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「事実上の会社」問題と法外観説喜多了祐

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(1)

一一103一

「 事 実 上 の 会 社 」問 題 と法 外 観 説

喜 多 了 祐

1シ ミ テ イ ス の 所 説

くの

わ れ われ は 別 稿 に おい て 「事 実 上 の会 社 」 問題 を め ぐ る ドイ ツの い ろい ろ な 理 論 構成 を最 も新 しい シ ミテ ィスの所 説 に よって吟 味 した 結果,次 の よ うな認 識 に到 達 した 。 この 問題 は,設 立 の 法 定要 件 を完備 せ ず に会 社 と して出 現 し活 動 した各 個 の 当事 者 の 内外 両 面 に おけ る利 益 対 立 に帰 着 す る。 とい うの は,彼

ら自身 は会 社 の無 効 に現 状 解 消 の利 益 を有 す るの に 対 して,彼 らの外 面 関 係 で は総 体 と して の第三 者,と くに債 権 者 が 流 通 の安 全 に,ま た彼 らの 内面 関 係 で は残 余 の 当事 者 全 体 が企 業 の維 持 に,現 状 保 存 の利 益 を有 す るか らであ る。準 則 主 義 を 裏 返 しに した法 規 適 用 の仕 方 を墨 守 す るか ぎ りでは,前 者 の利 益 が 全 面 的 に優 越 す るけ れ ど も,そ の よ うな形 式 論 理 を去 っ て考 え るな らば,後 二 者 の利 益 が 優 越す る と認 め られ るか ぎ りで,準 則 主義 的 な 法 規適 用 の仕 方 を制 限 す る実 質 論 理 が 妥 当す べ きで あ る。

「事 実 上 の 会社 」 理 論 は この よ うな 実 質 関 係 の充 分 な認 識 に も とつ い て構成 され るべ きで あ るの に,従 来 の判 例 ・学 説 に は とか く認 識 の 不足 が あ った。

と くに 大 審 院 の 基 本 的 な 態 度 は 専 ら取 引安 全 の 思想 に 出 た 「一 般 へ の表 示」

(Erkぬru㎎andieOffentlichlseit;ErkliirunggegeniiberderAllgemeinheit)と い うフ ィク シ ョ ンを もってす る もので あ り,こ の 意 味 で は前 述 の 外 面 的利 益対 立 の み を眠 中 に 置 く一面 観 で あ った 。 これ に理 論 的 加 工 を施 した の が 法 外解 説 に

よ る も の で あ っ て,「 表 見 商 人 」 の 問 題 に 適 用 さ れ た 理 論 を こ こ で 応 用 す る 立 場 で あ る 。 勿 論,単 純 な 法 外 観 説 は な ぜ 法 外 観 が 卒 然 と し て 法 実 在 に 優 越 す べ

(1)拙 稿 「 ド イ ツ に お け る 「事 実 上 の 会 社 』 理 論 」(田 申 誠 二 博 士 退 官 記 念 論 文 集 所 収 の 予 定)。SpimsSmitis:MeFaktischenVertragsverh創tnissealsAuSdruckder

gewandeltensoZialenFunlrtionderRechtsinstitutedesPdva加 ㏄hts(1957),SS.107〜262、

(2)Staub:KommentarzumHGB,14.AUf1.(1932),Anhangzu§5,§123Anm.9.

拙 稿(書 評)「 ユ リ ウ ス ・ フ ォ ン ・ギ ー ル ケ 『商 法 お よ び 航 海 法 』 」,商 学 討 究2 巻4号(昭 和27),143頁 以 下 参 照 。

(2)

きか の理 由 を 明 らか に しえず,結 局 は 問 題 を もって問 題 に答 え る こ とに な る。

しか し;こ こで援 用 され るのは 法 外観 説 の成 熟 した考 え方 で あ っ て,そ れ は 法 外観 に対 す る保 護 価 値 あ る信 頼 を保 護す る とい うだ け で な く,法 規 に根 拠 を も

つ 与 因主 義 を加 味 した理 論構 成 であ る。 、

「事 実 上の 会社 」(faktischeGesellschaft)の 場 合 に,第 三 者 信 頼 の 保 護価 値 を 基礎 づ け る もの は流 通 場 裡 に お け る会 社 と しての 当事 者活 動 で あ るが,こ れ だけ で は なぜ 法 外観 が 法 実 在 に 優越 す べ き か の 解 答 に は な らない 。 とい うの は,そ こにあ る利 益 対 立 を軽 く片付 け去 って い る し,な され た表 示 の 原 因 を重 視 しな い で,表 示 が な され た とい う事 実 そ の もの を第 一 義 に 置い て い るか らで あ る。 こ こに与 因 主義 が 法 外観 説 の 重 要 な構 成 要 素 と して強調 され な けれ ぽ な

(1)

らな い 。そ れ は,前 述 した当 事 者 と債 権 老 との利 益対 立 を表現 す る ものに ほか な らない 。 しか し,今 一 つの利 益 対 立,す なわ ち各 個 の 当事 者 と残 余 の 当事 者 との利 益 対 立 は,与 因 主義 を 加 味 した 理 論構 成 に よって もな お 無 視 され て い

る 。 従 っ て,法 外 観 説 は 当 事 者 の 内 面 関 係 に お け る会 社 存 在 の 推 定 を 正 当 化 し え な い とい う欠 点 を 有 す る 。

以 上 が 法 外 観 説 に よ る解 明 の 試 み に 対 す る シ ミテ ィス の 批 判 で あ るが,シ ミ テ ィス は この 批 判 を 更 に 比 較 法 的 に 裏 付 け る も の と して ア メ リカ会 社 法 上 の 同 類 の 理 論 を 援 用 して い る 。 そ の 理 論 は 当 面 の 問 題 に つ い て 「事 実 上 の 会 社 」 (defacto◎cnporation;corporationdefacto)と 「禁 反 言 に よ る会 社(暇 疵 あ る 会 社)」(e(mporationbyestopPel;detectiveo(nperation)とVkう 二 つ の 場 合 を 区

別す るの で あ るが,こ の区 別 は 「禁反 言 に よ る会 社」 の法 理 に法 外観 説 と同 じ 難 点が あ る こ とを物 語 る。す な わ ち,禁 反 言 則 は 外 面 関 係 に お け る会 社 存 在 の 推 定 を理 由づ け るけれ ど も,同 じ推 定 を必 要 とす る外観 が 成 立 して い な い 内面

潤 係 に は及 び え ない 。 この 点 で,今 一 つ のい わ ゆ る 「事 実 上 の会 社 」 の場 合 に

ωMCyer:DasPUI)lizititsprinzip㎞DeutschenBiirgerliChenRecht(1909),S.96f.

拙 稿 「レ ヒ ツ シ ャ イ ン 法 理 の 課 題 」,商 学 討 究2巻3号(昭 和27),48頁 以 下 参 照 。 (2)B』11an血eonCorPorations(1946),P.68etseq〔1.(defactocorPoraticap.68et

seqq.,cotpOrationbyestopPelP.88etseqq.).

く3)Fletcher:CyclqpediaCorPotations,vol.8,§3905に よ れ ば 「禁 反 言 則 は,自 分 自 身 、 が 社 員 で あ り,従 っ て 会 社 の 不 存 在 を 知 っ て い る と 推 定 さ れ る 者 の 有 利 に は,援 用

さ れ え な い 」 と さ れ る 。

(3)

「事実 上の会社 」問題 と法外観 説(喜 多)‑105一

は,公 の秩 序 とい う一 般 的 な 法 理 に よ り内 面 関 係 で も 会 社 存 在 の 法 認 が 達 成 さ れ る わ け で あ る 。

しか し,果 して 法 外 観 説 は 後 者 の 場 合 を も カ バ ー で き な い ほ どに,禁 反 言 則 と全 く同 じ も の な の だ ろ うか 。 こ の 疑 問 に 答 え る 前 に,わ れ わ れ は シ ミテ ィス

くの

が 法 外 観 説 の 理 解 の た め に 引 用 し た 文 献 を 次 に 掲 げ な け れ ば な ら な い 。 1)'Rie烈er:Venirecontrafactumproprium(1912),S.166ff.

2):,,BerufungaufeigenesUrurecht̀̀,891herl177.

3)Wellspacher:VertrauenaufatissereTatbestiindeimBtirgerlichenRechte (1906).

4)Meyer,H.:PubliZitiitsPrinzip(1909).

5)Naendup:RechtscheinSforschungen(1910).

6)Jacobi:TheoriederWi皿enserk直rungen(1910),insb.S.31丑.

7):RechtderWe姻piere,inEhrenbergsHdb.Bd.W1(1917), insb.S.282ff.

8)Oertmann:,,G直mds翫zHcheszurLehrevomRechtsscheiǹ̀,95ZHR443.

9)Sotgia:ApParenzagiuridicaedichiarazioniallageneτalitき(1930).

ユ0)Hildehrandt,H.:Er泌nmgsha㎞ ㎎(1931),inSb.S.225ff.

11)Eichler:DieRe6htslehrevomVemauen(1950),S.8.

.12)Mttllereisert:VertiagSlehre(1947),S.183ff.

.13)Tasche:,,Vertr.agsverhiiltnisnachnichtiganVertragsschluss?̀̀;90JherJ 101.

14)Meyer,Hildegard:Beitrtigezuder'LehrevondernichtigenOHGunter besondererBeridksichtigUngdersoci6t6defait,Diss.Bre呂lau(1933).

15)Kleppe:DieAnfechtungdesBeitrittszuPerscna1。undKapitalgesellschaften desHandelsrechts,Diss.K61n(1936).

16)M6hler:DieNichtigkeitdesGesellschaftsv"ertragsbeideroffenenHandels‑

gesellschaft,Diss.TUbingen(1907).

17)Heゴbl9:,,DieUnanfechtbatkeitderAktienzeichnung̀̀,DeutscheIustiz

ωSimitis:a.a.0.,SS.77Anm.1,168Anm,109.

