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−高 齢者医療 ・介護、医療的 ケア児支援、高齢障害者 支援に着目して−

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(1)

2019年度博士学位申請論文 

大都市における複合的支援ニーズに対する  サービス供給システムの連携に関する研究 

−高 齢者医療 ・介護、医療的 ケア児支援、高齢障害者 支援に着目して−

立教大学大学院コミュニティ福祉学研究科 

竹  田  幹  雄 

(2)

目  次 

序   章

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  1

第 1 節   研 究 の 背 景

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  1

第 2 節   研 究 の 目 的 と 方 法

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  2

第 3 節   本 研 究 の 位 置 づ け

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  7

第 4 節   本 研 究 の 枠 組 み と 論文 の 構 成

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 12

第 1 部   大 都 市 で 焦 点 化 す る複 合 的 支 援 ニ ー ズ へ の対 応  

第 1 章   大 都 市 福 祉 行 政 を 取り 巻 く 状 況 と 運 営 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 17

第 1 節   大 都 市 福 祉 行 政 の 運営 構 造

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 18

第 2 節   大 都 市 に お け る 医 療・ 介 護 ニ ー ズ の 増 加

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 20

第 3 節   細 分 化 す る 支 援 ニ ーズ と サ ー ビ ス 供 給

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 

第 4 節   大 都 市 に お け る 福 祉行 政 運 営 の 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 25

第 2 章   複 合 的 支 援 ニ ー ズ をめ ぐ る 施 策 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 27 

第 1 節   複 合 的 支 援 ニ ー ズ に対 す る 行 政 的 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 28

第 2 節   支 援 の 谷 間 が 生 じ る問 題 構 造

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 32

第 3 節   大 都 市 に お け る 複 合的 支 援 ニ ー ズ へ の 対 応

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 34

  第 4 節   大 都 市 に お け る 包括 的 支 援 施 策 の あ り 方

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 37

第 2 部   大 都 市 に お け る 包 括的 支 援 施 策 の 実 態 と 課題  

第 3 章   医 療 ・ 介 護 制 度 改 革と 包 括 的 支 援 施 策 の 展開

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 41

第 1 節   医 療 ・ 介 護 制 度 改 革の 全 体 像

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 42

第 2 節   地 域 包 括 ケ ア シ ス テム の 本 質 的 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 46

第 3 節   全 世 代 ・ 全 対 象 型 包括 的 支 援 施 策 の 展 開 と課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 49

第 4 章   大 都 市 に お け る 包 括的 支 援 施 策 の 実 態 − 指定 都 市 調 査 を 踏 ま え て−

・ ・ ・ ・ ・ 53

第 1 節   包 括 的 支 援 施 策 の 分析 枠 組 み

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 53

第 2 節   大 都 市 に お け る 包 括的 支 援 施 策 の 実 態 調 査

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 56

第 3 節   調 査 結 果 を 踏 ま え た施 策 課 題 の 横 断 的 検 討

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 68

(3)

第 5 章   高 齢 者 医 療 ・ 介 護 施策 に 関 す る 考 察

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 72

第 1 節   国 に よ る 医 療 ・ 介 護施 策 の 動 向

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 73

第 2 節   包 括 的 な ケ ア マ ネ ジメ ン ト 体 制 の 必 要 性

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 75

  第 3 節   大 都 市 に お け る 在宅 医 療 ・ 介 護 施 策 の 課題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 78

第 4 節   大 都 市 に お け る 高 齢者 医 療 ・ 介 護 施 策 の あり 方

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 80

第 6 章   医 療 的 ケ ア 児 支 援 施策 に 関 す る 考 察

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 83

第 1 節   医 療 的 ケ ア 児 の 実 態と 支 援 ニ ー ズ

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 83

第 2 節   医 療 的 ケ ア 児 支 援 の現 状 と 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 86

第 3 節   大 都 市 に お け る 医 療的 ケ ア 児 支 援 施 策 の 課題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 90

第 4 節   大 都 市 に お け る 医 療的 ケ ア 児 支 援 施 策 の あり 方

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 93

第 7 章   高 齢 障 害 者 支 援 施 策に 関 す る 考 察

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 96

第 1 節   高 齢 障 害 者 の 実 態 と支 援 ニ ー ズ

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 97

第 2 節   高 齢 障 害 者 支 援 の 現状 と 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 98

第 3 節   大 都 市 に お け る 高 齢障 害 者 支 援 施 策 の 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 100

第 4 節   大 都 市 に お け る 高 齢障 害 者 支 援 施 策 の あ り方

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 103

第 3 部   大 都 市 型 包 括 的 サ ービ ス 供 給 シ ス テ ム の 構築 に 向 け て  

第 8 章   福 祉 多 元 化 と 自 治 体ア ド ミ ニ ス ト レ ー シ ョン

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 106

第 1 節   福 祉 サ ー ビ ス の 民 営化 と 供 給 体 制 の 変 容

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 106

第 2 節   福 祉 多 元 化 と サ ー ビス 供 給 シ ス テ ム の 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 109

第 3 節   多 元 化 時 代 に お け る自 治 体 ア ド ミ ニ ス ト レー シ ョ ン

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 114

終   章   大 都 市 に お け る 包 括的 な サ ー ビ ス 供 給 シ ステ ム の あ り 方

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 118 

第 1 節   複 合 的 支 援 ニ ー ズ に対 応 す る サ ー ビ ス 供 給シ ス テ ム の 構 造

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 119

第 2 節   大 都 市 福 祉 行 政 の アド ミ ニ ス ト レ ー シ ョ ン

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 122 

第 3 節   大 都 市 に お け る 新 たな 相 談 支 援 シ ス テ ム の提 案

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 125

第 4 節   本 研 究 の 到 達 点 と 今後 の 課 題

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 129

引 用 ・ 参 考 文 献

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 132

謝   辞

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 147 

(4)

序  章 

第 1 節   研 究 の 背 景  

我 が 国 の 社 会 保 障 制 度 は 、 少子 高 齢 化 の さ ら な る 進展 を 見 据 え 、 ど の よ うに 持 続 可 能性 を 確 保 し て い く か と い う こ と が 大 き く 問 わ れ て い る ( 社 会 保 障 制 度 改 革 国 民 会 議

2015:

3)。と り わけ 生 活 に 密 着 し た福 祉 分 野 に は 、家 族 や地 域 社 会 の 変 容 、科 学 技 術 の高 度 化 や

サ ー ビ ス 形 態 の 進 化 な ど を 背景 と し て 、 単 な る ニ ーズ の 増 加 へ の 対 応 だ けで な く 、 ニ ーズ の 多 様 化 ・ 複 雑 化 へ の 対 応 も求 め ら れ る よ う に な って き た ( 厚 生 労 働 省 ・新 た な 福 祉 サー ビ ス の シ ス テ ム 等 の あ り 方 検討 プ ロ ジ ェ ク ト チ ー ム

2015:1)。

こ う し た 社 会 的 要 請 に 応 え るた め に 、 多 様 な 主 体 によ っ て サ ー ビ ス を 供 給す る 福 祉 多元 化 が 推 し 進 め ら れ 、 サ ー ビ ス基 盤 の 拡 充 と 国 民 生 活の 向 上 が 実 現 し た こ とは 事 実 で あ る。

そ の 一 方 で 、 事 業 参 入 へ の 規制 緩 和 や 多 方 面 で の 専門 性 の 向 上 に よ っ て サー ビ ス 提 供 体制 が 細 分 化 し 、 経 営 方 針 や 職 員体 制 、 支 援 の 内 容 や 方法 が 異 な る 組 織 が モ ザイ ク 的 に 出 現す る よ う に な っ て お り 、 円 滑 なサ ー ビ ス の 供 給 を 不 確実 な も の と す る リ ス クが 大 き く な って い る

1)

。病 院 や 施設 に お け る ケア か ら 地 域 に お け る ケア へ と 支 援 の あ り 方 がシ フ ト し 、様 々 な サ ー ビ ス を 切 れ 目 な く 提 供し て い く こ と が 求 め られ て い る 中 で 、 異 な る事 情 や 価 値 観を も っ た 組 織 を 取 り ま と め て 、地 域 全 体 と し て あ る べき 姿 を つ く り 上 げ て いく こ と は 容 易で な い

2)

こ の よ う な 課 題 は 、大 量 か つ多 様 な 地 域 資 源 が 存 在す る 大 都 市 ほ ど 生 じ やす く な る が

3)

、 大 都 市 で は 様 々 な 事 情 を も つ人 々 が 生 活 し て お り 、単 身 で 寝 た き り の 要 介護 高 齢 者 、

24

時 間 医 療 的 ケ ア が 必 要 な 子 ど も、 高 齢 に な り 施 設 に 通う こ と が で き な く な った 障 害 者 、 認知 症 の 親 と 精 神 障 害 の あ る 子 ども が 同 居 す る 家 庭 な ど、 医 療 だ け 、 介 護 だ けで は 支 え 切 れな い ケ ー ス が 目 立 つ よ う に な って き て い る 。 こ う し た支 援 ニ ー ズ に 対 応 す るた め に は 、 様々 な 支 援 機 関 が 緊 密 に 連 携 し てい か な け れ ば な ら な いが 、 支 援 者 に よ る 治 療や 介 入 と 当 事者 に 対 す る 受 容 や 見 守 り の ど ちら を 優 先 す る の か 、 どの よ う な 支 援 を 誰 が 担う の か と い った 調 整 を し よ う と す る と 、 交 渉の 決 裂 や 役 割 の 押 し 付け 合 い 、 連 携 の 拒 否 が往 々 に し て 発生 す る

