地域包括ケアシステム構築に向けた相談支援体制の あり方に関する 研究
ー茅ヶ崎市コーディネーター配置事業の検証からー 豊 田 宗 裕
Role of
“consultation support system
”for the
“
integrated community care system
”construction.
–From an inspection of
“the coordinator placement project in Chigasaki-city
”– Munehiro TOYODA
Abstract
This paper aims to inspect the content as well as the development of the project about the coordinator placement project practiced in Chigasaki-city, A purpose of this study is to think about what kind of effect can have on the promotion of the integrated community care system with which Japanese government pushes forward now. As for "the integrated community care system , a construction of local network is considered very important matter to push forward with the elderly person care in a hometown area as a serious problem particularly in our country now. The practice of Chigasaki-city works well on the establishment of the consultation support system from two sides called the reinforcement of the team approach and the construction of this network. And this practice achieves some results.
キーワード:地域包括ケアシステム、地域包括支援センター、ネットワーク、
コーディネーター、市町村地域福祉計画
Keywords
:integrated community care system, support center of the integrated
community care, network, coordinator, Municipal Community Welfare Plan
星槎大学紀要(Seisa Univ. Res. Bul.)共生科学研究 No.10 68〜84(2014)星槎大学共生科学部
1 .はじめに
2011
年6
月の国会において可決した「介護サービスの基盤強化のための介護保険法の一 部を改正する法律」により、翌2012
年度より第5
期介護保険事業計画が実施された。この 法改正においては、持続可能な介護保険制度の運用とそれを実現するための地域包括ケアシ 論 文ステムの構築が全面に出されており、介護保険事業を中心とする今後の高齢者介護政策のあ り方が提示されている。中でも今後急激に増加が予想される要介護・要支援高齢者の生活を 地域社会で支えていくために、住み慣れた地域(小地域)で可能な限り自分らしい生活を送 ることができる支援体制づくりを目指した「地域包括ケアシステムの構築」がこの改正の目 玉として取り上げられ、現在その構築に向けた取り組みが様々な自治体によって展開されて いるところである。
ここで取り上げる地域包括ケアシステムの考え方については、法改正が行われる前年の
3
月に地域包括ケア研究会がまとめた「地域包括ケア研究会報告書」の中で、「2025年の地域 包括ケアシステムの姿」として詳細に記載されているが1)、その中核組織としての「地域包 括支援センターの役割」と、「地域のネットワーク構築」について特に重要視している。報 告書では「地域のネットワーク構築」の重要性として、「地域包括支援センターを中心とし て、サービス提供事業者(福祉医療関係者)、自治会、NPO、地域住民や行政機関(住宅部局、
消費者相談、警察、家庭裁判所などの周辺関係機関)との支援のネットワークが張り巡らさ れており、利用者が地域で生活を継続するにあたり困っていることへの多様な支援が迅速に 提供される」とし、その重要性と機能の強化を指摘している2)。地域包括ケアシステムの構 築に際して、地域包括支援センターを中心として、関係機関や地域住民とが共に連携し、 支 援のネットワークを構築していくことは、最重要な項目であろう。
しかしながら、こうしたネットワークの構築は地域包括支援センターのみが動いて構築さ れるものではない。各関係機関や地域住民が日頃から地域での生活に関心を寄せながら、そ の状況についてアンテナを張り、情報の収集と共有化に取り組んでいく先に構築されるもの であると考える。加えてそうしたネットワークが実態として、具体的な問題解決や生活の支 援のために効果を発揮するためには、地域での困りごとに対する相談支援体制を身近な地域 で構築し、またそれに対して効果的な情報や支援の提供(サービス提供含む)ができる体制
(チームアプローチ)を併せて持っていることが重要であると考えられる。つまり、地域包 括ケアシステムの構築にあたっては、地域包括支援センターを中心としたフォーマルとイン フォーマルの両方の支援体制の構築が必要であり、中でもインフォーマルな組織としての身 近な地域での「相談支援体制の構築」は、ネットワークの基本となる地域ニーズ把握のため に、最も重要なものとして考える必要があるだろう。
