「解脱」
鎗 倒 層 石 灰 岩 か ら の メ ガ ロ ド ン
メガロドンは第1図に示す如く、大きな歯 を有することでその名がある。白亜紀に栄え たIも』distids等と共に厚歯二枚貝を構成して いる。メガロドン科に属する貝はシルリヤ紀 から出現し、白亜紀前期に及ぶが、三畳紀の ラデイニックからレーチック、特にテチス海 域のノーリックからレーチックに巨大化し、種 数も著しく増えた。
三畳紀の巨大化したメガロ・ドンは普通石灰 岩から産し、分類上はメガロドン科のMegalodon,
Conchod』gbParamegalOdus等の属と、Dicerocar‑
diidaeのDicerocardium(2つの角のあるカー ディウム)を含んでいる。Dicemcardiumも Megalodontidaeから由来したものと考え
られている。
10数年前から球磨川の鎗倒層石灰岩からの 転石に厚(,沼灰質の殻を有する大きな貝化石が 入っていることがしられていた。この標本を 私は当時の三畳紀二枚貝についての代表的な 研究者にもみてもらったが、全体の形がわか らないので誰も分類上の位圃を明かにできな かった。
一昨年の夏、球磨中学校の森田優君 が鎗倒瀬前の球磨jluII原でキャンプし た際、所属不明の変なものが川原に鰯 頭していたとの連絡をしてきた。これ を見に行った時《《あああの振石の化石だ なあ,,と思ったがその後も暫くは何か わからなかった。しかし本腰を入れて石 灰岩塊を切断し、全形を出すことがで きてメガロドンであること力判明した。
熊 大 ・ 教 育 田 村 実
化石は第2a−d図に示す如く、固い石灰 岩に埋って産するので、形を掴むのが困難で 特に両殻を併せれば50 を越す大型もあるこ と等が更に研究を困難にした。石やさんにま ず持ちこんで適当な大きさに切断してもらい 大学では径の異なる2種のブレードで切断し 形を出した。その困難はここではのべないが ともかく10ケの標本を岩塊中からけづりとる ことに成功した。現在の所一応次のものが同 定できる。
Megalodonsp・ ParamegalodusAsp、
ParamegalodusBsp.P日ranEgalodusCsp・
Parmnegalodussp・Cf・incisus伝rech) Paramegalodus?sp・
Dicerocardimnsp、Cf・hinnlayenseStoliczka DicemcardiumspLcf・curioniStoppa、i これらの化石は現時点での少い標本に基づ いており、個体変異や、更に新しい資料等が つかめると、上の結果は変ってくると思われ る。削り出した標本の一部は2e−h図の写 真に示す。又これらの復元図を第3図に示すも
第1図:メガロドンの大きな歯を示す Hegaユodon(Ne◎me8alodOn)匪土queter
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鎗倒層石灰岩からのメガロドン
田村実
恩
第2図:鎗倒層のメガロドン(e−h)と産状(a‑d)
a:鎗倒の川原(中央部の白い三角の部分で初めての 露頭がみつかった),b&c:バンク状の産状,
d:層状の産状,e:Paramegalodussp・Cf・incisus
(×1/3),f:ParamegalodusCsp.(×1/3),g:
Megalodonsp.(×1/3),h:Dicerocardiumspo cf・cuLrioni(×1/3).
