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THE COMPARISON OF THE SEDIMENT DEPOSITION SPEED IN THE DIFFERENT AREA OF CROSS-SECTIONAL PROFILE ON A SAND BED RIVER

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(1)

報告 河川技術論文集,第16巻,2010年6月

福岡県内の砂河川における掘削形状の 違いによる土砂堆積の軽減・遅延効果

THE COMPARISON OF THE SEDIMENT DEPOSITION SPEED IN THE DIFFERENT AREA OF CROSS-SECTIONAL PROFILE ON A SAND BED RIVER

IN FUKUOKA PREFECTURE

高比良光治

1

・萱場祐一

2

・島谷幸宏

3

・中森健一

4

・内田唯史

5

Koji TAKAHIRA, Yuichi KAYABA, Yukihiro SHIMATANI, Kenichi NAKAMORI, and Tadashi UCHIDA

1学生会員 九州大学大学院工学府(〒819-0395 福岡市西区元岡744番地)

2正会員 工博 (独) 土木研究所自然共生センター(〒501-6021 各務原市川島笠田町無番地)

3フェロー会員 工博 九州大学大学院工学研究院(〒819-0395 福岡市西区元岡744番地)

4非会員 福岡県北九州県土整備事務所宗像支所(〒811-3436 宗像市東郷1-2-1)

5正会員 工博 (財) 九州環境管理協会(〒813-0004 福岡市東区松香台1-10-1)

In the Saigo River which is one of the sand bed rivers in Fukuoka Prefecture, different two areas of the cross- sectional profile were prepared. The riverbed in the one area was flat, a fairway was provided for another riverbed.

We monitored the riverbed shape, the riverbed materials, and the vegetation in both areas, and grasped the effect of the fairway which had the possibility making the deposition speed of sediment decline.

As the result, the sediment deposition speed in the area where the fairway existed was slower than in the flat area and there was little sediment on the flood channel of the former. The cause of such a difference was that the amount of flown sand in the area where the fairway existed was more than in the flat area. Also, we supposed that the sand in the area where the fairway exists drifted in the low-flow channel mainly and the sand in the area on the flat riverbed drifted in both of the low-flow channel and the flood channel. This result clarified that the securing of a fairway is one of the ways of delaying the sediment deposition on the sand bed river, and will contribute to the cut of the administrative and maintenance expenses on the river.

Key Words : sand riverbed, sediment deposit, cross section profile, fairway, riverbed materials, river maintenance

1.

はじめに

福岡県内の多くの河川は流域の表層地層が崩壊しやす い花崗岩で形成されているため1),そこから生産された 多くの砂が出水のたびに河道内に流下・堆積する.その ため,福岡県では頻繁に河道掘削を行うなど対策に苦慮 してきた.これまで福岡県が実施してきた主たる河道掘 削方法は,両岸の間を平坦に深く掘る単断面の形状によ るものであり,掘削土量も多かった.しかし,横断面形 状の設定によっては土砂流送量が増加し,河道への土砂 堆積速度を抑制できる可能性があるため,福岡県では従 来と異なる断面形状による掘削を試行し,土砂堆積の軽 減・遅延効果の高い掘削方法の検討を行ってきている.

本報では,この掘削試行区間を対象として経年的な地 形変化を調査し,掘削形状の違いと土砂堆積過程および 堆積速度との関係をケーススタディーとして示し,その 要因について考察する.具体的には,砂河川の一つ西郷 川において河床を平坦に掘削した区間(以下,平坦河床 区という)と河川敷を両岸に高く残して深い澪筋を確保 した区間(以下,澪筋区という)を対象として河床横断 形状・河床材料・植生の経年変化を調査し,その傾向を 示す.また,横断形状の差異が土砂の流送量に及ぼす影 響を推定し,この結果から掘削形状の違いと土砂堆積の 軽減・遅延効果との関係を考察する.なお,砂河川にお ける動的平衡河床の断面形状については既往研究がある が2,3),中小河川において,かつ掘削形状を変えて差を モニタリングしたものは見当たらない.

(2)

比高=約00.2m 河川敷

2.西郷川および調査対象区間の概要

西郷川は,福岡県福津市の本木山に源を発し,山間部 から水田地帯を経て中心街を流れて玄界灘に注ぐ,長さ 10km,流域面積約25km2の2級河川である.本川には農業 用の取水堰または床固めが合わせて56基設置され,堤防 のほとんどはコンクリートブロックで護岸されている.

