• 検索結果がありません。

JPEG MRI L CO 2 ADMM (Alternating Direction Method of Multipliers) z n n R n z = [z, z 2,..., z n ] R n l p

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "JPEG MRI L CO 2 ADMM (Alternating Direction Method of Multipliers) z n n R n z = [z, z 2,..., z n ] R n l p"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

最適制御とスパースモデリング

Optimal Control and Sparse Modeling

永原正章

Masaaki NAGAHARA アブストラクト 信号処理や機械学習の分野で,圧縮センシングやスパースモデリングと呼ばれるスパース性を巧みに利用した 信号復元手法が注目されている.このスパース性の概念を制御系設計に援用した,スパース最適制御または動的スパースモ デリングと呼ばれる新しい制御系設計法が近年提案された.スパース最適制御では,目標を達成する制御信号のうち最もス パースなものを選ぶ.スパースな制御を用いれば,一定時間アクチュエータの動作を止めることが可能となり,省エネル ギーにつながる.本稿では,スパース最適制御の基礎を解説し,最適制御におけるスパースモデリングの重要性について述 べる. キーワード 最適制御,スパースモデリング,圧縮センシング,省エネルギー,動的スパースモデリング

Abstract Recently, a novel method for signal reconstruction, called compressed sensing or sparse modeling, has been at-tracting considerable attention in signal processing and machine learning. This method has been extended to optimal control, which is called sparse optimal control or dynamical sparse modeling. This control can stop actuators for a time duration, and the control systems can thus achieve effective energy conservation. In this article, we will discuss how sparsity can be utilized in control systems.

Key words optimal control, sparse modeling, compressed sensing, energy conservation, dynamical sparse modeling

1.

は じ め に

省エネルギーは,現代社会において喫緊の課題であり,その実 現に向けて様々な分野で研究・開発が行われている.特に 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災による電力危機以降,その 重要性はますます高まっている.更に,地球温暖化を防ぐため に,日本などの先進国は CO2排出を大幅に減らす必要がある. しかし,一方で人口増加に対応した工業製品の生産量の増加や 人間の生活の質の向上など,エネルギー消費や CO2排出を拡大 する方向に文明が進んでいるという側面もあり,ただ単に削減 を目指すのではなく,様々な工夫が必要となる. 省エネルギーのための最も単純な方策は,エネルギーを消費 する機器を動作させないことである.しかし,例えば夏の暑い 日にエアコンをストップさせれば,その部屋にいる人にとって は熱中症などのリスクが生じる.すなわち,単純にスイッチを 切るという方策ではなく,もう少しスマートに「必要のないと きは動作させない」という方策をとるべきである. このような方策は,我々の身の回りに多くある.例えば,自 動車のアイドリングストップはこの典型例で,動力を必要とし 永原正章 正員 北九州市立大学環境技術研究所

E-mail [email protected], [email protected]

Masaaki NAGAHARA, Member (Institute of Environmental Science and Technology, The University of Kitakyushu, Kitakyushu-shi, 808-0135 Japan).

電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ

Fundamentals Review Vol.10 No.3 pp.176–185 2017年 1 月 c ⃝電子情報通信学会 2017 ない間はエンジンを切る.これにより,ガソリンの消費量が劇 的に削減できるだけでなく,CO2などの排出量も抑えられる(1). また,ガソリンエンジンと電気モータの両方を使用するハイブ リッド車においては,停止時または低速走行時においてガソリ ンエンジンを停止させる.これも「必要のないときは動作させ ない」という省エネルギー方策の一つである(2).同じ方策は,電 車でも使用される.電車の運転では,ある程度までスピードを 出すとモータへの電力を遮断して(ノッチオフと呼ぶ),あとは 惰行運転を行う.各駅停車の電車では,駅間が平たん線区の場 合,その走行距離の半分以上が惰行運転である(3).更に,無線 通信におけるスリープモードも省エネルギーのための同様の方 策であると言える(4),(5) 「必要のないときは動作させない」という方策を数学的に定 式化するとき,スパース性の概念が役に立つ.ここで,スパー ス性は有限次元のベクトルに対して定義され,あるベクトルの サイズに比べて非零の要素が非常に少ないとき,そのベクトル はスパースであるという.ある行列 Φ をスパースな列ベクトル zに掛ける線形変換 Φz を考えよう.行列 Φ の第 i 列を ϕi,ベ クトル z の第 i 要素を ziと置くと,この変換は Φz = z1ϕ1+ z2ϕ2+· · · + znϕn (1) と書ける.ここでベクトル z の第 i 要素 ziが零だとすると,行 列 Φ の第 i 列目のベクトル ϕiは変換に関与しない.行列の列 ベクトル ϕiが要素 ziを動かすモータ(またはアクチュエータ) だと思えば,スパースなベクトルの線形変換は動作するモータ が少ないことを意味する.まさに,必要のないときは動作させ

(2)

ないという省エネルギーのための方策であり,スパース性と関 連していることが分かるだろう. スパース性は,これまでも様々なところで活用されている.例 えば,画像圧縮技術である JPEG でも,スパース性の概念が使 われる(6).自然画像は多くの場合,その周波数成分のほとんどが 低周波に集中し,高周波はほとんど零となる.高周波は必要な いので,その大部分の成分を零としてスパース化してしまえば, 極めて効果的なデータ圧縮が可能となる.また,人工的なイラス ト画像は隣同士のピクセルの差分をとれば,ほとんどが零とな る.すなわち差分をとったデータがスパースとなる.このような スパース性をうまく利用し,圧縮された不完全な観測データか ら画像を再構成する技術は圧縮センシング(7),(8)と呼ばれ,特 に医療用 MRI 画像の再構成で有効とされている(9),(10).また, 画像処理だけでなく,音響信号処理(11)∼(13)や無線通信(14),(15) などでもスパース性を巧みに用いた方法が検討されている.更 には,天文学や地学,生物学など理学系の研究にもスパース性 に基づくモデリング手法が近年大きな話題になっている(16).こ れら,スパース性に基づく技術を総称して,スパースモデリン グと呼ぶ. 筆者らは,これまでスパースモデリングを制御に応用する研 究を進めてきた.文献(17)∼(19)では,有限区間の連続時間制 御信号をある基底で展開し,制御問題をその係数を設計する問 題として定式化して,係数をスパース化することを提案した.こ れにより,アクチュエータの動作が簡易化されるだけでなく,遠 隔制御系における制御信号の通信データ量圧縮にも役立つ.な ぜなら,スパースな係数ベクトルは,例えば非零要素の値とそ の位置だけを符号化すればよく,単純な量子化器による効率の 良いデータ圧縮が可能だからである.また,文献(20)∼(23)で は,離散時間の制御対象を考え,無線通信のようなパケットロ スの生じるネットワーク化制御系のロバスト制御を考察してい る.このような系において,制御信号のスパース化を行うこと で,パケットロスへの対応と通信データ量の削減の両方を考慮 することが可能となる. 通常,スパース性は,有限次元のベクトル(または行列)に 対して定義される概念であった.このスパース性の概念を拡張 し,連続時間信号に対して定義することも可能である.すなわ ち,ある連続時間信号の時間長(時間ホライズン)が有限だと して,その時間長に比べて,信号の台(すなわち,非零の値をと る時間区間)の長さ(これを L0 ノルムと呼ぶ)が非常に短い とき,その連続時間信号はスパースであると言う.このアイデ アを用いて,文献(24)∼(26)では,与えられた初期状態から原 点へと状態を遷移させ,かつ,状態と制御入力に対する制約を 満たす制御(これを許容制御と呼ぶ)のうち最もスパースなも のを選ぶというスパース最適制御を提案した.スパース最適制 御では,制御の値が 0 である時間区間上でアクチュエータを動 作させる必要がない.したがって,その時間区間において,燃 料や電力消費などを削減し,かつ,CO2の排出や振動,騒音な どを抑えることができる.また,制御信号のスパース性は,省 エネルギーだけでなく,上記で述べたように制御信号の効率的 な圧縮にも有効である. 本稿では,まずベクトルと連続時間信号に対するノルムを定 義したのち,最初にベクトルに対するスパースモデリングと その制御への応用について解説する.次に,連続時間信号に対 するスパースモデリングを定式化し,スパース最適制御の性質 とその解法,特に ADMM (Alternating Direction Method of Multipliers)と呼ばれる凸最適化のための最近の高速アルゴリ ズム(27),(28)を用いた数値最適化法について説明する.

