保 育現場 で行 われ てい る手 あそび に関す る一 考察
― 学 生 へ の 意 識 調 査 を も と に し て ―
北村 恵 子
要 旨
保 育現場 で行 われ ている手 あそびは、児 童文化財 として大い に利用 され てい るが、その厳密 な定義 は 難 しい とい う側 面 を持 ってい る。 しか し、それ らは各種 の歌や リズム に乗 って言葉 と身体の各部の動 き が連動 し、子 ども達 を楽 しい あそびの世界 に誘 うもの と して確 固た る地位 を占めてい る。今論文 は、幼 児 教育学科
1
年生 を対象 に して、初めての保育 実習 Ⅰ終 了後 に手 あそび に関 しての意識調査 を行 った結 果 を分析 し、考察 を加 えた もので ある。 その結果、学生達 は手 あそび の威力 と効用 について再認識す る と共 に、手 あそび に秘 め られ た多 くの教育的要素に気 がついた。 手あそび は楽 しい こ とが第一条件では あ るが、 さ らに リズムや音程 に気 をつ けて手 あそび をす るこ とに よ り、音楽的能力の伸長 も得 られ る こ とも理解 した。手 あそび の様 々な有益 な要素が子 ども達 の心身 の成長発達 に資す るた めに、今後 、学生 達それ ぞれ の不足分野 の実力 をつ ける必要性 のある ことが分 か った。キー ワー ド :手 あそび ・音楽文化 ・保 育実習
Ⅰ. は じめ に
子 ども達 の成 長発 達 にな くては な らない児 童 文化財 には、玩 具 ・絵 本 ・童話 ・紙 芝居 ・ 人形劇 ・指 人形 ・影 絵 ・ベ ー ブサ ー ト ・劇 あそび ・歌 ・踊 り ・合 奏 ・テ レビ ・マ ンガ そ の 他 な ど、本 当に多様 な ものが あ り間 口は とて も広 い。そ して、それ を玩 具文化 ・物語 文化 ・ 演劇 文 化 ・音 楽 文化 ・あそび文化 ・マ ス コ ミ文化 ・マ ンガ、 アニ メ文化 ・ニ ュー メデ ィア 文 化 な どと区分す る場合 もあ る。
さて 、上記 の分 け方 に よれ ば、保 育現場 にお け る手 あそび は音 楽文化 に属 してい る もの が 多 い と考 え られ る。 子 ども達 を取 り巻 く音 楽 文化 には、歌 (わ らべ うた 、 あそび うた 、 唱 歌 、童謡 、マ ス コ ミか らの うた 、幼稚 園や 保 育所 の うた 、演劇 や レク リェ‑ シ ョンの う た な ど)・楽器 、器 楽 (音 ので る玩 具 、簡 易楽器 、創 作 楽器 、自然 界 の音 に よる もの な ど)・
メデ ィ ァ機 器 (テー プ
、cD、M D
な ど) の他 、身 体表 現や 劇 ごっ こに関 わ る音楽や 音 楽 会 (演 じる、観 る) な どが あ る。今 論 文 は、保 育現場 で多用 され て い る手 あそび を取 りあげ、そ の考 え方や 問題 点 につ い て学生 ‑ の意識 調査 の分析 を も とに考察 してみ たい。 併せ て 、学生 が実習 前 に準備 してお けば 良か った こ とにつ いて の調査 結 果 も掲載 したい。
Ⅱ.手 あそ び の定義 につ い て
一般 的 に、 あそび うた は あそび を伴 う歌、 歌 い なが らあそぶ もので あ り、手 あそび は、
歌や リズム に乗 って手指や 身 体の一 部 を動 か しなが らあそぶ もの と考 え られ てい る. しか し、 両者 は揮然 と して分 け難 い部 分 もあ る。 保 育現場 にお いて 、手 あそび は児童文化財 の 一 つ と して大 い に利 用 され て い るに も関わ らず 、そ の定義 は唆味 で 、人それ ぞれ ま ちま ち で あ る とい う現状 が あ る。 また、 手 あそび の本 と して売 られ て い る様 々な市版 本 に も、そ
れは多様 な名称で扱 われてい る。例 えば、本 の表紙 には歌 あそび、手 あそび、指 あそび 、 足あそび、顔 あそび、身体 (表現)・あそび、ペ ア集 団 あそび、伝承 あそぴ、その他 な どと 書かれてい る (参考文献を参照)。 しか し、それ らは何れ も各種 の歌や リズム に乗 って言葉 と身体の各部 の動 きが連動 し、子 ども達を楽 しいあそびの世界 に誘 うもの と して取 り扱 わ れてお り、表紙 の名称 は異 なって も、内容 は所謂保 育現場 で行 われ てい る手 あそびの範境 に属す るもの と考 え られ る。
Ⅱ.