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(1936),S.1716.

18)Schlegelberger.guassowski:KommentarzumAktiengesetz,3.AufL(19 39),§2An瓜.10.

19)Peters:DieNichtiglgeitdesBeitrittszuVereh】enundGesellsChaftendes Hapdelsverkehrs,Diss.Greifswald(1938),S.60ff.

20)Htibner,H.:DerRechts▽erlustimMobiliarsachenrecht(1955),S.92ff.

21)Wyssa:Leseffetsex{㎝esdel,inscripti㎝auregiStreduco血mer(;, Lausarme(1950),pp.104,118etsuiv.

こ れ に よ っ て 見 る と,シ ミ テ ィ ス の 理 解 す る 法 外 観 説 が ど の 程 度 の も の で あ る か は ほ ぼ 想 像 で き る の で あ る が,と く に 注 目 さ れ る の は 当 面 の 問 題 に と っ て

最 も重 要 な るべ き文 献 が 一 つ 脱 落 して い る こ と で あ る 。 そ れ は,ネ ェ ンデ ュル

く  

ップの 「株 式 法 に おけ る法 外 観 効 果」 と題 す る一 論文 で あ る。 この論 文 は 現 行 株 式 法 制 定 以前 の もの で あ るが,会 社 法 に お け る法 外 観 説 の 展 開可 能 性 が シ ミ

テ ィスの 理解 す る よ り以 上の 範 囲 に及 ぶ こ とを実 証す る研究 と して,今 日 もそ の 理 論 的価 値 は 変 わ らない で あ ろ う。わ れ わ れ の知 るか ぎ りで は,こ れ まで の と ころそ れ の 内容 は まだわ が 国 に 紹 介す らされ てい ない よ うで あ る。

∬ ネ ェ ン デ ュ ル ッ プ の 立 場

法 外観 主義 は 全 法 秩 序 を 貫 くとい う こ とが 知 られ てか ら,既 に年 久 しい 。 し か し,個 々の法 域 に おい てそ れ の 展 開 を実 証 す る こ とは 今 日な お未 完 の課 題 で あ って,会 社 法 の領 域 もそ の 例 外 で は な い 。 ネ ェ ソデ ュル ップの論 文 が 恐 ら く

この法 域 に おけ る唯一 の ま と まった研 究 で あ ろ う。勿 論,こ れ とて も会 社 法 の 全 面 にわ た っ て法 外 観説 を 展 開 した もの で な く,単 に株 式 法 の一 部 分 に つ い て そ れ を企 図 した に とど まる。 けれ ど も,そ こに は いわ ゆ る広義 の法 外観 概 念 を 唱導 す る彼 の 原理 的 立場 が そ の 慎 重に 考 え抜 か れ た独 特 の用 語法 を もっ て貫 徹 され てい るの で,論 述 の範 囲は 株 式 法 の 局 面 に限 られ てい て も,会 社 法 の全 般

(1)Naendrup:"RechtschelnswirkungenimAktienrechち"ArbeitenzumHatidelse,(}ewerbe

unddゑndWirts(haftsrechtNr.62(1931),SS.825〜952.ネ ェ ン デ ュル ップ の 法 外 観 説 に 関 す る 全 般 的 な 理 解 は,既 に わ れ わ れ が10年 前 に 試 み た と こ ろ で あ る 。 拙 稿 「レ

ヒ ツ シ ャイ ン 法 理 の 構 成 」 現 代 法 学 の 諸 問 題(昭 和27),69頁 〜103頁 。

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「事実上の会社」問題 と法外観説(喜 多)‑107一

に及 ぶべ き甚 だ示 唆 的 な もの が 含 まれ て い る。彼 は この よ うに 広義 の法 外 観 概 念 を 唱導 した た めに,外 延 の 拡 張 に よ り内 包 を乏 しか ら しめ る よ うな解 釈 学 上

(1)

無価 値 の説 を なす 者 と して非 難 され た の で あ るが,こ の 非難 は多 分に 誤解 に も とつ くもの の よ うで あ る。

(2)

彼 の 用 語 法 に よれ ば,解 釈 学 上 価 値 あ る 法 外 観 概 念 は 二 種 に 大 別 され る 。 一 つ は 「私 人 に 作 用 す る 法 外 観 」(derprivatwirksameRechtschein)で あ り,今 一 つ は 「官 庁 に 作 用 す る法 外 観 」(deramtswirk$ameRechtschein),と くに 訴 訟 に お い て 裁 判 官 に 対 し作 用 す る 権 利 推 定 で あ る 。 区 別 の 便 宜 上,前 者 は 「法 外 見 」(Rechtsanschein),後 者 は 「法 実 在 ら し さ」(Rechtswahrscheinlichkeit)と 呼 称 す る 。 狭 義 に お い て 法 外 観 と い う と きは 前 者 を 指 す の で あ る が,こ れ の み を 法 外 観 と し て 認 め る一 般 の 法 外 観 論 者 と異 っ て,ネ ェ ンデ ュル ップは 後 者 を も

含 めた 広義 に おい て 法外 観 の語 を用 い る 。 マ イアは この 用 語 法 を 「法 外 観 とい う実 体 法 的 『現 象』 と手 続 法 的領 域 に 意 義 が あ る推 定 との あい だ の 混 同 を招 来

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す る虞 れ が あ る」 との 理 由 で,推 賞 に値 い しな い と考 え るも しか し,上 に提 唱 され た 呼 び 分 け か た に よれ ば,そ の 危 険 は な い 。

これ を ドイ ツ民 法 典 に つ い て例 示 す れ ば,932条(動 産 占有 に よ る善 意 取 得) は 法外 見 に,1006条(動 産 占有 に よ る権 利推 定)は 法 実 在 らしさに関 す る。 ま

た,892条(不 動産 登 記 に よる善 意取 得)は 法 外見 に,891条(不 動産 登 記 に よ

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る権 利 推 定)は 法 実 在 ら し さに関 す る。わ が 民 法典 上は,動 産 占有 に つ い ては

192条(善 意 取 得)及 び188条(権 利 推 定)の 規 定が あ るけ れ ど も,不 動産 登 記 に つい ては 上 の よ うな規 定 が ない 。 しか し,こ れ に つ い て も権 利 推 定 だけ は 許

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され る もの と一 般 に 認 め られ て い る 。 こ の よ うに,法 外 見 と法 実 在 ら し さ と は

(1)Oertmann:,,GrundSatzlicheszurLchrevomR㏄htsschein,"ZHR95(1930),S.457.

(2)Naendrup:RechtscheinsforschungenI(1910),S.3ff。;,,Verjah㎜ga】sRechtscheins‑

wickung,t{JherJ75(1925),SS.237〜332;,,DieErsitzungalsR㏄htschdnswirkung,̀̀

ReichsgerichtspraxisimDeHtschenR㏄htslebenBd.3(1929),S,35ff.

{3)こ の 点 で,ネ ェ ン デaル ヅ プ に 追 従 す る の は,Th6ne:Der6ff㎝tl.Glaubed.Han‑

delSregiSters,MUnsterischeDissertation(1911),S.13;KuttenerinJherJ61,S.169

・f.;EhrenbergsHdb.1(1913) ,S.622;OttoFischerinFische卜H6nleBGB13.Auf1.

§1964A.4.

(4)Meyer:。HandelSregistererkltirungundWlderrufderProlrura,"ZHR8i(1917),S.407.

{5)Naendrup:,,DieErsitzu㎎aユsRechtscheinsWirkun9,̀̀S.35.

(6)石 田 文 次 郎 ・物 権 法 論(昭 和17),131頁 。我 妻 栄 ・物 権 法(民 法 構 義L昭 和17),119頁

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必 ず しも相 伴 うもの では ない が,大 多 数 の場 合 に は併 存せ しめ られ て い るの で あ り,た とい両 者 が併 存せ しめ られ て い な い場 合 で も,前 者 だ け が独 立 に 認 め られ る とい う こ とは な い 。前 者 が 許 容 され る前 提 と しては,必 ず 後 者 が 存 在 し な けれ ぽ な らぬ の で あ る 。

納富 博 士 に よれ ば,「 推 定 は 法が 客 観 的基 礎 に 附 着 せ しめ た 効 力 で あ り,法 外 観 は之 に 反 し,客 観 的 基 礎 に 基 きて善 意 者 との間 に 於 て直 ち に 発 生す る もの

(1)

で あ る」 と され るが,こ れ は後 者に のみ 発 生 的理 由 づ け を施 し,前 者に はそ れ を拒 否 す る こ とに よって,両 者 の差 異 を 意 識的 に 浮 き立 たせ るた め の説 明 と し て しか 受 取 りえ ない よ うで あ る。権 利 推 定 も また 実 体 法 上の 法 外 観 と同 じ外部 的事 実 か ら発 生 す るの で あ って,こ の こ とは両 老 の 混 同 を恐 れた マ イア で も認 め て い る。す なわ ち,「 権 利 推 定は 法 外 観 の手 続 法 的 側 面 と称 す る」 ことが で

き る とい うの で あ る が,こ こに 法 外 観 とは ネ ェ ソデ ュル ッ プの い わ ゆ る法 外 見 の こ と で あ る 。 法 外 見 と法 実 在 ら しさ とが 発 生 の 淵 源 を 同 じ くす る こ とは,狭

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義 の法 外 観 概 念 を擁 護す るエ ル トマ ソで す ら認 め て お り,両 者 は た だ作 用 の 対 象 を異 に す る と ころに,法 外 観 の種 別 を なす の で あ る。

法 外 見は 私 人に 作用 す る法 外 観 と して私 人 の 信頼 を基 礎 づけ るが ・ これ に対 し法 実 在 ら しさは官 庁 に 作 用 す る法 外 観 と して官 庁 の判 断 を基 礎 づ け る 。前 者 に おい て は 信 頼 の 保 護が,後 者 に お い ては 判 断 の 確 定 が 要 求 され る か らで あ る。既 に 一 言 した 通 り,法 は前 者 だ け を独 立 に認 め る こ とな く,前 者 を 認 めれ ぽ必 ず そ の前 提 と して後 者 を も認 め るの で あ るが,逆 に 後 者 を 認 め るか らとい って必 ず し も前 者 の許 容 を 前 提 す る こ とは な い 。い い か えれ ば,後 者 は それ 自 体 独 立 に 法 認 され る こ とが あ る 。 これ は 法 の 段 階 的構 造 に 内 在 す る論 理 的 必 然

くの

で あ って,こ の意 味 で は マ イ アが 「両 者 は 双方 的 に 相 伴 う」 と述 べ て い るの は 誤 りで あ る。会 社 法 では 他 の 法域 に お け る と同 じ く,主 と して は 法 外 見 を取 扱 い,従 ってそ の前 提 と して の法 実 在 ら しさに も関 係 す るが,こ れ とは 別途 に 独 立 の法 実 在 ら しさを も認 め て い る。

(1)納 富 義 光 ・手 形 法 に 於 け る 基 本 理 論(昭 和15),345頁

(2)MCyer:VomR㏄htsscheindesTodes(1912),S.ユ2ff.und7HR81,S.407.

