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内釘は一般的に使われています 前腕骨や鎖骨用のものもありますが 現状では一般的ではありません 8: 整復して 髄内釘を挿入します 相対的固定により化骨形成を伴った骨癒合がえられます 6: それでは髄内釘の長所 短所についてお話したいと思います 7: まずは長所からです 何と言っても低侵襲ということで

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髄内釘法

11:50-12:10 竹内裕仁

1:このセッションのテーマは、髄内釘です。基 本的なお話が中心ですので、知識の整理のつ もりで聞いてください。 歴史、長所と短所、リーミング・ノンリーミン グ、インターロッキングそして結論の順序で 話します。 2:歴史です。皆さんもご存知と思いますが、今 日の髄内釘のオリジナル概念を築いたのが、 キュンチャー先生です。髄腔をリーミングし て、髄腔に正確にネイルを挿入します。 3:ただ、髄腔にネールを差し込むだけなので、 回旋固定力、長さの保持力はありません。し たがって、適応は骨幹部の単純骨折だけでし た。このような骨折に適応はありませんでし た。 4:1972 年、グロース&ケンプによるロックド ネールが発表されました。これまでの髄内釘 に、横止めスクリューを組み合わせた画期的 なものでした。結果、リーミングが不要にな りました。長さの保持や回旋安定性が得られ、 手術適応が拡大しました。複雑骨折や骨幹端 部の骨折も可能となったのです。 5:今日では、上腕骨、大腿骨、脛骨において髄

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内釘は一般的に使われています。前腕骨や鎖 骨用のものもありますが、現状では一般的で はありません。 6:それでは髄内釘の長所・短所についてお話し たいと思います。 7:まずは長所からです。何と言っても低侵襲と いうことです。傷も小さく、コスメティック にも優れています。創の展開が小さい分、手 技も容易と言われていますが、これは症例に よるかと思います。骨折血腫を温存できるの も大きな利点です。力学的に非常に優れてい ますので、骨粗鬆症などにもしっかり対応で きます。その結果、早期荷重が可能となりま した。相対的安定性による自然な骨癒合がえ られます。 8:整復して、髄内釘を挿入します。相対的固定 により化骨形成を伴った骨癒合がえられます。 9:復習ですが、絶対的安定性では骨片間にマイ クロモーションがなく、一次骨癒合が得られ ます。相対的固定では、骨片間にマイクロモ ーションが存在し、化骨形成を伴った、二次 骨癒合が得られます。 10:例を示します。上腕骨、大腿骨、脛骨。い ずれも化骨形成とともに良好な骨癒合が得ら れています。

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11:つづいて短所についてお話します。手技が 複雑と言うことです。器械が多く、手順を覚 えるのが大変です。クローズリダクションに 手間取り、時間がかかることもしばしばあり ます。平行して被爆量が増えます。皮切が小 さくても内部の傷は大きくなることもありま す。また髄内血行を損傷します。そして髄内 釘の刺入点に関わるいくつかの問題がありま す。上腕骨髄内釘における腱板、順行性大腿 骨髄内釘と中殿筋、逆行性大腿骨髄内釘と膝 関節、そして脛骨髄内釘と膝蓋下痛です。 12:まず、順行性上腕骨髄内釘と腱板です。髄 内釘の刺入のために、腱板をスプリットする ので、100%損傷します。その結果、術後 は肩関節痛が10%の頻度で発生します。可 動域制限は4人に1 人の割合で発生すると報 告されています。 13:順行性大腿骨髄内釘と中殿筋の問題です。 髄内釘が中殿筋を割いて入るので、刺入部の 疼痛が報告されています。 14:つづいて逆行性大腿骨髄内釘です。大きな 問題点は、関節外骨折を関節内の問題にして しまうということです。ということは感染を 初めとした関節炎、刺入部付近の十字靭帯の 損傷、そして関節症、OA ですね、の発生リ スクがあります。 15:最後は脛骨髄内釘と膝蓋下の疼痛です。4 0%の割合で発生します。重要なことは、髄 内釘の骨外の長さは関係ないということです。 膝蓋腱の割いてもよけても、発生率は変わり

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ません。また抜釘しても症状の改善は得られ ません。 16:短所続きです。横止めスクリューを使用す るので、破損がありうるということです。 ダイナミゼーションが行えるという利点もあ りますが、状況によっては抜釘が極めて困難 なことがしばしばあります。 17:回旋変形の問題もあります。とくに横骨折 では注意が必要です。CTなどで回旋の程度 を確認するのもいい方法です。 18:つづいてリーミングの問題に関してお話し ます。 19:まずは何故リーミングするかということで す。オリジナルの方法だからということです。 リーミングすることにより整復位が促進され ます。どうじにネールと骨片との接触面積が 大きくなり、安定性も増加します。どうじに 適応が拡大します。リーミングそのものが骨 癒合を促進すると言われています。 20:では何故、ノンリーミングかということで す。まずはロッキングネールの普及によりリ ーミングの必要がなくなったということです。 またリーミングには時間がかかります、手技 も複雑です。髄内血行を損傷することも指摘 されています。図の赤い部分が血瘤を示して いますが、左のノンリーミング例を比較して、 リーミング例では赤色の部分が著しく少ない ことがわかります。すなわち血行が障害され ています。ただその後の研究により、髄内血 行は比較的早期に回復することが報告されて います。またリーミングにより骨が過熱しま す。そして骨髄内圧の問題です。

