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21-25_会計監査(有価証券報告書解説シリーズ①)_責

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(1)

有価証券報告書の改正解説シリーズ(

1

改正項目の解説 事業等のリスクの拡充

リスクアドバイザリー事業本部 公認会計士 

やま

うち

ᅠ達

たつ

はじめに

金融庁は、平成

31

1

31

日「『企業内容等の開示に 関する内閣府令(以下、「開示府令」という)』の改正案 に対するパブリックコメントの結果等について」を公表 し、本改正に係る内閣府令が同日付で公布・施行され た。 本誌においても「金融庁が『企業内容等の開示に関す る内閣府令』の改正案を公表」(本誌

2018

12

月号 (

Vol.508

))、「金融庁が『記述情報の開示に関する原則 (案)』を公表」(本誌

2019

2

月号(

Vol.510

))をお知 らせしているが、改正案※が確定したことを踏まえ、本 号から複数回にわたり解説記事及び想定される今後の対 応等についてご紹介していきたい。特に今回の改正は 「事業等のリスク」について、従来の日本企業の有価証 券報告書の記載事項から大幅な拡充が求められているた め、その点を中心に解説する。

1

.改正の全体像

1

)改正の背景

今回の改正は、平成

29

11

月より金融庁金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループにおいて、企 業情報の開示・提供に関する在り方の検討を進め、平成

30

6

月に同グループ報告における提言を踏まえたもの である。同ワーキンググループにおいては、複数回にわ たり国内外の機関投資家を招いてヒアリングを行ってお り、開示書類の利用者である投資家の意見が強く反映さ れているものと思料する。 同報告では、日本企業を取り巻く経営環境の変化・経 営課題の複雑化、株主構造の変化、近年のコーポレート ガバナンス改革、諸外国における開示制度などを背景 に、企業内容の開示を従来以上に充実することが提言さ れている。 表1-1 改正の背景

© 2019. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.

改正の背景

表1-1

出所:金融審議会 ディスクロージャーWG報告 2018年6月28日

情報の信頼性・適時性の確保

に向けた取組

建設的な対話の促進

に向けた情報の提供

財務情報及び記述情報

(非財務情報)の充実

経営環境の変化のスピードが増すとと もに、経営上の課題が複雑化・多様化 1 資本市場における株式の保有構造 2 コーポレートガバナンス改革や 会計監査の信頼性 3 諸外国における 記述情報を含む開示の充実 4

会計・監査

※執筆時点においては「記述情報の開示に関する原則(案)」は確定していない。  今後、確定により原則(案)と大幅な改訂が行われた場合には、次号にて解説する。

(2)

表1-2 有価証券報告書の改正項目・適用時期とコーポレートガバナンス・コードの関連性

© 2019. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.

表1-2

財務情報及び記述情報(非財務情報)の充実

• 経営方針・経営戦略等について、 市場の状況、競争優位性、主要 製品・サービス、顧客基盤等に 関する経営者の認識の説明を含 めた記載を求めることとします。 原則4-1 【取締役会の役割・責務(1)】 原則5-2 【経営戦略や経営計画の策定・公 表】 原則4-3 【取締役会の役割・責務(3)】 補充原則4-3④ 【先を見越したリスク管理体制の整 備】 • 事業等のリスクについて、顕在 化する可能性の程度や時期、リ スクの事業に与える影響の内容、 リスクへの対応策の説明を求め ることとします。 • 会計上の見積りや見積りに用い た仮定について、不確実性の内 容やその変動により経営成績に 生じる影響等に関する経営者の 認識の記載を求めることとしま す。 第2「事業の状況」 1. 経営方針、経営戦略 及び対処すべき課題 等 第2「事業の状況」 2. 事業等のリスク 第2「事業の状況」 3. 経営者による財政状 態、経営成績及び キャッシュ・フロー の状況の分析 現行の該当箇所 関連するコーポレートガバナンス・コード 改正の内容 2020年3月31日以後に 終了する事業年度に係 る有価証券報告書等か ら適用 ※2019年3月31日以後に終 了する事業年度に係る有価 証券報告書等からの適用可 適用時期

© 2019. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.

