『摧邪輪』
(日本思想大系巻十五『鎌倉旧仏
教
』
岩
波
書
於
二一向専修宗選択
集
中
一摧
レ邪輪巻
上
*
31 7 下一
向
専修宗選択集
の中
に
於
い
て
邪を
摧く輪
巻上
夫仏日
雖
レ没、余
暉
未
レ隠。法水雖
レ乾、遺潤
尚存。三印分
二邪正
ヽ 一 夫れ 仏日没すと雖も、余輝未だ隠 れ ず。 法水乾くと雖 も 、遣潤なほ存せり。 三 印 、 44五分別
二内外
一我等依
レ之嘗
二甘露
一醒
二毒酔
一良如
レ聞
二梵音
ヽ 一似
レ対
二 邪正 を分 ち、五分 、内 外を 別す 。我 等 こ れ に よつ て 、 甘露 を嘗め 、 毒酔を 醒 ます。ま金容
一以
レ之為
二種智
円因
ヽ 一以
レ之萌
二無上覚芽
一豈非
レ幸耶
、非
レ喜
こ と に 梵 音 を 聞くが ご とし、金容 に対 へるに 似 たり 。こ れ を 以 て 種 智 の円因と し、 こ耶。
雖
レ然
愍敍
愚子
適値
二慈父
一而悶
絶、
失心
狂子
希
受
二良薬
一以不
れを 以て 無上 の 覚 芽を 萌 す 。 あ に幸 にあらずや 、 喜 に あらずや 。 然 り と 雖 も 、 愍 跰の レ嘗。何其
咄耶。爰
近
代
有
二上人
ヽ 一作
二一巻書
一名曰
二選択本願
念
仏
愚子は、 たま た ま 慈父に値 ひて悶絶し 、 失心の狂子は、 希 に 良 薬を受け て 以 て嘗め ず 。 ○集
一迷
二惑於経論
ヽ 一欺
二誑乎諸人
一雖
下以
二往生行
一為
上レ宗、反妨
二礙往
何ぞ そ れ 拙き や 。生行
一矣。高辨年来於
二聖人
一深懐
二仰信
一以
下為所
レ聞種種邪見、
在
こ こ に近代、上人あり、 一 巻の書を 作る。名づけ て 選 択本願念仏集と 曰 ふ 。 経論に家男
女等、仮
二上人高名
一所
中妄説
上未
下出
二一言
一誹
中謗上人
上設雖
迷 惑 して 、諸 人を 欺 誑 せ り 。 往 生の 行を 以て 宗 と すと 雖も 、反 って 往 生 の 行 を 妨 礙せ レ聞
二他人
之
談
説
ヽ 一未
三必信
二用之
一然近
日披
二閲此
選
択
集
ヽ 一悲嘆甚
り。 高 弁 、 年 来 、 聖 人 に お いて 、深 く 仰 信 を 懐 け り 。 聞 ゆ る と こ ろ の 種 種 の 邪 見 は 、深。聞
レ名之始、喜
レ礼
二乎上人妙釈
一披
レ巻之今、恨
レ黷
二乎念仏
真
在家の男女等、上人の高名を仮り て 、 妄説すると こ ろ な りとお も ひき。未だ一 言を出宗
一今詳知、在家出家千万門流所
レ起種種邪
見、皆起
レ自
二此書
一 し て も、上人 を誹謗せず。た と ひ 他人の談説を聞く と雖も、未だ必 ず し も こ れ を信用至
二上人入滅
之項
ヽ 一興行倍盛。
専
鏤
二于板印
ヽ 一以為
二後代重宝
一永
せず。 し かるに、 近日 こ の 選択 集を 披閲 す る に、悲嘆甚だ探し 。 ○流
二於一
門
ヽ 一而敬
重如
二仏経
一惣以
二為往生宗之肝要、念仏者
之
秘
名を 聞き し の 始めには、上 人の妙釈を礼せむこ と を喜ぶ。巻 を 披くの今 は、念仏の府
一依
レ之適
有
二難者
ヽ 一負
三過於
難
二乎念
仏
一希値
二信人
ヽ 一擬
三徳於
信
二 真 宗 を黷せりと恨 む。今、 詳かに知りぬ、在 家 出 家千万の門流、起す と こ ろ の種種の乎往生
一遂使
下一味法雨分
二甘醎之
味
ヽ 一和合
衆僧成
中不同之失
上何其
邪見は、皆 こ の書 よ り 起れ りといふ ことを。上 人 入滅の頃に 至 っ て 、 興 行倍盛ん 45悲乎
。
仍
於
二或処
一講経説法次、出
二二難
一破
二彼書
一 〈就 二文義 一有 二多種 なり 。 専 ら 板 印 に 鏤 め て 、 以 て 後 代 の 重 宝 と す 。 永 く 一門 に 流 して 、敬 重 す るこ と 仏 心 謬 一 且置 レ之。 唯出 二大邪見 過 一 邪説亦多種、且出 二二種 一也。但有人云、 経のごとし 。 惣じ て 往 生宗の肝要、 念 仏者の秘府なりとおも へ り。 これ によっ て 、 た ○ 此書更 非 二上人 製作 ヽ 一 是門 弟所 レ選 也 云云。然 者彼集 奥 文云、而今不 レ図蒙*
