香川生物（Kagawa Seibutsu）桐：1q5，1983
愛媛県東予地域および島根県温泉津の山麓部農耕地における
スミスネズミの採集
金 子 之 史
〒760 高松市幸町1・−・1香川大学教育学部生物教室
Collection of Eolhenomys smilhiin CultivatedFields at the
Foot of Mountainsin Ehime and Shimane Prefectur・s
YukibumiKANEKO，BiologicalLaboratory，Fbculty of Education Kaga00a
打彿宜γβ代官物，ア嘘α〝彼方＆弘760，JαpαれAbstract：IcollectedEothenomys s仇ithiin the following five habitats at the
foot of mountain−rIanges（altitude 20−148m）in Ehime and Shimane Prefectur・es，January30−February3，1979 and May3，1981，r・espeCtively：pineforest，mixtur・ed COnifer’ous forest，abandoned fields with susukigr・ass，mandarin orchard，and Slopes of mandarir）e Or’Char−d・Followir）g four・SpeCies werIe Sympatrically co11ected
：Apode刑％β 叩β￠宜0β祝β，A．αγgβ乃≠β％β，灯紘和明相川勃頗加，and こJγ0￡γ宜￠ゐ祝ぷ
tilpoides・Thelowest elevation of collecting site of E・S仇ithiandA・argenleus
islOm and40m，r・espeCtively。Itis suggested that E・S仇ithicomonly occurs
at the cultivated fields at the foot of mountainsin Shikoku，Kyushu，and Honshu，
where Microtus montebelliis absent．
筆者はスミスネズミ勘助例仰郡き 押頂崩 が四国讃岐の山麓部（標高70∼350m）に隣接 した農耕地で掃獲されることをすでに報告した （Kaneko，1979）。その後，筆者は同様な調 査を四国愛媛県東部地域の石鎚山脈山麓部と， 島根県遡摩郡温泉津町においておこない，スミ スネズミを描獲したので報告する。 稿をはじめるにあたって，島根県の調査にお いて御便宜を計って下さった，島根県庁の門脇 久志氏，大田市農業改良普及所の渡辺勤治氏・ 朝倉正氏，および貴重な未発表の資料を御教示 下さった福岡高等学校の青田博一博士に対して 深く感謝する。 調査地点および調査方法 1979年1月30日∼2月3日にかけて，愛媛県 宇摩郡土居町東入野（標高60∼148m），同郡土 居町北野高曽根（標高100m），西条市橘棚林 前神寺（標高20一∼35m），および今治市長沢（標高10∼40m）の4地点と，1981年5月3日に，
島根県遜摩郡温泉津町小浜下り谷（標高60∼70 m）の1地点で，ネズミ類の採集をおこなった （Fig・1）。ワナを設置した場所の拡大図は， 国土地理院発行の2万5千分の1の地形図を， パントグラフを用いて拡大して得た（F短。2）。 愛媛県における4地点のワナ数はそれぞれ72， 島根県における1地点のワナ数は36である。ワ ナは愛媛県の4地点では24ステ・−ショソを，島 根県では12ステ・−ションをそれぞれ定軌1ス テ1−ショソに3個のワナを設置した。ワナを設 置した棲息場所を次の12に分類した：林床にシ ダの生えたマツ林（pine for・est），マツ・ ヒノキ・スギの混合林（mixtured conifer・OuS forest）ネギ老令造林地（mature plantationsOLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
Fig．1 Maps to show fourlocalitiesin Ehime Pr・ef．（above）and onelocality in Shimane Pr・ef．（below）。The scaleis the Samein both maps as shownin below
Tbe latitude and longititude in maps are 340N and1330E（above），and350N and 1320E（below），reSpeCtively．
of Cγypわ例βγ五αJ如0ケ1五−￠α），ヒノキ若令造
林地（young plantations of Chα〝脇eqParis
Obtusa），竹林（bamboo forest），ミカン畑