学生‑ の意識調査 か ら手 あそびに対す る学生達 の意識 を探 るた めに、幼児教学科
1
年生が保 育実習 Ⅰで体験 し た手 あそび について、実習終了後調査 した。 そ こか ら得 られた結果 を分析考察 し、今後 の 教育の質向上 に資 したい。1.調査方法 について
1年生の初 めての保 育実習Ⅰ (1 1月 中旬 に2週間)で体験 した手あそび について、終 了直後 の 「音楽表現指導法」 の授業で調査 を行 った。調査人数 は
199
人。 質問は保 育現 場にお ける手 あそびについて、(》自分の考 え る手 あそび とは ど うい うものか ②手 あそび は ど うして必要か ③実習先で手 あそびをす る時 に音程や リズムに気 をつ けた ことが あ る か (自分 に関 して ・実習園の様子 について) ④実習 まで に準備 してお けば よか った こ と は何か ⑤実習園で行 われ ていた手 あそびの種類 、の5
項 目である。何れ も 自由記述式 と したため、結果 の集計は複数 の記述 内容か ら要素 を拾 いあげ纏 めた ものであ る。 その結果 を%の上位順 に並べ (実数 は記述せず)考察す るこ とによ り、学生 の手あそびに対す る意 識 の傾 向を読み取 りたいO なお、(参はⅣ として纏 め、(参は今論文で は省 略す る。2.
授業で指導 した手 あそぴについて幼児教育学科 の
1
年生が必修 として受講す る 「音楽表現指導法」 の授業 において、学生 達は手あそび (手あそびに も発展す る歌 も含 めてい る)の幾つか を覚 えたo しか し、それ は特 に実習 に直 ぐ役 立て るために とい う訳 ではな く、通常授業 の導入 と・して転時間取 りあ げていた ものである。「音楽表現指導法」は後期か ら始 まった授 業で あ り、9
月末 か ら5
回 行 った後 、学生達はそれぞれ の実習先‑ と赴 いた。実習 Ⅰにで る前 には簡易楽器 について の指導 を中心 に授業 を組んだため、その間 に学生 に紹介 した手 あそびはそ う多 くはないO しか し、実習 Ⅰ終了後 の残 り10
回の授業で は手 あそびの紹介数 を増や し、半期 の合計で 約30
程 を数 えてい る。 また、 1
年 前期 の4月か ら 7
月 には 「児童文化」 とい う授業で手 あそび を約23
程紹介 してい るが、 こち らは選択 の授業なので、それ を選択 した学生 に限 っていえば実習 Ⅰ以前に30
近 くを、また、1
年間 に約53
の手あそび を学んだ こ とにな る。紹介 した手あそび はな るべ くオ リジナル な楽譜 を配布 して指導 したが、 中には ビデオ での紹介 もある。また、「音楽表現指導法」の授業 で、各実習先で行 われ ていた手 あそび を 紹介 しあ う活動 も行 った ことに加 え、数 は未 定だが他科 目の授 業で少 し扱 った とい うこ と も聞いてい る。それ らを含 める と、学生達はかな りの数 の手あそび を知 った ことになる。しか し、学生達がそれ を全てマス ター した とい う訳ではな く、気 に入 った ものだ け身 に つ けた とい うのが実態で、個人の器 量によ りその数 は異な るもの と思 われ る。 また、特 に 熱心 な学生は、授業で教わ る手あそびに加 え、 自発的 に本や友達か ら情報 を得てその数 を 増 していった。学生 に紹介 した手あそびが、実習先 の子 ども達 とどの様 に展 開 されたか具
体的 には分 か らないが 、授 業 で は、 教 えた手 あそび の ス タイル に拘 らず に、少 な く とも子 ども達や 園 の実態 に合 わせ て 関わ る こ とをまず 第‑ に考 え る こ とを指導 した0
3.
