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龍谷大學論集 469 - 007島田 修「神経性無食欲症(摂食障害)について」

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(1)

Ryukoku University Ryukoku  Umversrty

神 経

性 無

摂 食障

害 )

  じ 

 

 

主 と して思

期の

発症す

性食

思不

振症 (

Anorexia

 

Nervosa

An

と略す

につ い ては , 今日まで 多 数の 研 究 報告が な されて きた 。 し か も, その 疾 患 患者の

加に伴い 低 年 齢 層化や重 症化の症 例がふ えて い る。 それ らの

諸問

題を

解析

し て 本

検討す

る こ とは到

不可

る。 そこで こ こ で は,

者が在

して い た

合 病院に おけ る

An

の 患者の

診状 況や 入院 治 療 上 の 諸 問

を 整 理し, 中

群を 中心 とし た 疾 患の 理 解を 図るこ と を 目的 とす る。

 

経 性 大

Bulimia

 

Nervosa

につ い て は

稿

め て論 じたい 。

I

 

An

邦訳

定 義

に つ い  

Anorexia

 

Nervosa

邦 訳 名は 多数 あ り, そ れ だ けに 本疾 患の 本体の 複雑 さを あらわ して い る とい える。 厚 生 省特

疾 患, 「中

性 摂 食 異

調 査

研究

      (1)

  (

班 長

 

石川

  中)

56年度

報告書

に よ る と,

56年度

1

回 班 会

で こ の 問題が と りあげられ, 主 な邦訳名

12

1

につ い て討 論さ れた結 果,  『研 究 班とし て は 「神経 性食 欲 不 振 症」 を用い る こ と とな っ た が ,

食欲

とい うの が 本

な感 じがし,

思の 方 が 中枢 性で

態度

意味

ん でい る との 意 見があっ た の で , 「

経 性

思不振 症」 とい う訳

を用い て もよい こ とに した 』 となっ て い る。 また診 断基

に つ い て は,

 

視床

下 垂

体機

害 研 究 班」

  (

班長

 鎮

調 査に よる データを も とに

され,

2

の 診

断基準

い られ るこ とに なっ た。

 

本 症に つ い て

記載 した の は

Morton

1689

とい わ れて お り,

nervous  consumpton よ び

like

 a skelecton  only  clad  with  skin ”

と記

して い る。 本症 を

An

と命名 し た の は

Gull

1868

で あり, 彼に よれ ば患者

(2)

1

 

Anorexia

 nervosa の邦訳名

1

.神 経性 食欲不振症 2 .神経 性食思不振症

3

.神経性 食欲異常症 4 .神経性食 思異常症 5 .青春期やせ症

6

.思春期 やせ症

7

.神経性 無食欲症 8 .無食欲症 9 .神経性食欲不良症

10

.神経性 食思不良症 は主 とし て

16

歳か ら

23

歳の 女性であるが, 時に 男性 もみ られる。 無 月 経, 便 秘,

欲不 振, 徐 脈,

徐な呼 吸, るい 痩 な どを主 症状 とし,

しく活動 的 で ,

身体

的, 病理 的

化はな く, 本症の 成 因は

神状 態に よ る もの で , 中枢 性 である とし た 。

Morton

Gull

の述べ る

は, 現 在の

症の 中

群と呼 ば れ るもの に ほぼ一致 し て い る。

Laseque

1873

)は本症の発生 機転を ヒ ス テ リ ー る と し , anorexie  

hysterique

と記した が,

に , ヒ ス テ リ ー

の 心理機 制で 発 症する症例が多 く報告され, こ の考 えは 批判された。

 

しか し

者の 経験を通 じて 本症 を み る時, 本症は甚だ しく複雑な 問題を抱え て お り, 今 日 ま で に記載されて い る命 名も診 断基 準も, 十 分に納 得できるもの で は ない と言 わ ざるを

ない 。 本 症で 目立つ の は,

の 異 常とやせ で はあ るが, そ れだけが本 症の 本態で はな く, 複 雑な

神 状 態が問題 と され な けれ ぽ な らない 。 した がっ て 本 症を 「

欲不

」 とか 「

思不

」 とか 呼ぶ こ とに は

を感ぜ ざる を

ない 。 例 え ぽ本 症に おい て は, 拒

と過

を繰返 す場

が ある し, ま た,

事を規則 正 しく摂 り, るい 痩が治っ て も, 本 症が治癒した とい うこ とに はな ら ない の で る。 本 症の 診 断基 準 も種々 論

されて い るが,

本症

発症

は必 ず しも思春

とは

らず, 思

春期

前に

症 した例や中

に 発 症 し た例 も決して し くない また 女 性に 多 く 発症す る こ とは 間違い ない が , 男

例も

約10

%に

め られて お り,

性に 特 有の 疾

で ある とは言え な い 。

ll

  診 断 基 準

病 型 分 類

本 症の 診 断基

と して は , 「中枢 性 摂

異 常

究 班」 の 採 用 した もの

2

が広 く

い られて い るが, これに つ い て も決 して

全なもの とは 言い

い 龍谷大学 論集 一

31

(3)

Ryukoku University Ryukoku  Umversrty 表

2

  神経性食 欲不振症 ・狭義 (中核 群)の診断基準      (中枢性摂食異常調査 研究班, 1981 )   標 準体重の一

20

%以上のやせ   ある時 期に始ま り,

3

ヵ月以上持続 3  発症年齢 ;30以下

4

  女 性 5 無月経

6

  食行動の異 常 (不食 ・多食 ・か くれ食い

7

 体 重にする歪んだ考 え (やせ願望)

8

  活動性の亢進

9

  病識が乏しい   除外規実 (以 下の疾 患を除 く)

A

.やせ を き たす器質性疾患

B

.精神 分裂病, うつ 単 なる 心因反応 〔○ 印を満たす ものを, 広義の本 症 とする。〕 こ とは上に

究 班 として もこ の こ とは十 分 承 知して お り,       (2)