河床材料は,全川にわたって砂が主体である.西郷川 では出水にともなう土砂の堆積が著しく,市街化された 下流域では,氾濫防止のため河道掘削が毎年のように実 施されている.

本研究の対象区間は,2007年の掘削範囲のうち,図-1 に示す澪筋区の工給井堰(河口から約1km)から上流約 200mの越田橋までの区間,および平坦河床区の田堰(河 口から約1.8km)から上流約200mの貧導井堰までの2区間 とした.両区間ともに上下流に堰があるものの,堪水域 より上流に位置し,河床勾配はともに約500分の1,d60

(60%通過粒径)は約1.3mmで4),セグメント区分5)の2-2 に相当する.計画高水流量(降雨確率1/30)は215m3/s である4)

なお,工給井堰はコンクリート固定堰であり,調査に 入る以前に低水路部が撤去され,河川敷部のみが残って いた.また,田堰も同様にコンクリート固定堰であり,

調査に入った2007年当初は取水堰として利用されていた が,2008年3月にすべて撤去された.

3.河道掘削形状

澪筋区および平坦河床区の造成工事は,2007年の1~3 月に福岡県が実施した.掘削直後の河川状況,掘削前後 の横断形状を図-2 に示す.

川幅は澪筋区が約40m,平坦河床区が約35mで,そのう ち低水路幅はそれぞれ約10mである.河川敷高は澪筋区 が低水路水面から0.9~1.2m(最深河床高から1.2~

2.0m),平坦河床区は水面から0~0.2m(最深河床高か ら0.3~0.5m)である.

平坦河床区

比高=0.9~1.2m 河川敷

澪筋区

図-2 河道掘削形状

図-1 西郷川の位置と研究対象河川区間

15km

澪 筋 区

平坦河床区

西 郷 川

西

福岡県 玄界灘

0 1 2 3 4 5 6

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 標高m 澪筋区(№11) 掘削前

掘削後

4 5 6 7 8 9 10

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 横断距離(m)

標高(m 平坦河床区(№26) 掘削前 掘削後

(3)

0 50 100 150 200

1/1 7/1 1/1 7/1 1/1 7/1 1/1 7/1

流量(3 /s

2006年 2007年 2008年 2009年

'07.06測量

'07.10測量 '09.01測量 '09.11測量 澪筋区-河川敷冠水流量

平坦河床区- 河川敷冠水流量

4.調査方法

a) 横断測量

各年の出水による土砂の堆積および浸食量を把握する ために,掘削直後の2007年6月,および年度ごとの出水 期終了後にあたる2007年10月,2009年1月,11月におい て,図-1に示した澪筋区および平坦河床区のそれぞれ4 側線で横断測量を実施した.

調査時期と出水との関係を明らかにするため,調査対 象区間の流量の推移と調査時期との関係を図-3 に示す.

ここで流量は,増水による河床変動を対象とするため,

気象庁が公表する近傍の宗像観測所降雨量データから合 理式6)により求めたピーク流出量とした.

b) 河床材料調査

各年度の出水期終了後に当たる2007年10月,2009年1 月,9月に調査区間全域をランダムに踏査し,目視に よって河床材料を礫(φ2mm以上),粗砂(φ0.85~2mm 未満),中砂(φ0.25~0.85mm未満),細砂(φ0.075

~0.25mm),シルト・粘土(φ0.075mm以下)に分類し,

目視地点における優占河床材料を記録した.調査結果を 基に河床材料別の面積を求めた.

c) 植生調査

各年度の出水期終了後に当たる2007年10月,2009年1 月,9月に調査区間全域を踏査し,植物群落の分布を目 視により記録した.調査結果を基に植物群落別の面積を 求めた.

d) 土砂堆積量の算出

横断測量の結果を基に,河道掘削直後の2007年6月時 点を基準に変化した河床横断の面積を測定し,単位河道 長あたりの土砂堆積量(m3/m)とした.

e) 水理量,流砂量の算出

初期断面形状の違いと出水時の水理量および土砂流送 量との関係を明らかにするため,澪筋・平坦河床区の水 位,流速,摩擦速度,掃流砂量および浮遊砂量を算出し た.計算期間は観測期間に合わせて2007年6月から2009 年11月までとした.

