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2009 年版

小笠原植物図鑑

早稲田大学本庄高等学院

小笠原研修チーム編集

(2)

pg. 1

はじめに

この図鑑は早稲田大学本庄高等学院における過去 3 年間の SSH 小笠原研修プロ

グラムで撮影した画像を元に、携帯できる「図鑑」という形式でまとめたもので

ある。特に 2008 年度は石門地区のオガサワラグワ調査を実施しており、そこで観

察したものをすべて掲載した。

今後の小笠原研修における観察の補助のみならず、読者諸君の植物や小笠原に

対する興味を喚起することを期待する。

※ 2008 年度小笠原研修チーム

1B向畑有真、1C中俣汐里・内田文恵、1F田村百合絵、2A朝比奈諒・

神田庸平・藤井智也、2B藤井さとみ、2D岩川実央、2H小澤楓、上牧瀬

香(国語科)

、半田亨(情報科)

、内野郁夫(総合学習科)

※ 本書は藤井さとみ・岩川実央・小澤楓・半田亨・内野郁夫が中心となって編

集した。

小笠原に関する予備知識

1. 行政

東京都小笠原村、人口は父島が約 2000 人、母島が 400 人、それ以外は無人島

2. 地理

東京竹芝桟橋から南へ約 1000 キロ、東経 143 度北緯 27 度付近の縦に並ぶ島嶼群

交通は 6 日に 1 便のおがさわら丸(片道 25 時間)のみ。父島⇔母島間はははじま丸(片道

2 時間半)のみ。

島の名前は、父島から北へ兄島・弟島・孫島・嫁島・媒(なこうど)島・聟(むこ)島、

母島から南へ姉島・妹島・姪島、のように大きな島は人間の血縁関係となっている。

3. 地形・地質

フィリピン海プレート上にあるが、東側をその下に潜り込む太平洋プレートが形成する

南北に走る小笠原海溝がある。活発な海底火山活動により形成された岩石が現在の小笠原

の基盤岩となっている。その証拠の枕状溶岩がいたるところに見られる。石灰岩質の箇所

が一部に見られ、カルスト・ドリーネ・ラピエなどの地形を作っている。

4. 気候

亜熱帯気候。月最低平均気温は 1 月の 18 度。空は青く日差しが強い。

5. 歴史

初めて記録上に現れるのは、1593 年信州松本の城主小笠原貞頼が小笠原諸島を発見したと

される記録。江戸時代に幕府が調査を行った記録があるが、脚光を浴びるのは幕末、1830

年欧米人 15 名が父島に定住し、捕鯨船への薪炭や水・食料の供給基地としてから。1875

年日本政府は小笠原開拓に着手し、1876 年国際的に日本領土と認められた。1931 年沖の鳥

(3)

pg. 2

島が日本領となる(現日本最南端)

。1940 年、小笠原の人口が 7462 人を記録。1944 年、父

島大空襲、島民が本土へ強制疎開。1945 年、硫黄島の日本軍全滅、米軍が父島母島占領。

1946 年、米軍の直接統治下。1968 年、小笠原が日本へ返還される。1972 年、国立公園。1983

年、電話のダイヤル通話。1984 年、NHK 放送開始。1996 年、地上波テレビ放送開始。2003

年、世界自然遺産候補。

小笠原の山野地を歩いているといたるところに戦争中の大砲の残骸や塹壕跡を見ること

ができる。

6. 自然環境と抱える問題

*移入種・人間の生活による固有種の衰退・絶滅

*移入種と固有種の微妙なバランス

*人間の生活と自然保護(特に空港建設などの計画)

貴重な石灰岩地形であり希少種の多い父島南島、母島石門地区は自然保護区で、立ち入

りにはガイドが必要。

自生する植物の 40%、樹木では 70%が固有種、陸貝類では実に 90%が固有種。マルハチ・

シマホルトノキ・グリーンぺぺなど形状に珍しいものが多い。多くの希少種・絶滅危惧種

の植物の他、オカヤドカリ・オガサワラゼミ・コアホウドリ・アカガシラカラスバト・オ

ガサワラノスリ・メグロ・オガサワラオオコウモリなど絶滅危惧種・天然記念物の動物が

多い。

海がきれいで海洋にあるため、ユウゼン(固有種のチョウチョウウオ)

・アオウミガメ・

シロワニ(大型サメ)

・イルカ類・クジラ・各種サンゴなどを容易に確認できる。

一方で、外来種であるアカギ・トクサバモクマオウ・ギンネム・シマグワなどによる固

有種植物の侵略の様子をいたるところに見ることができる。また、昆虫や陸貝類の捕食者

であるグリーンアノールやオオヒキガエルをそこかしこに確認できる。

7.2008 年度小笠原研修における「オ

ガサワラグワ調査」結果

オガサワラグワ(Morus boninensis)小笠

原諸島の固有種、クワ科クワ属の落葉

高木で雌雄異株である。父島・母島・

弟島に分布し、百数十本しか確認され

ていない。現在では戦前に養蚕のため

に導入されたシマグワによる遺伝子汚

染の影響が深刻であり、早急な対策を

立てないと純粋種絶滅の危険がある。

また、母島における本種残存地域であ

る石門では、台風による石灰岩ドリー

ネ地域の大崩落により、多くのオガサ

ワラグワが失われている。今回の調査

では 2000 年度に比較し、昨年の小崩落

によりさらに 7 本失われていることを

確認している。

今回、全部で

44 本(生立木6本、切

り株・枯木

33 本)のオガサワラグワが

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pg. 3

確認できた。

調査した生木は全て直径 16 ㎝以上(純粋種の目安)であった。現時点では、純粋種のオ

ガサワラグワは多数存在しており、まだ手遅れでないことが分かった。しかしながら、問

題はこれからの子孫である。これからできる子供が交雑種となる可能性が高く、今ある成

木(純粋種)が死滅してしまったら、オガサワラグワは絶滅してしまうだろう。貴重な固

有種を保全するためには、今のうちに、交雑を抑えなければならない。その方法としては、

人工授粉や苗木の植栽が必要と考えられる。

以下に、調査で観察したすべてのオガサワラグワの写真を掲載する。切株が多いのは明

治時代から戦前にかけて、いかに高級建材として切り倒されたかの証明である。枯木・立

ち枯れは台風等で途中で折れたり、環境変化や病気で枯れた結果と思われる。オガサワラ

グワは黒褐色で朽ちにくく切り株や枯れ木がずっと残るため、明治時代の切り株でもこの

ように観察できるのである。あたかも古い城壁のごとく、おおきな切株に苔むしている姿

は荘厳ですらある。

写真で分かるように、成木になると樹木の表面近くが縦に深く裂けることがシマグワと

異なる特徴の1つである。

※数の数字は緯度・経度

切り株 29.5-44.1 切り株 29.5-44.7 切り株 30.8-44.1 切り株 31.7-45 切り株 31.8-45 切り株 33.7-44.5

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pg. 4

切り株 33.8-44.6 切り株 34.6-44.5 切り株 35.4-45.4.