このような状況の中、茅ヶ崎市においては地域包括ケアシステムの構築にいち早く取り組 むべく、2010年度からの「第
2
期茅ヶ崎市地域福祉計画」において「コーディネーター配 置事業」を重点施策として展開し、その検証に努めてきている。この事業は、地域包括ケア システムで指摘されている日常生活圏域としての小地域において、ニーズ把握・解決のため の相談体制の確立とチームアプローチを可能とする地区支援チームの活動推進を目標に、実 施されているものである。筆者はこの事業に開始時から事業アドバイザーとして関わる中で、特に地域包括支援センターの役割と地区ボランティアセンターを中心とした「地区支援チー ム」の役割には注目をしており、地域包括ケアシステム構築における重要な視点を投げかけ てくれるものであると期待しているところである。
本稿では、この茅ヶ崎市における「コーディネーター配置事業」の実践を通して、地域包 括ケアシステムの構築に必要な、小地域における「相談支援体制のあり方」と「地域のネッ トワーク構築」について検証する。
2 .地域包括ケアシステムに関する動向と研究の視点
配置事業の取り組みを検証する前に、そもそも地域包括ケアシステムがどのようなもので あるのか、またどのような経過を経て、考え方が構築されたものなのか、その動向について 概観してみたい。
1 )地域包括ケアシステムの考え方
地域包括ケアシステムについての考え方を、まずは定義しておきたい。厚生労働省のホー ムページ(2014年
10
月現在)では、地域包括ケアシステムに関する事項の紹介ページを設 けており、そこでは先に述べた地域包括ケア研究会の報告を用いて、以下のように定義して いる。地域包括ケアシステム
団塊の世代が
75
歳以上となる2025
年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣 れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現してい きます。(中略)地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の 自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です(下線筆 者)3)。
ここで重要なのは、地域包括ケアシステムの重要な柱を「住まい」「医療」「介護」「予防」「生 活支援(福祉サービス)」の
5
つの構成要素に集約し、それぞれが住み慣れた地域(概ね30
分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域を単位として想定)で一体的に提供され るものであると定義していることである。さらに「誰が、どのように支えるのか」について、費用負担や時代・地域による違いを考慮し、「自助」「互助」「共助」「公助」の
4
つの役割の 視点からシステムを整理している。このことは地域ケアシステムの構築が、時代や地域の規 模(都市部かそうでないか等)、また地域での考え方やつながりによってその方法が異なる ものであり、地域の実情や考え方を意識して進めて行くことが重要であることを示している。つまり、地域包括ケアシステムの構築にあたっては、各地域(市町村を単位とした)の実情 を詳細に把握し、その状況にあったシステムの構築が必要であると言えるし、またそのため には、各地域における関連機関や医療福祉事業関係者、地域住民の相互の連携を構築し、実 態として動くシステムを構築していくことが必要不可欠であると言えよう。
2 )地域包括ケアシステムに関するこれまでの動向
地域包括ケアシステムという考え方がわが国で最初に展開されたのは、1970年代中盤に
広島県御調(みつぎ)町(現在の広島県尾道市)の公立みつぎ総合病院を中心とした、医療・
看護・介護の連携と住民参加による地域での活動実践を含めた包括的なケア体制であるとさ れている。当時この病院の医師で院長であった山口昇氏は、病院を退院後寝たきりになって しまうケースが増えていくという問題に対し、訪問看護等の在宅ケアの取り組みと同時に、
介護・福祉サービスとの連携を行う仕組みを考案し、実践したことに対する説明が、このシ ステムであると述べている4)。公立みつぎ病院での実践は、退院後の患者の生活が自身の家 庭の中で十分な環境におかれておらず、その部分を在宅ケアとしての医療だけでなく、介護 や福祉、また行政や住民とも連携した「面」の連携5)としてその包括的なケアの必要性を 指摘しているが、このことは「地域包括ケアシステム」構築を実現するための重要な示唆と なり得るものであった。
その後、この考え方は
1980
年代における高齢者介護問題の顕在化に伴い、「高齢者保健 福祉10
カ年戦略(ゴールドプラン・1989年)」や「福祉関係八法改正(1990年)」、「新ゴー ルドプランの策定(1994年)」等における在宅福祉サービスの法制化・発展の中でも取り上 げられ、介護保険制度の創設・展開の中で本格的に重要性が指摘されることとなる。2006
年の介護保険法改正にあたっては「地域で支える介護」が改正の一つの柱とされ、その具体策として「地域支援事業の創設」や「地域包括支援センターの設置」が制度の中に 加えられた。このとき設置された地域包括支援センターは、「日常生活圏」と呼ばれる人口
2〜3
万人の圏域において地域支援事業を実施する機関として設置されたが、事業の性格上 介護保険事業の範囲を超えて地域の社会資源をネットワーク化する役割を担っていた。この ことはその後の地域包括ケアシステム構築において、重要な意味を持つことになる。さらに今期(第
5