31 8 上 また ま難ずる者 あ れば 、過を念 仏 を 難 ず るに負はす 。 希に信ず る人に値 ひて は、徳を ○ レ仰辞 謝 無 レ地。 仍今 跟 集 二念仏 要 義 一 唯顧 二命旨 ヽ 一 不 レ顧 二不敏 一 是即 無慚無 往生 を信 ずる に擬 せり 。遂に一 味の法 雨 に甘醎 の 味 を 分 ち 、 和 合 衆 僧に不 同 の失 を成 愧之 甚也 。 庶 幾一経 二高覧 一之後 、 埋 二于壁底 ヽ 一 莫 レ遺 二窓前 一 恐為 レ不 レ令 三破 さし む。 何ぞ それ悲し きや。 仍 つ て 或 る 処におい て 講 経説法 の 次に、三の難を 出 し て 、 法之 人 堕 二於悪 道 一也。 〈 己 上〉既有 二此文 一 須 下対 二請人 一問 中作者 名字 上也。 かの書を破す 。 有人云、 上人雖 レ有 二深智 ヽ 一 不 レ善 二文章 一 仍無 二自製之書記 一云云 。設上人自 〈 文 義に つい て 、 多種 の紕謬 あ り。且 く こ れ を 置 く。 た だ 大 邪 見の 過を 出す.邪 説 も また 多種 、且 く二 種を 雖 レ不 レ執 レ筆、若印 二可之 一者、 更不 レ免 二其過 一 若上人 不 二印可 一者、何 故 迄 二 出すなり 。ただし有る 人の云 く 、「 こ の 書、さ らに 上人の 製 作 に あ ら ず 、 是れ門弟の撰 する と こ ろ な り 」 と 云 滅後 一鏤 二于板 印 ヽ 一 以為 二亀鏡 一乎。 若 又 雖 レ非 二上人 忸 門弟 所 ヽ 一 彼一門 有 三 云 。 し か らば、かの集の 奥 の 文 に云 く 、「しかるに 今 、図らざるに仰を蒙る、辞謝 するに 地 なし 。 仍 つ て 今、 摧 邪輪 巻上 尽 二 第 三 門決 一摧 邪輪 巻上 受 二学此 書 ヽ 一 尚不 レ免 二其過 一也。 若上人 都 無 レ知者 、唯破 二此邪書 一也。 更 不 跟 に念仏 の 要義を 集 む 。 た だ 命旨 を顧みて 、 不 敏を 顧み ず。是れ即 ち 無 漸 無愧 の 甚 しきな り 。 庶 幾は くは 、 レ可 三簡 二別其作 者 一也。 〉 一 た び高覧 を 経 て の後は、壁 の 底に埋 み て、 窓の 前に遺すこと なかれ。恐 ら く は 、破法の人 を し て 、 悪 道に堕 せしめざらん がためな り 。」 〈 已上 〉既にこの 文 あり。すべ か ら く 請 ふ 人 に 対 し て、作者の名字 を 問 ふ べきなり。 有る 人の云 く 、「 上 人 、深 智ありと雖 も、文章 に善 か ら ず 。 仍 つ て 白 製 の 書記な し 」と云 云 。 た とひ 上人、自 ら 筆 を 執 らず と雖も、も し こ れ を印可 せ ば 、 さ ら に そ の過を 免 れ ず .も し上人、印可せずは、何 が 故 ぞ 、減後 に迄っ て 、板 印に鏤め て 、 以 て 亀 鏡 と す るや 。 も しまた、上人ならびに門 弟 の 所 撰に あらず と 雖も、かの一 門、 こ の 書 を 受 学 す る こ と あ ら は 、 尚 し そ の 過 を 免 れ ざ る な り 。 も し 上 人 、 都 て 知 る こ と な く は 、 た だ こ の 邪 書 を 破するなり。 さ ら にそ の作者 を 簡別すべ か ら ざる な り 。〉
一撥
二去菩提心
一過失。
〈此 過者、処処吐 レ言。教義 倶分明也。 〉 一は、 菩 提心を 撥 去する 過 失 。 〈 こ の 過 は 、 処処に言を吐けり.教義供 に分 明なり 。〉 はっ き ょ 46二以
二聖道門
一譬
二群賊
一過失
。
〈此 過者、勘 二一言 陳 下 意 許 一出 レ之。 〉 二は、 聖 道 門 を 以 て群 賊 に 譬うる過失。 〈 この過は、一の言陳の 下 の意許を勘へ てこれを出す 。〉後日伝聞、彼座
席
有
二専修門人
ヽ 一大起
二忿諍
一曰、
選
択
集中
全
無
二 後日伝 へ 聞 く 、か の座 席に 専 修 の 門 人あ っ て 、大 い に 忿 諍を起 し て 曰 く 、「 選 択 集此義
一此出
二自僻
見
一也云
云。
余因
レ聞
二此事
ヽ 一為
レ糺
二邪正
ヽ 一粗記
二 の中 に 全 く こ の義なし。こ れは自ら僻見を 出 すなり 」 と 云 云。 余、 こ の 事を聞くに因ん一二
一夫蛇
飲
レ水成
レ毒、牛飲
レ水成
レ乳。邪人
聞
レ法成
二項悩
ヽ 一正人
で 、 邪正 を糺 さん がために、 ほ ぼ一 二 を 記 す 。夫 れ 蛇 は水 を飲 んで毒と成し、牛 は水聞
レ法成
二菩提
一其邪
正易
レ迷、
善悪難
レ分。若得
二分別
一者、二利道
を 飲 ん で 乳と 成 す 。 邪 人 は 法を 聞 い て 煩 悩 と 成 し 、 正 人 は 法を 聞 い て 菩 提 と 成 す 。 そ是満
。是
故於
二諸行
一皆有
二誑偽
一学者宜
二准簡
一勿
レ令
二自心
墜
一レ中。
の 邪 正迷 ひ 易 く、善悪分ち難し 。もし分別す ることを 得 ば 、二利の道 是 に 満 ず。 こ の香象大師梵網経疏、約
二三学
及雑行
ヽ 一各別引
二経論文
一出
二其咎
一立
二 故に、諸行に おい て 、 皆誑 偽あり。学 者 宜しく准簡すべし 。 自 心 を し て 中に墜さし む ○大賊