DSM

 

III

Feighner

類 , そ の

日 まで の

An

につ い て の くの 究, 症 例報

につ い て

検討

を加えて い る。 こ の

診断基準

唱し た

末松

は, そ         の 考 え

を紹 介してい る。 末 松の 考 え

は,

An

に つ い て の

日の 研 究段 階で は妥 当な もの と言え るが,

An

の 研 究が 進み, 病 因,

型の 分 類 等 が も っ と明確に な れ ば ,さ らに補 充された 診 断基 準が提 唱される で あろ う。 筆者の

測で は, 病 因 と

型を とり入れた形の もの とな り,

An

とい う

病名

も, より 本

患の 本

を あ らわすもの に とっ て かわ るの で は ない か と思わ れ る。

 

病型 分 類に

して

だ 明

分類

当らない 。

末松

は, 例えば視床 下 部 下 垂 体機 能に し て も, 正常なもの か ら

しい 異 常所 見を示 す 症 例があり, こ の

変化

も “やせ ”

るい は “

餓” に よる二

化で

るこ とが

に これ を持っ て病 因論 的に分類 する こ とは困難で ある とし て , 精 神 的な症状で分類 す るこ とを提唱 し

2

10

項 目の 診 断 基

をすべ て満たす 症例 を中 核群

または

典型群)

と して 一

に は

神経

症に

病態

の もの を周辺

と して い る。 し か も

核群 と周辺群との に, どち ら と も 区 別 しが たい

るこ とを認め,

と呼ん でい る。 さ らに

Feighner

らが 診 断基 準の 一 ぶ毛の密 生や 徐脉な どの 身 体 症 状が, 周 辺群に比し中

群に

意に

い 出現 率 を示 すこ とか ら,

精 神症状

に よる

分類

が,

身体症状

とも

合致す

るこ とに

目 し てい るこ とは ,

者の 経

に 照らして も大い に 共

する 所で ある。 末

はま た , 神経 症や精 神病に類 型を求め て さ らに細か く分 類する と, 統 合 失調 症 型, 一 32 一 神経性 無食欲症 食障害)につ い て(島田)

(4)

ヒ ス テ リー型 強迫 神

症型 恐怖 症 型 心 気 症型 な どの 亜 型に分 類す るこ もで き るで あろ う と述ぺ てい るが, こ れは 臨 床経 験か ら得 られた実感であ り, 本

に か かわ る卓 見である。 皿

  病 因

に つ い て

 

本症の 病 因に つ い て ,

Gull

は病 的な

神 状 態に よる もの で, 成 因は中枢 性 で あるとし た 。

Laseque

も本

精 神

患である と し, 発 生

転を ヒ ス テ リ ー し た 。 その

Simmonds

月経,

老,

を ぎた して 死 亡 し た婦 人の剖検結 果か ら下 垂 体の

を指

し,

Simmonds

病 として

報告

し て 以来, 本 症は

Simmonds

病と混同 される よ うに な っ た 。 し か し

Rahmann

らに よる本症の

医学的研 究な どか ら, そ れ 以

An

Simmonds

病とは

疾患

と し て

じ られて

た。 近

発達

とと

に, 本

代表

的       〔8  な 心

症 とする考え方が支 配的に なっ て い る。 しか し本

の患

に つ い て,

因 となる心 因の 見 出される こ とは少 く, もっ と広 い 意 味で の心因, す なわ ち生

歴や家

環 境, 両親との

係, 性

格等

を詳細に 調べ る と, そこ に

々 の問 題           点の 見 出される症例 が多い 日 ま で取 り上げ られた広 義の 心因に関連 する問 題 点を列 挙 する と, 患者に対し, 過 保

, 過 干渉, 支配 的 な母 親の存 在, そ れ に対し患者の 抱 く両 価 的感 情,成 熟 拒否.完 全主義, 禁 欲 主 義な どの性 格 特 徴 が肥 満に

し嫌

じ,

節食

する。 食

で はな く

節食

る故 に, 耐えがた い

の ため, 盗み食い や

過食

られ, した が っ て逆に 肥満 を きたす 場 合 もある。 一方 肥満恐 怖 , 摂食 後,故 意に 嘔 吐し た り, 下 剤を 乱 用す る な どの 未熟な父親の 存 在 乳幼 児期 っ た学 習に よる摂

食障

害           で る説, な ど様々 な見

が な されて い るが 、 なお統 一

。 い

れに して も家族 病理 的 な立 場か ら広 く

討され ねぽな らない

で 述べ , 本症患 者の中に は , 心 理的に 了

しが たい 症例 が珍 し くない こ と, 病 識に 欠 ける こ とな どか ら, 神 経症ない し, 心

の もの とする よ り は, よ り

神病

の 疾 患 として 考えね ばな らない 問題が

い と考えて い る。

中核

群と呼 ばれる

型 例につ い て は, その

くは

神病

に入 る と考えるべ きであろ う。

N

 

に つ い て

 

本 症は 思

春期

多発す

る と されて

た。 厚 生 省特 定

患 「中枢性 摂

異 常調         査研究班」 昭 和

57

年 度 研 究報 告 書に よる と,

31

歳 以上で発症 した 例 は,

3

% と 龍谷大学論集 一

33

(5)

Ryukoku University Ryukoku  Umversrty なっ て い る。

 