期)介護保険事業計画の実施における介護保険法改正により、「国及び 地方公共団体が地域包括ケアシステムの構築に努めるべき」という規定が明記され6)、地域 包括ケアシステムの考え方は、介護保険制度の重要な考え方の柱として位置付けられ、段階 的にその導入が開始されている。そして同時期、社会保障改革に向けて意見をとりまとめて いた「社会保障制度改革国民会議」が2013
年8
月に報告書を提出したが、この中でも「医 療と介護の連携と地域包括ケアシステムというネットワークの構築」がうたわれ、まさに今 後の地域ケアの中核概念として、「地域包括ケアシステム」が位置づけられた感がある。しかしながら、具体的なシステムの構築については現在その途についたばかりであり、今 後の施策展開については、こうした考え方を意識しながら、それぞれの市町村が独自に展開 の枠組みや、その具体的な方法について検討をしていく必要がある。つまり、具体的な取り 組みの枠組みについては、大枠としての考え方はあるものの、それぞれ各市町村の取り組み にかかっているのが実情であろう。現在厚生労働省でもこうした取り組みに対する一定の指 針となるべく、各地域のこれまでの取り組みを事例などにまとめているが7)、各市町村がこ の地域包括ケアシステムについてどのような理解を持ち、また方向性を描いているかが、今 後の課題となる。
3 )研究の視点として
今回の研究(検証)の視点として、こうした地域包括ケアシステム全体の取り組みを評価 すると言うよりは、そのシステムが具体的かつ効果的に機能するための基盤・環境要件とし ての部分に着目し、研究・検証を行うこととした。それは今回取り上げた茅ヶ崎市の事業が、
地域(日常生活圏としての地区)における「住民ニーズの把握と的確な相談支援体制の整備
(多様化・複合化する相談への対応)」、そしてそれに対する「サービスへのつなぎ(生活課 題・制度の狭間の課題に対応し、サービスにつなげる)」と「地域福祉に関する人材育成(地 域福祉に関する人材育成を行う)」の
3
つを目的として実施しているものであり8)(( )内 は計画の基本施策の文言)、これらはまさしく地域包括ケアシステムを構築・推進していく ために環境基盤面での整備を考えることになるからである。図
1
は地域包括ケア推進の概念図として厚生労働省が示したものである9)。ここで中心に 置かれている「利用者」としての本人家族を、 地域のネットワークや地域包括ケアセンター が取りまくような形でその図式が展開されているが、重要なのは中心に置かれている 「利用 者」 を、いかにネットワークの仕組みに乗せるか、また住民に具体的な支援をいかに提供す るかということであり、そのための多様で具体的な仕組みづくりが必要だと言うことである。この図で言えば、利用者に対して各方面からの矢印で支援の内容が示され提供がされるよう になっているが、それらを利用者である地域住民(本人・家族)がいかに利用できるか、ま た利用しやすい環境に持って行くか、さらに利用時に各サービスがスムーズに連携出来るか ということが重要であると考えられ、地域包括ケアシステムが機能的に展開していくために は、まずこの部分が重要になると考えられるのである。
図
1
地域包括ケアの推進についての概念図出所 厚生労働省ホームページ「介護サービス基盤強化のための介護保険法等の一部を 改正する法律」資料、2011年6月
図2 地域包括ケアの推進についての概念図
出所 厚生労働省ホームページ「介護サービス基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」資料、2011年6月
また厚生労働省は、市町村における地域包括ケアシステム構築のプロセス(概念図)を示 しているが10)、構築プロセスの最初の段階で「地域の課題把握」と「社会資源の発掘」が 示されており、先に示した茅ヶ崎市の取り組みにおける目的と合致しており、地域包括ケア システム構築のためには、この部分の基盤を構築していく必要があることがわかる。さらに 社会保障審議会介護保険部会は「市町村を核とした生活支援サービス支援体制の充実強化」
の施策を示しているが、ここでは「高齢者が中心となった地域の支え合い(互助)の仕組み の構築」を提案しており、このことは後に示す「コーディネーター配置事業」の主旨と重な るところが多く、その必要性が改めて指摘されているものと言えよう11)。
こうしたことから、本稿での研究視点(検証のポイント)としては、
①住民ニーズの把握と的確な相談支援体制ができているか
②サービスへのつなぎができる体制が構築され、機能しているか
③地域福祉に関する人材育成ができる体制になっているか の
3
点をあげて、事業の検証を行うこととした。3 .茅ヶ崎市におけるコーディネーター配置事業の取り組み
1 )取り組みの経過
茅ヶ崎市では、平成
22
年度から推進している「第2
期茅ヶ崎市地域福祉計画(以下第2
期計画とする)」の重点プロジェクトとして、「コーディネーター配置事業(以下、配置事業 とする)」に取り組んでいる。この配置事業は、第2
期計画の計画体系の中で示された8
つ の基本施策のうち、「地域福祉に関わる人材を育成します」「多様化・複雑化する相談に対応 します」「生活課題・制度のはざ間の課題に対応し、サービスにつなげていきます」の3
つ の施策課題の解決を目的に、計画の重点施策として実施されているものである12)。この事業が実施された背景には、生活問題の複雑化・多様化により、地域の中で孤立しや すい状況にある家庭の問題や、制度のはざ間にある方の課題が増加している一方で、それら に対する相談支援の体制が十分でなかったという反省がある。これまで、行政や専門機関の 尽力により分野別の相談窓口は充実してきているが、高齢や障害といった特定の分野だけの 問題では解決されない生活課題が増加しており、さらに住民が身近な地域で気軽に相談でき る体制づくりが求められているということがあった。例えば、地域包括支援センターは市内
