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全文

(1)

危機管理論

(担当)

防災研究所 教授  林 春男

防災研究所 准教授 牧 紀男

防災研究所 助教  鈴木 進吾

(2)

授業のテーマと目的

わが国でも自然災害の発生が頻発化と激化の傾向を示すだけでなく、予想外の さまざまな原因による危機が増発しており行政組織さらには民間組織において危 機管理に対する関心が高まっている。  危機管理とは「プロセス」であり、危機を管理する水準を継続的に向上させ る試みである。わが国の危機管理体制の現状を見ると、災害対策基本法にもと づいて自然災害を対象として整備されている防災体制がもっとも包括的である。 本講座ではこうした現状をふまえて、自然災害への対応を基礎としながらどのよ うな原因による危機にも一元的に対応できるわが国の社会風土に適した危機管 理体制について考える。  危機管理の目標は組織における事業継続である。この講義では、リスク評価 →戦略計画の策定→標準的な危機対応システムの構築→研修・訓練というプロ セスを連続して回す事による組織の事業継続(Business Continuity Management)を可能にする危機管理の方法を習得する。

(3)

授業計画と内容(前半)

日時 内容 10月1日 危機管理とは(鈴木) 10月8日 組織の事業継続(林) 10月15日 リスクの同定・分析(鈴木) 10月22日 リスクの評価(鈴木) 10月29日 危機管理の実務を知る
 (講師:政策研究大学院大学 武田文男) 11月5日 危機管理の実務を知る
 (講師:金芳外城雄 神戸復興20年∼巨大災害の教訓) 11月12日 防災戦略計画(牧)

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授業計画と内容(後半)

日時 内容 11月19日 危機管理の実務を知る
 (講師:鹿島技術研究所 畑田朋彦) 11月26日 危機管理の実務を知る
 (講師:明石工業高等専門学校 太田敏一) 12月3日 一元的な危機対応過程(林) 12月10日 危機管理の情報処理(鈴木) 12月17日 危機管理の実務を知る
 (講師:組込みシステム産業振興機構 東田光裕) 1月7日 教育訓練(林) 1月14日 危機対応のための空間設計(牧)

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評価

• 各回にレポートを課す.その回答状況と最終回に実施するレポート 試験の内容から総合的に評価する。 • 各回のレポート課題 • 「授業を聞いて自分にとって発見だったことを3つ,もっと説 明してほしいことを1つあげ,その理由を説明しなさい.」 • 提出様式:以下の要領に従って、メールで回答する • address: kikirpt@drs.dpri.kyoto-u.ac.jp • subject:「危機管理レポートX月X日 学籍番号 氏名」と明記する • 添付書類不可 • 提出期限:翌週火曜日23:59まで

(6)

講義資料

各講義の資料は、講義の翌週の水曜日から下記

URLに

て配信する

講義資料・ノートは最終回のレポート試験時に持ち込

み可

http://www.drs.dpri.kyoto-u.ac.jp/hayashi/lectures.html

(7)
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近年の危機管理事案

年 危機管理事案 1995 阪神・淡路大震災 地下鉄サリン事件 1996 O157 1999 JCO臨界事故 2000 地下鉄日比谷線・せり上がり脱線 雪印乳業・食中毒  三菱自動車・リコール隠し 2001 池田小学校・児童刺殺事件 明石市花火大会・歩道橋事 故 BSE騒動 新宿・雑居ビル火災 米国・同時多発テ ロ・炭疽菌テロ 2002 食品産地偽装 みずほ銀行オンライン停止 2003 SARS流行

(9)

近年の危機管理事案

年 危機管理事案 2004 鳥インフルエンザ 新潟・福島・福井豪雨 台風23号  新潟県中越地震 インド洋大津波 2005 JR尼崎列車事故 松下石油ファンヒーター ハリケー ン・カトリーナ 耐震偽装 2006 大阪市不正支出 北朝鮮ミサイル発射 パロマの湯沸か し器 東横イン違法改造事件 アイフル業務停止 2007 ミートホープ社 食肉偽装 2008 四川大地震 リーマンショック 2009 ギリシャ危機 2010 2011 東日本大震災

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自然災害による被害

1975年から2010年までの自然災害による推定被害額( US$) 1975  1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010    Year EM-DAT 220 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 推定被害額( US $) 阪神・淡路大震災 四川地震 ハリケーン・カトリーナ

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阪神・淡路大震災

1995年1月17日午前5時46分発生 M7.3 深さ16km ! 死者 : 6,434名  行方不明 : 3名  負傷者 : 43,792名 避難人数 : 30万人以上 ! 住家被害 : 全半壊合計約25万棟(約46万世帯)! ! 火災被害 : 全焼損(非住家・住家共)合計7,483棟! ! その他被害 : 道路10,069箇所、橋梁320箇所!       河川430箇所、崖崩れ378箇所 ! 被害総額 : 10兆円規模 阪神・淡路大震災図録

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米国同時多発テロ

Ground Zero:

all 7 buildings destroyed 2,832 died

13 million sq ft office space destroyed 17 million sq ft office space damaged $ 83 billion total losses

100,000 jobs directly or indirectly affected

! ! !

