24 澱 粉科 学 第39巻 Fig. 1. Photomicrographs A, stamp 1.搗 1)餅 Fig,1に (LM)で type ; B, mixer type ; SEM, scanning of various electron Mochi. micrograph ; LM,

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全文

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〔澱 粉 科 学(Denpun Kagaku)第39巻 第1号p.23∼31(1992)〕 平 成3年 度 日本 澱 粉 学 会 奨 励 賞 受 賞 講 演

餅 に関 す る食 品学 的研 究

浩*

Physical

Characteristics

of Mochi

Nobuhiro

NAGASHIMA

Musashigaoka

College

(111-1, Minamiyoshimi,

Yoshimimachi,

Hikigun,

Saitama,

355-01, Japan)

The physical characteristics after aging of Mochi prepared by several methods were studied , and the following results were obtained:.

1) Mochi prepared by stamping exhibited much of the initial rice grain structure , while that prepared by a power mixer was of a well-mashed paste form rather than rice grain tissue .

2) The hardness of each type of Mochi measured by a rheolometer depended on the storage conditions : Mochi prepared by a mixer was softer than by stamping with no storage

, while that prepared by a mixer was harder than by stamping after storing for 3 hr at 5•Ž .

3) The creep curves of Mochi measured by a rheoner could be explained by a six-element mechanical model consisting of Hookean body

, two pairs of Voigt bodies and a Newtonean body. The shift factor-1/T relationship for Mochi stored at •Ž resulted in two straight lines

, a refraction point being observed at 50•Ž ; however, no such phenomenon was observed for Mochi stored at•@ -20•Ž.

4) The cooking loss of Mochi stored at 5•Ž decreased with increasing storage time , while that of the Mochi stored at -20•Ž hardly changed . Mochi prepared by stamping showed a small cooking loss after storage at 5 and -20•Ž, respectively.

5) The crystalline structure of raw glutinous rice could be classified as a type-A pattern , although this pattern disappeared upon heating and was transformed into a type-B pattern after storing at 5•Ž for one week. In the case of Mochi stored at -20•Ž

, the crystallinity was never recovered.

6) The viscosity of Mochi measured by a Brabender viscograph after storing at 5•Ž showed a maximum value of 800 to 1000 B. U., while that stored at -20•Ž showed a maximum value of 200 to 300 B. U. The viscosity of the latter reached a peak after storing for 72 hr , and then decreased with a further period of storage.

  伝 統 食 品 と し て の 餅 の 歴 史 は 古 く奈 良 朝 時 代 に はす で に存 在 し て い た と い わ れ る1,2).し か し,餅 に 関 す る 食 品 学 的 な 研 究 は 少 な く,米 菓 製 造 時 の 餅 の 性 状,白 玉 餅 お よ び 粳 米 団 子 の 性 質 につ い て 扱 った 文 献 が み られ る程 度 で あ る3∼19).最 近 で は,家 庭 用 餅 搗 き機 の 普 及 や 量 産 製 造 の た め に餅 生 地 の 調 製 法 が 変 化 し て きた.  餅 生 地 は,原 料 の 糯 米 が 同 一 で も生 地 の 調 製 法 の 違 い に よ り,食 味 時 の テ クス チ ャ ーや 調 理 時 に お け る性 状 の 変 化 が 異 な る こ とが 日常 の経 験 で よ く知 られ て い る.調 製 直 後 の 搗 き た て の 餅 生 地 は,変 形 が 容 易 で か な りの 柔 軟 性 を示 す が,時 間 の 経 過 と と も に硬 化 が 進 み,石 の よ う に硬 い 生 地 に変 化 し て い く.し か し,こ れ らの 現 象 は ま だ 明 らか に され て い な い 部 分 が 多 い.そ こ で 本 研 究 で は 調 製 法 を 異 に した 餅 生 地 の 物 理 的 特 性 お よ び保 存 に よ る餅 生 地 の硬 化 過 程 の 性 状 の 変 化 を 中 心 に検 討 した20∼25). *武 蔵 丘 短 期 大 学 健 康 生 活 科 健 康 栄 養 専 攻(355 -01埼 玉 県 比 企 郡 吉 見 町 大 字 南 吉 見11-1)

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24 澱 粉 科 学 第39巻 第1号(1992)

Fig. 1. Photomicrographs of various Mochi.