12
カ所の地区で設置されてはいるが、あくまでも介護保険事業の推進における相談機関で あり、障害者や子育て、生活困難者等高齢者以外の対象に向けた事業の展開には困難があっ た。また同一の市内12
地区には、住民の自主的な活動を支援する「地区ボランティアセン ター」が設置されているが、ここにも多様な生活相談が持ち込まれており、相談機能や情報 発信の拠点として地域住民等からさらなる活動が期待されていた。また専門機関からも、制 度利用者の地域での生活状況の把握の必要性が出されており、身近な地域で活動している地 区ボランティアセンターとの連携が期待されていた。市ではこうした状況を踏まえて、地区レベルで課題を把握し問題解決につなげられる仕組
みの構築を目指し、地区ボランティアセンターを中心に、また専門職も含めた多くの団体が 協力して問題解決に当たることができる体制として、この「コーディネーター配置事業」を 第
2
期計画で実施することとしたのである。市ではこれに先立ち、第1
期茅ヶ崎市地域福祉 計画(平成17
年3
月策定・以下第1
期計画とする)を策定した際に、地域における様々な 生活課題をより迅速かつ的確に把握するために「専門的な知識を持った地域のコーディネー ターの配置」を重点施策として掲げ、その配置育成に努めてきた経過がある。しかしながら、第
1
期計画において考えられた専門的な知識を持った地域のコーディネーターにはどのよう な「専門性」が求められるのか、それを誰がどのように担うのか、どのエリアでそれを実践 するのか等について不明確なところが多く、十分な配置ができなかったという反省点があっ た。そこで今回の第2
期計画においては、コーディネーターの名称や考え方を整理した上で、その体制を再検討し、「コーディネーター配置事業(以下、配置事業とする)」として新たに 事業に取り組むこととしたのである。
2 )事業の概要
コーディネーター配置事業は、地区ボランティアセンター13)を起点として、地区の様々 な生活課題の相談を受付け、コーディネーター(専門員)14)を中心としたスタッフが対象者 に直接働きかけるチームを結成することにより(地区支援チーム)、問題解決につないでい く体制作りを目指して実施されたものである。この事業は、以下の
4
つの柱によって構成さ れている。①モデル事業の実施
コーディネーター配置事業は、市内の
2
カ所を先駆的なモデル事業地区として位置づけ、具体的な事業展開を行った。市内
12
の地区で組織されている「自治会連合会圏域」の圏域 のうち、「湘北地区」と「浜須賀地区」(図2)の 2
地区をモデル事業地区として位置づけ、そのエリア内に「地区支援チーム(②で説明)」を設置し地域福祉が円滑に進むよう、事業 の実施と検証を行った。
②地区支援チームの結成(3 種のコーディネーターのチーム)
事業は①で述べた
2
地区のボランティアセンターを拠点とし、それぞれの地区において「地 区支援チーム」を結成し、チームを単位として事業を実践していった。地区支援チームのメ ンバーは「3種のコーディネーター」と称して位置づけられるもので、それぞれの役割を明 確化して分担を行った。それらは次の通りである。(1)コミュニティソーシャルワーカー(以下、CSWとする)
コミュニティソーシャルワーカーは本事業の中心的な役割を担うコーディネーターで、市 社会福祉協議会の地区担当職員が兼務する。業務としては積極的に地区に出向き、地区活動 コーディネーターと地区支援コーディネーター(後述)、他の専門機関や支援者と連携して、
地域住民の課題解決に向けて調整を図る。選出は、茅ヶ崎市社会福祉協議会会長が行う。
(2)地区活動コーディネーター
地区活動コーディネーターには、地区ボランティアセンターのスタッフが就任する。地 区に寄せられるあらゆる相談を受け止め、地区では対応困難な住民からの相談について、
CSW
や地区支援コーディネーターに相談しながら、自分たちでできる対応方法を検討し、実践する役割を担う。選出は地区社会福祉協議会の会長が行う。
(3)地区支援コーディネーター
地区支援コーディネーターには、福祉相談室(モデル地区を担当する地域包括支援センター の中に設置)の福祉相談員が就任する。地区に寄せられるあらゆる相談について、専門的な 見地から
CSW
や地区活動コーディネーターをサポートする役割を担う。また同様に、各種 制度の「はざ間」にある課題の解決手段について検討する。選出は、福祉相談室を運営する 法人の代表者が行う。この地区支援チームの中核をなす「コーディネーター」の考え方については、第
2
期計画 で2
種類に分けて位置づけている。それは、「専門員としてのコーディネーター」/生活課 題を抱えて困っている人の課題解決に向け専門的な見地からサポートし、支援につなげてい く役割をするコーディネーター、と「けん引役としてのコーディネーター」/生活課題を抱図
2
茅ヶ崎市における自治会連合会の圏域と地区ボランティアセンター・地域 包括支援センターの配置出所 茅ヶ崎市資料
えて困っている人が「ちょっと悩みを聞いて欲しい」と言うときに身近に感じられる存在と なり、地域住民として地域福祉を牽引していく役割をするコーディネーターである15)。こ の位置づけに即して、CSWと地区支援コーディネーターを「専門職としてのコーディネー ター」と位置づけ、また地区コーディネーターを「けん引役としてのコーディネーター」と して位置づけ、それぞれ地区支援チームの中で役割の分担を行ったのである。この地区支援 チームの役割とそれぞれのコーディネーターの活動こそ、今回の研究の核心部分となるもの であり、研究の視点でも述べた
3
点を実践していく上でも、とても重要なものであったと考 えたのである。③福祉なんでも相談窓口の設置・運営
