算数・ 数学 にお けるコンピュー タの活用法
数学教室 数学教室和
紀
藤
宅
後
三
雄
* 子 * ︺ ロ 要 この論文で は,算
数 。数学 にお けるコンピュータ使用法 の利点 と問題点 を考察す るため,鳥
取市 内の小 中学校 の児童生徒 にアンケー トを行 った。その結果,コ ンピュータの使われ方 とともに算数・ 数学の弱い と思われ る分野が明 らかになった。 また,算
数・ 数学への効果的な利用法 を提案 した。 は じめ に 現在,我が国で は日覚 ましい情報化の進展に対応 してい く児童生徒 の育成 とい う社会的要請か ら, 学校教育 においてコンピュータに触れ る機会 をで きるだけ多 くす ることが求 め られて きた。将来 の 情報化社会 を担 う児童生徒 に必要 な資質 を養 うために,新 学習指導要領(1)において小学校で は,平成4年
度か らコンピュータな どを教具 として活用す ることを通 じて,児
童が コンピュータに慣れ親 し む ことがで きるよう配慮 されている。中学校で は,平
成5年
度か ら「技術 。家庭科」 に「情報基礎」 とい う領域 を新たに設 けてコンピュータの役割 と機能 を理解 させ ることとしている。そして,高
等 学校 において も,平
成6年
度か らコンピュータを中心 とした「数学C」 を設 けた り,数
学や理科で もコンピュータの基本的な内容 を取 り入れて行 く等,コ
ンピュータ教育 は積極的に行われて行 く予 定である。 算数・数学 は他の教科 に比べ,コ
ンピュータを使 うことがで きる分野が多 く見 られ る。問題 は町町 用す る」で はな く,「活用す る」とい うことである。 コンピュータを使 った授業実践 の報告書 による と,児
童生徒が 自主的 に授業 に取 り組 み学習意欲 を増す,興
味関心 を引 く,等
プラス面 を述べてい るものが多い。その反面,そ
の興味関心 はコンピュータだけでな く算数・ 数学 に向けられているの か,
とい う疑問や ソフ ト,ハ
ー ド両面 の設備が十分でないな ど問題点 も挙 げられている。 現在,学
校で使われているソフ トは ドリル形式の ものが圧倒的に多 く,必
ず しも優 れたコンピュ ータ教育が行われているとはいえない。市販のソフ トもかな り多 く出回つているが,そ
の中か ら質 のよいソフ ト(児童生徒 の発達段階 にあっているか,そ
の授業 の目標が達成で きるか)を
選ぶ こと後藤和雄 。三宅紀子 :算数・数学におけるコンピュータの活用法 は困難である。 そして何 よ りも教員 のコンピュータヘの意識改革が必要である。 算数・ 数学で
,児
童生徒が苦手 としている分野でパ ソコンに親 しみなが ら楽 し く学 び,算
数・ 数 学の面 白さ,数
理的な処理 のよさに気づ くことはで きないだろうか。 この論文で は,ア
ンケー ト調査 を実施 し,そ
の集計 をもとにして,児
童生徒 の立場か ら見たパ ソ コンの効果的な活用法 を検討 してい く。1.情
報化 と教 育1. 1
ハイテク化の子 ども文化 ―情報化 。ファミコン化一 就学前の幼児や小学校低学年を対象に,知
育用おもちゃが様変わ りしている。パ ソコンや電卓以 外にも,子
供向け電子手帳や教育要素を含んだソフ トの開発が進み,コ
ンピュータやハイテク機器 は,児
童生徒にとって,身
近な存在 となっている。学校でコンピュータ教育を受ける前に,児
童 ら は,コ
ンピュータを使って絵を描いたり,メ
ッセージを送った りと,コ
ンピュータを自由自在に扱 っている。 「 ファミコン・シン ドローム」。)とい う言葉がある。 テレビゲームにのめ り込み,生
活全体 を議す ことだ。1988年に東京都が「大都市青少年のメディア とのかかわ りに関する調査」 を行 った。小中 学生の61%が
テレビゲームを「数 え切れないほどした」 と答 えた。一度 もした ことがない という児 童生徒 は, 1%に
とどま り,子
どもたちの生活 は,こ
の10年で大 き く変化 した。 ゲーム感覚 は,テ
レビ画面 にも取 り入れ られた。 フジテレビ系列の人気番組「 ウゴウゴルーガ」 は,「コンピュータグラフィックス」でつ くられた,キ
ャラクターが次々 と登場す る。デジタル感覚 や情報 を抑制 した内容で,素