(3)Oertmanr1:a.a.0.,S.455.

(4)Meyer:d冠

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「事実上の会社」問題 と法外観説(喜 多)‑109一

そ こで,両 者 に つ い て 法 外 観説 が 展 開 され ね ぽ な らぬ ので あ るが,そ の 展開 の 仕 方 は両 者 の種 別 に よ り異 る と ころが あ るのは 当然 で あ る 。 この 点 は各 適 用 例 に つ い て 明 らか にす る と して,こ こでそ の適用 範 囲 の体 系 を示 せ ぽ,次 の通 りで あ る 。お よそ会 社 は そ の主 体 的基 礎 で あ る人格,そ の 人 的 存在 の基 礎 で あ る社 員,そ の 物 的 存在 の基 礎 であ る財産,及 びそ の 活 動 の基 礎 で あ る機 関 とい

くり

う四 つ の要 素 か ら構 成 され る。会 社 法 に お け る法 外 観 も,こ の よ うな角 度 か ら 体 系的 に 分類 す る こ とが で き る。す なわ ち,(1)人 格 につ い ては 会 社 存 在 又 は 不 存在 の 外 観,(2)社 員 に つ い ては 社 員 権 存 在 又 は保 持 の外 観,(3)財 産 に つ い て は会 社 財 産 の外観,・(4)機 関 につ い ては 会社 機 関 の 外観 が あ る。 これ らの うち,ネ ェ ンデ ュル ップが 取 扱 うの は 会 社 存 在 又 は 不 存在 の外 観 と機 関 の外観

(2)

とで あ り,し か も株 式 会社 に つ い て だけ で あ るが,本 稿 で は株 式 会 社 存 在 の 外 観 のみ を取 り上げ れ ば 足 りる。

m表 見株式 会社 の法 理

「会 社 存 在 の 外 観 」(derScheinderGesenschaftsexietenz)と して 論 じ られ る の は い わ ゆ る 「事 実 上 の 会 社 」 問 題 で あ る が,ネ ェ ンデ ュル ッ プは 「事 実 上 の 会 社 」 とい う 法 理 論 上 絶 望 的 と も 見 え る 表 現 を 避 け,「 表 見 株 式 会 社 」 (Schein・Aktiengesellschaft)と い う法 外 観 説 に 相 応 しい 用 語 に よ っ て い る 。 「事 実 上 の 会 社 」 とい う と,い か に も 「法 律 上 の 会 社 」 で な い か の よ うな 印 象 を 与 え るが,事 実 上 の 会 社 も ま た 法 律 上 の 会 社 で あ る こ とを 注 意 す べ き で あ る 。 こ

くの

の こ とは,ア メ リカ 会 社 法 上 も認 め られ て い る と こ ろ で あ る 。 近 時,事 実 上 の

(1)米 谷 隆 三 ・喜 多 了 祐 ・商 法 の 理 解 皿会 社 法(昭 和28),7頁 。

(2)NaeBdrup;"RechtscheinswirkungenimAktienr㏄ht,"S.826.株 式 会 社 法 に 法 外 観 問 題 が 山 積 す る こ と は,既 に エ ル トマ ン が 指 摘 し た と こ ろ で あ る 。 ネ ェ ン デ ュ ル ッ プ の 本 論 文 は こ の 言 葉 に 刺 戟 さ れ て 書 か れ た も の の よ う で あ る 。Oertmam:a.a.0,,

S.485.

㈲Simitis:a.a.0.,S.172.こ こ で 用 語 上 区 別 す べ き は,corPorationdejureとcorP(y rationinlawと で あ る 。corporationdejuceは 法 定 要 件 の 実 質 的 遵 守(substantialcom・

pliance)を 特 微 と す る 点 で,そ れ の 単 な る 外 形 的 遵 守(colorablecomPliance)を 特 徴 と す るCorporationdefactoと 対 立 す る 概 念 で あ る が,両 者 と もcorporationinlaw な の で あ る 。BallantineonCorpOrati(ms,P.76etseq.菅 原 菓 志 「ア メ リ カ 会 社 法 に お

け る 事 実 上 の 会 社 理 論 」,法 学20巻4号(昭 和31),103頁 以 下 参 照 。

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会 社 を 真正 の会 社 な み に 法的 に承 認 す る ことが益 々 自明 とな りつ つ あ る こ とを 思 えぽ ・ 「事 実 上 の会 社 」 とい う表現 は 一種 の形 容 矛盾 です らあ る。 この 点で ネ ェ ソデ ュル ップの用 語 法 の 方が 適 切 で あ る と考 え られ る。 わが 国 で も,「 事 実 上の会 社 」 とい う表 現 は学 問 上の 通用 語 とな って い るカ{?ま れ に は 「仮 装 会 社 」 又 は 「表 見会 社」 の語 も使 用 され る こ とが あ る よ うで あ る。

しか し・ 問 題 は 用 語 よ りも,そ れ の 内 容 を 構 成 す る法 理 に あ る。 わ が 国 で は 事 実 上 の会 社 が 「設 立 無 効」 制度 の なか に 無効 の 原因 ・主 張 ・効果 を制 限 す る もの と して 反射 的に 認 識 され る と ころか ら,こ の制 度 の 主要 な眼 目 と して概 ね 三 つ の ものが あ る と説 かれ て い る。第 一 は,法

く  

律 関 係 の画 一 的 確定 の要 求 で あ る 。無 効 の 判 決 が対 世 的 効 力 を もつ の は,こ の要 求 に 応 じるた め で あ る 。第 二 は,既 存 の状 態 を尊 重す る立 て前 で あ る 。無 効 の 原 因 を圧 縮 し,ま た そ の範 囲 内 に お い て も無 効 の 主張 を可 及 的 制 限 す る よ うに,主 張 方 法 ・提 訴 権 者 ・出 訴 期 間 を規 定 す るの は,そ の ため で あ る 。第 三 は,外 観 に 対 す る信 頼 保 護 の要 請 で あ る 。無 効 な 会社 を将 来 に 向 って のみ 解 体 消 滅せ しめ る よ うに,遡 及 的 無効 を阻 止す るの は,そ の た め で あ る。第 一 の要 求 は 団 体 的存 在 として の会 社 の性 質 か ら くる もの で あ るが,第 二 ・第 三 の主 義 は 法 的 安 全 の二般 論 で あ って,制 度 の 会社 法 的 理 由づ け とな るに は 尚若 干 の距 離 が あ る よ うで あ る。

そ こで,以 下 に ネ ヱ ソデ ュル ップの いわ ゆ る表 見株 式 会社 の 法 理 を 考察 しよ うと思 うの で あ るが,前 に も一 言 した 通 り,彼 の所 説 は 現 行 の ドイ ツ 株 式 法 (Aktiengesetz)制 定 以前 の もの で,商 法 典 中 の 株 式 会社 に 関 す る諸 規 定(HGβ ・ Buchr[.AbsChn.皿.)に も とつ い て い る関 係 上,現 行 法 の 立場 か ら見 て無 用 と

思 わ れ る論 述 も含 まれ て い る。そ の よ うな部 分 は,以 下 の本 文 か ら省 い て注 に 略 記 す る こ と とした 。 尚現 行 法 との対 比 の 便宜 上,商 法 典 中 の 旧規 定 に 相 当 す る株 式 法 規定 を 注 記 して おい た が,周 知 の通 り,目 下 西 ドイ ツで は株 式 法 の改

(1)例 え ば,田 中 誠 二 ・新 版 会 社 法(昭 和36),120頁 。 西 原 寛 一 ・会 社 法(商 法 講 義

H,昭 和33),26頁 。 判 例 で は,下 級 審 な が ら 「本 訴 請 求 カ … … 事 実 的 会 社 ノ存 在 ス ル コ ト ヲ 認 メ得 ラ レ サ ル 事 件 ナ ル カ故 ニ … … 」(傍 点 一 筆 者)と す る 昭 和16年7月 7日 甲 府 地 民1判 ・昭 和15年(ワ)52号,新 聞4730号12頁,評 論31巻 商 法24頁,新 報629号11頁 。

(2)鈴 木 竹 雄 ・新 版 会 社 法(法 律 学 講 座 叢 書,昭 和36),68頁 。 津 田 利 治 「会 社 の 設 立 無 効 」,株 式 会 社 法 講 座1巻(昭 和30),311頁 。

(9)

「 事実上の会社」問題 と法外観説(喜 多)‑111‑

(1)(2)

正 事 業 が 進 行 中 で あ り,既 に 報 告 者 草 案(Referentenentwu「f)及 び そ れ に も と

つ く政 府 草 案(RegierungsentWunf)の 発 表 を 見 て い る の で,こ れ ら の 相 当 規 定 を も 考 慮 に 入 れ な け れ ぽ な らな い 。 但 し,今 度 の 改 正 は 当 面 の 問 題 に 関 す るか ぎ り,さ した る変 更 で は な い 。 い わ ば,字 句 の 修 正 程 度 で あ るが,修 正 理 由 を 見 よ う。