Thoma

, 

H

.の

Heidelberg

大 学に おける 調査で は, 本 症の

88

%が

20

まで に 発 症 してい る とい う。 また

Vinterpaulsen

85

75

        例 を

報告

して い るが , これに つ い て は検 討の 地があろ う。

Dally

35

以         下と定 義し て お り,

Bliss

Branch

の 調 査で は

300

例の 女 性例の 平

と して

21

5

っ た と述ぺ て い る。 い ずれに し て も

30

以上 で 発症

る例は

い に 違 い ない が ,筆者の 言い た い は,

30

以上 で も

症す る症例 があるこ とに 留

意す

こ とで

る。 一

期 前の

報告例 もか な りあ                   る。 向山 らは

11

歳の 男 児と

10

歳の 女 児の 例を報告 し てい る。 また

赤木

らは

An

発 症 年 齢低 下 傾 向を 指 摘して お り, 事 実, 小児科 領 域か ら

An

の 研 究,         〜  ,  〜鈎 報 告 例が次 第に多 くな っ て い るの が 目立 っ て い る。

辺 らは小児

科領

域に おけ                る

An

は全

15

%程

め る とい い , 

Goetz

ら も

An

小児

科 領

して

な疾 患で は ない として い る。 こ こ で も筆 者は改め て

An

を 思 春期 特有 の 疾 患で は ない こ とに

意し て, 本 症の 本 態を

えて ゆ くこ とを

調し た い 。

 

次に性 別につ い て 本 症が 圧

女性

は,

くか ら

指摘

されて い る通 りである。

 

「中枢 性 摂 食 異 常調 査 研究 班」 の 調査で は 男性 例は

4

% 〜

5

6

          %である。

本らの

22

告の まとめ で は

子例は

9

% となっ てい る。

Blissk

     

Branch

集 計で は

473

例 中

51

11

男性る。 

Ladewig

1968)

30

人の 研 究 者の 報

例,

1225

例 中

124

10

1

が男性で あっ た と報 告 した。 彼の 調べ 報 告 例で は

子症 例 数の 実数は

0

28

名ま で に分か

て お り, これ を %で 示 す

0

%か ら最

69

% となっ て い る。 こ の

報告

を含め て,

20

%以上 と する報告 例が

4

報,

10

% 代の 報告が

10

報とな っ て い る。 また

Thoma

は 男女 比 を

1

11

5

と報 告 て い る。 い ずれに し て も,

An

患 者の 約

10

%は 男子 で ある とい うこ とは言え そ うで あり,

性に 多い 疾 患で はあるが,

性特 有の

患と                (1) 考えて は なら ない したが っ て

An

の 診 断

準の

に 「女 性」 とい う項 目を 入れる こ とに は疑 義があ り, 少く とも 「女性に 多い」 とい う表 現を とるぺ きで は なか ろ うか と

えて い る。

 

An

にっ い て の

報告

い 。 し か し近

とみに

加の

向に ある こ とにつ い て は間違い ない とこ ろ で る。 大 阪大 学 精 神科で の過去

22

年 間の 調査   鯰 で は, 受 診 者総 数,

90

, 

899

人 中と

Eating

 

disorder

と 診 断できた の は

216

201

15

で あっ た が,

1974

年 頃か ら急激に 増えてい るの が 目立 ち,       的

齢は

9

か ら

31

で あっ た 。 末松の報 告に よ る実 態 調 査の 結 果の うち,

設で の

1976 年

1981 年

の 比

で は

施設

均患者数

は,

外来

の 場 合,

8

. 

1

16

0

入院 患

の場

2

8

人 :

4

5

と な 。 住

友病

院に心 一

34

 神経性無食欲症 (摂食障害)つ い

(6)

3

 神経性食欲不振 症     受診数 (住友病院 心療内科) 神 経 性 食 欲 不 振症 患 者 総 数 比    率 外来

8

676

1

18

1980

年 (昭 和

55

) 入院

4

55

7

27

外来

7

798

0

88

1981

年 (昭和56 ) 入院

1

78

L28

外来

13

704

1

8

1982 年 (昭和57 ) 入 院

3

51

5

8

外来

9

159

5

7

1983

年 (昭和58 >

3

月末 入院

3

7

42

9

計    

2337

例中 

37

例 

1

6

% 療 内科が開設 されたの は

197

 

O

5

1

日で あ た が ,

者らは開設 当初か ら毎 年 数 例の

An

患者の 診

に 当 っ た の で あっ た。 心療 内科の 開設 時で は, 

An

患 者の

に 当るこ とは稀で あっ た た め , 最 初は戸 惑い を感じ た が, 今に し て思         え ば, 当時 より,

An

患 老 が増加 して いたの で あ っ た。 そ こ セこは, 下 坂, 渡辺 らの 述べ 社 会 的 因 子 関与

An

との

関係

で , まこ とに

深い もの がある。 住 友病 院 心 療 内科で 治

し た

An

患 者数は 一

して

い とは言 えない が, そ れは当

の 診

療能 力

の 限

を 示 してい る。 若 し, もっ と多くの診療ス タ ッ フ と ベ ッ トがあれば,

An

の 患 者数は もっ と

え たで あろ う。 とも

参考

まで に

1980 年

か ら

1983

3

月末まで 当

で診

した

An

の患 者 数を

3

に て紹 介す る。 表 中の 患 者 総数は, い わ ゆる 新 患数で あ る。 住友 病 院心

療 内科

の ベ ッ ト

はわずか

21

である か ら, 当 科の実 態は, 表 中の 数 字で お よそ推 察 可能と思 わ れ る。

表 4

7

An

患 者の 性, 年

, 主

要症状

の 一

介する。 こ こで筆 者が注目し て い る点は, 先に 述べ た 病 因 論との 重 複

えて犯 す こ とを お許し頂い て記 する と,

8

, 図

1

に示す

く, 発

年齢

と, 受 診時

齢 との 差で ある。 表お よび図か ら 明らかな

く,

発症時年

齢よ り受 診

時年

齢が

数年

遅れてい て , その

向は

若年者

ほ ど

し               鋤 い 。 下 坂,

辺の 説 く,

社会環境

, 生 育歴の

特徴

と, こ の 発 症

時年齢

と受 診時 年

た りは 決し て 無

関係

で は ない と考 え られる。

らの

べ る

社会環境

の 龍 谷大 学論集 一

35

(7)