表1-2

建設的な対話の促進に向けた情報の提供

• 役員の報酬について、報酬プロ グラムの説明(業績連動報酬に 関する情報や役職ごとの方針 等)、プログラムに基づく報酬 実績等の記載を求めることとし ます。 原則4-2 【取締役会の役割・責務(2)】 補充原則4-2① 【中長期的な業績と連動する報酬割 合】 原則1-4 【政策保有株式】 補充原則1-4① 補充原則1-4② • 政策保有株式について、保有の 合理性の検証方法等について開 示を求めるとともに、個別開示 の対象となる銘柄数を現状の30 銘柄から60銘柄に拡大します。 第4「提出会社の状況」 6. コーポレートガバナ ンスの状況 • 役員の報酬等 第4「提出会社の状況」 6. コーポレートガバナ ンスの状況 • 株式の保有状況 現行の該当箇所 改正の内容 2019年3月31日以後に 終了する事業年度に係 る有価証券報告書等か ら適用 適用時期 関連するコーポレート ガバナンス・コード 出所:金融庁ホームページ「『企業内容等の開示に関する内閣府令』の改正に対するパブリックコメントの結果等について」に基づき、当 法人にて加筆

表1-2

情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組

• 監査役会等の活動状況、監査法 人による継続監査期間、ネット ワークファームに対する監査報 酬等の開示を求めることとしま す。 第4「提出会社の状 況」 6. コーポレートガバナ ンスの状況 • 企業統治の体制 の概要 • 監査報酬の内容 等 原則4-4 【監査役及び監査役会の役割・責務】 原則3-2 【外部会計監査人】 補充原則3-2① 【外部会計監査人の評価・独立性専門 性】 現行の該当箇所 改正の内容 適用時期 ※2019年3月31日以後に終 了する事業年度に係る有価 証券報告書等からの適用可 関連するコーポレート ガバナンス・コード 項目ごとに適用時期が異 なる ①2019年3月31日以後に 終了する事業年度に係る 有価証券報告書等から適 用 ②①と同様。ただし2019 年3月31日から2020年3 月30日までの間に終了す る事業年度に係る有価証 券報告書については、附 則9項の読み替えにより 改正前と同様の記載可 ③2020年3月31日以後に 終了する事業年度に係る 有価証券報告書から適用

(3)

2

)改正の概要

今回の有価証券報告書等の記載事項の改正内容は、① 財務情報及び記述情報の充実、②建設的な対話の促進に 向けた情報の提供、③情報の信頼性・適時性の確保に向 けた取組、の

3

項目に分類され、表

1

2

のように適用時 期もそれぞれ異なる。 また、今回の改正記載事項は、平成

30

6

月に改訂さ れたコーポレートガバナンス・コードの各原則との関連 において、「コンプライ」している原則について有価証 券報告書における説明を求めているようにも思われる。

3

)改正項目への対応の難易度

上記(

2

)で説明した改正項目のうち、「②建設的な対 話の促進に向けた情報の提供」(役員報酬及び政策保有 株式)」については、コーポレートガバナンス・コード でも記載されている事項であり「コーポレートガバナン スに関する報告書」において既に開示している要素でも あることに鑑み、すでに各企業が取り組んでいる事項に ついての記載を充実するという意味で、難易度は高くな いものと思われる。そのため猶予期間なく、

2019

3

31

日以後終了する事業年度に係る有価証券報告書か ら適用されることとされている。 一方、「①財務情報及び記述情報の充実」「③情報の信 頼性、適時性の確保に向けた取組」の一部の項目につい ては対応への難易度が高いことを想定されるからか、適 用時期に

1

年間の猶予期間を設け、

2020

3

31

日以 後終了する事業年度に係る有価証券報告書から適用され ることとされている(早期適用は可能)。特に、「①財務 情報及び記述情報の充実」については、記述情報につい てのプリンシプルベースのガイダンスという位置づけで 「記述情報に関する開示の原則(案)」が策定され、望ま しい開示の考え方、開示の内容、開示に対する取り組み 方がまとめられ、「経営方針・経営戦略等、経営成績等 の分析」「リスク情報」を中心に、有価証券報告書にお ける開示の考え方等が整理されている。経営者の認識の 記載や、図・グラフ・写真の積極的な活用など、統合報 告書やアニュアルレポートのようなわかりやすい開示を 求めている点で、従来の有価証券報告書に対する意識の 転換が必要になる点からも、難易度が高いものと思われ る。また、記述情報に関する開示の原則(案)で、望ま しい取り組み方が紹介されているように、今回の開示ル ールの改正を契機に、開示の前提となる企業の取組その ものを見直す必要がある場合には、一層対応への難易度 が高くなる。 その中でも、「事業等のリスク」については、従来の 日本企業の有価証券報告書の記載事項に加えて大幅な拡 充が求められていることから、以下、詳細に解説する。