相談支援事業の具体的な展開の第一歩として、地域住民の悩み事など様々な相談に対応す る「福祉なんでも相談窓口」を、地区ボランティアセンター内に開設した。ここでは地域住 民自身が抱える悩み事を気軽に相談して頂き、そこから対応が困難で制度にはつながらない 問題を発見するなどの機能が期待された。地区ボランティアセンター窓口では、他にも草取 りやゴミ出しなど日常のちょっとした困りごとに対応する相談日を持っていたが、それとは 別の相談日を設けて、地域住民の悩み事など様々な相談への対応にあたった。
原則として相談日は各地区月
1
日としたが、それぞれの活動範囲の中で随時相談も受け付 け、対応にあたっている。④地区支援ネットワーク会議の設置・運営
③の相談事業などを通じて、地区ボランティアセンター等で把握した地域住民が抱える生 活課題のうち、制度的なサービスにつなげて課題解決の検討をしたり、また対応が困難なケー スにかかる情報を共有することなどを目的に、地区支援チームのコーディネーターを中心に 他の関係機関を交えた「地区支援ネットワーク会議」を定期的に開催した。この会議では、
地区の困難事例の情報共有や専門相談窓口や行政のほか関係機関との連絡調整、福祉サービ ス等につなげるまでの具体的な支援内容の検討(個別支援の実施)、地区における住民活動 の取り組み(定期的な見守り活動の検討)などを議題として、地区での課題に丁寧に対応し ていくための枠組みを作っていこうとするものであった。
それぞれのモデル地区において毎月
1
回、概ね2
時間の会議を持ち、情報の共有化と課題 解決のための取り組みを行ってきている。3 )実践の取り組み状況と具体的な相談ケース対応の状況
本事業は、すでにモデル事業として約
3
年間の試行実施が終了しており、その結果は「茅ヶ 崎市コーディネーター配置事業報告書」(2014年/平成26
年1
月。以下報告書)としてま とめがされている。ここではこの報告書の結果を基にして、その後の若干のデータも加えな がら、取り組みの状況について振り返りをしてみたい。①「福祉なんでも相談窓口」での相談状況(相談件数・H23.2 ~ H26.10)
図
3
は、これまで2
つのモデル地区で取り上げられた「福祉なんでも相談」の件数を一覧 にしたものである。両地区とも、初年度こそ年度途中と言うこともあり、また周知が行き届 かなかった面もあるがその後、件数自体も増加傾向が見られ、年間で20
件程度の相談が出 てくるようになった。地区レベル月1
回の相談窓口開催で、年間20
件程度の相談があると いうのは、件数としてはかなり多いのではないかと考えられる。内容としては高齢関係の相 談が多いものの、単独の課題だけではない複合型の課題や、また制度などの対応が困難な課 題などもあがってくるようになっている。これらの相談が地区ボランティアセンターに寄せられるようになった背景には、地域の 方々へ活動が徐々に浸透してきていることと、利用者や活動者(ボランティアセンターの)
を通じて、その内容が理解されてきていることがあると考えられる。この間、地区での説明 会やまたモデル事業の広報など、多くの方がこの事業を目にしてきた。定期的な相談の場が 確保されていることや、自分たちの生活に近い場所で活動している姿が見えることが、相談 につながってきているのではないだろうか。
②地区支援ネットワーク会議の開催状況
①で把握した相談ケースを中心に、地域住民が抱える生活相談のうち、対応が困難だと思 われるケースについての情報を共有化し、また課題を解決するためのサービスを検討するこ とを目的に、地区支援チームを中心に関係機関を交えて「地区支援ネットワーク会議」(以下、
ネットワーク会議とする)が実施されている。この会議はモデル地区ごとに開催日時、時間 等を調整し、また構成するメンバーも若干異なる形で展開がされている。なお、浜須賀地区
図
3
モデル地区における「福祉なんでも相談窓口」への相談件数図4 モデル地区における「福祉なんでも相談窓口」への相談件数
【浜須賀地区】82 件(高齢 50 件/障害16 件/児童 2 件/その他14 件)
2010 年度 0 件 1 件 0 件 0 件
2011 年度 11 件 2 件 0 件 5 件
2012 年度 21 件 5 件 1 件 5 件
2013 年度 4 件 5 件 1 件 0 件
2014 年度 14 件 3 件 0 件 4 件
【湘北地区】58 件(高齢 46 件/障害 8 件/児童 3 件/その他1件)
高齢 障害 児童 その他
2010 年度 0 件 0 件 0 件 0 件
2011 年度 10 件 2件 2件 0 件
2012 年度 17 件 1件 0 件 1件
2013 年度 11 件 4 件 0 件 0 件
2014 年度 8 件 1 件 1 件 0 件
*2013及び2014年度については、地区からの報告を基に筆者追加。
2014年度は10月までの数値で集計 その他
高齢 障害 児童
図4 モデル地区における「福祉なんでも相談窓口」への相談件数
【浜須賀地区】82 件(高齢 50 件/障害16 件/児童 2 件/その他14 件)
2010 年度 0 件 1 件 0 件 0 件
2011 年度 11 件 2 件 0 件 5 件
2012 年度 21 件 5 件 1 件 5 件
2013 年度 4 件 5 件 1 件 0 件
2014 年度 14 件 3 件 0 件 4 件
【湘北地区】58 件(高齢 46 件/障害 8 件/児童 3 件/その他1件)
高齢 障害 児童 その他
2010 年度 0 件 0 件 0 件 0 件
2011 年度 10 件 2件 2件 0 件
2012 年度 17 件 1件 0 件 1件
2013 年度 11 件 4 件 0 件 0 件
2014 年度 8 件 1 件 1 件 0 件
*2013及び2014年度については、地区からの報告を基に筆者追加。
2014年度は10月までの数値で集計