2.

ベクトルと信号のノルム

ここでは,有限次元のベクトルと有限区間上の信号(関数)の ノルムについてまとめる.本章の内容は,以降の解説において 基礎となる.

2. 1

有限次元ベクトルのノルム

まず,有限次元ベクトルのノルムを定義しよう.本稿では,有 限次元のベクトル(有限次元空間上に矢印として書けるベクト ル)を太文字で z などと書くことにする.ただし,一次元ベク トルはスカラと同一視し,太文字では書かない.また,n 次元実 ベクトル空間(n 次元の列ベクトルの空間)をRnで表す.ベ クトル z = [z1, z2, . . . , zn] ∈ Rnに対して(⊤ は転置を表 す),その ℓpノルム(ただし,1 < = p < ∞ とする)を以下で 定義する. ∥z∥p≜ (n i=1 |zi|p )1/p . (2) 更に,(2) で p→ ∞ をとった極限として,ℓ∞ノルム ∥z∥≜ max i=1,...,n|zi| (3) を定義する. ベクトル z = [z1, z2, . . . , zn] ∈ Rnをインデックス集合 {1, 2, . . . , n} 上の実数値関数(または有限区間の離散時間信号) と見て,その台 (support) を supp(z)≜{i∈ {1, 2, . . . , n} : zi |= 0 } (4) で定義する.すなわち,supp(z) はベクトル(離散時間信号)z が非零の値をとるインデックス(時刻)の集合である.ベクト ルの台を用いて,ℓ0ノルムが以下のように定義される. ∥z∥0≜ |supp(z)|. (5) ここで,有限集合 S に対して,|S| はその集合の要素数を表す ものとする.数学的には ℓ0ノルム (5) は,ノルム三条件の一つ である斉次性

∥az∥ = |a|∥z∥, ∀a ∈ R, ∀z ∈ Rn (6)

を満たさず,厳密にはノルムとは呼ばないが,本稿では慣例に

従って ℓ0ノルムと呼ぶことにする.しかし,このノルムは斉次

性が成り立たない(すなわち,ベクトルを何倍しようが ℓ0ノル

(3)

2. 2

連続時間信号のノルム

次に,有限区間上の関数(連続時間信号)に対するノルムを定 義しよう.有限区間 [0, T ] 上の実数値関数 z(t)(すなわち,連 続時間信号)に対して,その Lpノルム (1 < = p < ∞) を ∥z∥p≜ (∫ T 0 |z(t)|pdt )1/p (7) で定義する.更に,(7) の p→ ∞ での極限を L∞ノルムと呼 び,次式で定義する. ∥z∥∞≜ sup t∈[0,T ]|z(t)| (8) 本稿では余り意識しなくてもよいが,例えば, z(t) =      1, t = 0, 1 0, 0 < t < 1 (9) のような関数の L∞ノルムは 1 ではなく 0 である.すなわち, L∞ノルムをとるとき,1 点での値(厳密には Lebesgue 測度 が 0 の集合上での値)は無視する.そのことを明確にするため に (8) の右辺の sup を ess sup と書く場合もあるが,本稿では, (8)の定義式を用いる.Lpノルムが有限の関数全体を Lp空間 と呼ぶ(関数の定義域 [0, T ] を明示したいときは,Lp[0, T ] 書く). 有限区間 [0, T ] 上の関数 z(t) に対して,その台を supp(z)≜ {t ∈ [0, T ] : z(t) |= 0} (10) で定義する.この台の定義を用いて,[0, T ] 上の関数 z(t) の L0 ノルムをその台の長さ,すなわち ∥z∥0≜ µL(supp(z)) (11) で定義する.ただし,[0, T ] 上の部分集合 S に対して,µL(S) は S の長さ(Lebesgue 測度)を表す.すなわち,supp(z) は連 続時間信号が非零の値をとる時間区間の長さの合計である.な お,ここで定義された∥z∥0も斉次性を満たさず,厳密にはノル ムではない.連続時間の L0ノルムの定義 (11) とベクトルの ℓ0 ノルムの定義 (5) とを比較せよ.L0ノルムの定義 (11) が ℓ0 ルムの定義 (5) の自然な拡張となっていることが分かるだろう.

3.

スパースモデリングと離散時間最適制御

ここでは,ベクトルに対するスパースモデリングについて簡 単に解説したのち,その制御応用について概観する.