Ryukoku University Ryukoku  Unlverslty 特 徴 と, 生

歴, 特に 両親像 と

An

症 との

係は, 以

か ら注 目さ

2z

.rC い た もの で はあるが, 最 近の社 会 環 境の 変遷と, 両 親 像の特 徴 とは決して無 関 係で はない 。

An

患 者の 発 症に は, 母親の 過 保護, 過干渉, さ らに未熟な父親 の

家庭 内

で の

, 無 力性が重 視されて い る が , 現 在の 社 会環 境

体 が, 過 保 護 過 干渉を

進し, 正 当化 する傾 向にある こ とは否めない 事 実で あ り, 一こ の うな

環境

, ひ い て は戦

環境

か ら,

人 格の 両

加 しつ つ こ と も否め ない

で あ る。 こ の こ とが すべ て

An

加と, 直

的に 関連が ある とは 言 えない に して も,

An

を含め,

家庭 内暴

力, 校 内暴 力, 登校 拒 否 等の 病理現 象と無 関 係とは思 え ない の で ある。

An

して は, 受 診の き F っ かけが, 母 親が わ が子の 異 常に気づい て 受 診する場

よ りは, 患者の

人の 母親や ,学

の 教 師の

め で, は じめ て患 児の 母親が相 談 に

るケ ース がか

い こ とが, こ の

事情

物語

っ て い る。 表 4 1980 (昭和55)年 度 患 者

No

年 齢 (歳 ) 体 重 (kg ) 主 要 症 状 (+,一,?,で記 入 ) 外来 ま た は 入 院 氏 名 性 発 症時 診療 時 病 前 最 小 無 月 経 活動性亢進 食行動の異常 ユ 外

Y

A

. ♀ 16165342 十 十 十 2 外+入 T .S , ♀ 333351 .445 一 一 一

3

外+入 M .Y . ♀ 14154428 十 一 十 4 外 MS . ♀ 14154333 十 ? 一 5 外+入

Y

M

. ♀

16175827

5

十 十 十 6 外

A

M

. ♀ L6175440 十 十 十 7 外+入 T ,王(. ♀ 23245029 ,5 十    

8

外 W ,

0

. ♀ 13143325  未 発 来十 一 一 表 5 1981 (昭和 56)年度 患 者 No 性 年 齢 (歳 ) 体重 (kg ) 主要症状 (+,一,?,で記入) 外 来 ま た は 入 院 氏 名 発 症 時 診 療時 病 前 最 小 無 月 経 活動性亢 進 食行動の異常 9 外 M .M , ♀ ユ4 工44229  未 発 来十 十 一 10 外+入 Y .F , ♀ 202 ユ 4832 十 十 十 1ユ 外

M

K

. ♀

20214834

十 十 十

12

A

1

. ♀

20224433

十 一 一

13

S

0

. ♀

18

85243

一 一 十 14 外 K .K . ♀ 25254638 十 一 一 15 外 Y ,K . ♀ 22245343 十 一 十 一

36

 神経性無食欲症 (摂 食障害つ い て (島田)

(8)

表 6  1982 (昭和

57

)年度 外 来ま た は 入 院 氏 名 性 年 齢 (歳 ) 体重 (kg ) 主要症 状 (+,一,?,で記 入 ) 患 者

No

発 症 時 診療 時 病 前 最 小 無 月 経 活動性亢進 食行動の異常 16 外+入 M .M , ♂ 2123604 ユ   十 /7 外

A

G

. ♀

23275232

十 一 十 工

8

Y

G

, ♀

14236237

高2の時ユ 年間止まる 現在不 順 不 詳 十

19

K

Y

. ♀ 16165635 十 十 十 20 外

K

.T . ♀ 16 ユ85536 高1で 1回 有っ たき り   十 不  詳 十 1    

22

   

2

外 Y .M . ♀ 22265934 十 不   詳 十 外+入

H

Y

. ♀ 15196432 十 十 十

23

J

Y

. ♀ 17206040 十 十 十

24

外+入 M .T . ♀ 25295040 十 十 十

25

外+入

S

.U , ♀ 1719 十 十 十

26

外+入

MH

. ♀ 263348492835 十 一 十

27

Y

Y

. ♀ 21224230 十 十 十 28 外+入

MM

. ♀ 16 ユ94235 十 『 十 表 71983 (昭和

58

)年 (

1

月一

3

月まで) 年 齢 (歳 ) 体 重 (kg ) 主 要 症 状 (+,一,?,で記 入 ) 患者 No 外来 ま た は 入 院 氏 名 性 発 症 最 小 活 動 食行 29 外 C .S . ♀ 17185038 十 十 30 外 E .S , ♀ 23246039 十 ? 十 十 31 外

M

F

. ♀ 12195830 十   十 32 外 S .B . ♀ 121345 .639 中1よ り   十 十 十 33 外

R

O

. ♀

23265730

十 十 十 34

M

0

. ♀

14

54432

中3 の 4 月より   十 十 十 35 A ,E . ♀ 17225843 十 十

36

S

A

. ♀

42484637

十 十 冖 十

37

Y

.1く. ♀ 26324326 十 十 十 龍 谷大学論集 一

37

(9)

Ryukoku University Ryukoku  Umversrty 表

8

  発症時年 齢と受診時年齢 発 症時年齢 受診 時年齢 〜

15

9

6

16

20

14

2

21

25

0

1

26

30

2

4

31

2

33

歳,

42

4

37

37

だ 0

0

ー ユ 発 症 時 数

5

0

…・ ・ 、,

iii

1ぼ i耄::塁

5

ぎ1撮 ..葺99

1

1

          

16

  

21

  

26

  

31

 年       〜    令      

1

     

15

  

20

  

25

  

30

      

15

                     図

1

  発症時年齢と受診年齢 一

38

 神経性無 食欲 症 摂食障 つ い て(島田)

16

〜    〜

20

 

25

1

1

年 〜 

30

(10)

V

  精 神 症 状

 

日で は,

An

因 とし て心理 的 要

が もっ とも重

されて い る。 し たが っ て ,

精 神症状

関連

す る

状に つ い て,

くの 報

がある。 次にそ の主な も       (9)      の を列 挙して お

 