名
一然戒
定
慧
三学
、
各
有
二別相
一第四出
二雑行
過
一云、四雑行者、
るこ と な か れ 。亦有
二二類
一一約
二福行
一者、謂
性
非
二質直
ヽ 一苟姧
計
共
崇
二奇福
一眩
二 香象大師の梵網経の疏 に 、 三学 およ び 雑 行に約 し て 、 おの おの経論の文を引い て そ耀世
人
一招
二引重儭
一意在
二以
レ少呼
一レ多。用
レ此活
命。既遂
二其所
求
ヽ 一 の咎 を出し て 大賊 の名 を立 つ 。 し か る に 戒定慧 の 三 学 は 、 お の お の 別相あ り 。 第 四 に即恃
レ此起
レ慢。凌
下蔑余
人無
二利養
一者
上悉以
苟非
二利養
一既爾名
聞
雑行の 過 を 出 し て 云く 、「 四 に 雑行 とは 、また 二 類 あ り。 一に福 行 に 約 せば 、謂く 、 性 、亦然。此是売
二仏法
一賊。出
二迦葉
経
一二約
二余行
一者、謂性非
二慧悟
ヽ 一*
31 8 下 質 直 に あ ら ず して 、 筍 く も 姧 計 して 共 に 奇 福 を 崇 む 。 世 人 を 眩 耀 し て 重 儭 を 招 引 す。随学
二一法
一即便封著。眩
二此所学
ヽ 一以招
二名利
ヽ 一撥
三余所
修皆
非
二 意 は 少 を 以 て 多を呼ぶに在り 。 これを用つ て 活命す 。 既にその所求を遂げ て 、即 ちこ究竟
一此亦
愚人
毒
二害仏
法
一賊也
。
文。此
中於
二雑行
中
ヽ 一亦有
二二類
一 れを恃ん で 慢 を起 す。余人 の利 養な き者 を 凌 蔑す 。 こ と ご とく 以て苟くも利 養にあ ら今称名行、当
二第二類
一然其
心不
下与
二正理
一相応
上者、亦可
レ有
下毒
二 ず。既に爾 り 、名聞もまた然 り 。 こ れは是 れ 仏法 を売 る 賊 。 迦 葉経に出 でたり 。 二は害仏
法
一遇
上若有
二此過
一者、
如
下服
二良薬
一起
上レ病。
以
レ何療
レ之。
似
下 余行 に 約 せ ば 、 謂 く 、 性 、 慧 悟 に あ ら ず して 、 随 つて 一 法 を 学 して 即 便 ち 封 著 す 。 こ入
二水中
一出
上レ火。以
レ何滅
レ之。仏
蔵
十
輪
等諸
経、
大誠
二此大
罪
一自
の所学を眩し て 、 以 て 名利を招い て 、 余 の所修は皆究寛にあ ら ずと撥す。 こ れ は ま た他宗
章
疏
盛所
二引釈
一也。
懸
二思乎此文
ヽ 一用心
莫
二間断
一正理
唯一
門、
愚人、仏 法 を 毒害する賊なり。 」 文 。 47行者是千万、入者尠、迷
人
多
。
今
依
二聖教
一撿
二察此
集宗
要
ヽ 一大違
二 こ の 中に雑行の 中におい て 、 また二類あり。今の称名の行は、第二類に 当 れ り 。 し背法印
ヽ 一相
二順邪
道
一将
レ令
三帰信
人荷
二重罪
一依
レ之愚
僧天性
雖
レ倦
二 かれ ども その 心 正 理と 相 応 せざ れは 、また 仏 法を 毒害 する 過あ るべ し。 も し こ の 過 あ於執筆
ヽ 一試撰
二一章
ヽ 一聊決
二邪正
一哀哉、悲哉。日月如
レ矢走奪
二我
らは、良薬 を 服し て 病 を 起 すが ごとし 。 何 を 以てか こ れを療せん 。 水中 に入っ て 火 を摧 邪輪 巻上
短命
一応
下救
二頭燃
一求
中解脱
上何遑
レ作
二自他
偏執
一乎。是故
不
レ非
二 出すに似たり 。 何 を 以 て か これを 滅 せん。 仏 蔵・十輪等の諸 経 には、大いに こ の 大 罪称名
行
ヽ 一不
レ背
二善導
釈
一於
二正念正見念仏者
ヽ 一悉奉
二帰命頂礼
ヽ 一必
を 誡 め た り 。 自他宗の章 疏 に 盛 んに引 き 釈すると こ ろ なり。恩 を こ の文に懸 け て 、 用可
レ蒙
二来世
引導
一然若
邪
正
雑乱
、一
切有縁
仏
法
、
不
三相
二当根
機
一尽、
心間 断する こ とな かれ 。正理は ただ一 門 、行 者は是 れ 千万、入 る者 は尠く、 迷ふ人 は一切根器、不
三相
二当有縁仏法
一竭。依
レ之減
二三宝
ヽ 一損
二国土
一善神
多し 。今聖 教 によっ て こ の 集の宗 要 を撿察するに、 大 い に 法印に違背し、邪道 に 相捨
レ国、
悪鬼
入
レ国、輿
二三災
ヽ 一廃
二十善
一基無
レ不
レ由
レ之。
〈抄 二至相 順ぜ り。 ま さ に 帰 信 の 人を して 重罪を 荷 せ し めん と す 。こ れ に よ っ て 、 愚 僧 、天 性執 五十要 問 答 意 一也。 〉況大邪
見
過
、
損
二害自他
善
根
ヽ 一師及
弟子倶堕
二大
筆に倦し と雖 も 、 試みに一 章 を 撰し て、い さ さか邪正 を決す 。地獄