A, stamp type ; B, mixer type ; SEM, scanning electron micrograph ; LM, light micrograph.

1.搗 き 方 別 餅 生 地 の 物 理 的 性 質20,23,247 1)餅 生 地 の 組 織 構 造   Fig,1に 走 査 型 電 子 顕 微 鏡(SEM)お よび 光 学 顕 微 鏡 (LM)で 観 察 した 搗 き方 別 餅 生 地 の 一 例 を 示 した.餅 生 地 の 組 織 は 大 別 す る と糯 米 粒 組 織 の 残 存 部,こ れ ら米 粒 細 胞 よ り流 出 した 澱 粉 ペ ー ス トお よび 調 製 時 に混 入 す る 気 泡 とか ら構 成 され て い る18).電 動 ス タ ンプ式 餅 生 地 は 比 較 的 残 存 米 粒 が 多 く,そ の 粒 径 も大 きい こ と,電 動 ミ キ サ ー式 は 糯 米 粒 が 細 か く破 壊 され,残 存 米 粒 の 粒 径 が 小 さ く,し か も米 粒 細 胞 か ら流 出 した 澱 粉 ペ ー ス トや 気 泡 の 量 が 多 い こ とが 観 察 され た。 した が っ て,こ の よ う な 組 織 細 胞 の 違 い が 物 性 に 大 き く影 響 す る もの と 考 え た. 2)餅 生 地 の テ ク ス チ ャー  レオ ロ メ ー タに よ る餅 生 地 の テ ク ス チ ャ ー の 結 果 (Fig.2),硬 さ と粘 りは 冷蔵 保 存 の 経 過 と と も に増 加 し た.こ の うち 硬 さで は 調 製 直 後 は ス タ ンプ 式 が,保 存3 時 間 後 は 逆 に ミキ サ ー式 が 高 い 値 を 示 した.同 様 に 剪 断 強 度 の 測 定 を した 結 果,テ クス チ ャ ー の 硬 さの 結 果 と同 傾 向 を示 し た.針 入度 の 測 定 結 果 をFig.3に 示 した が, 搗 き方 別 を 問 わ ず 調 製 直 後 の 餅 生 地 は 針 入 度 が190ュ ニ ッ ト,す なわち生地 の 厚 み の90%以 上 の 針 入 が あ った.こ れ を 冷 蔵 保 存 した24時 間 後 の 餅 生 地 の 針 入 度 で は,い ず れ の 方 式 で も生 地 の 厚 み の20%以 下 ま で 激

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餅 に関す る食 品学 的研究

Fig. 2. Texture of various Mochi by rheolometer.

Fig. 3. Time course of penetration of Mochi at 20t.

