なことである。このこともあって,

医師にしばしばみられるパターナリズムを支障なく満たしてくれるいわゆる医 師からみて良い患者が少なくない。これは,基本的な診療目的達成に支障がな い限り,診療行為を決定できる権力ある医師に逆らわず,表面的に従順である にすぎないためである

O

このため,この特定された医師との聞が裂かれるよう な行為に対し必要以上に患者は,抵抗するか不快感を示すことが多い,時に,

表面的ではなく心から服従していることを自分に対して暗示させる意味からも,

当該医師の見えないところでも,患者はその言動に注意していることが少なく ない。しかし, このような心服が不変のままで継続されることの保障はない。

医師として,適正な診療を行っているにもかかわらず,受診目的が達成でき ないか,または容易に達成できないときは,その理由を的確に患者に説明し,

納得が得られることに努めなければならない。

(2) 

患者が自己流に描いた医学に適合する診療行為を期待する。

現在の西洋医学は,前述のように分析科学の方法論に依拠し細分された入閣 の部分の認識が基礎にあり,総合的に人聞を認識する科学的方法論が未熟であ る

O

然るに,一般に患者が診療に期待しているのは,人聞を総体として認識し た上での診療行為である。このように,患者と医師との聞に存在する医療につ いての認識の違いがあり,患者は医学に素人であろうとも,医師は,患者に診 療行為の根拠となる科学としての医学に限界があることを説明することにより 了解を得ることは可能である。最近の進歩した医学の成果に基づき普遍的な技 術として定着した診療行為は,所定の過程を正しく学習することにより習得す ることができる行為である。この範囲に属する診療行為であるならば,そのこ とを患者に十分に説明することにより,いたづらに医師を変え,さらには名医 を追いかけることは少なくなるといえよう

O

診療行為が単に科学に基づくもの のみではないが,医学に依拠するところが多く,医学が科学であることからそ の論理を正しくわかりやすく説明すれば理解できる筈である

O

科学としての医学の限界を理解しようとせず,具体的な自分の苦痛に適用で

きる診療行為のみを過度に期待している患者は,医師の技術を適性に評価する

(7)

ことができない。このため,医学は人聞を総体として認識できるものであると 誤認していることから,診療対象が自分がり患している疾病でなく,その疾病

にり患している病気の人間であることを医師に強く求めることになる。このこ と事態,患者として当然な要求である

O

このような医師と患者との軍離を埋め るには,現在の医学の未開発な分野といえる全人的な把握を医師のみに期待す るのではなく,患者も診療に主体的に参加することにより,多少は解決へのが 開けると考える。このため,診療行為には,科学としての医学に基づく技術的 側面に加えて他の学問の成果,医師の個人的な見識,経験等に基づく技術的側 面さらに主体的に参加する患者の意思などの要素が組み合わされていなければ ならないといえよう

O

しかしながら,現実には,多くの患者は,医学の限界を正しく認識できない か,また,できたとしても断片的な医学知識に基づき,医学の学問としての論 理を誤って理解し,医学を過大,過少または別の形に歪曲して自己流の医学を 描いていることが少なくない。この結果,いたづらに,大学病院,専門病院或 は高度な医療機器による診療行為のみを過信している患者が少なくない。この ように最高の医学に基づく診療できるところは,大学病院,高度医療の専門病 院のみであると過信している患者は,他の医療施設における診療を受け付けな いか,低い評価しかしていない。このような患者の多くが,大学等の医師の指 示,指導を総て命令として受動的に受け止めるのみで,主体的に診療行為によ り生じた疑問の解決を医師に向けることは少ない。このため, もし大学病院等 において不適切な診療行為がなされても,それにより著

L

い破綻を来さない限 り,それを批判する能力すら欠いている

O

その上,そこでの適正さを欠いた診 療行為を注意し,警告する医師すらを排除することが多い。

現実に,現在の医学水準からみて最適な診断方法によって診断が確定された

場合であっても,その疾病の診断が自分に下されたことに納得ができない場合

には,もっと優れた医師がいる筈であるとして転医することも稀ではない。ま

た診療行為が適正になされても治療効果が容易に現れない時には,その適正な

診療行為に疑義を持ち,診療行為を担当する医師をいわゆる帆やぷ医者であ

H

とか

u

誤診した

H

と決めつけることが少なくない。さらに手術等のある診

(8)