3. 1

スパースモデリング

連立方程式 Φz = ζ (12) を考える.ここで,Φ∈ Rm×nで,m < n の場合を考える.こ のとき,行列 Φ は横長となる.また,行列 Φ は行フルランク, すなわち rank(Φ) = m を仮定する.このとき連立方程式 (12) は解を無限個持つ.このような連立方程式を劣決定系と呼ぶ. 連立方程式 (12) を,センサ Φ を通してベクトル z が観測さ れ,ベクトル ζ が得られたものと解釈すれば,元のベクトル z を復元するには観測数が少なく,一意に復元ができない状況で あることが分かる.このようなときは,無数にある解のうちか ら最もノルムの小さいものを選ぶ,すなわち,次の最適化問題 を解く方法が標準的である. min z∈Rn∥z∥ 2 2 subject to Φz = ζ (13) これを最小ノルム解と呼ぶ.方程式 (12) の最小ノルム解 (13) は閉形式で z= Φ(ΦΦ)−1ζ (14) と書けることが知られている(例えば文献(29)の第 1 章を参照 せよ).最小ノルム解は閉形式で書けるので,その簡単さから 様々なところで用いられている.しかし,無数の解の中から解を 一つに絞るための指標は ℓ2ノルムだけとは限らず,場合によっ ては別のノルムを考えるほうが適切であることも多い.その一 例が,以下で述べるスパースモデリングである. スパースモデリングでは,連立方程式 (12) の無数の解の中か ら最もスパースなものを選ぶ.言い換えれば,次の最適化問題 の解を求める. min z∈Rn∥z∥0 subject to Φz = ζ (15) この最適化問題の最もナイーブな解き方は,以下に述べる総 当たり法である.まず,ベクトル z = [z1, z2, . . . , zn]⊤∈ Rn とインデックスの集合 S ⊂ {1, 2, . . . , n} に対して,ベクトル zS ∈ R|S|をベクトル z の要素のうち S に対応する要素を並 べたベクトルと定義する.具体的には, S ={i1, i2, . . . , ik}, k ∈ {1, 2, . . . , n} (16) とし,1 <= i1< i2<· · · < ik<= n とすると, zS= [zi1, zi2, . . . , zik]⊤∈ R k (17) となる.同様に,行列 Φ = [ϕ1, ϕ2, . . . , ϕn]∈ Rm×ni∈ Rm, i = 1, 2, . . . , n)に対して ΦS= [ϕi1, ϕi2, . . . , ϕik]∈ R m×k (18) と定義する.これらの記法を用いれば,(15) の解は次のように 有限回の繰返しで求めることが可能である.すなわち,インデッ クス集合{1, 2, . . . , n} の全ての部分集合 S について,|S| の小 さいほうから順に連立方程式 ΦSzS= ζ (19) を解いていき,解が見つかれば,その解 zS = [zi1, . . . , zik] を用いて,z∗= [z1∗, z2∗, . . . , z∗n],ただし

(4)

zi=      zi, if i∈ S 0 otherwise (20) とすれば,最もスパースな解 zが得られ,∥z∗∥0= kとなる. しかし,この方法は n が大きくなれば指数関数的に計算量が増 大し,例えば画像処理のデータのように n が数百万となった場 合,この方法で解を求めることは不可能である. スパースモデリングにおける最も重要なアイデアの一つは, (15)のような組合せ最適化の問題を次の ℓ1ノルム最小化問題 に緩和して解くことである. min z∈Rn∥z∥1 subject to Φz = ζ (21) これは凸最適化問題(または線形計画問題)であり,(15) を直 接解くよりもはるかに容易に解が得られる.また,驚くべきこ とに,多くの現実的な問題で ℓ1最適化問題 (21) の解は元の ℓ0 最適化問題 (15) の解と一致することが知られている.詳しくは 文献(7),(8),(29)などを参照されたい.

3. 2

制御問題への応用

ここでは,前述のスパースモデリングの最適制御問題への応 用を紹介する.次の離散時間線形制御系 x[k + 1] = Ax[k] + bz[k], k = 0, 1, 2, . . . , n− 1 (22) を考えよう.ただし,x[k]∈ Rdと z[k]∈ R はそれぞれは離散 時刻 k での状態変数及び制御信号を表し,A∈ Rd×d, b∈ Rd とする.また初期状態は x[0] = ξ とし,ξ は任意に与えられ, 既知とする. 制御信号列{z[0], z[1], . . . , z[n − 1]} は状態変数 x[k] を初期 状態 x[0] = ξ から n ステップで原点に移動させるものを選ぶと する.すなわち,x[n] = 0 となるような制御信号列を求めたい. このような制御信号を実行可能制御 (feasible control) と呼ぶ. まず,制御信号列をベクトルとして z≜[z[0], z[1], . . . , z[n− 1]] (23) と置くと,状態遷移の条件(x[0] = ξ と x[n] = 0)は,差分方 程式 (22) を解くことにより, Φz = ζ (24) と書ける.ただし, Φ≜ [An−1b, An−2b, . . . , Ab, b], ζ≜ −Anξ (25) である.これが,実行可能制御を特徴付ける方程式となる.い ま,n > d とし,更に離散時間制御系 (22) が可到達という性質 を持てば,実行可能制御,すなわち (24) を満たす z は必ず存在 する(30) [補題 1] n > d とし,離散時間制御系 (22) は可到達,すな わち rank[b, Ab, . . . , Ad−1b] = d, (26) が成り立つと仮定する.このとき,任意の ξ∈ Rdに対して,制 御ベクトル z に関する連立方程式 (24) は解を少なくとも一つ 持つ.すなわち,実行可能制御は存在する. 実際,もし上の補題の条件が満たされれば,実行可能制御は 無数に存在する.制御問題では,3.1 での信号復元問題と異な り,解が無数に存在する状況は望ましい.なぜなら,制御の目 標(今の場合は状態を原点に n ステップで遷移させるという目 標)を達成する制御が複数存在すれば,その中から,別の指針 に従って,更に良い解を選ぶことができるからである.例えば, 制御目標を達成する(すなわち,連立方程式 (24) を満たす)実 行可能制御ベクトルのうち,最もスパースなベクトルを選ぶこ とが考えられる.スパースな制御ベクトルは言い換えれば,多 くの離散時刻で制御入力が 0 となることであり,制御対象を動 かすアクチュエータが止まっている状態である.これは,1. で 述べた「必要のないときは動作させない」という省エネルギー 方策に他ならない. スパースな制御ベクトルを求めるために,3.1 で考察した ℓ1 最適化を使ってみる.すなわち,次の最適化問題を考える. min z∈Rn∥z∥1 subject to Φz = ζ (27) 一度このように定式化すれば,スパースモデリングの標準的な解 析手法が使え,(27) のスパース性の議論も可能である(30).また, 最適化問題 (27) は線形計画法であり,MATLAB の cvx などの 数値計算ソフトウェアを使えば効率的に最適解が計算できる(31)

更に,ADMM (AlternatingDirection Method of Multipliers) と呼ばれる最近の凸最適化の高速アルゴリズム(27),(28)を用い た高速解法も利用できる.詳しくは,以下の 4. 4 を参照され たい.

4.

連続時間信号に対するスパースモデリング

前章で考察したベクトルのスパースモデリングは,連続時間 信号に対する L0ノルムを使って,微分方程式で記述される動 的システムのスパースモデリングに拡張できる.

