RIETI - 地点（郵便切手）送電料金制のもとでの電力会社間精算

DP

RIETI Discussion Paper Series 09-J-011

地点（郵便切手）送電料金制のもとでの電力会社間精算

八田 達夫

RIETI Discussion Paper Series 09-J-011

地 点 （ 郵 便 切 手 ） 送 電 料 金 制 の も と で の 電 力 会 社 間 精 算

∗ 政 策 研 究 大 学 院 大 学 八 田 達 夫 要 旨 本 稿 は、 地 点 料 金 制 の下 で、通 り抜 け区 域 の電 力 会 社 に対 して周 辺 の電 力 会 社 が通 り 抜 けのコストをどのように精 算 すべきかを考 察 する。 まず 、電 力 会 社 間 の 融 通 送 電 従 量 料 金 を 、 新 規 参 入 者 や 大 口 の 需 要 家 が 電 力 会 社 に 対 し て 支 払 う 送 電 料 金 と 全 く 共 通 の 原 理 で 課 金 す れ ば 、各 電 力 会 社 の 料 金 収 入 を 、 そ の 電 力 会 社 の 送 電 ロ ス と ち ょ う ど 見 合 う よ う に す る こ と が で き る こ と を 示 す 。 そ の 場 合 、 全 国 的 な 観 点 か ら 最 も 効 率 的 に 送 電 ロ ス を コ ン ト ロ ー ル す る こ と が で き る こ と も 示 さ れ る 。 さ ら に 、 基 本 料 金 に 関 し て も 、 通 り 抜 け 区 域 の 電 力 会 社 に 対 し て 、 周 辺 の 電 力 会 社 を 通 常 の 注 入 者 や 引 き 出 し 者 と 同 等 と み な し て 課 金 す る こ と に よ り 、 建 設 イ ン セ ン テ ィ ブ を 担 保 で き る こ と を 示 す 。 こ の 場 合 、「 注 入 固 定 料 金 は 上 流 区 域 で 他 区 域 よ り 高 く 設 定 し 、 引 き 出 し 料 金 は 下 流 区 域 で 他 区 域 よ り 高 く 設 定 す る 」 と い う 北 欧 で 採 用 さ れ て い る 固 定 料 金 の 形 が 、 通 り 抜 け 区 域 の 送 電 線 建 設 費 の 負 担 の 軽 減 の 観 点 か ら も 望 ま し い こ と が 示 さ れ る 。 ∗_{田 中 誠 氏 と 戒 能 一 成 氏 の コ メ ン ト に 感 謝 し た い 。 残 る 誤 り は 、 著 者 の 責 任 で あ る 。}

1． は じ め に

地 点 料 金 制 の 基 本 的 な ア イ デ ィ ア は 、 全 国 的 な 観 点 か ら 最 も 効 率 的 に 送 電 ロ ス を 抑 制 し 、 送 電 混 雑 を コ ン ト ロ ー ル で き る よ う に 、 全 国 の 送 電 綱 の 各 地 点 に お い て 潮 流 方 向 に 基 づ い た 送 電 料 金 を 地 点 別 に 設 定 す る こ と で あ る 。 地 点 送 電 料 金 制 の 下 で は 、 与 え ら れ た 地 点 の 発 電 者 は 、 送 電 ネ ッ ト ワ ー ク に 電 力 を 注 入 す る 際 に 、 託 送 の 需 要 家 の 立 地 点 に 関 係 な く 定 め ら れ た 料 金 を 支 払 う 。 ま た 、 与 え ら れ た 地 点 の 需 要 家 は 、 送 電 ネ ッ ト ワ ー ク か ら 電 力 を 引 き 出 す 際 に 託 送 の 供 給 先 の 立 地 点 に 関 係 な く 定 め ら れ た 料 金 を 支 払 う 。 注 入 料 金 も 引 き 出 し 料 金 も 、 託 送 取 引 の 相 手 の 住 所 に は 関 係 な く 、当 事 者 の 立 地 の み に 依 存 し て 定 め ら れ る 。地 点 送 電 料 金 制 は 、「 郵 便 切 手 送 電 料 金 制 」 と も 呼 ば れ て い る 。 相 対 取 引 の み の 市 場 で は 、 取 引 相 手 の 立 地 に よ っ て 異 な る 送 電 料 金 を 課 す こ と が で き る 。 し か し 電 力 自 由 化 が 進 展 し 、 取 引 所 取 引 が 大 き な 割 合 を 占 め る 市 場 で は 、 地 点 送 電 料 金 制 を 採 用 せ ざ る を 得 な い 。 こ の た め 、 地 点 料 金 制 は 、 欧 米 を 中 心 に 自 由 化 さ れ た 電 力 市 場 で 広 く 採 用 さ れ て い る 。 電 力 市 場 に お い て 地 点 別 に 料 金 を 効 率 的 に 課 金 す る 方 法 は 、 Bohn et al. (1984) や Schweppe et al. (1988)等 に よ り 導 出 さ れ た 。 彼 ら は 特 に 、 地 点 別 の 課 金 に よ り 送 電 網 の 送 電 混 雑 を 効 率 的 に コ ン ト ロ ー ル で き る こ と を 明 ら か に し た 。 そ の 後 、 Hogan (1992) や Chao and Peck (1996)に よ り 、 送 電 権 の 議 論 も 含 め 地 点 料 金 制 の 発 展 が な さ れ た 。 効 率 的 に 設 計 さ れ た 地 点 料 金 制 は 、 電 力 の 買 い 手 と 売 り 手 に 立 地 に 関 す る 正 し い イ ン セ ン テ ィ ブ を 与 え る だ け で な く 、 一 つ の 電 力 会 社 の 供 給 区 域 の 中 に お け る 料 金 設 定 で あ る 場 合 に は 、 料 金 が 、 電 力 ネ ッ ト ワ ー ク 全 体 に 発 生 す る 送 電 ロ ス を カ バ ー す る た め 、 送 電 線 建 設 の 意 欲 を 阻 害 し な い と い う メ リ ッ ト が あ る 。 た だ し 複 数 の 供 給 区 域 を 越 え て 送 電 さ れ る 場 合 に は 、 地 点 料 金 制 度 の 下 で 各 電 力 会 社 が 得 る 料 金 収 入 が 、 そ の 電 力 会 社 管 轄 地 区 の 送 電 ロ ス に 必 ず し も 対 応 し な く な る 。 例 え ば 、 九 州 の 新 規 参 入 者 が 関 西 の 需 要 家 に 託 送 す る 場 合 、 地 点 送 電 料 金 制 だ

け で は 九 州 電 力 と 関 西 電 力 に は 料 金 が 入 る が 、「 通 り 抜 け 」送 電 線 を 持 つ 中 国 電 力 に は 何 も 入 ら な い 。 こ の た め 各 社 の 送 電 ロ ス や 送 電 線 建 設 費 用 に 応 じ た 電 力 会 社 間 の 料 金 収 入 の 調 整 あ る い は 精 算 が 必 要 に な る 。 こ れ が 一 つ の 電 力 会 社 が 他 の 電 力 会 社 か ら 徴 収 す る 融 通 送 電 料 金 の 役 割 で あ る 。 本 稿 で は 、 第 Ⅰ 部 で 電 力 会 社 間 の 従 量 料 金 に 関 す る 融 通 送 電 料 金 を 分 析 す る 。 隣 接 す る 電 力 会 社 に 対 し て 通 常 の 新 規 参 入 者 や 大 口 の 需 要 家 が 電 力 会 社 へ の 課 金 と 同 様 の 原 理 で 課 金 す れ ば 、 各 電 力 会 社 の 従 量 料 金 か ら の 料 金 収 入 を 、 そ れ ぞ れ の 電 力 会 社 の 送 電 ロ ス と ち ょ う ど 見 合 う よ う に で き る こ と を 示 す 。 第 Ⅱ 部 は 、基 本 料 金 に 関 す る 電 力 会 社 間 の 精 算 制 度 を 分 析 す る 。あ る 電 力 会 社 (「 通 り 抜 け 電 力 会 社 」)の 供 給 区 域 を 他 区 域 の 発 電 者 や 受 電 家 が 通 り 抜 け る 託 送 を 行 う 場 合 、固 定 料 金 の 精 算 制 度 を 適 切 に 設 計 す れ ば 、当 該 通 り 抜 け 電 力 会 社 の 固 定 費 用 を 、 精 算 料 金 収 入 を 含 め た 料 金 収 入 で ま か な う こ と が で き る こ と を 示 す 。こ れ に よ っ て 、 通 り 抜 け 電 力 会 社 の 送 電 線 建 設 意 欲 を 削 が な い よ う に す る こ と が で き る 。 こ の よ う に 設 計 さ れ た 注 入 基 本 料 金 は 、 潮 流 の 川 上 ほ ど 高 く 、 引 き 出 し 基 本 料 金 は 、 潮 流 の 川 下 ほ ど 高 い こ と を 示 す 。 上 記 文 献 で は 、一 つ の 電 力 会 社 の 供 給 区 域 の 中 に お け る 料 金 設 定 が 論 じ ら れ て い る た め 、 こ こ で 分 析 対 象 と し て い る よ う な 複 数 の 電 力 会 社 間 の 精 算 問 題 が 扱 わ れ て い な い 。 さ ら に 、 従 来 は 混 雑 中 心 の 議 論 が 多 く 、 複 数 電 力 会 社 間 の ロ ス 費 用 や 建 設 費 の 精 算 の 分 析 が 手 薄 で あ っ た 。 本 論 文 で は 、 混 雑 が な い ケ ー ス を 考 え る こ と に よ っ て 、 複 数 電 力 会 社 間 の ロ ス 費 用 お よ び 送 電 線 建 設 費 の 精 算 に 焦 点 を 絞 る 。 こ の モ デ ル は 混 雑 コ ス ト の 精 算 を 分 析 す る た め の 基 礎 モ デ ル と も な る 。