Aネ ェ ソ デ ュ ル ヅ プ の 所 説

(1)無 効 の訴 に よって排 除 され る法 外観 。

設 立 行為 に 本質 的 瑠 疵 が あ りなが ら商 業登 記 簿 に 設 立 登 記 が な され た株 式 会 社 に つ い て は,会 社 存 在 の 単 な る外観 が 発生 す るだ け で あ る。そ れ は 表 見 上の 婚 姻(Scheitehe),と くに 民 法 典1317条 に 規定 された 婚 姻 締結 の方 式 を遵 守 し

(5)

ない で婚 姻 登 記簿 に 登 記 され た 仮装 婚 の場 合 に 類 似 す る。 この場 合 に は,よ り 強 度の 無 効 原 因 を含 む 不 成 立婚(Nichtehe)の 場 合 と異 って,官 庁 に よ り又 は 一 定 の 私 的 権 利 者 に よ っての み 無 効 の 確 認が 訴 求 され うるの で あ る。登 記一され た表 見 株 式 会社 の 場 合 も また これ と 同 じで あ って,そ の 点 で 登 記 され ない 株 式 会 社 の場 合 と異 る。後 者 の 無効 は 不 成 立 婚 の 無 効 と同 じ く,通 常 の確 認 訴訟 (民f・;「za256條)に よ って で あれ,任 意 の 訴 訟 に 附随 して で あれ,何 人 も これ を 主張 す る ことが で き る。 仮装 婚 及 び表 見株 式 会社 の場 合 に それ が で きない 理 由は,官 庁 に作 用 す る法 外 観,す なわ ち裁 判官 に対 して作 用 す る法 外 観 に あ るの であ っ て,こ の 法 外 観は 特 別 な 手 続 に よっ て初 め て 排 除 され る の で な け れ ぽ な らな い 。そ の手 続 が 無効 の 訴 で あ る。

(1)拙 稿 「 ド イ ツ 株 式 雲 改 正 の 動 向 」,一 橋 論 叢43巻1号(昭 和34),85頁 以 下 。 (2)Ver6ffentlichtdurchdasBundesjustizministerium,1958.

(3)DeutscherBundestag,4.Wahlped(最e(DrucksacheIV1171),1962.

(4)「 無 効 の 訴 」(Nichtigkeitsklage)と い う 語 は 民 法 典1329条 に も用 い ら れ て い る の で, 類 比 に 便 で あ る が,現 行 の 株 式 雲216条,今 度 の 報 告 者 草 案254条 及 び 政 府 草 案264 条 で は 「無 効 宣 言 の 訴 」(KlageaufNichtigerkltirung)と な っ て い る 。 こ の 方 が 表 現

と し て は よ り 明 瞭 で あ る 。

(5)Naend則P:a.a.0.,S.827Anm.12に よ れ ば,ネ ェ ン デ ュ ル ヅ プ が こ の 類 比 に 着 想 し た の は,法 外 観 説 の 熱 心 な 主 唱 者 で あ っ た フ ィッシ ャ に 負 う と こ ろ が 大 の よ う で あ る 。 民 法 典1329条 に よ る 無 効 の 訴 が 仮 装 婚 の 法 外 観 を 排 除 す る こ と を 目 的 と す る

もの で あ る こ と は,既 に フ ィッシ ャが 説 い た と こ ろ で あ る 。Fisciher・Henle:Handausgabe zumBGB,13.AufL,§1324A.7.

(10)

無効 の訴 に よ って 仮装 婚 の無 効 を主 張す る民 法 典1329条 所 定 の権 利 は,真 実 一 と矛 盾 す る虚 偽 の 外 観 を排 除す る権 利,,つ ま り真実 を要 求 す る権 利 で あ るが, この権 利 は 国 家 に も私 人に も帰 属 す る。 国家 は そ れ を検 察 官 に よ り行 使せ しめ

(1)

るの で あ り,ま た そ れ を 有 す る私 人 は 各 配 偶 者 で あ る(民 離銭6ε2條)。 表 見 株 式 会 社 の場 合 に も,国 家 と私 人 とが 真 実要 求 の権 利 を もつ 。 しか し,国 家 は この場 合

(2)

に 訴 訟事 件 と して では な く非訟 事 件 と して,し か も登 記所 で あ る裁 判所 及 び そ の 上 級 に あ る 地 方 裁 判 所 に よ りそ れ を 行 使 せ しめ るの で あ っ て,こ れ らの 裁 判 、 所 は 非 訟 事 件 手 続 上 の 定 め る と こ ろ に従 い 表 見 株 式 会 社 を 無 効 な もの と して 職.

権 に よ り抹 消 す る こ とが で き る(非 訟怯M2條 【 げ144條)。 勿 論,私 人 が 真 実 要 求 の 権 利 を 行

(8)

使 す る と きは,無 効 の訴 に よ る。商 法 典309条 に よれ ば,こ の 訴 を提 起 で きる 私 人は 各 株 主,取 締役 員 及 び監 査 役 員 であ る。

無効 の訴 又 は 職 権 抹 消 に よって 会社 存 在 の法 外 観 が排 除 され るの は,厳 密 に ・ い うと,無 効 宣 言 の判 決 又 は 職 権抹 消 の 決定 に も とづ き会 社 の 無効 が 商 業登 証 簿 に 登 記 され た と きで あ るか ら(商 怯典311條i項),そ れ まで は 設 立行 為 に 本 質 的 暇疵 が あ りなが らも商 業登 記 簿 に 登 記 され た株 式 会社 は 真実 に 存在 す る よ うな法 外観 、 を具 備 す るの で あ る。 反 面か らい えぽ,真 実 に は株 式 会 社 は 存在 して い ない の

1(4)

で あ って,こ の ことは商 法 典 起 草 者 た ちの 言葉 に も窺 わ れ る 。

(1)ネ ェ ン デ ュ ル ッ プ は 事 情 に よ って は 第 三 者 も ま た 提 訴 権 が あ る こ と を 附 記 し て い る が,こ れ は 重 婚 の 場 合 に 前 婚 の 配 偶 者 が 提 訴 権 を 有 す る こ と だ け を指 す の で あ っ て,そ れ 以 上 の 意 味 は な い 。 婚 姻 法38条 参 照 。Naendrup:a.a.0.,S.827.

(2)西 ドイ ツ で は,今 日 も裁 判 所 が 非 訟 事 件(A㎎e】egenheitenderfreiwilligenGerichtsbar‑' lgeit)と し て 登 記 事 務 を 取 扱 って い る。

(3)本 条 に 相 当 す る 株 式 法216条 で は,出 訴 期 間 を登 記 後5年 と 規 定 し て い る の で, 出 訴 期 間 を 経 過 し て 無 効 の 訴 が 提 起 で きな く な っ て も,職 権 抹 消 は 妨 げ な い 。 と こ ろ が,ネ ェ ン デ ュ ル ヅ プ の 説 明 で は,職 権 抹 消 は 無 効 の 訴 が 提 起 で き る 諸 要 件 の 具 わ って い る場 合 に 限 る と して い る。 こ れ は 出 訴 期 間 の 制 限 が な い 旧 法 の も と に お け る 説 明 と し て は わ か らな く は な い が,現 行 法 の 立 場 か らは 許 され な い の で,本 文 で' は 削 除 し て お い た 。 と くに,株 式 法216条 皿項,報 告 者 草 案254条 皿項,政 府 草 案 264条 皿項 参 照 。Naerxlrup:d》enda.・

(4)DenkSchriftS.184で は,無 効 判 決 は 証 拠 法 上 の 意 義 を し か 有 し な い の で あ っ て,

「判 決 の 登 記 あ る ま で 会 社 は 正 式 に(zuRecht)存 在 す る とは,決 し て 認 め られ え な い 」 と説 明 して い る が,こ れ は 会 社 が 無 効 判 決 の 登 記 前 に お い て 真 実 に は 存 在 し て い な い こ と を 物 語 る に ほ が な らな い 。 又,更 に 会 社 が 「そ れ に も拘 わ らず,清 算 に 関 す る か ぎ りで,或 る程 度 の 法 的 存 在 を 認 め られ る 」 こ と が 述 べ られ て あ る が, これ は 会 社 存 在 の 法 外 観 の 効 力 を 念 頭 に 思 い 浮 べ た 言 葉 で あ る 。 ネ ェ ン デ ュ ル ヅ プ 菅

(11)

「事実上 の会 社」問題 と法外 観説(喜 多)‑113一 ω

② 瑠疵 の 治癒 に よって 転 換 され る法 外観 。

表見 株 式 会社 の株 主 は,今 一 つ の全 く異 った 真実 要 求 の権 利 を も ってい る。

そ れ は,会 社 の 表 見的 存 在 を 真 実 の存 在 へ 転 換 す る ことが 問題 に な っ てい る場 合 であ る 。 この こ とが 可 能 な のは,設 立行 為 の本 質 的 暇 疵 が 重 大 な もの で な い

と きで あ る。重 大 な 本 質的 暇疵 とい うの は,資 本 の額 又 は 各株 式 の金 額 に関 す

(2)

る もの で あ っ て(灘 講),そ れ らは治 癒 で きな い 。 それ らの一 つ が 存在 す る と きは,株 式 会社 の表 見的 存 在 は定 款 の変 更 又 は総 株 主 の 同 意 を も って す る定 款 の補 完 に よっ て も真 実 の存 在 に転 換 され え ない 。 む しろ,そ の場 合 には 新 た に 会社 を設 立 す るほか は な い 。 これ に 反 して,重 大 で ない 本質 的 暇疵 が 問題 に

(8)

な っ て い る の で あれ ば,定 款 の 変 更 に 関 す る諸 規 定(商 怯典2?5條 鮨21了 條)に 従 う総 会 の 決 議 に よ っ て そ れ らを 治 癒 す る こ と が で き る(商 怯奥310條 前段)。そ の 理 由 は,定 款 変 更 に よ って 暇疵 の 治癒 を 行 な うべ き総会 の 決議 に 当 り,こ の 決 議 につ い て 真実 を要

(4)

求 す る新 しい権 利が 株 主 た ちに 与 え られ る ことに あ る。

幹 に よ れ ば ,こ の 法 外 観 を初 め て正 し く認 め た学 者 は マ ィ アで あ る とい う。

HerbertMeyerinZHR81,S.393.Naendrup:a.a.O.,S.832Anm.23.