療行為を試みるにあたり,医師が患者の承諾を得るための説明としてその診療 行為の成功する確率を医学的な統計で示しても満足されず,自分に適用した際

に成功するか失敗するかを明らかにすることを期待する

O

医師は,患者が期待する医学と真実の医学との違い,医学の限界を十分に説 明するとともに,診療行為における技能的側面を軽視することなく患者の希望 を満たすことに努力しなければならない。以上の医師の努力が患者に理解され ない場合には,自己流の医学による診療をしてくれる医師を捜し求めるという 無駄な努力が繰り返され,ついには医学,医師不信に陥る危険がある

O

患者に 迎合することなく, しかも,患者が逃げ出さないよう,辛抱強く患者が納得で

きる診療となるよう努力を続けることが肝要である

O

(3) 

人間の尊厳を侵さない診療行為を期待する

O

ここでいう人間の尊厳を侵しているか否かの判断は,他者からみてではなく 本人が定めることである

O

人間の尊厳を侵すこととして,最も重要なことは,

本人の自己決定権の侵害であると考える

O

一般に日本では,医師のパターナリ ズムが強く,診療において患者の自己決定権の尊重が十分でないとされている。

このことには,確かに医師の側に多くの問題があることは事実であるが,患者 の側にも管理社会のもとで自己決定権を表現することすら秩序を乱すものとさ れてきた長い生活のもとにおかれていたことも起因しているといえよう。特に,

専門知識に大きな格差があり,診療行為に大きな権力を有する医師の前で,自 分の意見を率直に表明することにより医師患者関係を悪くし,自分の命にかか わることが生じないようその言動に注意している患者が多い。しかし,例えこ のような状況にあろうとも,患者としての人間性を侵す医師及びその診療行為 に対して不快の念を持たない患者はいなし、。すなわち,患者の自己決定権の表 現がどうであれ,そのことを尊重しない医師及びその診療行為は,いずれは患 者から許されないときがくるであろう

O

医師と患者との意思疎通が十分に出来てないために,医師及びその診療行為

が人間の尊厳を侵したと誤解されることも有り得ることから,医師として,そ

のような誤解の生じないように務めるととともに誤解が生じたときにはその誤

解の解消に努めなければならない。

(9)

(4) 

快適な環境での診療行為を期待する。

ここでいう環境の快適性とは,医療施設における物理的な環境のみならず,

医療施設内外をめぐる自然,社会,文化的環境,人間的な関係を含む広い範囲 の環境を意味する。また,快適性は,他者からみてではなく本人の生活,文化 その他の意識にかかわる主観的な評価によるものである

O

このため,患者と医 療施設にかかわる人々との間での誤解により,また,ある日突然に患者にとっ て快適な環境が失われることも有り得る

O

このことは,理性のみでなく感性に より生活している人間である患者としては当然のことである

O

特に,診療をめ ぐる環境には,短期間の療養生活においては堪え忍ぶことが可能であろうとも 長期にわたる療養生活においては許せないことが少なくない。疾病構造が変化 し,長期にわたり療養生活を余儀なくされている人が少なくない現在,診療を めぐる環境を設計するには,狭い診療目的の達成のみを中心とすることなく,

現在及び将来の生活の快適性を侵さない配慮が必要である。

以上の

4

つの項目に整理された患者が求ゆる診療行為の全てを満たすことが 必要であり,それを満たすことにより患者中心の診療が開始されるといえる

O

2)共同診療行為への発展

(1) 

ソロ診療,グループ診療からシステム診療へ

ソロ診療とは,

I

医師が,患者の診療の全責任を持ち,すべての診療行為を 自分で直接行うか,補助者に指示して行わせること。」であり,わが国の開業 医の多くは,この形態である

O

グループ診療とは,

I

医師がグループ。をっくり診療所を運営して診療を行う こと。」であり,個々の医師は,ソロ診療と同様に自分の患者を定め,その患 者の診療の全責任を持ち,すべての診療行為を自分で直接行うとともに共同ま

