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VR 技術を用いた湿地景観のアーカイブ化に関する研究

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2020 年 2 月 7 日

VR 技術を用いた湿地景観のアーカイブ化に関する研究

環境資源学専攻 地域環境学講座 森林政策学 若松 拓夢

1.はじめに

人間活動の影響を受けて湿地が急速に消失していることから,その生態系モニタリングが急務と されている。衛星・低空リモートセンシングでは得ることのできない詳細な生態系の空間情報を得 るには,医療や文化遺産の検査・調査法として注目を集めている Virtual Reality(VR)技術が有 効と考えられる。しかし,その技術を適用したモニタリングやアーカイブの手法については検討さ れていない。一般的にモニタリングでは,その対象の時空間変化の検出が行われるが,VR 技術によ る映像表示法は,時間変化の認識には不向きという欠点がある。今後の VR 映像のアーカイブ化の 進行に対応するためにも,その時間変化の評価を可能とする方法を検討しておいたほうが良いと思 われる。そこで,本研究では,湿地を対象として VR 映像の取得からアーカイブに至るまでのワー クフローを構築すること,VR 映像上での景観の時間変化表示法を検討することを目的とした。

2.方法

バーチャルツアーの形式でアーカイブする方法を採用し,現地での撮影方法から VR 映像の保存,

公開に至るまでのワークフローを構築した。そのフローの有効性を検討するために,篠路福移湿原

(札幌市)と雨竜沼湿原(雨竜町)を対象として試験を行い,問題点の洗い出しを行った。さらに,

モニタリング手法としてのバーチャルツアーの有用性を検討するために,アンケート調査を行った。

湿地景観の構成要素である植生に着目して,その成長,枯死等の季節的な変化を 1 つの VR 画像 として表示する方法を検討した。その画像での季節変化有・無領域の比較,VR 表示結果を踏まえて,

この手法の有効性について検討した。ここでは,篠路福移湿原に設置した 10 地点で,2019 年に月 1回の頻度で取得した VR 画像を用いた。

3.結果と考察

撮影には,予め実施した性能試験を踏まえて選定した VR カメラ(Insta360 Pro)を用いた。撮影 は,人による移動撮影で実施した。構築したフローに従って作業を進めた結果,立ち入りが困難で 対象域全体が撮影できない,画像の明るさや方位などを全画像で統一する処理作業に膨大なコスト がかかる,木道を移動して作成したツアーは湿地内部の様子がわかり難いという問題があることが わかった。アンケート調査の結果,現地の把握と再現性に関する項目で高い満足度が得られ,モニ タリング用途としてのバーチャルツアーの有用性が示唆された。

季節変化の VR 表示には,時期間の緑輝度の標準偏差の画像とエッジ画像を合成した画像を表示 させる方法を用いた。160 ピクセル四方単位で求めた時期間の標準偏差の画像を用いて,季節変化 有・無の二つの領域での標準偏差の値の比較を行った。その結果,植物の成長と枯死については,

有意差が認められた。また,VR 画像上でもそれらを識別できることがわかった。

4.おわりに

撮影方法や後処理コストの課題が残ったものの,湿地景観アーカイブ化のワークフローとモニタ リング用途に耐えうるバーチャルツアーを作成することができた。また,植物の成長と枯死という 時間変化を 1 つの VR 画像上で表示することに成功した。今後は,ツアー作成時の画像処理の省力 化,UAV などを用いた移動撮影の方法について検討する必要があるだろう。

参照

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