切り株 36.3-44.9 切り株 34.6-44.5 切り株 38.1-46.8

切り株 39.2-46.4 切り株 39.4-46.1 切り株 40.5-46.2

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pg. 5

切り株 46.3-34.1 切り株 42.8-46.9 切り株 47.1-48.7

切り株 42.2-46.9 切り株 41.4-46.1 切り株 38-45.7

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pg. 6

倒木 45.8-48.8 倒木 35.3-45.9 上:オガサワラグワの葉 下:シマグワの葉 オガサワラグワの葉はシマグワ に比べ、縁のギザ(切れ込み) がなく、厚くテラっとした感じ である。 切り株 47.1-48.5 切り株 47.1-34 立ち枯れ 46.1-49.2

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pg. 7

切り株 46.3-34.1 枯れ木 41.4-46.6 生立木 28.3-42.2 樹皮が灰褐色・大きなうろこ・ ひび割れ状になるのが特徴であ る。 切り株 45.9-48.1 生立木 39.4-45.9 生立木 41.2-46.3

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pg. 8

生立木 42.7-47 生立木 44.3-31.1 切り株 46.2-48.2

1.固有種

1.1 木本・双子葉植物

トキワイヌビワ

Ficus boninsimae (クワ科 MORACEAE) 樹高4~5m になる常緑小高木。海岸近くから山地にか け、日当たりのよい林縁、畑地などに生育する。近縁の イチジク属であるオオトキワイヌビワは耐陰性が強く、 林内に生え低木状だが、本種は陽光を好む。樹皮は褐色 ~灰褐色。葉は楕円形~卵形で全縁、厚みがある。葉柄 を切ると白い乳液が出るのはクワ科の特徴。花期は6 月 頃。秋に球形のイチジク状花(無花果)を葉腋につける。 この仲間は受粉にそれぞれに固有のコバチ類が関わる。 小笠原以外では本州西南部以南に分布するイヌビワに 近縁。 【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島

オオヤマイチジク

Ficus iidana (クワ科 MORACEAE)絶滅危急種 母島・桑ノ木山~石門山にかけての原生状態に近い薄 暗い森林内にのみ自生する常緑高木で、樹高 7~10m。 近縁のトキワイヌビワ、オオトキワイヌビワより耐陰性 が強く、土壌の深い適潤地を好む。個体数は極めて少な い。葉は互生し、イチジクに似て大型。葉柄は 5~7cm と長い。花期は5~6 月。イチジク状果(無花果)は秋 に紫褐色に熟すが、果実を見ることは稀といわれる。島 名は「ヤマイチジク」。【分布】母島

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オガサワラモクマオ

Boehmeria boninensis (イラクサ科 URTICACEAE) 高さ1m ほどの常緑低木で株立ちする。生活力が旺盛 で、海岸の崖地から山地まで、いたるところで見られる。 日当たりさえ良好であれば、コンクリートの割れ目や土 壌のほとんどない岩場などの劣悪な場所にも生育する。 内地のカラムシの仲間であるが、樹皮が強靭でないため 繊維材料としての利用はないといわれる。葉は対生し、 卵形に近く、表面はざらつく。3 月頃、20~30cm の穂状 花序を下げ、淡いピンク色の小花を無数につける。果期 は8 月頃。【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島

ムニンイヌグス

Machilus boninensis (クスノキ科 LAURACEAE) 尾根筋などの明るい林内、林縁に多く見られる常緑高 木で、樹高5~7m。葉は互生し、長楕円形~楕円形で全 縁。基部はくさび形。母島のものは光沢があり、クスノ キの若葉に似て赤褐色が強いといわれる。3~4 月、枝 先に近い葉腋から集散花序を出し、淡黄緑色の小花を咲 かせる。果期は7~8 月。果実は球形で紫黒色に熟す。 本州南西部~琉球列島に分布するホソバタブに近縁。 【分布】父島、兄島、母島

ムニンヒメツバキ

Schima mertensiana (ツバキ科 THEACEAE) 山地の中腹から上部に生育する常緑高木で、樹高7~ 8m。戦前の畑作地跡、伐採地跡など各島に分布する。 父島にはとくに広く見られ、純林に近い所もあるが、尾 根筋の矮低木林にはほとんど見られない。成長が早く萌 芽能力にも優れる。燃料材としての利用もあったとい う。葉は互生で枝先に集まり、長楕円形で全縁。5~6 月、枝先にチャノキやサザンカに似た白色の花を多数咲 かせる。花の美しさから「小笠原の花」となっている。 果期は12 月頃。琉球列島に自生するイジュに近縁とさ れる。【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島

シロトベラ

Pittosporum boninense (トベラ科 PITTOSPORACEAE) 樹高3~5m になる常緑小高木。海岸の丘陵地から山地 帯にかけての日当たりのよい疎林地、林縁に多く見られ るが、乾燥地や土壌の薄い岩場には生育しない。樹皮が 灰白色であるのが名の由来。葉は輪生状に枝先につき、 倒披針形で全縁。やや薄めの洋紙質で光沢がある。辺は 波打つ。花期は4~5 月。小笠原のトベラ属は4種。本 種のほかにオオミトベラ、コバノトベラ、ハハジマトベ ラがあり、いずれも小笠原の固有種。本州にはトベラ属 は2種しかないことから、海洋島では種分化が起こりや すいという好例を示している。本州暖帯~九州、琉球、 中国に分布するトベラに近縁とされている。 【分布】父島、兄島、弟島、母島

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pg. 10

タチテンノウメ

Osteomeles boninensis (バラ科 ROSACEAE) 乾燥した岩場や尾根筋に自生する常緑小低木。樹高 0.5~1.5m で斜上、株立ちする。父島・大神山公園では 本種を多く観察できる。葉は奇数羽状複葉で、小葉は 13~14 対。線状楕円形、先端は尖り光沢がある。3~4 月にかけて白梅に似た花を咲かせるのでこの名がある。 近縁のシラゲテンノウメは小葉が6~12 対と少なく、 全体に丸みがあり、葉柄はやや密に綿毛に被われるが、 両者間には多くの中間型が認められ、変異は連続してい るようである。果期は9~10 月。果実は球形で白色また は紫黒色に熟す。【分布】父島、兄島、弟島、母島

セキモンノキ

Claoxylon centenarium (トウダイグサ科 EUPHORBIACEAE)絶滅危急種 母島特産の常緑高木で、樹高4~5m。ときに 8m。堺 ヶ岳から石門山にかけての肥沃、湿性の林内にのみ生育 し、個体数は少ない。樹皮は暗褐色だが、若枝は緑褐色 ~濃緑色で全株無毛。葉は互生し、倒披針形で枝先に集 中してつく。縁は波状に湾曲するのが特徴。3~4 月、 葉腋から総状花序を出し、白緑色の小花を咲かせる。果 期は7~8 月。果実は三角状球形で裂開する。 保護には万全が期されているが、自生地内でのアカギ の侵入による圧迫が懸念されるところである。和名に は、かつて母島のナチュラリスト星典氏が発案しそれを 星氏の師であり当時の小笠原営林署長でもあった豊島 恕清氏が賛意を示し命名されたといういきさつがある。 【分布】母島

オオバシロテツ

Boninia glabra (ミカン科 RUTACEAE) 海岸付近から山地までの向陽地を好む常緑高木で、樹 高3~4m。ときに 10m。葉は対生し、長楕円形で全縁。 厚く光沢はないが、林内に生育するものは薄くて光沢を 持つ。4~5 月、枝先近くの葉腋に集散花序を出し、白 緑色の小花を多数咲かせる。果期は10~11 月頃。果実 は4裂し、黒紫色のつやのある種子を弾き出す。シロテ ツ属は小笠原の固有種で、他にシロテツ、アツバシロテ ツが分布し、トベラ属、ムラサキシキブ属とともに適応 放散的種分化の好例となっている。3 種中本種の分布域 が最も広く、個体数も多い。シロテツは父島の乾性低木 林にのみ自生。アツバシロテツは父島、兄島の岩石風衝 地に見られる。【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島

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アコウザンショウ

Zanthoxylum ailanthoides var. boninshimae

(ミカン科 RUTACEAE) 裸地や林縁に自生する落葉高木で、樹高5~8m。肥 沃、適潤で日当たりのよい場所では旺盛な生育を示す が、他の樹木に被圧されると枯死する典型的な陽樹。伐 採地、農耕跡地にいち早く侵入するパイオニアプランツ (先駆植物)でもある。本州の暖帯から琉球列島に分布 するカラスザンショウに近縁とされるが、樹幹にトゲが ない。葉の質は薄く、奇数羽状複葉。7月頃、黄白色の 小花を多数群生させる。果期は11~12 月。果実は蒴果 で裂開し、黒く光沢のある種子を弾き出す。サンショウ に似て辛味があるが、食用には適さない。【分布】父島、 弟島、母島