青山公三(ニューヨーク大学行政研究所)(2002):! WTCテロ事件後におけるニューヨークの緊急対応,!

(13)

ハリケーン・カトリーナ

2005年8月23日∼31日! 最大風速 78 m/s (280 km/h) 最低気圧902 hPa! ! 死者 1836名 行方不明 705名! ! ニューオリンズ市の被害! 全壊78,468 戸(全壊率43.1%)! 大規模半壊25,864戸(大規模半壊率26.8%)! ! 被害額 108億ドル http://en.wikipedia.org/wiki/Hurricane_Katrina

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東日本大震災

総浸水面積 5万6千ヘクタール! 死者 15,872名 行方不明者 2,769名! 負傷者 6,144名! 全壊建物 129,591棟! 道路損壊 4,200箇所! 自治体 10都県241市町村! 避難所 最大時2417箇所! 避難者 最大時47万人! 企業倒産 千件以上! ! アジア航測!

(15)

災害多発時代

• 巨大地震 • 首都直下地震 • 東海・東南海・
 南海地震津波 • それらと連動して
 内陸直下型地震
 が発生! • 極端気象 • 長期的に見ると
 少雨と多雨の
 変動幅が増大 • 集中豪雨が増加

(16)

これまでの巨大災害とこれからの巨大災害

首都直下 地震 南海トラフ 巨大地震 阪神・淡路 大震災 東日本 大震災 死者・行方 不明者 11,000 323,000 6,437 18,880 (津波 ) 0% 71% 0% 90% (火災 ) 56% 3% 12% 1% 負傷者 210,000 623,000 43,792 6,107 建物倒壊 195,000 1,640,000 104,906 129,896 焼失棟数 650,000 750,000 7,036 279 経済被害 112兆円 170兆円 9.6 兆円 16.9 兆円

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「危機」とは何か? 危機管理を考える

広辞苑! ! 大変なことになるかも知れないあやうい時や場合。危険な状態! ! 漢字のもつ、2つの意味、2つの側面! ! 危 1. 脅威(Threat)としての危機! ! 機 2. 機会(Opportunity)としての危機! ! ! 脅威を上手に乗り切ることで、組織の成長、社会的信用を高める機会

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「危機」とは何か? 頻度と規模による区別

crisis disaster catastrophe emergency incident 大      発生頻度      小 小      被害程度      大 短期で解決する 現場 長期間の活動を必要とする 現場+対策本部(EOC) 発生頻度と被害規模によって区別される一連の現象 2005 ハリケーン・カトリーナ

(19)

「危機」とは何か? 危機をとらえる

予想外の出来事:  経験したことのない事象の発生 悪い結果をもたらす出来事:  放っておいたら、人命損失、組織の事業停止、世間の厳しい評価にさらされる 通常業務を中断しても対応する出来事:  膨大な業務の発生、処理の優先順位を考える 組織全体として対応を必要とする出来事:  通常の縦割り・部局内自己完結型業務では対応できない。他との調整。普段 やっていないこと、不慣れなことをたくさん実行する。

(20)

危機の発生 平常時

現実

認識

現実世界と認識世界を一致させる ! 経験することを通して、 現実と認識の対応関係を学ぶ ! 過去の危機対応事案から対策・対応を学ぶ 組織を取り巻くリスクを認識する 平常時

日常生活

危機管理

(21)

危機の発生 緊急時

現実

認識

現実と認識の対応関係が破れる

①大規模で急激な

現実の変化

! 災害 事故 事件

②認識のゆがみ

! 願望 思い込み・偏見 無知

(22)

大規模で急激な現実の変化

(23)

大規模で急激な現実の変化

現実

認識

現実

認識

(危機発生前に戻りたい) 現実を把握する  (誰も新しい現実の正確な姿を知らない)  (混乱が生じる。生活できない。)  (この先の見通しは・・) 新しい現実で生活できるように認識を再構築する

危機対応

過程

ずれ

対応付け

(24)

災害発生から復興まで

(25)

認識のゆがみ

思い込み

以前の経験、根拠の無い言い伝え

固定されてしまった前提条件

偏見

情報の取捨選択

無知

知らない、全く認識できない

新興感染症(

AIDS、SARS、O-157など)

(26)

認識のゆがみ

• 環境のゆるやかな変化 • 国際化 • 国際的な相互依存関係、人の行き来 • 高齢化 • 高齢者の暮らし、社会参加 • 都市化 • スプロール化、人間関係の希薄化、ライフラインへの依存 • 技術の高度化 • コンピュータ社会 • ニーズの変化 • 法規制の変化

(27)

危機の判断 最初からはっきり分からないことも

認 識 危機 危機でない 現  実 危機

ぼんやりエラー! (見逃しの三振)! 組織存亡の危機 危機 でな い うっかりエラー! (空振りの三振)! 狼少年となる危機

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危機判断の基準

1.