早 い展開で進行 してい く。 ハイテク文化 は,雑
誌界 にまで強い影響 を与 えた。「Vジ
ャンプ」「少年ガ ンガ ン」 は,そ
の代表 的な ものだ。テ レビゲームのキャラクターが登場 し,ゲ
ームのス トー リーが,そ
のままコミック誌 で読 めるようになっている。 テレビゲーム とのメディア・ ミックス・ マガジンである。 ハイテクお もちゃやマスコ ミ文化の影響 を受け,子供 たちを取 り巻 く環境 は,情報化 と共 に,次 々 と変化 している。 この ような状況の中で,コ
ンピュータ教育 は,何
を目的 とし,ど
んな使 い方 を理 想 としているのだろうか。1.2
指導書 との対応 平成元年 に文部省が出 した指導書0に よると,算
数・数学 の基本方針 は,「情報化等の社会の変化 に対応 し,論
理的な思考力や直感力 の育成 を重視する観点」か らまとめ られてお り,こ
れを受 けて, 次のようなことが示 された。 ・様々な事象 を考察す る際 に,見
通 しをもち筋道 を立てて考 え,数
理的に処理す る能力 と態度 の 育成 を一層充実す ること ・基本的な概念及び原理・法則 の理解 と基礎的な技能の習熟 を図るとともに,そ
の過程 を通 じて, それ らを十分 に活用で きるようにし,事
象の考察 に有用であることが分か るようにすること ・ 思考の過程 を一層重視す るために,児
童生徒の発達段階 に応 じた,具
体的な操作や思考実験 な どの活動がで きるようにす る。数理的な考察処理の簡潔 さ,明
瞭 さ,的
確 さな どのよさが分か鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号
(1994) るよ うに し,算
数・ 数学 を,意
欲 的 に学 習 しよ う とす る態度 を育 て るよ う配慮 す る こ と' ・ 児童生徒 の発達段 階 に応 じ,コ
ン ピュー タ等 にかかわ る指導が,適
切 に行 わ れ る よ う配慮 す る こ と また,文
部で におかれた,調
査研究協力者会議が,教
育課程審議会 に提出 した資料(0の中で,学
習 指導における情報手段 の利用 について,次
のように述べている。 「学校教育 における学習指導の充実,
とりわ け個々の児童生徒の学力差,学
習速度,学
習スタイ ル,学
習意欲,趣
味 。関心等の個人差 に応 じるな ど,個
性 を生かす指導の充実 を図 るとともに,児
童生徒が 自ら学ぶ意欲 を育て,創
造性 を仲 ばす上で,コ
ンピュータ等の情報手段 の利用が有効であ る。」 数学 において は,コ
ンピュータ等 を効果的に活用するために,次
のように示 している。 「各領域の指導に当たっては,必
要 に応 じ,コ
ンピュータ等を効果的に活用す るように配慮する もの とする。特 に,「数量関係」において,実
験や観測 などにより,指
導 を行 う際には,こ
の ことに 配慮す る必要がある。」 数学で は,他
の教科 に比べて,よ
り多 くの内容で,コ
ンピュータ等が活用で きることか ら,す
べ ての領域 の指導 に当たって,必
要 に応 じ,コ
ンピュータ等 を効果的に活用す るよう配慮す ることを 原則 としている。 確かに,使
い方 を問わなければ,算
数・数学 は,多
くの領域 にわたって,パ
ソコンを使 うことが で きる。 ドリル形式で用いれば,計
算問題 の正誤 を判定 して くれ る。 グラフをか こうと思 えば,手
で とることは不可能な細かい点 を とり,よ
り正確 なグラフをかいて くれる。児童生徒 に とって,パ
ソコンを使 って計算問題 を解 いた り,グ
ラフをかいた りすることは,大
きな感動 を与 えるか もしれ ない。パ ソコンに興味 を示 し,主
体的 に学習 に取 り組 んでい くか もしれない。 しか し,パ
ソコンが使 えるか ら使 うので はな く,効
果的に活用で きると判断 され る場合 において, 必要 に応 じて活用 されな くて はな らない。1, 3
学校 におけるコンピュータの設置状況 新学習指導要領 を適切 に実施 してい くために,文
部省で は次の ことを計画 した14j。 ′「平成2年
度か ら6年
度 までの間 に,す
べての公立の小学校,中
学校,普
