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東北の医師不足について 仙台赤十字病院長

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

東北の医師不足について

仙台赤十字病院長 桃 野   哲

田中内閣の一県一医大構想で山形大学に医学部が開設された1973年当時,東北の地域医療 を担う病院の診療は,内科と外科は数名の医師,産婦人科,小児科,耳鼻科,整形外科や眼科 等では一人常勤医か大学からの非常勤医師が担当していましたが,東北も一県に一医学部に なったので,これからは医師不足が解消すると思われました.それから40年経過して東北の 事情は変化しており,ここ10年で多くの病院は200〜400床規模に改築され,診療科が専門に 分かれて増えましたが,常勤医不在で休診する診療科も多くなっています.大学でも医師が居 ない昨今,医局人事の常勤医は望めず,過酷な勤務で疲弊した勤務医が辞めて開業する動きも あるので,地域の中核的な病院では常勤医が増えません.

医学生の卒業後の動向を,東北大医学部同窓会名簿で調べました.東北出身の入学生を,

1982年に始まったセンター試験の前後で10年毎に区切ってみると,導入前の20年間は47%で,

導入後は10年毎に39%,25%,28%になり,センター試験から20年経って東北出身者は

20%減りました.東北大学と関連病院で研修した卒業生は,2004年の新臨床研修医制度導入 前が73〜76%,導入の直後は57%,2013年には64%で,新制度から10年で10%弱減りました.

また,1989年の卒業生は51%が東北出身で,卒後10年目に76%が東北地方で勤務しており,

1999年卒では同じく38%,66%であり,2003年卒では33%,45%になり,東北出身者が減る につれ東北で勤務中の医師も減っていました.  

センター試験が大学入試に採用され,受験で偏差値が重視され始めると,東北地方の医学部 は都市部から受験・入学する学生が増えて難関になりました.都市部出身の学生が増えてから,

卒業後に大学の地元に残る医師は減り,入局者が減りました.また,大学以外で臨床を学んで 専門医を目指す研修医が多くなり,入局者は減りました.さらに,進路選択では,臨時手術等 で夜間・休日に呼び出しが多く3Kと言われる産婦人科,外科等が避けられて入局者が減りま した.同時期に大学では,大学院大学になって診療科が各々の専門に独立し,講座が増えて教 育,診療や研究に多くの医師が必要になりました.そのようなことで,臨床医を育てて地域の 病院に派遣して地域医療を維持するという,大学が地域で担っていた役割を果たせなくなりま した.

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東北地方の勤務医不足は,先に述べた地域病院側と,大学入試,臨床研修と医学部内部の制 度変更による大学側の変化で生じています.さらに,この状況は医師の絶対数不足のみではな く,医師の偏在も原因になっているので,定員増や医学部新設のみでは対処出来ません.根本 的な解決には,ドイツやアメリカ等のように,地域毎に必要な各診療科の専門医や医師数が算 定され,それに合わせて医師の配置が決まるような体制が必要でしょうが,すぐに実施するに はハードルが高過ぎて困難です.

それでも,私もふくめて,医師が不在の診療科を抱えている病院長は,話題の東北での医学 部新設問題を興味深く見守っています.

今年も本誌を発行することが出来ました.毎日の診療等に忙しい中で,論文を投稿いただい た諸氏と,腹腔鏡手術の当院第一例目からこれまでの臨床統計,当院外科の沿革について纏め ていただいた中川副院長に感謝いたします.また,本誌の編集をしていただいた山田委員長を はじめとする編集委員各位に厚く御礼申し上げます.

(2014.3.20)

参照

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