第 Ⅰ 部 従 量 料 金

2. 限 界 託 送 費 用 と 限 界 地 点 出 入 費 用

送 電 ロ ス に 関 す る 地 点 別 の 料 金 制 度 は 、 Stoft (2002)や 八 田 （ 2004） 等 で 詳 細 に 論 じ ら れ て い る 。 限 界 託 送 費 用 と 限 界 地 点 出 入 費 用 を 定 義 し 、 そ れ ら の 特 徴 や 関 係 を ま と め て お こ う 。1 2.1 限 界 託 送 費 用 ま ず 、 地 点

i

の 供 給 者 と 地 点

j

の 需 要 家 と が 相 対 （ あ い た い ） 取 引 を 行 っ て い る 場 合 を 考 え 、 そ の 取 引 量 が 1kW 増 え る と き 、 そ の 結 果 生 じ る 送 電 網 全 体 に お け る 送 電 ロ ス の 増 大 を 、 地 点

i

か ら 地 点

j

へ の 限 界 託 送 費 用 と 定 義 し 、

L

_ijと 書 く 。 電 流 は 地 点

i

か ら 地 点

j

に 向 か っ て 流 れ て い る と し よ う 。 潮 流 方 向 に 沿 っ た 送 電 の 増 加 は 、 潮 流 に 沿 っ た 送 電 量 の 流 れ を 増 や し 送 電 ロ ス を 増 加 さ せ る た め 、

L

_ijは プ ラ ス で あ る 。 こ れ と は 反 対 に 、 潮 流 方 向 に 逆 行 す る 送 電 は 、 結 果 的 に 潮 流 に 沿 っ た 送 電 量 を 減 ら す た め 、

L

_ijは マ イ ナ ス で あ る 。 さ ら に 、 限 界 託 送 費 用 の 絶 対 値 は 、 両 方 向 と も 同 じ で あ る 。 し た が っ て 、 ij

L

＝

−

L

_ji (1) が 成 り 立 つ 。 1_{八 田 （ 2 0 0 4 ） 参 照 。 た だ し 同 論 文 で 限 界 地 点 引 き 出 し 費 用 と 限 界 地 点 注 入 費 用 と 呼 ば れ て い る も の の} 総 称 が 、 限 界 地 点 出 入 費 用 で あ る 。

2.2 限 界 地 点 出 入 費 用 次 に 、全 国 の 需 要 家 と 供 給 者 が 一 つ の 前 日 ス ポ ッ ト 市 場 で 結 ば れ て い る 場 合 を 考 え る 。 地 点

i

の 発 電 所 が も う 1kW の 発 電 を 増 や し て 前 日 ス ポ ッ ト 市 場 に 注 入 し た 場 合 に 発 生 す る 送 電 ロ ス の 増 加 を 、 シ ス テ ム へ の 注 入 増 が 引 き 起 こ す 地 点

i

に お け る 限 界 注 入 費 用 と 呼 び 、 IN i

L

と 書 く 。 電 力 シ ス テ ム は 、 同 時 同 量 を 要 求 す る か ら 、 注 入 量 の 増 大 は 、 シ ス テ ム 全 体 と し て 同 量 の 引 出 し 増 加 を 伴 わ ね ば な ら な い 。 ス ポ ッ ト 市 場 に 注 入 さ れ る 場 合 に は 、 そ の 分 ス ポ ッ ト 価 格 が 下 が る こ と に よ り 、 各 地 点 に お け る 需 要 量 の 増 加 が も た ら さ れ る こ と を 通 じ て 同 時 同 量 が 実 現 さ れ る 。2_{し た が っ て 、地 点 i に お け る 限 界 注 入 費 用} と は 、「 注 入 地 点 に お け る 注 入 増 が も た ら す 各 地 点 に お け る 需 要 量 の 増 加 」に 対 応 し た 送 電 変 化 に よ っ て 発 生 す る ロ ス 変 化 の 総 計 で あ る 。（ 実 際 の 測 定 に あ た っ て は シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 用 い た り 、 上 の 原 則 を 何 ら か の 仮 定 の 下 に 近 似 し た り す る 。） 地 点

i

の 買 い 手 が 、 も う 1kW を 前 日 ス ポ ッ ト 市 場 か ら 追 加 的 に 買 う と き に 起 き る 送 電 ロ ス の 増 加 を 、 地 点

i

に お け る 限 界 引 出 し 費 用 と い い 、 OUT i

L

と 書 く 。 限 界 注 入 費 用 と 限 界 引 出 し 費 用 を 総 称 し て 限 界 地 点 出 入 費 用 と い う 。 と こ ろ で 、ス ポ ッ ト 市 場 に 与 え る イ ン パ ク ト の 観 点 か ら は 、あ る 地 点 の 発 電 所 が 追 加 的 に 1kW 注 入 す る こ と は 、 そ の 地 点 に お け る 需 要 家 が 1kW 分 引 き 出 し を 減 ら す こ と と 等 し い 。 任 意 の 地 点 で 限 界 注 入 費 用 ＝ － 限 界 引 き 出 し 費 用 が 成 り 立 つ 。 す な わ ち 、 地 点

i

で IN OUT i i

L

= −

L

(2) が 成 り 立 つ 。 2 _{3.2 節 参 照}

さ ら に 、 供 給 超 過 地 （ 例 え ば 青 森 ） で は 、 注 入 の 増 加 は 、 潮 流 方 向 の 送 電 量 を 増 や す か ら 注 入 の 送 電 ロ ス は プ ラ ス で あ る 。 こ の こ と か ら 、 表 1 で 示 さ れ る よ う に 次 が 成 り 立 つ 。 供 給 超 過 地 （ 例 え ば 青 森 ） に お い て は 、 限 界 注 入 費 用 が プ ラ ス 、 限 界 引 出 し 費 用 が マ イ ナ ス の 値 を と る （ 両 者 の 絶 対 値 は 等 し い ）。 (3a) 他 方 、 需 要 超 過 地 （ 例 え ば 東 京 ） に お い て は 、 限 界 注 入 費 用 が マ イ ナ ス 、 限 界 引 出 し 費 用 が プ ラ ス の 値 を と る 。 (3b) 表 １ 限 界 引 出 し 費 用 と 注 入 費 用 の 符 号 供 給 超 過 地 （例 ：青 森 ） 需 要 超 過 地 （例 ：東 京 ） 限 界 引 出 し費 用 － ＋ 限 界 注 入 費 用 ＋ － 2． 3 限 界 託 送 費 用 と 限 界 地 点 出 入 費 用 と の 関 係 ある区 間 を１kW 追 加 的 に託 送 することは、注 入 地 点 で 1kW 追 加 的 に注 入 し引 き出 し 地 点 で１kW 追 加 的 に引 き出 すことである。したがって上 の二 つの概 念 の間 には次 の関 係 が成 り立 つ。「 そ れ ぞ れ の 区 間 の 限 界 託 送 費 用 は 、注 入 点 に お け る 限 界 注 入 費 用 と 引 き 出 し 点 に 置 け る 限 界 引 き 出 し 費 用 の 和 に 等 し い 。」 こ れ を 、 定 式 化 す る と 、 次 が 成 り 立 つ 。

地 点

i

か ら 地 点

j

へ の 限 界 託 送 費 用 ＝ 地 点

i

に お け る 限 界 注 入 費 用 ＋ 地 点

j

に お け る 限 界 引 き 出 し 費 用 す な わ ち IN OUT ij i j

L

=

L

+

L

(4) 供 給 超 過 地

i

か ら 需 要 超 過 地

j

に 送 電 す る 場 合 は 、 (3a)か ら IN i

L

は プ ラ ス で あ り 、 (3b)か ら OUT j

L

も プ ラ ス で あ る 。 し た が っ て 、 限 界 託 送 費 用 は プ ラ ス に な る 。 需 要 超 過 地

j

か ら 供 給 超 過 地

i

に 送 電 す る 場 合 は マ イ ナ ス の 値 を と る 。

3. 限 界 託 送 費 用 と 通 り 抜 け ： 3 地 点 数 値 例

以 下 で は 、3 地 点 の 数 値 例 モ デ ル で 限 界 託 送 費 用 と 限 界 地 点 出 入 費 用 と の 関 係 を 分 析 し よ う 。 3.1 3 地 点 間 限 界 託 送 費 用 ABC の ３ 地 点 を 送 電 線 が 結 ん で い る 場 合 、 次 の 命 題 が 成 り 立 つ 。 命 題 １ ． 地 点 A で 注 入 し て 地 点 C で 引 き 出 す 場 合 の 限 界 託 送 費 用 は 、 地 点 A で 注 入 し て 地 点 Ｂ で 引 き 出 す 場 合 の 限 界 託 送 費 用 と 、地 点 B で 注 入 し て 地 点 C で 引 き 出 す 場 合 の 限 界 託 送 費 用 と の 和 で あ る 。 す な わ ち 、 AB BC AC

L

+

L

=

L

(5) が 成 り 立 つ 。 証 明 (4)式 か ら IN OUT AB A B

L

=

L

+

L

(6) IN OUT BC B C

L

=

L

+

L

(7) が 成 り 立 つ 。 一 方 、（ ２ ） か ら IN OUT B B

L

= −

L

で あ る か ら こ れ は 、 IN OUT AB BC A C

L

+

L

=

L

+

L

を 意 味 す る 。（ ４ ）か ら こ の 式 の 右 辺 は

L

_ACで あ る 。 3.2 物 理 的 与 件 と し て の 送 電 ロ ス の 数 値 例 限 界 託 送 費 用 と 限 界 地 点 出 入 費 用 と の 関 係 を わ か り や す く す る た め に 簡 単 な 数

値 例 を 用 い て 論 じ よ う 。 潮 流 方 向 図 １ A B C 図 １ で は

A B C

, ,

の ３ 地 点 を 送 電 線 が 結 ん で お り 、潮 流 の 方 向 は 矢 印 が 示 す よ う に

A

か ら

C

に 向 か っ て い る 。 こ の と き 、

AB

間 の 潮 流 方 向 の 送 電 ロ ス を 金 額 表 示 す る と １ 円 で あ り3_、

_BC

_{間 は ３ 円 で あ る と す る 。 こ の 場 合}

_AC

_{間 の 限 界 託 送 費 用 は 、 こ} れ ら の 和 で あ る ４ 円 に な る 。 な お 、 逆 方 向 の 送 電 に よ る 限 界 託 送 費 用 は こ れ ら に マ イ ナ ス を つ け た 値 で あ る 。4 表 ２ は 各 地 点 間 を 送 電 す る 際 に 発 生 す る 送 電 ロ ス

L

_ijを 図 １ に 基 づ い て 示 し て い る 。例 え ば 、地 点

A

か ら 地 点

B

ま で の 限 界 託 送 費 用 １ 円 は ⑪ に 、地 点

B

か ら 地 点

C

ま で の 限 界 託 送 費 用 ３ 円 は ⑫ に 、 そ れ ら の 和 で あ る

AC

間 の 限 界 託 送 費 用 は ⑬ に 示 さ れ て い る 。 こ れ ら の 値 が 、 前 節 で 述 べ た 限 界 託 送 費 用 に 等 し い 。 ま た こ の 表 に お い て 、 (1)式 が 成 立 し て い る こ と を 確 か め よ う 。 例 え ば 、