減 し餅 生 地 の 硬 化 が 急 激 に 進 行 す る こ と が 認 め られ た. 一 方,冷 凍 保 存 した 場 合 は 保 存 一 週 間 後 で も生 地 の 厚 み の75%以 上 の針 入 が あ り,餅 生 地 の 硬 化 はほ とん ど進 行 し て い な い こ とが 認 め られ た.冷 蔵 保 存 で は ミキ サ ー 式 餅 生 地 の 針 入 度 が ス タ ン プ式 よ りや や 小 さ く,生 地 の 硬 化 の 進 行 が 早 い こ と,冷 凍 保 存 で は逆 に ス タ ン プ式 の 針 入 度 が や や 小 さ く,餅 生 地 調 製 直 後 の 特 性 を 維 持 し て い る もの と考え て い る. 3)餅 生 地 の 静 的 粘 弾 性(ク リー プ 特 性)   餅 生地 の ク リー プ特 性 の 検 討 を 行 い,ス タ ソプ式 餅 生 地 の 保 存 別 ・測 定 温 度 別 の粘 弾 性 係 数 をFig.4に 示 し た.保 存 経 過 に よ る餅 生 地 の 瞬 間 弾 性 率 ・遅 延 弾 性 率 を み る と,冷 蔵(5℃)保 存 の餅 生 地(測 定A)で は保 存 時 間 が 長 くな るほ ど弾 性 率 が や や 高 くな り,冷 凍(-20℃) 保 存 の 餅 生 地 で は保 存 経 過 に よ る弾 性 率 の 変 化 は ほ とん ど認 め られ な か っ た.す な わ ち,餅 生 地 を 冷 蔵 保 存 す る と時 間 の 経 過 と と もに 硬 化 が 進 行 す るが,冷 凍 保 存 で は ほ とん ど起 こ ら な い とい え る.冷 蔵 餅 生 地(測 定A)に お い て,す べ て の餅 生 地 は30∼60℃ に 温 度 を 上 昇 さ せ る と弾 性 率 は 低 下 し,徐 々 に 軟 化 して い る こ とが 示 され, と くに 瞬 間 弾 性 率 お よび 遅 延 弾 性 率 と も に50∼60℃ の 温 度 領 域 で弾 性 率 の急 激 な低 下 が み られ た.こ の 現 象 は 硬 化 した 餅 生 地 が再 糊 化 す る温 度 域 と し て注 目 され る. 一 方 ,冷 凍 保存 では瞬間変形 部 は測定 温度 を上 昇 させ て も弾 性 率 の 低 下 は わ ず か で あ った が,遅 延 変 形 部 で は顕 著 な 低 下 を 示 し た.餅 生 地 の 粘 性 率 の 変 化 を み る と,弾 性 率 と 同様 に 冷 蔵 保 存 に よ り粘 性 率 が 高 くな るが,冷 凍 保 存 の 餅 生 地 は これ らの 変 化 が ほ とん ど な か った.測 定 温 度 別 で は 餅 生 地 は 温 度 上 昇 に伴 い,粘 性 率 が 低 下 した. 測 定Aで は 遅 延 粘 性 率 お よ び 定 常 粘 性 率 と もに 弾 性 率 の 場 合 と 同様 に50∼60℃ 間 で 急 激 な低 下 が 認 め られ た.一 方,冷 凍餅 生 地(測 定C)は 遅 延 粘 性 率,定 常 粘 性 率 と もに 測 定 温 度 を 上 昇 させ る に つ れ,顕 著 な低 下 が 認 め られ た.ミ キ サ ー式 餅 生 地 は 弾 性 率 ・粘 性 率 と も に ス タ ンプ式 餅 生 地 と 同様 の 傾 向 を示 した.餅 生 地 の み か け の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を 求 め た 結 果 をTable1に 示 し た. こ こ で 注 目 され る こ と は,冷 蔵 餅 生 地 の 測 定Aで は搗 き 方 別 に か か わ らず,50℃ を 屈 折 点 と して 低 温 領 域(30∼ 50℃)と 高 温 領 域(50∼60℃)と で み か け の活 性 化 エ ネ ル ギ ーの 値 が 異 な り,測 定BやCの 場 合 に比 べ て 餅 生 地 の 内 部 構 造 の 変 化 が 著 し い こ とで あ る.ま た,み か け の

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26 澱 粉 科 学 第39巻 第1号(1992)

Fig. 4. Effect of temperature on the Young's modulus and viscosity of Mochi (stamp type) stored at 5•Ž and-20•Ž. 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を み る と冷 蔵 保 存 で は ミキ サ ー式 の ほ うが,冷 凍 保 存 で は ス タ ン プ式 の ほ うが や や 高 い 値 を示 し た.こ れ らの 特 性 の 違 い は 冷 蔵 保 存 の 場 合 ミキ サ ー式 餅 生 地 の ほ うが 硬 化 が 進 み,再 加 熱 に よ る エ ネ ル ギ ー の 移 動 が 大 き く,一 方 冷 凍 保 存 の 場 合 両 方 式 で搗 い た 餅 生 地 は ほ とん ど硬 化 が 起 こ らず,調 製 直 後 の 餅 生 地 の 特 性 を 維 持 し て い るた め,ス タ ン プ式 の ほ う が 値 が 大 き く な っ た と考 え る.