たは単独で雇用している補助者に指示して診療の補助行為を行わせる

O

それに

加えて,必要に応じて,自分の責任で行う診療行為に関し,グループを構成し

ている他の医師に助言,協力,参加を求めること及び診療を委託すること等が

容易に行える利点を有している

O

わが国では,グループ診療は一般的な診療方

式とはいえず,一部で行われているに過ぎない。従来から,親子で同じ診療所

(10)

を運営している例がしばしば見られている

o

しかしその多くは,親子の医師 が平等な関係ではなくいずれか一方が雇用されている関係にあることから,一 般にはグループ診療とは呼ばない。グループ。診療を行っている組織における恒 常的な協力内容の多くは,診療にかかわらない事務,看護等である

O

なお,グ ループを構成する医師の多くは,いわゆる一般医(専門医である家鳳去を含む) であり,多少サブ専門性の違いが見られる程度で専門医は含まれないことが多 い。すなわち,専門医(専門医である家庭医を除く)でありながら,専念して 診療を行う場所が診療所であるという例外的な国のーっとして日本があるとい

えよう

O

グループ診療の大きな特徴は,診療を相互に補完協力し合うことにより,結 果として診療内容の質の向上が図られることとにあるといえよう

O

病院は,医療法の定義によると「医師文は歯科医師が,公衆又は特定多数人 のための医業又は歯科医業をなす場所であって,患者

20

人以上の収容施設を有 するものをいう

O

病院は,傷病者が,科学的で、且つ適正な診療を受けることが できる便宜を与えることを主たる目的として組織され,且つ,運営されるもの でなければならない。」とあり,病院の構造設備の基準,法定人員及び施設が 定められている

O

すなわち,敢えて病院の特徴をいえば,患者を収容して医師,

看護婦その他の専門職よりなるチームによる診療,看護,介護を行う場所とい えよう

O

なお,日本の法律では病床

20

床未満の医療施設は有床診療所とされ,

入院期間が2 4 時間以内と限定されている。この区分は,制度的につくられたも のであって,時として病院との区分が必ずしも明確とはいえない有床診療所も みられている

O

ソロ診療からグループ診療及び病院にみられるチーム診療へと発展してきて

いるが,いずれも,それぞれの医療施設において診療が完結されることが前提

とされている

O

しかるに,医学の進歩,医療技術の高度化に伴い,医学の専門

分化が進み,特定の診療行為を行うには,そのための専門知識を有し,かっ特

定の訓練を受けた医師さらに特殊な医療用具を必要とすることが多い。すなわ

ち,医師であれば全ての診療行為を行うことができるという建前と実態とは異

なり,当該医師が直接行うことが妥当とは言えない診療行為が少なくない。こ

(11)

のため,一人の医師さらに一つの医療施設において適正に行える診療行為の範 囲は限定されてきている

O

すなわち,複数の医療施設が相互に協力して診療行 為を行わなければ,診療目的を達成することができないのが現代の診療である

といえよう

O

このように「複数の医療施設,さらにその他必要な関係施設が連 携して診療,看護,介護を総合的にすすめること。」をシステム医療といい,

「システム医療をめざして,医療供給体制を改善すること。」を医療のシステム 化と定義する

O

医学,診療技術の進歩による診療の高度化がすすむ一方で,開業医,中小病 院等がその一部を担っているプライマリー・ヘルス・ケアが重視され,プライ マリーのレベルから高度医療のレベルまでを包括する医療のシステム化が緊急 の課題といえる

O

特にプライマリー・ヘルス・ケアにおける重要な役割を担わ なければならない診療所及び中小病院がそれぞれ独立に個別の診療を担当して いるのみでは,それらの施設のみで完結できる診療の範囲が限定されることと なり,現代の進歩した診療技術に対応できないことは明かであり,その機能を 支援する体制の整備が最も重要な課題といえよう