L

_AB=１ で あ る 一 方 で

L

_BA=－ １ で あ る 。 ま た

L

_AC＝ ４ で あ る 一 方 で

L

_CA＝ － ４ で あ る 。 3 _{ス ポ ッ ト 市 場 価 格 に よ っ て 金 額 換 算 さ れ て い る 。} 4 _{但 し 、 例 え ば 中 国 電 力 か ら 関 西 電 力 へ の 年 平 均 の 送 電 ロ ス は 、 逆 方 向 の 年 平 均 送 電 ロ ス に マ イ ナ ス} を つ け た も の で は な い 。 現 実 に 、 逆 方 向 に 流 れ て い る 時 点 で の 潮 流 が 、 順 方 向 に 流 れ て い る と き の 潮 流 と 異 な る か ら で あ る 。 送 電 従 量 料 金 を 、 季 節 や 朝 夕 ご と に 、 潮 流 が 安 定 し て い る 時 間 帯 ご と に 設 定 す れ ば 、 順 方 向 の 送 電 ロ ス は 逆 方 向 の 送 電 ロ ス に マ イ ナ ス を 付 け た も の に 極 め て 近 く な る 。 １ 円 ３ 円

表 2 送 電 ロ ス 需要地点 供給地点 A B C Ａ AA

L

０ ⑪

L

_AB １ ⑬

L

_AC ４ Ｂ BA

L

－ １ BB

L

０ ⑫

L

_BC ３ Ｃ CA

L

－ ４ CB

L

－ ３ CC

L

０ 3.3 各 地 点 に お け る 限 界 純 需 要 増 次 に 、図 1 の 3 地 点 の 需 要 家 と 供 給 者 が 一 つ の 前 日 ス ポ ッ ト 市 場 で 結 ば れ て い る 場 合 を 考 え る 。 シ ス テ ム へ の 1kW の 注 入 が 地 点

j

に お い て 引 き 起 こ す 内 生 的 な 純 需 要 量 （ 引 き 出 し 量 マ イ ナ ス 注 入 量 ） の 増 加 を 、 シ ス テ ム へ の 注 入 増 が 引 き 起 こ す 地 点

j

に お け る 限 界 純 需 要 増 と 呼 び 、

m

_jと 書 く 。 地 点

j

に お け る 限 界 純 需 要 増 は 、 価 格 下 落 の 結 果 で あ る か ら 、 引 き 出 し 地 点 で あ る

j

に は 依 存 す る が 、 注 入 地 点 が ど こ で あ る か に は 全 く 依 存 し な い こ と に は 注 意 し よ う 。 な お 注 入 地 点 に お い て は 、 内 生 的 な 純 需 要 の 増 加 か ら １ kW（ 外 生 的 な 純 需 要 の 減 少 ） を 差 し 引 い た も の が 、 結 果 的 な 純 需 要 の 増 加 と な る 。 な お

m

_jを す べ て の

j

に つ い て 合 計 す る と 、 １ に な る 。 す な わ ち 、 注 入 量 と 同 一 と な る 。 3.4 限 界 地 点 出 入 費 用 地 点

i

の 発 電 所 が も う 1kW 発 電 を 増 や し て 前 日 ス ポ ッ ト 市 場 に 注 入 し た 場 合 に 発 生 す る 送 電 ロ ス の 増 加 を 、 地 点

i

に お け る 限 界 注 入 費 用 と 呼 び 、 IN i

L

と 書 い た 。 こ れ は 、 全 国 各 地 点 に お け る 限 界 純 需 要 増 と 、 そ れ ぞ れ の 地 点 へ の 単 位 あ た り 送 電 ロ ス と の 積 に な る 。 し た が っ て 、 図 1 の A、 B、 C の 3 地 点 モ デ ル で は 、 例 え ば 次 の よ う に 書 け る 。

IN A

L

＝

m L

_{B AB}

+

m L

_{C AC} (8) IN B

L

＝

m L

_{A BA}

+

m L

_{C BC} こ の 場 合 、 逆 に あ る 地 点 で 引 き 出 し が 1kW 増 え る と 、 価 格 が 増 大 す る か ら す べ て の 地 点 で の 需 要 量 の 減 少 を も た ら し 、 引 き 出 し が 減 少 す る 。 上 の 設 定 の 下 で の 、 各 地 点 に お け る 限 界 引 出 し 費 用 OUT i

L

は 、(2)か ら 、限 界 注 入 費 用 に 負 の 符 号 を つ け た も の に 等 し い 。 3.5 送 電 ロ ス の 前 提 の 下 で の 限 界 地 点 出 入 費 用 ： 数 値 例 上 の(8)式 の

m

_jは 、 実 際 に は ス ポ ッ ト 市 場 の 各 地 点 に お け る 需 要 と 供 給 の 弾 力 性 に 依 存 し て い る 。 し か し こ こ で は 、 簡 単 の た め に 、 あ る 地 点 に お い て 注 入 が 1kW 増 え る と 、ス ポ ッ ト 市 場 の 価 格 が 減 少 し た 結 果 、 す べ て の 地 点 で こ れ ま で の 需 要 量 の 比 例 的 な 増 加 が 起 こ る と 想 定 し よ う 。 さ ら に 供 給 側 は 価 格 変 化 に 対 し て 非 弾 力 的 で あ る と 想 定 し よ う 。 こ の 想 定 の 下 で は 、 あ る 地 点 に お い て 注 入 が 1kW 増 え る と 、 す べ て の 地 点 で こ れ ま で の 需 要 量 に 比 例 し た 引 き 出 し の 増 加 が 起 こ る 。 す な わ ち 、

m

_jは 、 シ ス テ ム 全 体 に お け る 総 需 要 量 に 対 す る 地 点

i

に お け る 需 要 量 の 比 率 に 等 し い 。（ ノ ル ウ ェ ー で は 現 実 に こ の 方 式 を 近 似 と し て 採 用 し て い る 。） こ こ で は 、 図 １ の 各 地 点 間 の 限 界 託 送 費 用 の 数 値 例 の 下 で 、 各 地 点 に お け る 限 界 注 入 費 用 と 限 界 引 出 費 用 と を 導 出 し よ う 。 ま ず 、各 地 に お け る 需 要 量 と 供 給 量 が 表 3 に 示 さ れ て い る と お り で あ る と し よ う 。 上 の 想 定 の 下 で は 、

m

_jは 、 シ ス テ ム 全 体 に お け る 総 需 要 量 に 対 す る 地 点

i

に お け る 需 要 量 の 比 率 に 等 し い か ら 、 表 3 の 一 番 下 の 行 に 書 か れ た も の の よ う に な る 。 こ れ

と(８ ） 式 お よ び 表 2 か ら 次 が 得 ら れ る 。 IN A

L

＝

2

3

7

L

AB

+

7

L

AC ＝

2

1

3

4

7

+

7

＝ ２ IN B

L

＝

2

3

7

L

BA

+

7

L

BC ＝

2

( 1)

3

3

7

− +

7

＝ １ こ れ に 基 づ い て 限 界 注 入 費 用 を リ ス ト し た の が 表 4 の 第 ３ 行 目 で あ る 。 な お 、 表 4 の 第 3 行 目 の 符 号 を 逆 転 さ せ る こ と に よ っ て 、同 じ 表 の 2 行 目 の 限 界 引 出 し 費 用 が 得 ら れ る 。 3.6 限 界 地 点 出 入 費 用 と 通 り 抜 け を 伴 う 限 界 託 送 費 用 表 4 に 示 さ れ た 各 地 点 の 限 界 費 用 と (4)式 を も と に 各 地 点 間 の 限 界 託 送 費 用 を 算 出 す る と 、 表 2 の 限 界 託 送 費 用 の 表 が 得 ら れ る こ と が 確 か め ら れ る 。 す な わ ち 、 表 4 の 地 点 限 界 費 用 の も と で は 、 命 題 1 が 成 り 立 つ こ と が 確 認 で き る 。

4. 地 点 送 電 料 金 制 ： １ 電 力 会 社 モ デ ル

4.1 地 点 送 電 料 金 制 の 下 で の 託 送 料 金 一 電 力 会 社・複 数 地 点 モ デ ル を 考 え よ う 。地 点 送 電 料 金 制 を 次 に よ っ て 定 義 す る 。 地 点 送 電 料 金 制 と は 、 発 電 者 は 注 入 地 点 で 、 こ の 区 域 に お け る 限 界 注 入 費 用 に 等 し い 注 入 料 金 を 支 払 い 、 需 要 者 は 引 き 出 し 地 点 で 、 こ の 区 域 に お け る 限 界 引 出 し 費 用 に 等 し い 引 出 し 料 金 を 支 払 う 制 度 で あ る 。 こ の 料 金 制 は 、 (3a)か ら 明 ら か な よ う に 、 供 給 超 過 地 で は 、 供 給 者 に 課 金 し 、 需 要 家 に 補 助 金 を 与 え る 。 こ の た め 供 給 超 過 地 で は 、 発 電 を 抑 制 し 、 需 要 を 促 す 効 果 を も つ 。 他 方 、 需 要 超 過 地 で は 、 (3b)か ら 明 ら か な よ う に 、 供 給 者 に 補 助 金 を 与 え 需 要 家 に 課 金 す る こ と に な る 。 こ の た め 需 要 超 過 地 で は 、 発 電 を 促 し 需 要 を 抑 制 す る 効 果 を も つ 。 八 田 （ 2004） で は 、 地 点 送 電 料 金 の 効 率 性 に つ い て 詳 細 に 論 じ て い る 。 な お 、 こ の 制 度 の 下 で は 、 地 点

i

か ら 地 点

j

へ 託 送 す る 場 合 に 、 売 り 手 と 買 い 手 が 電 力 会 社 に 支 払 う 注 入 料 金 と 引 き 出 し 料 金 の 合 計 を 、 地 点 i か ら j へ 託 送 す る 場 合 の 、 地 点 送 電 料 金 制 度 の 下 で の 託 送 料 金 と 呼 ぶ 。 (4)式 か ら 、 次 が 成 り 立 つ 。 命 題 ２ ．地 点 送 電 料 金 制 度 の も と で は 、地 点

i

か ら 地 点

j

へ の 託 送 料 金 は 、地 点

i

か ら 地 点

j

へ の 限 界 託 送 費 用 に 等 し い 。(1)か ら 明 ら か な よ う に 、潮 流 の 方 向 に 沿 う 送 電 に は プ ラ ス の 限 界 託 送 費 用 に 見 合 っ た 課 金 が な さ れ 、 潮 流 に 従 う 送 電 に は 補 助 金 が 与 え ら れ る こ と に な る 。 命 題 １ と 命 題 ２ か ら 次 が 成 り 立 つ 。