2.搗

き 方別 餅 生 地 の 硬 化 過 程 に お け る

性 状 の 変 化24)

 前項 までの測定 で,餅 生地 は調製 法や保存 法の違 い に

よ り異 な った物性 を示す ことが認 め られ た.そ こで これ

らの物 性 に起 因す る餅生 地の性状 につ いて さらに検討 を

進 めた.

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2?

餅に関 す る食 品学的研 究

Table 1. Apparent

activation

energy of Mochi.

(kJ/mol)

Fig. 5. Time course of cooking loss of Mochi. The symbols are the same as those for Fig. 3.

1)餅 生 地 の 煮 溶 け率   Fig.5に 示 した よ うに 調 製 直 後 の 餅 生 地 はい ず れ も高 い 煮 溶 け 率 を示 す が,ス タ ンプ式 が ミキ サ ー式 よ り煮 溶 け が や や 少 な か った.保 存 別 で は冷 蔵 保 存 の 場 合 は 餅 生 地 の 硬 化 が 進 行 す る に した が い 煮 溶 け 率 が 減 少 す るの に 対 し,冷 凍 保 存 の 場 合 は 調 製 直 後 の 特 性 を維 持 し,冷 蔵 保 存 よ り煮 溶 け 率 の 減 少 が 少 な か った.冷 蔵 保 存 お よび 冷 凍 保 存 の い ず れ も ス タ ン プ式 の ほ うが ミキ サ ー式 よ り 煮 溶 け率 が 少 な か った.す な わ ち,硬 化 の 進 行 と と も に 煮 溶 け 率 は 減 少 す るが,澱 粉 分 子(ペ ー ス ト状)が 米 粒 細 胞 外 に 多 量 に流 出 し て い る ミキ サ ー式 餅 生 地 は ス タ ン プ式 に 比 ベ,煮 溶 け や す い とい う こ と が で き る. 2)餅 生 地 の 水 分 含 量 お よ び 水 分 活 性   調 製 直 後 の 餅 生 地 の 水 分 含 量 は搗 き方 別 に か か わ らず, 約43%で あ っ た.水 分 含 量 の 変 化 は ス タ ン プ式 お よ び ミキ サ ー式 にお い て,冷 蔵 お よ び冷 凍 保 存 に お い て も ま った く認 め られ な か っ た.一 方,餅 生 地 の 水 分 活 性 値 は 搗 き方 別 に お い て ミキ サ ー式 が ス タ ンプ 式 よ りや や 高 い 値 で あ った.水 分 活 性 の 変 化 は保 存 別 で冷 蔵 保 存 が わ ず か に減 少 した が,冷 凍 保 存 で は ま った く変 化 が な か っ た.こ れ らの 結 果 よ り,と くに 冷 蔵 保 存 で 餅 生 地 の硬 化 が 急 激 に進 行 す る こ と の 要 因 と水 分 量 の 変 化 と は直 接 関 係 し て い な い と いえ る. 3)餅 生 地 の 糊 化 度  調 製 直 後 の 餅 生 地 の 糊 化 度 は搗 き方 別 に か か わ ら ず 98%以 上 の 高 い 糊 化 度 を 示 した.保 存 別 で は冷 蔵 保 存 の 場 合,餅 生 地 の硬 化 に した が い糊 化 度 が や や 低 下 す る傾 向 を 認 め た が,保 存1週 間 後 で80%以 上 の糊 化 度 を 示 した.冷 凍 保 存 の 場 合 は糊 化 度 の 変 化 が わ ず か な 低 下 で 保 存1週 間 後 で95%の 糊 化 度 を示 し た.こ れ ら の 結 果 よ り,冷 蔵 保 存 に お い て 餅 生 地 の 硬 化 が 急 激 に進 行 す る こ と と,こ れ ら の 酵 素 法 に よ る糊 化 度 の 変 化 とは 一 致 せ ず,水 分 含 量 の測 定 結 果 と 同様 に 餅 生 地 の 硬 化 の 指 標 に は な ら な い と考 え る. 4)餅 生 地 の 結 晶 構 造   Fig.6に 示 した よ うに生 糯 米 は典 型 的 なA図 形 を示 し た.こ れ を 加 熱 し餅 生 地 を 調 製 した 直 後 で は 結 晶性 を 示 す ピ ー クが 消 失 し た.冷 蔵 保 存 の 場 合 は保 存24時 間 よ り餅 生 地 の硬 化 が 進 む に し た が い 結 晶性 の 回 復 を示 す ピ ー クが あ らわ れ 始 め,保 存1週 間 後 に お い て の 結 晶 図 形 はB図 形 へ と変 化 した.一 方,冷 凍 保 存 の 場 合 は経 時 変 化 に よ る 変 化 が ほ とん どな く,保 存1週 間 後 に お い て も 明瞭 な 結 晶 ピ ー クの 回 復 が 認 め られ ず,調 製 直 後 の 餅 生 地 の 性 状 を維 持 して い る こ とが 明 らか と な った.し た が っ て,結 晶 図 形 に よ る追 跡 は 餅 の硬 化 過 程 を あ らわ す 指 標 とな りえ る もの と考え る. 5)ビ ス コ グ ラ フ に よ る 餅 生 地 の 粘 度 変 化   Fig.7に 示 した よ うに 調 製 直 後 の餅 生 地 は測 定 開 始 と 同 時 に 粘 度 が わ ず か に 増 大 し,そ の 後 の 加 熱 ・冷 却 に よ る粘 度 の 増 減 は 認 め られ な か っ た.餅 生 地 を 冷 蔵 し,24,