高齢 障害 児童 その他
は毎月第
1
水曜日の午後、湘北地区は毎月第4
火曜日の午前にそれぞれ2
時間程度の時間で 開催されている。地区の状況により、進め方や取り上げる内容なども若干異なるが、この会議で得られた効果 はそれぞれの地区で多くの部分が共通している。開催状況を概観すると、ネットワーク会議は 地区で活動や事業を展開する様々な方々(専門職も地域住民・団体も)の連携を創造し、地 域課題に即した「実態的な」連携を作り出している重要な「場」ではないかと考えられる16)。
③具体的な相談ケース対応の状況(ネットワーク会議の検討から見えてくるもの)
報告書では、各地区において実際に対応した「相談事例」についての分析結果が掲載され ている17)。ここでは双方の地区で取り組んだ
6
つの事例について、特にネットワーク会議 で扱われたケースの考察として検討結果が示されている。これらの結果から見えてくるのは、専門機関あるいは地域住民の立場で相互に持っている 気づきや不安、また認識のずれなどが、ネットワーク会議によって多くが解消されていると 言うことである。と同時に、それぞれの持つ特徴や利点が確認され、またそれぞれが所属す る立場や役割を考えながら、具体的な支援の方向性と方法が示され、効果的な支援につながっ ていると言うことである。
前述した「地域包括ケア研究会報告書」で指摘されている「地域のネットワーク構築」の 重要性と機能という視点において、まさに具体的な指摘がこれらケース対応事例から見えて くることがわかる。こうした具体的な事例の分析・積み上げが、小地域レベルのでネットワー ク構築には欠かせないものであるだろう。
4 .「コーディネーター配置事業」の検証
1 )事業状況からの検証
これまで見てきた茅ヶ崎市のコーディネーター配置事業の状況について、前述の検証ポイ ントであげた
3
点を中心に、検証を試みる。①住民ニーズの把握と的確な相談支援体制ができているか
住民ニーズの把握については、相談件数が各地区とも増加傾向にあり、また高齢者対象の 相談は多いものの、様々な対象分野からも相談依頼が増加している。このことは、相談事業 が一定の成果を上げているものとして評価できると考える。さらに、相談が寄せられる対象 も直接地域住民からのものもあれば、福祉相談室や地域の専門相談機関(例えば障害者の相 談支援事業者)など、多岐に渡った対象から相談が寄せられるようになっていることも、こ の事業が少しづつ地域の方々に浸透してきていることを裏付けており、住民ニーズの把握に あたって広がりが見られるようになっていると見ることができるだろう。
的確な相談支援体制の構築については、ネットワーク会議の役割が様々な機関や組織に浸 透し、また活用がされてきている状況が事例報告などから報告されている。このことは、よ
うやく体制整備の基盤が固まってきたという段階であると見ることができるだろう。全市的 に見ても、ネットワーク会議が開催されているモデル地区は全体のごく一部であり、今後、
この体制が全市的に拡大していくためのノウハウや技術を積み上げていく必要がある。
②サービスへのつなぎができる体制が構築され、機能しているか
サービスへのつなぎができる体制の構築については、前述したとおり現在その途上ではあ るものの、ネットワーク会議の相談事例等から見ると有効なつなぎ体制が構築されつつある とみることができよう。特にネットワーク会議において、地区活動コーディネーター(地区 ボランティアセンター)や地域住民からあげられたニーズが、
CSW
や地区支援コーディネー ターを介して適切に専門相談機関につなげられるケースが出てきていることや、専門機関が 地区活動コーディネーターの持つ情報等を入手し、それを援助対象者の支援に用いるという ような相互の情報共有・交換の場が構築されてきており、まさに地域においてフォーマルと インフォーマルの仕組みの連携が構築されつつあることがうかがえるのではないだろうか。このことは地域包括ケアシステムの推進における、「地域のネットワーク構築」の具体的な 展開を示すものであり、こうした仕組みが小地域のレベル(茅ヶ崎ではモデル地区)で展開 され具体的にその動きが例示できることは、他地区への展開を助けるものとして評価できる ものだろう。
但し、こうした体制はそれぞれの地区レベルで異なるものであると考えられ、構築にあたっ てどのような点に留意すべきか、またどのように展開すべきかの手法を具体的に例示してい くことが今後求められると考えられる。
③地域福祉に関する人材育成ができる体制になっているか
3
項の事業展開のところでは具体的な紹介はしなかったものの、これまで述べてきた体制 の構築にあたっては、全市レベル及び地区レベルで様々な人材育成の取り組みが展開されて いる。全市レベルでの取り組みについては、地区活動コーディネーター向けの研修と専門職向け の研修の
2
本立てで人材育成に取り組んでいる18)。地区活動コーディネーターの育成につ いては、「コーディネーターの相談支援技能向上研修」として、平成22
年度より毎年テーマ を設けて、研修事業を開催してきている。また市社会福祉協議会においては、情報の共有化 や個人情報保護などの具体的な援助の技法や考え方についての研修事業も行っている。また 専門職向けの研修については、地区支援コーディネーターが活動していく上で連携先となる、市役所庁内関係機関を中心に、各コーディネーターを対象とした研修事業を年次で実施して いる。さらに個人情報の活用という視点から、専門機関や地域福祉活動団体との情報共有や 役割分担についての研修を市社会福祉協議会が実施している。
一方地区レベルでは、こうしたコーディネーター事業にかかる人材の発掘・育成について、
各地区でボランティアセンターを中心とした広報紙の発行や情報の提供、またボランティア 育成講座を開催して、特に人材の発掘に力を入れている状況がある。