O

医療のシステム化に伴い,個別の医療施設における診療行為とは別に新しく 所属する医療施設を異にする医師達の連携による診療行為という形が生まれて

くることになる

O

次にこのような,連携して行う診療行為についての考察を行 つ 。

(2)  ~主治医』と共同診療行為

医学,医療の専門分化に伴い,多くの専門医師が,それぞれの細分化された

診療行為をいかに清織で適正に行おうとも,人間総体としての健康の保全には

結び付かないことが少なくない。このように,人間総体としての健康の保全を

任務とする医師の登場が不可欠となり,国際的にも国内的にも古くから言われ

ていたいわゆる家庭医が見直され,新しくプライマリー・ケア医とか総合診療

科医とかがいわれてきている

O

これらの発言の背景には,既存の類似の分野を

担当している医師達からの守備範囲の拡大,医学界における地位の向上等の期

待も否定できず,さらに厚生省からの医療改革のための政策的意図のもとでの

家庭医論も登場している

O

このため,ここでは,このような言葉を用いないこ

(12)

ととする

O

医師の本来の任務は,単に疾病を治療するのみでなく患者の苦痛を 癒すことである。このように本来の医師の任務を行う医師を『主治医』とする。

『主治医』は,当該疾病の診療を行うのみでなく,その患者全体の健康につい て関心を持つことが必要であることから,他の専門分野の医師の協力を得なけ ればならなし、。このとき,単にその医師に患者を紹介し,診療を委託するのみ でなく,その医師と共同して患者の診療に責任を持つ『主治医』であることが 期待されている

O

現在のように,高齢化社会に向いー病息災がいわれているように,高齢者の みならず,何等かの疾病の診療を受けながら日常生活を過ごしている人が少な くない。このように長期慢性の経過をたどる疾病にり患している患者は,その 疾病の経過を長期にわたり観察しながら診療を行う医師を予め定め,その疾病 の主治医としていることが少なくない。一方では,医師は健康保全の専門職の 立場から,当該疾病の診療の継続が必要な期間すべてにわたり,その疾病の診 療のみに終始することなく,その患者の健康の保全に努めることが任務と言え る。すなわち,前述の『主治医

J

は,本来特定の資格の医師を意味するよりは,

すべての医師が『主治医』でなければならないといえよう

O

患者が医師と診療 契約を結ぶにあたり,特定疾病の診療のみを契約したのか, r 主治医』となる 契約であるかが不明確な場合には,医師は, r 主治医』として行動することが 必要であると考える。なお, r 主治医』とはいえ,高度に細分された機能を担 当する医師と,いわゆる一般診療を担当する医師とは,おのずとその守備範囲 が異なることは明かである

O

ここでは,前者の医師を,専門主治医と称し,後 者を一般主治医と称することとする。

医療のシステム化で述べた連携の実際は,それぞれの医師が『主治医』であ

ることを前提としたものでなければならない。すなわち,異なる医療施設聞に

おける連携を,医療施設の所属を異にする医師達が,一人の患者を共同して診

療することと置き換えなければならない。このような新しい共同した診療行為

において医師と患者との関係に新しい課題が含まれるてくるといえよう

O

すな

わち,前述のシステム医療の定義を「複数の医療施設,さらにその他必要な関

係施設の医師等の職員が共同して診療,看護,介護を総合的にすすめること。」

(13)

に改め,医療のシステム化の定義を「医療施設を有機的に結び付けることによ りシステム医療が可能となるよう,医療供給体制を改革すること。」に改める ことが必要である。

)診療行為における共同責任とは

(1) 

医師と患者関係における新しい視点

ここでは,複数の医師による診療行為から共同診療行為への移行を整理して みよう

O

最初は,複数の医師の診療行為が独立して行われ,次いで,いづ、れか 一方の医師からの連携への働きかけがなされ,さらに両医師の相互に連携した 診療行為へと発展し,最終的に共同診療行為が行われるようになり,医療のシ ステム化が達成されることになる

O

すなわち,新しく診療契約した医師と,従 来から診療契約を行っていた医師との関係が,①独立した診療行為,②診療に 関する情報(以下診療情報という)が一方通行,③相互に診療情報の交換,④ 共同診療行為へと発展して,システム医療が完成する。なお,同一医療施設内 における医師間の関係においても同様の形態がみられている

O

しかし,患者は,

医療施設の開設者と診療契約を結んでいることから,同ーの医療施設内におい て複数の医師の診療を受けようとも診療契約の対象は同じであることから,こ

こでは除いて考えることとする

O

独立した診療行為は,患者が現在ある医師の診療を受けていながら新たに別 の医師と診療契約を結び, しかも,両者の医師にそれぞれ他の医師の診療を受 けていることを通知しない場合に生じる。患者は,ある疾病の診療を受けてい る聞に,新たな身体等の異常に気づきそのことが現在診療を受けている疾病と