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28 澱 粉 科 学 第39巻 第1号(1992)

Fig. 6, X-ray diffraction patterns of Mochi on storage at various temperatures.

72,168時 間 保 存 し た 場 合 の粘 度 曲 線 は,約40℃ 付 近 よ り急 激 な粘 度 の 増 大 が み られ た.ミ キ サ ー式 餅 生 地 の 場 合,こ の粘 度 増 加 は 保 存72時 間 で 最 大 を 示 し,保 存1週 間 後 で は 逆 に 低 下 した.一 方 餅 生 地 を 冷 凍 し,24,72, 168時 間 まで 保 存 した 場 合 の 粘 度 曲 線 は いず れ の 餅 生 地 も調 製 直 後 の餅 生 地 と同 様 な 粘 度 曲 線 を示 した こ とか ら, 調 製 直 後 の 性 状 を維 持 し て い る と い え る.  以 上 よ り,餅 生 地 は調 製 方 法 の違 い に よ る差 異 だ け で な く,保 存 方 法 を 変え る こ と に よ って,餅 生 地 の物 性 は 性 状 が 大 き く異 な る こ とが 見 出 され た.餅 を 含 め,澱 粉 性 食 品 の 老 化 現 象 は種 々の 要 因 に よ っ て変 化 す る もの で あ り,一 様 な もの と し て 論 ず る こ と は で きな い が,餅 生

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餅 に関す る食品 学的研究

Fig. 7. Brabender viscograms of Mochi on storage at various temperatures.

地 の 硬 化 現 象 の 要 因 の 一 つ は,餅 生 地 中 に 多 量 に存 在 す る澱 粉 分 子 と水 分 子 の 相 互 の 挙 動 に よ っ て起 こ る もの と 推 察 し て い る26∼28).すな わ ち,餅 生 地 を 冷 蔵 保 存 す る と 餅 生 地 中 の 水 分 子 と澱 粉 分 子 に変 化 が 起 こ り,互 い に 分 離 し,水 は クラ ス タ ー とな る.一 方 で,澱 粉 分 子 間 で 会 合 を 起 こ し,こ れ が 密 な 状 態 とな っ て 巨大 な ネ ッ トワ ー