4. 1

問題の定式化

まず,区間 [0, T ] 上の連続時間信号 z(t) がスパースである とは,時間区間の幅 T に比べて z の L0ノルム∥z∥ 0 が非常 に小さいことを言う.この定義は,前節で述べたベクトルのス パース性のアナロジーである.なお,スパースな連続時間信号 は零の値をとる時間区間長が正であることから,必然的に解析 関数ではないことに注意する必要がある.例えば,多項式関数 tn+ a n−1tn−1+· · · + a1t + a0や三角関数 sin(ωt) (ω |= 0), 指数関数 eλt,及びそれらの和や積はスパースにはなり得ない. では,本節で考える問題に移ろう.制御対象として,次の連 続時間の微分方程式を考える. ˙ x(t) = Ax(t) + bz(t), t >= 0 (28) ただし,x(t)∈ Rdと z(t)∈ R, t ∈ [0, T ] はそれぞれ,時刻

(5)

t >= 0 での状態変数及び制御信号を表し,A ∈ Rd×d, b∈ Rd とする.初期状態は x(0) = ξ とし,ξ は任意に与えられ既知と する. 制御対象 (28) に対し,初期状態 x(0) = ξ ∈ Rd から時間 T > 0で原点に移動させる(すなわち,x(T ) = 0 となる)制 御信号{z(t) : t ∈ [0, T ]} を求めたい.なお,アクチュエータの 飽和等を考慮し,ここでは制御信号に下記の絶対値制約を課す. ∥z∥∞<= 1. (29) 制約 (29) を満たし,状態を x(0) = ξ から x(T ) = 0 に移す制 御信号を離散時間最適制御のときと同様に実行可能制御 (feasible control)と呼ぼう. まず,制御対象の微分方程式 (28) 及び境界条件 x(0) = ξ, x(T ) = 0は制御信号 z に関する(無限次元の)線形制約とし て定式化されることを示す.微分方程式 (28) の一般解は行列指 数関数 eAt を用いて x(t) = eAtx(0) +t 0 eA(t−τ)bz(τ )dτ (30) と表される(32).これと境界条件 x(0) = ξ, x(T ) = 0 から, 0 = eATξ +T 0 eA(T−τ)bz(τ )dτ (31) が成り立つ.ここで, Φ : L1→ Rn, Φz≜ ∫ T 0 eA(T−τ)bz(τ )dτ ζ =−eATξ (32) と置くと,(31) から(無限次元の)線形制約条件 Φz = ζ (33) が得られる.Φ は無限次元空間 L1から有限次元空間Rdへの 作用素であり,(33) を満たす実行可能制御 z(t), t∈ [0, T ] は一 般に無数に存在する.このことは,作用素 Φ が「無限に横長の」 行列と解釈すれば,3.2 のスパースモデリングの場合と同様で あることが理解できるだろう.以上より,実行可能制御は (33) の線形制約と (29) の不等式制約とを同時に満たす z であること が分かる. 最適制御とは,無数に存在する実行可能制御の中から,与え られた評価関数を最小化する(通常は一つの)最適解を求める ことにほかならない.最適制御としては次のようなものが考え られる. L2最適制御(最小エネルギー制御)(33, 6−20 節) 実行可能制御のうち最小の L2ノルムを持つものを求める最 適制御を L2最適制御と呼び,古典的な最適制御問題の一つで ある. min z∈L∞∥z∥ 2 2 subject to Φz = ζ, ∥z∥∞<= 1 (34) L2ノルム(の二乗)は機械系や電気回路においてエネルギーに 相当する量であるので,この L2最適制御を最小エネルギー制御 (minimum-energy control)とも呼ぶ.詳細は文献(33)の 6-18 節を参照されたい. L1最適制御(最小燃料制御)(33, 6−14 節) 実行可能制御のうち最小の L1ノルムを持つものを求める最 適制御も 1960 年代から考えられている古典的な問題である. min z∈L∞∥z∥1 subject to Φz = ζ, ∥z∥∞<= 1 (35) 宇宙空間においてロケット移動に使われる燃料の消費率が制御 信号の絶対値に比例するという経験則から,上記の最適制御は 最小燃料制御 (minimum-fuel control) とも呼ばれる.詳細は 文献(33)の 6-14 節を参照されたい L0最適制御(スパース最適制御)(26) ベクトルのスパースモデリングのアイデアを最適制御に応用 した L0最適制御は文献(26)で初めて提案された. min z∈L∞∥z∥0 subject to Φz = ζ, ∥z∥∞<= 1 (36)

L0最適制御は,最大無干渉制御 (maximum hands-off control) またはスパース最適制御 (sparse optimal control),あるいは 動的スパースモデリング (dynamical sparse modeling) とも呼

ばれる.スパースモデリングの場合と同様,この L0最適制御 は L1最適制御と深い関係がある(26) [定理 1](L1と L0の等価性) 連続時間制御対象 (28) は可到 達,すなわち rank[b, Ab, . . . , Ad−1b] = d (37) が成り立ち,かつ,行列 A は正則と仮定する.また L1最適制 御問題 (35) に解が存在すると仮定する.このとき,L0最適制 御 (36) と L1最適制御 (35) は一致する. この定理の条件が満たされれば,極めて難しい最適化問題であ る L0最適制御は,凸問題である L1最適制御に帰着できるこ とが分かる.L1最適制御は無限次元の最適化問題ではあるもの の,その計算は L0最適制御に比べればはるかに易しい.L1 適制御の数値計算法については,第 4. 4 節を参照されたい. 絶対値和最適制御(34) L1最適制御と L0最適制御の等価性からアイデアを得て,有 限個の離散値だけをとるような制御信号の設計に下記の絶対値 和 (sum of absolute values; SOAV) を最小化する最適制御が 文献(34)で提案された. min z∈L∞ Mj=1 pj∥z − rj∥1 subject to Φz = ζ, ∥z∥∞<= 1 (38) ここで,p1, . . . , pM は pj > 0かつ p1+· · · + pM = 1を満 たす重み,r1, . . . , rM は与えられた実数である.絶対値和最適 制御解は,ある簡単な条件の下,ほとんど全ての t∈ [0, T ] で z(t)∈ {r1, . . . , rM} となることが示されている(34).なお,L1

(6)

最適制御 (35) は,絶対値和最適制御において M = 1, p1= 1, r1= 0とした場合に相当する.