独立の疾病であると考えたときに別の医師を受診することは少なくな ~'o この

ようなことは,専門を異にする診療科の受診においてはしばしばみられている。

また,一般に,健康診断を受けるに際し,現在他の医師の診療を受けているこ とを通知しないことが多い。

複数の医師からの診療行為が相互に独立して提供されることは,好ましくな

いだけではなく,重複された診療行為による医学的な面での悪影響が生じるこ

ともある

O

このため,医師は,常に診療が重複されているか否かに注意を払は

(14)

なければならなし h しかし,患者から通知がなければ,そのような事実を知る ことができないこともあり,患者側にもその責任がることは否定できない。

現実に医師患者関係が平等とはいえない状況において,患者が自ら他の医師 を受診していることを通知することは,医師の心証を害することを恐れること

もあって容易にできない。このため,医師は,患者に『主治医』として健康の 保全について責任があることを知らせ,現在診療中の疾病にかかわらず,健康 にかかわる相談が気軽にできるような状況を設けることの配慮が期待される。

この様な条件が整えられると,患者は,他の疾病のり患の恐れを含めて健康に かかわることが気兼ねなく相談することができるようになろう

O

複数の医師が診療を行うに際し,一人の医師は,他方の医師からの診療情報 を得ながら,他方の医師にその結果を連絡せず,そのうえ自分の診療行為を報 告していないことが稀ではない。特に,医師と医師との関係が平等でないとき

にしばしば見られる。このような際に,患者が一方の医師からの情報伝達の仲 立ちをすることがが多い。本来医師は,医師同士で直接情報を連絡し合うこと が,情報伝達が正確に行われる上からも重要なことであり,診療する医師は,

診療情報を他に診療する医師がある場合に通知すると共に,相手方の診療情報 の確保に努めなければならない。なお,この事の前提として患者の了解を得る ことは,患者のプライパシー保護のため必要なことである

O

しかしながら,現 実には,多くの患者が,他の医師との診療への介入を拒否し,医師同志の情報 交換を不可能とさせるどころか禁止することが少なくない。このための解決方 法は,あくまでも患者が納得できるよう説明し,同意を得ることに努めること が必要であると考える

O

(2)

共同診療行為への発展

両方の医師が,診療情報を交換しあってお互いの診療を行う方式は,古くか

ら広く行われていた,例えば,専門を異にした医師,または同じ専門分野の医

師においても,それぞれの診療内容を連絡し必要な指導を受けて診療行為を

なす場合がある

O

この場合には,相互に独立した診療行為であって,患者に対

しては,自分の行った診療行為にのみ責任を持ち,他の医師に委任した診療行

為には,委任した範囲以上には干渉しないことが多い。 例えば,内科医が,外

(15)

科手術の適用を疑って所見をつけて外科に転送し,外科医は診療所見を内科医 に報告するとともに外科としての診療行為を行い,さらに,その結果を報告す ることが一般的に広く行われいている

O

しかし,そこでは,内科医は直接外科 の診療にはかかわらず,逆に外科から転送されて戻った場合には,外科医の意 見を聞くが内科診療は独自の判断で行っている

O

しかし,最近では診療を継続 する必要のある患者が病院から退院し しかも病院への通院が困難な場合の診 療において,在宅での診療を担当できる医師を予め定め,その医師と共同して 診療を行うことが見られるようになってきている。すなわち,診療所側の一般 主治医が日常診療を担当し,病院側の専門主治医が時々の病状の経過を専門医 の立場から観察し必要な協力を行うという役割分担がなされ,そこでは緊密に 診療情報の交換が行われ継続した診療が確保される努力がみられている。この ような,事例において共同診療行為ということを意識しなくとも,両方の医師 がそれぞれ『主治医』として行動するならば,共同診療といえよう

O

すなわち,

患者にとっての『主治医』が複数いようとも,それぞれの医師が正しく『主治 医』として行動するならば,それぞれの医師が診療の継続性を保障するため,

例外的な特殊専門的な診療行為を除き,その他の一般的な診療行為に対して共 同して責任をとることになろう

O

なお,このことが成立するには,基本的に患 者の側からそれぞれの医師を『主治医』として認めていることが前提になけれ ばならない。さらに,このような新しい医師(複数)患者の関係を検討するこ