2

.事業等のリスクの改正

1

)現状の開示に関する「よくある課題」

従来の日本企業の有価証券報告書にある「事業等のリ スク」の記載について、想定される典型的な課題を、下 記表

1

3

に挙げている。その要因は、従来多くの企業 が、ファイナンス実施後のリスクヘッジの意味合いとし て「事業等のリスク」の記載をしていたものと思料する ところである。 表1-3 従来の「事業等のリスク」の記載の典型的な課題

© 2019. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.

表1-3

上場以来、基本、前年度の開示を踏襲している 世界経済・日本経済の影響などにとどまり、 「企業固有のリスク」を記載していない 法律専門家の助言により、訴訟対策として記載項目を検討している 法律・規制改定や他社の不祥事等トピックな事項が話題になる 都度項目を追加した結果、各項目の粒度や階層が揃っていない 社長交代時に、経営戦略/中期経営計画が変わっているが、 リスクの内容は更新していない(関連性を意識していない) リスクの種類・内容を記載するだけで、対応策・責任部署を 記載していない

(4)

2

)改正による記載項目の例

今回の有価証券報告書の改正の前提となっている、金 融審議会ディスクロージャーワーキング・グループで は、日本企業の「事業等のリスク」の開示の現状と対比 する形で、英国の開示状況を、表

1

4

のように

Rolls-Royce

の開示例を用いて議論されている。そのことか ら、今回の改正による目指す開示が、一定程度、英国を モデルにしていることが推察される。 この点、「スチュワードシップ・コード及びコーポレ ートガバナンス・コードのフォローアップ会議」におい て、コーポレートガバナンス・コードに基づく取組に関 する開示情報の充実として、

BT Group

の経営戦略に関

する開示(

Strategic Report

)や、

Rolls-Royce

のセグ

メント別

Business Review

やリスク情報開示を取り上 げていることからも、想定している開示モデルが英国の 開示であると思われる。

 

*1 事業等のリスクに関して、英国では、主要なリスク・ 不確実性の記載だけでなく、対応策、リスク水準の変 化、戦略等との関連性の記載が求められている。ここか ら日本で従来開示が求められている事項に比べて開示内 容が充実していることが伺える。これを踏まえ、今回の 有価証券報告書の「事業等のリスク」の改正において は、表

1

5

のように、従来の開示事項に加えて多くの 事項を開示することを求められている。 表1-4 英国におけるリスク開示例

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表1-4

会社法に基づき、企業が直面する主要なリスク・不確実性を説明。ガイダンスは、これらとともに、 その対応策、リスク水準の変化、戦略等との関連性などの記載が求められる。将来の経営成績などを 考慮し、一般的なリスクではなく会社に固有のリスクを記載することが求められている。 Rolls-Royceの例 例) • 技術革新、ビジネス モデルの変化 • 製品の欠陥 • 事業継続性の確保 • ITの脆弱性 • 競争環境の変化 • 政治情勢・規制動向 • 主要事業の完遂 • コンプライアンス • 市場動向・金融危機 • 人材の確保 主要なリスク・ 不確実性の記載 (会社法)

主要なリスク・不確実性への対応策 及び責任部署(ガイダンス) 重要な内部統制

リスクの水準の 変化、 新規リスクの発生 (ガイダンス)

関連する経営 戦略 (ガイダンス) 出所:金融庁ディスクロージャーWG資料(2017/12月) 脚注:★・・・日本では従来開示が求められていない事項 英国の状況 表1-5 改正により想定される記載内容 発生可能性「高/中/低」 リスクの見通し(1年後、3年後、5年後、10年後、30年以内…) 経営成績に与えるインパクト: 「売上低下」「原価率上昇」「滞留在庫の増加」「研究開発の増加」… リスクの重要性:量的影響度「大/中/小」 リスクの水準:昨年よりも「増加」「減少」「変化なし」「新規」など 執行側の対応策 監査・監督側の対策:取締役会、監査役会 経営戦略との関連性:中期経営計画で掲げている戦略との紐づけ