人材の育成(地区レベルでの発掘を含め)については、特に事業の周知という観点から地 域住民への情報提供と併せて実施をしていく必要があり、その意味では本事業の有効性や効 果性、また実行が可能な仕組みの提案を併せながら、展開をしていく必要がある。その意味 では、人材育成に関しての取り組みは、今後の大きな課題として捉えられるべきものであろう。
2 )これからの推進課題として
以上、私見として
3
つの視点からコーディネーター配置事業の評価・検証を行ったが、本 事業ではその検証場面として「茅ヶ崎市コーディネーター配置事業検証会議」を開催し、事 業の検証を行っている。また2012
年10
月から翌2013
年2
月にかけて、コーディネーター 配置事業の中間報告会をモデル地区、専門支援機関、市全体に対して報告会として開催し、様々な意見を頂きながら、検証の場面に活かしてきている。その結果は前述の報告書におい て、「事業の課題と取り組むべき事項」として
6
点を挙げてまとめられている19)。これらの 課題は、実際の事業運営における運営上の課題がその主なものであり、今後の事業展開に対 する実務上の課題や方向性が示されているのでご覧頂きたいが、最後に筆者として、本事業 が今後効果的に事業展開していくために解決が必要だと思われる事項について、若干の考察 を加えておきたい。①住民の個人情報(プライバシー)保護に関して(民生委員・児童委員活動との連携)
先に述べた報告会等でも毎回のように意見があがったのが、この話題であった。特に、す でに地区レベルで活動をしている民生委員・児童委員との連携については重要性が指摘され る一方で、個別性の高い個人情報について地区活動コーディネーター等がどこまで立ち入れ るのか、また地区ボランティアセンターとしてどのように関わるかの判断が難しいところで ある。住民ニーズの把握、また支援における連携体制の構築の必要性は無論重要であると考 えられるが、民生委員・児童委員が持つ守秘義務事項をそのまま公開することは、制度の運 営上(民生委員法等から)難しいと考えられる。
この課題については今後、地区活動コーディネーターが扱う個人情報についての基準を明 確にしつつ、その提供の仕方や範囲などについて、事例などを示しながらマニュアル化して いく必要がある。また他の連携機関、特に民生委員・児童委員との連携においては、共有す る情報の範囲や方法、また連携の取り方やケースへの関わり方など、個別の事例案件を考慮 しつつ、関係者間での合意形成を具体的にしておく必要があるだろう。その際気をつけなけ ればならないのは、どの事例においても「ここまで」と介入の範囲を一律に決めてしまうの ではなく、連携する当事者間での協議によって、合意形成を図っていくということではない だろうか。
②全市展開を目指した取り組み体制の進め方について
今回の事業はモデル事業と言うこともあり、現時点では
2
地区の展開にとどまっているが、全市展開が目標となることは言うまでもない。報告書の中でも「他地区への事業展開」が課
題としてあげられているが、第
2
期計画の中では「コーディネーター配置事業の将来像」と して、12地区(全地区)においての事業実施と地区支援ネットワーク会議の体制が整った 段階で、市全体の調整を行う組織として「(仮称)地域福祉総合調整チーム」の設置をうたい、その連携モデルを示している(図
4)。
全市的な取り組みについての将来像を描き、モデルを示すことは必要だと考えられるが、
そのことが一律的な設置(機械的にネットワーク会議を設置してしまうような)にならぬよ う、その進め方には注意をしていく必要がある。基本的には地域での取り組みについての合 意を得た上で、その地域の特性にあった体制を考えるため、地区支援チームの中で十分に検 討し、地域住民の参加のもと体制を構築していくことが必要であろう。また「(仮称)地域 福祉総合調整チーム」における設置の目的やそこでの検討内容、また具体的なメンバーはど のような方なのか等についても、今後他地区への展開をしていく際の説明等の段階で、触れ ておくことが重要である。
③地区活動を巡る他事業との関係(「まちぢから協議会」との関係で)
小地域で取り組む課題は、何も福祉課題だけではない。地域での防災や防犯、子どもの教 育や環境問題など多岐にわたっている。近年、こうした町内会や自治会あるいはその連合体 こうした動きに対応するため、全国で自治会を中心として地域の様々な事業に対応する仕組 み作りが始められている20)。
図5 地区支援ネットワーク会議と(仮称)地域福祉総合調整チームの連携イメージ
出所 第2期茅ヶ崎市地域福祉計画 、2010年3月
図
4
地区支援ネットワーク会議と(仮称)地域福祉総合調整チームの連携イメージ 出所 第2期茅ヶ崎市地域福祉計画、2010年3月茅ヶ崎市においては、こうした小地域でのコミュニティづくりを進めていくために、平 成
24
年度から「まちぢから協議会」を設置し、モデル事業としての活動が始められている。この事業は各自治会を中心に、地域内の各種団体や住民の参加により、地域の様々な活動を 話合いまた共有化しながら、顔の見える関係作りと団体同士の連携を図ることで、自治会を 中心とした地域活動がより活発になることを目的として、事業が展開されている。現在、モ デル事業は
5
つの地区において展開されているが21)、この事業は今回検証している「コーディ ネーター配置事業」と目的・内容面で共通する部分が多い。今後のコーディネーター配置事 業の円滑な展開のためには、こうした事業とどのように連携し、また役割の分担をしていく かの検討が必要である。今回のコーディネーター配置事業においても、その基盤となるのは 市内12