保 育現場 にお け る手 あそび の捉 え方 に関す る学 生 ‑ の意 識 調 査 か ら① 「自分 の考 え る手 あそ び とは ど うい うものか」
この質 問 で 、学生 は初 めて 手 あそ び とは何 か を具 体 的 に考 え るこ とにな った。 まず 「手 あそ び とは、言葉 、声 、手や 身体全 体 を使 い 、音楽や リズ ム に合 わせ て色 々 な もの を表 現 す るあそび の一種 で あ る」 とい う答 えが 29% で第‑位 を 占めたQ 次 いで 「この活動 を通 して様 々な力 をつ け る。例 えば音楽 力 (リズ ム感 、柏 、音程 、歌詞 、声 の大小 、強弱 )・想 像 力 、周 りの物 や言葉 を覚 え る ・身 体 の柔軟 さ ・脳 の発 達 ・感 情 ・表 現力 な どの育成 」 が 17%で第 二位 で あ った。 第 三位 には単純 に 「楽 しい ことで あ る」 の 14%があが り、第 四位 に 「子 ども達 を集 中 させ るた めの もの」 が 13% で あが った。 第五位 には 「保 育者 と 子 どもや 子 ども同士 の コ ミュニケー シ ョンを生み だす 。例 えばお互 いの心 と心 との会 話 に よ る信 頼 関係 や 協調性 、愛着 心が 育成 で きる」 の
11%
が 、第六位 には 「考 えた こ とが な いか ら分 か らない ・手 だ けで な く身 体 を使 うもの を入 れ て もよいか分 か らな い」 の8%
が 続 い た。 また 、少数 意見 と して r手軽 にで き る もの」 で あ る とのみ捉 えた ものが6%
、そ の他 「手 あそび は身 体 を使 わず 手 だ け使 うもの」
「上半身 のみ を使 って あそぶ もの」
「座 っ て手指 を動 かす だ けの もの」
「ピア ノや楽器 を使 わず 自分 の歌 だ けで行 うもの」
「歌 を歌 え な い子 どもの た めの音楽 の こ と」r
ゲー ムの様 な もの」
「足 を動 かす ものは踊 りであ る」
「動 きの大 きい ものは身 体 あそ びや お遊戯 にな る」 な どを含 めて約 2%が あった。 その 中には「目で見 て 耳 で聴 いて 口にだ して手や身体全 体 で表 現す る もの」と書 かれ た もの もあ った。
② 「手 あそび は ど うして必要 か
」
学生 達 は 自分 が実 習先 で子 ども と関わ った経験 か ら、 この質 問 に対 して は第‑位 に 「集 中力 を高 め次 の活 動 ‑ の 区切 りとす るた め
」 3 5%
をあ げた。 そ して 、それ が行 われ るの は子 ども達 が ざわつ いて い る時や絵 本 を読む前 、昼寝 前が多 か った とい う。 次 いで 「子 ど も達 の成長 発 達 を促 す」 30%が続 いた。 それ は、指 先や 身 体 の成長 発 達 、物 の名 前 を覚 え理解 力 を増進 、言 葉や感 覚 の育成 、表 現力や想 像力 の伸長 、音程や リズム感 の育成 、感 情 や 情 緒面 を育 て る、 日常 のル ール を知 らせ るな ど、多岐 に渡 る内容 で あった。第三位 に は 「手 あそ び の楽 しさと心 の解放」 17
%が あげ られ た。 それ は、歌 う楽 しさ、 リズ ムの 心 地 良 さ、動 きや メ ロデ ィー に浸 る満 足感 に よって子 ども達 の心惹 かれ る活 動 であった な どで あ った。第 四位 には 「保 育者 と子 どもまた は子 ども同士 の コ ミュニケー シ ョン ツール」
が
15%
で あが り、 手 あそび の活 動 で気持 ちの共有 を図 り、思 いや りの気持 ちを持 ちお互 い の信 頼 関係 を築 くもので あ る と捉 えてい る。また、「手軽 に交流 で き る」の 3%をあ げた ものが第五位 で あ った。③ 「実習 先 で 手 あそび をす る時 に音 程や リズ ム に気 をつ けた こ とが あ るか」