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21:リーマー、ネールが骨髄との間でピストン の役割を果たしてしまうことです。骨髄内圧 は正常では 10-15mmhg ですが、髄腔をあけ る際には、300 以上、ネールの刺入で 70-200. そしてリーミングでは800mmhg 以上と言わ れています。これは明らかに非生理的状況で 様々な問題を抱えています。 22:最大の問題は、髄腔内圧の上昇が、微小肺 塞栓を引き起こすと言うことです。右はリー ミング時の経食道エコーですが、右房内にハ イパーエコイックな微小物質を多数認めます。 これらは微小血栓、脂肪滴、骨片と言われて いますが、はっきりはしません。 23:そうだとすると、もともと胸部に外傷のあ る患者にリーミングすることは大きな問題で はないかということになります。これに関し ては、ドイツではイエス、アメリカではノー と言われています。しかし我々はこのことに ついて、どのくらい知っているのでしょうか。 24:というわけで、エビデンスのためのメタア ナライシスを行いました。対象は1969か ら2004までの報告です。ランダマイゼー ション、ブラインド、フォローアップ、結果、 統計処理について調べました。結果は偽関節、 変形治癒、インプラントの破損、感染、脂肪塞栓な どについてです。675文献について調べた ところ、わずか7文献がこれらの条件を満た していました。 25:この7文献にほぼ条件を満たした3文献を 加えた、1033 例を対象に結果を調べました。

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26:結果です。偽関節、インプラント破損に関 しては有意にリーム群が優れていることがわ かりました。 27:まとめ、リーミングすることにより偽関節 の発生率を 2/3 に減らすことができます。ま た有意にインプラントの破損率を減らすことが出 来ます。変形治癒、感染、脂肪塞栓、呼吸障 害、コンパートメント症候群については明ら かな発生率の差は認めませんでした。 28:最後はインターロッキングネールについて です。 29:横止めスクリューのことですが、ショート ネールであれば横止めガイドを用いて、近位 遠位とも横止めスクリューを刺入します。し かしロングネールであれば近位のスクリュー は横止め用のガイドを用いて刺入しますが、 遠位の横止めスクリューは、ラジオルーセン トガイドなどを用いて行わなければいけませ ん。 結果、時間がかかり、被爆、時には失敗すること もあります。 30:つづいて適応の話をします。大腿骨髄内釘 はノンリーミングではイスムス周囲のタイプ A,B 骨折にしか適応がありません、リーミン

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グすることにより安定性が拡大し、骨幹部骨 折が適応になります。 31:ロッキングネールを使用することにより、 長さ、軸、回旋に対する安定性が得られます。 その結果、骨幹端々折も適応となりました。 32;脛骨骨折に於も同様です。横止めスクリュ ーの使用により、骨幹端部の骨折まで適応と なりました。 33:結論 34;髄内釘を使用することにより、最適な安定 性が得られ、早期荷重が可能となり、骨折は 二次性の骨癒合により治癒します。横止めス クリューの開発により、解剖学的にも、骨折 タイプにおいても手術適応が拡大しました。 リーミングは偽関節とインプラントの破損を減少 させます。しかし髄内釘には刺入部に関する いくつかの問題点があります。 35:土田先生の講義の繰り返しになりますが、 骨折手術は大工仕事ではありません。骨は生 きています。生物学的骨折治療を心がけてく ださい。低侵襲、間接的整復、軟部組織温存 という点により、いかなるプレート固定より も優れています。

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36:髄内釘法は大腿骨、脛骨骨折における、ゴ ールデンスタンダードです。以上。

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治療計画の立て方

12:40-13:00 土田芳彦

このレクチャーでは、外科医が患者さんを前にし て、どのように治療計画を立てていくのかという とについてお話します。 皆さんが今までやられてきた手術治療はおそら く適切なものであったかと思いますが、実際の手 術治療には多くの誤りがあります。それには、整 復がされていないまま骨接合をされたり、プレー トが短かったり、また不適切なインプラントを使 用 し て い た り と 、 色 々 な 原 因 が あ り ま す 。 なぜ、このように悪い結果が生じるのかというと、 実はこれらのほとんどが、治療計画をきちんと立 てていなかったことが原因なのです。外科医とし て、計画性に乏しい手術をしてはいけません。 治療計画は、いくつかのプロセスを踏んで立てら れます。まず患者の状態、それは全身状態や既往 疾患、そして局所所見をよく分析することから始 まります。そしてその分析の上で論理的な治療方 法、すなわち保存治療か、手術的治療か、髄内釘 なのか、プレートなのかといったようなことを決 定します。治療法を選択決定したならば、次にこ の治療をいつ、どのような手順で、どのような道 具、インプラントを使って行うかという具体的治 療工程を作成し、実際の治療に臨みます。そして これが重要な点でありますが、その治療は適切で あったか否かについて、再度評価し、きちんと記 録しておく必要があります。こういったプロセス を踏んでいくと大きな誤りなく、外科医は成長し ていくものと考えます。

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それでは治療法決定のプロセスを一つ一つみて いきますが、まず骨折治療を始める前に、外傷整 形外科医が認識しておかなければならない非常 に重要なことがあります。それは患者さんの怪我 は骨折だけではないということです。他にもっと 重症な外傷があり、そちらを先に治療しなければ ならないかもしれません。 これは札医大救急部で治療した症例です。交通事 故受傷の 25 歳の若者ですが、右大腿骨骨折、膝 蓋骨開放骨折の他に出血性ショックを伴う小腸 破裂、腸間膜動脈損傷があったのです。こういっ た場合には、循環管理のために開腹による止血手 術を優先しなければならないことは明らかです。 しかし、その救命手術の間に、できるだけ機能手 術を考慮することが社会生活復帰のためには必 要です。このときは幸い同時に手術をすることが できました。 これは 28 才男性の交通事故症例です。右大腿骨 骨折と右下腿重度開放骨折がありますが、同時に GCS 5 点の重症頭部外傷が合併していました。脳 機能予後のために脳低温療法を導入しましたが、 その前に短時間でデブリドマンと創外固定を施 行し、復温後に再度骨折治療を行いました。計画 的段階的手術というわけです。 全ての外傷にいえる重大なポイントは、第一に救 命があり、その前提の上に救肢があるいうことで す。 Save Life, and Limit Disability というわけ です。この大前提を決して忘れてはいけません。