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第3図:鎗倒層産のメガロドンの復元図
a:Megalodonsp。,b:ParamegalodusCsp。
c:Paramegalodussp・Cf・incisus(Frech),
。:Dicerocardiumsp・Cf・himalayense stoliczka9e&f:Dicerocardiumsp・Cf・
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第 4 図 : メ ガ ロ ド ン の 球 磨 山 地 に お け る 分 布 と 鑓 倒 の 瀬 川 原 で の 産 地
露5図:IIallam(1981)による三遥紀の最大海浸時の 海 陸 分 布 ( 中 央 の 白 色 部 が テ チ ス 洞
主要柵成者であるようである。
鎗倒回石灰岩では第4図に示す 6ケ所にバンク状に、又層状に産 する。恐らく散点的に産するのを 入れると、石灰岩層の殆どの部位 に産するのではなかろうか。
今回化石をとりだした石灰岩塊 は国道工事中にくづした石灰岩塊 が川原に散在しているものと考え
られるが、種の検討からノーリッ クからレーチックに生存したもの
と思われ、日本でも三畳紀最後期 のレーチックの存在が考えられる 上で、この発見の意義は大きい。
なおレーチックを独立した世とす 復元図に示すDicerocardiumの種の断而形は
特徴があり、鎗倒瀬や川底及び清正公岩等の 露頭での化石断面と較べると鎗倒層石灰岩産 のメガロドンにはDicerocardiumに属するも のがかなり多く、Paramegalodusの種と共に
ろかどうかには議論が多いが、テチス域には この時代の石灰岩が広く分布し、独特のメガ ロドンフォーナを産することも事実である。
参考のためにHallam(1981)のテチス'侮の分 布図を示す。なお小池(1979)は鎗倒層石灰岩
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第 6 図
§
§
:Boselliniet.a1,1980によるザルツプルグーチロール境界域の ノーリックーレーチック石灰岩プラットホーム及びベーズンの模 式的な古地理学的復元(メガロドンは礁湖に多い)
第7図:Zaphe(1957)によるConchodus infraliasicusの生存時の復元
(左方の露頭より右方を復元)
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直下のチャートからノーリック上部のコノド ントを報告している。
このメガロドンを含む石灰岩は第4図に示 す如く、山江村大河内や五木村の竹のjII東、
更に水上越附近に分布が拡がっており、九 州の三宝山帯には広く分布が予想される。
鎗倒層石灰岩を含め球磨川流域の三宝山帯
(神瀬帯)の地質につい「ては勘米良・古川(1964)
の研究があり、石灰岩やチャートについては Kamnera(1969)や中尾(1969)が、石灰藻につ いてはEndo&Horiguchi(1967)が、さんご と二枚貝(ミオフオリヤ)についてはKanmera
(1964)とTEmura(1968)が夫々ある。しかし 示準化石の産出が少く、その点でメガロドン の存在は重要である。この地帯では数層準に 枕状溶岩やスランプベッドを含む火山噴出物 が分布し、勘米良・古川(1964)はEarlyMeso‑
zoicVolcanicBeltの存在を提唱している。
オーストリヤのNorthernCalcareonsAlps では火山噴出物を含まないで、第6図に示す 如く、メガロドンは浅い礁湖に棲息していた と考えられ、Zaphe(1957)によるConchodusの 生存時状態の復元までなされている(第7図)。
鎗倒層石灰岩中のメガロドンの生息環境とし ては火山島上にできたリーフのラグーンを考 えるのが妥当であろう。
この報文は日本学士院記事57巻に発表した (T泡mura,1981)ものを多少くだいて書いたも ので、2〜4図は同じものを使用したし、内 容をわかりやすくするために外国での研究を 引用させてもらっている。標本を整えるのに いろんな人にお世話になったが、球磨中の森 田優、熊大の渡辺一徳・堀川治城の諸君、特 に堀川君にはお世話になったことを記し感謝 する。最後にこれは熊本県の天然記念物に指 定されたことを付記する。
文 献
Endo,R・andHoriguchi,M(1967):Calcareous AlgaefromtheKonoseGroupinKyushub
1.Bull・Tblqm・CollDomest・Sci.,Vo、17.
Bosellini,A・et、alJ(1980):TheComplex BasinsoftheCalcareousAlpsand Palaeamargins、Abh・Geol・BL−A、
26eC、GI、
Hallam,A・(1981):Theend‑Tiiassicbiv‑
alveextinctionevent・Palaeogeogr.,
Palaeoclimat.,PElaeoeco1.9Vb1.35,No.1.
Kamnera,K・(1964):Triassiccoralfrom theKonoseGroupinKyUsh吟byKanmera,
withnotesonStratigaphybyKanmera andFurukzma、Mem・随c・Sci.,Kyushu Univb,Ser・nVb1.15,No.1.
勘米良亀齢・古川博恭(1964):上部ぺルムー トリアス系神瀬層群.九大・理・研報地 質,6巻,3号.
Kanmera,K・(1969):Litho‑andBio‑facies ofPErmo‑TriassicGeosynclinal LimestoneoftheSambosanBeltin
SouthernKyushu・Spe、paper.N0.14, Palaeont、SOC・Japan・
小池敏夫(1979):三畳紀コノドントの生層序 鹿沼茂三郎・教授退官記念論文集.
中尾征三(1969):三宝山帯神瀬層群のチャー ト.九大・理・研報,地質10義1号 Tamura,M(1968):lVbophorianFossils
DiscoveredfromtheKonoseGroupb KumamotoPrefecturebJap witha NoteonJapanese恥ophoriids.M皿 鹿cbEduc.,K1nnamotoUhiv6,No.21,
Sec、1.
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