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30 澱 粉 科 学 第39巻 第1号(1992) クを 形 成 し,餅 生 地 構 造 の 物 理 的 な 安 定(強 度)に 寄 与 し てい る と考 え る.ま た,餅 生 地 の 水 分 は,43%と 全 体 の 半 量 以 下 の た め か,水 分 含 量 の 多 い 澱 粉 ゲ ル の よ うな 離 漿 を 起 こ さず,澱 粉 分 子 の ネ ッ トワー クの 中 に 包 含 さ れ て お り,そ の た め に 水 分 量 の 変 化 が ほ とん どな い と考 え る.餅 生 地 を 冷 凍 す る こ とに よ り,生 地 の 硬 化 が 進 行 し な い の は,水 が 結 晶 して 澱 粉 分 子 が 固 定 され るた め で あ ろ う27).こ れ ら の 問 題 につ い て は 今 後 の 検 討 課 題 と し た い. 3.粳 米 ・糯 米 の 硬 化 過 程 に お け る 性 状 の 変 化25)  今 ま で の 結 果 で,餅 生 地 は 原 料 の 糯 米 が 同一 で も調 製 法 の違 い に よ り生 地 の 物 性 や 性 状 に影 響 を あ た え る こ と が 明 らか とな った.そ こで つ ぎ に糯 米 中 の 糊 化 澱 粉 の 存 在 状 態 を 変 え て,生 地 の 硬 化 過 程 の 追 跡 を 試 み た.す な わ ち,糊 化 澱 粉 が 細 胞 内 に留 って い る 米 粒 状 と して の 強 飯,糊 化 澱 粉 が 細 胞 内 と細 胞 外 にペ ー ス トとな っ て存 在 す る半 米 粒 状 と し て の 餅,そ して 糊 化 澱 粉 が 大 部 分 細 胞 外 に 存 在 す る米 粒 状 と し て の 団 子 を そ れ ぞ れ 調 製 し,調 製 直 後 お よ び 冷 蔵 保 存 過 程 の 性 状 に つ い て検 討 した. 1)粳 米 ・糯 米 試 料 の 物 理 的 性 質  調 製 直 後 の そ れ ぞ れ に つ い て フ ァ リ ノ グ ラ フ に よ り硬 粘 度 測 定 を 行 った 結 果,粳 米,糯 米 と も米 粒 組 織 が破 壊 され て い な い強 飯 で は 硬 粘 度 が も っ と も高 く,米 粒 組 織 が 細 か く破 壊 され て い る団 子 で は硬 粘 度 の 低 下 が も っ と も顕 著 で あ っ た.糯 米 の 硬 粘 度 は 粳 米 に 比 べ,い ず れ も低 い 傾 向 に あ っ た.こ れ は糯 米 に 含 まれ る澱 粉 が ア ミロ ー ス を 含 ま な い た め で あ る.ビ ス コ グ ラ フ に よ る 粘 度 測 定 で は,粳 米 試 料 は い ず れ も粘 度 立 上 が り温 度 が か な り高 温 側 で,し か も温 度 上 昇 中 は 粘 度 の増 加 が 小 さ い こ と,冷 却 に よ り粘 度 が急 激 に上 昇 す る こ と,保 存 過 程 で の 変 化 が 少 な く近 似 し た 曲 線 で あ る こ とが 特 徴 で あ っ た.糯 米 試 料 は粳 米 試 料 とか な り異 な り,い ず れ の 場 合 も調 製 直 後 の 試 料 は 測 定 開 始 と 同 時 に 粘 度 が 上 が り, 冷 却 後 は あ ま り大 きな 粘 度 の 増 加 は み られ な い が,冷 蔵 保 存 した 試 料 で は保 存24時 間 後 よ り約40℃ 付 近 か ら急 激 な 粘 度 増 加 が あ り,粘 度 の 大 き さ は 保 存72時 間 を 最 大 と し,保 存1週 間 後 で は逆 に 低 下 した.