命 題 ３ ． 表 4 の 地 点 送 電 料 金 制 度 の も と で は 、 地 点 A か ら 地 点 C に 直 売 さ れ て も 、 地 点 B で 仲 買 業 者 に よ っ て 通 り 抜 け さ れ て も 、 最 終 的 に 電 力 会 社 が 受 け 取 る 送 電 料 金 の 総 計 は 同 一 で あ る 。 4.2 数 値 例 図 １ の 地 点 A,B,C が 一 つ の 電 力 会 社 の 管 内 に あ る 場 合 を 考 え る 。 地 点 送 電 料 金 制 の 下 で は 図 １ の 各 地 点 に お け る 引 き 出 し 料 金 と 注 入 料 金 と を 表 4 の よ う に 設 定 す る こ と に な る 。 表 4 の 「 地 点 送 電 料 金 」 の も と で 各 地 点 間 で 託 送 す る 場 合 の 「 託 送 料 金 」 が 、 表 5 に 示 さ れ て い る 。（ 例 え ば 、地 点 A の 新 規 参 入 者 が 地 点 C の 需 要 家 に 送 電 す る 場 合 に は 、 表 4 の 地 点 A に お け る ① 供 給 側 料 金 ２ 円 と 、 地 点 C に お け る ② 需 要 側 料 金 ２ 円 の 和 で あ る ① ＋ ② ＝ ４ 円 を 、 託 送 料 金 と し て 支 払 う こ と に な る 。 こ れ は 表 5 の ④ と し て 記 さ れ て い る 。5_） 表 3 各 地 点 の 需 要 量 と 供 給 量 （ 単 位 は kW） 地 点 A B C 計 需 要 量 ２ 万 ２ 万 ３ 万 ７ 万 供 給 量 ３ 万 ３ 万 １ 万 ７ 万 注 入 1kW が 生 む 限 界 純 需 要 量

2

7

A

m ＝

2

7

B

m ＝

3

7

C

m ＝

１ 表 4 限 界 地 点 出 入 費 用 （ ＝ 地 点 送 電 料 金 ） 地 点 A B C 限 界 引 出 し 費 用 － ２ ③ － １ ② ２ 限 界 注 入 費 用 ① ２ １ － ２ 5 _{地 点 A の 新 規 参 入 者 が 地 点 Ｂ の 需 要 家 に 送 電 す る 場 合 に は 、 表 4 か ら 地 点 A に お け る ① 供 給 側 料 金} ２ 円 と 地 点 Ｂ に お け る ③ 需 要 側 料 金 － １ 円 の 和 で あ る ① ＋ ② ＝ １ 円 を 、 送 電 料 金 と し て 支 払 う こ と に な る 。 こ れ は 表 5 の ⑤ に 記 さ れ て い る 。 地 点 Ｂ の 新 規 参 入 者 が 地 点 Ｃ の 需 要 家 に 送 電 す る 場 合 に は 同 様 に １ ＋ ２ ＝ ３ と な り 、 表 5 の ⑥ と し て 記 さ れ て い る 。

表 5 地 点 間 託 送 料 金 表 需要地点 供給地点 A B C Ａ ０ ⑤ １ ④ ４ Ｂ － １ ０ ⑥ ３ Ｃ － ４ － ３ ０ ④ ＝ ⑤ ＋ ⑥ 図 １ か ら 導 き 出 し た 表 ２ と 、表 4 か ら 導 き 出 し た 表 5 と は 、比 較 す る と 全 く 同 一 で あ る 。 こ れ か ら 命 題 ２ が 確 認 で き る 。 例 え ば 、 A→ B 区 間 で は 送 電 ロ ス も 託 送 料 金 も １ 円 で あ る 。 B→ C 区 間 で は 、 送 電 ロ ス も 託 送 料 金 も ３ 円 に な っ て い る 。さ ら に A→ C 区 間 で は 、送 電 ロ ス も 託 送 料 金 も そ れ ぞ れ ４ 円 に な っ て い る 。 例 え ば 、表 5 に よ れ ば 地 点 A か ら 地 点 B に い っ た ん 託 送 し 、地 点 B の 仲 買 人 が 地 点 C に 転 売 す る と 、 A か ら C に 到 着 す る ま で ① ＋ ② ＝ １ ＋ ３ ＝ ４ 円 か か る 。 直 売 の 場 合 と 同 じ で あ る 。 こ れ か ら 、 命 題 ３ も 確 認 で き る 。

5. 電 力 会 社 間 の 料 金 精 算 制 度 ： 複 数 電 力 会 社 モ デ ル

新 規 参 入 者 と そ の 需 要 家 の 間 の 送 電 線 が 通 り 抜 け 電 力 会 社 を 通 る 場 合 を 考 え る 。 こ の た め 、 図 ２ に 描 か れ た 地 点 送 電 料 金 制 を 検 討 し よ う 。 地 点 送 電 料 金 制 に よ っ て 、電 力 の 潮 流 に 基 づ い た 地 点 送 電 料 金 を 設 定 す る こ と で 、 全 国 的 な 観 点 か ら 最 も 効 率 的 に 送 電 ロ ス を コ ン ト ロ ー ル す る こ と が で き る 。 た だ し 全 国 が 複 数 の 電 力 会 社 の 供 給 区 域 に 分 割 さ れ て い る と き に は 、 地 点 送 電 料 金 制 度 の 下 で は 、 各 電 力 会 社 が 得 る 料 金 収 入 が 、 そ の 電 力 会 社 管 轄 地 区 の 送 電 ロ ス に 必 ず し も 対 応 し な く な る 。 例 え ば 、 九 州 の 新 規 参 入 者 が 関 西 の 需 要 家 に 託 送 す る 場 合 、 九 州 電 力 と 関 西 電 力 に は 料 金 が 入 る が 、 中 継 線 を 持 つ 中 国 電 力 に は 何 も 入 ら な い 。 こ の た め 、 地 点 送 電 料 金 制 度 に 併 用 し て 、 各 社 の 送 電 ロ ス に 応 じ た 電 力 会 社 間 の 料 金 収 入 の 精 算 制 度 が 必 要 に な る 。 そ の こ と を 具 体 的 に 数 値 例 で 考 え よ う 。 ま ず 、 図 ２ の A, B, C,D の 4 地 点 が 九 州 電 力 ・ 中 国 電 力 ・ 関 西 電 力 と 次 の 関 係 を 満 た し て い る と し よ う 。 ３ 電 力 会 社 モ デ ル AB 区 間 は 九 州 電 力 、 BC 区 間 は 中 国 電 力 、 CD 区 間 は 関 西 電 力 が 保 有 し て い る と す る 。 さ ら に 各 区 間 で 電 力 潮 流 は 、 一 貫 し て A か ら D へ の 方 向 で あ る と す る 。6 表 ６ は 各 地 点 の 限 界 地 点 出 入 費 用 を 示 し て い る 。地 点 送 電 料 金 制 の 下 で は 、こ の 表 は 各 地 点 に お け る 地 点 送 電 料 金 を 示 し て い る 。 新 規 参 入 者 が 地 点 A か ら 地 点 D に 送 電 す る 場 合 、 地 点 A に お け る ⑦ 供 給 側 料 金 ３ 円 と 地 点 D に お け る ⑧ 需 要 側 料 金 ３ 円 を 合 わ せ て ６ 円 が 送 電 料 金 と な る 。 こ れ は 、 図 ２ か ら 明 ら か な よ う に 、 地 点 A か 6 _{も し 通 り 抜 け 区 域 BC で 潮 流 が 逆 方 向 な ら ば 、 命 題 ４ は 修 正 を 必 要 と す る 。 こ れ は 戒 能 一 成 氏 の 御} 指 摘 に よ る 。

ら 地 点 D へ の 送 電 ロ ス の 和 に 等 し い 。 潮 流 方 向 図 2 A B C D 表 6 地 点 送 電 料 金 表 地 点 A B C D 需 要 側 料 金 － ３ － ２ １ ⑧ ３ 供 給 側 料 金 ⑦ ３ ＋ ２ － １ － ３ し か し 電 力 会 社 間 に 精 算 シ ス テ ム が な い 場 合 に は 、九 州 電 力 と 関 西 電 力 だ け が 料 金 収 入 を 得 る こ と に な り 、 通 り 抜 け を す る 中 国 電 力 に は 何 ら の 料 金 収 入 が 入 ら な い こ と に な る 。 言 い 換 え る と 、 こ の 料 金 シ ス テ ム の も と で は 九 州 電 力 や 関 西 電 力 は 送 電 ロ ス に 比 べ て 過 大 な 料 金 収 入 を あ げ て い る 。 こ の よ う に 、 地 点 送 電 料 金 制 を 電 力 会 社 間 の 料 金 精 算 制 度 な し に 採 用 す る と 、 各 電 力 会 社 が 所 有 す る 送 電 線 の 送 電 ロ ス と 料 金 収 入 と に ギ ャ ッ プ が 生 じ て し ま う 。7 こ の ギ ャ ッ プ を 取 り 除 く た め に 、以 下 の よ う な 電 力 会 社 間 の 精 算 制 度 を 導 入 し よ う 。 複 数 電 力 会 社 モ デ ル に お け る 地 点 料 金 精 算 制 度 と は 、 次 の 制 度 で あ る 。 ① 託 送 利 用 者 は 、 地 点 料 金 制 度 に 従 う 。 ② そ の 上 で 、 各 電 力 会 社 は 、 隣 接 す る 電 力 会 社 を 自 社 の 送 電 線 に 接 続 す る 新 規 参 入 者 あ る い は 需 要 家 と し て み な し て 、 地 点 送 電 料 金 制 に 基 づ い た 注 入 料 7 _{図 2 の よ う に 、 通 り 抜 け 地 区 を 挟 ん だ 送 電 で は な く 、 2 地 区 3 地 点 の 間 の 送 電 で も こ の ギ ャ ッ プ は 生} じ る 。 地 点 A か ら 地 点 C へ 送 電 す る 場 合 の 地 点 送 電 料 金 が 表 4 に 記 さ れ て い る 。 こ の 表 の 場 合 に は 、 地 点 A か ら 地 点 C へ の 追 加 的 な 送 電 に 対 し て 九 州 電 力 に は ２ 円 の 料 金 収 入 （ 限 界 注 入 費 用 に 等 し い ） が 入 り 、 中 国 電 力 に は 地 点 C に お い て ２ 円 の 料 金 収 入 （ 限 界 引 き 出 し 費 用 に 等 し い ） が 入 る 。 図 １ か ら 明 ら か な よ う に 、 こ の 料 金 制 度 の も と で は 九 州 電 力 に は コ ス ト を 上 回 る 料 金 収 入 が 入 り 、 中 国 電 力 に は コ ス ト を 下 回 る 料 金 収 入 し か 入 ら な い 。 １ 円 ３ 円 2 円