これはATLS や JATEC が提唱している、外傷の primary survey and care です。気道の開通、呼 吸の安定、循環の安定をはかり、意識レベルを評

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価し、体温を保つというものです。これらは可能 な限り同時に評価し、また同時に治療していきま すが、これがクリアされた後に始めて各損傷部位 の評価、すなわち四肢外傷の評価が行われるので す。 それでは、救命処置が行われ既に安定したという 前提のもとで、次のプロセスにいきましょう。治 療計画に影響を与える数々の因子があります。そ れは患者の年齢や既往疾患などの患者背景、他臓 器損傷などの全身的状態、そして骨折のタイプや 軟部組織状態、さらに既存の四肢疾患などの局所 的因子です。 外傷を起こす前に、患者はさまざまな背景を持っ ています。生物学的年齢は重要であり、高齢者は 早期に手術的治療を行って ADL を確立させる必 要があります。また治療に耐えられるか否かにつ いては身体的問題だけではなく、精神的な側面も 重要です。患者の協力が必要なマイクロサージャ リーはコンプライアンスの悪い患者に行うこと はできません。 患者はさまざまなよからぬ既往疾患を持ってい るかもしれません。薬物中毒、アルコール中毒、 喫煙、血管疾患、糖尿病、心疾患、肺疾患、精神 疾患。これらはいずれも治療遂行に悪影響を与え ます。手術に耐えられず短時間で済まさなければ ならないかもしれないし、より低侵襲の手術を施 行しなければならないかもしれません。 そしていよいよ四肢の局所的要因の評価を行う のですが、骨折のタイプに目を向ける前にするべ きことがあります。それは軟部組織損傷の評価で す。軟部組織損傷を伴うのは開放骨折だけではあ りません。閉鎖された骨折も実は相当の軟部組織 損傷を伴っているのです。皮膚の状態、筋肉の状 態、血行状態、運動・知覚といった神経の状態を 一つ一つ評価していきます。この症例は見るから に悲惨な下肢損傷であり、一見して切断術の適応 と考えるかもしれませんが、論理的に評価した上 での治療法選択でなければなりません。

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軟部組織損傷の評価の後にはじめて骨折の状態 を評価します。さまざまな画像所見から、骨折の AO 分類を記録します。また骨折は単独ではなく 他部位の骨折をあるかもしれません。脊椎損傷を 合併していたらどうするのか? Floating knee ではどういう治療法を選択するのか、といったよ うなことも考慮しなければなりません。 さて、先ほど軟部組織の状態の評価を重視しなけ ればならないことを述べましたが、この軟部組織 の状態ほど骨折治療に影響を与えるものはあり ません。骨折が低エネルギーで起こったのか、高 エネルギーで起こったのか、これは重要です。骨 折は必ず軟部組織損傷を伴うものですが、高エネ ルギー損傷は潜在的にそれが強いというわけで、 高い配慮が必要となります。 ですから、骨折のレントゲン写真しか見ないとい うのは誤りであり、軟部組織をみないといけませ ん。骨折はもともと軟部組織の損傷なのです。す なわち四肢に外力が加わり、軟部組織の挫傷など を生じるわけですが、これがものすごく大きな外 力であったために骨まで壊れてしまったと考え るのです。この写真を見てください、こんなにも 骨が転位しているということは、軟部組織損傷の 程度も相当なものだということです。勿論、この 骨折は開放骨折ですから軟部組織損傷が強いこ とはわかりやすいかもしれません。でも私が言い たいのは、たとえ閉鎖性の骨折であったとしても、 軟部組織損傷は相当強いのだということです。決 して過小評価してはいけません。 別の症例です。スキー外傷で生じた脛骨近位の著 しい骨折です。こんなにも転位の強い骨折、しか も膝関節周囲は軟部組織に乏しいところです。考 えなければならないことは、これは「皮下骨折で あるけれども軟部組織損傷は強いのだ」というこ とです。すなわち、段階的な手術ではなく一次的 に骨接合術を施行したならば、恐ろしい軟部組織 トラブルに巻き込まれるかもしれません。 Tscerne による皮下骨折軟部組織損傷分類という のがあります。最も軽い grade 1から最も重い grade 5まであります。1は皮膚の損傷のほとん どないもの、2は挫傷のあるもの、3は局所的皮 下デグロービング、4は広範囲皮下デグロービン

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グ、5は壊死です。3 以上は手術によるトラブル がありえる重要な軟部組織損傷だということで す。 骨折状態の詳細な分析にさまざまな画像所見は 欠かせません。通常の2 方向 X 線だけでは不十分 な場合があり、特に関節に及んでいる骨折の場合 は、斜位像が必要であったり、断層撮影、CT、さ らにはMRI が必要となるかもしれません。 たとえば、これは先ほどの脛骨近位部の関節内骨 折例ですが、創外固定装着にてある程度の整復位 が得られているように見えますが、実際の手術に はX 線だけでは不十分です。このような CT 画像 を参考にして手術術式の計画を立てるのです。 C3 の両側果部骨折であり、内外側両側からの plate 固定を選択しました。 治療法決定にはいくつかの原則がありました。つ まり骨折には手術しないで保存療法のほうがよ いもの、あるいは患者さんと相談して手術しても 良いもの、また手術しなければならないものがあ るということです。しかし、AO 法の哲学のとこ ろでも述べましたが、一つの骨折には複数の治療 法があり、個々の患者さんの状況に応じた適応を 考えるということでした。骨折治療はクッキング ブックによる料理とは異なるということです。 例を示します。手術すべきでない、保存的治療を 選択すべきものには鎖骨骨折や小児の骨折が上 げられています。しかし、これも患者が望む状況 によりますね。我々日本の外科医は多くの鎖骨骨 折に対して経皮的鋼線固定法を選択することで しょう。