4)

。今 後 、大 都 市 で は、生 活 問 題 が 生じ や す い 高齢 者 が 大 幅 に 増 加 し てい く こ と が 見 込

1) 白 澤 は 、 市 場 メ カ ニ ズ ム を 導 入 し た 介 護 保 険 制 度 に よ っ て 、 民 間 企 業 に よ っ て 在 宅 サ ー ビ ス は 拡 充 さ れ た が 、 過 度 な 競 争 に よ っ て 事 業 者 が 撤 退 し 、 利 用 者 に 最 も 必 要 な 継 続 し た ケ ア が 受 け ら れ な い 場 面 も 生 じ て き て い る こ と を 指 摘 し て い る ( 白 澤 200887)。

2) 島 崎 は 、 地 域 に お け る 各 機 関 ・ 職 種 の 「 切 れ 目 な い 」 連 携 の 重 要 性 が 強 調 さ れ て い る に も か か わ ら ず 、 こ う し た 連 携 が 実 現 で き て い る 地 域 は 多 く な い こ と を 指 摘 し て い る ( 島 崎2013141)。

3) 太 田 は 、 こ う し た 大 都 市 特 有 の 「 見 え に く さ 」 に よ っ て 、 利 用 者 ・ 事 業 者 ・ 自 治 体 の 共 同 連 帯 の 形 成 が 難 し く な る た め 、 利 用 者 ・ 家 族 の 不 安 感 の 増 長 や 事 業 者 の 経 営 の 不 安 定 化 が 生 じ る こ と を 指 摘 し て い る ( 太 田 2012:32-34)。

4) 島 崎 は 、 こ う し た 情 報 連 携 の 不 調 が 、 組 織 ・ 職 種 間 で の 「 イ ン タ ー フ ェ ー ス ・ ロ ス 」 に よ っ て 発 生 す る と し て 、 そ の 背 景 に は 、 職 能 ・ 職 責 の 相 違 や 受 け て き た 教 育 の バ ッ ク グ ラ ウ ン ド が 異 な る こ と や 、 属 す る 組 織 体 の 組 織 や 仕 事 の 内 容 に よ っ て 方 針 や 考 え 方 が 異 な る こ と が あ る と し て い る ( 島 崎 2013:141-142)。

(5)

ま れ て お り

5)

、 複 合 的 支 援 ニ ー ズ を め ぐ る 対 応 は 、 こ れ か ら の 我 が 国 の 福 祉 政 策 に お け る 大 き な 課 題 に な っ て い く も のと 思 わ れ る 。

  そ う し た 中 で 、 サ ー ビ ス 供給 過 程 に お い て 生 じ る問 題 は 、 サ ー ビ ス を 供給 す る 民 間 主体 に よ っ て 解 決 さ れ る こ と が 望ま し い の は 言 う ま で もな い が 、 解 決 で き な い状 況 が あ る ので あ れ ば 、 責 任 を も っ て 対 策 を 講 じ て い く の が 福 祉 行 政 の 役 割 で あ る

6)

。 こ う し た 取 り 組 み が 、 そ れ ぞ れ の 地 域 の 実 情 と自 治 体 の 行 政 能 力 に よっ て 成 り 立 っ て い る こと を 直 視 し た上 で 、 福 祉 行 政 運 営 の あ り 方 を実 践 的 に 検 討 し 、 具 体的 な 解 決 策 を 提 示 し てい く こ と が 、今 日 の 社 会 福 祉 研 究 に 求 め ら れて い る 。

第 2 節   研 究 の 目 的 と 方 法  

1 . 研 究 の 目 的  

本 研 究 は 、 以 上 の よ う な 状 況を 踏 ま え 、 こ れ か ら の我 が 国 の 福 祉 政 策 に おい て 大 き な課 題 と な る 「 大 都 市 」 と 「 複 合的 支 援 ニ ー ズ 」 に 焦 点を 当 て て 、 双 方 の 課 題を 乗 り 越 え るこ と が で き る サ ー ビ ス 供 給 シ ステ ム の あ り 方 を 明 ら かに す る こ と を 目 的 と して い る 。 な お、

サ ー ビ ス 供 給 シ ス テ ム は 、 様々 な 機 関 ・ 施 設 ・ 事 業所 に よ っ て 構 成 さ れ るも の で あ り 、そ れ ぞ れ を つ な ぐ た め の 相 談 支援 や 情 報 連 携 、 さ ら には 財 源 調 達 や 資 金 の 配分 、 マ ン パ ワー の 確 保 ・ 育 成 と い っ た 仕 組 みや 環 境 の 整 備 な ど 、 多様 な 要 素 に よ っ て 構 成さ れ る 。 そ の一 つ ひ と つ が 重 要 で あ る こ と は間 違 い な い が 、 全 体 がシ ス テ ム と し て 機 能 する た め に は 、行 政 に よ る 運 営 管 理 が 非 常 に 大き な 役 割 を 担 う 。 本 研究 で は 、 こ う し た 行 政に よ る サ ー ビス 供 給 シ ス テ ム の 運 営 管 理 の 機能 や 役 割 を ア ド ミ ニ スト レ ー シ ョ ン と し て 定義 す る と と も に、

自 治 体 に よ る ア ド ミ ニ ス ト レー シ ョ ン の 展 開 と い う視 点 か ら 検 討 を 行 う こと と し て 、 次の

4

点 を 研 究 課 題 とす る 。

1) 自 治 体 福 祉行 政 に お け る アド ミ ニ ス ト レ ー シ ョ ンの 実 態 と 課 題 の 解 明  

我 が 国 の 社 会 福 祉 研 究 は 、 伝統 的 に 政 策 と 臨 床 を 対象 と し て 研 究 が 行 わ れて き た が 、社 会 福 祉 の 範 囲 の 拡 大 や 供 給 主体 の 多 元 化 が 進 ん で いる 現 代 に お い て は 、 両者 を つ な ぐ 経営 レ ベ ル を 区 別 し 、 三 相 で 社 会 福 祉 実 践 を 捉 え て い く こ と が 必 要 に な っ て き て い る ( 京 極

1998:43-47)。し か し な が ら、組 織 運 営 の あ り 方 を問 う メ ゾ レ ベ ル の 研 究は 、構 成 要 素が

5) 2015年 度 比 の 高 齢 者 人 口 は 、 大 都 市 が 約 328万 人 増 で あ る の に 対 し て 、 大 都 市 以 外 は 約204 人 増 に と ど ま っ て お り 、 大 都 市 の 方 が 大 都 市 以 外 の 1.6倍 近 く 増 加 す る と 推 計 さ れ て い る ( 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 2018)。

6) 社 会 福 祉 法 第6条 に お い て 、「 国 及 び 地 方 公 共 団 体 は 、 社 会 福 祉 を 目 的 と す る 事 業 を 経 営 す る 者 と 協 力 し て 、 社 会 福 祉 を 目 的 と す る 事 業 の 広 範 か つ 計 画 的 な 実 施 が 図 ら れ る よ う 、 福 祉 サ ー ビ ス を 提 供 す る 体 制 の 確 保 に 関 す る 施 策 、 福 祉 サ ー ビ ス の 適 切 な 利 用 の 推 進 に 関 す る 施 策 そ の 他 の 必 要 な 各 般 の 措 置 を 講 じ な け れ ば な ら な い 。」 と 規 定 さ れ て い る 。 ま た 、 介 護 保 険 法 第 5条 第 3項 で 「 国 及 び 地 方 公 共 団 体 は 、 被 保 険 者 が 、 可 能 な 限 り 、 住 み 慣 れ た 地 域 で そ の 有 す る 能 力 に 応 じ 自 立 し た 日 常 生 活 を 営 む こ と が で き る よ う 、 保 険 給 付 に 係 る 保 健 医 療 サ ー ビ ス 及 び 福 祉 サ ー ビ ス に 関 す る 施 策 、 要 介 護 状 態 等 と な る こ と の 予 防 又 は 要 介 護 状 態 等 の 軽 減 若 し く は 悪 化 の 防 止 の た め の 施 策 並 び に 地 域 に お け る 自 立 し た 日 常 生 活 の 支 援 の た め の 施 策 を 、 医 療 及 び 居 住 に 関 す る 施 策 と の 有 機 的 な 連 携 を 図 り つ つ 包 括 的 に 推 進 す る よ う 努 め な け れ ば な ら な い 。」 と 規 定 さ れ る な ど 、 福 祉 関 係 各 法 に 福 祉 行 政 の 責 務 が 規 定 さ れ て い る 。

(6)

膨 大 か つ 不 確 か で あ り 、 実 態を 理 論 的 に 捉 え る こ とが 非 常 に 難 し い 上 に 、日 々 動 態 を 変え る 現 状 を 分 析 し て 課 題 の 解 決策 を 見 出 す た め に は 、高 度 な 情 報 処 理 能 力 と構 想 力 が 要 求さ れ る( 高 澤

2000:19-20)。加 え て 、組織 内 の 意 思 決定 過 程 の 深 層 に 迫 ら なけ れ ば 実 態 を 解

明 で き な い と い う 研 究 対 象 の特 性 も あ り、マ ク ロ と ミク ロ を 包 摂 す る メ ゾ レベ ル の 研 究 は 、 ま だ ま だ 成 果 が 出 て い な い のが 現 実 で あ る