この質問 は、第‑ に筆者 の授 業 で行 った手 あそび指 導 に対 して の振 り返 りの面か ら、第 二 に様 々な実習 園 で行 われ て い る手 あそび の実 態 の概 略 を知 るた めに実施 した。 した が っ て 、学 生 には 自分 に関 して と、実 習 園 の様 子 か ら感 じられ た こ との二 面か ら記述 して も ら った もので あ る。
まず 、 自分 が実 習 先 で手 あそび を した時 の様 子 につ いて の調査結果 か ら述 べ てみ よ う。
大 き く分 けてみ る と 「音程 や リズム に気 をつ けた」が
66%
に対 し、「気 をつ けず にや った」が
34%
とい う結果であった。「気 をつ けた
」 66%
の中には、音程や リズム、強弱やテ ンポに充分気 をつ けた とい う ものが多か った。また、音程 には気 をつけたが リズムには気 をつ けなか った とい うものや 、 その逆 の、 リズムには気 をつ けたが音程 には気 をつ けなかった とい うもの もあったが、前 者 は後者 に比較 して少数であった。 さらに、子 どもに合わせた リズムでや る様 に気 をつ け た とい うもの、自分 が練習 していた もので も音程や リズムが園のそれ とは違 っていたため、先生や子 ども達 に合 わせ る方 を優先 して気 をつ けた とい うもの、 リズムや 音程や テ ンポに 少 し気 をつ けていたが段 々 と外れ て行 く様 な気 が した とい うもの、その他 な どの記述 が あ
り、 自分ではそれ な りに何 らかの注意 を向けて実施 していた ことが分か る。
一方 「気 をつ けず にや った
」 34%
の学生達の多 く,は、手あそび 自体 を覚 えるのに一杯 一杯 で、 とて も音程 な どに気 を使 う状態ではなかった とか、その こ とには考 えが全 く及 ば ず無意識だ ったな どと記述 した。さて次に、実習国で行われていた手あそぴ につ いて学生が感 じた こ とを述べてみ よ うO これ は、主 にその園の保育者 が子 ども達 と行 っていた手あそぴの様 子 を、見た り一緒 にや った りした経験か ら、あ くまで も学生本人 が感 じ取 った ものであることを ご承知頂 きたい。
さて、「音程や リズムに気 をつ けてやっていた」のは
54%
、「音程や リズムは気 にせず 楽 しむ ことを優先 していた」が35%
、「手 あそびはや っていない」が6%
、「分 か らない」が
5%
とい う結果 であった。まず r気 をつ けていた
」 54%
の 中には、子 ども達 の取 り易い音程 ・リズム ・テ ンポで 楽 しませなが ら堂々 とや っていた とい うものが多かった。 また、1高い音 ・低 い音 の使 い分 けや 、声や動 きの大小 な どのメ リハ リをつ けていた とい うもの、先生達は完壁であった と い うもの、そ して、中には子 どもの見ていない所 で、楽器 で音程や リズム を確認 してか ら 教えていた とか、‑同僚 の先生同士で確認 しあっていたな どの記述 もあった。一方 r気 にせず楽 しむ ことを優先」した
35%
の中には、音程や リズムを全 く気 にせず 、 兎に角大 きい声で楽 しんでいた とい うものや 、気 を使 ってい る様子 は全然 見 られ なかった とい うもの、また、 ご く少数 やはあったが、正 しい曲を間違 って教 えていたな どとい うも のや 、正 しい音程 で歌 う必要 はないか らと指 導 された とい う記述 もあった。4.結果 の考蕪
今 まで、手 あそび に関す る学生達 の意識調査の結果 について記述 してきたが、結果 の数 字か らは多 くの ことが読み取れ よ う。
まず第‑ に、 この時点で r手あそび とは何 か」 に関 して学生達 自身 が考 えることは、■言 葉 ・声 ・手や身体全体 を使 い、音楽や リズムに合 わせ て色々な もの を表現す るあそび の一 種であ り、それ は、様 々な力 を養成す ることに もなる。 そ して、楽 しくて子 ども達 を集 中 させ るための もので もあ り、保育者 と子 ども達 との コ ミュニケー シ ョンを生みだ し、 さら に、信頼関係 ・協調性 」愛着心を育てる、 とい うものであった. これ は、̀それま七の授 業 を通 して習得 した考 え方及 びそ う多 くない実習経験か ら