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患者さんとの相談の上で手術してもよいもの、こ れにはたとえば上腕骨の骨幹部螺旋骨折などが あります。Functional brace でも良いけれども、 手術治療を行っても良いということになります。 また、手術をしなければならない多くの骨折があ ります。転位の大きい下肢骨幹部骨折、関節内骨 折、遷延治癒骨折などは手術治療が必要です。 骨接合術の適応を上げてみました。多発外傷患者、 関節内骨折、開放骨折、高齢者の骨折、不安定型 骨盤骨折、足関節骨折、前腕骨骨折、下肢長管骨 骨折、病的骨折。これらは全て骨接合術の適応と されています。今の世の中では骨折治療のために 数ヶ月間もギプスで固定する、そのようなことは おそらく受け入れられないでしょう。でも重要な 判断基準があります。 それは、自分に問うということです。患者を自分 に置き換えて手術適応を考えなければなりませ ん。自分ならして欲しくないことは、患者にして はいけません。 骨接合術適応についてまとめてみましょう。まず 年齢、既往症、合併症などの患者背景を考える。 そしき軟部組織損傷、骨折型などの損傷内容を把 握する。そしてこれがまた重要ですが、術者の経 験や技量といったものの占める割合は非常に大 きいのです。この骨折は自分にできるのだろう か? 応援は必要ないのだろうか。また自分の病 院の物的、人的設備も大きな要因です。設備がな ければ手術はすべきではないのです。 術者は自分が行う手術治療のゴールというもの

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を頭のなかに描けなくてはなりません。骨が癒合 し、骨のアライメンは正しくなる。そして患者は 元の機能を取り戻し、はじめて治療は成功したと いえるのです。 こういった難しい骨折、先生方ならどうやって治 療計画を立てるでしょうか。 さて、最後に近づいてきました。手術治療を決定 したとき、手術の具体的プランを立てることが術 者の大きな仕事です。いつ手術をするのか、どこ で、どんな手術を、誰が行うのか。決定しなけれ ばなりません。 そして、手術設計図というものを作成しなければ なりません。どういった固定法を選択するのか、 絶対的固定か、相対的固定か、どの固定材料をつ かうのか、プレートか、 髄内釘か、創外固定か、 体位はどうするのか、進入路は、整復法は、など など、一つ一つ手術設計図に記載し、それをもっ て実際に手術に望むのです。 そして、手術が終わったら、自分がした手術はど うだったのか、論理的に再評価しなくてはなりま せん。一つ一つの症例を積み重ね、外科医は確実 に進歩を遂げなくてはなりません。20 例目の手術 は、絶対に 10 例目の手術より優れていなくては ならないのです。 ご清聴ありがとうございました。

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LCP

13:00-13:20 小幡浩之

「 Life is Movement, Movement is Life 」 AO法の4つの原則すなわち「解剖学的整復」「安 定した内固定」「血行の維持」「早期無痛性授動」 はAO設立当初に写真のMullerらによって提唱さ れ、現在においても十分評価に値するものである。 整復、固定、後療法と進む骨折治療においてスク リュー及びプレート固定はこの原則を最大限に 満たす治療法と考えられる。 AO法が歴史的に提唱していた骨接合法とは、解剖 学的整復と圧迫固定法による絶対的安定性を有 する固定方法であった。これはlag screwによる 骨片間圧迫に加えて、DCP機構によりscrewを骨折 部へスライドさせ、さらにPlateと骨の間に摩擦 力を働かせることで固定性を得るものである。 しかしながら従来型プレートの問題点として・大 きな皮切 ・整復又は固定時の軟部組織侵襲 ・ プレートによる骨膜上の血流阻害 ・粗鬆骨での ルースニングが挙げられる。 プレート固定法の変遷は1969年のDCPから始まり LC-DCPと続きPC-Fixそして2001年のLCPへと至っ ている。当初BiomechanicalなRigid Fixationか

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らBiologicalなFlexible Fixationへと移行しつ つある。 Rigid Fixationのpointとして十分な骨質、解剖 学的整復、正確なbending、仮骨を伴わない骨癒 合が挙げられる。 Rigid Fixationのmeritは強固な固定による早期 リ ハビ リの実 現、 解剖学 的整 復とそ の維 持、 implantへの負荷低減である。Demeritは手術時の 軟部組織損傷、plate直下の骨萎縮による再骨折 がある。 次にFlexible Fixationであるが、主に髄内釘、 創外固定、架橋プレートそしてLCPに代表される 固定法である。

Flexible Fixation の point と し て 骨 長 と 軸 (alignment)の確保、 (高度粉砕)骨折部を架橋、 近位・遠位の主骨片のみを固定、粉砕部の血行維 持、仮骨を伴う骨癒合が挙げられる。 Flexible Fixationのmeritは骨折部周辺軟部組織 の温存、仮骨を伴う骨癒合、再骨折riskの低減、 demeritは再転位やmalalignment、負荷集中によ るimplantの破損、imageの多用などである。 従来のstandard screwではplateを骨に対して圧

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迫固定をするcompression platingであったが

Locking screwの場合にはscrewがplateに固定さ れ る た め 骨 に 対 し て 圧 迫 は か か ら ず locked internal fixationの形態を取る。

ここでいう、Locking internal fixatorによる相 対的固定法の特徴は、plateとscrewが一体化した 構造であるために固定性が増加し、再転位の危険 性が少ないことにある。しかし、骨幹端部の単純 な骨折においては従来の圧迫固定法は未だ利点 を残している。そこで、このような圧迫固定法と locking screwを同一のplateで使い分けることの で き る 新 し い plate と し て LCP(locking compression plate)が開発された。

LCP: Locking Compression Plate の特 徴 とし て locking screw system、plateと骨との接触の低 減、looseningの減少、アングルスタビリティー 、 combination holeが挙げられる。 standard screwで固定性を得るためにはplateの 正確なbendingが必要である。さもないとscrewの back out次いで骨片の再転位を来す可能性がある。 しかしながらLCPではscrewがplateにlockされる ためこのような危険性は少ない。 LCPではplateと骨との接触の低減が出来る。これ によって骨膜の温存が可能で仮骨形成に有利に 働く。