河川水位は,前述の降雨量から求めたピーク流量から,

Manningの平均流速公式7)を用いた等流計算により求め た.次に,河川敷と低水路の流速・摩擦速度を水理公式 集(平成11年度版)7)第2編河川編「2.2.4 直線・一 様・幅広水路における横断方向の運動量輸送(d)複断 面水路の場合」に準じて計算した.使用した境界混合係 数は,低水路幅と川幅の比が0.6未満であったため0.17 とした8)

掃流砂量の計算には芦田・道上の式7),浮遊砂量の計算 には芦田・道上の式9)を用いた.計算には図-4 に示す 単純化した断面を用い,澪筋・平坦河床区の各代表的断 面であるNo.11,No.26の形状を基にそれぞれ川幅39.5m,

36m,B=11.5m,10m,t=9.5m,9m,n1=1.5,3.3,

図-3 調査対象区間の流量の推移と調査時期

図-4 水理量,流砂量の計算に用いた横断面の形状

図-5 河床横断形状の経年変化

n2=1.07,0.94,H1=1m,0.3m,H2=2.8m,3.2m,低水路 粗度=0.02,河川敷粗度=0.03,勾配I=1/500,代表粒径 d60=1.3mmとした.

5.調査結果

(1) 横断測量結果

澪筋区と平坦河床区における横断形状の経年変化には 縦断方向に大きな差異がみられなかったため,各区の代 表的断面である№11と№26の横断形状を図-5 に示す.

1:n1 1:n2

B

t t

H1 H2

水深h

澪筋区(地点:№11)

0 1 2 3 4 5 6

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 横断距離(m)

標高(m

2007/6月 2007/10月 2009/1月 2009/11月 2007年最大流量時水位

2008年最大流量時水位 2009年最大流量時水位

平坦河床区(地点:№26)

4 5 6 7 8 9 10

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 横断距離(m)

標高(m

2007/6月 2007/10月 2009/1月 2009/11月 2009年最大流量時水位

2007年最大流量時水位

2008年最大流量時水位

(4)

-8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12

2007.6月 2007.10月 2009.1月 2009.11月 測量時期

土砂堆積量(m3/m

    +標準偏差 澪筋区 平均     -標準偏差     +標準偏差 平坦河床区 平均    -標準偏差

澪筋区の河川敷は,2009年11月現在掘削直後の2007年 6月とほぼ同じ形状が維持され,土砂の堆積はほとんど ない.低水路では,左岸側に土砂が堆積して中洲が徐々 に形成され,右岸側では河床が低下した.

平坦河床区の河川敷は,2007年7月の出水により地盤 高が上昇したが,同年10月以降は大きな変化はみられな かった.一方,低水路では,2008年の出水で堆積が起こ り地盤高が上昇した後,2009年7月の出水で逆に河床が 洗掘された.この洗掘によって河川敷と低水路の河床高 の差が1m以上となり,明瞭な澪筋が形成された.ただし,

低水路幅はほとんど変化していない.

(2) 河床材料調査結果

河床材料の経年変化を

図-6 に示す.

澪筋区では,陸上部が粘土・シルトまたは細砂などの 細粒土が主体で,経年変化は小さい.水中部は中砂が主 体であり,陸上部と同様に経年変化は小さい.

平坦河床区では,2007年10月時にはその前の出水で河 川敷に多量の土砂が堆積した.その主体は中砂であった.

その後,礫が徐々に増加した.

水中部も陸上部と同様に,2007年10月は中砂が主体で あったが,粗砂・礫の割合が徐々に増加した.

(3) 植生調査結果

植物群落別面積の経年変化を図-7 に示す.

澪筋区は,掘削工事によって河川敷が水面から1m以上 と高くなり乾燥したため,1年生草本群落で乾地に生え るタチスズメノヒエが観測期間中継続して優占した.ま た,掘削に伴う整地・乾燥化によって河川敷が地域住民 に利用しやすい形状となったため,草刈りが頻繁に行わ れるようになり,草丈が低く管理された.このため,植 生遷移は初期の段階で停止した状態である.