、 1
年生のli月 とい う時期 に記
述 され た ものであるた め、 さらなる保育経験 を重ねて行 くに したがい変化す ることも考 え られ るが、概 ねその捉 え方 の方 向性 は正 しい もの といえよ う。 また、手あそびは手軽 にで きるものであ るが、座 って手指だけを使 うものか、一足 を動かす ものは踊 りになるの■ではな いか、 .動 きの大 きい ものは身体あそびやお遊戯 ではないかなlどと、'その定義 に蓄慮 している姿 も見 られ る。保 育現場 にお ける手あそび の定義 はあま り明確ではな く、考え方 によっ て様 々な解釈 がある といえるが、何れ に して も、それ は保 育者 と子 ども達 を繋 ぐ一種 の 自 然 な接着剤 の様 な役割 を持 ってお り、な くてはな らない存在 と して捉 え られ ている。
.第二 に、r手 あそびは ど うして必要か」の質問では、子 ども達 の集 中力 を高 め、その成長 発達 を促 し、手 あそびの楽 しさと心 の共有を生みだ し、保 育者 と子 どもまたは子 ども同士 の コ ミュニ ュケ‑ シ ョンツール として有効で ある、な どが あげ られ ていた。 これは、 自分 達が実際実習で子 ども達 と関わった時 にその大切 さを認識 した様子 であ り、 中には手あそ びの効用 を疑 っていたが、実習 に行 って初 めてその重要性 を思い知 らされ た と書かれた も の もあった。 そ して、今後 さらに多 くの手あそび をマスター したい と、多 くの学生達がそ の習得 の必要性 を書いてお り、現場 にで るまでに、プ ロの技術 の一つ ともいえる手あそび の技 を身 につ けたい と強 く願 う気持 ちが伝わ って くる。実際の実習 の場面で、子 ども達が ざわつ いてい る時や絵本 を読む前、お昼寝の前な どに手あそびの効用 を経験 した学生が、
今回 の この質問によって初 めてその意義 な どについて具体的 に考 える必要性 を強 く意識 づ け られ るこ とになったことが分か る。
第三 に、「手 あそび をす る時 に音程や リズムに気 をつけた こ とはあるか」の質問には、自 分 に関 しての もの と、実習先 での様子 を どう感 じたかの二方 向の視 点か ら答 えて もらった が、まず 自分 に関 しては 「音程や リズムに気 をつ けた」 ものが
7
割弱 と多 く、授業で伝 え た ことが多少生か されてVl‑た もの と考 え られ る。一方 、「気 をつ けなか った」ものは3
割 を 少 し超 えたが、手あそび を覚 えるのに必死で とて もそ こまで気 を回す ことはできなか った とい う。 これ は、前述 した様 に 「児童文化」 の授業 を選択 した ものはある程度の種類 の手 あそび を習得 したが、そ うでなかった ものは実習前に手あそびの重要性 に気づかなか った か、または、気づいて もその習得 までには至 らなかったた めである と推察 され る。授業 で は、作者 のい るオ リジナル 曲は作者 ‑の礼儀 として楽譜 を配布 して指導 しているが、伝承 あそびな どは音程 とい うよ りは リズムを重視 し、何れ も歌いなが ら手指や顔や身体の動 き を伴 って楽 しくあそび、その時の子 ども達の年齢やその場 の様態 に合 わせ 、楽 しさ優 先で 変容 して もよい し、変容 の必然す ら持 ってい ることを伝 えてい る。 しか し、作者 のい るオ リジナル な歌詞や 曲や動 きには、その作者 が子 ども達‑伝達 したい思いがあ ることも伝 え、その作者 と子 ども達 を仲介す る役 目も負 う立場 について考 えて もらってい る。手あそび は 作者 のい る作品ばか りではな く、 自然発生的 に生まれ るもの も多いが、何れ に して も、子 ども達 との コ ミュニケー シ ョンの場 において、手あそびのオ リジナ リテ ィー とその変容 と い う観点か ら、一度考えてみ ることがあって もよいのではないか と思われ る。