1

)食

 

本 症に おい て , 最も 目立つ 症状で ある。

食, 不食, 拒 食な どが認め られ, 食

を とる よ うす すめ る と, か えっ て ひ ど くなる こ とが多い 。 摂食 し た ように みせ か けて隠し て

て る。

食後

, 意 識 的に嘔吐 した り, 下

を乱用 する。 カ ロ リーの の を

う。 人

食事

を し た が らない 。 時に 料理 に

熱中

し,

人 に

た が り,家 族胞 が何か干 渉 す る。 隠れ

い , つ まみ

い , 盗み

い , 残 飯

さ りなどが

られるこ とが

る。 ま た

拒食

食を繰 り返 す 場 合 もあ る。

 

2

心 理状 態

 

An

の 心理状 態 と し て指 摘されてい るの は,成

す る

悪,

女 性

, 幼

年期

憧憬

子羨 望, 肥満

嫌悪

痩身

する偏

求,

欲主義, 主知主義な どで ある。 し か し思春 期 以

症す る例の

るこ と,逆 に 思

春期前

発症

る例の

るこ と,

An

症 時 期の 低 年

化が

指摘

さ れてい る こ と, お よ び 男性 例が稀 とは い え ない こ とな どを十 分に考 慮 しなけれ ば な らない 。

 

3

性 格 傾 向  一般 的に は , 表 面上は 内気, 内 向的で 素直に 見える。 したが っ て 親か ら見 て , 素直な よい 子で あ り, 手の か か らない ,

て やすい 子 とい う 印 象を 与え る。 学 校で も, お とな しい , ま じめな生 徒 とし て 教 師に認め られ, い わ ゆる優 等 生タイプ と受 けとられて い るこ とが多い 。 し か し

An

者に 深 くか か わ っ て み ると

な傾 向と逆な性

傾 向に気づ か さる。 強 情で, 我 がつ よく, わ が ま まで, 反抗 的で

る。 面 従

腹背

とい う言

が ま さし くあては まる。 他か らの干渉を

い , 干渉される と, しば しばよ り 一 層 反抗的に な る。 未経

な治

療者

が,

身体

善をあせ り,

食を

く迫っ た り, 輸

や 鼻 腔栄 養を試 み て失 敗 する の は, こ の よ うな性 格 特 徴が関係 して い るか らで あ る。 また

迫 傾 向, 心 気 傾 向, 完 全 癖

 

自閉傾 向, 孤 立 傾 向な どが認め られる 一, 両

性 が認め られる。 下 坂は, 孤 独 と強い 愛

要 求, 内

尊大

, 献

とわがま ま, 過

羞恥 と露 出的傾 向, バ ン カ ラ としゃ れをあげて い る。 龍 谷大学論 集 一

39

(11)

Ryukoku University Ryukoku  Umversrty

 

4

行 動 異 常

 

An

患者で は,

に あ

食行動

異常

, さ ま ざま な

行動

の 異 常 が 見 ら れる。 活 動 性の 亢 進は ほ とん どの 症 例に 認め られ る。

せ て, 骨 と皮だけの身

状 態に ありな が ら, そ れ とは全 く不 釣 合な

動 性の

亢進

がみ られる。 し か も 患 者は疲 労感を訴 えない 。 家 族が患 児の 異 常に気づ くの が遅れ る原因の 一 もなっ て い る。 患児が活 発に行 動 するの で,  「ま さ か 病 気 とは思い もよ らなか っ た」 と告

る母 親が ある。 先に あ

た 盗み食い を含め, しぼしば 盗

が認め られる。 しか しこ の 盗みは, 一

, もの

し さか らの 盗み で はない 。 た と え ば, 手 もとに

食物

が十

に あっ て も,

人の 食

を盗む し, 食

の 物を 盗ん で も, 自分の 物にするの で は な く, 盗んだ もの を トイ レや チ リ箱に捨て て い る。 他 人を困らせ よ うと して い るか の

く思われる場合 もある。 し か も反

物を他人に与え た が り, また 物品 を与えた り もする。 次に 自分の 身辺の

化を嫌 うの よくみ られる現 象である。 病 室を変わ る こ とを

う。 自分の 部屋 の は, い つ も 一

。 病

内で た とえば

置時計

位置

な ど

えて

子 を み る と, い つ の 間に か元の 位 置に も どし てい る。 こ の よ うにあ らゆ る

変化

う。 ま た しば しぼ

非常

に Ct けち” で

る。 金 銭

で も

端に細かい の に

か される。

 

5

)対

係の み  母親との 関係が重 視されてい るが, 母親は 一 般に過干渉, 支 配 的 態度で患 者 に

接触

し て い る。 これに

し,

患老

は反

抗的

りなが ら 一

依 存

ある。 父親との 関 係で も同様の状 態が み られた り, 暴 君的, 自己中心的な父 親, あ るい は 家庭 内で無 力, 無 関心 な 父親が問題 と思わ れ る症例 もある。 同胞 間で は対 抗

識が強 く, 同胞 間の 極めて 険 悪な症 例は稀で は ない 。

 

6

身 体像の

障害

と病 識 欠

 

An

患 者

自身

は,

して 自

が痩せ て い るとは思っ て い ない 。 む し ろそ れは 自ら求め るもの とし て肯 定 的で り,

し て病 的で ある とか 異 常で あるとか は 認め ない 。 し た が っ て, 治

療者

者に 「よく

べ る ように な っ た」 とか 「

し肥 っ て きた」.とか告 げる と, 余 計に

食, 不食が強ま っ て し ま う。 こ の 身 体

の 歪み と病 識 欠 如は, 本 症の 重 要 な

徴で あ る。   以上述ぺ た本症の 精 神症 状 全体を通じての 印 象を, 筆者は “ ほ どの よ さ” と い う事を了 解で きない と感じてい る。 患者の考え な り, 行

は,

に極端で あ り, 中庸とい う事が ない か らである。 一

40

 神経 性無食欲症 (摂食障害) つ い て(島田)