7)

そ の 一 方 で 、 福 祉 行 政 の 実 施主 体 で あ る 地 方 自 治 体は 、 厳 し い 財 政 状 況 の下 で 、 福 祉ニ ー ズ の 増 大 と 多 様 化 に 対 応 すべ く 、 苦 悩 す る 日 々 が続 い て い る 。 行 政 改 革の 流 れ の 中 で、

行 政 が 直 営 で 福 祉 サ ー ビ ス を供 給 す る こ と は 難 し くな り 、 民 間 主 体 を 活 用し た サ ー ビ ス供 給 シ ス テ ム へ の 転 換 に よ っ て、 福 祉 行 政 に は 多 様 な主 体 を マ ネ ジ メ ン ト して い く 役 割 が期 待 さ れ る よ う に な っ て き た

8)

。 日 進 月 歩 で 様 々 な 分 野 の 専 門 性 が 向 上 し て い く 中 で 、 そ の 使 命 を 果 た し て い く こ と が 容易 で な い こ と は 想 像 に難 く な い が 、 具 体 的 にど の よ う に すれ ば 課 題 が 解 決 に 向 か う の か 、暗 中 模 索 し て い る 自 治体 は 少 な く な い 。

本 研 究 は 、 こ う し た 状 況 を 打開 す べ く 、 メ ゾ レ ベ ルの 実 践 現 場 で あ る 自 治体 福 祉 行 政の 実 態 に ア プ ロ ー チ し 、 現 実 的な 課 題 解 決 に 資 す る アド ミ ニ ス ト レ ー シ ョ ンの あ り 方 に つい て 検 討 す る こ と を 企 図 し て いる 。

2) 福 祉 行 政 にお け る 専 門 性 の再 定 義

  我 が 国 の 福 祉 政 策 は 、 供 給主 体 の 多 元 化 を 進 め るこ と に よ っ て サ ー ビ ス基 盤 の 拡 充 を図 り つ つ 、 行 政 の 役 割 を 条 件 整備 主 体 へ と 転 換 さ せ てき た 。 そ う し た 経 過 の中 で 、 サ ー ビス の 供 給 は 民 間 主 体 が 全 面 的 に責 任 を 負 う こ と に な った と い う 解 釈 に 基 づ き、 行 政 は 法 令に 基 づ い て 利 用 認 定 や 事 業 者 指定 を 行 う こ と に 専 念 すれ ば よ い と い う 考 え 方が 自 治 体 に 広が っ て い る こ と が 指 摘 さ れ て いる

9)

  と こ ろ が 近 年 、 支 援 ニ ー ズの 複 合 化 と と も に 、 制度 や 分 野 を ま た ぎ な がら 多 様 な 主 体が 連 携 し て い く こ と が 求 め ら れる よ う に な り 、 民 間 主体 だ け で 適 切 な 連 携 体制 を つ く る こと が 難 し く な っ て い る

10)

。今 日 の福 祉 行 政 に は 、こ う し た 民 間 主 体 だ け で は 調整 で き な い よ う な 課 題 に 対 応 す る た め に 、多 様 な 主 体 が 協 働 で きる サ ー ビ ス 供 給 環 境 をつ く っ て い くこ と が 必 要 と さ れ る よ う に な って き た

11)

。自 治 体 が こ のよ う な 役 割 を 担 う た めに は 、サ ー ビ ス の 提 供 に 関 す る 知 識 や ノ ウハ ウ を 理 解 し た 上 で 、様 々 な 供 給 主 体 の 意 見を 調 整 す る 能力 や 、 地 域 全 体 の 供 給 シ ス テ ムを 最 適 化 し て い く 構 想力 が 必 要 と な る 。

7) 永 田 は 、 三 浦 の 社 会 福 祉 経 営 論 を 「 政 策 範 疇 」 に 焦 点 を 絞 っ て 体 系 を 構 築 さ れ た も の で あ る と し た 上 で 、 政 策 領 域 と 実 践 領 域 の 間 の メ ゾ 領 域 が 、 現 在 の 大 き な 課 題 と な っ て い る こ と を 指 摘 し て い る

( 永 田 2017:75)。 ま た 鶴 野 も 、 福 祉 国 家 論 や 社 会 政 策 サ イ ド か ら の 社 会 福 祉 理 論 と ソ ー シ ャ ル ワ ー ク か ら の 社 会 福 祉 理 論 の 距 離 が 、 未 だ 遠 い こ と を 指 摘 し て い る ( 鶴 野 201773)。

8) 畑 本 は 、 新 公 共 ガ バ ナ ン ス 時 代 に は 、 行 政 課 題 や 地 域 の 課 題 を 行 政 機 関 単 独 で 解 決 す る の は 難 し く 、 多 く の ア ク タ ー と の 協 働 が 求 め ら れ る こ と を 指 摘 し て い る ( 畑 本 201410)。

9) 平 岡 は 、 相 談 機 能 の 外 部 化 と サ ー ビ ス 供 給 体 制 の 市 場 化 の 相 乗 的 効 果 と し て 、 市 町 村 行 政 が 、 福 祉 的 援 助 に 直 接 的 に か か わ ら ず 管 理 的 機 能 に 特 化 す る 傾 向 が 生 ま れ 、「 自 治 体 福 祉 行 政 の 空 洞 化 」 を 引 き 起 こ し て い る と 指 摘 し て い る ( 平 岡 2006:55-56)。

10) 畑 本 は 、 新 公 共 マ ネ ジ メ ン ト の 問 題 点 を 踏 ま え 、 競 争 に よ っ て 一 部 の 効 率 化 を 達 成 で き た と し て も 、 十 分 な 連 携 の も と で 全 体 と し て の 協 力 関 係 を 築 く こ と が で き て い な い と い う こ と を 指 摘 し て い る

( 畑 本 20144)。

11) ボ ベ ー ル と ラ フ ラ ー は 、 政 策 か ら 望 ま し い 成 果 を 得 て 、 公 共 サ ー ビ ス の 質 の 高 さ を 達 成 す る た め に は 、 最 も 重 要 な 関 係 主 体 と の 関 係 を う ま く マ ネ ジ メ ン ト す る こ と が 必 須 で あ る と 指 摘 し て い る

(Bovaird & Loffler=2008:128-129)。

(7)

  こ の 間 の 自 治 体 福 祉 行 政 には 、 法 令 を 正 確 に 解 釈し て 適 正 に 運 用 す る 能力 や 、 福 祉 事務 所 や 福 祉 施 設 等 に お け る 相 談援 助 等 を 実 践 す る 能 力が 必 要 と さ れ て き た が、 サ ー ビ ス 供給 シ ス テ ム を 調 整 す る た め の 専門 性 に つ い て は 、 ほ とん ど 注 目 さ れ て こ な かっ た よ う に 思わ れ る

12)

。そ の 結果 、自 治 体 に 地域 全 体 を 適 切 に コ ン トロ ー ル で き る だ け の 専門 性 を 備 え た 運 営 体 制 が 確 保 さ れ ず 、 地 域の 実 情 に 応 じ た サ ー ビス 供 給 シ ス テ ム を 構 築で き な い 状 況に 陥 っ て い る の で は な か ろ う か。

  本 研 究 は 、 こ う し た 問 題 意識 に 基 づ き 、 福 祉 行 政に お け る 専 門 性 を 再 定義 し な が ら 、サ ー ビ ス 供 給 シ ス テ ム に お け る行 政 機 能 の あ り 方 に つい て 検 討 す る と と も に、 そ の 重 要 性を 追 究 し よ う と す る も の で あ る。

3) 大 都 市 の 特性 に 応 じ た サ ービ ス 供 給 シ ス テ ム の 再構 築  

  我 が 国 の 福 祉 行 政 は 、 地 域の 特 性 を 踏 ま え た サ ービ ス 供 給 体 制 を 構 築 する た め に 、 多く の 分 野 に お い て 、住 民 に 最 も 身近 な 自 治 体 で あ る 市 町村 が 実 施 主 体 と な っ てい る 。た だし 、 一 口 に 市 町 村 と い っ て も 、人 口 が 数百 人 の 村 か ら

100

万 人 を 超え る よ う な大 都 市 ま で 一 括 り に さ れ て お り 、 そ れ ぞ れ の自 治 体 が 置 か れ て い る状 況 は 、 大 き く 異 な って い る 。 と りわ け 大 量 の 人 口 と 社 会 資 源 を 抱え る 大 都 市 で は 、 そ もそ も 膨 大 か つ 複 雑 な 課題 が 存 在 し てい る 中 で 、 社 会 保 障 制 度 の 担 い手 が 減 っ て い き 、 医 療・ 介 護 ニ ー ズ が 増 大 して い く と い う局 面 を 迎 え つ つ あ る 。 大 都 市 のサ ー ビ ス 供 給 シ ス テ ムは 、 こ う し た 社 会 保 障制 度 を め ぐ る構 造 的 な 変 化 に 対 応 す る た め に、 近 い 将 来 、 抜 本 的 な見 直 し を 迫 ら れ る こ とに な る だ ろ う。

  一 方 で 、 福 祉 制 度 の 運 営 に当 た っ て は 、 国 が 詳 細に 規 定 し た 方 法 や 基 準を 順 守 す る こと が 求 め ら れ る た め 、 自 治 体 とし て の 裁 量 の 幅 は、 そ れ ほ ど 大き い わ け で は な い

13)