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LCPはlooseningの低減が期待出来る。このことは 粗鬆骨や骨端部の骨折に対する固定に有効であ る。

Standard screwはbending loadに対して弱い。

通常のplateの引き抜きはbending loadによって 生じる。

standard screwでの固定では転位によるルースニ ングが生じる。

Locking screwはbending loadに対して強い。 これは細い鋭い刃先を持ったstandard screwに対 して太い軸、広い接触面を持ったLocking screw の形状の差による。

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よってbending load下にあっても高い抵抗力を示 す。 通常の海綿骨での引き抜き強度は大きいが、粗鬆 骨では小さい 海綿骨部での把持力はscrewを平行に挿入した場 合には引き抜き強度はわずか0.5ミリのネジ山に 依存するが、screw angleをつけることによって 数十ミリの抵抗性を示すことになる。 これは有名な「リンゴにplateを固定」したもの だが、通常のscrew固定ではbending loadにより plateは引き抜かれるが、locking screw固定では 容易には引き抜かれない。 これも有名な「テニスボールにplate」を固定し たものだが、LHSPを通常のstandard screwで固定 した場合、段階的にバックアウト(ルースニング) を来す。 一方、LHSPをlocking screwで固定した場合、安 定したホールディング(“Block” Fixation)が得ら れる。

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アングルスタビリティー(角度安定性)は特に骨 端部における安定性の向上に重要である。Angle stability plateはAO創成期より使用されてきた。 Angle blade plates や dynamic hip and condylar screw platesなどである。

Angle stabilityの獲得は二次的な骨折部の再転 位を減ずる。

Locking screwはangle stabilityに有効である。

骨端部用LCP各種である。 コンビネーションホールによって従来のスクリ ューによるコンプレッション固定が可能である。 ロッキングスクリューは整復された骨折部をそ のまま固定するため、・骨片(プレート)の移動が 不可能 ・骨片の引寄せが困難 ・固定前の整復 操作及び仮固定が必要 ・スクリューの方向性が 一定などの不利な点が生じる。

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LCP に は Locking screw の 他 、 cortex screw 、 cancellous screwなどのstandard screwが使用で きる。

Standard screwは骨片間の圧迫固定(lag screw or dynamic compression screw)、plateへの骨片の 引き寄せ(reduction screw)、plate位置の仮固定 (positioning screw)、自由な挿入方向を得たい 場合に有用である。

骨片間の圧迫固定を行うlag screw or dynamic compression screwである。 plateへの骨片の引き寄せを行うreduction screw である。 Plate位置の仮固定を行うpositioning screwであ る。 Screwを自由な挿入方向を得たい場合に有用であ る。

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LCP は MIPO(Minimally Invasive Plate Osteosynthesis)への応用がなされている。 LCPはMIPO techniqueに有効なsystemである。 よくある質問 monocorticalかbicorticalか? 骨 質 が 保 た れ て い る 場 合 に は standard screw bicorticalとlocking screw monocorticalはほぼ 同等である。 Locking screw bicorticalの強度 はそれ以上である。 Monocorticalではサイズ選 択不要(手術時間短縮)、対側皮質骨の温存(抜釘 後の空洞減少)などの利点があるが、高度粗鬆骨、 捻り負荷のかかる部位ではbicorticalが推奨さ れる。 LCPの長さの選択 以前のplate固定は完全なopenで設置していたた

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め、plateが長くなるということは軟部組織、さ らに骨組織への侵襲が大きくなるということで あった。そのため短いplateが選択されてきたの である。ところが最近のMIPOテクニックにより侵 襲のことを度外視して、純粋に力学的な側面での みで選択することができるようになった。すなわ ちplateやscrewに対する負荷をできるだけ低く なるように長いplateを選択すればよいのである。 Plateの長さはfracture segmentとnon-fracture segmentに分けて考える。最も理想的な長さの選 択は、plate span ratio(plate全長を骨折長で 割ったもの)とplate screw density(実際のscrew 本数をscrew孔で割ったもの)の2つによって選 択する。粉砕骨折の場合はplate span ratioは2 −3の間におくのが良くplate screw densityは経 験的に0.5-0.4に設定するのが良い。 Screwを何本使用するか? LCPの場合、screw本数は従来より少なくてよいが、 そのためには十分にplateが長い必要がある。生 体力学的研究によれば、骨皮質が良い場合は2本 のmonocortical screwが最低必要である。安全領 域として、3本のmonocortical screwによる固定 が推奨される。骨幹端部、骨端部へのscrew固定 においては、レバーアームが解剖学的に短く設定 されてしまうので、必然的に多くのscrewを挿入 してバランスをとる必要がある。 LCPの長さと力学的負荷におけるバイオメカニク ス スライド左のように固定部位のplate長が短い場 合にはscrewにかかる負荷が大きく、スライド右 のようにplateが十分に長いと、screwにかかる負 荷が少なくなる。LCPでは最小侵襲手技で設置す るわけだから、周囲軟部組織の血行に影響を与え ずに十分に長いplateが設置できる。 Plateの長さとscrewの位置 従来のcompression plateではscrewは骨折部に近 接するように刺入されていたが、locking screw では粉砕されている骨片からの距離を充分に保 ち、負荷がplate中央に集中しないようにする。