通科高等学校及 び特殊 学校 に教育用 コンピュータを計画的 に設置す る」 この計画で は, 1校
当た り,小
学校で3台
,中
学校で22台,普
通科高等学校で23台,特
殊学校で 5台を整備す ることとしてお り,総
計で約30万台のコンピュータが整備 され ることになる。 教育用 コンピュータの設置状況 は,こ の計画が開始 され る直前の平成元年の調査で は,小
学校30.9%,中
学校58.9%,高
等学校97.8%(普
通科高等学校97.0%),特
殊学校71.0%,ま
た設置台数 は それぞれ,3.1台 ,5.5台 ,29.8台
(16.0台),4.1台
となっている。公立学校全体 で見 ると,コ
ンピ ュータが設置 されていた学校 は46.1%, 1校
当た りの設置台数 は9.8台とい う状況であった。 平成4年
度の中間 まとめによると,普
及率, 1校
当た りの設置台数 はそれぞれ小学校57.7%,4.
3台,中
学校97.8%,19。2台,高
等学校99.7%,46.5台
(普通科高等学校100%,27.8台
),特
殊学校86,3%,6.5台
で公立学校全体で72.6%,15.6台
となっている。(表 1) これに対 し,プログラムが組 めるな ど,コ ンピュータについて指導がで きる教員 は,小学校5。9%,
中学校14.5%,高
校で17.6%し
かいなかった。ち4
後藤和雄・三宅紀子:算数・数学におけるコンピュータの活用法 また,本
年度か ら,中
学校で技術・ 家庭科 にコンピュータを扱 う「情報基礎」 の分野が導入 され たが,技
術 の分野で も指導がで きるのは,6.0%し
かいなかった。 学校が持 っているツフ トウェアの種類 は,平
均で小学校12,7種,中
学校で33.0種,高
校 で26.8種 となってお り,84.5%が
市販 ソフ トである。教科別で は,算
数・ 数学が最 も多 く,全
体 の23.2%を
占めている。 ここで,鳥
取市 の小学校,中
学校 のコンピュータの普及率,設
置台数 について述べてお くと,小
学校で は,28校
中3校
で普及率 は10.7%,中
学校 で は11校中8校
で72.7%, 1校
につ き22台となっ ている。 表1
コンピュータの設置状況 と1校当た りの設置台数 年度 学校 区分 元年度 (2.3.31) 2年度 (3.3.31) 3年度 (4.3.31) 4年度(中間 ま とめ) (5,3.31) 小 学 校 30.9% (3.1台) 41.0% (3.3台) 50.2% (3.8台) 57.7% (4.3台) 中 学 校 58.9 (5.5) 74.7 (8.3) 86.1 (12.8) 97.8 (19.2) 高 等 学 校 97.8 (29.8) 98.5 (35.5) 99。4 (40.6) 99.7 (46.5) 普通科高等学校 97.0 (16.0) 98.6 (20.3) 99,3 (24.0) 100.0 (27.8) 特 殊 学 校 71.0 (4.1) 77.7 (4.6) 82.1 (5,3) 86.3 (6.5) 公 立 学 校 全 体 46.1 (9.8) 56.6 (10.9) 65,6 (12.8) 72.6 (15.6) (教育委員会月報5.8)
1.4
パ ソコンの利用状況 コンピュータ教育 は,大
きく下記の2つに分 けられ る。ち 青報教育…コンピュータに限 らず広 く情報 を活用するための情報活用 能力の育成 コンピュータ教育 コンピュータ利用教育…コンピュータを利用 して教科の学習 を支援 ここでは,主
にコンピュータ利用教育 を取 り上 げてい く。 コンピュータ利用教育 は,CAIと
呼ばれている。CAIで
は,コ
ンピュータを用いることによ鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第36巻 第
1号
(1994) 5
って,こ
れまで達成で きなか った能力や技能 を高めることが重要である。黒板 とチ ョークでで きる ことや,手
の操作で十分であることにわざわざコンピュー タを用いる必要 はない。 パ ソコンを使 つた数学の学習 として,次
のような場合が考 えられる。1.ド
リル・ プラクティス様式2.シ
ミュレー ション様式3.チ
ュー トリアル様式 それぞれの特徴 と,活
用法 について,少
し詳 し く述べて見 る。1.