人命が関わっているのか

2.

世間が騒いでいるのか

3.

計画で定めた基準をみたしているのか

1., 3.

Rules of Engagement (ROE)

 個人の判断能力に左右されずに職員の危機対応を可能とする

!

2.

ROEが作れない場合、自分と世間(Media)の認識のずれを見る

(29)

危機管理の業務

時間がない: 状況が時々刻々と変化していく。時期にあった対応。 仕事量が多い: 多様で膨大な不慣れな業務が発生。人手が少ない。 世間の評価が厳しい: ストレスにさらされながらの対応 あいまいな状況での判断を求められる: 未確認情報。情報不足。未知の事象の発生。 ぬけ・もれ・おちのない仕事をする: 多方面から膨大な対応要求。

(30)

危機発生時の業務

平常業務

破壊される

継続する

中断する

ニーズが発生する

 復旧

 業務継続

 再開

 応急対応

 新業務創設

平常業務

危機発生前

危機発生

危機対応

危機後

(31)

危機管理とは何か

次の

5つの質問に順番に答える

何を目標とするのか

予想される問題は何か

その原因は何か

問題発生を回避する対策は何か

問題が発生したときの影響を最小限にする対策

は何か

何ができれば成功か? 現実と理想のずれは? ずれの原因は?

(32)

危機管理の目標としての事業継続

• Continuity of Operation(COOP) • 社会経済活動の致命的な中断による被害の拡大と波及を防ぐため、 行政・企業等の組織が必要な活動を継続する。 • 事業継続マネジメント(BCM) • 災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事業 活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、 業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェ アの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。

(33)

リジリエンス(

Resilience)の向上

時間

災害発生

復旧時間

機能レベル

影響

100%

平常時

(34)

予防力の向上

抵抗力を高めて被害を抑止する

MCEER’s Resilience Framework

時間

災害発生

復旧時間

100%

被害抑止

(35)

回復力の向上

回復力を高めて復旧時間を短縮する

被害軽減

MCEER’s Resilience Framework

時間

災害発生

復旧時間

100%

(36)

総合的な防災力の向上

被害抑止

被害軽減

MCEER’s Resilience Framework

時間

災害発生

復旧時間

100%

(37)

危機管理の

4つのステップ

• リスクを分析する • リスクを同定する • リスクを評価する • 戦略計画を立てる • リスクの回避・軽減 ・・・・ 被害抑止 • リスクの転嫁・需要 ・・・・ 被害軽減 • 万が一の場合に備えた対応策を整備する • 一元的な危機対応体制の整備 • 研修・訓練を通して実効性を高める • 実体験と訓練での体験とを等価と考える

(38)

ステップ1:リスク評価

あらかじめ、どのような問題が発生するか、どの問題

が重要か、その問題の原因は何かを突き止める

リスクの同定・分析

敵を知る

己を知る(強みと弱み)

シナリオを知る

影響を知る

危機の教訓を今後に生かす

(39)

ステップ2:戦略計画

• 危機管理の戦略を定める • 何を守るか:命、Criticalな施設、資産、事業 • 何を捨てるか:災害の筋書きを書く • リスクの回避・軽減 • 事前の対策で発生する被害を抑える • 事前に発生した場合の対応を準備し影響を軽減する • リスクの転嫁・受容 • 被害が発生するものと考え、保険に入る • 被害を受容し、その分、別の対応でカバーする

(40)

組織だけではなく様々な分野に発生する被害

ライフライン(電気・ガス・水道・通信)

交通(道路・鉄道・空港・港湾)

物流(生産拠点・倉庫・配送センター・小売店)

危機管理組織(行政・警察・消防・病院)

経済・社会生活(銀行・学校・職場)

サプライチェーン(下請け・原材料・取引先)

(41)

ステップ3:標準的危機対応システム

体制を構築する

利害関係者(

Stakeholders)を明確にする

危機管理の中核となる人を集める

政治家、行政マン、専門家、企業家、教育者、地域の

リーダー、マスコミ

全体最適にむけて

状況認識の統一

一元的な危機管理体制

個人の能力に左右されずに危機対応を可能とする

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ステップ4:研修・訓練

• 危機を管理する水準を継続的に向上させる研修・訓練の実施 • 非常時 • 普段やっていることしかできない • 普段やっていることも満足にできない • 普段やっていないことはできない • 平常時:リスクマネジメント・アプローチ • PDCA(Plan-Do-Check-Action) • 研修・訓練の実施 • 業務プロセスの継続的改善

(43)

「プロセス」としての危機管理

標準的

危機対応

システム

リスク評価

戦略計画

Business Continuity Managementの4段階

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