金 と 引 出 し 料 金 を 課 す 。（ し た が っ て 一 つ の 電 力 会 社 は 、隣 接 す る 電 力 会 社 を 自 社 の 送 電 線 に 接 続 す る 発 電 者 あ る い は 需 要 家 と し て み な し て 送 電 料 金 を と る と 同 時 に 、 自 社 が そ の 隣 接 電 力 会 社 へ の 発 電 者 、 あ る い は 需 要 家 に な っ た と み な し た 送 電 料 金 を 支 払 う 。） こ の 制 度 の 下 で は (5)か ら 次 が 成 り 立 つ 。 命 題 4． ３ 電 力 会 社 モ デ ル に お け る 地 点 料 金 精 算 制 度 の も と で は 、 そ れ ぞ れ の 電 力 会 社 が 、 自 己 の 送 電 線 で 発 生 し た 限 界 託 送 費 用 に 等 し い 料 金 収 入 を 得 る 。 証 明 ３ 電 力 会 社 モ デ ル で も 、 地 点

i

に お け る 限 界 注 入 費 用 を IN i

L

限 界 引 き 出 し 費 用 を OUT i

L

と 書 こ う 。 ま ず 、地 点 A か ら 地 点 D に 追 加 １ 単 位 の 託 送 が 行 わ れ る ケ ー ス を 考 え よ う 。こ の 場 合 九 州 電 力 で 発 生 す る 限 界 託 送 費 用 は(6)で 定 義 さ れ る

L

_AB、 中 国 電 力 で 発 生 す る 限 界 託 送 費 用 は (7) で 定 義 さ れ る

L

_BC、 さ ら に 関 西 電 力 で 発 生 す る 限 界 託 送 費 用 は (4)で 定 義 さ れ る

L

_{C D}で あ る 。 一 方 、地 点 料 金 精 算 制 度 の 下 で は 、地 点 A か ら 地 点 B に 追 加 １ 単 位 の 託 送 が 行 わ れ る 場 合 、九 州 電 力 は 命 題 ２ に お け る 発 電 者 か ら IN A

L

の 注 入 料 金 を 取 り 、地 点 B に お い て 中 国 電 力 に 対 し て IN B

L

の 注 入 料 金 を 支 払 う 。 し た が っ て 料 金 収 入 は 、 IN IN A B

L

−

L

に な る 。 こ れ は 、 (2) よ り IN OUT A B

L

+

L

と 書 き 直 せ る か ら (6)で 定 義 さ れ る

L

_ABに な り 、 料 金 収 入 は 、 限 界 託 送 費 用 に 等 し い 。 こ れ か ら 、 九 州 電 力 に 関 し て は 、 命 題 4 が 得 ら れ る 。次 に こ の 場 合 、中 国 電 力 は 、命 題 ２ に 基 き 、地 点 B に お い て 九 州 電 力 か ら IN B

L

の 注 入 料 金 を 取 り 、地 点 C に お い て 関 西 電 力 に 対 し て IN C

L

の 注 入 料 金 を 払 う 。従 っ て 料 金 収 入 は 、 IN IN IN OUT B C B C

L

−

L

=

L

+

L

と な る 。こ れ か ら 、中 国 電 力 に 関 し て も 命 題 ４ が 得 ら れ る 。 関 西 電 力 に 関 し て も 同 様 で あ る 。 次 に 、地 点 料 金 精 算 制 度 の 下 で 、地 点 A か ら 地 点 C に 追 加 １ 単 位 の 託 送 が 行 わ れ る ケ ー ス を 考 え よ う 。こ の 時 、(6)と (7)か ら 九 州 電 力 で 発 生 す る 限 界 託 送 費 用 は

L

_AB、 中 国 電 力 で 発 生 す る 限 界 託 送 費 用 は 、

L

_BCで あ る 。 こ れ と 命 題 ２ か ら 、 命 題 ４ が 得

ら れ る 。 他 の ケ ー ス も 同 様 で あ る 。 地 点 A か ら 地 点 D に 1kW 送 電 が 行 わ れ た 場 合 に 各 電 力 会 社 が 各 地 点 で 受 け 取 る 送 電 料 金 の 数 値 例 が 表 7 に 示 さ れ て い る 。8 _{最 後 の 列 に は 各 社 が 受 け 取 る 送 電 料 金 の} 総 計 が 示 さ れ て い る 。 こ の 列 と 図 ２ を 比 べ る と 、 各 社 の 送 電 ロ ス と 料 金 収 入 が 等 し く な っ て い る こ と が わ か る 。 表 7 地点 A から地点 D に直売されたとき各電力会社が各地点で受け取る料金収入 A B C D 計 九 州 電 力 ３ － ２ １ 中 国 電 力 ２ １ ３ 関 西 電 力 － １ ３ ２ こ の よ う な 精 算 シ ス テ ム を 採 用 す る と 、新 規 参 入 者 と そ の 需 要 家 は そ れ ぞ れ の 接 続 地 点 で の み 料 金 を 払 っ て い る に も 関 わ ら ず 、 通 り 抜 け し て い る 中 国 電 力 も そ の 送 電 ロ ス に 見 合 っ た 形 で 精 算 を 受 け る こ と に な る 。 こ れ は 、 地 点 A か ら 地 点 C に 送 電 さ れ る 場 合 も 全 く 同 様 で あ る 。 地 点 A か ら 地 点 C に 電 力 が 1kW 流 れ る 場 合 、 九 州 電 力 は 、 地 点 B に お け る 中 国 電 力 へ の 供 給 者 と し て 、表 4 が 示 す 供 給 料 金 １ 円 を 支 払 う 。（ 中 国 電 力 は 、九 州 電 力 が 自 社 に 接 続 し て い る 新 規 参 入 者 で あ る と い う 立 場 か ら 供 給 者 料 金 １ 円 を 受 け 取 る 。） 九 州 電 力 は 、地 点 A に お け る 送 電 料 金 収 入 ２ 円 か ら 地 点 B で の 料 金 支 払 い を 差 し 引 く と 、 ネ ッ ト で １ 円 の 送 電 料 金 収 入 を 得 る 。 図 １ か ら 明 ら か な よ う に 、 こ れ は 九 州 電 力 の 送 電 ロ ス に 等 し い 。 一 方 、中 国 電 力 は 地 点 C に お い て 需 要 家 か ら 得 る 需 要 側 料 金 ２ 円 と 、地 点 B で 九 8 _{こ の 場 合 、 例 え ば 地 点 B に お け る 料 金 収 入 は 、 九 電 が － ２ 円 で 中 国 電 力 が ２ 円 で あ る こ と を 表 ５ の} 列 B が 示 し て い る 。 従 っ て 、 地 点 B に お け る 精 算 で は 、 九 電 が 中 国 電 力 に 対 し て ２ 円 支 払 っ て い る 。 も と も と の 表 5 に よ っ て 、 地 点 B に お け る 九 州 電 力 と 中 国 電 力 間 の 精 算 の 方 法 を 見 る と 、 中 国 電 力 の 送 電 線 に 地 点 B に お い て 接 続 し て い る 発 電 会 社 と し て 、 九 電 は 中 国 電 力 に 対 し て ２ 円 の 料 金 を 払 う 。 一 方 で 、 同 じ こ と だ が 、 九 電 の 送 電 線 の 地 点 B に お け る 需 要 家 と し て 中 国 電 力 は 九 電 に 対 し て － ２ 円 支 払 っ て い る 。（ す な わ ち ２ 円 受 け 取 っ て い る 。）

州 電 力 か ら １ 円 の 供 給 側 料 金 を 得 る 。合 わ せ て 、中 国 電 力 は ３ 円 の 料 金 収 入 を 得 る 。 図 １ か ら 明 ら か な よ う に こ れ は 中 国 電 力 の 送 電 ロ ス に 等 し い 。

し か し 、 こ れ は 当 然 で あ る 。 上 の 精 算 シ ス テ ム の も と で は 、 地 点 B で 通 り 抜 け さ れ た 場 合 と ま っ た く 同 額 の 料 金 収 入 を 中 国 電 力 は 得 る か ら で あ る 。

第 Ⅱ 部 基 本 料 金

6. 固 定 費 用 を 賄 う た め の 基 本 料 金

6.1 基 本 料 金 の 制 度 設 計 の 要 件 こ れ ま で は 、可 変 費 用 を 従 量 料 金 に よ っ て ま か な う 料 金 制 を 考 え た 。各 地 点 に お け る 受 電 と 送 電 の 従 量 料 金 の 設 計 は 、 各 地 点 に お け る 発 電 量 お よ び 受 電 量 に 影 響 を 与 え る 。 し た が っ て 、 全 体 の 送 電 ロ ス を 最 小 化 す る た め に は 、 地 点 ご と に 従 量 料 金 を 設 計 す る 必 要 が あ っ た 。 次 に 、 基 本 料 金 に よ る 固 定 費 用 の 償 還 を 考 え よ う 。 基 本 料 金 の 制 度 設 計 は 、 発 電 量 、 受 電 量 に 影 響 を 与 え な い が 、 発 電 者 、 受 電 者 の 立 地 に は 、 影 響 を 与 え う る 。 し か し 、 本 稿 で は 、 簡 単 の た め に 、 発 電 者 お よ び 受 電 者 の 立 地 は 既 定 で あ り 、 基 本 料 金 に よ っ て 影 響 を 受 け な い 場 合 を 考 え る 。 そ の 場 合 で も 、基 本 料 金 の 設 計 が ス テ ー ク ホ ル ダ ー の 行 動 に 影 響 を 与 え 得 る 。設 計 の あ り 方 に よ っ て は 、 送 電 会 社 が 送 電 線 の 増 強 を 断 わ る イ ン セ ン テ ィ ブ を 作 り 出 す 可 能 性 が あ る 。 例 え ば 九 州 か ら 関 西 に 送 電 す る 場 合 に 、 中 国 電 力 の 供 給 区 域 を 通 過 し な け れ ば な ら な い 。（ こ の よ う に「 通 り 抜 け 」ら れ て し ま う 中 国 電 力 の よ う な 供 給 区 域 を「 通 り 抜 け 区 域 」と 呼 ぼ う 。）こ の 場 合 に 、九 州 の 発 電 者 や 関 西 の 受 電 者 が 、 何 ら か の 形 で 「 通 り 抜 け 区 域 」 中 国 電 力 に 対 し て 送 電 線 の 費 用 の 負 担 を す る 仕 組 み が な け れ ば 、 中 国 電 力 は 十 分 な 送 電 線 の 建 設 の 意 欲 を 失 う で あ ろ う 。 以 下 で は 、基 本 料 金 が 通 り 抜 け 区 域 の 送 電 線 建 設 の 意 欲 を 削 ぐ 事 態 を 発 生 さ せ な い 電 力 会 社 間 精 算 制 度 を 考 え よ う 。 6.2 2 区 域 モ デ ル ま ず 、 図 ３ に 示 さ れ る よ う な Ⅰ と Ⅱ の ２ 区 域 モ デ ル を 考 え る 。 各 区 域 の 送 電 会 社 は 、 基 本 料 金 に よ っ て そ の 区 域 の 送 電 線 建 設 コ ス ト を 賄 う こ と を 原 則 と す る 。 そ の 場 合 、 基 本 料 金 は 受 電 側 に も 送 電 側 に も か け な け れ ば な ら な い 。 例 え ば 区 域 Ⅰ に 発