一是大聖金説、勿
レ生
二疑滞
一是故若欲
三速生
二浄土
一者、須
レ好
二 哀なるかな や 、悲し き かな や。日 月 矢のごとくに走っ て わ が短命を奪ふ。ま さ に 頭正見
一邪正
雑乱
、往
生
難
レ期。決
断
分明
、解
脱
自
到
。
大望
唯
為
二一
燃を救 っ て 解 脱を求むべ し。 何ぞ自他の偏 執 を 作すに遑あらん や 。 こ の故に称名の行事
一也。謂
可
三棄
二捨此撰択集
一也。何者
善悪諸業依
二作法
一受
二得之
一 を も 非せず、善導 の釈を も 背かず。 正念 正見 の 念 仏 者 にお い て は 、 こ と ご と く帰 命頂 ○菩提
心亦
有
二此義
一不
空
菩
提
心義云、長耳三蔵云、初習種姓発心有
礼し奉 り 、 必ず 来世 の 引 導を 蒙 る べ し 。 し かる にも し邪 正雑 乱 す れば 、一 切の 有 縁 の レ三。一仮
想
発
、
二
軽想発
、
三信想発。初仮想発者、由
二三種
力
一 仏法は、根機 に 相 当 ら ずし て 尽 きぬ、 一 切の根器は、有線の 仏 法に相当 らずし て 竭 き一善
友力、謂
善知識。二行力、謂受律儀。三法力、通別二因
。通
*
31 9 上 ぬ。 こ れ によ って 三 宝 を 滅 し、 国 士 を 損 ず 。 善 神 、国 を 捨 て 、 悪 鬼 、 国 に 入 って 、 三謂如来蔵内熏之
性
、
別
謂
信
等五根。
由
二此三力
ヽ 一仮起
二求菩提
相
一 災 を 興し、十善 を 廃 す 。基 これ によ らざる ことなし。 〈至相 の 五十要問答の意を抄 す るなり 。〉自利利他、漸次修習等云云。謂近代女人等之念
仏
者
、
持
二此邪書
一 況んや 大 邪 見 の過は、自他の善根を 損 害 し て 、師およ び弟子倶に大地獄に堕つ。 是為
二行力
ヽ 一受
二此邪
律
一為
二正儀
一自不
レ辨
二邪正
ヽ 一心漸背
二仏法
ヽ 一適謂
れ 大 聖 の 金説、疑滞 を 生ずる ことな かれ。 こ の 故 にもし速かに浄土に生 ぜ ん と欲は ば 、 48 レ入
二無上乗
ヽ 一誤住
二邪見
道
一何其悲乎。須
二拱
レ手念仏
一幸不
レ捧
二 すべからく正 見を 好 む べ し 。邪 正雑乱すれば 、往 生期し難 し 。 決断 分明ならば 、 解 脱此邪
書
ヽ 一是亦
似
二偏執
一智人
垂
二思量
一而已。
自 ら 到 ら ん。 大望た だ 一事の た め なり。謂く こ の選択集を 棄 捨 す べき なり。何とな らば 、善悪の諸業は 作 法によつ てこれを受 得 す。菩提心にまた こ の 義あり。 不空の菩 提心義 に 云 く 、「 長耳三 蔵 の 云 く 、 初 習 種 姓 発 心 に三 あり。一 に仮想発 、二 に軽想発 、 三に信 憑 発。 初めに仮 想 発 とは、三 種の力 に ょ る 。 一 に善友力 、謂く 善 知 識 。二 に行 力 、 謂く受律儀。 三 に 法力 、通別二因あり。 通とは謂く如 来蔵内熏 の 性 、 別とは謂く 信等 の五根。こ の 三力 によつ て 、仮り に 求菩 提の 相 を 起 す 。 自 利利他 し て 、 漸 次 に修 習す」等 と云云 謂く、近代 女 人 等 の念仏者、 こ の邪書 を 持する を 行力とす、 こ の邪律を受くる を 正 儀と す。 自 ら は 邪 正を弁 へ ず 、 心 漸 く 仏 法を 背 く 、た ま た ま 無 上 乗 に 入 る と 謂 ヘ ど も 、 誤っ て 邪 見の道に住す。 何 ぞそ れ 悲 し き や。 すべからく手を拱 い て 念仏すべ し。幸に この 邪 書 を 捧 げ ざ れ。是 れ ま た 偏執に似たり。智 人 思 量を垂れ よのみ。大文
第
一
撥
二去菩提心
一過失者、彼集一
巻
中
多処有
二此文
一今出
二 大文第一に菩提心 を 撥 去 す る過失とは、かの集一巻の 中に多処 に こ の文 あ り 。今 五五段文
一破
レ之。
於
レ中有
二五種大過
一一以
二菩提心
一不
レ為
二往生極楽
段の 文 を 出して こ れ を 破 す 。 中 にお い て 五 種 の 大 過あ り。 一は菩 提 心を 以て 往生極 楽行
一過、
二言
三弥陀
本願中無
二菩提心
一過、
三以
二菩提心
一為
二有上
小
の行とせざる過、 二は 弥陀 の本願 の 中に 菩提 心な しと言ふ過、 三は 菩 提 心 を 以 て 有上摧 邪輪 巻上
利
一過、四言
二双観経
不
一レ説
二菩提心
一忸
言
三弥陀一教
止
住
時
無
二菩提
の小利とする 過 、 四は双観経 に 菩提心 を 説かずと言 ひ 、なら び に弥陀一教止住の時 、心
一過、五言
三菩提心抑
二念仏
一過也。