平坦河床区では,澪筋区と種類は異なるが同じ1年生 草本のオオイヌタデ-オオクサキビ群落が継続して優占 していたが,徐々に減少した.ヨシ・ツルヨシ・オギな どの草丈の高い植物の割合は,調査期間中を通して少な かったが,徐々に増加した.

(4) 土砂堆積量の算出結果

河道掘削直後の2007年6月時点を基準にした単位河道 長あたりの土砂堆積量の増減を図-8 に示す.

澪筋区では,平坦河床区に比べて堆積速度が緩やかで あった.

平坦河床区では,調査前の出水流量が約64m3/sと少な かった2009年1月に堆積量が大幅に増加したが,過去20 年間で第2位となる144 m3/sの出水があった2009年7月後 の11月には逆に洗掘によって堆積量が減少した.なお,

降水量から算出した過去20年間の年最大流量の平均は90 m3/s,最大は166m3/s,最小は46 m3/sである.

図-6 河床材料の経年変化

図-7 植生の経年変化

図-8 土砂堆積量の経年変化

図-9 観測期間中の流砂量(計算値)

(5) 流砂量の算出結果

観測期間中の澪筋区・平坦河床区の河川敷・低水路別 の流砂量の計算結果を,図-9に示す.流砂量は,両区と も低水路が河川敷に比べて多かった.また,流砂形態は,

ほとんどが掃流砂で,浮遊砂は少なかった.流砂量の区 別合計は,澪筋区が平坦河床区の約1.3倍と多かった.

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000

河川敷 低水路 河川敷 低水路

澪筋区 平坦河床区

砂量(m3

浮遊砂 掃流砂 0%

20%

40%

60%

80%

100%

'0710 '091 '099 '0710 '091 '099 '0710 '091 '099 '0710 '091 '099

陸上部 水中部 陸上部 水中部

澪筋区 平坦河床区

積比率

粗砂 中砂 細砂 粘土・シルト

0 1000 2000 3000 4000 5000

'07.10 '09.1月 '09.9月 '07.10 '09.1月 '09.9月

澪筋区 平坦河床区 植覆面積(m2

その他 ヨシ群落 ツルヨシ群落 オギ群落 ウキヤガラ-マコモ群落 キシュウスズメノヒエ群落 タチスズメノヒエ群落 オオイヌタデ-オオクサキビ群落

(5)

6.考察

澪筋区では,図-8 に示したように緩やかに土砂堆積 量が増加し,各調査時期間で急激な地形変化はみられな かった.特に,図-5に示したように河川敷はほぼ同一の 形状を維持し,河川敷上の土質も図-6に示したように粘 土・シルトが多く,低水路の主な河床材料である中砂の 堆積はほとんどみられなかった.一方,平坦河床区にお ける地形は経年的に大きく変化し,2009年1月までは河 川敷を中心に堆積が進んだが,2009年7月の出水で低水 路の河床が低下し,複断面的な河道へと変化し,土砂堆 積量も減少した.河床材料にも変化がみられ,陸上部の 河川敷は地盤高が高くなった2007年10月時には河床材料 と同じ中砂が多かったが,その後は中砂に替わってより 粒径の小さい細砂の割合が増加した.これとは逆に,低 水路の水中部は中砂に替わって粗砂・礫が多くなるとい う河床材料の粗粒化が観察された.

以上から,観測期間において澪筋区は河川敷の地形が 維持され,土砂の流送は主として低水路で行われたが,

平坦河床区では河川敷の地形が低出水時に大きく変化し,

低水路と同じ河床材料の堆積がみられたことから,低水 路だけでなく河川敷も土砂の流送に関わったことが推測 された.また,澪筋区における土砂堆積速度がより緩や かであったことは,土砂流送量が平坦河床区に比べて多 かったためと示唆された.

植生の土砂堆積への影響をみると,澪筋区の河川敷は,

地形変化がほとんどみられず,草刈によって草丈が低く 管理されたこともあり,植物による微細粒土の捕捉はほ とんどなかったものと考えられる.また,平坦河床区の 河川敷でも,土砂の堆積要因となるようなヨシ・ツルヨ シ・オギなどの草丈の高い植物が少ない掘削直後の2007 年の出水で土砂の堆積による地盤高の上昇が起こってお り,植生が土砂堆積要因となった可能性は低い.