(1)「 暇 疵 の 治 癒 」(日eilu㎎vonMangeln)と い う語 は,現 行 の 株 式 雲217条 の 見 出 し で は 「無 効 の 治 癒 」(HeilungderNichtigkeit>と な っ て い る と こ ろ の もの で あ る。 し か し,実 際 に 治 癒 され る の は 判 決 の 既 判 力 と と もに 初 め て 開 始 す る 無 効 で は な くて, 無 効 を結 果 と し て 伴 い う る 毅 庇 で あ る とい う理 由 か ら,報 告 者 草 案255条 及 び 政 府 草 案265条 は 前 者 の 表 現 に 見 出 し を 改 め た 。ErlauterndeBemerkungenzumReferen‑

tenentMrurf,zuE§255;BegrUndungzumRegie㎜gsentwurf,zu§265.

(2)本 号 に 相 当 す る 現 行 の 株 式 法16条 皿項3・4号 で は,こ の ほ か に 「数 種 の 株 式 が 序 す る と きは,各 株 式 の 種 類 」 を 加 え る。 しか し,株 式 の 券 面 額 は 均 一 で あ る こ と を 要 しな い 関 係 上,報 告 者 草 案 及 び 政 府 草 案 の20条 皿 項4号 は 「各 券 面 額 の 株 式 数 」

を も明 示 させ る こ と と し た 。  

(3)現 行 の 株 式 法145条 〜148条 に 相 当 す る 。 と くに,登 記 が 定 款 変 更 の 決 議 の 効 力 要 件 で あ る こ と を 注 意 す べ きで あ る。 報 告 者 草 案166条 は 株 式 法148条 を 踏 襲 し て,こ の 点 不 変 で あ る が,政 府 草 案169条 は 従 来 の 「登 記 す る ま で は,そ の 効 力 を 生 じ な い 」 を 改 め,「 登 記 し て 初 め て 有 効 とな る」 と し た 。 こ れ は,従 来 の 表 現 が 登 記 さ れ た 定 款 変 更 の 遡 及 効 を排 除 す る と解 せ ら れ る余 地 が あ る 点 を 恐 れ た もの で あ る 。

同 条 は 遡 及 効 に つ い て は 何 も 規 定 し て い な い の で あ っ て,遡 及 効 が あ るか ど うか は 一 般 原 則 に よ っ て 決 す る の で あ る。ErltiutemdeBemerk.z.Referentenentwurf,zuE

§166;Begrdnd.z.Regierungsentwurf,zu§169。 環 疵 治 癒 の 場 合 に つ い て は,次 頁 の 注(2)参 照 。

(4)ネ ェ ン デaル ップ は 更 に 商 法 典310条 後 段 「総 会 招 集 の 方 式 に 関 す る定 款 の 定 め に 暇 疵 が あ る と き は,総 会 の 招 集 は 会 社 所 在 地 の 商 業 登 記 簿 に な す 登 記 の 公 告 の た め に 定 め られ た と 同 一 の 新 聞 紙 上 に 掲 載 す る こ と に よ っ て 行 な わ れ る 」 とい う規 定 に つ い て,こ れ を 総 会 招 集 の 公 告 に よ っ て 真 実 を要 求 す る 株 主 の 権 利 を 認 め た も の と 愚

(12)

元 来,定 款 の 必 要 的 内 容 に 暇疵 が あれ ぽ,株 式 会社 は全 く成 立 しなか った の で あ る 。従 っ て,こ の 会 社 に つ い て は 定 款 もな い し,総 会 も な い し,更 に 定 款 変 更 の総 会 決 議 も存 しない 。す べ て は,む しろ前 述 した無効 の訴(又 は職 権 抹 消)に よって排 除 され るべ き法 外 観 に す ぎな い 。 この よ うな状 態 の も とで,定 款変 更 の総 会決 議 が 治 癒 的効 力 を 生 じるな らぽ,1真 実 を要 求す る株 主 の権 利 は 却 って侵 害 され る筈 で あ る。 しか し,お よそ 真 実要 求 の権 利 には 二 種 あ り,一 つ は 他 人に 覆 い か ぶ さ る虚 偽 の 外観 を払 いの け る権 利(外 面的 真 実 を要 求 す る 権 利)で あ り,今 一 つ は 自分 に 覆 いか ぶ さる虚偽 の 外観 を払 い のけ る権 利(内

(1)

面 的 真実 を要 求 す る権 利)で あ る。前 者 は先 述 の商 法 典309条 に よ り各 株主 に 与 え られ てい る もの で あ り,燧 か に こ こで は侵 害 され る。 しか し,後 者 は ここ で侵 害 され る ど ころか,商 法 典310条 に よ り株 主 た ち に と くに 与 え られ るの で

あ る 。

この権 利 は第 一 に,さ きの権 利 侵害 か ら絶縁 され てい なけれ ば な らな い 。そ の ことは310条 の文 面 に 現 わ れ てい な いが,当 然 自明 で あ る。第 二 に,こ の権 利 は 定 款変 更 に関 す る諸 規 定 が 遵 守 され るか ぎ りで,あ た か も表 見株 式 会 社 が 真 実 の存 在 を 獲得 した か の よ うに,株 主 た ち に認 め られ る。 これ が,定 款 の必 要 的 内容 に つ い て 存 す る重大 で ない 本 質 的 暇 疵 は 「定款 の変 更 に 関 す る本 法 の

く  

諸 規 定 に 従 う 総 会 の 決 議 に よ っ て 治 癒 す る こ と が で き る 」 と い う 同 条 前 段 の 意

eeSt明 し て い る 。 これ は ,商 法 典182条1項5号 が 総 会 招 集 の 方 式 を も定 款 の 必 要 的 内 容 と し た か らで あ って,現 行 法 の 立 場 か らは 一 応 無 用 の 説 明 で あ る 。 株 式 法16条K 項 は 総 会 招 集 の 方 式 を 定 款 の 必 要 的 内 容 か ら削 除 し た 以 上,同217条(商 法 典310条 に 相 当)も 商 法 典310条 後 段 に 相 当す る 規 定 を 欠 く こ と に な った の で あ る。 け れ ど も, 後 段 規 定 を 説 明 す る の に ネ ェ ン デ ュ ル ップ が 展 開 した 法 理 は 基 本 的 に は 前 段 規 定 (株 式 法217条 に 相 当)の 説 明 に も応 用 で き る と 思 うの で,以 下 に は そ れ を 応 用 し て 解 説 す る 。Naendrup:a。a.0.,S.828.

(1)「 外 面 的 真 実 を 要 求 す る権 利 」(R㏄htaufaussereWalirheit)と 「内 面 的 真 実 を 要 求 す る権 利 」(RechtaufimereWahrheit)と の 区 別 は,動 産 の 善 意 取 得 の 場 合 に お け る よ うな 「他 人 権 利 の 法 外 観 」(R㏄htscheinfremdenRechtes)と 取 得 時 効 の 場 合 に お け る よ う な 「自 己 権 利 の 法 外 観 」(R㏄htscheineigenenR㏄htes)と を 区 別 し た

ネ ェ ン デ ュ ル ッ プ 独 特 の 立 場 に 由 来 す る もの と 思 わ れ る 。Naendrup:,,DieErsitzung alsR㏄htscheinswirkung,ccS.35.

② 暇 疵 の 治 癒 は 遡 及 的 効 力 を 有 し,会 社 は 初 め か ら有 効 に 存 在 す る こ と と な る 。 こ の 規 定 に 相 当 す る 株 式 法217条 の 文 面 は や や 異 り,と くに 「定 款 変 更 に 関 す る諸 規 定 遵 守 の も と に 治 癒 す る こ と が で き る 」 と な っ て い る 点 が 注 目 され る。 「本 法 の 」

が 脱 落 し た と こ ろ に,問 題 が あ る。 報 告 者 草 案 の 相 当 規 定255条 は 見 出 し を 変 更 しee

(13)

「 事 実上 の会社」 問題 と法外観 説(喜 多)

一115‑一

味 で あ る 。そ の趣 旨は 明 らか に,本 来 は 不成 立 で あ る株 式 会 社 の 登 記 に よ る法

(1)

外 観 に対 して信 頼 す るの を 常 とす る株 主 た ち を 保 護 す べ きだ とす るに あ る 。 こ の保護は,定 款変 更に関す る諸規定遵守の もとに総 会決議 の実在性を要 求す る

権 利 が 株 主 た ち に 与 え られ る こ とに よ っ て,行 な わ れ る 。 そ の 意 味 で は,あ た

か も表見株式会社が定 款変 更を決議すべ き総 会を通 して初 めて真正 の株式会社 に転 換 され るか の よ うに では な く,そ れ が 真 実 に 存在 す るか の よ うに,真 実要 求 の権 利 が株 主 た ち に 与 え られ るの で あ る 。

こ こで,会 社存 在 の法 外 観 に対 す る信 頼 の保 護 が 真 実 要 求 の権 利 に よ って実 現 され るの は,注 目す べ き偶 然 の 一 致 で あ る。す なわ ち,真 実 要 求 の権 利 は商