。 そ う し た 中 で 、 大 都 市 の 実 情 を 踏 まえ た サ ー ビ ス 供 給 シ ステ ム を 構 築 し て い く ため に は 、 自 治体 が 進 ん で 関 係 者 ・ 関 係 機 関 との 間 に 入 っ て 、 主 体 的に 課 題 解 決 に 向 け た 調整 を 行 っ て いく 必 要 が あ る 。

  本 研 究 は 、 以 上 の よ う な 課題 認 識 に 基 づ き 、 大 都市 の 特 性 を 踏 ま え た サー ビ ス 供 給 シス テ ム の 再 構 築 に 向 け て 、 そ の具 体 的 な あ り 方 に つ いて 検 討 す る と と も に 、具 現 化 す る ため に 必 要 と な る 自 治 体 福 祉 行 政の 役 割 と 方 法 を 明 ら かに す る こ と を 目 指 し てい る 。

4) 複 合 的 支 援ニ ー ズ の 実 像 化と 対 応 策 の 具 体 化  

  現 代 の 社 会 福 祉 に は 、 医 療や 介 護 、 就 労 や 教 育 とい っ た 分 野 を ま た い だ支 援 が 必 要 とさ れ る よ う に な っ て き て お り 、こ う し た 状 況 に 対 し て、 全 世 代 ・ 全 対 象 型 地域 包 括 支 援 体制 を 構 築 し て い く と い う 方 向 性が 国 か ら 示 さ れ て い る( 厚 生 労 働 省 ・ 新 た な福 祉 サ ー ビ スの シ ス テ ム 等 の あ り 方 検 討 プ ロジ ェ ク ト チ ーム

2015:5-12)。 こ の よ う な 取り 組 み を 進 め て

い く た め に は 、 一 義 的 に は 支援 ス キ ル や ノ ウ ハ ウ を向 上 さ せ て い く こ と が必 要 と な る が、

12) 佐 々 木 は 、 多 く の 専 門 職 が 対 人 福 祉 サ ー ビ ス の 実 践 に 当 た っ て い る が 、 こ う し た 専 門 職 が 自 治 体 福 祉 行 政 に 関 心 が 薄 か っ た 感 は 否 め な い と し て 、 専 門 職 が も つ 情 報 面 、 政 策 面 、 利 用 者 の 実 態 的 側 面 を 通 じ た ニ ー ズ の 分 析 ・ 評 価 が 政 策 に 活 か さ れ る 必 要 が あ る と 指 摘 し て い る ( 佐 々 木 2001:5)。

13) 平 岡 は 、 自 治 体 福 祉 行 政 に は 、 住 民 の ニ ー ズ を 全 体 と し て 把 握 し た 上 で 、 市 場 の 機 構 を 通 し て 充 足 す る べ き も の と 、 そ の 他 の 機 構 を 通 し て 充 足 す べ き も の に 区 分 し 、 双 方 に つ い て 適 切 な 給 付 な い し 規 制 を 実 施 す る 体 制 を 整 え る こ と が 求 め ら れ る が 、 実 際 の 自 治 体 福 祉 行 政 の 裁 量 の 幅 は 、 そ れ を 実 施 で き る ほ ど 大 き く な い こ と を 指 摘 し て い る ( 平 岡 2006:59)。

(8)

様 々 な 分 野 に お い て 専 門 性 が高 度 化 し て い る 中 で 、あ ら ゆ る 分 野 に 精 通 した 支 援 を 一 元的 に 提 供 す る の は 、 現 実 的 に は非 常 に 難 し い 。 こ の ため 、 複 合 化 し て い る 支援 ニ ー ズ へ の対 応 は 、 ニ ー ズ を 構 成 し て い る一 つ ひ と つ の 要 素 を 的確 に 理 解 し た 上 で 、 それ ぞ れ に 対 応す る 制 度 や サ ー ビ ス を 組 み 合 わせ な が ら 支 援 す る こ とが 求 め ら れ る こ と と なる 。 す な わ ち、

複 合 的 支 援 ニ ー ズ へ の 対 応 を施 策 と し て 進 め て い くた め に は 、 そ も そ も 複合 的 支 援 ニ ーズ と は ど の よ う な 性 質 の も の であ り 、 そ れ ら が ど の 程度 存 在 し て い る の か を把 握 し な け れば な ら な い が 、そ のた め の 手 法 が確 立 し て お ら ず、全 体 的な 把 握 が ほ と ん ど 行 われ て い な い 。   加 え て 、 複 合 的 支 援 ニ ー ズは 、 分 野 を ま た い だ 支援 が 必 要 に な る こ と が対 応 の 困 難 性を 高 め る こ と に つ な が る が 、 どの よ う な 課 題 の 複 合 化が ど の よ う な 困 難 性 を引 き 起 こ す のか と い う こ と が 理 解 さ れ な け れば 、 的 確 な 対 応 策 を 講じ る こ と は で き な い はず で あ る 。 しか し な が ら 、 現 時 点 で は 、 そ うし た 分 析 が ほ と ん ど 行わ れ る こ と な く 、 包 括的 な 支 援 の 必要 性 だ け が 強 調 さ れ て い る 状 況に あ る よ う に 思 わ れ る

14)

  本 研 究 は 、 こ う し た 現 状 を踏 ま え 、 複 合 的 支 援 ニー ズ の 実 像 化 を 図 る とと も に 、 支 援を 行 っ て い く 上 で の 課 題 を 具 体的 に 明 ら か に し た 上 で、 現 実 的 な 対 応 策 を 見出 し て い く こと を 志 向 し て い る 。

2 . 研 究 の 方 法  

本 研 究 は 、 上 記 の 研 究 目 的 を達 成 す る た め 、 以 下 の方 法 に よ り 研 究 を 行 う。

    ① 大 都 市 に お け る 福 祉 行政 の 運 営 課 題 に つ い て、 法 制 度 の 枠 組 み や 統計 デ ー タ に 基づ い て 分 析 す る と と も に 、 複 合的 支 援 ニ ー ズ を め ぐ る施 策 課 題 に つ い て 、 文献 研 究 に よ っ て 論 点 整 理 を 行 い つ つ 、自 治 体 調 査 に よ っ て 実践 的 な 考 察 を 行 う 。 なお 、 自 治 体 調 査 に つ い て は 、分 野 別 支援 体 制 の 統 合 を 行 っ た指 定 都 市

A

市 を 対 象 とし て 、ヒ ア リ ン グ 調 査 を 実 施 し た。( 第

1

章・ 第

2

章 )

    ② 政 府 資 料 や 政 府 統 計 等を 分 析 し な が ら 、 複 合的 支 援 ニ ー ズ に 対 応 する た め に 展 開さ れ て い る 包 括 的 支 援 施 策 の 政策 的 な 位 置 づ け を 解 明す る と と も に 、 自 治 体が 展 開 し て い く 上 で の 課 題 を 整 理 す る。( 第

3

章 )

    ③ 複 合 的 支 援 ニ ー ズ と して 政 策 課 題 と な っ て いる 高 齢 者 医 療 ・ 介 護 施策 、 医 療 的 ケア 児 支 援 施 策 、 高 齢 障 害 者 支 援施 策 を 取 り 上 げ て 、 自治 体 調 査 に よ っ て 施 策の 実 施 状 況 を 検 証 す る と と も に 、 文 献研 究 に よ る 課 題 整 理 を行 い な が ら 、 自 治 体 によ る 施 策 の あ り 方 に つ い て 考 察 す る 。な お 、 自 治 体 調 査 に つい て は 、 全 指 定 都 市 を対 象 と し て 、

3

つ の 施 策 の実 施 状 況 に関 す る 質 問 紙 調 査 を 実施 し た 。( 第

4

章 〜 第

7

章 )     ④ 福 祉 多 元 化 を 踏 ま え たサ ー ビ ス 供 給 シ ス テ ムの 課 題 に つ い て 、 文 献研 究 と 自 治 体調

査 に よ っ て 理 論 と 実 践 の 両 面か ら 考 察 を 行 い 、 自 治体 ア ド ミ ニ ス ト レ ー ショ ン の あ り 方 を 検 討 す る 。 な お 、 自 治体 調 査 に つ い て は 、 在宅 医 療 と 在 宅 介 護 の 複合 的 支 援 ニ ー ズ が 大 量 に 発 生 し て い ると 考 え ら れ る 指 定 都 市

B

市 を対 象 と し て 、ヒ ア リ ン グ 調 査 を 実 施 し た。( 第

8

章 )  

⑤ ① か ら ④ を 総 括 し 、 大 都 市に お け る 複 合 的 支 援 ニー ズ に 対 応 す る サ ー ビス 供 給 シ ス

14)

日 本 総 合 研 究 所 (2018) や 全 国 社 会 福 祉 協 議 会 (

2017)(2018) に よ る 調 査 研 究 が 行 わ れ て い る

が 、 い ず れ も 取 り 組 み 事 例 の 収 集 に 止 ま っ て お り 、 複 合 的 支 援 ニ ー ズ の 質 的 ・ 量 的 な 分 析 は 行 わ れ て

い な い 。

(9)

テ ム の あ り 方 と 、 そ の 実 現 に向 け て 自 治 体 福 祉 行 政が 果 た す べ き 役 割 を 提示 す る 。

( 終 章 )