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架橋 plate

13:20-13:40 辻 英樹

私 に 与 え ら れ た 講 演 テ ー マ は 「bridging plate:架橋 plate」ですが、まず骨折固定法に は2 つの固定法、それによって得られる安定と いうものが2 つある、ということを知っておか なくてはなりません。一つ目は骨片間の圧迫に よって得られるabsolute stability 絶対的安定 です。これは力学的に非常に強固であるという、 いわばbiomechanical な固定法であります。そ れに対してrelative stability 相対的安定という のは、骨片間には圧迫が加わらず力学的には絶 対的固定より弱いのですが、それがclosed すな わち閉鎖的に行われれば、それはbiological す なわち生物学的固定法と言うことが出来ます。 これらの固定法は骨折型と部位により使い分 けられる必要があります。 左が Xp が絶対的固定、右が相対的固定です。 ここでの相対的固定では、骨折部は展開されて おらず骨片間に圧迫は加わっておりません。 このrelative stability 相対的安定とは今お話し た よ う に 、 固 定 が 閉 鎖 的 に 行 え ば 、 そ れ は biological な固定となります。すなわち血流を 温 存 で き る 、 と い う こ と で あ り ま す 。 ま た Micromotion が許容範囲内でおこることによ り、強固な固定法よりもむしろ組織分化は促進 される、ということに基づいた固定法でありま す。よって整復は解剖学的、すなわち骨片一つ 一つをきっちりと元の位置に戻す、ということ ではなく、骨長と軸アライメントと回旋、これ らを整復すればよい、ということになります。 またこのようにして得られた固定では、仮骨形 成によりindirect healing が得られることにな ります。

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絶対的固定法ではいわゆる一次骨癒合primary bone healing により癒合します。こちらが仮骨 を形成しないのに対し、相対的固定では仮骨形 成を伴った間接的骨癒合により癒合します。 これはよく出てくる図でありますけれども、絶 対的固定法では髄腔内で一次癒合するのに対 し、相対的固定法では骨膜性あるいは外仮骨な どの仮骨形成を伴って骨癒合することになり ます。 さてここでAO 法の原則を皆さんご存知でしょ うか。この人はAO の創始者の一人 Muller で

すが、「Life is movement, movement is life」

すなわち骨折を解剖学的に整復して安定した 内固定をし、それも血行が維持され、早期に無 痛性運動を開始する、すなわち関節拘縮、筋力 低下といった骨折の後遺症を残さない、といっ たことが原則とされてきた訳であります。 AO が創立されたのは 1959 年ですが、初期の プレート固定というものは、骨折部を解剖学的 に整復して、骨片間に圧迫をかけるといった、 より強固な固定をする、といったことが重要視 されていました。骨折治癒の biology すなわち 生物学的治癒ということは実はあまり配慮さ れていなかった、ということがいえるのではな いかと思います。 すなわち初期の固定法というは、絶対的固定法 であって、プレートの骨折、スクリューの緩み などの合併症を引き起こしたわけです。広範囲 に展開することによる軟部組織のダメージで すとか、プレートと骨との接触による血流の阻 害などが原因といわれています。また粗鬆骨に 対する固定性にも問題がありました。

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これもよく出てくる図なのですけれども、従来 の絶対的プレート固定では、プレートを骨に圧 着させるために、プレート下面の骨壊死あるい は皮質骨の希薄化、海綿骨化ということがおこ る、ということが問題となってきた訳でありま す。 AO はこの点を様々なアプローチで解決するよ う発展してきました。 まず一つにインプラントの開発、変遷が挙げら れます。Limit contact の DCP から PC-fix,最

近のlocking plate へ至る改良であります。二つ 目はプレートをbridging plate 架橋プレートと して使用するという、固定法の考え方が挙げら れます。三つ目は展開を最小侵襲で、すなわち MIPO 法をとる、ということなどですが、骨折 固定のstability と Biology のバランスを保つよ うな配慮がなされて来た訳であります。 こちらはまずAO におけるインプラントの変遷

の図です。初期のDynamic compression plate

(DCP)から骨接触面を減ずる limit contact

の DCP へ 1987 年には今の locking システム の原型とも言える Point contact(PC)fix, そし て最近のlocking compression plate(LCP)へと 改良されてきました。 プレートによる血流の問題という点に関して、 こちらはDCP と PC-fix を比較したものですが、 プレート設置面の骨膜、皮質骨の断面ですが、、、 このように DCP で起こっていた骨膜や皮質骨 の消失がPC-fix では保たれています。

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これも同様の比較ですが、皮質骨の海綿骨化も PC-fix ではおきておりません。

そしてこれがLCP locking compression plate

ですが、従来の圧迫機能とplate と screw が一 体となったlocking 機構が一つの plate で一体 となったものであります。 Locking 機能でこのプレートを使用すればプレ ートが骨に圧着されずに直下の皮質骨の血流 が保たれてより骨癒合はbiological になる。ま た骨との摩擦力に依存しない固定性が得られ るため、骨質に依存しない、すなわち粗鬆骨に 対してもスクリューがゆるむことがなく、よい 固定性が得られるわけであります。 このように長管骨の単純骨折に対して絶対的 固定法を行うことも出来ますし、locking screw を使用すれば相対的固定法として、いわれる internal fixator 創内固定として使用すること も出来る訳であります。 AO の解決策の二つ目はプレートを bridging plate 架橋プレートとして使用するということ です。 その前にまず、plate を用いる時には、どのよ うな生体力学的機能を得るのかということを 考えた上で、使うプレートを決定する、という ことを知っておかなければなりません。例えば T-plate を buttress plate として用いる、とか locking compression plate を bridging plate と して使用するということであります。

それでは plate 固定によって得られる生体力学

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それには compression 圧迫、tension band, neutralization 中和、buttress 支持、そして bridging 架橋、といった機能があります。その うち中和、支持、架橋プレートによる固定は extramedurally splinting という目的で使用さ れます。 この splinting という考え方を説明いたします が、splinting というのは元々「動くものに剛体 を当ててそのものを安定化させる」といった意 味 が あ り ま す が 、 こ れ に は inrtamedurally splinting 髄内釘と、extramedurally splinting プレート、external splinting 創外固定の 3 つ があります。 このextramedurally splinting すなわち中和、 支持、架橋プレートについて順に説明します。 まずneutrarization plate 中和プレートですが、 これは長管骨骨折に対してラグスクリューを 使って骨片間に圧迫固定を加えて固定した場 合、力学的に不十分であるのであらゆる負荷に 耐えれるようにこのラグスクリュー固定を補 強する為に用いられるプレートのことを言い ます。 ですからこのneutrarization plate は長管骨の long oblique 骨折、あるいは spiral 骨折に対し て用いられ、常にラグスクリューに加えて用い るものでありますから、得られる固定は絶対的 固定、ということになります。