電 所 の ほ と ん ど が 集 中 し て い る 場 合 、 送 電 会 社 の み に か け る と す る と 、 区 域 Ⅱ の 送 電 会 社 に は 基 本 料 金 収 入 が ほ と ん ど な く な っ て し ま い 、 固 定 費 用 が 賄 え な く な る 。 し た が っ て 以 下 で は 、各 区 域 ご と に 、そ の 区 域 の 送 電 網 の 建 設 コ ス ト を 2 分 割 し 、 半 分 を 受 電 側 の 基 本 料 金 、 残 り を 発 電 側 の 基 本 料 金 に よ っ て 、 総 括 原 価 主 義 に 基 づ い て 負 担 さ せ る 。受 電 側 の 基 本 料 金 を「 引 き 出 し 基 本 料 金 」、送 電 側 の 基 本 料 金 を「 注 入 基 本 料 金 」 と 呼 ぶ 。 区 域 が ２ つ の 場 合 に は 、 先 に 述 べ た 「 通 り 抜 け 問 題 」 が 発 生 し な い の で 、 こ の 料 金 制 の 下 で は 、 精 算 制 度 が な く て も 基 本 料 金 に よ っ て そ の 区 域 の 固 定 費 用 を ま か な う こ と が で き る 。 図 ３ ２ 区 域 モ デ ル

潮流

Ⅰ

Ⅱ

７ ．「 通 り 抜 け 託 送 」 に 対 す る 区 域 間 精 算

7.1 単 純 通 り 抜 け モ デ ル ： 3 区 域 通 り 抜 け と 基 本 料 金 ３ 区 域 以 上 あ る 場 合 に は 、「 通 り 抜 け 託 送 」問 題 が 発 生 し う る 。通 り 抜 け 区 域 の 家 計 お よ び 企 業 が 、 自 区 域 の 送 電 線 建 設 の 費 用 の う ち 通 り 抜 け 託 送 に 使 わ れ た 部 分 を 負 担 し な く て 済 む 区 域 間 精 算 制 度 を 考 え よ う 。 図 ４ は 、 Ⅰ Ⅱ Ⅲ の ３ 区 域 を 示 し て い る 。 潮 流 の 方 向 は 、 左 か ら 右 で あ り 、 連 系 線 B と 連 系 線 C に お け る 送 電 量 が 全 く 同 じ 量 a で あ る と し よ う 。す な わ ち 次 の 等 式 が 成 り 立 っ て い る 場 合 を 考 え る 。 連 系 線 B の 送 電 量 ＝ 連 系 線 C の 送 電 量 =a (9) こ の 場 合 、 区 域 Ⅱ が 通 り 抜 け 区 域 で あ る と み な す こ と が で き る よ う に 思 え る 。 こ の 状 況 は 、区 域 Ⅰ の 地 点 A か ら 区 域 Ⅲ の 地 点 B へ の 送 電 が 行 わ れ て い る こ と と 整 合 的 だ か ら で あ る 。こ の 場 合 に 、地 点 A と 地 点 D に お い て 固 定 料 金 を 取 り 、そ れ ぞ れ が 区 域 Ⅰ お よ び 区 域 Ⅲ の 料 金 収 入 に な る の で は 、 区 域 Ⅱ は 送 電 線 建 設 の イ ン セ ン テ ィ ブ は な く な る だ ろ う 。 し か し こ の 状 況 で は 、図 5 が 示 す よ う に 、地 点 A で の 発 電 を 地 点 F の 需 要 家 が 受 け 止 め 、次 に 地 点 F の 発 電 を 地 点 D の 需 要 家 が 受 け 止 め て い る の か も し れ な い 。そ の 場 合 に は 、 結 果 的 に A か ら D に 流 れ て い る 送 電 に 関 し て 「 通 り 抜 け は な か っ た 」 と い う こ と も で き る 。 こ の 場 合 に は 、 地 点 A、 地 点 F、 地 点 D の そ れ ぞ れ で 発 電 者 に も 需 要 家 に も 固 定 料 金 を 課 せ ば 、 そ れ 以 上 通 り 抜 け 料 金 を 取 る 必 要 は な い 。 と い う こ と は 、現 実 に 地 点 B と 地 点 C を 同 じ 方 向 に 同 じ 量 の 電 力 が 流 れ て い る 場 合 に 、 実 は 課 金 の 精 算 の 公 平 性 に 関 す る 明 確 な 基 準 は な い と い う こ と で あ る 。 言 い 換 え る と 、 許 容 し う る 精 算 制 度 の 設 計 に は 巾 が あ る 。

図 ４ 単 純 通 り 抜 け モ デ ル ： ３ 区 域

Ⅰ

B

Ⅱ

C

Ⅲ

D

A

a

a

図 ５ 中 継 モ デ ル ： ３ 区 域

Ⅰ

B

F

Ⅱ

C

Ⅲ

D

A

a

a

し か し な が ら 、 地 点 Ｆ で 同 量 の 消 費 と 発 電 が 同 時 に 行 わ れ て い る 以 上 、 地 区 Ⅱ は 自 給 自 足 が で き た は ず で あ る 。 し た が っ て 、 せ ん じ 詰 め る と 、 地 区 Ⅱ の 発 電 者 や 需 要 家 は 、 地 点 B か ら 地 点 C へ の 潮 流 の 利 益 を 得 て い る わ け で は な い 。 地 点 B か ら 地 点 C へ の 潮 流 か ら 確 実 に 利 益 を 得 て い る の は 、 地 点 A の 発 電 者 と 地 点 D の 需 要 家 で あ る 。 す な わ ち 、図 ５ の モ デ ル で は 、「 地 点 Ｆ の 発 電 者 が 区 域 Ⅲ の 需 要 家 に 対 し て 送 電 し て い る か ら 、 地 点 Ｆ の 発 電 が 区 域 Ⅱ の 中 で 使 わ れ な い 。 こ の た め に 、 地 点 Ａ の 発 電

者 の 電 力 が 地 点 F で 利 用 さ れ て い る 」と 考 え る こ と が で き る 。と す る と 、地 点 Ａ の 発 電 者 が 、地 点 Ｆ ま で 送 電 で き る 原 因 は 、連 系 線 C で 送 電 が 行 わ れ て い る た め だ と 考 え る こ と が で き る 。 こ の 場 合 、 地 点 Ａ の 発 電 者 が ど の 地 点 の 需 要 家 と 商 業 的 な 取 引 を し て い よ う と 、 連 系 線 Ｃ で 連 系 線 Ｂ と 同 量 の 送 電 が 行 わ れ て い る と い う 事 実 に よ っ て 、 連 系 線 Ｂ の 使 用 が 可 能 に な っ て い る わ け だ か ら 、 地 点 Ａ の 発 電 者 は 、 通 り 抜 け が 行 わ れ て い る 時 と 全 く 同 様 の 恩 恵 を 連 系 線 Ｃ か ら 受 け て い る と 考 え る こ と が で き る 。 し た が っ て こ こ で は 、 次 の よ う に 定 義 す る 。 Ⅰ 、 Ⅱ 、 Ⅲ の ３ 区 域 モ デ ル で 、 潮 流 が Ⅰ か ら Ⅲ に 向 か っ て い る 場 合 、 連 系 線 Ｂ と Ｃ に お け る 送 電 量 が 同 じ で あ る 場 合 に は 、 地 点 Ａ か ら Ｄ に 対 し て 図 ４ の よ う な 通 り 抜 け が 行 わ れ て い る と い う 。 さ ら に 、 区 域 Ⅱ を 通 り 抜 け 区 域 と 呼 ぶ 。 （10） 次 の 単 純 明 快 な 料 金 設 計 基 準 は 「 通 り 抜 け 区 域 の 送 電 線 建 設 に 必 要 十 分 な イ ン セ ン テ ィ ブ を 与 え る 」効 果 が あ る 。（ な お 以 下 本 稿 で は 、区 域 Ⅰ 、区 域 Ⅱ 、区 域 Ⅲ 、・・・ の 電 力 会 社 を 電 力 会 社 Ⅰ 、 Ⅱ 、 Ⅲ 、 Ⅳ ・ ・ ・ と 呼 ぶ ）。 ル ー ル １ 地 点 B と C に お け る 送 電 量 が 全 く 同 じ 場 合 、 電 力 会 社 Ⅰ が そ の 送 電 量 を 地 点 B で 電 力 会 社 Ⅱ の 送 電 網 に 注 入 し た と み な し 、そ の 注 入 量 に 対 応 し た 注 入 基 本 料 金 を 払 う こ と に す る 。同 様 に 、電 力 会 社 Ⅲ は 、地 点 C で 通 過 量 に 等 し い 電 力 を 電 力 会 社 Ⅱ の 送 電 網 か ら 受 電 す る と み な し て 、 そ の 引 き 出 し 基 本 料 金 を 支 払 う こ と に す る 。 電 力 会 社 Ⅰ と Ⅲ か ら そ れ ぞ れ 地 点 B と 地 点 C で 電 力 会 社 Ⅱ に 支 払 わ れ る 額 の 総 計 が 電 力 会 社 Ⅱ が 受 け 取 る 通 り 抜 け 料 金 と な る 。