ドリル・ プラクテ ィス様式 ドリル形式 のプログラム は,パ
ソコン利用の中で最 も普及 し,よ
く知 られていなが ら,最
も軽視 されているものである。 このプログラムは数学 に限 らず児童生徒 にある力 を定着 させ るために,問
題 を提示 し,演
習 をさせてその技能 を習得 させてい く。 従来か ら,
ドリル として,算
数・数学で は,プ
リン ト,
ミニテス トな ど学校 によって様々な教材 が使われて きた。練習問題 をするのならわざわざパ ソコンを用いな くて も,従
来 の紙面上での操作 で充分で はないか。む しろ,紙
面上で行 うほうが能率が よいので はないか,と
も思われ る。手で書 き,憶
える過程 も必要であるし,手
先の訓練 にもなる。しか し,現
場 の教師の中には,「一斉授業 の 中で,児
童生徒一人一人 の能力 に応 じた ドリル をさせ ることは難 しい。つ まずいている児童生徒へ の個別指導に気 を配 ってい くためにもドリル型 ソフ トは効果 を発揮する」とい う意見 もある0。 ここ で,
ドリル・ プラクティスの利点 として挙 げ られ るものを書いてみる。1,
どんな簡単な もので さえ,児
童生徒 にとって はキー に触れ るとい う基本的な操作 をす る機会 を与 えている。2,個
人 の能力 に応 じたレベルか らスター トで きる。3.分
か らない問題で誤 りを何度 も繰 り返す と,ヒ
ン トを与 えて くれ るもの もある。4.グ
ラフィック,音
,さ
らにアニメーションが加わっているソフ トが多い。 これ は児童生徒 に とって魅力的な ものである。2.シ
ミュレーシ ョン様式 実際 に実験や観察 をさせ ようとす ると,手
間がかかつた り困難であるか ら模擬実験 をして理解 さ せ ようとするときに使われ るのが,こ
の方法である。 コンピュータシ ミュレー ションは,幅
広い教育 目標 を促進するために様々な学習状況で不U用され る。授業 にシ ミュレーションを取 り入れるね らい として,次
のような ことが挙 げられ る。 ・ 現象や事象の数学的な取 り扱 いが難 しい とき,順
序や時間 を変 えた りして見せ ることによ り, 学習の理解 を助 ける。 ・ 映像 は,そ
れ 自体魅力があるので,児
童生徒 の自ら学ぶ学習活動 を促す。後藤和雄・ 三宅紀子 :算数・ 数学におけるコンピュータの活用法 数学 においてシ ミュレー ションを活用する場合 は
,空
間の図形 の回転 といった操作やその結果提 示 に最適である。図形 を移動 させた り変形 させた りす る場合 も,シ
ミュレーシ ョンを用いれば,連
続的な図形の動 きをつかむ ことがで きる。確率的なぶ るまいをす る事象 を扱 うときも,変
数 を次々 と入力 してい くことで,い
ろいろな場合 を想定することがで きる。 コンピュータでの教育方法 として シ ミュレーションは最 も面 白 く,有
力である。 しか し,画
面 を 眺めるだけで授業が終わつて しまっていることが多い。 立体 でパ ソコンを用いるとき,だ
いたいの雰囲気 をつかむ とい う面で は,眺
めるだけで よいのだ が,学
習 を深 めていった り定着 させてい くには不向 きである。学習者が,い
ろい ろ条件 を変 えてみ て,そ
の結果 をみることがで きることが理想的である。 つ まり,シ
ミュレーシ ョンを取 り入れるときも,児
童生徒が試行錯誤 しなが ら,い
ろい ろな操作 をして結果の違いを理解 してい くとい う過程が必要である。3.チ
ュー トリアル様式 チュー トリアル とは,個
別指導 とか,家
庭教師 とい う意味である。説明 した り,ヒ
ン トを与 えた り,児
童生徒 と対話 をしなが ら目標 を達成で きるように指導 してい く。 「一人一人 の能力 に応 じた指導」 とい う面で は ドリル様式 よ りも効果的 といえる。 この様式の教 育 ソフ トも数多 く市販 された り,自
作 された りしている。「個別指導」といわれ る と,な