シマホルトノキ

Elaeocarpus photiniifolius (ホルトノキ科 ELAEOCARPACEAE) 乾燥した尾根筋、岩場を除く山地に自生する常緑高木 で、樹高 8~12m、ときに 18m。母島・桑ノ木山、石門 山の土壌が深く、湿潤な環境下では巨木化し、湿性高木 林の重要構成種となる。戦前は薪炭材に利用された。 葉は卵状楕円形、濃緑褐色で光沢があり、樹下には通 年、紅葉した葉が落ちていることが多い。幹は直径 2m に達するものがあり、根元が板根状になったり、こぶ状 に膨れたりするので、「コブノキ」の島名もある。6~7 月、枝先に黄白色の総状花序をつける。果期は11 月頃 で、楕円形の果実は黒紫色に熟す。本州南部~九州、琉 球、台湾に分布するホルトノキに近縁。【分布】父島、 兄島、弟島、母島

ムニンアオガンピ

Wikstroemia pseudoretusa (ジンチョウゲ科 THYMELAEACEAE) 乾燥した岩場や尾根筋の日当たりのよい場所に自生 する常緑低木で、樹高1~2m。個体数は多い。島では「サ クラコウゾ」と呼ばれ、戦前は樹皮を紙の原料に利用し た。 樹皮は赤褐色。葉は対生で楕円形~倒卵形。濃緑色、 粉白を帯び、枝先に集中する。4~5 月、または 9 月、枝 先に小さな黄色の花をつける。果期は12 月~1 月で、赤 い核果が熟す。【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島

ハハジマノボタン

Melastoma tetramerum var. pentapetalum

(ノボタン科 MELASTOMATACEAE)絶滅危急種 常緑小高木。樹高2~3m、大きなものでは 4~5m にな り、直径10cm を超える。父島に生育するムニンノボタ ンの変種で母島のみに自生する。ムニンノボタンが緩傾 斜地疎林内のやや湿り気のある場所に生育するのに対 し、本種の多くは裸地化した稜線に近い風衝地に見られ る。分布区域は母島・乳房山~石門山にかけての標高 300m 以上の場所。葉は対生し、細長く、硬く厚みがあ る。花期は7月頃。花は淡桃色で美しい。花弁が4枚の ムニンノボタンより大型で花弁は5枚。【分布】母島

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シマザクラ

Hedyotis hookeri (アカネ科 RUBIACEAE) 林縁や疎林地、岩場に広く自生する常緑小低木で株 状。樹高1~2m。各島に分布し、個体数は多いが、葉の 形態は変化に富んでいる。本種と異なり、近縁のマルバ シマザクラは裸地を好み、林内では殆ど見られない。葉 は対生で長楕円形~狭長楕円形で全縁。表面は青緑色 で、葉質は薄い。7~9 月、枝先に複集散花序を出し、 淡紫色の花を多く咲かせる。和名は花の色合いが桜に似 ていることからの命名。果期は12~1 月。【分布】父島、 兄島、弟島、母島、向島

オオシラタマカズラ

Psychotria boninensis (アカネ科 RUBIACEAE) 丘陵地や山地疎林内に自生する常緑つる性小低木。や や乾燥し、風通しのよい林床を好み、群生する。葉は対 生し、倒披針形で全縁。厚みがある。表面の側脈は目立 たず、主脈のみがはっきりするのが特徴。若い枝や茎は 黄緑色を帯びる。5~6 月、枝先に散房花序を出し、淡 緑色の小花を多数つける。果期は12~1 月。果実は倒卵 形で白く熟すので「シラタマ」の名がある。【分布】父 島、兄島、弟島、母島、向島

シマギョクシンカ

Tarenna subsessilis (アカネ科 RUBIACEAE) 各島の山地に広く分布する常緑低木で、樹高1~2m。 乾燥の強くない天然林内に多く見られる。葉は枝先に集 まってつき、対生。楕円形、全縁で濃緑色の光沢を持つ。 3~4 月、枝先に集散花序を出し、白色の小花を多数つ けるため、目立つ。和名は「島玉心花」と書き、丸く集 まった花の形態からの命名ともいわれる。母島には多く 自生し、よく結実するとのこと。果期は12 月頃。果実 は球形で黒く熟す。島名「アオキ」。【分布】父島、兄島、 弟島、母島

オオバシマムラサキ

Callicarpa subpubescens (クマツヅラ科 VERBENACEAE) 各島全域に広く分布する常緑小高木~高木で、樹高3 ~8m。林縁、疎林内に多く見られる。その名の通り、 葉は大形の広卵形、全縁でざらつく。5~6 月、淡いピ ンクの小花を多数咲かせる。果期は秋。 小笠原に自生するムラサキシキブ属には、この他、シ マムラサキとウラジロコムラサキがあるが、前者は乾性 低木林内に、後者は岩石風衝地にわずかに生育している に過ぎない。3種とも見かけは雌しべ・雄しべのある両 性花をつける個体と、雄しべ・退化した雌しべからなる 雄性花をつける個体とで構成されるが、前者の花粉には 発芽孔がないため受精機能を持たず、事実上の雌性花と なっていることが判っている。ムラサキシキブ属は、他 地域では両性花を持つものしか知られていないので、こ のような形質は島で進化、獲得されたものと考えられ る。【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島

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コハマジンチョウ

Myoporum boninense (ハマジンチョウ科 MYOPORACEAE) 常緑つる性小高木。樹高3~4m。波しぶきのかかるよ うな場所に生育する。有毒植物であるためノヤギの食害 がら免れ、父島の南崎や南島の石灰岩地には群生してい る。写真は南島でのもの。 全株無毛。葉は互生し倒披針形でやや光沢がある。10 月頃、葉腋に淡紫色を帯びた白花を咲かせる。果実は翌 年の3月頃に熟す。【分布】父島、弟島、南島

オオハマギキョウ

Lobelia boninensis (キキョウ科 CAMPANULACEAE)絶滅危急種 常緑草本性低木。主として海岸近くの開けた草原に生 育する。高さ1.5~3m にも達し、他の日本産キキョウ科 植物とは大きくかけ離れた姿をしている。また、普通の 木本と異なり、2~6 年をかけ生長し、開花・結実し終 わると枯死してしまう一回繁殖型の植物である点もユ ニークな特徴である。かつては小笠原の各島に生育して いたといわれるが、現在ではノヤギの食害により絶滅、 または激減している。ノヤギのいない母島列島にはやや 多く残っている。 写真は父島・大村の住宅地付近の空き地に植栽されて いたもの。葉は倒披針形で裏側にやや巻き込み、革質。 濃緑色の光沢を持つ。幹の先端に葉を輪生状に沢山つけ るので「千枚葉」の島名もある。6~7 月、頂部に総状 花序を伸ばし、淡緑白色の花を多数咲かせる。果期は 10 月頃で、1株から数万粒もの多量の種子をまき散ら す。【分布】父島、母島、向島

ユズリハワダン

Crepidiastrum ameristophyllum (キク科 COMPOSITAE)絶滅危惧種 アゼトウナ属の常緑小低木で、高さ1m ほど。やや薄 暗く湿った林内に生育するが、個体数の極めて少ない貴 重種。キク科で木本化する植物は、小笠原では本種のほ かワダンノキ、ヘラナレンの計3種。これらは皆、草本 性の祖先種が島に到達した後、種分化の過程で進化を遂 げたものと考えられている。木本性のキク科植物が見ら れるのは海洋島の特徴である。葉は互生し、枝先に集中 する。狭長楕円形で、全縁。辺は波打ち、質は柔らかく 光沢がある。12~1 月、頂部の葉腋から細い柄を持つ総 状花序を伸ばし、白色の小花を多数つける。果期は3月 頃。【分布】父島、母島