4. 2

スパース最適制御の例題

ここでは,制御対象の例として 2重積分器 (double integra-tor)を取り上げ,その L1最適制御のスパース性について考察 する.ここで,二重積分器とは,入出力関係が次の伝達関数で 表されるシステムのことである. P (s) = 1 s2. (39) これは,単位質量のロケットが宇宙空間を推進する最も単純な モデルである(注 1) .また,(39) で表される伝達関数の状態空間 表現は次で与えられる. d dt  x1(t) x2(t)   =  0 1 0 0    x1(t) x2(t)   +  0 1   z(t), t >= 0. (40) ここで,x1(t)と x2(t)はそれぞれ時刻 t におけるロケットの位 置と速度を表す.また初期状態は [x1(0), x2(0)]⊤= [ξ1, ξ2]⊤∈ R2とし,既知とする.この制御対象に対して,時間 T > 0 で 状態を原点に遷移させる,すなわち x1(T ) = x2(T ) = 0を満 足させる制御入力{z(t) : t ∈ [0, T ]} のうち,振幅に対する制∥z∥∞<= 1 を満たし,かつ,次の L1評価関数を最小化する L1最適制御問題を考える. J (z) =∥z∥1= ∫ T 0 |z(t)|dt. (41) ここで,終端時刻 T > 0 は固定とし,十分大きいとする(注 2) この最適制御問題の解 z∗を Pontryagin の最小原理(33)によ り求める(注 3).まず,Hamilton 関数 H を定義する. H =|z(t)| + p1(t)x1(t) + p2(t)x2(t). (42) ここで,p1(t), p2(t) は状態 x1(t), x2(t) に対する共状態で ある.Pontryagin の最小原理より,最適制御 z∗は制約条件 |z(t)| <= 1 の下で,Hamilton 関数 (42) を最小化する.ここで, H =      (p2(t)− 1)z(t) + p1(t)x2(t), if z(t) < 0, (p2(t) + 1)z + p1(t)x2(t), if z(t) > 0 (43) と書けるので,p2(t) により場合分けして考えれば,最適制御 z∗(t)は (注 1):実際のロケットは自分自身の質量(燃料など)を反対方向に噴射することに よって加速度を得るので,厳密に言えばこのモデルは正しくない(質量を減らさなけ れば加速度運動はできない).ここではロケット自体の質量が燃料の質量に比べて十 分大きく,質量の変化は無視できると仮定している.若しくは,例えば摩擦のない線 路上をゆっくり移動する電車のような(空気抵抗が極めて小さい)移動体を考えても よい. (注 2):厳密には,終端時刻 T は最短時間制御問題,すなわち,評価関数として (41)の代りに J = T を採用した制御問題の解 T∗よりも大きい必要がある.もし Tが T∗よりも小さい場合,L1最適制御には解は存在しない.詳しくは文献(33) の Lemma 8-7 を参照せよ. (注 3):最適制御の求め方は,文献(33)の 8-6 節を参照にした.

0

dez(v)

1

1

1

1

v

図 1 不感帯関数 dez(v) z∗(t) = dez(p2(t) ) (44) を満たす.ここで dez(·) は以下で定義される不感帯関数 (dead-zone function)である(図 1): dez(v) =            −1, if v <−1, 0, if − 1 < v < 1, 1, if 1 < v, dez(v)∈ [−1, 0], if v = −1, dez(v)∈ [0, 1], if v = 1. (45) これより,ある時間区間上で恒等的に|p2(t)| = 1 が成り立つ場 合,その区間上で最適制御が(最小原理からは)一意に確定で きない.そのような区間を特異区間 (singular interval) と呼び, 長さが正の特異区間が存在するような最適制御問題は「特異で ある (singular)」という.逆に正の長さの特異区間が存在しな い,すなわち, µL ( {t ∈ [0, T ] : |p2(t)| = 1} ) = 0 (46) が成り立つような最適制御問題は「正規である (normal)」とい う.定理 1 における条件 (37) 及び行列 A の正則性は,任意の初 期値に対して L1最適制御問題が正規となるための十分条件であ る.しかし,いま考察している二重積分系では,制御問題が特 異であるか否かは,初期値の位置に依存する.もし,制御問題 が正規であれば,ほとんど全ての t∈ [0, T ] で p2(t)±1 の 値を取らない.すると,(44) 及び (45) から,最適制御入力は, ほとんど全ての t∈ [0, T ] で 0 若しくは ±1 の値だけを取るこ とになる.このような制御をバンバン制御 (bang-bang control または bang-off-bang control) と呼ぶ.もし,L1最適制御が バンバン制御になるならば,それは L0最適解でもあることが 示されている.詳細は文献(35)を参照されたい. 共状態 (p1(t), p2(t))は以下の正準方程式を満たす. d dt  p1(t) p2(t) = −  ∂x∂H1(t) ∂H ∂x2(t)   =   0 −p1(t) . (47) なお,(43) を用いた.正準方程式 (47) を解けば, p1(t) = π1= const., p2(t) = π2− π1t, (48) π1= p1(0), π2= p2(0) (49)

(7)

0

R

1

R

2

R

3

R

4

x

2

x

1

図 2 曲線 γ(太実線)及び領域 R1, R2, R3, R4 が得られる.(48) から,π1 |= 0 であれば p2(t)は t の一次式 であるので,p2(t)は単調であり,したがって (44) と (45) か ら,切り替えは高々2 回であり,また切り替えは−1 と 0 の間, 若しくは 0 と 1 の間でしか起こり得ないことが分かる.切り替 えのパターンによって場合分けして最適制御を求めると,以下 のようになる(33, 8−5 節) [補題 2] 終端時刻 T は対応する最短時間制御の最適値 T∗よ りも大きいと仮定する.次の各領域を定義する(図 2 ). R1= { (x1, x2)∈ R2: x1>−x22/2, x2>= 0}, R2= { (x1, x2)∈ R2: x1<−x22/2, x2> 0 } , R3= { (x1, x2)∈ R2: x1< x22/2, x2<= 0}, R4= { (x1, x2)∈ R2: x1> x22/2, x2< 0 } , γ ={(x1, x2)∈ R2: x1= x2|x2|/2 } , V={(x1, x2)∈ R2:−x2/2− x1/x2>= T}, V+= { (x1, x2)∈ R2: x2/2− x1/x2>= T}. (50) このとき,以下が成り立つ. ( 1 ) 初 期 値 (ξ1, ξ2) ∈ R1 の と き ,ま た は (ξ1, ξ2) R4∩ V−のとき,最適制御は z∗(t) =            −1, if 0 <= t < t1, 0, if t1<= t < t2, 1, if t2<= t <= T (51) で与えられる.ただし, t1= T + ξ2(T− ξ2)2− 4ξ1− 2ξ22 2 , t2= T + ξ2+ √ (T− ξ2)2− 4ξ1− 2ξ22 2 (52) である. ( 2 ) 初 期 値 (ξ1, ξ2) ∈ R3 の と き ,ま た は (ξ1, ξ2) R2∩ V+ のとき,最適制御は 0 1 2 3 4 5 time (sec) -1 -0.5 0 0.5 1 u(t) optimal control L1 optimal L2 optimal 図 3 二重積分系に対する L1 最適制御(実線)と L2 最適制御(破線) z∗(t) =            1, if 0 <= t < t3, 0, if t3<= t < t4, −1, if t4<= t <= T (53) で与えられる.ただし, t3= T− ξ2(T + ξ2)2+ 4ξ1− 2ξ22 2 , t4= T− ξ2+ √ (T + ξ2)2+ 4ξ1− 2ξ22 2 (54) である. ( 3 ) 初期値 (ξ1, ξ2)∈ γ のとき,最適制御は z∗(t) =      −sgn(ξ2), if 0 <= t < |ξ2|, 0, if2| <= t <= T, (55) で与えられる. ( 4 ) 初 期 値 (ξ1, ξ2) ∈ R4 ∩ (V−)c の と き ,ま た は 1, ξ2) ∈ R2∩ (V+)c のとき(注 4),最適制御問題は 特異であり,最適制御は一意に定まらない. 終端時刻を T = 5,初期値を (ξ1, ξ2) = (1, 1) ∈ R1 と したときの L1 最適制御を図 3 に,また対応する状態の軌跡 {(x1(t), x2(t)) : 0 <= t <= 5} を図 4 に示す.なお,比較のため に,L2最適制御問題 (34) の解と対応する状態の軌跡をそれぞ れ図 3 と図 4 に示してある. 図 3 より L1最適制御はスパースであるが,L2最適制御はス パースでないことがわかる.実際,図 3 において,最適制御が 0の値をとる区間は,(52) から [t1, t2] = [3 10/2, 3 +√10/2]≈ [1.4189, 4.5811] (56) であり,その区間の幅,すなわち最適制御 z∗ の L0 ノルム∥z∗∥0 = 10 ≈ 3.1623 となる.この区間における状態 (x1(t), x2(t))の軌跡は,図 4 から分かるように x1軸に平行な 軌跡となり,x1を位置,x2を速度とすれば,この区間では等 (注 4):(·)cは補集合を表す.