(12)

VI

に つ い て

 

An

の予

につ い て は,

多数

の報

はあるが, その

果は報 告 者に よっ て, か な り

っ てい る。 一般 的

科 医 報 告

良好 とす 多 く , 精 神

医の 報

は, 予

不 良とする もの が

傾向

がある。 これ は

内科

医 を

る症例には軽症例 が多 く,

神 科 医が治

する症 例は重

例が多い ので あろ う とい

意見

が あるが, 一

An

病態

病 因に つ い て の 考 え

の 相違に よっ て 予

判定

し ての

え方,

判定

基準も異 なっ て来る の であろ うと 思われ る。

筆者

科医の判 定に 妥 当性を欠い て い るとい わ ざる を

ない 例 を経 験し てい る。 しか も 彼 らの判 定は 楽観 的に 過 ぎて は い ない か とい う

を持っ て い る。 最 も単 純な判 定は,体 重が 元 に復 し, 正常 な

生 活がな されてい れぽ治 癒 とする もの で ろ う。 し か し

An

は その ような

純 な判

基準に当て は ま ら ない 疾 患で あ るこ とは,

日で は万 人の 認め る所で あろ う。 先に述べ た

神 症

し て い る か どうかの 検

な こ とは

すま で もない。 し た が っ て 本症の 予 後 判定は , 長期 間の 観 察を要 する と と もに , 厳 密に な され ね ぽな らない

精 神

検討

と ともに, 少な くとも

経の 再

, 正 常 な結

生 活, 出

, 育 児な ど, 主婦として も, 母 親 とし て も正常な 日常 生 活が長期 間に わた っ て送れて い る か ど うか 男性な ら

会 人 として 家

の 主 人として 正 常 に

応し て い る か どうか などが 確認 されて, は じめ て 治癒の

判定

が 可能で あ る。

末松

らの 調 査は, 上

の 問題を

念頭

に おい て はい るが,

3

4

追 跡 調査で り, 中聞的結 果 とみ な し

る。 これ に よ る と

143

, 治癒

47

33

)軽

69

48

不変

19

(13

死 亡

8

6

る。 西 川 らは

24

例中 ,治癒

15

63

) 改

7

例 , 不変

2

例とし て い る。

Kay

 

e

# 

38

例 中

6

16

は死 亡 し た とし て い る。

Nemiah

1958

15

文 献

282

例中, 治癒ない し回復

129

例 (

45

7

%) 改

69

24

5

慢 性 化した もの

62

21

9

死 亡は

22

7

8

と してい る。 また

Clauser

30

文献

656

例につ い て,

215

例, 死 亡

39

例 (

6

全 く改

を認め られ ない もの

220

例 と して い る。 死 亡 の 原 因は , 身 体的 衰 弱 以外に 自殺 例 も少なか らず 報告 されて い る。 い ずれに して も, 予

の 判定は困難で は あるが, 予 後 良好とは決し て い えない 難 病であ る。 そ し て予 後の 判 定に は

15

以上 の 追跡 調 査が 必要と思わ れ る。

V

 

に つ い て

An

治療に は, 現 在ま で の とこ ろ, 決め手とな り得る有効 な方 法は見出 さ 龍谷大学論集 一 41 一

(13)

Ryukoku University Ryukoku  Umversrty れてい ない と言 え る。 これ まで多 くの 研 究者に よる 治療法 の報 告があるが, そ れ らを み て も, 統 一

うも 。 ま た種々 の 治療

につ い て, あ る研

者は

定的意 見を述べ 同 じ治に つ い て, 他の 研 究者が否定 的 見 解を 述べ て い る。 これは

する に

An

とい う疾 患の

態に つ い て , 統 一

な く, 諸 家の 見解に違い がある為である。 し か し

日で は,

An

は 心 理的

因 で

症する もの で り, 治

は, 心 理

療法

精神療

法 が主体で あり, 身 体 療 法       臼      鉤ee助 は補 助 的 手段で 永 続 的 効 果は望めない とする考 え

が支 配 的で る。

  1 )

心 理療 法

 

こ こ で は広い

で の心 理療法を

介す る。

 

An

で は, 両親 と患 者 との 関係を中心 とし た, 家 族 病理 が重

されてい る。

者 らもこ の 見解に立 っ て , 家族

法を重

して い る。 不 良な家

庭 環境

か らの 隔

が家 族 療法の

も言えるもの で り, し た がっ て 入

則で ある。 入 院は , 身 体療法を行わ ね ぽ な らない 場 合に も

し て い る し,

病識

の な い 患 者に, 病 感を

か せ る

意味

か らも望ま しい 。 両

患者

完全

隔離

さ れ, 面 会は勿論 禁止される。 こ の よ うにする こ とに よっ て, 家族, こ とに 両親 と患者は, そ れ ぞ れ 距離を もっ て, 改め て 親子関係や 養育環

につ い て

える こ とが

に なる。 患 者に 好ましい親 子 関係を理解させ, 養 育の 問題 点を悟ら せ , 歪ん だ 心 理状 態を

正する 目

で, 治

療者

の 一

は父

的 立場で, 別の 一 人は母 親 的立場で 患者と接 触する。 一

, 両親に 対して も, 度々面 接 し, 親 子

係の 問題 点

育上 の 問 題 点,

症に い た る まで の 経過, 発 症の 契 機, 今

問題 点,治 療 方 針につ い て の 理解 と協 力を求め る な ど, 患 者 と家族を別々 に 治療し てゆ くの で ある。 こ の よ うな治療 法は, 勿 論 医 師の みで 行 うこ とは不可 能で あり, 臨 床心 理士, ケ ー ー , 看

師か らな る治療チ ー に よ っ て な される の で

る。 治

チ ーム

治療

に つ い て

検討会

い , 治

行の 工 合, 患 者や家族の 状 態や経 過に応じて, 検 討 会を何 度 も繰返 し て ゆ くの で る。

 