法 典309条 の場 合 にお け る よ うに 外 面的 真実 を要 求 す る権 利 で あれ,同310条 に お け る よ うに 内 面 的 真 実 を要 求す る権 利 で あれ,い ず れ も虚偽 の外 観 を排 除 す る権 利 で あ る。後 者 の 場合 に お け る虚 偽 の外観 は,総 会 決 議 不 存 在 の 外観 又 は 定款 変 更 とい う決 議 内 容 の 虚偽 の 外観 で あ る。 これ は前 者 に お け る虚 偽 の外 観 と して の 会社 存 在 の法 外 観 と極 め て密 接 な関 係 に 立 つ 。つ ま り,会 社 存 在 の 法 外 観,従 って虚 偽 の法 外観 に対 す る株 式 た ち の 信 頼 の保 護 が,こ こで全 く異 っ た特別な虚偽の外観 である定款変 更の総 会決議不存在 の外観 を排 除す る権 利,

(2)

従 っ て 内 面 的 真 実 を 要 求す る権 利 と して,機 能 的 効果 を 発 揮す るの で あ る 。

xた だ け で,文 面 は 現 行 規 定 と全 く 同 じ で あ るが ,政 府 草 案 の相 当規 定265条 は 「本 法 及 び 定 款 の 」 と い う交 句 を 新 た に 挿 入 す る改 正 を企 て て い る。 現 行 法 の も と で は, 単 に 諸 規 定 とい うだ け で 疑 義 が あ る 。 と くに,定 款 で そ の 変 更 に は 代 表 さ れ た 資 本

の 単 純 多 数 決 で 足 り る と規 定 し た と き は(株 式 法146条1項2文 参 照),実 際 上 重 要 な 問 題 と な ろ う。 現 在 の 通 説 は こ の 定 款 規 定 に よ っ て も治 癒 が 可 能 で あ る とす る 。 Begrijnd.z.RegierungsentWurf,zu§265.

(1)定 款 の 必 要 的 内 容 の う ち で 株 式 資 本 に 関 す る規 定 の 毅 疵 が 治 癒 不 能 と さ れ る の は, そ れ が 重 大 な 本 質 的 毅 疵 だ か らで あ る とい わ れ るが,こ れ だ け で は 説 明 に な らな い 。 シ ミテ ィ ス は 「約 束 さ れ た 資 本 は 債 権 者 の 担 保 で あ る 」(Lescapitauxpromissontle

gagedescr6anciers)と い う フ ラ ン ス 破 鍛 院1864年2月9日 の 有 名 な 判 決 交 旬 を 引 用 して,会 社 の 内 面 関 係 に お け る 資 本 的 基 礎 の 維 持 が そ の 外 面 関 係 に お け る 債 権 者 利 益 を 担 保 す る前 提 要 件 で あ るか ら,そ れ の 方 式 違 反 は 治 癒 の 可 能 範 開 か ら除 外 され ろ の だ と説 く。 しか し,資 本 的 基 礎 に 関 す る 暇 疵 は 大 抵 の 株 主 た ち に と っ て 知 られ た も の で あ り,そ れ に も拘 わ らず 登 記 に 信 頼 す る株 主 は 殆 ど い な い と 考 え ら れ る か らだ とい う風 に も,説 明 で き な い もの で あ ろ うか 。 ネ ∫ ン デ ュ ル ッ プ は そ こ ま で 議 論 し て い な い が 。Simitis:a.a.0.,SS.119,254£

(2)Naendmp:a.a.0.,S.829Anm.13.尚,ネ ェ ン デ ュ ル ッ プ は 説 い て い な い が, 璃 疵 の 治 癒 が あ れ ば,も は や 無 効 の 訴 を 提 起 で きな くな る だ け で な く,毅 疵 の 治 癒

が な く と も,治 癒 し うべ ぎ 暇 庇 に つ い て は,提 訴 権 者 が 会 社 に 治 癒 の 機 会 を 与 え た 菅

(14)

(二)

(3)無 効 の 宣 言 に よ って保 護 され る法 外観 。

(2)

商 法 典311条 に よれ ば,会 社存 在 の 外観 に 対 す る株 主 た ち の信 頼 は,更 に よ、

り広 い範 囲 で 保 護 され る。 これ に 相 当 す る第 三 者 の 信頼,と くに 債権 者 の 信 頓 も また 同様 で あ る 。す なわ ち,無 効 の訴 及 び 無効 を宣 言 す る判 決 の 登記 に よ り

(3)

又は職権 抹消に よ り会社存在 の外観 を排除 され た株式会社が,爾 後 清算 の 目的 のた めに 準 解散 とな り,あ た か も従 来 不成 立 で な く真 実 に 存 在 した か の よ うに 取 扱 わ れ るの は,そ の よ うな外 観 に 対 す る株 主 又 は第 三 者 の信 頼 を 保護 す るた め に ほか な らな い 。 この 準解 散 に つ い て も,仮 装 婚 の場 合 に 対 応 面 が 見い だ さ

蔚 後 で な け れ ば,無 効 の 訴 を 提 起 で き な い と い う よ う に,職 疵 の 治 癒 は 相 当 程 度 無 効 の 訴 に 優 先 す る。 株 式 法216条 ∬項,報 告 者 草 案254条 皿項,政 府 草 案264条E項 参 照 。 ネ ェ ン デaル ッ プ が こ の 点 に 触 れ な か っ た の は,商 法 典309条 に そ の よ う な 明 示 規 定 が な か っ た か らで あ る。

(1)欧 州 で は わ が 国 と異 り,設 立 無 効 と い う語 は 使 用 さ れ ず,単 に 会 社 無 効 とい う語 が 使 用 さ れ る 。 ドイ ツ 株 式 法 第1編 第8章 第2節 の 見 出 し も その た め 「会 社 の 無 効 ユ

(Nichtigkeitder(]k,sellschaft)と な って い る 。 と こ ろ が,報 告 者 草 案 及 び 政 府 草 案 の こ れ に 相 当 す る 見 出 し は 「会 社 の 無 効 宣 言 」(NichtigerklarungderGesellschaft)と 改 め られ て い る。 そ の 理 由 とす る と こ ろ は,初 め か ら存 在 す る無 効 が 訴 訟 に よ っ て 確 認 さ れ る の で は な くて,無 効 判 決 の 既 判 力 と と もに 初 め て 無 効 が 開 始 し,将 来 に 向

、っ て の み 作 用 す る か ら だ と い うの で あ る。Erlaut㎝deBemerkz.Referentnentwutf, zuBuchI.TeilVIII.Abschn.II。;Begnind.z.Regierungsentwurf,zuBuchI.Te韮

Vm.Abschn.II.

(2)本 条 は 現 行 の 株 式 法218条 に 相 当 す る 。 これ の 見 出 しに つ い て も,f無 効 の 登 記 の 効 力 」(WirkiimgderEintragungderNichtigkeit)と な って い る の を,報 告 者 草 案256 条 は 「無 効 宣 言 の 登 記 の 効 力 」(WirkungderEintingungderNichtigerklarung)と 改

め た が,政 府 草 案266条 で は 再 び 現 行 法 通 り と さ れ た 。 そ の 他 の 内 容 は 変 更 な い 。 (3)ネ ェ ン デ ュ ル ッ プ は こ こ で 条 文 を 引 用 し,商 法 典309条(無 効 の 訴)の ほ か に 同 272条(株 式 法199条 に 相 当)及 び273条(株 式 法200条 に 相 当)を も挙 げ て い るが, 後 二 者 は総 会 決 議 取 消 の 訴 に 関 す る もの で あ る 。 旧 法 に お い て は,総 会 決 議 無 効 の 訴(株 式 法201条)に 関 す る 明 文 が な か っ た た め で あ るが,こ れ の 存 し う る こ とに つ い て は 学 説 ・判 例 上 争 い が な か っ た の で,後 二 者 の 規 定 に よ る 無 効 の 訴 及 び 無 効 を 宣 言 す る 判 決 の 登 記 を 法 外 観 排 除 の 手 段 と し て ネ ェ ン デ ュ ル ヅ プ が 追 加 し た こ と は,そ の か ぎ りで 不 思 議 で は な い 。 しか し,そ こ で 問 題 に な っ て い る の は 総 会 決 議 の 無 効 で あ っ て,会 社 の 無 効 で は な い 。 従 っ て,こ れ は 前 述 し た 暇 疵 の 治 癒 の た め に す る定 款 変 更 の 総 会 決 議 が 無 効 の 訴 及 び 無 効 を 宣 言 す る 判 決 の 登 記 に よ って 無 効 と さ れ る 場 合 を 意 味 す る と解 す る ほ か は な い 。 そ う解 す れ ば,や は り会 社 無 効 の 聞 、 題 と な る。 つ ま り,一 旦 は 定 款 変 更 の 総 会 決 議 に よ っ て 職 疵 を 治 癒 さ れ た か に 見 え

た 会 社 が そ の 決 議 の 無 効 に よ って 会 社 存 在 の 外 観 を 排 除 さ れ た と きは,通 常 の 会 社 無 効 の 訴 に よ る場 合 と 同 じ く,無 効 宣 言 判 決 の 登 記 と と もに 準 解 散 と な るの で あ る 。

尚,そ の よ うな 会 社 の 総 会 決 議 が 登 記 さ れ て あ る と きは,通 常 の 表 見 株 式 会 社 の 場 合 と 同 じ く,職 権 抹 消(非 訟 法144条)の 途 もあ る。 こ れ も ま た 登 記 と 結 合 し て 準 解 散 の 効 果 を 生 じ る の で あ る。

(15)

「事 実 上 の 会 社 」 問 題 と法 外 観 説 〈喜 多)一 一117一 くり

れ る 。す なわ ち,民 法 典1345条 に よれ ぽ,婚 姻 の外 観 に信 頼 した 配偶 者 は,婚 姻 の 無効 宣 言 後 は,真 実 に は 不成 立 の婚 姻 が あた か も無効 宣 言 の ときに離 婚 と な り,従 ってそ の と き までは 存続 し,そ の ときか ら初 め て解 消 され た か の よ う に,取 扱 わ れ る こ とを 請 求 で き るか ぎ りで,保 護 され るの で あ る。