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ワダンノキ

Dendrocacalia crepididifolia (キク科 COMPOSITAE) 小笠原固有の属(ワダンノキ属)の珍しい常緑低木。 母島・船木山~石門山にかけての脊梁山地の雲霧帯に多 く分布する。樹高3~5m、直径 10cm 以上にもなり、小 笠原のキク科木本3種のなかで最も大きい。キク科でこ れほどの樹木となるものは北半球には少なく、近縁の種 も見られないことから、小笠原の固有植物のなかでも極 めて貴重な種といえよう。樹皮は白色で、若枝は柔らか い。葉は僧帽状で、長い柄を持つ。11~12 月、枝先に散 房花序を出し、多数の頭花をつける。小花は筒状で淡紅 紫色。遠目には黄色に見える。【分布】母島、向島

1.2 木本・単子葉植物

ノヤシ

Clinostigma savoryanum (ヤシ科 PALMAE) 山地林内、沢沿いの窪地などに生育する常緑高木。 樹高10m、ときに 15~16m。肥沃、適潤な土壌を好む。 小笠原に自生するヤシ科植物は本種とオガサワラビロ ウの2種だが、本種の方が分布域が限られる。戦前は 各島にまとまった群落が見られたというが、特に戦時 中、若芽が食用に採取されたため、現在では激減して いる。ネズミ類が熟した果実を食害し、更新を妨げて いるともいわれ、一時は絶滅が懸念されたが、各島の 林内に稚樹が増加しているとの報告もある。 幹は全体に緑がかり、上部は筍の皮に似た厚い葉鞘 に覆われる。葉は幹頂に集中し、輪生状に叢生する。6 ~7 月、幹頂よりやや下部に箒状花柄を伸ばし、淡黄色 の小花を多数つける。果実は小さな卵形で、緑色のち 赤色に熟す。果期は11~12 月。島名「セボレーヤシ」。 若芽がキャベツに似ているので「キャベツヤシ」とも 呼ばれる。【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島

オガサワラビロウ

Livistona chinensis var. boninensis

(ヤシ科 PALMAE) 小笠原諸島全域の海岸付近から尾根筋までの緩斜面 に群生する常緑高木で、樹高7~10m、ときに 20m。比 較的乾燥を好むが、沢筋、湿潤地にも生育する。戦前、 材は細工物や道具の柄に、葉は屋根葺きの材料に、若 芽は食用に、現在では街路樹として利用されている。 外見が内地のシュロに似ているので、島名「シュロ」。 葉は幹頂に集まり、掌状に中裂し、先端は2裂。葉 柄は1m以上にもなる。花期は4~5 月。幹頂に近い葉 腋から穂状花序を出し、淡黄色の小花を多数つける。 オガサワラオオコウモリの好む餌としても知られる。 10~12 月に青紫色、楕円系の果実が熟す。【分布】父島、 兄島、弟島、母島、向島

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タコヅル

Freycinetia boninensis (タコノキ科 PANDANACEAE) 常緑つる性低木。別名「ツルダコ」。湿性の土壌の肥 沃な場所や山地の裸地に大きな群落をつくる。茎の節 から気根を出し、他の樹木に巻きついて時に10 数 m の 高さまでよじ登る。本種に巻きつかれて枯死する樹木 もあるという。戦前に比べ生育地を拡大してきている ようで、現在、特に母島・乳房山付近では急速だとい われている。写真は乳房山上部雲霧帯でのもの。葉は 螺旋状につき、剣状で長さ0.5~1m。タコノキの葉を柔 らかくした感じである。雌雄異株。5月頃、茎の先の 葉腋から黄色の穂状花序を伸ばす。翌年10 月頃に果実 は赤熟する。【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島

タコノキ

Pandanus boninensis (タコノキ科 PANDANACEAE) 小笠原を代表する常緑高木で、ほぼ全島に分布する。 樹高4~5m、ときに 10m。日当たりのよい乾燥した丘陵 地を好み、海岸線から山頂付近までかなり広範囲に見 られる。葉と古い材は細工物に、果実は食用に、オガ サワラビロウと共に街路樹としても利用される。幹は 灰白色で、小突起や葉痕が多く、主幹と同じくらいに 太い枝を分枝させる。気根が発達し、あたかもタコが 足を広げているように見えるのが名の由来。雌雄異株。 初夏、枝先に雌株はパイナップルに似た花序を、雄株 は黄白色の穂状花序ををつける。果実は翌年 10 月頃、 朱色に熟す。琉球などに分布するアダンに近縁。【分布】 父島、兄島、弟島、母島、向島

1.3 草本・双子葉植物

セキモンウライソウ

Procris boninensis (イラクサ科 URTICACEAE)絶滅危惧種 母島・石門山の石灰岩ドリーネ地帯にのみ自生する常 緑多年草で、草丈 50~60cm。葉は枝先に多くつき、線 状楕円形で、先端にいくほど鋸歯は粗くなる。茎は多汁 質で稜があり、根本は木質化する。5~6 月、葉腋に単 緑色の小花をつける。果期は7月頃。分布域が極めて限 られた貴重種であるため、自生地の保存が求められる。 写真はラピエ(石灰岩溶食地形)上の小群落。【分布】 母島

シマゴショウ

Piperomia boninsimensis (コショウ科 PIPERACEAE)絶滅危急種 草丈20~30cm の常緑多年草。自然林内の湿潤な場所 を好み、老木や樹洞、岸壁に付着。ホソバクリハランや シマオオタニワタリなどと共に生育している様は熱帯 の雰囲気を漂わせる。母島は父島に比べ湿性傾向にある ためか、母島の個体の方が葉や茎も大きく、逞しいとい われている。葉は対生し、多肉質で楕円形、全縁。茎は 帯茶褐色。春~秋、淡緑色の穂状花序に同色の小花をつ

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ける。果実は夏~晩秋に赤褐色に熟す。【分布】父島、 兄島、弟島、母島

タイヨウフウトウカズラ

Piperomia postelsianum (コショウ科 PIPERACEAE)絶滅危急種 草丈2m に達する立性常緑多年草。母島・石門山の森 林内にのみ小群落をつくる特産種で、他地域での分布は 確認されていない。個体数も極めて少ない貴重種でもあ る。明るい疎林内の適潤地を好むため、保護にはそうし た生育地の条件を保つことが必要となる。帰化動物であ るアフリカマイマイの食害から守ることも急務。葉は 「タイヨウ(大葉)」の名の通り大きく18~20cm で、円 形~腎円形。質は柔らかく、7~8cm の長い葉柄を持つ。 7月頃、枝先に近い葉腋から2本の尾状花序をだし、小 花を咲かせる。果期は9月頃。関東以南~琉球、台湾な どに分布するフウトウカズラ(小笠原にも分布)と同属 だが、フウトウカズラは海岸近くに生育し、つる性。花 序が葉の反対側につく等、本種とは異なった点が多い。 【分布】母島

1.4 草本・単子葉植物

シマクマタケラン

Alpinia boninsimensis (ショウガ科 ZINGIBERACEAE)絶滅危急種 名前に「ラン」がつくが、ラン科植物ではなくショウ ガ科の多年草。山地林内の明るくやや湿った場所に生育 する。草丈0.6~1.2m。葉は長さ 30~40cm、幅 6~7cm で 披針形。鮮やかな緑色で光沢を持つ。7月頃、円錐花序 に白色で朱色の筋の入った小花を密につける。果期は2 ~3 月。球形で黄褐色に熟す。乾燥傾向の強い父島での 分布域は狭いといわれているが、母島では広く分布し、 特に石門山周辺には多く見られる。【分布】父島、母島

オガサワラシコウラン

Bulbophyllum boninense (ラン科 ORCHIDACEAE)絶滅危惧種 樹幹や岩上に付着する着生ランで、草丈 15~20cm。 根は長く這い、卵形のバルブ(偽球茎)の先に1枚の葉 をつける。葉は長楕円形で多肉質。光沢がある。花期は 6~7 月。バルブ基部から細く、長い花柄を下垂させ、 先端に3~5 個のクリーム色の花を咲かせる。母島では 霧のかかりやすい稜線沿いの大木の樹幹などに多く見 られる。漢字名は「小笠原指甲蘭」。「指甲」とは指の爪 の意。【分布】父島、弟島、母島