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これはちょっとラグスクリューによる圧迫が 十分といえないかもしれませんが、、、plate はそのラグスクリュー固定を補強する為に用 いられています。 次にbuttress plate 支持プレートですが、これ はご存知のように脛骨高原骨折や橈骨遠位端 のBarton 骨折などに使われますが、骨折の転 位方向(剪断力、屈曲力といったもの)に対抗 して支持をあてるプレートです。 そのbuttress plate を用いる時のポイントとし ては、ここでは荷重による転位を支持しなけれ ばならないのですから、スクリューはプレート の楕円孔の近位側にうたなくてはなりません。 それによりプレート全体で骨片を支持できる ことになります。 この外側のプレートは buttress プレートとし て機能しています。 そして次にやっと本題のbridging plate 架橋プ レートですが、これは骨折部、特に粉砕した骨 片部を架橋する、橋渡しという意味であります。 粉砕骨片は解剖学的に整復されることはなく、 骨全体の長さ、軸、回旋を保持するのが目的で あります。それにより粉砕部は血行が阻害され ない、ということになります。 すなわちbridging plate によって得られる固定 は相対的固定です。冒頭でも言いましたが、相 対的固定とはそれが closed 閉鎖的に行われた

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場合、biological な固定法となります。よって 閉鎖的に行われますので骨折部、骨片の血流は 温存され、間接的骨治癒による仮骨形成が得ら れ ま す 。 こ れ は 先 ほ ど 述 べ た よ う に extramedurally splinting として機能します。

よってplate を bridging plate として用いる時 は、骨折部の展開は骨膜外で行われなくてはな りません。骨折部は間接的に整復されることに なり、血流が温存されますので骨移植はほとん ど必要としない、ということになります。 Bridging plate の適応は、非関節面の骨折、骨 幹部、骨幹端部の多骨片骨折がその適応となり ます。言い換えれば関節面の骨折は絶対的固定 が な さ れ な け れ ば な り ま せ ん 。 こ ち ら は locking compression plate を bridging plate と して使用しています。

こちらはlimit contact DCP が bridging plate として使用されています。

Bridging plate 固定には原則があります。Plate

はアームを長くして、骨折部からscrew を離す

ようにする必要があります。またlocking plate

を使用したときは screw の数は screw hole の 約半分とされております。

Plate はアームを長くして、骨折部から screw

を離すようにすることです。Plate のアームが

短くて、骨折部からscrew までの距離が短いと

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Locking plate を使用したときはむしろたくさ んのscrew をうつと応力が集中して plate の破 損につながることになります。 AO の解決策の最後の三つ目は、展開を最小侵 襲で、すなわちMIPO 法によって行う、という ことです。 皆さんご存知かもしれませんが、MIPO すなわ

ちminimally invasive plate osteosynthsis は bridging plate としてのテクニックであります。骨折

部に皮切を加えずにplate を滑り込ませて主骨

片同士を固定する方法、別名sliding plate テクニ ックと呼ばれます。

MIPO はまず作図を行い、plate の prebending を行います。整復は間接的に行って、少なくと も2 方向の X 線透視下に骨長、軸アライメント、 回旋の整復チェックを行います。 MIPO の図。 イメージをこのように用いまして、骨長、軸ア ライメント、回旋の整復を行います。

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整復は間接的に行うのですが、、、このように外 部からの徒手整復、皮膚越しにかけることので きる大きな骨クランプ、また創外固定を使った distractor などを使用します。 もはや骨折部を大きく展開はしないのであり ます。 最近日本でも発売になったLISS(less invasive

stabilization sysytem)です。Plate と screw はロックしていて、screw は self-tapping にな

っています。MIPO 法をこのシステムにより容

易に行うことが出来ます。当然bridging plate

として機能します。

これはLISS を用いた、CRIF(closed reduction internal fixation)後の外観です。 さてこれは絶対的固定、相対的固定をどのよう に使い分けたらよいか、という図ですが、この ように粉砕骨に対しては相対的固定が適応と なります。また粗鬆骨に対しても相対的固定と いうかlocking system が有用です。一方骨切り 術や関節内骨折は絶対的固定の適応です。 一番よくないのは、粉砕骨片を開けて直接整復 しにいって絶対的固定を目指したが、出来ずに 結果的に相対的固定になってしまう、というこ とです。これでは骨折部を展開して血流が障害

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された上に固定性も弱い、ということになって しまいます。

最後にこのbridging plate 固定というのは、AO

の絶対的固定の合併症解決策の一つの方法と して位置づけることができる、ということでこ の講演をおわりたいと思います。

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Tension band 法

13:40-14:00 佐藤 攻

Tension band 法の基本概念についてお話いたしま す。まず基本原理として下の4つの原理について、 張力、骨片間圧迫、偏心性外力負荷、屈曲外力に ついての解説と、実際の固定法およびその適応に ついて説明していきます。 まず張力ですが、このクレーンのワイヤーにかか る力が Tension,すなわち Tensile strength とい うことになります。 張力が骨折部にかかると、骨折部の安定性を低下 させたり、骨折部の再転位をきたしたり、骨折部 間隙でのひずみをひきおこすと考えられます。ま ず骨折部での安定性の低下についてお話いたし ます。 骨折部に張力がかかることで安定性が低下して、 不安定性、Instability が発生します。 具体的には骨折部をこのように整復して、力学的