但 し,表 見株 式 会 社 の これ に 相 当 す る取扱 い は,表 見的 存 在 に 対 す る株 主 又 は 第 三 者 の信 頼 を 保 護 す る こ とを 目的 とす るの で,こ こでは 無効 と宣 言 され た 表 見株 式 会 社 を,内 面 関 係 に お い て も(設 立 行 為 の 暇疵 が そ れ を可 能 な ら しめ

く ラ

るか ぎ りで),外 面 関 係 に お い て も,清 算 会社 と して取 扱 うこ とに な る。従 っ て,そ の会 社 は両 面 に お い て と くに 原告 又 は 被 告 と しての 当 事 者 能 力 が あ る 。 被 告 と して の 受動 的 当 事 者 能 力 は,内 に 向 っては 株 主 た ち の役 に 立 つ だ け で あ り,外 に 向 っ ては 第 三 者,と くに債 権 者 の た め に な るだ け で あ る。 しか し,原 告 と して の 能動 的 当事 者 能 力 は,内 外両 面 に 向 って株 主 と債 権 者 との双 方 の 役

に 立つ ことが で き る。 なぜ な らぽ,会 社 が 能 動的 当事 者能 力に よっ て 内に 向い 個 々の怠 慢 な株 主 か ら払 込 遅 滞 の 額 を取 立 で る こ とや,そ の能 動 的 当 事 者 能 力 に も とづ き外 に 向 っ て社 外 の 債務 者 た ち か ら債 務 を取 立 て る こ とは,株 主 に も

くの

債 権 者 に も 同 様 に 利 益 を も た ら し う る か ら で あ る 。

従 っ て,無 効 と 宣 言 さ れ な が ら 将 来 に 向 っ て 清 算 会 社 と し て 取 扱 わ れ る 表 見 株 式 会 社 の 能 動 的 又 は 受 動 的 当 事 者 能 力 が 内 面 関 係 又 は 外 面 関 係 に お い て 株 主 又 は 第 三 者,と く に 債 権 者 の 有 利 に 働 く か ぎ り で,清 算 段 階 に お い て は,会 社 存 在 の 法 外 観 に 対 す る 株 主 及 び 第 三 者 の 信 頼 に 与 え ら れ る 保 護 が 効 果 を 発 揮 す る と い い う る 。 し か も,同 じ 原 則 は 無 効 と 宣 言 さ れ た 表 見 株 式 会 社 の 清 算 で な

く,そ れ の 破 産 に も 及 び う る の で な け れ ぽ な ら な い 。 こ の 場 合 に は,第 三 者, (1)本 条 は 婚 姻 の 無 効 に よ る身 分 的 効 果 並 び に 相 続 法 上 の 効 果 に 関 係 な く,た だ 財 産

法 的 な 関 係,と く に 抹 養 義 務 に つ い て 適 用 さ れ る もの で あ る。 こ の よ う に 善 意 者 の た め に 無 効 な 婚 姻 を有 効 に 存 在 し た と 同 じ よ うに 取 扱 う趣 旨 の 婚 姻 を 学 問 上 「想 定 婚 」(Putativ‑Ehe)と い う。 欧 州 諸 国 の 立 法 で は 英 米 法 系 と 異 り,こ れ を 認 め る 立 場 で あ るが,ド ィ ッ で は 不 成 立 婚 の 理 論 が 強 く,一 般 に 不 成 立 婚 の 場 合 に 想 定 婚 な し と い わ れ て い る。 本 条 も ま た,そ の 第2項 に お い て 方 式 違 反 の 未 登 記 婚(=・rN成 立 婚)に は適 用 な き こ と を 明 らか に して い る。 し か し,イ タ リ ァ で は 想 定 婚 に 法 外 観 説 が 活 躍 し て い る よ うで あ る。RicardoGallardo:LeroleetleseffetsdeblabOnne

foidansl,amUlationdemariageendrDitcompar6(1952>,PP.7etsUiv.,113etsuiv.

〈2)NaendtUp:a.aO.,S.830Anm.14.

(3)Derselbe:a.a.O.,S.829f.

,

(16)

す な わ ち債 権 者 のみ が 会 社 存 在 の法 外 観 に 対 す る信 頼 を保 護 され るの は,当 然 で あ る 。要す るに,準 解散 とな る表 見株 式 会 社 が 清 算 手 続 に 入 るか破 産 手 続 に 入 るか に よ って,信 頼 保 護 を 受 け る者 の 範 囲は 異 る の であ るが,い ず れ にせ よ

会社 存 在 の法 外 観 に対 す る信 頼 が 保 護 され る こ とに変 りは な い 。

け れ ど も,既 に 無効 と宣 言 され た会 社 の 清算 や 破 産 の場 合 に まで も第 三 者 が 会社 存 在 の法 外 観 に対 す る信頼 を保 護 され るの な らば,ま だ無 効 と宣 言 され な い 表 見株 式 会社 との あい だに そ の法 外 観 に 信 頼 して締 結 した 行為 の効 力が 問題 に な って い る 場合 に こそ,第 三 者 は ま さに 信 頼 保 護 を 享 受 しなけ れ ば な らな い 。 これが,「 会社 の 名に お い て第三 者 とな した 法律 行為 の効 力 は 無効 に よ っ

く  

て妨 げ られ な い」 とい う商 法典311条 皿項 の趣 旨で あ る。 と ころ で,問 題 は 会 社存 在 の 外観 に対 す る信 頼 とい う要 件 で あ る。 とい うのは,こ こで第三 者 が 会 社 の 無効 を 知 らなか っ た こ とは,格 別 明 示的 に は 要 求 され て い な いか らで あ

る。 しか し,そ れ は そ の よ うな信頼 が 立 法 の趣 旨に 含 まれ て い な い とい うこと

くの

の証 明に は な らな い 。立 法 者 は そ の理 由を 沃 して 直接 的 に法 規 に 表 現 しない 。 そ こで,次 の こ とが 考慮 され るべ きで あ る。

法 外 観 に対 す る保 護 価 値 あ る信 頼,従 っ て 「法 外 見」 の意 味 に おけ る善 意 を 代 弁 す る もの は,常 に推 定 で あ る。そ れ は,立 法 者 の た め に存 在 す る抽 象的 な 事 実 上 の蓋 然性 に も とつ く。それ に も とつ い て,彼 は 裁 判 官 に 具 体的 な事 実 上 の蓋 然性,す なわ ち覆 え し うる事 実 の 推 定 を 規 定 す る。 と くに,法 外 観 に 対 す

る保 護価 値 あ る信頼 と して の善 意 とい う重 大 な抽 象 的 な事 実 上 の蓋 然 性 は,立 法者 を して この信 頼 の覆 え しえ な い事 実 の推 定 へ導 くので あ る。そ の場 合に, 後 者 は 裁 判 官 に よっ て常 に 且 つ 即 座 に採 用 され るべ きであ るか ら,立 法 者 は 裁 判 官 に よ って 具体 的 に確 認 され るべ き信 頼 保 護 の事 実 上 の諸 要 件 に 言 及 す る必

(1)Der曲e:a.a.0.,S.830.

(2)本 項 の 規 定 に 相 当 す る 現 行 の 株 式 法218条 猛 項 の 文 面 で は 「第 三 者 と 」 が 削 除 さ れ て い る 。 報 告 者 草 案 の 相 当 規 定256条 皿項 で は 「無 効 に よ っ て 」 を 「無 効 宣 言 に よ っ て 」 と 改 め た が 、 政 府 草 案 の 相 当 規 定266条 皿項 で は 再 び 現 行 法 通 り 「無 効 に よ つ

て 」 と な っ た 。

(3)Naendrup:RechtscheinsforschungenIS.19,IIS.83f.;,,VerjtihnmgalsRechtschei。

nsWirkug,"SS.241,292ft.,295,311A.,314,328ff.;"ErsitzungalsRechtscheinswir‑

lnmg,t{S.37.

(17)

「事実上 の会社」 問題 と法外観 説(喜 多)‑119一

要 が な い 。 覆 え し え な い 信 頼 の 推 定 は か く して 暗 黙 の推 定(stMschweigende Vermutung)と な るわ け で あ っ て,そ れ は 立 法 理 由 の 範 囲 か らふ み 出 さず,法

(且)

規 の なか に 現 わ れ 出 な いけ れ ど も,だ か ら とい っ て法 規 の基礎 に な いわ け では

(2)

な い 。 勿 論,こ の こ とは 通 例 見 そ こ な わ れ る と こ ろ で あ るが 。

暗 黙 の 信 頼 推 定 が 覆 え し え な い た め に,信 頼 保 護 が 具 体 的 に は 信 頼 しな か っ た す べ て の 者 に も 場 合 に よ っ て 役 立 つ こ とは,勿 論 避 け られ え な い 。 しか し, 立 法 者 の 自 由 に な る 経 験 に よれ ば,こ の よ うな 場 合 は 稀 で あ る か ら こそ,彼 は

自己 の 原 則 の 遂 行 に 当 りこ の よ う蔵 場 合 を 良 い 方 に 免 じて 我 慢 す る(mitinden Kaufnehmen)の で あ る 。 しか し,そ れ は彼 の原 則 を確 認 す る上 で,例 外 的 場

(3)

合 と して 問題 に な りうるほ どの もの で は 全 然 ない 。そ うした事 情 は既 に 吟 味 し た 商 法 典309条,310条,311条1項 の諸 規 定 に も含 まれ て い た の で あ るが,と く に311条 皿項 の場 合 に は 明 らか に 認 識 され る 。商業 登 記簿 へ の株 式 会 社 の登 記 に よ って 喚 起 され た会 社 存 在 の法 外 観 に 対 す る第三 者 の信 頼 は,立 法 者 に とっ て高 度 の蓋 然性 が あ った の で,彼 は この 蓋 然 性 か ら原則 の実 際 的 運 用 の 便 のた め に 第三 者 の 信頼 を暗 黙 の覆 え しえ ない 推 定 の も とに置 くに至 っ た ので あ る。

そ の 結果,311条fi項 の利 益 が;会 社 存 在 の法 外 観 に 信頼 せ ず,む しろ株 式 会 社 の無 効 を知 ってい た第 三 者 に も,偶 々役立 つ の は,当 然 で あ る。立 法者 は こ れ を,本 来 は 望 ま し くな い が,原 則 の避 け え な い附 随 現 象 と して,時 折 見 逃が

(4)

す こ とに してい るに す ぎな い 。

こ う した保 護 のた め に あた か も真実 に存 在 す る会 社 の 債 権 者 の よ うに 取扱 わ

(1)Naendrup:,,VerjahrungalsRechtscheinswirkung,̀̀S.292ff.;,,ErsitzungdSRechtsc‑

heinswirkmg."S.37f.,Te,gtundA.尚,拙 稿 「レ ヒ ツ シ ャ イ ン 法 理 の 構 成 」,前 掲.