表1-5

MD&A、対処すべき課題に 関する「経営者の認識」 の記載 独立監査人の監査報告書 「監査上の主要な 検討事項(KAM)」 MD&A、対処すべき課題 に関する「経営者の認 識」の記載 ガバナンスの状況 「三様監査と内部統制部門 との関係の記載」「監査役 会の主要な検討事項」 リスクが顕在化する可能性の 程度や時期 リスクが顕在化した場合に 経営成績に与える影響 リスクへの対応策 リスクの重要性 経営方針・経営戦略等との 関連性 関連する開示改正事項 MD&A、対処すべき課題 に関する「経営者の認 識」の記載 想定される記載内容 改正により記載する事項の例

(5)

3

)記述情報の開示に関する原則(プリンシプ

ルベースのガイダンス)

前述したように、今回の有価証券報告書の改正に関し ては、ルールである開示府令に記載されている「記載上 の注意」に加えて、ガイダンスの位置づけである「記述 情報の開示に関する原則(案)」が策定・公表されている。 事業等のリスクの開示に関しても、考え方、望ましい 取組が表

1

6

のように記載されており、開示項目を充 実する際のガイダンスとして参考にすることが期待され ているものと思われる。 表1-6 記述情報の開示に関する原則(案)のうち、「事業等のリスク」関連

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表1-6

翌期以降の事業運営に影響を及ぼし得るリスク・不確実性のうち、 経営者の視点から重要と考えるものをその重要度に応じて説明するものである。 考え方 望ましい取組み

02

03

01

テキスト 出所:金融庁「記述情報の開示に関する原則(案)」 2018年12月21日 一般的なリスクの 羅列ではない 取締役会等における、 リスクの影響度や 発生の蓋然性に応じた 重要性を考慮 経営環境や 経営戦略を踏まえ、 取締役会等における リスクの重要性を反映 記載の順序 リスク管理に用いてい る区分に応じた記載 (例:市場リスク、 品質リスク、コンプライア ンスリスクなど) リスクの区分

3

.開示の拡充に対する機関投資家の意見

今回の事業等のリスクの改正は、上述のように英国の 開示をモデルにしていることが推察される。そこで、英 国ではどのような背景で導入されたのか、また英国で導 入され

4

5

年が経過した結果、現在のプラクティスは どのような状況なのか、また、日本でも戦略に関連する リスクについて経営者の認識に関する記述が充実した ら、どの程度投資判断に有益なのか、という点につい て、長く英国ロンドンを拠点に活躍しておられ、かつ、 日本企業のガバナンス動向にも詳しいお二人の機関投資 家の方に、インタビューした(デロイトトーマツの

HP

に詳細なインタビュー記事を掲載している)。

 

*2 彼らの日本企業の開示・取組に対する期待について、 以下のような意見を伺った。 ●企業自らが自社の企業価値創造のプロセスをより見え る工夫をして、開示してほしい。 ●ビジネスモデル、競合優位性に基づいた事業戦略、資 本政策と財務戦略、株主還元方針、リスクマネジメン ト、また価値創造につながる企業戦略と良い経営をサ ポートするガバナンスの実践についても、全体の整合 性のある開示と説明が期待される。 ●英国をはじめとする欧州企業と比べて日本企業が弱い のは「非財務情報のうち何が重要なのか」を明確にし ていない。日本企業はオープンで様々な情報を開示し てくれるが、何が本当に重要な情報なのか、企業側か らそれほど伝わってこないので、投資情報としてのマ テリアリティ(重要性)を考えてほしい。 ●自社のビジネスについて、どんなリスクをテイクして いるか、そのリスクに見合う収益性を確保しているか という視点で中長期的に整合した説明をしてほしい。

4

.次号予告

今回、事業等のリスクの制度改正を中心に解説した が、次号においてはこの改正にどう対応していくのか、 全面適用に向けて想定されるロードマップや取組等につ いて紹介する予定である。 以 上 *1 平成30年11月27日開催「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」 (第16回) 「資料3 参考資料」 *2 Steward of Capitalとしてのアカウンタビリティ~投資家が経営者・取締役に期待する役割 https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/risk/articles/srr/governance-interview-ri.html エンゲージメントの意義を常に考える~次のステージに向けて日本企業に何を期待するか https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/risk/articles/srr/governance-interview-takatsuki.html

表 1 - 2  有価証券報告書の改正項目・適用時期とコーポレートガバナンス・コードの関連性

参照

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