菩提 心な し と 言ふ過、五は菩提心、念仏を 抑 ふと言ふ過なり 。第一
以
二菩提心
一不
レ為
二往生極楽行
一過者
、集
曰、
第一 に 、 菩 提 心 を 以 て 往生 極 楽 の 行 と せ ざる 過 と は 、 集に 曰 く 、 49弥陀如来不
下以
二余行
一為
中往生本願
ヽ 上唯以
二念仏
一為
二往生本願
一之文。
「弥 陀 如 来 、 余 行 を以 て往生 の 本 願 と せ ずし て、 た だ 念 仏 を 以 て往生 の 本 願 と す る無量
寿経
上云
、設
我
得
仏
○
の文 。観念
法門
引
二上文
一言、苦我成仏○
無量寿経 上に 云く 、設我 得 仏 ○往生礼讃岡引
二上文
一云、○
観 念 法門に上の 文 を引 いて云 く 、 若 我成仏 ○ 往 生 礼讃 に同 じ く 上 の 文を 引いて 云 く 、 ○私云、○問曰、弥陀如来於
二何時何仏所
一発
二此願
一乎。答曰、寿
私に云 く 、 ○ 問 ひ て曰く、弥陀 如来、 何 の時、何 の仏の所に お い て か、 この願 を 発経云
、仏
告
二阿難
ヽ 一○於
レ是世
自在
王仏
即
為
広
説
二二百
一十億諸
仏
す や 。答へ て 日く、寿 経に 云く、仏、阿難に 告 ぐ 、○是におい て 世 自 在 王仏 、即 ちため刹土
人天之善悪国土
之
麤妙
ヽ 一○又大阿弥陀経云、其仏即選
二択二
に広く二百一 十 億 の諸仏の刹土、人天 の 善悪、国土の麤妙を説く、○また大 阿弥陀 経百
一
十億仏国土中諸天人民之善悪国土之好醜
一為
三選
二択心
中所
欲
に云 く、 その 仏 即 ち 二 百 一 十億の 仏 国 土 の 中 の 諸 天人民の 善悪 、国 土の 好醜 を 選 択す。願
ヽ 一楼夷亘羅仏
〈此 云 二世自 在 王 仏 一 〉説
レ経畢。曇摩迦
〈此云 二法蔵 一 〉便
心中所欲の願 を選択せしめんがために、 楼夷亘羅仏 〈ここに、 世 自 在 王仏と云ふ 〉 、経を 説 き一
二其心
ヽ 一即得
二天眼
一徹視、悉自見
二二百一十億諸仏国土中諸
天
人
*
31 9 下 畢んぬ。曇摩迦 〈こ こ に 、 法 蔵 と 云ふ 〉 、 便 ちそ の 心 を一 に し て、 即 ち 天 眼 を得 て徹 視し て、民之
善悪
国土
之
好
醜
ヽ 一即選
二択心中所願
ヽ 一便結
二得是二十四願経
一 こと ごとく自ら二百一 十億 の諸仏の国土 の中 の諸 天人民 の 善悪、 国 土の好醜 を見 て 、 〈平 等 覚 経 亦 復同 レ之。 〉此中選択者、即是取捨義也。謂於
二二百
一十
即ち 心 中 の 所 願を 選 択 して 、便ち こ の二 十 四 願経 を 結 得 す 。 〈平等覚経、亦 復 これに同 じ 。〉億
諸
仏浄土中
ヽ 一捨
二人天
之
悪
ヽ 一取
二人天
之
善
ヽ 一捨
二国土之醜
ヽ 一取
二国
この 中 の 選択とは、即 ち 是 れ取捨の義なり。謂く、 二 百一十億の諸仏の浄土 の中にお土之
好
一也。
大阿
弥陀
経選
択義
如
レ是。双観
経
意
亦有
二選択
義
一謂
い て 、人天の悪 を 捨て て 、 人天の善 を取 る、 国土の醜 を捨 てて、国 土の好 を 取るなり。云
三摂
二取二百一十億諸仏妙土清浄之
行
一是也。選択与
二摂取
ヽ 一其言
大阿弥陀 経の選択の義、是の ご とし。双観経 の意、 ま た 選 択 の 義あり。謂く、 二 百 一雖
レ異、
其
意
是
同
。
然
者
捨
二不清浄
之
行
ヽ 一取
二清浄
之行
一也。
上
天
人
十億の諸仏の妙 土 清浄 の 行 を摂 取すと 云 ふ 、 是れなり。 選 択と摂 取と 、そ の言は 異 な之善悪国土之麤妙、
其
義
亦
然。
准
レ之応
レ知。夫約
二四十八顧
一一往
りと雖も 、その意 、是 れ同じ。 しから ば 不清 浄の 行を捨てて 、 清浄 の行を 取 るなり 。 50各論
二選択摂取之義
一者、
第一
無三
悪趣
願者
、
於
下所
二覩見
一之二
百一
上 の 天 人 の善悪、 国土 の麤妙 、 そ の 義ま た然り 。 こ れ に 准 じ て まさに知る べ し 。 夫 れ十億
土中
ヽ 上或有
下有
二三悪趣
一之国土
ヽ 上或有
下無
二三悪
趣
一之国
土
上即
四十八願 に約し て 、一 往お のお の選択 摂 取の 義 を 論 ぜ ば、 第一 に無 三悪 趣の願 と は、選
下捨其有
二三悪趣
一麤悪国土
ヽ 上選
下取其無
二三悪趣
一善妙国土
上故、
覩 見 す る と こ ろ の 二 百 一 十 億の 土の 中に お い て 、 或 い は三 悪趣 あ る の 国 土 あ り、 或 い云
二撰択
一也。
第二
不
更
悪
趣
願者
、
於
二彼諸
仏土中
ヽ 一或有