さて.次に、実習園で行 われ ていた手あそび の様子について、主に保育者 が子 ども達 と行 った ものを見た り自分 も一緒 にや った りした経験か ら学生が感 じた ことの答 えでは、「音程 や リズムに気 をつ けてや っていた」のは54%、「気 をつ けず に楽 しむ ことを優先 していた」
のは35%とい う結果であった。 この数字 を高い と見 るか低い と見 るかは微妙である。保 育現場 で行 われ る手 あそびは、その場 を構成す る子 ども達 の様態 によって変容す ることは 当然 と考 え られてい るが、それ は、何に も増 して保育者 と子 ども達 との コ ミュニケー シ ョ ンが大切だか らであろ う。 その場で簡単にで きる手あそびは、子 ども達 と保 育者 の人間関 係や信頼関係 を構築す るための導入 口ともな ってお り、軽視す ることので きない ものであ るが 、そ こに楽 しさがなけれ ば成 り立たず、だか らこそ楽 しさが第‑優先 され ることは納
得で きる。 しか し、子 ども達 との コ ミュニケー シ ョンツール としてだ けの意味 しかないか といえばそ うではな く
、 3
の①及び(卦で述べた様 に、手あそびは様 々な能力 の伸展 に必要 な要素 を充分 に持 っている。音楽的 な面にお いて も同様で あ り、先 の54%とい う数字 が もう少 し向上す ることによって、子 ども達 の さらな る音楽的な能力の伸長 に資す るもの と 考 え られ るか も しれ ない。 しか し、実習先 で正 しい曲を間違 って教 えていた とか、正 しい 音程で歌 う必要 はないか らと指導 された学生 は、大いに戸惑 った とい う。 また、学生 の答 えの 中に 「音楽が好 きな先生 はそれ をす ごく気 にか けてい る し、音楽や ピア ノが苦手な先 生はあま り手あそぴ を していなかった」 との記述があった様 に、それ は現場 の保育者 の意 識 の持 ち様 によ り決 まって くるもの と推測 され る。誰 にで も得 手不得 手が ある様 に、全 て に長 けてい る保 育者 はそ う多 くはない と思われ るが、子 ども達 の能力伸展 のために、少 な くとも自分 の不足部分 を補 う努力姿勢が求 め られてい るのではないだ ろ うか。Ⅳ.
実習 までに準備 してお けばよかった こ とこの項 目は、Ⅲ.の学生‑ の意識調査で質問 した ものの内、実習前 に しっか り準備 して おけば よかった ことについて纏 めた もので ある。
学生達は 自分 に不足 していた もの全てにつ いて 自由記述 したので、次 にそれ らを要素別 に集計 した実数 をそのまま記載 し、上位順 に並べた。 なお、同数 の ものは同順位 としたo
①手 あそび・・・73 (年齢別6 7・バ リエー シ ョン6) ②紙芝居 の持 ち方 ・演 じ方 ・・・6 9
③絵本 の読み聞かせ
‑ 65
④折 り紙‑ 4 5
⑤ ピア ノと弾 き歌い‑ 20⑥ 歌や 曲
‑ 14
⑥ エプ ロン シア ター‑ 14
⑧絵 を描 く‑・6
⑨ パ ネル シア ター‑ 3⑨ あそび‑ 3 ⑪ 自己紹介 の用意‑ 2 ⑪ ゲー ム ・クイズ‑ 2 ⑬指人形 ・ハ ンカチ あそ び ・音の出 るお もちゃ ・あや とり ・わ らべ うた ・壁面構成 ・昔のあそび ・言葉 あそび ・集 団あそび‑各 1
この結果 を見 ると、実習前 の学生達 の様子 か らある程度 の予想 はで きたが、手 あそび ・ 紙芝居 の演 じ方 ・絵本の読み聞かせ の三つ は、 当然 なが ら上位 にあげ られ た。それ らは子
ども達 との接点 として重要で あることを理解 した上で、ある程度準備 して実習にでたに も 関わ らず 、この三つについては特 に実力不足 を感 じた様で ある。学生達は短大の授 業 で 「子 ども」 についての様 々な予備知識や技術 を学んでい るが、実習 とい う真剣勝負の場で 初 め て子 ども達 の実態 に触れ、その関わ り方の難 しさや力不足 を痛感 した よ うだ。保育 のプ ロ として先生 が子 ども達 と関わ る姿 に憧れ を感 じ、その姿 を 目標 として さらな るレベル ア ッ プを 目指 してい る学生達には、で きるだ けの応援 を したい と考 えてい る。
Ⅴ.