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負荷である前負荷を与えない状態においておく と骨折部はいずれ不安定な状態になります。 骨折部には張力による曲がり、捻れ、剪断力など さまざまな力がかかり骨折部に安定性をなくす 原因となります。 それでは、骨折部の再転位についてですが、、、 骨折部の再転位とは、このように骨折部に張力が かかり安定性が失われてずれるということです。 具体的には整復した骨折部に張力がかかり、骨折 部に不安定性が発生して二次的な転位を来たし ます。 それでは骨折部のひずみついて説明します。 骨折部に張力がかかると発生する力学的状態を ひずみと表現します。

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骨折部にたいして張力がかかるとそこにできた 仮骨、新生骨など骨癒合に歪みが発生して、場合 によってはこれらの組織を破壊、骨癒合に不利な 状況となることが考えられます。このうような状 態を骨片間のひずみといいます。 それでは次に骨片間の圧迫についてお話いたし ます。 このように骨片間を整復して、力学的前負荷であ る圧迫を加えることによって骨片間の安定性を 得ようという考え方が骨片間圧迫です。 骨片間の圧迫には具体的には静的な圧迫、動的な 圧迫があります。 静的な圧迫によってもたらされる効果は具体的 にはここにあげる3つです。絶対的安定性と負荷 に対する遮蔽、そして一次性の骨癒合が剛性のあ る静的な圧迫によって得られる効果です。 このように骨片間を整復して力学的前負荷であ る圧迫を加えることによって絶対的な安定性が 得られます。

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Absolute stability というのはこのように骨片間 に圧迫がくわわることによって力学的に安定す ることを示します。この積み木をもっているのは うちの息子ですが、このように両端から圧迫を加 えることによって真ん中の積み木は力学的に安 定した状態となります。 力学的に安定した状態のところに機能的負荷が かかる場合、これを遮蔽することによってこの丸 でかこんだあたりは力学的に安全地帯とするこ と が で き ま す 。 こ う い っ た こ と を Stress protection というふうに表現いたします。 こういった絶対的安定性のもとでは骨折部は一 次性骨癒合と表現する特殊な修復が発生します。 骨折部は Havers 管の再生により内部から修復さ れ、仮骨が発生しない治癒となります。 静的な圧迫に対して、動的な圧迫は動的な負荷と、 これによる骨片間の圧迫、その結果として二次性 の骨癒合を生じます。 動的な負荷、機能的負荷が骨折部にかかることで 起こる現象というのが、骨片間の圧迫と仮骨形成、 骨折部での骨吸収ということになります。

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次に偏心性外力負荷についてお話いたします。 この図の大腿骨のように荷重がかかると、その荷 重軸は骨の真ん中を通るわけではなく骨の中心 軸からずれています。右の弯曲した模式図で見る とわかるように荷重すると骨折部の荷重軸側に は Compression がかかり、対側には Tension がか かります。これが偏心性の外力負荷ということで す。 バイオメカニクスの話をすると、円柱状の物体の 中心軸に荷重をかけるとその中心軸に力が加わ り圧迫が発生します。 し かし 荷重 を偏 って かけ ると Compression と Tension の拮抗する2つの力が発生することにな ります。これが偏心性の外力負荷です。 次に屈曲外力負荷についてお話いたします。 屈曲外力は曲げによる偏心性の負荷、あるいは弯 曲した骨の軸圧負荷によって生じることが知ら れています。

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たとえば、まっすぐな骨を曲げると、、 伸側には Tension が、屈側には Compression がか かることが知られています。 またこのように弯曲した骨に軸圧方向に負荷を 加えると、同側には圧迫、対側には張力といった 拮抗する力が加わります。 こういった偏心性の外力がかかる環境で骨折部 を固定するのが Tension band 固定です。それで は、いよいよ Tension band について解説いたし ます。

Tension band fixation は tension のかかる側に 固定を行い、tension を compression に変換する 方法です。これが Tension band の基本的な概念 です。 弯曲した骨折部に荷重をかけると Tension と Compression が発生します。この状態で Tension side に プ レ ー ト を お く こ と で Static な Compression がかかります。これに荷重をかける

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とさらに Dynamic な Compression がかかるという わ け で す 。 し か し 、 Tension side で は な く Compression side にプレートをおくと Tension side には Compression はかからず、転位が発生す ることになります。 このように Tension side にワイヤー状のもので 固定することで、均等な圧迫力をえることが出来 ます。 こ の 原 理 を も ち い た 臨 床 上 の 方 法 と し て は Tension band wiring が最もよくつかわれていま す。 この Tension band 固定における効果についてま とめますと、張力および屈曲外力を圧迫力へ変換 すること、屈曲外力を活用し、同側および対側の 骨折部へ圧迫力を作用することです。 Tensin band には条件があります。固定材料が張 力に耐えられること、骨が圧迫に負けないこと、 骨皮質がしっかりしていることが条件となりま す。 こういった偏心性の外力がかかる環境で骨折部 を固定するのが Tension band 固定です。それで は Tension band の適応について解説いたします。

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最も一般的に使われているのは膝蓋骨骨折、肘頭 骨折でしょう。そのほか鎖骨遠位端骨折、上腕骨 遠位部、手関節部の尺骨茎状突起、大腿骨遠位部、 足関節外果、内果骨折などで使われています。 膝蓋骨は最大の種子骨で、大腿四頭筋、膝蓋腱に よって強力な張力がかかり膝蓋大腿関節によっ て屈曲負荷がかかります。骨折によって膝関節機 能障害が発生するため強力な内固定が必要です。 Tension band の最もよい適応は横骨折です。 普通は K-wire を2本、平行に使用します。これ は整復位を保持する、Splinting としての役割で

す。そして Wire をかけることで Tension band が 完成し、骨折部には Compression がかかり安定性 がえられることで骨折部は力学的に安全地帯、す なわち Stress protection となるわけです。 えー、そのほか肘頭、足関節などさまざまな部位 で Tension band は使われるわけですが、もうい いかげんみんなつかれたと思いますので今日は この辺で勘弁してあげます。詳しくは次回の各論 というのがあると思いますので、いずれまたとい うことで、終わります。

参照

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