以上の現象を,①流量と流砂形態(掃流・浮遊) の 関係,②観測期間内の流量に対応した流砂形態の時系列 変化,③流量に対する流砂量の変化という視点で以下に 解析し,中・長期的な地形変化について考察する.

最初に,流量と流砂形態の関係について検討を行う.

河床の砂が掃流状態となる閾値は,岩垣の式7)から河床 材料(d60=1.3mm)に対する限界摩擦速度u*c=2.8cm/sを 得ることができる.澪筋区および平坦河床区の低水路で は,ともに0.2 m3/s(水深約5cm)でこの限界摩擦速度 に達するため,僅かな増水で河床材料は移動しやすい状 態にあったと推測される.河川敷では,平坦河床区が 2.2 m3/s,澪筋区が27m3/sで限界摩擦速度に達し,両区 に差異がみられる.いずれも河川敷の冠水流量とほぼ一 致し,冠水後間もなく砂が動き出すことになる.

次に浮遊状態となる閾値について検討を行う.Rubey の式7)から河床材料に対する沈降速度W=11.5cm/sを算

図-10 対象地区の河川流量と流砂形態との関係

図-11 対象地区の河川流量の推移と流砂形態の区分

出し(水の動粘性係数υ=0.01cm2/s,砂の水中比重

=1.65として計算),u*/Wが1.08(u*=12.4)より小 さい場合は掃流砂卓越で浮遊せず,1.67(u*=19.2)よ り大きい場合は浮遊砂卓越,1.08から1.67の間は掃流・

浮遊の混在領域と判断した10).この基準に従うと,図-

10に示すように,河床の砂が掃流状態で維持されるのは

両区の低水路で流量約23m3/s,平坦河床区河川敷では約 47m3/s,澪筋区の河川敷では約80m3/sまでと考えられる.

また,両区の低水路は約100~120 m3/sを超えるとほと んどが浮遊状態になるが,河川敷では過去20年間の最大 規模に近い約160 m3/s でも浮遊が卓越することはない.

0 2 46 8 10 12 14 1618 20 22 24

0 20 40 60 80 100 120 140 160

流量(m3/s 摩擦速度cm/s)

平坦河床区-低水路 平坦河床区-河川敷 澪筋区-低水路 澪筋区-河川敷 浮遊卓越領域

掃流・浮遊混合領域

掃流卓越領域

澪筋区-河川敷

0 20 40 60 80 100 120 140 160

4/1 7/1 10/1 1/1 4/1 7/1 10/1 1/1 4/1 7/1 10/1 流量(3/s

2007年 2008年 2009年

掃流・浮遊混合領域

掃流卓越領域

26m3/s以下は河川敷の冠水なし

澪筋区-低水路

0 20 40 60 80 100 120 140 160

4/1 7/1 10/1 1/1 4/1 7/1 10/1 1/1 4/1 7/1 10/1 流量(3/s

2007年 2008年 2009年

掃流・浮遊混合領域 掃流卓越領域

浮遊卓越領域

平坦河床区-河川敷

0 20 40 60 80 100 120 140 160

4/1 7/1 10/1 1/1 4/1 7/1 10/1 1/1 4/1 7/1 10/1 流量(3/s

2007年 2008年 2009年

掃流卓越領域 掃流・浮遊混合領域

2m3/s以下は高水敷の冠水なし

平坦河床区-低水路

0 20 40 60 80 100 120 140 160

4/1 7/1 10/1 1/1 4/1 7/1 10/1 1/1 4/1 7/1 10/1 流量(3/s

2007年 2008年 2009年

掃流・浮遊混合領域 掃流卓越領域

浮遊卓越領域

(6)

以上の結果を用いて,両区の河川敷・低水路別の河川 流量の経年変化と流砂形態の区分を図-11に示す.両区 の流砂形態を比較すると,低水路では澪筋区が平坦河床 区に比べて掃流と浮遊の混合領域となる頻度が高く,河 川敷では両区とも掃流と浮遊の混合領域となる頻度が低 い.また,平坦河床区の河川敷において,掃流状態とな る頻度が著しく高いことが解る.

流量と掃流砂量の関係を,両区の河川敷と低水路に分 けて図-12に示す.澪筋区における低水路の掃流砂量は 平坦河床区の低水路と比較してどの流量でも多い.また,

河川敷を加えた場合でも澪筋区の掃流砂量は,平坦河床 区と同等かそれ以上あり,特に10~50m3/sの小出水時に おいては澪筋区が平坦河床区に比べて明らかに多い.