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ホシツルラン

Calanthe hoshii (ラン科 ORCHIDACEAE)絶滅危惧種 常緑多年草。母島の雲霧帯の薄暗い林床に生育する。 個体数は極めて少ない。ラン科植物の多くにいえること であるが、減少の最大原因は心ないマニアによる盗掘で ある。本種の場合はさらにアフリカマイマイの食害が懸 念されている。写真は桑ノ木山の一区画で大切に保護さ れている小群落を写したもの。花期は8月頃。花茎の先 に白色の可憐な花を集めて咲かせる。ホシツルランは 「星鶴蘭」と書き、母島のナチュラリスト・星典氏にち なむ。父島、兄島に分布するアサヒエビネ、戦前に報告 のあった南硫黄島のツルランに近縁。【分布】母島

チクセツラン

Corymborkis subdensa (ラン科 ORCHIDACEAE)絶滅危惧種 草丈1~1.5m の常緑多年草。母島・桑ノ木山、石門山 周辺などの薄暗い湿性林内に好んで生育するが、林冠が 鬱閉し過ぎると衰退していくといわれる。個体数は少な い。帰化種であるアカギが侵入、繁茂すると林床が暗く なりすぎるため、保護にはアカギの駆除が求められる。 写真は石門カルスト台地の森林内でのもの。 茎は直立し、長さ40cm ほどの長楕円形~狭披針形の 葉を数枚~10 枚つける。葉は濃緑色で光沢があり、平 行脈を持つ。7月頃、葉腋から花柄を伸ばし、細長く気 品ある純白の花を多数咲かせる。果期は9月頃。琉球、 台湾に分布するバイケイランに近縁とされる。【分布】 父島、母島

ムニンシュスラン

Goodyera boninensis (ラン科 ORCHIDACEAE)絶滅危急種 草丈10~15cm の常緑多年草。湿り気のある薄暗い林 内に群生する。母島は父島に比べ湿性の傾向があるため 各 地 に 生 育 す る が 、 父 島 で は 分 布 域 も 狭 く 、 個 体 数も、花をつける個体も少ない。写真は母島・乳房山中 腹の小群生地でのもの。茎は地面を這い、わずかに斜上。 葉は長楕円状披針形で、表面は紫緑褐色を帯びる。「シ ュス」とは「繻子」(光沢のある織物)の意で、葉の光 沢に由来する。12~1 月にかけて茎の先に白っぽい紫褐 色の小花を咲かせる。果期は6月頃。【分布】父島、母 島

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1.5 シダ植物

オガサワラリュウビンタイ

Angiopteris boninensis (リュウビンタイ科 MARATTIACEAE) やや湿った林内や谷筋に生育する大型のシダ。塊状の 根茎から集まって出る数枚の葉は2回羽状複葉で、長さ 2m 以上にもなる。葉柄は太く、直径 5cm に達し、表面 に細い白斑が散在する。リュウビンタイモドキ(固有種) に似るが、小羽片には辺縁から小羽軸に向かって偽脈が 伸びる。成葉の葉柄には鱗片がない。父島では野生化し たヤギの食害により殆ど見られなくなった。【分布】父 島、弟島、母島

マルハチ

Cyathea mertensiana (ヘゴ科 CYATHEACEAE) 小笠原を代表する大型の木性シダ。高さ5~8m、とき に12m になる。葉痕が、丸に逆さ「八」の字の模様にな るのが名の由来。父島、母島などの全域に分布し、林内 でも日当たりのよい草地でも生育して群落をつくる。ヘ ゴよりも乾燥に強いといわれる。ヘゴと共に小笠原の森 林における主要構成種となっている。葉脈は2叉するも のが多く、葉柄は緑色でトゲ状突起はほとんどない。鱗 片は褐色~わら色。線状披針形で長い。【分布】父島、 兄島、弟島、母島

ムニンエダウチホングウシダ

Lindsaea repanda (ホングウシダ科 LINDSAEACEAE) 半日陰で適湿な尾根筋に多く生育する。根茎は短く這 い、草丈 30~40cm。葉は叢生するように集まって出、 長三角形で上部は1回羽状、下部は2回羽状複葉。濃褐 色で光沢のある線形の鱗片が基部にまばらにつく。小羽 片は平行四辺形~扇形。九州~琉球にかけて分布するエ ダウチホングウシダに近縁。【分布】父島、兄島、弟島、 母島

ムニンミドリシダ

Diplazium subtripinnatum (イワデンダ科 WOODSIACEAE) 湿潤な林内、岩上に生育する。草丈80cm ほど。個体 数は極めて少ないが、絶滅危惧種、危急種に指定されて はいない。淡緑色の葉はややまばらにつき、2回羽状複 葉で柔らかな草質。根茎は短く這う。本州~四国、九州 の湿った林下に自生するヒカゲワラビに近縁。【分布】 母島

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2.広分布種

2.1 木本・双子葉植物

ウドノキ

Pisonia umbellifera (オシロイバナ科 NYCTAGINACEAE) 天然林内に自生する常緑高木で樹高18m に達する。シ マホルトノキ、オガサワラグワなどと共に水分条件に恵 まれた湿性高木林を構成する代表的な樹種。石門カラス ト台地の極相林では直径1m を超えるものにも数本出会 ったが、2006 年の台風により樹冠が吹き飛ばされる被害 を受けていた。樹皮は灰褐色。葉は対生~3輪生で質は 厚く、楕円形、全縁。暗緑色で光沢がある。初夏に房状 散形花序をつける。晩秋に熟す果実は表面に粘り気を持 ち、他のものに付着する。【分布】父島、弟島、母島、 琉球~熱帯アジア

ハスノハギリ

Hernandia nymphaeifolia (ハスノハギリ科 HERNANDIACEAE) テリハボク、モモタマナと共に小笠原の海岸林を構成 する主要常緑高木で樹高15m、直径 50~80cm。砂礫の多 い湿潤な土壌に生育する。葉は互生し、ハート型で光沢 があり革質、無毛。葉柄がハスの葉のように葉身に楯状 につくのが特徴。8月頃、散房を出し、白色の小花を咲 かせる。果期は12~3 月。黄または赤色の袋状の苞葉の 中の種子は黒く熟す。材が柔らかく、キリに似ているの で地元では「ハマギリ(浜桐)」と呼ばれている。【分布】 父島、兄島、弟島、母島、向島、琉球、インド~西太平 洋沿岸

テリハボク

Calophyllum inophyllum (オトギリソウ科 GUTTIFERAE) 海岸林を構成する主要常緑高木で、樹高20m、直径 1m に達する。風や潮に対して強いので防風・防潮林として 重要。木理が美しいため家具、建築用材にも利用される。 葉は対生し、ゴムノキに似て大きく厚く、全縁。深緑色 の光沢を持つ。7~8 月に円錐花序を出し、白色の花を 咲かせる。果実は11 月頃に熟し、径 2.5cm ほどの球状。 海流に運ばれて分布を広げる。【分布】父島、兄島、弟 島、母島、向島、琉球以南

オオハマボウ

Hibiscus tiliaceus (アオイ科 MALVACEAE) 海岸林を構成する常緑小高木で、樹高 4~12m。葉は 大型で 10~15cm、表面はざらつく。近縁の固有種・テ リハハマボウ(モンテンボク)に似るが、葉はより大型。 また、テリハハマボウが山地型なのに対し、本種は海岸 型。テリハハマボウは本種から分化したもので、生息域 の棲み分けをしていると考えられている。花期は 6~7 月。黄色で中心が暗褐色、径5cm ほどの花を咲かせるが、 一日花で、夕方には赤くなる。【分布】父島、兄島、弟 島、母島、向島、台湾、琉球、屋久島