すべ 療 法つ い て い えるの は, 良好な 治療チ ー患 者

家 族

係の立を は か る の が

本とな る。 し た がっ て 治

チ ーム

気よく

力を 積み 重ねて ゆかね ぽ な らない 。 なお入院に際して は, 患 者は ほ とん どの 場

, 拒 否 的で る。 し か し

治療

者が, それぞれの

例に 応 じて

切な説

え ば 成 功 する。 両

や, 影

力の ある人に 説

させ る と よい とい う考え方 も ある が, 治 療者に よ る説

が, その

治療

に とっ て も, もっ とも好ま しい 。 入院 中の 患 者は, しぼしば異

常行動

を 示 す。 入 院頭 初は,

面 的に は従順で,看

42

 

神経 性無欲症 障 害)つ いて(島田)

(14)

師や 医師, その 他 治

ス タ ッ フ に素直な態 度で 接 し て い る こ と が

い 。 し か し 患 者は こ の , 治 療ス タ ッ フ や他 患の 様 子, 病

内の状 況 等を よ く観 察して お り,ある時 期か ら異 常行 動が出現しは じ め る。 病 棟 内, ある い は広 く院 内を徘 徊

るが, 巧みに 目立たない ように してい る こ とが多い 。

事 を全 く とらない が ,摂

した よ うに見せ か けて捨て て し まっ た り, トイ レで 嘔吐 した りする。 ま た,

患の

食物

を 盗み,

冷蔵庫

な どが

らされて い る。 残

飯あ

さ り

珍し くない こ の 他 些 細な物を盗む。 治療ス タ ッ フ との会 話に も, よ く計算さ れ た嘘 言が

い 。 こ れ らに つ い ては , 治療ス タ ッ フは 気がつ い て も, 直接 的に 注 意する こ とは避けた方が よい 直 接 的患 者の 問題

行動

指摘

し,注

す る と, か えっ て

抗 的 とな り, 異

は エ ス カ レ ー

事に関する会話 もしない が よい 。 特に説 得 し て食 事を とる よ うにす すめ る こ とは逆 効 果を も た らすだけで る。 ま た 「よ く

べ た」,

 

し肥っ て きた」 な どはげましの つ も言っ た りする こ とも避 けるべ きである。 体 重につ い て も無 関心 を よそ お う方 がよい 。 患

に は,

り に

重を は か る場合 が

るが,

治療者

は, 見て 見ぬ ふ りをして い る方 が よ い。 ま た無 断離 院 も珍 しくない 。 患 者は, 家族 こ とに母 親に い たい こ とを訴えるが, 治

者は 「も う少し よ くな っ て か ら」 と, やわ らか くそ らし て お く。 そん な場 合に無 断離院が多い ようで ある。 し か し

行先

は必 ず 自宅へ

っ て い るの で , 自宅 と連

を とっ て速やか に連 れ戻 す よ うにする。

 

家族 療 法 以外に も, 多 くの心 理療 法が試み られてい る。

神分 析 的心 理療法 で は, 患 者の 無 意識の 葛

状 況を意識 化さ せ る よ う導 き, 食 行 動を は じめ とす る病 的な適 応か ら, 現 実 的 適応が 可能 なよ うに治 療する のが原 則で あるが,

療 者との よき人 間 関係がで きる と治

が見 られるとい う。         鮒   行 動 療 法に よ り本症を治療 する こ とは, わ が 国に お い て も近年, 試み られる よに な り, その 成 績が

報告

されて い る。

行動療法

として は , 一 , 患者 が, 摂 食や体重 増 加に, 不安や恐 怖を抱い て い る 場合,

統的脱 感

療法を行 うの で ある。 患 者の

い て い る不 安や 恐

を先 ずす べ 調 ゆ き , 程 度の

い もの か ら重い の へ と段階 的に並べ て , 心

の 弛緩した状

に お い て, そ の イ メ ージに

れさせ て, 次 第に不安, 恐 怖を軽 減させて ゆ く

方法

で ある。

二 の方 法は オペ 条 件療 法 。 本症 患 者は活 動 的で ある点に 注 目し て ,

患者

行動

制限

した り, 患者の 要 求する品

制限

し て お く。

者 が摂

した り, 体 重増 加が認め られる とそ れに応 じて , 行 動 制 限を ゆる め, 行

動 範

囲を段階 的に ひろげてゆ く。 あるい は 患者の欲す る

TV

を許可 し た り, 龍谷大学論集 一

43

(15)

Ryukoku University Ryukoku  Umversrty ラ ジオ , 読

許可 した りする。 こ の よ うに患 老が

現実

応に 慣れ る よ うに 操 作 するの である。 ま た , 患 者の 摂 取し た カ ロ リ ー

token

貨 幣

を与え, token に よっ て, 患 者は , 行 動,

品 を

入する こ とが 出

る よ うに

法 もある。 い ず れに し て もこ の 方 法で は, 従

の 考え

の よ うに , 患 者の摂 食, 体重 増 加, 異 常 行動に 表 面 的には 無 関心に 接しな が ら心 理

療法

め てゆ くの とは

の や り方で

り, か えっ て 失 敗に

わ る こ とがあ る。 各 症 例ご とに心 理療 法は, 慎 重になされね ば ならない こ とは 当然で はあ る が, 患

治療

が入院 期 間

だけで な く, 無

退 院 出来た とし て も, その

後数

間 とい う長期に わた っ て, 通 院 治 療 を続 け な けれぽな らない こ と, 退 院

の 家庭 環 境が改

されて い なけれぽ, 折 角の 入院 治療 も無駄になっ て し ま うこ と な どを

える と家 族

療法

も重

がお か か れるべ であろ う。

 

2

身体療法

 