（mandar・in orchards），ミカン畑斜面（slopes of mandarin orchar・ds），小潅木の生えた伐 閑地（cutover・ar・eawith scattered shrIub）， ススキ原化した休耕田（abandoned fields
withsusukigrIass，Miscanthw sinensis）， 野菜畑（vegetable fields），畦（foot paths
between paddy fields），および池の堤防斜 面（slopes of dikes）。
ワナには金属性ギロチソトラップを，エサに はカボチャ仇￠％γあ宜￡α仇0鋸血扉α種子を用いた。
Fig．2 Maps to show tr・ap Stations（ar・rOWS）
in fivelocalities”a；Iyo−doi，b： Zen5inji，C：Sekigawa，d：Nagasawa， e：Yunotsu． 結 果 Tablelに今回の採集結果を，棲息場所別に まとめた。スミスネズミ都路β常抑砂ββ刑五と舶 は，マツ林（Fig・3−α），針葉樹混合林（Fig・ 3−b），ススキ原イヒした休耕田（Fig・3一α＆ c），ミカン畑（Fig・3−d），ミカン畑斜面（Fig。 3−e）で採集された。捕獲された標高は低いと ころで今治市長沢の10mであった。同所的に採 集された小哺乳類は，愛媛県の4地点ではアカ ネズミApo（窟β刑≠ββpβC宜0β購，ヒメネズミA、 αγgβれ≠β髄g，カヤネズミ〟五■cγ07？砂g例乞わ％と伽β， およびヒミズモグラぴγ0亡γ五cん≠β ￡αね0宜dββ であり，島根県の1地点ではアカネズミであっ こ−2−
心p可Odl再串 SnqO可h串℃h〇 ︺M N ．［ 巳P 一芸﹁ 爪忘 H㌘れM hd∑ ︵Nn∽ぢ雪い u OM u m m mT ︵sn串nu両∈ 0 0 0 0 0 O T O と︸ ﹂雲﹁ 爪ぷ の卜 れm．qむh 望蒜票中空 0 0 0 0 0 H ∽心dh︸ 0 0 0 ︷ 0 0 m ∽hEOhU両E
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O M O 0 1 H OM m m H り t mm t 白日 S亘 の国 ︵一丁言下冒むZ か卜 へ．qむh ︵N むhコ一〇むhむh軋 むu再E山ぷS pud mt O u O 日日 hP d亘 の亘 ∽国 一肌 d O 寸 ○ ︵tdき亀遥心∽ のト れTM．已db d亘 ︵∽n∽○山0むds a■■屈■■需 t 卜 J 0 0 ︷ 心hn︸0むJむhh む∈可ぷ国 ︵ヤ HJd∈∽ hO hむq∈nu Sn∈むpOd亘 N一 〇 小 一 讐＝ O Nl O M O u O NT O 日計 可∑ S亘 ∽国 か卜 ︻Om．udb Omt−Ou M O N T 耳 O T T N O 1 − ︺ⅥむLOJ のnOん心︸TuOむpりLnX一∑ 0 0 T O ㌫ヂヘ雲一両E∽ の ∽ndh︺ hO hむq⊆さ︻ 聖よ．∴F u石 の一再♪示q再ぷ hO むぷ中一O hh再∈EnS．H むTqd白 ∽むぷ可p JO gむdOTS SpTむ小机 わppda 已むむ皇ムふq ∽⊂一再d︸00h ∽p︷U石J むTqd♪むuむA ∽のdh誠一呈nのnの ぶ︸更声 ∽pTUTh pむuOpudq亘 qnhqS pむhむ♪一再0∽ ぷ一一き d㌫㌻コN ▲hむAO♪nO 心u両hdpud∈JO のむaOTS ∽pら讐睾己○ むu可hdpud∑ ♪SむhOJ 00q∈再の JO ∽u〇一♪d♪u由一a むhn︸d∑ JO ∽uO膚♪d♪u再Tn餌unO恒 d∽n一qO S石L再 ∈Ou心ぷ︺○凹⋮∽国 ＊ ︵己︶ むpn♪一︸Tq ︺∽むhOJ むu石山
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
Fig。3・Studyarea andhabitats，Where Eothenomys smithiard other smallmammalswere collected． E：動血餓叩叩引血血，S：4βde′脇ぶ岬eCよ0ぶαぶ，A：A・αrタeJもfeαぶ，U：打rofrよcん那一ぬ申0よdeぶ・a
：Nagasawa，Showing plne forest，Whichis exhibited at the top of the photograph，and abandoned fields with susukigrass，Which are shownin the center and theleft side of the
Photograph・b：Nagasawa，Showing mixtured coniferous forest．c：Sekigawa，Showing abandoned field with susukigrass，Whichis the center of the photograph．The right side WhereUrotTLchLLS talpoides co＝ectedis a pine forest・d：Sekigawa，Showingmandarine