89頁 以 下 参 照 。

12)ネ 。 ン デ 。ル ヅプ は と く にOertmann:。GrundSatzlicheszurLehrevomRechtsschein,"

ZHR95(1930)を 引 用 し て,「 こ の 論 文 で は 一 般 に 法 外 観 の 原 理 が 認 識 さ れ て い る よ り も む し ろ 誤 解 さ れ て い る 」 と 酷 評 し て い る 。Naendrup:"Rechtscheinswirkungen

imAktienrecht,̀̀S.831Anm.19.

(3)Naendtup:,,VerjahrmngalsRechtscheinswirkung,̀̀S.292f.

(4)商 法 典311条 皿項 の 原 則 は 非 訟 事 件 手 続 法32条 に お い て 更 に よ り一 般 的 な 適 用 と し て 存 在 す る 。 「或 る 人 に 法 律 行 為 を な し 若 し く は 意 思 表 示 を 受 領 す る 能 力 又 は 権 能 を 取 得 せ し め る 処 分 が 不 当 で あ る と き に は,そ の 処 分 が 裁 判 所 の 客 観 的 権 限 の 欠 歓 の た め に 無 効 で あ る の で な い か ぎ り,そ の 処 分 の 取 消 は そ の 間 に 彼 に よ り 又 は 彼 に 対 し て な さ れ た 法 律 行 為 の 効 力 に 影 響 を 及 ぼ さ な い 」 。

(18)

れ る第 三 老 の信 頼 保 護 の 結果 が,「 社 員 は,既 存 債務 の 履 行 の た め に必 要 な限

(1)

度 に おい て,約 束 した払 込 を給 付 しなけ れ ぽ な らな い」 とい う311条 置項 の 規 定 で あ る 。 この よ うに して,会 社 存 在 の法 外 観 は 既 往 の対 外関 係に 作 用 す るだ け で な く,既 往 の 対 内関 係 に も反 作 用 を 及 ぼ す の で あ る。

/

Bわ れ わ れ の 見解

く1)仮 想 婚 との類 比 に つ い て 。

社 団行 為 と身 分 行 為 との あ い だ に 近 似 点 が 少 くな い こ とはわ が 国 で も屡 々指 摘 され て い るが,ネ ェ ソデ ュル ッブが 試 護 た よ うな 類比 は,ま だ わが 国 に は 見

く  

当 らな い よ うで あ る。そ こで,こ の類 比 の 論 理 的可 能性 と限 界 性 とを吟 味 す る た め に,彼 の所 説 を分析 す れ ぽ え られ るで あ ろ うと思 わ れ る類 比 の一 覧 表 を 次 に 掲 げ る。固 よ り完 全 とは い い きれ な い もの だが,当 面の 論 点 に 関 す る か ぎ り,一 応そ れ に 満 足 して議 論 を 進 め よ う。そ れ に よれ ば ・ ネ ェ ソデ ェル ップ炉 試 み た類 比 は 二 種 あ る。一 つ は 表 見株 式 会 社 と表 見 上の婚 姻 との 類比,吟 一つ は 登記 され ない 株 式 会 社 と不 成 立婚 との 類比 で あ る。前 者 は表1に,後 者 は表

獲に 示 す 。

一 見 した と ころで は ,表1に お い て も表"に お い て も,株 式 会社 と婚 姻 とい

 の

う社 会 学 上 対 照 的 な 本 質 を有 す るは ず の二 者 が,法 技 術 上 驚 くべ き類 同性 を示 して い る。 と くに,表 見 株 式 会社 とB型 仮 装 婚 との あい だ に そ の 感 を深 くす る も のが あ り,ネ ェ ソデ ュル ップが 類 同性 を強 調 した の も,こ の対 比 に つ い て で あ った 。け れ ど も,仔 細 に 観 察 すれ ぽ,表1に お い て も表 πに お い て も,対 比

(1)現 行 の 株 式 法218条 皿項 で は 「払 込 」 が 「出 資 」 と な っ て い るだ け で,あ とは 変 '更 が な い 。 報 告 者 草 案256条 皿項 及 び 政 府 草 案266条 皿 項 も

,同 様 で あ る。

(2)津 田 「会 社 の 設 立 無 効 」,前 掲343頁 以 下 注(6)に は 「一 般 の 法 律 行 為 な らば 無 効 原 因 と さ れ る よ うな 重 大 な 蝦 疵 が,或 る 特 殊 の 法 律 行 為 に つ い て は 取 消 原 因 と き れ る とい うの は,身 分 行 為 に 多 く そ の 例 を 見 る(民744・748・803・808等)。 社 団 的 行 為 と身 分 的 行 為 と の 間 に は そ の 他 に も 近 似 点 が 見 られ る場 合 が 少 く な い が,之 も ま た そ の 一 つ と し て よ い で あ ろ う。 特 に そ の 効 果 が 既 往 に 遡 及 し な い 点 ま で 似 て い ろ こ と に 注 意 す べ きで あ る 」 と され るが,こ の 立 言 は 会 社 の 設 立 無 効 が そ の 原 因 の 面 か らで な く,そ の 効 果 の 面 か ら 見 る な ら ば 「無 効 とい う よ りは,寧 ろ 極 め て 緩 漫 な 取 消 とで も言 っ た ら よ い よ う な 」 本 質 を も っ て い る点 に 着 眼 さ れ た もの で あ る。

従 っ て,そ れ は 婚 姻 取 消 と の 類 比 で あ っ て,婚 姻 無 効 との 類 比 で は な い 。 {3)婚 姻 と株 式 会 社 と の 社 会 学 的 対 比 は,既 にT6nnies:Gemeinschaftund(}曲haft

(1922),SS.3〜4に 見 られ る 。 新 明 正 道 ・ゲ マ イ ン シ ャ フ ト(昭 和16新 版),10頁 ◎

(19)

「事実上 の会社 」問題 と法 外観 説(喜 多)

一121‑一

1

表 見 株 式 会 社 表 見 上 の 婚 姻(仮 装婚) 1A型lB型

(定款)設立行為

登 記 簿 商 業

実質上 毅疵あ り 形式上 畷疵なし

実質 上 毅疵 な し 形式 上 i暇疵 あ り

1類 上 暇疵あ り 形式上

暇疵あ り

設 立 の 登 記 あ り

相 対 無 効

(特別な手続を要す) 国

家 私 人

登記裁判所及びその上級地方裁 判所に よる

離 抹消(非 訟法1441株 式法216皿) 各株主、取締役員及び監査役員 による

無 効の訴(商 法典309株 式法2161)

樹 妨 及 と 遡

D

183121

難 効 商 株 無 艇 解 準

治癒 し うる(商 法典310株 式法217)

(契約)締結行為

実質 上 畷疵 あ り 形式 上 i暇疵 な し

登 記 な し 締 結 の 登 記 あ り 締 結 の 登 記 簿 婚 姻

実質上 環疵なし 形式上

親疵あ り

実質上 暇疵あ り 形式上 暇疵あ り

締結の登記あ り

相 対 無 効

(特別な手続を要す) 国

家 私 人

検察官にる

無効の訴(蹉 羅1謝

各配偶 者及 び重婚 の場合 には前' 婚 の配偶者に よる

無効の訴(諜 農1渤

も 励 劉 効 騰 無 叙 的 暢 及

拡 遡

熊 想

治癒しうるwaあ り(麟 豊131蜘

登記 されない株式会社 不 成 立 婚

設 実質上

要薫是灘 し

鞭 蹴 し駈 なし暇疵あ樫 り

実質上 蝦疵あ り 形式上

実質上 蝦疵 なし 形式上

(契約)締結行為

上 り 上 質 疵 あ 式 実 暇 形

件 蟷

業簿

設 立 の 登 記 脚な し

効 果 絶 対 無 効

(特別な手続を要せず)

登 記 簿 婚 姻

実質上 蝦 疵なし 形式上 暇

疵あ り

実質上 ・ 暇疵 あ り 形式上暇 疵

あ り

締 結 の 登 記 な し

1

(特別な手続を要せず) 実質上の蝦疵 とは、

定款 の必要的 内容(商 法 典182五 株式法16皿)が 実質 上 の効 力要件 を具 備 しな い場 合

であつ て、商 号又 は所在 地の不適 法 な選定 、禁止違 反 の事業 目的設 定 、 発 起人 の全部 又 は大部 分の無能 力な

どで あ る。

形式 上 の畷疵 とは、

定款 の必要 的内容が 形式 上の効 力要 件 を具備 しない場合 であつ て、書面 に作成 ・記載 されない こ とで あ る。

実質 上 の暇疵 とは 、

契約が実質 上 の効 力要件 を具 備 しな い場合 であつ て、血族 又 は姻族 間の 違法な婚姻 、重婚 、相 姦婚 、家 名 冒 用 を 目的 とす る婚 姻 、 当 事 者 の無 能 力(甦鶴1325)な どであ る・

契約が形式上の効力要件(民齢)を

具備 しない場 合 であつて 、戸籍 吏 に 面前表示が受 理 されない ことで あ る (民法1324)。

参照

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