先に

ご とく,

An

の 発症は心理的なもの で あり, 心 理療 法が治 療の 基 本である とい う考えが,

配 的で ある。 しか し ながら,

者の 身

が, 極端に

い 場

は, 生

を先 ず

うとい うこ と, また その よ うな最 悪の 身 体 状

で は, 心 理

法を行っ て も,患 者に は心 理

法に 反応 す るだ けの

神 的 予 備

もない こ とか ら,

ち に心 理

療法

効果

を期

ない の で ,

る程

        ま で, 身 体 状 態を 回

させ るこ とが先

と な る。 身

体療法

も種々試み られて い るが,

身体状態

を 回

させ る

の カロ リ ー

給 とて は

経鼻

腔栄

い ら れる。 但 しこれ に対して は , non −verba1

強 制 とな , 永 続 的効 果は

めない の で や む を

ない

い ない が よい とい

があ   る。

な くとも患 者に 苦

を与え,治

者に 対し, 恐

怖感

悪 感を与え ない よ うに

意す

る こ とが

切で ある。 それに は, こ の 方 法が それ 程

痛で ない こ と, こ の 方 法が

者の身 体状 態に とっ て必要で ある こ とな どを よく説 明し, 患

を十

分納得

させた 上で, 徐々 に 投 与量を増 やしてゆ くの が よい とされてい   る。 い ずれ に して も本 症の 治療は, た だ 太 らせれぽよい とい うもの では事を十 分 理 解 し て いなけれ ば な らない。

IVH

効で ある との報 告も あ り。

 

薬物療

法を

め , 身

療 法の 結果は, 良 好 な 結

が 得 られた と報

された り,

効果

が なか っ た と され た りするが, これは 同 じ療 法を行 う場合で も, 治療 者一患

間の 心 理的

関係

, 信

, 治

に対し

者が どの 程 度納 得し て い る か, 患者の 心 理状 態が治

け 入れる ように な っ て い るかな どの 心 理

の 影

が大 ぎい と考 え られる。 一

44

 神経性無欲症 (害)い て(島

(16)

お   わ   り  に

 

An

に つ い て,

生省

特定疾

患 ・調査研

班が

1981

組織

された。 その

よ り

An

の 患 者の 問題を 考

し て きたが

者の

門外で ある消化 器 内

, 内 分 泌

科,

産婦

人科

関連

業績

や研

究報告

に つ い て は

れ ない で い る。

筆者

14

歳の 女性

体重

14kg )

が小 児科 よ り

介され,

精神

科 医と共 同観 察を し て きた こ とがある。

 

An

の 中核

に つ い て ,

者の 生 育暦, 本人の 性 格, 両

との

係, 家

庭環

に つ い て , つ ぶ さに情 報

分析

をお こない , 患者 を と りま く

係を調 整 す る こ とに より症 状 改善を見て きた 。

An

の本態につ い てなお明確でない現 在, 患者の 人 間関係を再 度 見 直す 必 要がある。

 

れ ら考 えを もとに

法 と銘 打 て,

An

の 入院 治 療を実 施 し て い る心療 内科 医が 心身 医学会 誌にその 効 果

発表

して い る。

 

患 者の みが 次

してい る現

は, 社

心 理

学的

な 立場か らの

検討

が必 要であ り, それに ともなっ た 予防 的, 治

的ア プ ロ ー

み られ ね ぽ な らな い こ とを示 し て い る と

えて い る。 註 (1厚生省特定疾患 「中枢

1

摂食異常 調査 研究 班昭和56年度研究 報告書 (

1981

(2

Feighner

, 

J

P

.:

Diagnostic

 criteria  

for

 use  in psychiatric research . 

Arch

 

Gen

. 

Psychiatry

 

26

57

63

,1972. (3) 末松弘行 :神経性 診 断基準 ・病型分類 。 内科45, 1309−1311, 1980   (昭

55

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Anorexia

 nervosa の臨床精神医 学的研究。 精神 神経学雑誌

61

2256

 −2272, 1959 (昭34)。 (5石川  清, 岩田由子, 平野源 一 :

Anorexia

ervosa 症状成 因 い て 。 精神  神経 学雑誌 62, 1203 −1221 ,

1960

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表 1   Anorexia   nervosa の 邦訳 名 1 . 神 経 性 食欲 不 振症 2 .神経 性食思 不 振症 3 .神経性 食欲異常症 4 .神経性食 思異常症 5 .青 春期 や せ 症 6 .思春期 や せ 症 7 .神経性 無食欲症 8 .無食欲症 9 .神経性 食 欲 不 良 症 10 . 神 経性 食思 不 良症 は 主 と し て 16 歳 か ら 23 歳 の 女性 で あ る が , 時 に 男性 も み られ る 。 無 月 経 , 便 秘 , 食 欲不 振 , 徐 脈
表 3   神経性食欲 不 振 症     受 診 数 ( 住 友 病 院 心 療 内 科 ) 神 経 性 食 欲 不 振 症 患 者 総 数 比     率 外来 8 676 1 . 18 % 1980 年 ( 昭 和 55 ) 入 院 4 55 7 . 27 外来 7 798 0 . 88 1981 年 ( 昭 和56 ) 入 院 1 78 L28 外 来 13 704 1 .8 1982 年 ( 昭和57 ) 入 院 3 51 5 .8 外来 9 159 5 .71983 年 ( 昭 和58 > 3
表 6   1982 ( 昭 和 57 )年度 外 来 ま た は 入 院 氏 名 性 年 齢 ( 歳 ) 体 重 ( kg ) 主 要 症 状 ( + ,一, ? , で 記 入 )患 者 No 発 症 時 診療 時 病 前 最 小 無 月 経 活動 性亢 進 食行動 の 異常 16 外 + 入 M .M , ♂ 2123604 ユ   十 / 7 外 A . G . ♀ 23275232 十 一 十 工 8 外 Y . G , ♀ 14236237 高 2 の 時 ユ年間止まる 現 在 不 順 不  詳

参照

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http://www.uksport.gov.uk/が発行した、 Eating Disorders in Sport(スポーツにおける摂 食障害)http://www.uksport.gov.uk/resources/eating-disorders-in-sport を UK