3 . 用 語 の 整 理  

1)福 祉 行 政 と ア ド ミ ニ ス ト レー シ ョ ン  

  一 口 に 福 祉 行 政 と い っ て も、 そ の 内 容 は 多 様 で ある が 、 実 際 の 自 治 体 福祉 行 政 に お いて は 、 ① 福 祉 制 度 の 実 施 ( サ ービ ス の 利 用 認 定 、 費 用や サ ー ビ ス の 給 付 、 事業 者 の 指 定 等の 管 理 的 業 務 )、② 専 門 機 関 に お け る 相 談 援 助( 福 祉 事務 所 、児 童 相 談 所 、障害 者 更 生 相 談所 等 に お け る 相 談 業 務)、③ サ ービ ス 供 給 体 制 の 整 備( 住 民 の ニ ー ズの 把 握 や評 価 、サ ー ビス の ネ ッ ト ワ ー ク の 形 成 、 サ ービ ス の 供 給 組 織 の 育 成、 サ ー ビ ス の 質 の 確 保等 の 企 画 調 整業 務 ) と い っ た も の に 大 別 で きる 。 本 論 文 に お い て は、 研 究 内 容 の 性 質 上 、主 と し て ③ の機 能 を 指 し て 福 祉 行 政 と い う 用語 を 使 用 す る が 、 ① や② の 機 能 と 一 体 と な って 福 祉 行 政 が運 営 さ れ て い る こ と に は 十 分 留意 し て い る 。  

  ま た 、 ア ド ミ ニ ス ト レ ー ショ ン と い う 用 語 は 、 法制 度 や 組 織 の 運 営 管 理と い う 概 念 を指 す 場 合 も あ る が 、social administration と し て 捉 えら れ る こ と も あ り 、公 共政 策 に お ける

public administration

と し て 捉 え ら れ る こ と も あ る 。本 論文 に お い て は 、現 代 の福 祉 行 政 が 、 行 政 内 部 の 運 営 管 理 と 行政 外 部 と の 協 働 体 制 の形 成 に よ っ て 成 り 立 って い る こ と を踏 ま え 、 サ ー ビ ス 供 給 シ ス テ ムの 運 営 管 理 に お い て 行政 が 担 う べ き 機 能 や 役割 を 指 す も のと し て 、 ア ド ミ ニ ス ト レ ー シ ョン と い う 用 語 を 使 用 する 。

  な お 、 福 祉 行 政 と い う 用 語に は 、 ア ド ミ ニ ス ト レー シ ョ ン の 概 念 が 含 まれ て い る も のと 考 え ら れ る が 、 福 祉 行 政 の 機能 や 役 割 は 、 理 念 や 責務 と い っ た も の か ら 予算 や 事 業 の 執行 手 法 と い っ た も の ま で 様 々 なレ ベ ル か ら 捉 え る 必 要が あ る た め 、 具 体 的 な運 営 管 理 手 法を 指 す 場 合 に は 、 ア ド ミ ニ ス トレ ー シ ョ ン と い う 用 語を 使 用 す る こ と に よ って 、 議 論 の レベ ル を 整 理 し て い る 。

2) 大 都 市 及 び大 都 市 圏  

  地 方 自 治 法 で は 、 指 定 都 市、 中 核 市 、 特 別 区 が 大都 市 制 度 と し て 設 け られ て い る が 、国 勢 調 査 の 大 都 市 圏 は 、 指 定 都市 と 特 別 区 と さ れ て おり 、 行 政 実 務 上 も 、 各種 大 都 市 主 管局 長 会 議 や 課 長 会 議 は 、 指 定 都市 と 東 京 都 で 構 成 さ れて い る 。

ま た 、 個 々 の 特 別 区 は 、 地 方公 共 団 体 と し て は 一 般市 に 準 じ て お り 、 都 道府 県 が 所 管す る 事 務 を 実 施 し て い る わ け では な く 、 一 般 の 市 が 所管 し て い る 都 市 計 画 や消 防 な ど の 事務 は 、 東 京 都 が 所 管 し て い る 。加 え て 、 都 区 財 政 調 整制 度 に よ っ て 東 京 都 の関 与 を 受 け るな ど 、 単 体 で 大 都 市 行 政 を 担 って い く と い う 位 置 づ けに は な っ て お ら ず 、 都と 区 が 一 体 とな っ て 大 都 市 行 政 を 進 め て い くと い う 構 造 に な っ て いる 。

  本 研 究 は 、 大 都 市 が 抱 え る膨 大 か つ 複 雑 な 行 政 課題 に 対 し て 、 様 々 な 施策 を 一 体 的 に講 じ な が ら 、 効 率 的 ・ 効 果 的 なサ ー ビ ス 供 給 シ ス テ ムを 確 立 す る た め の 方 策を 検 討 す る もの で あ り 、 本 論 文 で は 、 上 記 のよ う な 地 方 自 治 制 度 の状 況 を 踏 ま え 、 指 定 都市 を 大 都 市 とし て 取 り 扱 う 。

  な お 、 大 都 市 の 人 口 や ニ ーズ を 量 的 に 検 討 す る 場合 に は 、 東 京 都 の ボ リュ ー ム を 考 慮す

(10)

る 必 要 が あ る こ と か ら 、 こ うし た 視 点 か ら 大 都 市 を捉 え る 場 面 で は 、 指 定都 市 と 東 京 都を 合 わ せ た 地 域 を 大 都 市 圏 と して 取 り 扱 う 。

3) 支 援 ニ ー ズ及 び 複 合 的 支 援ニ ー ズ  

  社 会 福 祉 を 必 要 と す る 人 々は 、 様 々 な 生 活 の し づら さ を 抱 え て お り 、 そこ か ら 発 生 する 福 祉 ニ ー ズ は 極 め て 多 様 で ある が 、 そ れ ら が 全 て 公的 制 度 に よ っ て 対 応 され る も の で はな い 。 こ の た め 、 福 祉 行 政 を 運営 し て い く 上 で は 、 公的 制 度 に よ っ て 対 応 すべ き ニ ー ズ とそ れ 以 外 の ニ ー ズ に 区 分 し て 認識 す る 必 要 が あ る 。 京極 は 、 こ う し た 視 点 から 、 潜 在 的 なニ ー ズ と 制 度 が 対 応 す べ き 需 要を 区 分 す る 福 祉 需 給 モデ ル を 提 唱 し て お り (京 極

1998:77- 82)、 基 本 的に は こ の モ デ ルを 踏 ま え た 理 解 が 適 切で あ る と 考 え ら れ る が、 制 度 が 対 応 す

べ き 需 要 は 、 常 に 全 て 顕 在 化し て い る わ け で は な い。 本 研 究 は 、 政 策 の 対象 と す る 範 囲が 必 ず し も 確 定 し て い な い 課 題を 取 り 扱 う も の で あ り、 こ う し た 点 を 十 分 考慮 す る 必 要 があ る こ と か ら 、 本 論 文 で は 、 需要 に 相 当 す る 部 分 と 、現 時 点 で は ニ ー ズ に 含ま れ て い る 制度 が 対 応 す べ き 部 分 を 合 わ せ たも の を 、「 支 援 ニ ー ズ 」と 呼 ぶ こ と と す る 。  

  ま た 、 支 援 ニ ー ズ は 、 必 ずし も 単 独 で 存 在 し て いる わ け で は な く 、 い くつ か の 支 援 ニー ズ が 折 り 重 な っ て い る 場 合 が少 な く な い 。 そ の 状 況は 多 種 多 様 で あ り 、 重複 し て い る 次元 も ケ ー ス に よ っ て 大 き く 異 なる が 、 本 研 究 は 、 施 策と し て 対 応 す る た め の方 策 を 検 討 する も の で あ る こ と か ら 、 本 論 文で は 、 医 療 や 介 護 等 の制 度 な い し は 分 野 を また い で 存 在 する 複 数 の 支 援 ニ ー ズ を、「 複 合 的支 援 ニ ー ズ 」 と 呼 ぶ こと と す る 。  

第 3 節   本 研 究 の 位 置 づ け  

社 会 福 祉 の 運 営 管 理 を め ぐ って 、テ ィ ト マ ス は 、social administration と い う 領 域 を 見 出 す と と も に 、 以 下 の よ う な研 究 課 題 を 提 示 し て 、体 系 的 な 理 解 と 研 究 の必 要 性 を 指 摘し て い る (Titmuss=1971:18-19)。

① 政 策 形 成 と そ の 予 測 及 び 予測 外 の 結 果 の 分 析 と 記述

② 構 造 、 機 能 、 組 織 、 計 画 の研 究 と 施 設 及 び 機 関 の運 営 過 程 に 関 す る 歴 史的 、 比 較 法 的 研 究

③ 社 会 的 ニ ー ド 及 び ニ ー ド への 接 近 方 法 に 関 す る 研究 や サ ー ビ ス や 処 置 、移 転 な ど の 成 果 の 活 用 と 累 計 の 研 究

④ 社 会 的 費 用 及 び マ イ ナ ス の福 祉(diswelfares)の 性 格、属 性、分 布 に つい て の 研 究

⑤ 時 系 列 的 に 可 処 分 資 源 の 分布 と 分 配 を 分 析 す る こと 、 及 び 社 会 的 諸 サ ービ ス の 特 定 の 影 響 の 分 析

⑥ 議 員 、 専 門 ワ ー カ ー 、 行 政官 及 び 社 会 福 祉 制 度 が操 作 ・ 運 用 さ れ る 場 合に 直 接 関 係 す る グ ル ー プ な ど の 役 割 と 機能 の 研 究