地区の自治会連合会であり、まさにこの「まちぢから協議会」の活動と圏域や活動 内容でも多くの部分で重複している。こうした活動を実践するのは地域住民であり、組織が 重複し、またその内容や考え方も重複部分が多いとなれば、活動推進においても混乱を生じ ることになる。どちらの事業も、その目的は「安心して生活できる地域社会の構築」である とすれば、事業内容や組織の整理を明確にし、その進め方を住民に明示していくことが必要 であるだろう。こうした小地域における事業の重複は多くの自治体で実際におこっているが、何を目的に 事業を展開するのかにより、特に行政事務局内での調整は欠かせないものであると思われる。
④多領域にわたる事業展開に向けて
『真の』包括ケアシステム構築に向けての地域包括支援センターの役割
今回のコーディネーター配置事業では、小地域における「相談支援体制のあり方」の検討 が重要な項目であったが、地区ボランティアセンターを中心とするインフォーマルな相談支 援体制の整備だけでなく、福祉相談室を中心とするフォーマルな相談支援体制の整備につい ても、その検討素材を提供してくれたものであると筆者は考えている。
茅ヶ崎市においても専門機関による生活相談事業は、各分野ごと(高齢、障害、児童など)
に様々な形で展開されているが、それぞれが事業展開をしているために、地域住民の側では 相談窓口を自身で選択していく必要がある。しかしながらこうした問題はひとつの対象分野 だけで解決できるものではなく、複合的な問題として引き起こされていることが多いため、
住民の側ではどこに相談すればよいのかわからない状況が発生し、その結果問題の発見が遅 れてしまったり放置されたりするケースも多く見られる。こうした問題を相談支援事業とし て拾い上げていくためには、地域においてもどのような分野の問題もまずは対応できる「ワ ンストップ相談体制」が必要であると考える。
今回のコーディネーター配置事業における「福祉相談室」はまさにその役割のために配置 されたものであり、今後の活躍と展開が期待されるところであるが、現在この「福祉相談室」
は地域包括支援センターの中に設置されているため、センターの本来業務である高齢者分野 あるいは介護保険事業との関連だけが課題になってしまう恐れがあると考えられる。今回取 り上げた「地域包括ケアシステム」は、介護保険事業の中で提案され実施されているもので
あるが、今後このシステムが『真の』意味で包括ケアを実施していくのであれば、高齢分野 だけでなく、障害や児童、生活困窮などあらゆる生活課題の側面に対応する事業展開を実施 して行かなければならない。そのためにはこうした「福祉相談室」の役割と配置は大変重要 であり、今後効果的な配置と運営を考え推進していくことが必要とされるであろう。茅ヶ崎 市では現在、次期地域福祉計画(第
3
期地域福祉計画)を策定中であるが、この中の「重点 的な取り組み」のひとつに、福祉相談室の充実が取り上げられ検討されているところである。5 .おわりに
以上、本稿では茅ヶ崎市における「コーディネーター配置事業」の検証を通して、地域ケ アシステムの構築に必要な、小地域における「相談支援体制のあり方」と「地域のネットワー ク構築」について検討を加えてみた。総括すればこの
2
つの柱の検討においては、専門機関 とインフォーマルな活動(地区ボランティアセンター等の住民の自主的な活動)の相互の連 携が不可欠であり、それを小地域レベルで、その地域の実情に即してどのように具体的に展 開していくかが重要だと言うことであろう。そのためには、地域のニーズを充分に把握し、地域住民との協働のもと、こうした体制の構築をはかっていくことが求められる。そしてそ れはまさに、これからのわが国における共生社会の実現に向けた新たな地域福祉施策の展開 として、必要不可欠なものであると考えるのである。
地域包括ケアシステム構築の流れの中で現在、全国の自治体において様々な取り組みが展 開されているところであるが、その地域の実情を充分に把握し、その地域の方々の想いを充 分に汲んだシステムの構築を望むところである。
注 記
1)地域包括ケア研究会「地域包括ケア研究会報告書」、2013年
3
月、27頁 2)前掲書 32頁3)厚生労働省ホームページ、2014年
10
月http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-
houkatsu/
4)高橋紘士「地域包括ケアシステム」オーム社、2012、13頁 5)前掲書
32
頁6)介護保険法第
5
条第3
項。2012年4
月施行7)株式会社日本総合研究所 平成
25
年度老人保健事業推進費等補助金地域包括ケアシス テム事例分析に関する調査研究事業「事例を通じて、わが町の地域包括ケアを考えよう『地域包括ケアシステム』事例集成」2014年
3
月など8)茅ヶ崎市「第
2
期茅ヶ崎市地域福祉計画」2010年3
月 42頁9)厚生労働省 「介護サービス基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」資 料、2011年
6
月10)前掲 厚生労働省ホームページ
11)「介護保険制度改革の見直しに関する意見」(社会保障制度審議会介護保険部会報告)
平成
25
年12
月12)前掲 第
2
期計画報告書6 – 7
頁 13)前掲 第2
期計画報告書40
頁 14)前掲 第2
期計画報告書42
頁 15)前掲 第2
期計画25
頁16)茅ヶ崎市「茅ヶ崎市コーディネーター配置事業報告書」2014年
1
月、24 – 25、32– 33頁 17)前掲配置事業報告書38 – 49
頁18)前掲配置事業報告書
12 – 15
頁 19)前掲配置事業報告書56 – 57
頁20)国が進める「地域自治区制度」などがこれにあたる 21)茅ヶ崎市ホームページ
http://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/shiminsanka/1007706/1007867.html