浮遊砂量については,図-13に示すようにどの流量に おいても澪筋区の低水路が最も多く,河川敷を加えた全 量も,澪筋区が平坦河床区に比べて多い。

以上から,本研究の対象期間内における両区の流砂量 は,澪筋区が平坦河床区に比べて多く,澪筋区は低水路 において,平坦河床区では低水路と河川敷において土砂 が流送されたこと,特に出現頻度の高い小出水時に差が 大きくなることが示唆された.また,これらの結果は,

澪筋区において河川敷の形状が維持されたこと,低水路 での土砂堆積を抑制されたこと,平坦河床区においては 初期形状が維持された2009年1月までは土砂堆積速度が 澪筋区と比較して大きかったことをよく説明する.ただ し,2009年7月の140 m3/s規模の大出水では,平坦河床 区の初期断面形状そのものが大きく変化したため,上記 水理検討結果の適用は難しい.しかし,本地区では平均 年最大流量が90 m3/s程度で,50m3/s以下の小出水がほと んどであるため,澪筋区で土砂の堆積速度が遅いという 傾向は長期的にみても変わらないと考えられる.

7.結論

本報告は,福岡県の代表的な砂河川である西郷川を対 象に掘削形状の異なる2区を設定し,横断地形,河床材 料,植生の経年変化を調査し,土砂の軽減・遅延効果に ついて比較・検討したものである.

調査の結果,澪筋を確保した区(澪筋区)は,観測期 間を通して河川敷の地形が維持され,土砂堆積速度が河 床の平坦な区(平坦河床区)に比べて緩やかであった.

これらの現象を流砂量の計算結果から検討した結果,澪 筋区では土砂の流送は主に低水路で行われ,平坦河床区 では低水路ほか河川敷も深く関わっていること,澪筋区 の流砂量は平坦河床区より多いことが示唆された.

以上のことから,対象河川の流況にあった形状の澪筋 を確保することで,砂河川における土砂の堆積を軽減・

遅延させ,維持管理コストの低減が図れるものと考えら れる.

図-12 対象地区の河川流量と掃流砂量との関係

図-13 対象地区の河川流量と浮遊砂量との関係

謝辞:貴重な資料をご提供いただいた福岡県北九州県土

整備事務所職員の皆様に感謝の意を表します.また,本 研究にあたり助言・ご指導いただいた (有) オクト環境 の奥田哲也氏に心からお礼申し上げます.

参考文献

1) 福岡県地学のガイド編集委員会編:福岡県地学ガイド,福岡 県の地質とそのおいたち,コロナ社,2004.

2)泉典洋,池田俊介:直線砂床河川の安定横断河床形状,土木 学会論文集No.429/Ⅱ-15,pp57-66,1991.

3) 大同淳之:移動床を有する河道の平衡横断形,第26回水理講 演会論文集,1982.

4) 福岡県宗像土木事務所,八千代エンジニアリング株式会社:

西郷川浸水想定区域図作成業務委託報告書,2008.

5) 山本晃一:構造沖積河川学,山海堂,2004.

6) 川合茂,和田清,神田佳一,鈴木正人:河川工学,コロナ社,

2002.

7) 土木学会水理委員会:水理公式集,第2編「河川編」土木学 会,1999.

8)原俊哉:境界混合係数fの考え方,北海道開発局開発土木研 究所月報No.554,pp14-16,1999.

9) 芦田和男,高橋保,道上正規:河川の土砂災害と対策,

pp40-42,森北出版,1983.

10)椿東一郎:水理学Ⅱ,第14章,基礎土木工学全書7,森北出 版,1974.

(2010.4.8受付)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 20 40 60 80 100 120 140 160

流量(m3/s)

浮遊砂×10-3 (m3 /s) 平坦河床区-低水路平坦河床区-河川敷 平坦河床区-合計 澪筋区-低水路 澪筋区-河川敷 澪筋区-合計 0

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

0 20 40 60 80 100 120 140 160

流量(m3/s)

掃流砂量×10-3 (m3 /s)

平坦河床区-低水路 平坦河床区-河川敷 平坦河床区-合計 澪筋区-低水路 澪筋区-河川敷 澪筋区-合計

参照

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