⑦ 被 保 険 者 と か 社 会 的 サ ー ビス の 受 益 者 及 び ユ ー ザー と い う 観 点 か ら み た、 市 民 の 社 会 的 権 利 に 関 す る 研 究

⑧ 社 会 法 、 行 政 法 を は じ め 、そ の 他 の 諸 規 定 に 示 され る 社 会 的 施 設 の 価 値と 権 利 を 配 分 す る ( 中 央 及 び 地 方 ) 政 府の 役 割 に 関 す る 研 究

三 浦 は 、 こ の テ ィ ト マ ス に よる 研 究 を 踏 ま え な が ら、 公 私 機 能 分 担 の 見 直し と 福 祉 サー

(11)

ビ ス 供 給 組 織 の 再 編 を 提 起 し( 三 浦

1995:95-118)、 我 が 国 にお け る 供 給 体制 の 多 元 化 や

地 方 分 権 、 在 宅 福 祉 サ ー ビ スの 展 開 と い っ た 福 祉 改革 を 主 導 し て い っ た 。こ れ ら 一 連 の動 き と と も に 、 現 代 の 福 祉 政 策論 は 、 サ ー ビ ス 供 給 組織 や 財 源 の 調 達 方 法 、福 祉 人 材 の 確保 と 配 置 、 制 度 や 組 織 の 運 営 管理 方 法 等 を 課 題 と し て、 市 町 村 レ ベ ル の 福 祉行 政 を 対 象 とし た 研 究 が 行 わ れ る よ う に な って き て い る ( 阿 部

2003:175)。

そ の 一 方 で 、

1973

年 の オ イ ルシ ョ ッ ク を 契 機 と し た世 界 的 な 経 済 の 停 滞 から 、行 政 の効 率 化 や 経 費 節 減 が 求 め ら れ るよ う に な り 、 公 共 政 策の パ ラ ダ イ ム は 、 段 階的 に 変 化 し てき て い る 。オ ズ ボ ー ン は 、こ うし た 流 れ を 、①1970 年 代 後 半 ない し は

1980

年 代 前 期 ま で 続 い た 公 共 管 理 (

Public Administration)、 ②1980

年 代 後 期 か ら

21

世 紀 初 頭ま で の 新 公 共 経 営 (New Public Management)、③1990 年 代 後 期な い し は

21

世 紀 初 頭か ら 現 在 ま で の 新 公 共 ガ バ ナ ン ス (

New Public Governance) に 区 分 し て い る (Osborne2009:1-16)。

公 共 管 理 時 代 に お い て は 、 高度 経 済 成 長 と 福 祉 国 家の 建 設 を 政 策 理 念 と して 、 行 政 主導 に よ る 公 共 サ ー ビ ス を 適 正 に展 開 し て い く こ と が 重視 さ れ て き た が 、 経 済の 停 滞 に よ る財 政 の 行 き 詰 ま り に よ っ て 、 行政 の 効 率 性 を 重 視 す る新 公 共 経 営 が 登 場 し 、民 間 企 業 の 経営 手 法 を 可 能 な 限 り 行 政 運 営 に適 用 す る よ う に な っ た。 大 住 は 、 こ の 新 公 共経 営 に つ い て、

① 業 績 ・ 成 果 に 基 づ く マ ネ ジメ ン ト 、 ② 市 場 型 メ カニ ズ ム の 導 入 、 ③ 顧 客主 義 ・ 利 用 者本 位 、 ④ 分 権 化 し た 業 務 単 位 へ の 権 限 移 譲 と い っ た 点 に 特 徴 が あ る と 指 摘 し て い る ( 大 住

1999:38)。 具 体 的 な 手 法 と し て は い く つ か あ る が 、 そ の 一 つ は 、 独 立 行 政 法 人 の 創 設 で

あ り 、 企 画 立 案 部 門 と 業 務 執行 部 門 を 分 割 す る こ とに よ っ て 、 業 務 執 行 部門 の 業 績 や 成果 を 評 価 し や す く す る と と も に、民 間 部 門と 競 争 さ せ るこ と が で き る 組 織 体 へと 転 換 さ せ た 。 ま た 、 も う 一 つ の 手 法 は 、PFI(Private Finance Initiative) で 導 入 あ り、 資 金 調 達 か ら 施 設 の 建 設 ・ 運 営 ま で 民 間 事業 者 に 委 ね る こ と を 可能 と し た 。

こ う し た 手 法 は 、 我 が 国 に おい て も 広 く 活 用 さ れ 、行 政 改 革 の 推 進 に 大 きく 寄 与 し てき た が 、 行 政 の 外 部 要 因 が 大 きく 変 化 し て き て い る こと も あ っ て 、 現 代 で は、 新 公 共 経 営の 欠 点 が 指 摘 さ れ る よ う に な って き て い る 。 畑 本 は 、こ う し た 背 景 に は 、 マネ ジ メ ン ト 主義 一 辺 倒 の 弊 害 に よ っ て 全 体 最適 に は な っ て い な い とい っ た 状 況 や 、 参 加 や公 正 と い っ た価 値 が 重 視 さ れ る よ う に な っ てい る 状 況 が あ る こ と を指 摘 し て い る( 畑 本

2014:3-4

)。福祉 行 政 で い え ば 、 高 齢 者 福 祉 や障 害 者 福 祉 の よ う に 特定 の 分 野 で 政 策 が 完 結す る 状 況 で はな く な っ て お り 、 ニ ー ズ の 多 様化 ・ 複 合 化 が 急 速 に 進行 す る 中 で 、 分 野 別 に体 系 化 さ れ てき た 福 祉 施 策 は 、 医 療 や 教 育 、就 労 な ど の 関 連 分 野 と一 体 と な っ て 包 括 的 に支 援 し て い くこ と が 求 め ら れ る よ う に な っ てい る 。 ま た 、 サ ー ビ ス提 供 主 体 の 民 営 化 を 進め た こ と に よっ て 、 民 間 主 体 の 意 向 を 考 慮 しな け れ ば サ ー ビ ス 供 給が 成 り 立 た な い こ と や、 サ ー ビ ス 利用 者 の 権 利 性 を 明 確 化 し た こ とに よ っ て 、 地 域 住 民 の意 識 も 十 分 に 汲 み 取 らな け れ ば な らな い と い っ た 状 況 に も 置 か れ てい る 。

こ う し た 変 化 に 伴 い 、 行 政 内部 の 効 率 性 だ け を 追 求す る 新 公 共 経 営 に 限 界が 生 じ た こと

に よ っ て 、 近 年 で は 、 多 様 な主 体 と の 協 働 と ネ ッ トワ ー ク 化 を 志 向 す る 新公 共 ガ バ ナ ンス

へ と 公 共 政 策 が シ フ ト し て きて い る と さ れ て い る 。し た が っ て 、 現 代 に おい て 公 共 政 策を

推 進 す る た め に は 、 地 域 の ニー ズ や 資 源 の 特 性 に 応じ た 施 策 の 展 開 が 不 可避 で あ り 、 様々

な 行 政 分 野 に お い て 地 方 自 治体 に よ る 積 極 的 な 関 与が 求 め ら れ る よ う に なっ て い る こ とが

(12)

指 摘 さ れ て い る

15)

本 研 究 は 、 こ う し た 社 会 的 要請 に 応 え る た め に 、 新た な サ ー ビ ス 供 給 シ ステ ム と 自 治体 福 祉 行 政 の あ り 方 を 再 検 討 しよ う と す る も の で あ るが 、 両 者 に は 、 こ れ まで の 経 緯 を 踏ま え た 連 続 性 や 継 続 性 、 整 合 性を 確 保 し て い く こ と が必 要 と さ れ る 。 そ こ で、 以 下 に お いて 本 研 究 に 関 連 す る 先 行 研 究 を検 討 す る こ と に よ っ て、 本 研 究 の 位 置 づ け と意 義 を 確 認 する こ と と し た い 。

1) 福 祉 行 政 に関 す る 先 行 研 究  

1980

年 代 か ら 始 まっ た 福 祉改 革 に よ っ て 、我 が 国の サ ー ビ ス 供 給 シ ス テム は 、構 造 的 な 変 化 が も た ら さ れ た が 、 古 川は 、 多 元 化 と と も に 地方 分 権 が 進 め ら れ 、 自治 体 に よ っ て計 画 的 な 福 祉 行 政 が 展 開 さ れ るよ う に な っ た 経 過 を 詳細 に 考 察 し て い る( 古 川

1997)16)

。さ ら に 高 澤 は 、 こ う し た 状 況 を踏 ま え 、 法 令 に 基 づ く規 制 行 政 を 脱 し 、 外 部の 多 様 な 資 源を 戦 略 的 に 活 用 す る 福 祉 行 政 に転 換 し て い く 必 要 性 を提 起 し た ( 高 澤

2000

:15-18 )。

し か し 実 際 に は 、「 自 治 体 福 祉 行 政 の 空 洞 化 」 と い っ た こ と が 指 摘 さ れ る よ う に ( 平 岡

2006:55-56)、福 祉 行 政 を 管理 的 機 能 に 特 化 さ せ る傾 向 が 生 ま れ、ニ ー ズの 把 握 や 資 源 の

マ ネ ジ メ ン ト を 行 う 機 能 が 後退 し て し ま っ た 自 治 体が 少 な く な い よ う に 思わ れ る 。 こ うし た 状 況 が 生 じ て い る の は 、 一連 の 改 革 過 程 に お い て、 福 祉 制 度 の あ り 方 をめ ぐ る 議 論 は盛 ん に 行 わ れ た も の の 、 そ れ を運 営 す る た め の 方 法 や体 制 に 関 す る 議 論 が ほと ん ど 行 わ れて こ な か っ た か ら で は な い だ ろう か 。