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モモタマナ

Terminalia catappa (シクンシ科 COMBRETACEAE) 海岸林を構成する代表的な樹種。小笠原では数少ない 落葉高木であり、紅葉する樹木でもある点が特徴。樹高 20m、直径 1m に達する。防風林、建築・土木用に利用 される。葉は枝先に集まってつき、全縁。革質で長さ 25cm にもなる。カシワの自生しない島では昔、柏餅に この木の葉を用いたといわれている。秋に熟す果実(食) の形が桃に似ていることから「モモタマナ」の名がつい た。花期は4~5 月。新葉が展開した後、白く小さな花 を穂状につける。【分布】父島、兄島、弟島、母島、向 島、琉球以南の太平洋各地

モクタチバナ

Ardisia sieboldii (ヤブコウジ科 MYRSINACEAE) 適湿で土壌の深い場所に生育する常緑高木。入植当 時、本種の茂る林は肥沃であるとされ、開拓の目安にな ったといわれる。タンニン含有量が多く、駆虫薬になる。 葉は互生し、枝先に集まってつき長楕円形~広披針形で 全縁、厚みがある。花期は6月頃。葉腋に白色の小花を 多数つける。果期は1~2 月。【分布】父島、兄島、弟島、 母島、向島、四国~九州、琉球、台湾、中国

イソマツ

Limonium wrightii (イソマツ科 PLUMBAGINACEAE) 海岸の波しぶきをかぶりそうな石灰岩上に自生する 常緑小低木で、高さ5~15cm。南島のラピエ(石灰岩熔 食地形)の岩上に多く見られる。短い樹幹は黒褐色。葉 痕がソテツの幹のような形状をしている。葉は枝先に集 まってつき、へら形。先端は円形、基部は次第に細くな り枝を抱く。夏に小花を群生させ、美しい。鑑賞用とし て珍重されるが、移植は困難。果期は秋。【分布】父島、 南島、伊豆七島、九州南部~琉球、台湾

アカテツ

Planchonella boninensis (アカテツ科 SAPOTACEAE) 小笠原全域に分布する常緑中高木。母島・石門山では 土壌が肥沃なためか、樹高18m、直径 1m に達するもの もある。器具材に利用されたが、虫害を受けやすいため、 現在では利用されない。幹は黒褐色。葉は楕円形~倒卵 形で全縁、革質。新葉と葉裏は茶褐色の毛に覆われ、遠 目にも赤錆び色に目立つのが名の由来。花期は6~7 月。 果期は10~11 月。島名「クロテツ」。【分布】父島、兄 島、弟島、母島、向島、琉球~台湾、南中国、フィリピ ン、マレーシア

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モンパノキ

Argusia argentea (ムラサキ科 BORAGINACEAE) 海岸砂地に生育する常緑低木で、樹高 2~10m。南島 の石灰岩地域に多く見られる。葉はさじ形で枝先に集ま ってつき、全面にビロード状の短毛を密生させ、銀 灰色。葉のしなやかな感触から「紋羽の木」と書く。花 期は3~4 月。白または帯緑白色の花を枝先にまとめて つける。果実は6月頃に熟す。材が水中メガネのワク に利用されたことから、島名「メガネノキ」。【分布】父 島、弟島、南島、鳥島、琉球以南の東南アジア、ミクロ ネシア、アフリカ

ハマゴウ

Vitex rotundifolia (クマツヅラ科 VERBENACEAE) 砂浜に生育する常緑つる性低木。幹や枝が長く伸び、 砂浜を一面に覆う。葉は対生し、倒卵形~円形で全縁、 革 質 。 長 さ は 4cm はどで、本州のものよりも小型 である。表面に細かい毛が密集していて灰緑色。花期は 1年中。淡紫色の筒状の花が茎の先にまとまってつく。 戦 前 は 砂 防 用 に 利 用 さ れ た 。 薬 用 に す る 国 も あ る という。島名「ホウノツラ」。【分布】父島、兄島、弟島、 母島、向島、本州以南、太平洋諸島、東南アジア、オー ストラリア

クサトベラ

Scaevola sericea (クサトベラ科 GOODENIACEAE) 海岸に生育する代表的な常緑低木で、群落を形成す る。樹高1~2m。南島ではノヤギ駆除以来、植生が回復 し初め、本種のまとまった群落を見ることができる。 葉は枝先に集中し厚みがあり、柔らかく、縁が裏側に 巻くのが特徴。花径2cm ほどの白色の花を 5~6 月に咲 かせる。6月頃、白く熟す実は1年以上海水に浸か っていても発芽力を失わず、海流に運ばれて分布を広げ ることができる。島名「カイガンタバコ」とは葉がタバ コの代用になることから。【分布】父島、兄島、弟島、 母島、向島、琉球以南の熱帯各地

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2.2 草本・双子葉植物

スナヅル

Cassytha filiformis (クスノキ科 LAURACEAE) 海岸の砂浜に生育するつる性の寄生植物。南島・扇池 付近にはまとまった群落が見られる。径1~2mm の淡黄 色で細長い麺のような茎が伸び、吸収根で他の植物から 栄養分を奪い取る。葉は小さな鱗片状に退化している。 花期は夏。花は淡緑色で、まばらな穂状の花序につく。 果実は秋に熟す。遠目にはヒルガオ科のネナシカズラに 似るが、本種はクスノキ科なので、他人の空似。島名は 「ハリガネソウ」。【分布】父島、兄島、南島、母島、屋 久島以南の熱帯

グンバイヒルガオ

Ipomoea pes‐caprae subsp. brasiliensis

(ヒルガオ科 CONVO LVULACEAE) 海岸の砂浜に生育する多年生つる植物。節から根を出 し、長く地を這い群生する。 かつては海岸の飛砂防止に利用された。葉は互生。先 端が大きく窪み、その形が相撲の行司の持つ軍配に似る のでこの名がある。長さ4~6cm で質は厚く、光沢があ る。花期は夏~秋。葉腋から紅紫色で直径5cm ほどの花 を咲かせる。花はヒルガオに似る。母島・沖村の海岸に はまとまった群落が見られ、美しい。果実は秋に熟す。 島名は「ウチワカヅラ」。【分布】父島、兄島、弟島、母 島、向島、四国、九州以南の熱帯各地

2.3 草本・単子葉植物

オオハマオモト

Crinum asiaticum var. sinicum

(ヒガンバナ科 AMARYLLIDACEAE) 海岸付近に生育する常緑多年草。ハマオモトに近縁 で、草丈1.5m。根際の直径は 20cm、葉は 2m 近くにも及 ぶ。潮風に強く、砂防用として植栽されたこともあった が、現在では観賞用。6~7 月、葉腋から 1m ほどの花柄 を伸ばし、大きくて白い芳香のある花を咲かせる。花弁 が細かく裂けるのが特徴。果実は10 月頃に熟し、小さ なジャガイモ状で、中に数個の種子が入っている。葉が オモトに似ているのでこの名がある。【分布】父島、南 島、母島、妹島、姪島、琉球~台湾、中国南部、太平洋 諸島

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2.4 シダ植物

マツバラン

Psilotum nudum (マツバラン科 PSILOTACEAE)絶滅危急種 原始的な面影を残す常緑性シダ。樹上や岩の割れ目に 稀に生え、高さは 10~40cm。箒を逆さに立てたように 規則正しく二叉に分岐する地上部と不規則に分岐する 地下部からなる。地上茎には葉状突起がある。単体胞子 嚢群はごく短い側枝の上につき、胞子嚢は3室に分かれ る。小笠原では絶滅危急種に指定。多くの園芸品種が知 られている。【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島、 北硫黄島、関東以西、四国、九州、沖縄、亜熱帯、熱帯