ま とめ保 育現場で行われ る手あそびは、児童文化財 として大い に利 用 され てい るにも関わ らず 、 その定義 は唆味で人それぞれ まちまちであ る。 しか し、それ らは各種 の歌や リズムに乗 っ て言葉 と身体の各部 の動 きが連動 し、子 ども達 を楽 しいあそびの世界 に誘 うもの として、
現実 に確 固た る地位 を得てい るもの といえよ う。
今 回の学生へ の意識調査 に よれ ば、手あそびは子 ども達 の集 中力 を高め、様 々な成長発 達 を促すために機能 し、楽 しさを伴 う心の解放 の場 を提供 し、保育者 と子 ども達 との コ ミ
ュニケー シ ョンツール として保育現場 にはな くてはな らない もので ある と感 じてい る、 と
い う結果が得 られたO
初 めての保 育実習 Ⅰで、学生は子 ども達 と沢 山の手あそび を行 い、その威 力 と効用 につ いて身 を持 って体験 して きた.学生達は、 どんなに多 くの手 あそ頭 を知 って も知 り過 ぎる ことはない といい∴実習後 も熱心 に手 あそび の収集 に努力 している姿が見 られ る様 になっ た。 そ して、手 あそび とは何か を考 えることに よって、手あそびの中に秘 め られている多
くの索晴 ら.しい要素 について追求 しよ うとす る姿勢が醸成 されてきた様 に感 じる0
音楽的な要素 につ いて も、今後手 あそびをす る時 には楽 しい ことだ けに気 を取 られ るこ とな く、音程や リズムにも気 を使 う様 に したい との意識 が芽 生 えた様 に思われ る。
さて、学生が実習先で感 じてきた ことに過 ぎないが、保育現場 において子 ども達 と手 あ そび をす る時 に、「音程や リズムに気 をつ けてや っていた」保 育者 は54%で、「気 をつ け ず に楽 しむ ことを優 先 していた」保 育者が35%で あることが多少気 に掛 か る点である。
現場 には様 々な事情 もあるので軽 々に論ず ることは避 けたいが、学生 の記述 した 「音楽 の 好 きな先生はそれ をす ごく気 に掛 けている し、音楽や ピアノの苦手な先生 はあま り手あそ び を していなか った」 とい う様 な状況が、 も しか した らあるのか もしれない とも考 えられ る。誰 にで も得手不得手があるが、学生達には少 な くとも自分の不足部分 を補 う努力姿勢 を持 ち続 けて欲 しい とJ心か ら願 っている。
この様 に、初 めての保 育実習 とい う真剣勝負 の場 を経験 した学生達 は、保 育現場 と保 育 者 に強い憧れ を持 ち、 自分の将来像 を身近 に感 じて具体的な 目標 を立て始 めてい る。それ は、プ ロの保 育者 に到底及 ばない 自分 の実力 の無 さを実感 した ことか ら、実習前 に準備 し てお けばよか った こととしてい くつか をあげた もの を見れば分か る。 それ は
Ⅳ.
に纏 めた が、その第一位 はや は り手 あそびで あ り、改 めてそ の重要性 を感 じることとなった。今後、今 回纏 めた学生‑の意識調査 の結果 を参考 に して、手 あそびについてだけでな く、
幅広 く学生‑の教育の質 を向上 させ るための努力 を重ねたい と考 えてい る。
末筆 なが ら、実習先での保 育者 の皆様 の献身的 な ご指導について学生か ら報告 を受 ける 度 に、心か らの感謝 を申 し上 げる次第である。
【参考 文献 】