今 日 の 社 会 福 祉 は 、 多 く の 制度 が 普 遍 化 さ れ 、 幅 広い 人 々 を 対 象 と し た もの に な っ てき て い る が 、 畑 本 が 指 摘 す る よう に 、 対 人 的 な サ ー ビス を 提 供 す る 制 度 は 、社 会 保 険 制 度の 財 政 運 営 を 行 う だ け で 十 分 に機 能 す る わ け で は な い( 畑 本

2012:213-220)。制 度 にア ク セ

ス し に く い 人 々 や 、 サ ー ビ スが 行 き 届 き に く い 人 々の 存 在 を 認 識 す る と とも に 、 そ う した ニ ー ズ に も 確 実 に 支 援 を 行 き届 か せ て い く こ と こ そが 社 会 福 祉 の 使 命 で あり 、 福 祉 行 政の 責 務 で あ る 。

そ の 一 方 で 、 自 治 体 が 十 分 な役 割 を 果 た す こ と が でき な い の は 、 福 祉 行 政を 運 営 す るた め に 必 要 な 職 員 体 制 が 十 分 に確 保 で き て い な い か らで あ る と い っ た 指 摘 が沼 尾 に よ っ てな さ れ て い る

17)

。 確 か に 、 多 く の 自 治 体 は、 厳 し い 財 政状 況 の 下 で 行 政 改 革 の 取 り 組 み が 不 可 欠 な も の と な っ て お り 、 潤沢 な 職 員 配 置 を 前 提 とし た 福 祉 行 政 論 は 、 ほと ん ど 実 効 性を も た な い 状 況 で あ る 。 行 政 サー ビ ス を 向 上 さ せ る 上で 、 職 員 体 制 の 充 実 を図 る こ と は 基本 的 な 手 段 で は あ る が 、 そ れ を容 易 に は 実 行 で き な いと い う 現 実 を 踏 ま え なけ れ ば 、 実 際に 福 祉 行 政 を 動 か し て い く こ とは 難 し い 。

こ う し た 福 祉 改 革 と 行 政 改 革に よ る 福 祉 行 政 の 変 容は 、 新 自 由 主 義 を 基 調と し た 規 制緩 和 と 公 的 部 門 の 役 割 の 減 少 とい う ベ ク ト ル で 進 ん でき た が 、 福 祉 サ ー ビ スの 市 場 化 が 進行 す る 裏 側 で 、 福 祉 行 政 が 本 来果 た す べ き 役 割 が 埋 没し て し ま い 、 そ の こ とに よ っ て 非 効率

15)

山 本 は 、 こ う し た 状 況 を 重 視 し て 、 自 治 体 に よ る 公 共 ガ バ ナ ン ス を 「 ロ ー カ ル ・ ガ バ ナ ン ス 」 と 位 置 づ け て い る ( 山 本

2009)。

16)

福 祉 行 政 に お け る 分 権 化 や 多 元 化 を め ぐ っ て は 、 藤 村 (

1999

) や 武 智 (

2001

)、 渋 谷 ・ 平 岡

(2004 ) 等 に よ る 研 究 も あ る 。

17)

沼 尾 は 、 行 政 改 革 に よ る 職 員 数 の 削 減 に よ っ て 、 自 治 体 職 員 が 追 加 的 な 業 務 を 担 う だ け の 余 裕 が な

く な っ て い る こ と を 指 摘 し て い る ( 沼 尾

2016

:17)。

(13)

な サ ー ビ ス 供 給 が 放 置 さ れ る状 況 が つ く り 出 さ れ てい る

18)

。こ の 間 、そ の よう な 状 況 に 陥 っ て い る こ と が 言 及 さ れ て きた も の の 、 解 決 す る ため の 方 策 を 具 体 的 に 検討 し た 研 究 は、

ほ と ん ど な か っ た と い っ て よい 。 自 治 体 が 置 か れ た実 情 を 十 分 理 解 し な がら 、 そ の 責 務を 適 切 に 果 た し て い く こ と が でき る 実 践 的 な 福 祉 行 政論 を 構 築 し て い く こ とが 、 社 会 福 祉研 究 の 急 務 で あ る 。

2) サ ー ビ ス 供給 シ ス テ ム に 関す る 先 行 研 究  

  先 述 し た 三 浦 が 提 起 し た 福 祉 経 営 論 は 、

1980

年 代 以 降 の 我 が 国 の 福 祉 政 策 研 究 と 福 祉 改 革 の 推 進 に 多 大 な 影 響 を 与え た 。 そ の 特 徴 は 、 政策 論 的 ア プ ロ ー チ と 実践 的 ア プ ロ ーチ を 明 確 に 区 別 し た 上 で 、 政 策を 実 行 し て い く た め の技 術 論 の 構 築 を 図 っ たと こ ろ に あ る。

具 体 的 に は 、 政 策 的 視 点 に 基づ い て ニ ー ド 論 を 整 理す る た め 、 福 祉 ニ ー ドを 貨 幣 的 ニ ーズ と 非 貨 幣 的 ニ ー ズ に 区 分 し た上 で 、 非 貨 幣 的 ニ ー ズの 充 足 に お け る 公 私 の機 能 分 担 と 福祉 サ ー ビ ス 供 給 組 織 の 関 係 を 踏ま え た サ ー ビ ス 供 給 シス テ ム を 構 築 す る た めの 手 法 を 提 示す る も の で あ っ た が( 三 浦

1995:46-48、95-118)、こ の理 論 枠 組 み は 、多 元 化 と 地 方 分 権 が

進 み ゆ く 当 時 の 福 祉 行 政 の 中で 、 実 践 志 向 の 理 論 とし て 広 く 浸 透 し 、 多 様な サ ー ビ ス 供給 主 体 の 活 用 と「 実現 可 能 性」が 確 保 さ れた 計 画 行 政へ の 転 換 に 大 き く 貢 献 し た( 和 気

2017

138-139)19)

  ま た 京 極 は 、 テ ィ ト マ ス 、フ リ ー ド マ ン 、 三 浦 によ る 理 論 を 福 祉 需 給 モデ ル と し て 類型 化 し て 比 較 し た 上 で 、 ニ ー ズと 需 要 、 供 給 と 資 源 を区 分 す る 新 し い 福 祉 サー ビ ス の 需 給モ デ ル を 提 示 し て い る( 京 極

1998:77-82)。こ の 理 論の 特 徴 は 、ニー ズ や 資源 と い う 潜 在 的

な 存 在 と 、 需 要 と 供 給 と い う顕 在 化 し た 存 在 を 画 定す る こ と に よ っ て 、 潜在 的 な ニ ー ズや 社 会 資 源 の 掘 り 起 こ し の 必 要性 を 可 視 化 す る と と もに 、 社 会 意 識 構 造 や 社会 ・ 経 済 構 造と の 関 係 に よ っ て こ れ ら が 規 定さ れ る こ と を 明 示 す るこ と で 、 潜 在 化 し て いる 社 会 的 要 因を 検 討 す る 視 点 を 与 え て い る とこ ろ に あ る( 阿 部

2003:186-189)。京 極 は 、こ の理 論 モ デ ル

に よ っ て 、 社 会 福 祉 に お い て経 済 市 場 モ デ ル を 単 純に 適 用 す る こ と は で きな い こ と を 指摘 し、 「 社 会 市場 」と し て 市 場 原理 を 導 入 し て い く 必 要性 を 主 張 す る と と も に、介 護 保 険 制度 の 創 設 等 に 参 画 し な が ら 、 その 具 現 化 を 図 っ て い った

20)

  そ の 後 の 度 重 な る 制 度 改 正に よ っ て 、 全 国 各 地 で多 元 的 な サ ー ビ ス 供 給シ ス テ ム が 構築 さ れ る と と も に 、 自 治 体 に よる 計 画 的 な 事 業 管 理 が行 わ れ る よ う に な っ たこ と で 、 こ うし た 福 祉 経 営 理 論 が 現 実 の 福 祉行 政 に 取 り 入 れ ら れ てき た 。 と こ ろ が 最 近 、既 存 の 制 度 では 対 応 し 切 れ な い 支 援 の 谷 間 とい っ た 問 題 や 、 医 療 と介 護 の 連 携 を 重 視 す る地 域 包 括 ケ アシ ス テ ム の 構 築 と い っ た 課 題 が提 起 さ れ る 中 で 、 集 合的 に 把 握 し に く い ニ ーズ へ の 個 別 的な

18)

山 本 は 、 現 行 の サ ー ビ ス 供 給 シ ス テ ム は 、 市 町 村 に よ る 制 度 運 営 の 裁 量 の 余 地 が 少 な い が 、 行 政 が 適 切 に 市 場 に 介 入 す る こ と に よ っ て 、 適 正 な 資 源 配 分 と サ ー ビ ス の 質 が 維 持 さ れ 、 効 率 化 が 進 ん で い く と し て 、 市 町 村 の 役 割 を 強 化 す る こ と で 、 市 場 化 に 伴 う 弊 害 を 是 正 し な け れ ば な ら な い と し て い る

( 山 本

2009:112-114)。

19)