ヘゴ

Cyathea spinulosa (ヘゴ科 CYATHEACEAE) 大型の木性シダ。林縁や陰湿な裸地を好む。マルハチ と異なり葉痕の模様はなく、黒い針金状の根で覆われ る。茎頂に長さ1.5~2m 以上の葉を放射状に広げる。 葉は2回羽状複葉。葉柄は上面が緑色、下面が紫褐色。 著しい刺と暗褐色の鱗片がつく。近縁のメヘゴは父島固 有種。葉柄が濃い茶褐色、茎の刺が鈍頭で痛くない点 で区別される。【分布】父島、母島、北硫黄島、南硫黄 島、紀伊半島南部(稀)、四国東南部(稀)、九州南部~ 琉球、台湾~中国南部、インドシナ~インド、フィリピ ン

ホラシノブ

Sphenomeris chinensis (ホングウシダ科 LINDSAEACEAE) 山地や海岸、路傍の崖、切通しなど、日当たりのよい 場所に生育する。根茎は短く這い、葉は3~4 回羽状複 葉。裂片は細く、やや厚く堅い革質。母島・乳房山から 大剣崎山へ向かう尾根上の向陽地に小群落をつくって いた。ホラシノブ属のシダは、小笠原には本種のほかに ハマホラシノブがあるが、こちらは葉がさらに厚い革質 で、名の通り海岸近くに見られる。ともに広域分布種。 ホラシノブは「洞忍」と書き、葉の形がシノブ(Dvallia mariesii)に似ていることからの命名。【分布】父島、兄 島、弟島、母島、向島

ヒメタニワタリ

Asplenium cardiophyllum (チャセンシダ科 ASPLENIACEAE)絶滅危惧種 母島・石門山のやや陰湿な岩上に自生するが、個体数 は極めて少なく、絶滅が危惧されている。根茎は岩上を 這う。葉は長さ5~15cm。葉柄は赤紫色~茶色で光沢が あり、針金状。ソーラス(胞子嚢群)は線形で中肋と縁 との間に5~10 対つく。包膜も線形。これまで小笠原固 有種とされてきたが、昭和47 年 10 月に北大東島で同種 のものが発見されたため、固有種ではなくなった。【分 布】母島、北大東島

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シマオオタニワタリ

Asplenium nidus (チャセンシダ科 ASPLENIACEAE) 海岸から山中の樹幹、岩上、時に地上に生育。母島で は乳房山上部の雲霧帯に多く見られた。塊状の根茎から 大型の単葉を放射状に多数出す。葉は革質で光沢があ り、鮮緑色。長さ40~150cm にもなる。ソーラスが中肋 と辺縁との3 分の 1~2 分の1までで終わるのが近縁の オオタニワタリとの違い。【分布】婿島、媒島、父島、 母島、向島、妹島、屋久島~熱帯アジア、ヒマラヤ、マ ダガスカル、ミクロネシア、ポリネシア

オトメシダ

Asplenium tenerum (チャセンシダ科 ASPLENIACEAE) 湿性の林内の石の上などに生育する。母島北部に分布 するが、個体数は少ない。葉は4、5 枚叢生し、長さ 30 ~40cm の単羽状。艶のない緑色で質は柔らかい。【分布】 母島、硫黄島、琉球、オセアニアの熱帯地域、スリラン カ~ポリネシアにいたるアジア

3.帰化種

3.1 木本・双子葉植物

リュウキュウマツ

Pinus luchuensis (マツ科 PINACEAE) 小笠原で見られる唯一のマツ科植物。明治32 年、島 の緑化、及び薪炭材、箱材の需要を満たすため、琉球よ り種子を移入して裸地や疎林地に植栽した。だが、戦後 利用されることはなくなった。昭和48 年頃よりマツノ ザイセンチュウによる被害が拡大し、大半が枯死してい る。本種は葉も樹皮も内地のアカマツとクロマツとの中 間的な形質を示すのが特徴。雌雄異株で、花は3月頃開 花。球果はクロマツより小さく、秋に熟す。【原産】ト カラ列島~琉球列島【分布】父島、兄島、弟島、母島

トクサバモクマオウ

Casuarina equisetifolia (モクマオウ科 CASUARINACEAE) 小笠原には荒廃地復旧、薪炭材採取の目的から 1879 年に導入されたといわれる。根に窒素固定を行う細菌類 が共生するため、崩壊地や海岸砂地など、他の植物が容 易に侵入できない土壌栄養分の貧弱な土地でも生育で きる。林床に大量の落枝・落葉を蓄積させ、それらは他 の植物の生長を阻害するアレロパシー物質を分泌する といわれ、林床の植生は極めて貧弱になる。ただ、樹齢 が40~60 年と短く、陽樹であるため、閉鎖した林内に は侵入できないようである。雌雄異株。花期は5月頃。 雄花は黄緑色の穂状花序、雌花は萼・花弁のない紅紫色 の球状花序を出す。球果は秋に裂開し、翼のある種子を 飛散させる。【原産】オーストラリア【分布】父島、兄

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島、弟島、母島、向島

シマグワ

Morus australis (クワ科 MORACEAE) 明治の中頃、養蚕の目的で琉球から移入されたといわ れる落葉高木だが、現在では全く利用されず、父島、母 島のいたる所に野生化。湿性地の個体は生育旺盛で、在 来の固有種・オガサワラグワ(絶滅危惧 IA 類)より遙 かに盛んな繁茂ぶりを示す。オガサワラグワとの間で交 雑による遺伝子汚染が進行している。葉は互生し、卵形。 やや光沢があり、質は薄めでざらつかない。花期は5月 頃、または9~10 月と一定しない。花後、1カ月ほどで 暗赤色の集合果を実らせる。【原産】種子島以南、琉球、 台湾、中国大陸南部【分布】父島、母島

デリス(ドクヅル)

Derris elliptica (マメ科 LEGUMINOSAE) 大型の落葉つる性低木。小笠原には大正6年に移入。 根から農業用殺虫剤を作るため、かつては大量に栽培さ れた。つるは20m にも及び、繁殖力が旺盛なため、低木 類を覆い尽くし、また高木類によじ登り枯死に追い込ん でいる。葉は奇数羽状複葉で、小葉は9~13 枚。楕円形 ~長楕円形、革質。5月頃、葉腋より長さ20~30cm の 総状花序を出し、紅色の美しい花を咲かせる。果期は秋。 【原産】カンボジア~東インド、マレーシア【分布】父 島、母島

ギンネム

Leucaena leucocephala (マメ科 LEGUMINOSAE) 世界の熱帯、亜熱帯各地に野生化し、問題となってい る落葉小高木。根に窒素固定を行う細菌類が共生するた め、土壌栄養分の少ない瘠せ地でもよく生育し、とくに 人為的撹乱を受けた場所に群生する。アレロパシー物質 を分泌するともいわれ、繁殖力が強く他種を圧倒して繁 茂するが、陽樹であるため林冠が閉鎖した場所には侵入 できない。しかし、本種の林はギンネムやその他の帰化 種によって更新されることになるため、在来植生が復活 する可能性は低いと考えられている。枝先に近い葉腋に 頭状球形の白色の花序をつけ、豆果を実らせる。【原産】 中央アメリカ【分布】父島、兄島、弟島、母島、向島

アカギ

Bischofia javanica (トウダイグサ科 EUPHORBIACEAE) 明治38 年以前、薪炭材の需要を満たす樹種として移 入された常緑高木。大きなものでは樹高 20m、直径 1m 近くに達する。樹皮が赤褐色なのでこの名がある。種子 は鳥によって散布され、実生や稚樹は暗い林床でも急速 に生長して他の植物を圧倒する。幹を切り倒しても根元 から盛んに萌芽し、切断した生木から再生するほどの強 い生命力を持つため、小笠原の帰化種のなかで最も厄介 な植物といえる。【原産】琉球、台湾、中国南部~イン ド、マレーシア、ポリネシア、熱帯オーストラリア【分 布】父島、弟島、母島