とが必要であるといえよう

O

4 . 医師と患者の診療契約

1  )医師と患者の診療契約の原則

医師と患者の診療契約に関する法的諸問題の論議は別の機会に譲り,ここで

は,複数の医師による協力,共同診療行為を理解するに必要な範囲で,診療契

約に関する特徴を契約自由の原則を中心に簡単に説明しよう

O

ここでは,契約

の対象を医師としているが,正しくは,その医師が所属する医療施設の開設者

であり,例えば,国立病院では,厚生大臣等となる。社会保険制度のもとで,

(16)

患者は,総合病院を受療すると,診療科毎に保険診療を受けることができる。

しかし,そこでの診療契約の対象は,それぞれの診療科ではなく,総合病院の 開設者である。

一般の契約にみられる契約自由の原則の診療契約における適用について特徴 的な事項を簡単に説明しよう

O

まず,①契約当事者の合意を必要とする診療契 約の締結及び、解消について,②契約事項の目的達成による診療契約の終了及び 契約当事者の変化による診療契約の消滅,③最後に契約が有効に締結された後 に,一方だけの契約当事者の意思表示により診療契約関係が遡及的に消滅させ

られる解除と将来に向かつて診療契約を消滅させる解約について述べる。

(1)診療契約の締結

①患者は,医師選択の自由のもとで,自由に医師と診療契約を結ぶことが きる

O

診療契約を結んだ対象となる医師は,

w

主治医』となるように努め なければならない。

②医師は,患者から診療契約を求められた場合,特別な理由がない限りそ れを拒否することはできない。

③患者は,複数の医師とそれぞれ独立に診療契約を結ぶことができる

O

在の社会保険制度では,特定の場合以外は複数の医師から診療を受けるこ

とが制限されている

o

④患者が複数の医師と診療契約を結んでいる場合,それぞれの医師にその ことを伝えることは,それぞれの医師の診療をより適正に保つために必要 であり重要なことである。しかし,患者に取って,不利益となる可能性の 高い事項であっても,患者は,特定の診療契約の場合以外,それぞれの医 師に他の医師と診療契約を結んでいることを伝える義務はない。

(2) 

他の医師と診療契約を結ぶことの勧奨

①医師は,患者との診療契約の継続中に,新たな特別な理由が生じたとき 以外は,別の医師の診療契約を結ぶことを勧めることはできない。

②医師は,患者との診療契約に基づき診療行為を行うにあたり,診療契約

の締結の②項で述べた特別な理由が生じた場合には,その診療行為をより

適正に行うことができる別の医師と診療契約を結ぶことを勧めなければな

(17)

らない。その例として,入院,手術,検査等特殊な診療施設,設備,人材 が必要な場合,専門医または別の診療科医師の受診の必要な場合等が挙げ られる

O

なお,患者が,そのような能力のある別の医師の選択に際し,具 体的な医師の紹介を含め,医師選択の指導に努めなければならない。また,

患者が,新しく別の医師との診療契約を結ぶことを拒否したときには,診 療契約を解消することは認めらず,その患者の診療行為を継続して行わな

ければならない。

(3) 

診療契約の終了,消滅,解消

①患者の疾病が治癒したときは,診療契約は終了する

O

②患者が死亡したときは,診療契約は消滅する

O

③医師が死亡しまたは診療の継続が不可能になったときは,診療契約は消 滅する

O

④患者の疾病が軽快しまたはこれ以上病態が変化せず診療の継続の必要が なくなり,患者もそのことを了解した場合には,患者の合意のもとで診療 契約を終了することができる。なお,医師は,診療行為の継続の必要がな

いと判断し診療の終了を説明しでも,患者の同意が得られない場合には,

診療契約を解消することはできない。このため,広義の診療行為にあたる 保健指導を継続して行わなければならない。なお,現在の社会保険制度で は,このような保健指導は,保険給付の対象には含まれないことがある。

⑤外来患者で、あって医師が定めた診療行為を相当の期間にわたり受療しな い等の理由により物理的に診療行為を継続することが出来なくなった場合 には,診療契約は消滅したと認めることができる