粳 米 ・糯 米 試 料 と も調 製 別 で 異 な った 結 果 と な り,米 粒 状 の 強 飯 は 粘 度 が も っ と も高 く,米 粒 状 の 団 子 は 粘 度 が も っ と も低 く な っ た. 2)粳 米 ・糯 米 試 料 の 糊 化 度   粳 米 試 料 は 保 存 時 間 が 長 くな る ほ ど,糯 米 試 料 よ り糊 化 度 の 低 下 が 大 き く,老 化 しや す い こ と が わ か っ た.ま た,い ず れ も米 粒 組 織 が破 壊 され ず,米 粒 細 胞 内 に糊 化 澱 粉 が 存 在 す る強 飯 試 料 の 糊 化 度 が も っ と も高 く,老 化 し に くい こ とが 認 め られ た.  これ ら の こ と よ り,粳 米 ・糯 米 の 米 粒 状,半 米 粒 状, 米 粒 状 の 試 料 の 諸 特 性 に差 異 が 認 め られ るの は,試 料 の 組 織 構 造 に 由 来 して い る と考 え る.す な わ ち,糊 化 後 の 米 澱 粉 は 米 粒 胚 乳 組 織 の 細 胞 内 に 存 在 す る場 合 と圧 力 や 攪 拌 に よ っ て米 粒 細 胞 よ り外 に ペ ー ス トと な って 流 出 し て い る 場 合 と で は,硬 化 の メ カ ニ ズ ムが か な り異 な り, 餅 生 地 中 に 澱 粉 ペ ー ス トが 多 量 に 存 在 して い る と,冷 蔵 保 存 と と もに 老 化 が 進 行 す る割 合 も早 く,ま た 再 加 熱 の 場 合 に は,す み や か に柔 らか くな る こ とが示 唆 され た. 4.糯 米,ワ キ シ ー コ ー ン お よ び キ ャ ッ サ バ 澱 粉 の 餅 へ の 利 用20,22) 1)糯 米,ワ キ シ ー コー ンお よ び キ ャ ッサ バ 澱 粉 の 物 理 的 性 質  各 種 澱 粉 の 中 で糯 米,ワ キ シ ー コー ンお よ び キ ャ ッサ バ 澱 粉 は澱 粉 ペ ー ス トが 硬 い ゲ ル に な らず,半 固 形 状 で 流 動 性 を示 す こ とが 知 ら れ て い る.こ れ ら の澱 粉 よ り ペ ー ス トを 調 製 し,曳 糸 特 性 と ク リ ー プ特 性 に つ い て 検 討 した.曳 糸 特 性 で は濃 度 が 増 す に つ れ て曳 糸 距 離 と曳 糸 エ ネ ル ギ ー値 は 増 加 す る 傾 向 を 示 し た が,糯 米> キ ャ ッサ バ>ワ キ シ ー コ ー ン澱 粉 の順 に そ の 増 加 率 が 大 きか っ た.ク リ ー プ 特 性 で は 弾 性 率 ・粘 性 率 と も に キ ャ ッサ バ 澱 粉 が も っ と も大 き く,糯 米 澱 粉 は 定 常 粘 性 率 が3種 の 中 で も っ と も小 さか った.糯 米 澱 粉 は 温 度 依 存 性 が も っ と も大 き く,温 度 上 昇 に 伴 い 弾 性 が 減 少 し, 澱 粉 分 子 と水 分 子 の ネ ッ トワー クが ゆ る くな る こ と が示 唆 され た. 2)澱 粉 ペ ー ス ト添 加 餅 生 地 の 物 理 的 性 質 と食 味 特 性   澱 粉 ペ ー ス ト添 加 餅 生 地 の テ ク ス チ ャ ー の結 果,ワ キ シ ー コー ン澱 粉 添 加 に よ り 餅 生 地 は 柔 ら か く な り, キ ャ ッサ バ 澱 粉 添 加 に よ り,硬 さ と粘 りが 増 加 す る こ と が 認 め られ た.食 味 特 性 の 結 果,糯 米100%餅 生 地 は弾 力 性 とこ しが あ る こ と,ワ キ シ ー コ ー ン澱 粉 添 加 餅 生 地 は 白 っ ぼ く,組 織 が 均 一 で 伸 び の あ る こ と が,そ し て キ ャ ッサ バ 澱 粉 添 加 餅 生 地 は弾 力 性 とこ しが あ り,糯 米 100%餅 生 地 よ り伸 び が よ い 特 性 で あ る こ とが示 され た. し た が っ て,餅 生 地 は 嗜 好 性 が 多 様 化 して お り,こ れ ら の 澱 粉 を 添 加 した 餅 へ の 利 用 も有 効 で あ る こ とが 明 ら か とな っ た.