三 浦 が 示 し た 「 ニ ー ズ 論 」「 資 源 論 」「 サ ー ビ ス 論 」 と い う 理 論 枠 組 み に よ っ て 、 社 会 福 祉 計 画 の 中 に ニ ー ズ や サ ー ビ ス の 見 込 量 が 数 値 と し て 示 さ れ る と と も に 、 目 標 達 成 の た め の 方 策 を 示 す こ と が で き る よ う に な っ た と い え る 。 な お 、 社 会 福 祉 計 画 の あ り 方 に つ い て は 、 定 藤 ・ 坂 田 ・ 小 林 (

1996

) 等 に よ っ て 理 論 化 さ れ て い る 。

20)

京 極 は 、『 総 合 研 究 現 代 日 本 経 済 分 析 〈 1 〉 社 会 保 障 と 日 本 経 済   「 社 会 市 場 」 の 理 論 と 実 証 』 等

に お い て 、 社 会 市 場 の あ り 方 に つ い て も 理 論 化 を 図 っ て い る ( 京 極

2007

)。

(14)

対 応 や 、 細 分 化 さ れ た サ ー ビス の 包 括 的 な 提 供 が 求め ら れ る よ う に な っ てき て い る 。 福祉 経 営 論 は 、 当 初 目 指 し た ニ ーズ と サ ー ビ ス の 定 型 的・ 定 量 的 な 捕 捉 と 調 整と い う 次 元 を超 え て 、 個 々 の ニ ー ズ と サ ー ビス を 幅 広 い 分 野 に 渡 って 的 確 か つ 効 率 的 に マッ チ ン グ さ せる こ と が で き る 理 論 へ と 発 展 させ て い く こ と が 必 要 とさ れ て い る

21)

3) 大 都 市 の 福祉 課 題 に 関 す る先 行 研 究  

  そ も そ も 都 市 社 会 は 、 血 縁や 地 縁 関 係 を 背 景 と した 人 間 関 係 を 基 盤 と する ゲ マ イ ン シャ フ ト で は な く 、 工 業 化 の 進 展と と も に 人 口 と 産 業 が集 中 す る こ と に よ っ て成 立 す る ゲ ゼル シ ャ フ ト で あ り 、 家 族 や 地 域の つ な が り が 希 薄 な 中に 、 様 々 な 背 景 を も った 人 々 が 集 まり 合 っ て 地 域 社 会 が 形 成 さ れ てい る 。 し た が っ て 、 都市 化 が 進 ん だ 大 都 市 では 、 多 様 な 生活 問 題 が 数 多 く 発 生 す る こ と にな る が 、 そ れ ら を 地 域社 会 が 主 体 的 に 解 決 しよ う と す る 機運 が 生 じ に く い た め 、 行 政 が 社会 福 祉 を 主 体 的 に 担 って い く 必 要 性 が 高 く なる 。 佐 々 木 は、

こ う し た 大 都 市 か ら 発 生 す る先 進 的 な 福 祉 ニ ー ズ と、 そ れ ら に 対 応 し よ うと し て き た 大都 市 福 祉 行 政 が 、 全 国 の 福 祉 政策 を リ ー ド し て き た と指 摘 し て い る ( 佐 々 木

2001:4)。

  一 方 で 太 田 は 、 大 都 市 に は様 々 な 局 面 に お い て 「見 え に く さ 」 と い う 問題 が あ り 、 地域 の 支 援 ニ ー ズ や サ ー ビ ス 供 給シ ス テ ム の 全 体 像 を 把握 し に く い た め 、 こ の「 見 え に く さ」

と い う 問 題 が ど う い っ た 問 題を ど の よ う に 引 き 起 こし て い る の か 、 実 証 的に 研 究 し て いく こ と が 必 要 で あ る と 指 摘 し てい る( 太 田

2012:32-34)。確 か に、産 業 化 が急 速 に 進 行 す る

中 で 、 大 都 市 が 我 が 国 の 福 祉行 政 を リ ー ド し て き たこ と は 事 実 で あ る が 、そ の 実 態 が つぶ さ に 明 ら か に さ れ て き た わ けで は な い 。こ の 間 、川 上(2003)に よ る 都 市 高 齢 者 の 生 活実 態 と 要 介 護 状 態 を 把 握 し よ うと す る 研 究 や 、奥 山(2009)に よ る 高 齢 者 の住 居 移 動 や 世 代 間 扶 養 の 実 態 か ら 大 都 市 に おけ る 高 齢 者 の 生 活 状 況を 明 ら か に し よ う と する 研 究 、 さ らに は 河 合(

2009)に よ る ひ と り暮 ら し 高 齢 者 の 社 会 的孤 立 に 焦 点 を 当 て た 大都 市 研 究 な どが

行 わ れ て き た が 、 こ れ ら は 大都 市 に 居 住 す る 高 齢 者の 支 援 ニ ー ズ の 把 握 に焦 点 を 当 て たも の で あ っ た 。 ま た 最 近 は 、 支援 機 関 や 施 設 ・ 事 業 所に お け る 取 り 組 み に つい て も 報 告 され る よ う に な っ て き て い る が

22)

、い ず れ も サー ビ ス 供 給主 体 を 対 象 と し た 研 究の 域 を 出 て お ら ず 、 サ ー ビ ス 供 給 シ ス テ ム総 体 と し て の 課 題 や 、そ れ に 対 す る 福 祉 行 政の あ り 様 に つい て 考 察 し た 研 究 は 、 ほ と ん ど行 わ れ て い な い 。

  大 都 市 の 福 祉 課 題 は 、 そ の量 的 な 多 さ と 質 的 な 複雑 さ 故 に 全 体 像 が 捉 えに く く 、 そ れに 対 応 す る 自 治 体 福 祉 行 政 の 実態 を 捉 え る こ と も 非 常に 難 し い が 、 大 都 市 ほど 行 政 に よ る政 策 的 な 対 応 が 必 要 で あ る と いう 現 実 を 踏 ま え 、 そ のあ り 方 を 追 究 し て い くこ と が 必 要 であ る 。

4) 複 合 的 支 援ニ ー ズ と 包 括 的支 援 施 策 に 関 す る 先 行研 究  

  近 年 の 社 会 保 障 制 度 改 革 は、 低 密 度 の 医 療 に よ る長 い 入 院 期 間 が 、 非 効率 な 医 療 の 提供

21)

平 野 は 、 福 祉 改 革 が 一 定 の 到 達 段 階 に 達 し た こ と で 、 既 存 の 福 祉 経 営 論 の 射 程 範 囲 を 超 え る 状 況 が 生 じ つ つ あ る と し て 、 新 た な 理 論 へ と 発 展 継 承 す る こ と が 重 要 な 課 題 と な っ て い る と 指 摘 し て い る

( 平 野

2003

174-177

)。

22)

太 田 (2012) で は 、 地 域 包 括 支 援 セ ン タ ー に よ る 取 り 組 み や 福 祉 ・ 介 護 人 材 育 成 の 取 り 組 み 、 生 活

支 援 サ ー ビ ス や 成 年 後 見 制 度 の 利 用 実 態 等 に つ い て 、 都 市 部 の 自 治 体 の 事 例 報 告 が ま と め ら れ て い

る 。

図 序 − 2   論 文 の 全 体 の 構 成     第 1 章 で は 、大 都 市 制 度 を踏 ま え た 福 祉 制 度 の 運営 構 造 に つ い て 整 理 する と と も に、大 都 市 の 医 療 ・ 介 護 ニ ー ズ の 動向 に つ い て 確 認 す る 。そ の 上 で 、 大 都 市 に は多 く の 困 難 性を も っ た 支 援 ニ ー ズ が 集 積 す るこ と を 踏 ま え 、 大 都 市に お け る 福 祉 ニ ー ズ の複 合 化 の 状 況に つ
表 1 − 1   大 都 市 圏 と 大 都 市圏 以 外 の 総 人 口 ・ 高 齢者 人 口 の 推 計   図 1 − 2   対 2015 年 度 比 ・ 高齢 者 の 増 加 数     こ の た め 、 図 1−3 に 見 る よ う に 、 大 都 市 を 抱 える 地 域 の 医 療 需 要 の ピー ク は 、 大 半 が 2040 年 以 降 に な る こと が 予 想さ れ て お り 、 こ れ と 連動 し て 介 護 ニ ー ズ も 増加 し て く る こ と が 想 定
図 1 − 4   大 都 市 福 祉 行 政 の困 難 性   こ う し た 状 況 は 、 サ ー ビ ス 供給 シ ス テ ム 全 体 と し ての 一 体 性 を も た せ る こと を 難 し くさ せ る た め 、 連 携 や 調 整 と い う問 題 が 発 生 し や す く なる 。 例 え ば 、 認 知 症 の親 と 精 神 障 害の 子 、 ひ き こ も り の 孫 と い っ た複 合 的 な 支 援 ニ ー ズ を有 す る 家 庭 に 対 し て 、別 々 の 支 援
表 2 − 1   社 会 福 祉 の 対 象 の捉 え 方     そ し て 、 そ れ ぞ れ の 報 告 書が 示 し た 政 策 の あ り 方を 分 析 す る た め に 、 三つ の 報 告 書 の提 言 内 容 を 「 地 域」「 民 間 」「 行 政 」 に よる 取 り 組 み に 区分 し て 整 理 し た も の が表 2− 2 で あ る 。 こ の 表 か ら 見 え て く る のは 、 地 域 主 体 の 取 り 組み を 重 視 す る 考 え 方 は三 つ の 報 告
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参照

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