(8)

0 0.5 1 1.5 x1 -0.5 0 0.5 1 x2 state-space trajectory L1 optimal L2 optimal 図 4 状態 (x1(t), x2(t))の軌跡:L1最適制御(実 線),L2 最適制御(破線) 速運動をしていることが分かる.制御を 0 にすることによって 燃料消費や CO2排出などを抑えることのできるアクチュエー タ(例えばエンジン)であれば,このようなスパース最適制御 によって省エネルギーを達成することができる.一方,L2最適 制御には,このような良い性質はない.

4. 3

最適制御の計算法

制御対象が二重積分器のように単純な微分方程式で表されて いる場合,4.2 で示したとおり,スパース最適制御は閉形式で 得られる.しかし,一般の線形微分方程式 (28) に対してスパー ス最適制御を求めるためには数値計算が必要となる.ここでは, 時間離散化の方法を用いてスパース最適制御(または L1最適 制御)を求める手法を紹介する.なお,このアプローチは最適 制御の数値計算において標準的な手法である(36, 2.3 節) まず,時間区間 [0, T ] を n 個の部分区間に分割する.すなわ ち,[0, T ] = [0, h)∪ · · · ∪ [(n − 1)h, nh] と分割する.ここで hは時間離散化の幅であり, T = nh が成り立つように選ぶ. そして,状態変数 x(t) と制御信号 z(t) がこれら小区間上では 一定であると仮定して近似を行う.まず,サンプルリング時刻 t = 0, h, . . . , nhにおいて,連続時間の制御対象 (28) は次のよ うに記述される. xd[m + 1] = Adxd[m] + bdzd[m], m = 0, 1, . . . , n− 1. (57) ここで, xd[m]≜ x(mh), zd[m]≜ z(mh) であり,また Ad≜ eAh, bd≜ (∫ h 0 eAtdt ) b (58) である.制御ベクトル z≜ [zd[0], zd[1], . . . , zd[n− 1]]⊤∈ Rn (59) を定義する.終端状態 x(T ) は次のように記述される. x(T ) = xd[n] =−ζ + Φz. (60) ここで Φ≜ [An−1d bd, An−2d bd, . . . , bd], ζ≜ −Andx0 (61) である.このとき,L1最適制御問題は次のベクトル ℓ1最適化 問題として近似される. min z∈Rn∥z∥1 subject to Φz = ζ, ∥z∥ < = 1 (62) 最適化問題 (62) は凸であり,MATLAB の cvx などの数値計 算ソフトウェアを使えば効率的に最適解が計算できる(31) 制御においてはフィードバックループの中で最適化問題をリ アルタイムに解く必要がある.このため,cvx のように内点法 を実装した汎用的な凸最適化ソフトウェアではなく,スパース 最適制御に特化した高速なアルゴリズムを導入することも考え られる.次節でその手法について解説しよう.

4. 4 ADMM

による高速解法

ここでは,最適化問題 (62) の解を高速に導出するために ADMM (alternating direction method of multipliers)と呼 ばれるアルゴリズム(27),(28)を導入する.なお,以下の方法は, 3. 2で述べた離散時間最適制御のための最適化問題 (27) に対し ても,ほぼ同様である. まず,ADMM について簡単に説明する.ADMM は次の形 式の最適化問題を高速に解く手法である. min z∈Rν,y∈Rµf (z) + g(y) subject to y = Ψz. (63) ここで,f :Rν 7→ R ∪ {∞} 及び g : Rµ7→ R ∪ {∞} は下半 連続な真凸関数であり,また Ψ∈ Rµ×ν とする.初期値 y[0], w[0]∈ Rµ及び γ > 0 を与えたとき,ADMM のアルゴリズ ムは以下で記述される. z[j + 1] := arg min z∈Rν { f (z) + 1 y[j]− Ψz − w[j] 2}, y[j + 1] := proxγg(Ψz[j + 1] + w[j]), w[j + 1] := w[j] + Ψz[j + 1]− y[j + 1], j = 0, 1, 2, . . . (64) ここで proxγg は γg の近接作用素であり,次式で定義される.

proxγg(z)≜ arg min

y∈Rµ { γg(y) +1 2∥z − y∥ 2}. (65) ADMMアルゴリズム (63) の収束性に関しては,以下の定理 が知られている(27) [定理 2] 最適化問題 (63) を考える.行列 ΨΨは可逆とし, また次の Lagrangian L(z, y, w)≜ f(z) + g(y) − w(Ψz− y) (66) の鞍点が存在すると仮定する.このとき,ADMM アルゴリズ ム (64) から生成されるベクトル列{(z[j], y[j])}j∈Nは最適化 問題 (63) の解(の一つ)に収束する. 以上の準備の下,(62) の最適化問題を解くための ADMM ア

(9)