ぜか聞 こえ が良い。 しか し,チ
ュー トリアル様式 は,パ
ソコンが教師の代理 をしているわ けである。 ドリル様 式で も述べたように,コ
ンピュータは児童生徒が どのように考 え,な
ぜその結果が出たのか,な
ぜ 間違 えたのか,
とい うことまで は理解 して くれない し,教
えることは不可能である。 教師 は,コ
ンピュータよ りも高度 な判断がで きる。教師がいなが ら,な
ぜ このようなソフ トを利 用する必要があるのか。児童生徒が本 当に理解で きているか,
ということは,最
終的に教師に委ね られる。 チュー トリアル は,授
業 の導入や思考 を深める学習 には適 していない。利用法 としては,補
習や 復習が最 も多い。 ドリル様式 と同様 に,こ
の様式 は,コ
ンピュータの特性 を十分 に生かされていな ヤゝ。2.パ
ソ コ ン利 用 の 実 態2. 1
角度の学習での実践例 小学校4年
生で は,小
学校指導書B(2)に
書かれてあるように,角
の大 きさの測定 を学習す る。 児童 は,第
2学
年で直角 を学習 している。そして,第
3学
年で は,三
角形 な どの構成要素 として, 角について学習 し,角
の相等や大小 についても,直
接比較 を中心 として学習 している(1ち 第4学
年で は,こ
うした既習事項 を基 にして,角
の大 きさを回転 の大 きさとして捉 え,そ
れ を測 定す る単位 として,「度 (°)」 が用い られていることを知 らせ る。分度器 を用いて角の大 きさを測定 した り,必
要な大 きさの角 を作 つた りす ることがで きるようにす る。また, 1直
角が90°であること や, 1回
転が360°であることを知 らせ る。ただし,回
転 の向 きについては,取
り扱わない。 ここで,T小
学校 で参観 した,算
数の授業例 を紹介す る。(図1)
0
偽 偽 鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第3C巻 第1号
(1994) これ は,亀
が;犬
と猫 を連れて家に帰るという設定で, 角度 と距離 を入力 してい く。例 えば,右 に15°前へ100と入 力すると,亀の向きが15°下に偵 き,10clnの直線が引ける。 まず,紙
面上で,亀
か ら犬,猫
,家
を結びぅ と,長
さは,き
ちんと測れていても,亀
の向き きない。(図2) 入力する角度 と長 さを測 る。 (左右)を
変えたい方向に, 児童の反1応を見てい る うまく変えることがで 関係のなぃ角度を測っている児童 もいる。(図3) (図2) 亀が,2の
位置に来 たとき, と入力 しなければならない。 に口°と―入力 してしまう。 亀 の向 きを右 に回° しか し,児
童 は,左
L_後藤和雄・ 三宅紀子:算数・ 数学 におけるコンピュータの活用法 (図3) 必要なのは
,∠
の角度。児童 は,∠
の角度 を測 っている。進行方向に対 して,右,左
の指定や, なるべ く小 さい角度 を入れる,な
どの きまりをつ くっていない。 これ は,LOGOの
プログラムである。LOGOは
,マ
サチューセ ッツエ科大学 のパパー トによ つて開発 された。虫の目のように,自
己の視点か らみる,低
学年向けのプログラム言語である。 小学校低学年以下の児童 は,客
観的に,自
己を対象化 してみることが難 し く,自
己中心的である。 高学年 になると,鳥
の目か ら見 るように,上
か ら眺 めた概念で ものを見 るようになる。 この ことを考 えると,図
2で
示 した,左
右 の誤 りのわけが分かる。 小学校4年
生で は,物
事 を客観的 に見 る力が養われてお り,虫
の目のように,自
己の視点か ら見 る,低
学年向 けのソフ トを利用す ることは望 まし くない。 図3で
示 したように,必
要のない角度 を測 る児童が非常 に多かつた。その理由の1つ として,児
童たちの意識 の中に,「角度 は2直