ネ ッ ト 取 引 量 上 で は 、（ １ ０ ）に よ っ て 通 り 抜 け 区 域 を 定 義 し た が 、こ の 定 義 の 根 拠 を「 ネ ッ ト 取 引 量 」 と い う 概 念 を 用 い て よ り 明 確 に し よ う 。 ネ ッ ト ワ ー ク の 電 力 の 流 れ （ 電 力 潮 流 ）は 、「 各 区 域 の ネ ッ ト の 取 引 量 」（ ＝ そ の 区 域 の 発 電 量 － 受 電 量 ）、に 依 存 す る 。 「 各 区 域 の ネ ッ ト の 取 引 量 」 が プ ラ ス な ら 、「 ネ ッ ト の 発 電 」、 マ イ ナ ス な ら 「 ネ ッ ト の 受 電 」 に な る 。9 仮 に ３ 区 域 の い ず れ で も ネ ッ ト の 取 引 量 が 0 な ら ば 、各 区 域 で 発 電 と 受 電 が 一 致 し て い る 。 す な わ ち 、 各 区 域 の 電 力 の 自 給 自 足 が 成 り 立 つ の で 、 区 域 を 超 え た 電 力 の 流 れ は ま っ た く 発 生 し な い 。 し か し 、 区 域 Ⅰ と Ⅲ の ネ ッ ト の 取 引 量 が 0 で な く な る と 、 電 力 潮 流 が 発 生 す る 。 こ の モ デ ル の 例 で は 、 表 ８ の よ う に な る 。 表 ８ ３ 区 域 単 純 通 り 抜 け モ デ ル Ⅰ Ⅱ Ⅲ ネ ッ ト の 取 引 量 a 0 － a 現 実 の 商 取 引 が ど う で あ れ 、 ネ ッ ト ワ ー ク 全 体 の 視 点 で 見 る と 、 区 域 Ⅱ で は 発 電 と 受 電 が 相 殺 さ れ て ネ ッ ト の 取 引 量 は 0 で あ る 。区 域 Ⅰ か ら 区 域 Ⅲ へ の 潮 流 を 作 り 出 し て い る 。 す な わ ち Ⅱ に お け る ネ ッ ト 取 引 量 が ０ で あ る こ と に よ っ て 、 Ⅰ に お け る ネ ッ ト の 取 引 量 a（ i.e. ネ ッ ト の 発 電 量 ａ ） お よ び Ⅲ に お け る ネ ッ ト の 取 引 量 － a （i.e. ネ ッ ト の 受 電 量 ａ ） が 可 能 に な っ て い る 。 し た が っ て 、 通 り 抜 け は 表 8 に よ っ て 定 義 す る こ と も で き る 。 こ の 視 点 か ら 、 定 義 （ １ ０ ） を 根 拠 づ け る こ と が で き る 。 潮 流 と 基 本 料 金 さ て 、 区 域 Ⅰ の 電 力 会 社 は 、 区 域 Ⅱ の 電 力 会 社 に 対 し て 支 払 う 精 算 料 金 の 財 源 を 9 _{実 際 、 参 考 文 献 Schweppe et al. (1988)や 、 一 般 的 な 電 力 工 学 の 教 科 書 で も 、 直 流 法 と 呼 ば れ る 電 力} 潮 流 の 近 似 法 の 解 説 が あ る 。

地 点 Ａ の 発 電 者 に 求 め る の は 自 然 だ ろ う 。 こ の 発 電 者 に よ る 域 外 送 電 に よ っ て 精 算 料 金 が 発 生 し て い る か ら で あ る 。 し た が っ て 、 区 域 Ⅰ に お け る 注 入 基 本 料 金 は 、 区 域 Ⅱ や 区 域 Ⅲ に お け る 注 入 料 金 よ り 、 高 く 設 定 さ れ る こ と に な る 。 一 方 、 区 域 Ⅲ の 電 力 会 社 は 、 区 域 Ⅱ の 電 力 会 社 に 対 し て 支 払 う 引 き 出 し 基 本 料 金 の 財 源 と し て 、 地 点 Ｄ に お け る 需 要 家 に 対 し て 求 償 す る こ と が 自 然 で あ る 。 こ の 地 点 の 需 要 家 が 域 外 か ら の 送 電 の 原 因 を つ く っ て い る か ら で あ る 。 し た が っ て 、 こ の モ デ ル で は 、 区 域 Ⅲ の 引 き 出 し 基 本 料 金 は 区 域 Ⅰ 、 Ⅱ の そ れ よ り 高 く な る 。 ま と め る と 、 「 注 入 基 本 料 金 は 上 流 区 域 で 他 区 域 よ り 高 く 設 定 し 、 引 き 出 し 基 本 料 金 は 下 流 区 域 で 他 区 域 よ り 高 く 設 定 す る 」 （ 11） と い う 結 果 に な る 。 7.2 複 合 通 り 抜 け モ デ ル ： ３ 区 域 潮 流 と 固 定 料 金 節 7.1 で は 、(9)式 が 成 り 立 つ ケ ー ス を 分 析 し た 。本 節 で は 、こ の 等 式 が 成 り 立 た な い 場 合 を 考 え る 。 仮 に ｂ ＝ 連 系 線 Ｂ の 送 電 量 ＞ 連 系 線 Ｃ の 送 電 量 ＝ ａ (12) と し よ う 。 こ こ で 、「 連 系 線 B の 送 電 量 」 と 「 連 系 線 C の 送 電 量 」 と の 少 な い 方 を 「 区 域 Ⅱ の 通 り 抜 け 送 電 量 」 と い う 。 こ の 場 合 に は 、 連 系 線 C の 送 電 線 ＝ 地 区 Ⅱ の 通 り 抜 け 送 電 量 ＝ ａ （ 13） が 成 り 立 つ 。

（ １ ２ ） 式 が 成 り 立 つ と き 、 連 系 線 Ｂ の 送 電 量 が ａ を 越 え る 部 分 に つ い て は 、 区 域 Ⅰ か ら Ⅲ へ の 通 り 抜 け で あ る と は 言 い 難 い 。 こ の 部 分 は 、 区 域 Ⅰ か ら 区 域 Ⅱ へ の 二 区 域 間 送 電 で あ る と 考 え ら れ る の で 、6.2 節 で 論 じ た よ う に 精 算 の 必 要 は な い 。 し か し 、 通 り 抜 け 量 ａ に 対 し て は 、7.1 節 の 方 式 の 精 算 制 度 を 電 力 会 社 Ⅰ と Ⅲ が Ⅱ に 対 し て 適 用 す る 必 要 が あ る 。 す な わ ち 、 電 力 会 社 Ⅱ の 送 電 線 建 設 イ ン セ ン テ ィ ブ を 削 か な い よ う に す る に は 、電 力 会 社 Ⅰ に は 、電 力 会 社 Ⅱ の 発 電 者 と し て B 点 に お い て 、 ａ に 対 応 す る 注 入 固 定 料 金 ａ’を 課 金 し 、 電 力 会 社 Ⅲ に は 地 点 C に お い て 、 引 き 出 し 固 定 料 金 ａ’を 課 金 す る 必 要 が あ る 。10 _{不 等 号 が(12)と 逆 の 場 合 に も 、 同} 様 に 、 連 系 線 Ｂ の 送 電 量 を 地 区 Ⅱ の 通 り 抜 け 送 電 量 と し て 、 節 7.1 の ル ー ル に 従 っ て 課 金 す る 。 し た が っ て 、 連 系 線 Ｂ と 連 系 線 Ｃ と の 送 電 量 が 異 な る 場 合 に も 、(11)の 帰 結 は 同 じ ま ま で あ る 。 ネ ッ ト 取 引 量 と こ ろ で ３ 区 域 複 合 モ デ ル に お け る 各 区 域 の ネ ッ ト 取 引 量 は 表 9 の 通 り に な る 。 表 9 ３ 区 域 複 合 通 り 抜 け モ デ ル 区 域 Ⅰ Ⅱ Ⅲ ネ ッ ト の 取 引 量 a+b －b －a こ の ネ ッ ト の 取 引 量 の 構 造 が 、 左 か ら 右 に 行 く に つ れ て 電 力 が 小 さ く な る 電 力 潮 流 を つ く り だ し て い る 。 と こ ろ で 、 表 9 の 中 で 、 Ⅰ と Ⅱ の 間 の 電 力 量 ｂ の や り と り に つ い て は 、 前 述 し た よ う に 、 隣 り 合 う 2 社 間 の 話 な の で 、 通 り 抜 け は な く 、 精 算 は 不 要 と な る 。 し た が 1 0 _{た だ し ａ ’は 送 電 量 ａ に 必 要 な 送 電 容 量 に 対 応 す る 基 本 料 金 で あ る 。 ａ を 例 え ば 過 去 ３ 年 平 均 の 連 系 託} 送 電 量 だ と す る と 、 ａ が 大 き く な れ ば ａ’も 連 動 し て 大 き く な る 数 字 で あ る 。

っ て 、 通 り 抜 け が ど の よ う に 生 じ て い る か を 見 る に は 、 Ⅰ と Ⅱ の 間 の 電 力 量 ｂ の や り と り を 除 い て 、 下 記 の よ う に 、 通 り 抜 け の 観 点 か ら 補 正 し た ネ ッ ト の 取 引 量 を 考 え る 。 表 10 補 正 後 ネ ッ ト 取 引 量 （ 通 り 抜 け の 観 点 か ら ） Ⅰ Ⅱ Ⅲ 補 正 ネ ッ ト 取 引 量 ａ 0 － ａ 現 実 の 商 取 引 が ど う で あ れ 、 こ の 補 正 し た ネ ッ ト の 取 引 量 が 、 Ⅱ を 通 り 抜 け 区 域 に し て い る 。 そ こ で 、 会 社 間 精 算 は 次 の よ う に 行 わ れ る 。11 Ⅰ は 、 Ⅱ に 、a’を 支 払 い 、 Ⅲ は 、 Ⅱ に 、a’を 支 払 う 。 1 1 _{ａ ’の 定 義 に つ い て は 注 10 を 参 照 。}