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3.2 草本・双子葉植物

セイロンベンケイソウ

Bryophyllum pinnatum (ベンケイソウ科 CRASSULACEAE) 多肉性草本で茎は直立し、大きなものでは1m に達す る。繁殖力旺盛で、岩石地や崖地などの乾燥・瘠悪な条 件下でも生育できる。葉は対生し、肉質で楕円形。切れ 込みがある。葉をちぎって置いておくだけでも芽を出す ので「はからめ(葉から芽)」と呼ばれる。みやげ物屋 では、鑑賞用に袋に 入れて売られている。2~3 月、 茎の先に長い釣鐘状の花を輪生状に多数下垂させる。 【原産】アフリカ、熱帯~亜熱帯【分布】父島、兄島、 弟島、母島

3.3 草本・単子葉植物

チトセラン

Sansevieria nilotica (リュウゼツラン科 AGAVACEAE) 草丈1m ほどになる多年草。明治初頭に繊維植物とし て持ち込まれたといわれるが、現在では野生化して各地 に群生している。父島の海岸近く、母島の集落辺りでは まとまって見られる。乾燥に強い多肉植物で、葉は根際 から束生し、厚く長披針形。先端は剣状。5~6 月に穂 状花序を出し、ふさふさした白い小花を多数つける。果 実は10 月頃に熟す。葉に黄金色の斑紋のあるものは人 気があるため、鑑賞用に栽培されている。【原産】熱帯 アメリカ【分布】父島、母島

アオノリュウゼツラン

Agave americana (リュウゼツラン科 AGAVACEAE) 大型の常緑多年草。日当たりのよい乾燥地を好み、各 地に群生する。繁殖力が強いため、現在では処理に困っ ている。葉は大きくて厚みがあり、先端が鋭く尖る。縁 に刺がある。発芽後、7~8 年して 6~7 m もの花茎を伸 ばし、5月頃、円錐状花序に管状の花を多数つける。オ ガサワラオオコウモリがこの花の蜜を食糧源として利 用していることが知られている。【原産】熱帯アメリカ 【分布】父島、兄島、弟島、母島

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pg. 27

シンクリノイガ

Cenchrus brownie (イネ科 GRAMINEAE) 父島・大村や南島で多く見られる雑草で、比較的新し く侵入した種といわれる。人為的撹乱の大きい場所にい ち早く侵入、定着できるのは帰化種の特徴であり、他に ジュズサンゴ、シマニシキソウ、クロコウセンガヤなど、 市街地の路傍は帰化種の天国となっている。本種は熟し た果実が人の衣服等に付着して運ばれ、分布を広げてい る。果実には鋭い刺があり、チクチクと痛い。【原産】 熱帯アメリカ【分布】父島、南島、母島

シュロガヤツリ

Cyperus alternifolius (カヤツリグサ科 CYPERACEAE) 草丈0.8~1m になる多年草。明治末頃に鑑賞用に移入 されたといわれるが、現在では利用されず、雑草として 河口の湿地や人家周辺の水辺に群生している。茎は直立 して株状をなし、先端にシュロに似た葉を輪生状につけ る。葉の形が名の由来。3月頃、葉腋から散形状の花序 を出し、花火のような小花をつける。果実は6月頃に熟 す。【原産】マダガスカル【分布】父島、弟島、母島

4.参考文献

9 「小笠原の人文と自然 ~人と自然の共生をめざして~」、東京都立大学小笠原プロジ

ェクト

2003、2003 東京都立大学総長特別研究費「人と自然の共生をめざした小笠原の

人文・自然に関する共同研究」

9 ブルーガイド「てくてく歩き⑧伊豆七島小笠原」、実業之日本社

9 「小笠原植物図譜」、豊田武司編著、アボック社、2003 年

9 「原色日本羊歯植物図鑑」、田川基二著、保育社、1981 年

9 フィールドガイド「小笠原の自然 ~東洋のガラパゴス~」、小笠原自然環境研究会、

古今書院、2002 年

9 「東洋のガラパゴス小笠原 ~固有生物の魅力とその危機~」、神奈川県立生命の星・

地球博物館、2004 年

9 「原色現代科学事典3-植物」、学研、1967 年

9 「小笠原の植物 フィールドガイド」、NPO 小笠原野生生物研究会、風土社、2004 年

9 リレー連載 レッドリストの生き物たち「8 オガサワラグワ」、吉丸博志、林業技術

2003 年 8 月

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pg. 28

索引

1.固有種---pg.38 1.1 木本・双子葉植物---pg.8 トキワイヌビワ---pg.8 オオヤマイチジク---pg.8 オガサワラグワ---pg.3~8 オガサワラモクマオ---pg.9 ムニンイヌグス---pg.9 ムニンヒメツバキ---pg.9 シロトベラ---pg.9 タチテンノウメ---pg.10 セキモンノキ---pg.10 オオバシロテツ---pg.10 アコウザンショウ---pg.11 シマホルトノキ---pg.11 ムニンアオガンピ---pg.11 ハハジマノボタン---pg.11 シマザクラ---pg.12 オオシラタマカズラ---pg.12 シマギョクシンカ---pg.12 オオバシマムラサキ---pg.12 コハマジンチョウ---pg.13 オオハマギキョウ---pg.13 ユズリハワダン---pg.13 ワダンノキ---pg.14 1.2 木本・単子葉植物---pg.14 ノヤシ---pg.14 オガサワラビロウ---pg.14 タコヅル---pg.15 タコノキ---pg.15 1.3 草本・双子葉植物---pg.15 セキモンウライソウ---pg.15 シマゴショウ---pg.15 タイヨウフウトカズラ---pg.16 1.4 草本・単子葉植物---pg.16 シマクマタケラン---pg.16 オガサワラシコウラン---pg.16 ホシツルラン---pg.17 チクセツラン---pg.17 ムニンシュスラン---pg.17 1.5 シダ植物---pg.18 オガサワラリュウビンタイ---pg.18 マルハチ---pg.18 ムニンエダウチホングウシダ---pg.18 ムニンミドリシダ---pg.18 2.広分布種---pg.19 2.1 木本・双子葉植物---pg.19 ウドノキ---pg.19 ハスノハギリ---pg.19 テリハボク---pg.19 オオハマボウ---pg.19 モモタマナ---pg.20 モクタチバナ---pg.20 イソマツ---pg.20 アカテツ---pg.20 モンパノキ---pg.21 ハマゴウ---pg.21 クサトベラ---pg.21 2.2 草本・双子葉植物---pg.22 スナヅル---pg.22 グンバイヒルガオ---pg.22 2.3 草本・単子葉植物---pg.22 オオハマオモト---pg.22 2.4 シダ植物---pg.22 マツバラン---pg.23 ヘゴ---pg.23 ホラシノブ---pg.23 ヒメタニワタリ---pg.24 シマオオタニワタリ---pg.24 オトメシダ---pg.24 3.帰化種---pg.24 3.1 木本・双子葉植物---pg.24 リュウキュウマツ---pg.24 トクサバモクマオウ---pg.24 シマグワ---pg.25 デリス(ドクヅル)---pg.25 ギンネム---pg.25 アカギ---pg.25 3.2 草本・双子葉植物---pg.26 セイロンベンケイソウ---pg.26 3.3 草本・単子葉植物---pg.26 チトセラン---pg.26 アオノリュウゼツラン---pg.26 シンクリノイガ---pg.27 シュロガヤツリ---pg.27

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※ この冊子は、2008 年度文部科学省スーパーサイエンスハイスクール事業成果

の1つとして作成したものです。

※ 本書に関するお問い合わせは以下へお願いします。

honjosh@list.waseda.jp

367-0035 埼玉県本庄市西富田 1136 早稲田大学本庄高等学院

TEL0495-21-2400、FAX0495-24-4065

小笠原植物図鑑

平成 21 年度 3 月 31 日

編集:早稲田大学本庄高等学院 2008 年度小笠原研修チーム

発行:早稲田大学本庄高等学院

参照

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