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佐藤 綾子 論文内容の要旨 主

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Academic year: 2022

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佐藤 綾子 論文内容の要旨

主 論 文

53BP1 expression as a biomarker to differentiate thyroid follicular tumors 甲状腺濾胞性腫瘍における53BP1を用いた術前鑑別の有用性

佐藤 綾子、松田 勝也、本山 高啓、Zhanna Mussazhanova、大坪 竜太、

近藤 久義、赤澤 祐子、樋口 観世子、鈴木 彩菜、廣川 満良、宮内 昭、

永安 武、中島 正洋

Endocrine connections, 10(3):309-315, 2021, doi:10.1530/EC-20-0630

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:永安 武 教授)

緒 言

甲状腺腫瘍の術前診断は主に超音波診断と穿刺吸引細胞診(FNAC)でなされ、

乳頭癌では術後診断との一致率は高い。一方、甲状腺濾胞性腫瘍の術前診断にお いては良・悪性の鑑別に有効な特異的な細胞学的核所見はなく、術後の病理診断 に委ねらる。DNA損傷応答(DDR)分子p53-binding protein 1(53BP1)は、DNA 二重鎖切断部位に集積し、修復機構の活性化に重要な機能を有する。53BP1に対 する蛍光免疫染色による核内フォーカス(NF)アッセイは、放射線誘発性DNA 二重鎖切断を可視化し、DDRの活性化定量に用いられる。我々はこれまでに、

甲状腺腫瘍を含む様々な腫瘍病理組織切片を用いて53BP1 NF発現を解析し、そ の発現型の違いが腫瘍の核異型や悪性度と関連のあることを示してきた。腫瘍 細胞における53BP1NF 発現は、即ち内因性 DDR 活性化の亢進や異常を示し、

腫瘍の普遍的特徴であるゲノム不安定性の分子指標となるものと考察する。本 研究では、術前に濾胞性腫瘍と臨床診断された症例を対象に、細胞診検体を用い て、53BP1 NF発現型解析が良・悪性の鑑別に有用性を検討した。

対象と方法

2017年7月から2018年8月の期間に隈病院(神戸市)において術前に甲状腺 濾胞性腫瘍が疑われた 183 例を対象とした。外科的切除後に甲状腺腫瘍から

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FNACを施行、液状化細胞診検体を用い、蛍光免疫染色を施行しオールインワン 蛍光顕微鏡システムにより画像を取得、53BP1 NF発現型を解析し、前方向的に 術後病理診断との関連を統計学的に評価した。53BP1 NF発現型はi)NF2個以下 の低DDR型、ii)3個以上または径1μm以上の高DDR型、iii)異常集積/高発現を 示す異常型に分類し、各々の発現割合を症例毎に算出した。その後、濾胞性腫瘍 の術後病理診断と突合し、発現型との相関をCochran–Armitage test、Jonckheere–

Terpstra testで分析した。良・悪性の鑑別精度はLogistic regression modelでcut-off 値を設定し評価した。

結 果

183例中136例において蛍光免疫染色による発現型解析が可能であった。そ れらの最終病理診断は腺腫様甲状腺腫30例、濾胞腺腫60例、良悪不明18 例、濾胞癌 28例で、組織型別にみた53NP1 NF異常型の平均発現頻度は各々 1.8%、2.6%、5.0%、9.5%で、良性から悪性なるに伴い有意に(p<0.0001)増 加する傾向が判明した。濾胞腺腫と濾胞癌を鑑別するための異常型発現頻度の cut-off値を4.3%(AUC 0.901)に設定した場合、鑑別精度は、感度89.3%、特 異度83.3%、陽性適中率 71.4%、陰性適中率 94.3%であった。

考 察

これまでに甲状腺、皮膚、子宮頸部、膀胱、食道、消化管リンパ腫、口腔から の腫瘍組織において53BP1 NF発現型を解析し、その発現亢進や異常が、腫瘍の 核異型度、組織型、臨床的予後と有意に関連し、臨床病理学的悪性度の指標にな ることを報告した。今回、本解析を初めて細胞診検体に応用し、その診断指標と しての有用性を明らかにした。甲状腺細胞診の国際的評価基準である Thyroid

Bethesda System では、ほとんどの濾胞性腫瘍はカテゴリーⅢもしくはⅣに分類

され、過剰な手術を回避するために、細胞診検体による術前の分子遺伝子学的検 査が推奨されると明記している。特に、NGS 解析を用いた甲状腺癌関連112 遺 伝子のパネル検査であるThyroSeq v3が代表的な方法で、悪性腫瘍の診断は感度

94%、特異度 82%、陽性適中率 66%、陰性適中率 97%と報告され、欧米では臨

床的に有用とされる。本研究では細胞診を対象とした蛍光免疫染色による53BP1 NF異常型発現頻度解析が、濾胞腺腫と濾胞癌の鑑別に有用であり、その精度は

ThyroSeq v3と同等であることが示された。今後、術前診断法としての意義や画

像の定量判定の自動化について、さらに研究を展開する必要がある。

参照