下縦雖
三国
は 三 悪趣な き の国土あ り。即 ち その三悪趣あ る麤悪 の 国土 を選捨 し て 、 その 三悪趣な ○中無
二三悪道
ヽ 一其国
人天寿終
之後、従
二其国
一去復更
二三悪趣
一之土
ヽ 上 き善 妙の国土 を選取する が 故に、 選 択 と 云 ふ な り 。第 二に不 更 悪 趣 の願 とは、 か の 諸或有
下不
レ更
二悪道
一之土
上即選
下捨其
更
二悪道
一麤悪国土
ヽ 上選
下取其不
仏土 の中におい て 、或 いはたと ひ 国 中に三悪道なし と 雖も 、その国の 人 天 寿 終つ て の レ更
二悪趣
一善妙国土
上故、云
二選択
一也。○
乃
至
第
十
八
念仏往
生
願者、
後、その国よ り 去 ってまた三悪趣に更 る の 土 あり、或 いは悪道 に更 らざ るの土あり。於
二彼諸
仏土中
ヽ 一或有
下以
二布施
一為
二往生行
一之土
ヽ 上或有
下以
二持戒
一 即 ち そ の 悪道に更る麤悪の国土を選捨し て 、 その悪 趣 に 更 ら ざ る善妙の国土を選 取 す為
二往生行
一之土
上云云
。
〈忍辱精進禅定 般 若出 レ之。乃至〉或有
下以
二菩提
るが故に、選択と云 ふ なり 。○乃至、第十八 の 念 仏往生 の 願とは、 か の 諸仏土の中に摧 邪輪 巻上
心
一為
二往生行
一之土
上○即今選
二捨前布施持
戒
乃
至
孝
養
父
母
等諸
お い て 、 或い は布 施 を 以 て 往生 の行 と す る の 土あ り、 或い は 持 戒 を 以 て 往生 の行 と す行
ヽ 一選
三取専
称
二仏号
一故、云
二選択
一也。
〈己上 集 文 。〉 るの 土あ り と云云 。 〈忍 辱 ・ 精 進 ・ 禅 定 ・ 般若 こ れ を 出 す 。 乃 至 〉 或い は 菩 提心を 以 て 往 生 の 行 と するの 土 あり。○即ち今 、 前の 布施・ 持 戒 乃 至孝養 父 母等の諸行を選捨 し て 、専ら 仏 号を称する を 選取するが故に、選択と云ふなり。 」 〈已 上 、 集の文 。〉決曰、
先
須
三辨
二定菩提心義
一間曰、言
二菩提心
一者、
何為
レ義。
答。
決し て 曰 く、まづすべから く菩提心 の義を弁定す べ し 。問 ひて曰く、菩提心 と言ふ経論所説章疏解釈、広博無際。今須
レ標
二大綱
一且就
二浄土家
ヽ 一如
二 は、何 をか義 と す る 。 答ふ。経論の所 説 、章 疏の解釈、広博 無 際なり。今、すべか ら く善導観経疏第
二云
一言
二発菩提心
一者、此明
二衆生欣心趣大
一不
レ可
三*
32 0 上 大綱 を 標 すべ し。 且 く 浄 土 家に つ く に 、 善 導 の 観 経の 疏 の 第 二 に 云 ふ が ご と し 。 「発浅発
二小因
一自
レ非
三広発
二弘心
ヽ 一何能
得
下与
二菩提
一相会
上唯願我身
菩 提 心と言ふは、 こ れ は衆生の欣 心 趣 大 を 明 か す 。 浅く小因を発 す べからず。 広 く弘身同
二虚空
ヽ 一心斉
二法界
ヽ 一尽
二衆生性
一我以
二身業
ヽ 一恭敬供
養
礼拝
心 を 発すに あ ら ざ るよりは、何ぞ 能 く 菩 提と相 会 する ことを得ん。ただ願はくは、 わ 51迎
二送来
去
一運度令
レ尽。
又
我
以
二口業
ヽ 一讃嘆説法、皆受
二我化
ヽ 一言
が 身 、 身 は虚空に 同じく、 心は法界に 斉 し く 、衆 生性 を尽 さん。我 、身 業を 以 て 、 恭 敬下得
レ道者
令
レ尽。又
我
以
二意業
ヽ 一入
レ定観
察、
分
二身法界
ヽ 一応
レ機而
供 養 し礼 拝し て 来 去 を 迎送し て 、 運 度 し て 尽 さしめ ん 。ま た我、 口 業 を 以 て 、 讃 嘆 説度、
無
二一不
一レ尽。
我
発
二此願
一運運
増長、猶如
二虚空
一無
二処不
一レ遍。
法 し て、皆 わ が化 を受け、 言 下 に道 を得 ん 者 をし て尽 さしめ ん 。ま た我、意 業 を 以 て 、行流無尽
、徹
二窮後際
ヽ 一身無
二疲倦
ヽ 一心無
二厭足
一又言
二菩提
一者、即
定に入 り て観察し て 、 身 を 法界に分つ て 、機 に応 じ て 度し、一 と し て 尽 さ ざ る こ とな是仏果之名、又言
レ心者、即是
衆
生能
求之心故、
云
二発菩提心
一也。
か ら ん。 我、こ の 願を 発 す 。運 運に 増長 して 、猶 し虚 空の ごと し。 処 と して 遍せ ざ る 〈己上 〉解曰、此惣説
二菩提心行相
忸
名義
一也。
又元
暁師
遊心
安
楽
道
こ と な し。 行流 無 尽 にして 、 後際を 徹 窮せば 、 身、疲 倦 なく 、 心 、厭 足な から ん。 ま ○云、