O

⑥他の医師と診療契約を結んでいることが明かで,かっその医師との診療 契約を継続することにより当該診療行為の目的を達成できることが明かな 場合に,患者に診療契約の解消を求めることができる

O

その場合でも,患 者が診療契約の解消を拒否し,診療契約の継続を求めた場合には,医師は,

そのことを拒否できない。なお,現在の社会保険制度では,このような診

療行為は,保険給付の対象には含まれないことがある。

(18)

(4) 

診療契約の解除,解約

①診療契約は,遡及的に契約を消滅することはできない。故に,患者,医 師双方共に診療契約の解除はできない。

②患者は,診療契約を解約することができる

O

③医師は,診療契約を解約することはできない。

③特定患者の診療を担当する複数の医師は,相互に独立して診療契約を結 ぶことができる

O

以上示したように,診療契約は,医師と患者とが平等な歎句になっていない。

それは,社会的に患者を保護するために設けられた診療契約の方法であること から,医師は,適正な診療に努めるのみならず,社会的に,制度的に患者は保 護される必要があることを承知していなければならない。

)診療契約の現状と課題

一般の契約と異なり,患者には,契約自由の原則が適用されるが,医師には 多くの制限がみられている

O

しかし,実際の診療行為においては,医師と患者 とが平等ではなく,患者の病態の状況により,患者側として契約の変更を必ず しも自由に行えない。例えば,入院の場合を見ると,医師が患者に入院するこ とを指示するのは,検査または治療,その他の理由であれ,医師の管理下に患 者をおいて,継続して診療を行うためである

O

このため,患者の側からの退院 申し出に対し,特別な理由を認めない限り退院を許可しないことが多い。患者 の多くは,入院するよう医師から指示された場合に,入院せざるを得ない病態 に対する不安が先行し,入院契約にみられる契約を解約することが容易ではな いことに思いをめぐらす余裕が無いことが多いといえよう

O

すなわち,入院患

者が診療契約を解約すると退院しなくてはならな ~'o このため,退院後の診療

継続の目度が立たなければ医師に申し出ることもできず,もし目度が立っても 医師が退院を許さないことを危倶している。このため,稀に,病院から脱走す る患者もなくはないが,一般に医師の意思に反して解約することにより,将来,

再度入院必要があることを考えると,医師との関係を損ねることを恐れ,医師

の意見に従わざるを得ない結果が多いといえよう

O

このように入院診療の契約

(19)

は,自由に診療契約を解約することができ難い環境にあるといえよう

O

他方,外来患者の診療契約は,初診の時点で締結され,契約が完了するまで 継続するとする意見と毎回通院時に新たに契約される意見とがある

O イギリス

のように家庭医が制度化されている国では,前者であるが,わが国のように制 度化されていないことから後者であるとされている。

1

)しかしながら,疾病構 造の変化に伴い長期慢性疾患が増加し,一病息災がいわれているなかで,比較 的長期にわたり,さらには,生涯継続して診療を必要とする患者が増加してい る。このことら,一回毎に診療契約が結ぼれるという見解は,現在の診療の実 態からみて,再検討が必要になってきている。患者も医師も,診療契約が継続 されていると考えて,日常診療を行っていることが多い。このため,病状の軽 快等により診療の継続を求めずに通院を中止できる健康状態である場合,生活 のために中断せざるを得ない場合等を除き,診療を継続して受けることが必要 である場合に,診療を中断して診療契約を解約することは,それなりの理由が ないと容易にできるものではない。最近では,比較的自由に医師への配慮無し に転医できる患者もみられてはいるが,診療継続が必要でありながら中断する のは,著しい不満がある場合,通常利用する医療施設に転医し,将来その医療 施設を利用する可能性が少ない場合等に限られているといえよう

O

その他の場 合では,将来の医師との関係を危具して,多少の不満があろうとも診療を継続 して受けている

O

このこともあって,他の医療施設を利用したとしても,従来 から利用している医療施設との関係を悪化されないよう様々な配慮をしている 患者が少なくない。

このように,医師との診療契約の解除が,必ずしも自由に行えないことは,

患者に取っての診療契約の自由が存在しているとは言えないことになる。対象

となる医師の診療行為に疑義がみられた場合にそのことをチェックする意味か

らも,他の医師の診療を自由に受けれることが重要である

O

逆に,医師として

その患者のためにより適正な診療を確保し,継続させることが必要であると判

断して,転医をすすめた際に,患者からは,その医師から診療を見放されたと

誤解することが少なくない。このため,医師の要請を拒否して,現在の医師の

診療の継続を希望することすら稀ではない。すなわち,形式的な診療契約のあ

(20)