線で構成 されているもの」とい う固定観念があ り,自
分で新 し く 線 を引いて,角
度 を作 るとい う段階 に達 していないので はないか,と
いうことが考 えられ る。 児童 は,入
力 したデータが違 うと,う
ま く線が引けない ことか ら,画
面で誤 りを見て,何
度 もや り直 している。何度 もや り直す とい う,試
行錯誤 の過程 はよいのだが,紙
面 に戻 らず,入
力す る数 字だけを変 えてい く子 もいる。角度 を測 るという根本的な操作が抜 けて しまっている。2. 2
児童生徒のパ ソコンの捉 え方 前述 したように,コ ンピュータ教育が導入 された理 由 として,情
報化社会への対応が上 げ られ る。 学校教育 を受 ける以前や学校以外の場所で,児
童生徒が,コ
ンピュータに親 しむ機会 は多い。 パ ソコン通信サー ビス大手のエフティが まとめた1998年度 の首都圏でのワープロ,パ
ソコン利用 度調査 によると,保
有世帯 は,全
体 の51.1%と,昨
年 を7.6%上
回った。家庭 内に も,着
実 に普及 し ている。 身近 な道具 となったパ ソコンを,児
童生徒 はどう捉 えているのか,ま
た,学
校 で は,ど
んな教科 でパ ソコンを活用 しているのかを調べ るため,ア
ンケー ト調査 を行 った。 これ は,鳥
取市内の小中 学校,各
5校
ずつ選び,平
成5年
10月 に実施 した ものである。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第36巻 第
1号
(1994) 9
実地校 小学校アンケー ト結果Q. 1
パソコンを知っていますか。 Q。2
パソコンに興味がありますか。 Q。3
パソコンを使ったことがありますか。 小学校名 人 数 パ ソコンの有無 a小学校 57)( ○ b小学校 61ノ( ○ C小学校 71人 ○ d小学校 54ノ災 × e小学校 33ノ( × 中学校名 人 数 パ ソコンの有無A中
学校 36ノÅ、 ○ B中学校 35ノ氏、O
C中学校 32ノÅ、 ○D中
学校 30ノ( ×E中
学校 40ノ( ○ 知 って い る 知 らない 比率(知っている) a 57人 0ノ(
1009る b 61人 0人 1000/。 C 71人 0人 1009` d 51ノに 3ノ代 95'そ 33人 0人 1000/。 合 計 273ノÅヽ 3人98%
あ る な い 比率(ある) a 47人 10メ、83%
b 57人 4メ、 949る 65メ、 6メ、 92°/。 d 25人 29ノ代、46%
24ノ代 9メ《 739る 合 計 218ノ代 58ノ入、 79ワる あ る な い 比率(ある) a 57ノ( 0メ、 100°/。 b 60ノ代、 1ノ入、 98°/O C 69ノく 1メ、 999` d 27り( 27ノ( 509る e 22ノ( 11ノÅ、 679る 合 計 235ノヘ、 40ノ氏、 85°/。 (C小学校1人無回答)10
後藤和雄・三宅紀子 :算数・数学におけるコンピュータの活用法 Q。4 3で
いいえと答えた人に質問 します。 パ ソコンを使 つてみたい と思いますか。 (40人対 象)Q.5 4で
いいえと答えた人に質問 します。 なぜラ使 ってみたいとは思わないのですか。 ・ 持 っていない 家 にないか ら26%
。難 しそうだから23%
・ 興味がないか ら15%
・ よく分か らないか ら12%
・ 楽 しくなさそう 面 白 くなさそう7%
。その他17%(複
数回答) (やや こしいか ら 意味がない いやだか ら)Q, 6
学校で,ど
んな科 目でパソコンを使いましたか。a:算
数,理
科,社
会,特
別活動,ク ラブ活動b:図
工,クラブ活動C:算
数,社
会,国
語,音
楽,図
工,クラブ活動 中学校アンケー ト結果Q.1
パ ソコンに興味があ りますか。 `よ Vゝ い い え a b 1人 0人 C 1人 0ノく d 17人 10ノ( e 6人 5メ、 合 計 25り( 15ノ聰 あ る な い 比率(ある) A 28メ、 8ノÅ、 78°/O B 28ノ( 7ノÅ、80%