ルゴリズム (64) を導出する. まず Ω1≜ {z ∈ Rn:∥z∥∞<= 1} を ℓ∞ノルムに対する単 位円板とし,Ω2≜ {ζ} を一点 ζ ∈ Rnだけの集合とする.空 でない凸集合 Ω に対する指示関数を ι(z)≜      0, if z∈ Ω, ∞, otherwise (67) で定義する.このとき,最適化問題 (62) は以下のように書き換 えられる. min z∈Rn { ∥z∥1+ ιΩ1(z) + ιΩ2(Φz) } . (68) 次に,新しい変数 y0, y1, y2を y0= y1= z, y2= Φzとし て導入すれば,(68) の最適化問題は min z∈Rν,y∈Rµ { ∥y01+ ιΩ1(y1) + ιΩ2(y2) } subject to y = Ψz (69) と等価的に変換できる.ただし,ν≜ n, µ ≜ 2n + d とし, y≜ [y0, y1, y2]⊤∈ Rµ, Ψ≜ [I, I, Φ⊤]⊤∈ Rµ×ν (70) とする.更に, f (z)≜ 0, g(y) ≜ ∥y01+ ιΩ1(y1) + ιΩ2(y2) (71) と置くことにより,最適化問題 (69) は最終的に (63) の ADMM の標準形に変換される. 次に,ADMM アルゴリズム (64) の中の各関数の具体的な形 を求める.まず,f = 0 であるので, ADMM のアルゴリズム (64)の第 1 ステップは二次関数の最小化となり,線形方程式に 帰着する.すなわち, z[j + 1] = arg min z∈Rn 1 ∥y[j] − Ψz − w[j]∥ 2 = (ΨΨ)−1Ψ(y[j]− w[j]) (72) となる.なお,逆行列 (ΨΨ)−1= (2I + Φ⊤Φ)−1はオフラ インで一度だけ計算すればよい. ADMMアルゴリズム (64) の第 2 ステップは各変数 yiの最 適化に分離できる.変数 y0に対しては,ℓ1ノルムの近接作用 素となり,これは,soft-thresholding として与えられる.すな わち,proxγ∥·∥1(z)の第 i 要素は [ proxγ∥·∥ 1(z) ] i= [Sγ(z)]i≜            zi− γ, zi>= γ 0, |zi| < γ zi+ γ, zi<= −γ (73) となる(図 5).変数 y1 及び y2に関しては,指示関数の近 接作用素の計算が必要である.空でない閉凸集合 Ω に対する指 示関数の近接作用素は,Ω への射影 PΩで与えられる.これよ り,ADMM アルゴリズム (64) での y1 及び y2の更新はそれ ぞれ PΩ1 及び PΩ2 の計算に帰着することが分かる.まず,射

0

γ

−γ

図 5 Soft-thresholding 影 PΩ1 は PΩ1(z)≜      z, if∥z∥<= 1, ˜ z, otherwise (74) で与えられる.ここで, ˜ z = [˜z1, . . . , ˜zν]⊤, z˜i≜ sgn(zi) min{|zi|, 1} (75) である.一方,射影 PΩ2= P{ζ}PΩ2(z)≜ ζ (76) となる.以上から,変数 y に関する更新は y[j + 1] =     (z[j + 1] + w0[j]) PΩ1(z[j + 1] + w1[j]) ζ     (77) と な る .た だ し ,(70) の y の 分 割 に 合 わ せ て w = [w0, w1, w2]とする. 文献(28)で示されているように, ADMM アルゴリズムは数 十回の反復で解の近くに収束する傾向がある.本稿で述べたス パース最適制御を用いてモデル予測制御系(37)を構成しフィード バック制御を行う場合には,リアルタイム性が重視されるため ADMMのこのような性質は極めて重要である.

5.

お わ り に

本稿では,ベクトルに対するスパースモデリングとその離散 時間制御への応用,及び連続時間信号に対するスパース性の拡 張とその連続時間最適制御への応用について解説した.制御工 学において,スパース性のアイデアはここで述べた最適制御以 外にも,センサ・アクチュエータのスケジューリング(38)や制御 系のセキュリティ(39),システム同定(40)など様々な場面で活用 されている.システム制御の諸問題に対して,スパースモデリ ングは強力な解決手段であり,今後もますます発展していくと 思われる. 本 研 究 の 一 部 は JSPS 科 研 費 15K14006, 15H02668, 16H01546の助成を受けたものです.

(10)

文 献

(1) B. Dunham, “Automatic on/off switching gives 10-percent gas saving,” Popular Science, vol. 205, no. 4, pp. 170, Oct. 1974.

(2) C. Chan, “The state of the art of electric, hybrid, and fuel cell vehicles,” Proc. IEEE, vol. 95, no. 4, pp. 704– 718, April 2007.

(3) 宇田賢吉,電車の運転,中公新書,東京,2008.

(4) D. Jeong and W. Jeon, “Performance of adaptive sleep period control for wireless communications systems,” IEEE Trans. Wirel. Commun., vol. 5, no. 11, pp. 3012– 3016, Nov. 2006.

(5) L. Kong, G. Wong, and D. Tsang, “Performance study and system optimization on sleep mode operation in IEEE 802.16e,”IEEE Trans. Wirel. Commun., vol. 8, no. 9, pp. 4518–4528, Sept. 2009.

(6) G. K. Wallace, “The JPEG still picture compression standard,” Commun. ACM, vol. 34, no. 4, pp. 30–44, April 1991.

(7) 田 中 利 幸 ,圧 縮 セ ン シ ン グ の 数 理 ,IEICE Fundamentals Review, vol. 4, no. 1, pp. 39–47, July 2010.

(8) Y. C. Eldar and G. Kutyniok, Compressed Sensing: Theory and Applications,Cambridge University Press, Cambridge, 2012.

(9) M. Lustig, D. L. Donoho, J. M. Santos, and J. M. Pauly, “Compressed sensing MRI,” IEEE Signal Pro-cess. Mag., vol. 25, no. 2, pp. 72–82, March 2008. (10) 篠原広行, 橋本雄幸, “圧縮センシング MRI の基礎,” 医療科学

社, 東京,2016.

(11) T. Virtanen, “Sound source separation using sparse coding with temporal continuity objective,” Proc. ICMC, vol. 3, pp. 231–234, Oct. 2003.

(12) P. Smaragdis and J. C. Brown, “Non-negative matrix factorization for polyphonic music transcription,”Proc. WASPAA, pp. 177–180, Oct. 2003.

(13) 亀岡弘和, “非負値行列因子分解,” 計測と制御, vol. 51, no. 9, pp. 835–844, Sept. 2012.

(14) K. Hayashi, M. Nagahara, and T. Tanaka, “A user’s guide to compressed sensing for communications sys-tems,” IEICE Trans. Commun., vol. E96-B, no. 3, pp. 685–712, March 2013.

(15) Z. Han, H. Li, and W. Yin, Compressive Sensing for Wireless Networks, Cambridge University Press, Cam-bridge, 2013.