り方よりは,実質的に診療契約が患者に取って自由に出来る体制が必要である。

さらに,前述の『主治医』として,診療契約が継続されることを検討する必要 がある

O

社会保険及び老人保健法老人医療の診療報酬において,慢性疾患指導管理料,

生活指導管理料が設けられ,昭和6

3

年度より在宅診療の部が新設され,在宅患 者のための行政体制がより充実されてきている。老人医療において設定された 老人訪問管理指導料は,現在では社会保険において在宅患者訪問診察料として 適用され,予め患者の同意を得て,計画的な医学管理のもとに定期的に訪問し て診察することが認められている

O

すなわち,外来患者に対しでも患者の同意 を得ることにより,計画的往診をすることが制度化されたことは,一種の『主 治医』を制度としたともいえよう

O

このことは,医師は,外来診療の契約に当 たり,計画的診療を受けるか否かを患者に問い正すことの必要を意味するもの である

O

さらに,計画的に診療する契約を結んだ医師は,その契約を履行する ためにも,社会保険診療報酬の有無にかかわらず,定期的に患者の病態の変化 を監視する義務が科せられたといえよう

O

逆に,医師の側からはこのことによ

り本来の任務である『主治医』としての努めを果たし易くなったといえる。

)共同診療,医療のシステム化のもとでの診療契約

共同診療におけるそれぞれの医師の聞に部分的に委託,委任等の契約が存在 していようとも,それぞれの医師が同じ患者と独立に『主治医』としての診療 契約を結んでいることが必要である。さらに,将来において医療のシステム化 された段階では,患者はそれぞれの医療施設,保健機関,社会福祉施設等と契 約を結ぶことが必要になってくることとなる

O

このように,数多くの施設,機 関と独立に契約を結ぶことは,形式的にもその方式を定めておくことが重要に なってこよう

O

例えば,サービス提供側が,暗黙の了解のもとで契約が結ばれ たとして患者宅を訪問した際に,患者の家族さらには患者自身が契約したとは 理解しないか,契約したことを忘れていた等の理由で訪問を拒否することが生

じよう

O

医師における『主治医』と同様な契約を考えている専門職にとって,

患者との関係を複雑にさせないため,また契約が複雑にならないための制度化

(21)

が必要である

O

現状の制度のままでも,医師が,医師の本来の任務として『主治医』である ことを貫徹することにより,共同診療が可能である

O

しかし,そのことを実現 するための経済的な保障も少なく,制度的にも未熟で,社会的に理解が乏しい 状況にある。社会的に必然的な方向である共同診療が何時でも,何処でも,医 師であれば誰でも実現される社会的な制度の確立が求められているといえよう

O

5 . おわりに

従来から広く用いられている医療という多義的な言葉を使用せずに,医師,

看護婦等のそれぞれの専門職が行う行為として確定されている診療,看護,介 護を用いることとし,今回は,診療行為に限定して論じた。将来は,看護,介 護につい ても考察を加えなければならない課題である

O

医療の分野で広く話題にされている医療機関の連携を医療のシステム化とし てとらえた。医療がシステム化されることにより共同した診療さらにそれぞれ においての共同した,看護,介護,さらに診療,看護,介護の総合的な活動が 行われることとなる。今回は,共同診療に限定して考察を行った,さらに,医 療のシステム可について診療,看護,介護の観点から考察を加えることを予定

として報告を終わる。

この報告をまとめるにあたり,

I

トヨタ財団

1988

年度研究助成 地域社会に おける在宅重症患者のターミナルケアを含めた組織的対応とそのあり方に関す る 研 究 ( 研 究 代 表 者 西 三 郎)

Jの研究成果の一部を利用した。

引用文献

1 )穴田秀男編『最新医事法学~ 16

頁,金原出版会社,東京,

1986. 

参照

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