C 25ノ( 7メ、 78°/。 D 22ノ\ 8ノ( 73°/。 E 36ノÅ、 4ノく 90°/。 合 計 139人 34ノ(BO%
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号
(1994)
■Q. 2
パソコンを使つたことがありますか。Q. 3 2で
パ ソコンを使 ったことがないと答えた人に質問 します。 パ ソコンを使 つてみたいと思いますか。Q.4 3で
パ ソコンを使 ってみたい と思わない人に質問 します。 どうして使 ってみたいとは思わないのですか,そ
の理由を書いて下 さい。 ・ 興味がないか ら。3人
・ おもしろそうでないか ら。1人
・ 深い意味 はなし1人
Q. 5
学校で どんな教科でパ ソコンを使 いましたか。A
技術・家庭科 数学 理科B
技術・家庭科C
技術・家庭科E
技術・家庭科 理科 クラブ活動 部活動 ア ンケー ト実施 にあたって,小
学校,中
学校 共 に, 5校
ず つ選 んだ。 中学校 に関 して は,全
部, 無作為 に選 出 したが,小
学校 に関 して は,パ
ソコ ンが導入 されてい る学校 が, 3校
と非常 に少 ない ため,残
りの2校
のみ,無
作為 に選 出 した。 ア ンケー トの結果 か ら,全
体 の約8割
の児童生徒 が,パ
ソコ ンに興 味 を持 ってい る。「 パ ソコ ンを 使 った こ とが あ るか」 とい う質 問 に対 して は,パ
ソコンが,あ
る学校 と,な
い学校 とで,か
な り大 きな差 が生 じた。パ ソコンが導入 され てい る学校 で も,わ
ずか で はあ るが,「使 つた ことが ない」と あ る な い 比率(ある) A 35人 1ノÅ、 97°/。 B 32メ、 3人91%
C 30ノ( 2メ、94%
D 9人 21ノK、43%
E 40ノ入、 0メ、 100% 合 計 146メ、 27ノ( 84°/。 はVゝ いい え ,ヒヨ径(はヤゝ) A 1ノ氏、 0ノ代 1009` B 2メ、 1ノく 50°/。 C 2人 0人 100°/。 D 18ノ代、 4ノく 819` E 合計 23ノÅ、 5メ、82%
後藤和雄・ 三宅紀子 :算数・数学におけるコンピュータの活用法 答 えている。
b小
学校, C小
学校,A中
学校,B中
学校,C中
学校 では,授
業でパ ソコンが,使
わ れているにもかかわ らず,パ
ソコンを使 った ことがない児童生徒がいる。 そして,
このような児童 生徒8人
中, 7人
が_「使 ってみたい」 と答 えている。設置台数が少ない ことが理 由の1つ と考 えら れる。いつ も,同
じ児童生徒が使 っていないか,人
が使 っているのを,見
ているだけの子がいない か,教
師の気配 りも,必
要 と思われ る。 「パ ソコンを使 いた くない」 と答 える児童生徒 もいる。 その理 由 として,最
も多いの は,小
学校 で は,「持 っていないか ら,家
にないか ら」で,中
学校で は,「興味がないか ら」 という,全
く異 な った結果が出た。中学校で は,物
質的な問題でな く,本
人 の意思表示で「使 いた くない」 と答 えて いる。このような,児
童生徒 に とって,パ
ソコンを使 った授業 は,非
常 に負担 となるので はないか, と思われ る。 「 どんな教科で,パ
ソコンを使 ったか」 とい う質問に対 して,技
術 。家庭科や理科,ク
ラプ活動 で使 つている学校 は多いが,算
数・ 数学で使 つている学校 は少ない。 算数・ 数学でパ ソコンをうま く活用 してい くためには,ど
んな使 い方が望 ましいか,算
数・ 数学 を通 じて,児
童生徒 のパ ソコン嫌いを,解
消で きないか,
ということを考 えて行 く。 このために, 算数・ 数学 とパ ソコンの関わ りについて も,ア
ンケー トを行 った。 小学校でのアンケー ト Q。1