(16) 山内結子他(編集チームリーダー), 特集 スパースモデリン グの発展—原理から応用まで—, 信学誌, vol. 99, no. 5, May 2016.

(17) 永原正章, 松田崇弘, 林和則, “圧縮センシングの遠隔制御系へ の応用,” 第 25 回信号処理シンポジウム予稿集, July 2010. (18) M. Nagahara, T. Matsuda, and K. Hayashi,

“Com-pressive sampling for remote control systems,” IEICE Trans. Fundamentals, vol. E95-A, no. 4, pp. 713–722, April 2012.

(19) M. Nagahara, D. E. Quevedo, T. Matsuda, and K. Hayashi, “Compressive sampling for networked feed-back control,” Proc. IEEE ICASSP, pp. 2733–2736, March 2012.

(20) M. Nagahara and D. E. Quevedo, “Sparse representa-tions for packetized predictive networked control,”18th IFAC World Congress, pp. 84–89, Aug.–Sept. 2011. (21) M. Nagahara, D. E. Quevedo, and J. Østergaard,

“Sparsely-packetized predictive control by orthogonal matching pursuit,” Proc. MTNS 2012, July 2012. (22) M. Nagahara, D. E. Quevedo, and J. Østergaard,

“Packetized predictive control for rate-limited networks via sparse representation,”Proc. IEEE CDC 2012, pp. 1362–1367, Dec. 2012.

(23) M. Nagahara, D. Quevedo, and J. Østergaard, “Sparse packetized predictive control for networked control

over erasure channels,” IEEE Trans. Autom. Control, vol. 59, no. 7, pp. 1899–1905, July 2014.

(24) M. Nagahara, D. E. Quevedo, and D. Neˇsi´c, “Maximum hands-off control and L1 optimality,”Proc. IEEE CDC 2013, pp. 3825–3830, Dec. 2013.

(25) M. Nagahara, D. E. Quevedo, and D. Neˇsi´c, “Hands-off control as green control,” SICE Control Division Multi Symposium 2014, March 2014. [Online]. Avail-able: http://arxiv.org/abs/1407.2377

(26) M. Nagahara, D. E. Quevedo, and D. Neˇsi´c, “Maxi-mum hands-off control: a paradigm of control effort minimization,” IEEE Trans. Autom. Control, vol. 61, no. 3, pp. 735–747, March 2016.

(27) J. Eckstein and D. Bertsekas, “On the Douglas-Rachford splitting method and proximal point algo-rithm for maximal monotone operators,” Math. Pro-gram., vol. 55, pp. 293–318, 1992.

(28) S. Boyd, N. Parikh, E. Chu, B. Peleato, and J. Eckstein, “Distributed optimization and statistical learning via the alternating direction method of multipliers,” Foun-dations and Trends in Machine Learning, vol. 3, no. 1, pp. 1–122, Nov. 2011.

(29) M. Elad, 玉木徹(訳), スパースモデリング, 共立出版, 東京, 2016.

(30) M. Nagahara, J. Østergaard, and D. E. Quevedo, “Discrete-time hands-off control by sparse optimiza-tion,” EURASIP J. Adv. Signal Process., vol. 2016, no. 1, pp. 1–8, Dec. 2016.

(31) M. Grant and S. Boyd, “Graph implementations for nonsmooth convex programs,” Recent Advances in Learning and Control, ser. Lect. Notes Control Inf. Sci., V. Blondel, S. Boyd, and H. Kimura, eds., vol. 371, pp. 95–110, Splinger, 2008.

(32) 吉川恒夫, 井村順一, 現代制御論, コロナ社, 東京, 2014. (33) M. Athans and P. L. Falb, Optimal Control, Dover

Pub-lications, 2007, an unabridged republication of the work published by McGraw-Hill in 1966.

(34) T. Ikeda, M. Nagahara, and S. Ono, Discrete-valued control by sum-of-absolute-values optimization, vol. 13, no. 9, Sept. 2015, submitted for publication.

(35) T. Ikeda and M. Nagahara, “Maximum hands-off con-trol without normality assumption,” 2016 American Control Conference (ACC), pp. 209–214, July 2016. (36) R. F. Stengel, Optimal Control and Estimation, Dover

Publications, New York, 1994.

(37) J. M. Maciejowski, Predictive Control with Con-straints, Prentice-Hall, New Jersey 2002.

(38) R. P. Aguilera, R. Delgado, D. Dolz, and J. C. Ag¨uero, “Quadratic MPC with ℓ0-input constraint,”19th IFAC World Congress Proceedings Volumes, vol. 47, no. 3, pp. 10 888–10 893, Aug. 2014.

(39) A. Teixeira, K. C. Sou, H. Sandberg, and K. H. Johans-son, “Secure control systems: A quantitative risk man-agement approach,” IEEE Control Syst. Mag., vol. 35, no. 1, pp. 24–45, Feb. 2015.

(40) L. Bako, “Identification of switched linear systems via sparse optimization,” Automatica, vol. 47, no. 4, pp. 668–677, April 2011. (RCC 研究会提案,平成 28 年 09 月 16 日受付      10 月 6 日最終受付) 永原正章(正員) 愛媛県生まれ.2003,京大大学院情報学研究科 博士課程了.博士(情報学).同大助手,助教,講 師を経て,2016 から北九州市立大環境技術研究所 教授.専門は自動制御と人工知能.2012,IEEE 制 御システム部門から国際賞である Transition to Practice Awardを受賞.同賞の受賞は日本人初で ある.IEEE の上級会員 (Senior Member).

参照

関連したドキュメント

There is a bijection between left cosets of S n in the affine group and certain types of partitions (see Bjorner and Brenti (1996) and Eriksson and Eriksson (1998)).. In B-B,

“every uncountable system of linear homogeneous equations over Z , each of its countable subsystems having a non-trivial solution in Z , has a non-trivial solu- tion in Z” implies

Using truncations, theory of nonlinear operators of monotone type, and fixed point theory (the Leray-Schauder Al- ternative Theorem), we show the existence of a positive

(The Elliott-Halberstam conjecture does allow one to take B = 2 in (1.39), and therefore leads to small improve- ments in Huxley’s results, which for r ≥ 2 are weaker than the result

N aimen , Positive solutions of Kirchhoff type elliptic equations involving a critical Sobolev exponent, NoDEA Nonlinear Differential Equations Appl. Z hang , Sign-changing and

のようにすべきだと考えていますか。 やっと開通します。長野、太田地区方面  

To do so, we overcome the technical difficulties to global loop equations for the spectral x(z) = z + 1/z and y(z) = ln z from the local loop equations satisfied by the ω g,n ,

Key words and phrases: Analytic functions, Univalent, Functions with positive real part, Convex functions, Convolution, In- tegral operator.. 2000 Mathematics