orchard．There are burrows of E．smithiand mole under straw＿matS Which are covered at the floor of the mandarine tree roots． e：Iyo−doi，Showing the slopes of mandarine OrChard．There are burrows of E．sTnithiandmoles at the slopes f：Yunotsu，Showing abandoned paddy fieldwith susukigrass and young coniferous trees・
棄耕地での採集報告は，今回がはじめてである が，吉田（私信）によれば山口県の山間の段々 状の水田のふちで採集しているという。 したがって，以上の事実から，山麓部の農耕 地におけるスミスネズミの出現の現象は，四国 において特有にみられる現象ではなくて，四国 ・九州・本州中国地方においてもー・般的に認め られる現象であると推測される。ただし，その 際，四国および島根県温泉津町（Kaneko，1979 と今回の結果），九州福岡県清水山（菅田，1970） の場合に，いずれも同所的にハタネズミ脇c州≠叙ぷ 仇07も‡βるβgJ宜 が採集されていないという点につ いては注意を払っておくべきであろう。また， これらの採集地点が，脊梁山脈に続がっており， 沖積平野を介在した山麓部ではないことも重要 である。後者の問題の試論はあるが（金子，1982） 十分な資料を掩えてから公表する予定である。 最後になったが，中国雲南省昆明市付近の野 菜畑・麦田・トウモロコシ畑に，少数ではある が，スミスネズミに近縁と考えられるウソナソ ビロウドネズミガ．肌砧汀掴 とビロウドネズミ β刑β∼αケ∽gαβ≠βγ が捕獲されているという報 告（何暁瑞，1978）があることをつけ加えてお き，興味ある共通な現象であることを指摘して おく。 引用文献 何暁瑞1978昆明地区鼠類研究．滅鼠和鼠煩 生物学研究報告（3）：125−128．．（中国語） Kaneko，Y．1979、The occurrence of
Eothenomys s仇ithiin cultivatedfields
at the foot of the SanukiRange，
Shikoku，JapanJ・Mb3m・Soc・Japan 7：268−273． 金子之史．1982．ネズミによる生物分布研究への 1つのアブロ・−チ．哺乳類科学（亜・44）：145−160． 田中 亮…1954．野鼠の個体群生態学．．三坂和 英（編），野鼠とその防除：64−110．日本学 術振興会，東京． 吉田博一・．1970．福岡県清水山の小哺乳類・1 小暗乳類の生態的分布．哺乳動物学雑誌 5：8−14． た。ヒメネズミの捕獲されたもっとも低い標高 は今治市長沢の40m（マツ林）である。 考 察 筆者（Kaneko，1979）は，スミスネズミが山 麓部の農耕地で描獲されることを四国讃岐山脈 ぞいの香川県・徳島県の計5埠点において見い 出している。同様な現象が讃岐山脈の西の延長 部である石鎚山脈の山麓部でみられたことは， この現象がさらに四国島内でも普遍的にみられ ることを示唆する。 つぎに，スミスネズミの描獲された低標高の 地点は，前報（Kaneko，1979）では香川県三豊 郡豊浜町箕浦の70mが最低であったが，今回は 今治市長沢の10mが最低の記録となった。従来 四国において￠ま，スミスネズミは約900m以上 に分布するのが普通といわれ（田中，1954）， 田中は，高知県安芸郡佐苗浜山麓におけるスミ スネズミ採集の記録は例外的低地分布であると 述べている。しかし，前報（Kaneko，1979）， および今回の報告のような棲息場所を選択して 採集をするのであれば，スミスネズミの低標高 における分布も普遍的に認められる現象である と考える。ただし，1年間同一地点（香川県箕 浦）におけるワナ数−・定で−・定した線状ワナ配 置によって描獲されるスミスネズミの個体数に は，大きな変動があるので（金子，未発表）， スミスネズミの分布調査には，適切な採集時期 を選ぶ必要がある（金子，1982）。 また，九州では，吉田（1970）によって，福 岡県清水山における畑の縁で，スミスネズミ1 頭が採集されている。吉田（私信）によれば， 「この採集地は標高50mで，谷にそって上る山 道のはしにつくられた狭い開墾畑で，この畑は 中に高さ30cm程度の段落があって2段になって おり，その段落のつけねで採集した」というこ とである。この吉田の記述は，今回の長沢（F痩 3−α），およびⅠ匂neko（1979）の香川県大 川郡引田町讃岐相生における階段状の開墾田 （Kaneko，1979のPlatel−e）の景観に一・致し ている。 さらに，中国地方におけるスミスネズミの放