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餅に関 す る食 品学的研 究

 本 研 究 を 行 う に あ た り,終 始 ご 指 導 ご 鞭 撻 を 賜 り ま し た 東 京 大 学 名 誉 教 授 東 京 農 業 大 学 客 員 教 授 中 村 道 徳 先 生, 東 京 農 業 大 学 教 授 川 端 晶 子 先 生 に 厚 く お 礼 申 し 上 げ ま す と と も に,東 京 農 業 大 学 調 理 学 研 究 室 の 先 生 方 の こ 協 力 の も と に 行 わ れ,改 め て お 礼 申 し 上 げ ま す. 文 献 1) 二 國 二 郎:自 然(中 央 公 論 社),2,14-21(1948). 2) 日 東 製 菓(株)編:お も ち の 本,食 品 出 版 社,東 京, p.66(1983). 3) 斎 藤 昭 三,谷 地 田 武 男,石 井 修 一,有 坂 将 美,中 島 幸 一:新 潟 食 研 報,11, 85-90 (1970), 11, 95-98 (1970), 13, 49-56 (1974), 13, 57-67 (1974), 14, 53-58 (1974), 15, 39-45 (1978), 18, 39-42 (1981). 4) 谷 地 田 武 男,中 島 幸 一,斎 藤 昭 三:新 潟 食 研 報,11, 91-93(1970). 5) 柳 瀬 肇,遠 藤 勲,奥 野 元 子:食 総 研 報,42,1-9(1983). 6) 柳 瀬 肇,大 坪 研 一,橋 本 勝 彦:食 総 研 報,45,1-8(1984). 7) 斎 藤 昭 三,池 山 八 郎,福 場 博 保:新 潟 食 研 報,9, 63-66(1966). 8) 斎 藤 昭 三,馬 場 操:新 潟 食 研 報,9,67-70(1966). 9) 斎 藤 昭 三,馬 場 操,古 石 澄 子:新 潟 食 研 報,9, 71-75(1966),9,77-83(1966). 10) 池 山 八 郎,斎 藤 昭 三:新 潟 食 研 報,10,25-28(1968). 11) 馬 場 操,斎 藤 昭 三:新 潟 食 研 報,10,29-30(1968). 12) H. HORIUCHI: Agric. Biol. Chem., 44, 1231-1235

(1980). 13) 堀 内 久 弥:農 化,54,241-245(1980). 14) 堀 内 久 弥:日 食 工 誌,33,38-43(1987). 15) 堀 内 久 弥:農 化,61,1417-1423(1987). 16) 勝 田 啓 子:家 政 誌,37, 351-355 (1986), 38, 275-281 (1987), 38, 283-291 (1987), 38, 711-718 (1987), 39, 289-295 (1988). 17) 桐 渕 滋 雄:食 品 開 発,11,35-39(1976).

18) Y. ISONO, E. OKAMURA and T.FUJIMOTO: Agric.Biol.Chem.,54, 2941-2947 (1990), 54, 2949-2952 (1990). 19) 永 島 伸 浩,川 端 晶 子,中 村 道 徳:澱 粉 科 学,34, 179-185(1987). 20) 永 島 伸 浩,川 端 晶 子,中 村 道 徳:澱 粉 科 学,34, 186-195(1987). 21) 永 島 伸 浩,澤 山 茂,川 端 晶 子,中 村 道 徳:澱 粉 科 学,37,2-28(1990). 22) 永 島 伸 浩,川 端 晶 子,中 村 道 徳:澱 粉 科 学,37, 235-242(1990). 23) 永 島 伸 浩,川 端 晶 子,中 村 道 徳:澱 粉 科 学,37, 243-250(1990). 24) 永 島 伸 浩:第16回 食 品 の 物 性 に 関 す る シ ン ポ ジ ウ ム 講 演 要 旨 集,p.87-96(1989).

25) 久 下 喬:New Food Ind.19(8),33-47(1977). 26) 檜 作 進:調 理 科 学,3,225-229(1970).

27) 野 口 駿,中 沢 文 子:調 理 科 学,12,5-16(1979). 28) 中 沢 文 子,野 口 駿,高 橋 淳 子,高 田 昌 子:家 政 誌,

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(10)

40 澱 粉 科 学 第39巻 第1号(1992)

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6) M. MELLIS, R. 3ANDACEK et al.: Am. J. Gun.

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10) C. A. BERNHARDT : Food Tech. Int. Eur.,

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13) G. P. RIzzI

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