所
レ言正
因、
謂
発
二無上菩提心
一也。即不
レ顧
三世間富楽及与
二 た 菩 提 と 言 ふ は 、 即ち 是れ 仏 果 の 名 、また 心 と 言 ふ ほ 、 即 ち 是 れ 衆 生の 能 求 の 心 なる二乗
菩提涅槃
ヽ 一一向志
二願三
身
菩
提
ヽ 一名
二無上
菩提
之心
一惣標
雖
が故 に、発 菩 提 心 と 云 ふ な り 。 」 〈已上 〉 解して曰 く 、 こ れ は惣じ て 菩提 心の 行相ならび レ然、
於
レ中有
レ二。一者随事発
心
、
二
者
順
理発心。言
二随事
一者、煩
に名義を 説くなり 。悩無数、欲
二悉断
一レ之、
善法
無量
、
願
二悉修
一レ之、
衆生
無
辺
、
願
二悉
ま た 元 暁 師の 遊心 安 楽 道 に 、菩 提 心 にお いて 惣 別 の 行 相を 出す 。 即 ち 安 楽 道 に 云度
一レ之。
於
二此三事
ヽ 一決定期願。初是如来断徳正
因、次是如来智徳
く 、「 言 ふと ころの正 因は、謂く無上菩提 心 を 発すなり。即 ち 世 間の富 楽 とおよ び 二乗正
因
、第三心者恩徳正
因。三徳合為
二無上菩提
一即是三心惣為
二無
の菩提・涅槃 とを顧みず 、 一向に三身 の 菩提 を志願する を 、 無 上菩提の心と名づく 。上菩
提
之
因
一因異
雖
レ異、広長量斉等。無
レ所
レ遺、無
レ不
レ包故
。
惣標 然りと雖も 、 中におい て二 あり。 一 は随事発 心 、 二は順理発 心 。 随 事と 言ふは、 ○ 〈乃至〉所
レ言順
理
発
心
者
、
信
下解諸法皆如
二幻夢
ヽ 一非有
非無
離言
絶
煩悩 の 無 数なる、 こ と ご と くこ れ を 断ぜん と 欲ふ 、善 法の 無 量 な る 、 こ とご とくこ れ慮
上依
二此信解
ヽ 一発
二広大心
一等云云。菩提心行相略説如
レ是。此二
を修せんと 願 す、衆生 の無辺 な る 、 こと ごとく こ れ を 度 せ ん と 願 す 。 こ の三事 に お い発心
行相
、広
如
二説経論
説
一取
レ要言
レ之、言
二菩提
一者、
即是
仏果
一
て、決定し て 期願す 。 初 め は是 れ如来 断 徳の 正因 、次 は是 れ如来 智 徳 の 正因 、第 三心 ○切智智、言
レ心者、
於
二此一切智智
一起
二希求心
一指
レ此云
二菩提
心
一 は恩徳の正因 。三徳合し て 無上菩提と す 。即 ちこ の三心 を 惣 じ て 無 上菩提の因とす 。一切
仏法
、
皆
依
二此心
一得
二生起
一此希求心
、随
二初後位
一有
二浅深
不
因果異な りと雖も、広長 の量、 斉等な り 。遣ると ころなく、包ね ざ る こ とな き が 故に 。 52同
一声
二其不
同
ヽ 一亦有
二多種
一今且依
二一説
ヽ 一華厳
表
公
出
二四発心
一*
320 下 〈乃至〉 言ふとこ ろ の 順 理 発 心 とは 、話 法は皆 幻 夢 の ご と し、非有 非無、 離 言絶慮 な りと一縁
発心
、謂仰
二縁菩提
一而発心求、名
二縁発
心
ヽ 一未
入
位前也。二解
信解す 。 この信解によっ て 、 広 大 の 心 を 発す 」等 と云 云 。発心、
謂
解
二一切法悉
是菩提
ヽ 一名
二解発
心
ヽ 一十信十解位也。三行発
菩 提 心の行相、略説するに 是 の ご とし 。 こ の二発心の行相は、広くは諸経論に説く摧 邪輪 巻上
心、謂一切行
皆合
二菩提
ヽ 一名
二行発心
ヽ 一十行十向位也。四体発
心
、
が ご とし 。要 を 取 っ て これを言へ ば 、 菩 提と言ふほ、即 ち 是 れ 仏果 の一 切 智 智、心 と亦名
二証発
心
一謂証
二一切性
ヽ 一即是菩提自体
顕発、
名
為
二体発心
一也。
言 ふ は 、 この一切智智におい て 希求の心 を起す 。 こ れ を指し て 菩提心と云 ふ 。一切の初地已上至
二金剛
心
一是也。今依
二善導意
ヽ 一於
二浄土家
ヽ 一可
レ取
二縁発
仏法 、 皆 この心 に よっ て生 起す る こ と を 得 。 この 希求 の心 、 初 後の 位に 随っ て、 浅 深心
一何者、出
二九品
人
ヽ 一破
三諸師配
二大小次位
ヽ 一唯一
向取
二凡夫
一先
の不 同あ り 。 そ の 不 同 を言ふに、 ま た 多 種あ り 。 今 且 く 一 説 に よるに、 華 厳 の 表 公 、判
二上品
上
生
人
一云、
正是仏去
レ世後
大乗
極善
上
品
凡
夫
云云。
以
下
八
四 発 心 を 出 す 。 「 一 は 縁 発 心 、 謂 く 菩提 を仰縁し て発 心し て求 むる を、 縁 発 心と 名 づ く、品倍劣
レ此。上品既不
レ配
二次位
一然云
二道俗
時衆等各発