８ . 「 通 り 抜 け 託 送 」 に 対 す る 区 域 間 精 算 ： ４ 区 域 モ デ ル

8.1 単 純 通 り 抜 け ： ４ 区 域 モ デ ル 通 り 抜 け 図 ６ は 、Ⅰ ,Ⅱ ,Ⅲ ,Ⅳ の ４ 区 域 を 示 し て い る 。潮 流 の 方 向 は 左 か ら 右 で あ り 、連 系 線 Ｂ 、Ｃ 、Ｄ に お け る 送 電 量 は い ず れ も 全 く 同 一 で 、a で あ る と し よ う 。す な わ ち 、 次 が 成 り 立 っ て い る 場 合 を 考 え る 。 連 系 線 Ｂ の 送 電 量 ＝ 連 系 線 Ｃ の 送 電 量 ＝ 連 系 線 Ｄ の 送 電 量 ＝ a こ の 場 合 、 通 り 抜 け に 関 し て い く つ か の 可 能 性 が あ る 。 ① 地 点 Ａ か ら 地 点 Ｅ に 託 送 が 行 わ れ て い る 。こ の 場 合 に は 、区 域 Ⅱ 、Ⅲ で 通 り 抜 け が 起 き て い る 。 ② 地 点 Ａ か ら 地 点 Ｆ に 託 送 が 行 わ れ 、別 個 に 地 点 Ｆ か ら 地 点 Ｅ に 託 送 が 行 わ れ て い る 。 こ の 場 合 に は 、 区 域 Ⅲ で 通 り 抜 け が 起 き て い る 。 ③ 地 点 Ａ か ら 地 点 Ｇ に ま ず 託 送 が 行 わ れ 、地 点 Ｇ の 発 電 所 か ら 地 点 Ｅ に 託 送 が 行 わ れ て い る 。 こ の 場 合 に は 、 通 り 抜 け は 区 域 Ⅱ の み で 起 き て い る 。 ④ 地 点 Ａ か ら 地 点 Ｆ に 託 送 が 行 わ れ 、 地 点 Ｆ か ら 別 の 主 体 が 地 点 Ｇ に 託 送 を 行 い 、 さ ら に Ｇ の 地 点 の 住 民 が 、今 度 は 地 点 Ｇ の 発 電 者 が 地 点 Ｅ に 託 送 し て い る 場 合 で あ る 。 こ の 場 合 に は 通 り 抜 け は 起 き な い 。 図 6 ４ 区 域 通 り 抜 け モ デ ル

B

C

E

A

D

Ⅰ

a a a

Ⅳ

Ⅲ

Ⅱ

F

G

上 の ４ ケ ー ス の う ち 通 常 の 意 味 で の 通 り 抜 け が 起 き る の は 、 ① 、 ② 、 ③ の ３ ケ ー ス で あ る 。 ② の ケ ー ス で は 、 Ａ か ら Ｆ へ の 託 送 で は 通 り 抜 け が 発 生 し て い な い が 、 地 区 内 で は 同 量 の 発 電 と 受 電 が 行 わ れ て い る の で 、 自 給 自 足 で あ り 、 こ の 地 区 の 主 体 は 、 地 点 B か ら 地 点 C へ の 潮 流 か ら 利 益 を う け て い な い 。 実 際 、 地 点 A か ら F へ の 託 送 自 身 が 、 区 域 Ⅱ の 発 電 が 他 区 域 の 需 要 家 に 使 わ れ て い る と い う こ と に よ っ て 可 能 に な っ て い る 。 す な わ ち 、 Ａ か ら 電 力 を 注 入 し た 発 電 者 も 、 連 系 線 Ｃ ， Ｄ の 恩 恵 を 受 け て い る と み な す こ と が で き る 。 し た が っ て 、 こ の よ う に Ｂ ， Ｃ ， Ｄ の 送 電 量 が 同 じ 時 に は 、 究 極 的 に 恩 恵 を 得 て い る の は 、 区 域 Ⅰ の 発 電 者 と 区 域 Ⅳ の 需 要 家 で あ る か ら 、 ② の 場 合 に は 、 地 点 Ａ か ら 地 点 Ｅ へ の 通 り 抜 け 託 送 が 行 わ れ て い る 場 合 の 料 金 を 課 金 す れ ば 良 い と い う こ と に な る 。 ③ に 関 し て も 同 様 の こ と が 言 え る 。 地 点 Ａ の 発 電 者 が 地 点 Ｇ の 需 要 家 に 託 送 で き る の は 、 地 点 Ｇ の 発 電 者 が 地 点 Ｅ の 需 要 家 に 電 力 を 託 送 し て い る か ら で あ る 。 し た が っ て 、 地 点 Ａ の 発 電 者 も 連 系 線 Ｄ の 恩 恵 を 受 け て い る 。 こ の よ う に み な す と 、 Ａ か ら Ｅ の 直 接 的 な 通 り 抜 け 託 送 が 行 わ れ て い る 場 合 と 同 様 の 課 金 を す る こ と が で き る 。 ④ の 場 合 も 同 様 で あ る 。 し た が っ て 、 商 業 的 な 取 引 契 約 は と も か く 、 料 金 設 定 で は 、 ① の み を 考 え れ ば 良 い と い う こ と に な る 。 こ の こ と か ら 「 取 り 抜 け 」 を 次 の よ う に 定 義 す る 。 Ⅰ 、 Ⅱ 、 Ⅲ 、 Ⅳ の ４ 区 域 モ デ ル で 、 潮 流 が Ⅰ か ら Ⅳ に 向 か う と き 、 連 系 線 Ｂ 、Ｃ 、D に お け る 送 電 量 が 同 じ で あ る 場 合 に は 、地 点 Ａ か ら E に 対 し て 図 ４ の よ う な 通 り 抜 け が 行 わ れ て い る と い う 。 さ ら に 区 域 Ⅱ 、 Ⅲ を 通 り 抜 け 区 域 と 呼 ぶ 。 (13)

ネ ッ ト 取 引 量 図 ６ の モ デ ル に お け る 各 区 域 の ネ ッ ト 取 引 量 は ， 表 11 の よ う に な る 。 表 11 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ ネ ッ ト の 取 引 量 a 0 0 － a 現 実 の 商 取 引 が ど う で あ れ 、 ネ ッ ト ワ ー ク 全 体 の 視 点 で 見 る と 、 Ⅱ 、 Ⅲ で は 発 電 と 受 電 が 相 殺 さ れ て ネ ッ ト の 取 引 量 は 0 で あ り 、 ネ ッ ト ワ ー ク 全 体 で 見 る と 、 左 か ら 右 へ の 潮 流 を 作 り 出 し て い る 。し た が っ て 、区 域 Ⅰ に お け る ネ ッ ト の 取 引 量 a（ i.e. ネ ッ ト の 発 電 量 ａ ）、 お よ び 区 域 Ⅳ に お け る ネ ッ ト の 取 引 量 －a（ i.e. ネ ッ ト の 受 電 量 ａ ）が 、区 域 Ⅱ 、Ⅲ を 通 過 す る 通 り 抜 け を 作 り 出 し て い る 。こ の 視 点 か ら し て も 、 (13)の 通 り 抜 け の 定 義 を 根 拠 付 け る こ と が で き る 。 潮 流 と 基 本 料 金 ４ 区 域 モ デ ル の 場 合 は 、 ３ 区 域 モ デ ル の ル ー ル を 次 の よ う に 一 般 化 し た 基 本 料 金 設 定 ル ー ル を 適 用 で き る 。 ル ー ル ２ 図 6 の ４ 区 域 通 り 抜 け モ デ ル で は 、電 力 会 社 Ⅰ は 、通 り 抜 け 地 区 の 電 力 会 社 Ⅱ 、 Ⅲ に 対 し て 、 そ れ ぞ れ 地 点 Ｂ と 地 点 Ｃ で 注 入 料 金 を 支 払 う 。 一 方 、 電 力 会 社 Ⅳ は 、 通 り 抜 け 地 区 の 電 力 会 社 Ⅱ 、 Ⅲ に 対 し て そ れ ぞ れ 地 点 C と 地 点 Ｄ で 電 力 会 社 Ⅲ に 対 し て 引 き 出 し 基 本 料 金 を 支 払 う 。 表 12 は 、 第 １ 行 で 記 さ れ た 電 力 会 社 か ら 第 １ 列 に 記 さ れ た 電 力 会 社 に ど れ だ け の 精 算 料 金 が 支 払 わ れ る か を 記 し て い る 。 表 中 の a’は 、送 電 量 a に 必 要 な 送 電 容 量 に 対 す る 固 定 料 金 で あ る 。表 13 は 表 12 に 基 づ い て 、各 電 力 会 社 が 差 し 引 き い く ら 受 け 取 る か を 示 し て い る 。 こ れ か ら 明 ら か な よ う に 、 通 り 抜 け 区 域 の Ⅱ と Ⅲ は 、 正

の 基 本 料 金 を 受 け 取 り 、 そ れ 以 外 は 差 し 引 き 負 の 基 本 料 金 を 受 け 取 っ て い る 。 さ て 、 区 域 Ⅰ の 電 力 会 社 は 、 区 域 Ⅱ 、 Ⅲ の 電 力 会 社 に 対 し て 支 払 う 精 算 料 金 の 財 源 を 地 点 Ａ の 発 電 者 に 求 め る の は 自 然 だ ろ う 。 こ の 発 電 者 に よ る 域 外 送 電 に よ っ て 精 算 料 金 が 発 生 し て い る か ら で あ る 。し た が っ て 、区 域 Ⅰ に お け る 注 入 基 本 料 金 は 、 そ の 他 の 区 域 に お け る 注 入 料 金 よ り 、 高 く 設 定 さ れ る こ と に な る 。 一 方 、 区 域 Ⅳ の 電 力 会 社 は 、 区 域 Ⅱ 、 Ⅲ の 電 力 会 社 に 対 し て 支 払 う 引 き 出 し 基 本 料 金 の 財 源 と し て 、 地 点 Ｅ に お け る 需 要 家 に 対 し て 求 償 す る こ と が 自 然 で あ る 。 こ の 地 点 の 需 要 家 が 域 外 か ら の 送 電 の 原 因 を つ く っ て い る か ら で あ る 。 し た が っ て 、 こ の モ デ ル で は 、 区 域 Ⅳ の 引 き 出 し 料 金 は そ の 他 の 区 域 の そ れ よ り 高 く な る 。 し た が っ て 、「 注 入 固 定 料 金 は 上 流 区 域 で 他 区 域 よ り 高 く 設 定 し 、引 き 出 し 料 金 は 下 流 区 域 で 他 区 域 よ り 高 く 設 定 す る 」 と い う 帰 結(11)は 同 じ ま ま で あ る 。 表 12 電 力 会 社 間 精 算 表 ： 単 純 通 り 抜 け モ デ ル 受 取 会 社 支 払 会 社 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 支 出 計 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 0 a’ a’ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 a’ a’ 0 2a’ 0 0 2a’ 収 入 計 0 2a’ 2a’ 0 4a’

表 13 各 区 域 の 純 収 入 （ ＝ 収 入 － 支 出 ）

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ -2a’ 2a’ 2a’ -2a’