無
上心
等
ヽ 一 未人位の前な り。 二は解発心、 謂く一 切 の法、 こ と ご とく是 れ 菩提なりと解する を、以
二菩提心
一為
二往生正
因
一故。明知於
二四発
心中
ヽ 一取
二縁発
心
一也。
解 発 心 と 名 づ く、十信十解の位なり。三は行発 心 、 謂 く一切の行、皆菩提に 合するを 、又安
楽
集
上
巻
、明
二発菩提心義
一内有
二四番
解釈
一一出
二菩提心功
行 発 心 と 名 づ く、 十行 十 向 の位な り 。四 は体 発心、 ま た証 発心 と名 づく 。謂く一 切 の用
ヽ 一二出
二菩提名体
一三顧
二菩提心有
一レ異。四問答解釈。
第一者、
性を 証す、即ち 是 れ 菩 提の自体 顕発 するを 、 名づ け て 体発 心 と するなり。 初 地已上よ大経
云、
凡欲
三往
二生浄土
ヽ 一要須
下発
二菩提心
一為
上レ原。
云何
菩提者、
り金剛心に至るま で 、 是 れ なり 。」 今善導の意によ る に 、 浄土家におい て は 、縁発 心 を乃是無上仏道之名也等云云。第二番出
二三身菩提
一第三番
顕
二発心
取るべし 。何 と な らば 、九品の人 を 出 す に、諸師の大小の次 位 に配する を破し て 、 た異
一有
二三種
一謂理
行
慈
悲為
レ三也。此之三因、能与
二大菩提
一相応
だ 一 向 に 凡 夫 を取る 。 ま づ 上 品 上生 の人 を判 じ て 云 く 、「 正 し く是 れ仏 世 を 去っ て 後故、名
二発菩
提心
一又拠
二浄土論
一云、
今言
二発菩
提心
一者、
正是
願作
の大 乗極善 の 上品 の凡 夫」 と云云 。以下の八品は、 倍 こ れ よ りも劣な り。 上品既に次 位仏
心
。
願
作仏
心者、即是
度
衆生心。
度
衆
生心
者、
即摂
二取衆
生
ヽ 一 を 配 せず。しか る に「 道俗時衆 等各 発無上 心 」等 と云 つ て 、 菩 提心を 以 て 往 生 の 正 因生
二有仏
国
土
一心。
今
既
願
レ生
二浄土
一故、
先須
レ発
二菩提心
一也。
第四
とす るが 故に 。明 らか に知 りぬ 、 四 発心 の中 にお い て 、線 発心 を取るな り。 53番解釈文広多、具可
レ見
二正文
一又天
親無量
寿
経
論
、説
二三種達菩提
また 安楽集の上巻 に、 発菩 提心の義を明かす 。内に四番の解 釈 あ り 。 「 一は菩提心門法
一謂依
二智慧慈悲方
便
三門
一遠
二離自利
一故。
又
説
二三種
順
菩
提
の功 用を 出し、二 は菩 提の名 体 を 出 す。三 は 菩 提 心に異ある こ とを 顕はす。四は問答門法
一謂依
二無染
清浄
心安
清浄心
楽
清
浄
心
三
門
ヽ 一以
二利他
一為
レ本故。
解釈。第一は、大 経 に 云く、およそ浄土 に往生せんと欲はば 、 要ずすべからく菩提心此等解釈、不
レ遑
二具出
一其綱
要如
二前両師解釈説
一而已。
*
32 1 上 を 発 すを 原と すべ し。 いか んが 菩提 とは 、乃ち 是 れ無 上仏 道の 名 な り」 等 と云云 。第 二 番 に 三 身 の 菩 提 を 出 す 。第 三番 に 発 心 の 異 を 顕は す に 三種 あ り 。 謂 く理 ・行 ・慈 悲 を 三とするなり。 「 こ の 三因 、能 く 大 菩 提 と 相 応するが故に、発菩提 心 と 名づ く。 また 浄 土 論 に 拠 るに云く、今発菩 提心と言ふは、正しく こ の 願 作仏の 心なり。 願作 仏の 心と は 、 即ち 是れ 度 衆 生 の 心 な り。 虔 衆 生の心 と は 、 即ち 衆 生 を 摂 取 し て 、 有 仏 の 国 土 に 生れ しむ る心 な り 。 今 既 に 浄 土 に 生 れ ん と 願 す る が 故 に 、 ま づ す べ か ら く 菩 提 心 を 発 すべ き な り 。」 第 四 番 の 解 釈 の 文、 広 多 な り 、具には正文 を見るべし 。 また天親 の無量 寿経 論 に 、三種の 違菩 提門 の 法 を 説 く。 謂 く 、智 慧・ 慈悲・方便 の 三 門 に よ つて 、自 利 を 遠 離 するが故に 。 ま た 三 種 の順 菩提 門の法 を 説 く 。謂く無染清浄心 ・安 清浄心 ・ 楽清浄心 の三 門 に よっ て 、 利他 を以 て 本 とす るが故に 。 こ れら の解 釈、具に出 す に 遑 あらず。 そ の 綱要 、前の 両 師の 解釈 に 説 くがご と きの み 。問曰
、此
菩
提
心
、
為
下於
二諸教
一有
中差別
上乎。答
。
三乗
行者、於
二 問ひて 日 く、 こ の 菩 提 心、 諸 教 におい て 差別ありとやせんや。摧 邪輪 巻上