算数が好 きですか。 好 き 嫌 い 比率(好き) a 32ノk 25メ、56%
b 25ノ(
36ノ(40%
40ノ( 31ノ(56%
d 35ノ(
19り( 64,る 14メ( 19りく 42°/。 合 計 146り( 130メ、 53°/。Q.2 1で
嫌いと答えた人に質問 します。 なぜ,算
数が嫌いなのですか。A―
難 しいか ら (単位:%)
43(36.4%) B―やや こしいか ら17(14.4%)
C一面倒 だか ら 15(12.7%)D一
分か らないか ら 15(12.7%)E―
苦手 だか ら11(9.3%)
F―その他 17(14.4%) 合計 無 回 答 118 12 算数が嫌いな理 由
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第36巻 第
1号
(1994)Q.3
あなたは,算
数で着手 なところがあ りますか。 あれば,具
体的に書 いて ください。 算数で苦手な ところA一
計算B一
文章 問題C一
単位D―
割合 (単位:%)
135(36.8%) 60(16.3%)45(12.3%)
36(9.8%)
E―
正比例・ 反比例24(6.5%)
F二面積・体積21(5,7%)
14(3.8%)
6(1.6%)
6(1.6%)
20(5。4%)
G―
図形H―
円 I一表 J一その他Q.4
今 まで学んで きた算数の内容で,分
か らないと思 うところがあ りますか。 あ る な い 比率(ある) a 44メ、 13ノК 77ワる b 49メ、 12ノ氏、80%
51メ、 19ノÅ、 739` d 40メ、 14メ、 749る 29ノК 4ノ( 87°/O 合 計 213ノk 62ノ( 779る (C小学校 1人無 回答)Q.5
苦手なところやよく分からないとこうで, よく分かる10%
分か りやす くなる44%
分か らない35%
変わ らない11%
中学校でのア ンケー トQ.1
数学が好 きですか。 パ ソコンを使 うと, 分かると思いますか。 計 好 き きらい 比率(好き) A 9人 27ノÅ、25%
B 15メ、 20ノく 42ワ ` C 16ノ八ヽ 13人 509` D 8メ、 22ノ( 269` E 23ノ氏、 17メ、57%
合 計 71ノ氏、 99メ、 41°/。 (C中 学校3人
がどちらでもないと回答)14
後藤和雄 。三宅紀子 :算数・ 数学 におけるコンピュータの活用法Q.2 1で
数学がきらいと答えた人に質問 します。 なぜ数学が嫌いなのか,そ
の理由を書いて下さい。A一
難 しいか ら (単位:%)
30(30.3%)B一
苦手 だか ら 15(15,2%) C一分 か らないか ら12(12.1%)
D一面倒 だか ら8(8.1%)
E―やや こしいか ら6(6.1%)
F一嫌 いな もの は嫌 い4(4.0%)
G―
その他 24(24.2%)Q.3
あなたは数学で苦手なところがありますか。あれば具体的に書いて下 さい。′卜学校で習った分野で もか まいません。A―
図形 (単位:%)
81(34.8%) B―関数 56(24.0%) C―計算 30(12.9%)D一
方程式 26(11.2%)E一
文章 問題13(5.6%)
F―その他 27(11.6%)Q.4
今 までに学んできた数学の内容で,よ く分か らなかった と思 うところがあ りますか。 数学 が嫌 いな理 由 数学で苦手 な分野 あ る な い 比率(ある) A 32メ、 3ノ氏、 88°/。 B 33ノく 2人94%
C 30ノ( 2人 969` D 27ノ代 3人 909る E 30メ、 10ノ( 75°/。 合 計 162メ、 20ノ入(93%
(A中学校1人
無回答)鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第36巻 第
1号
(1994) 15
Q. 5
苦手なところやよく分からなかったところでパソコンを使うとよく分かると思いますか。 よ くサ争か る 分 か りやす くな る 変 わ らない 分 か らない 11°/。 31°/O 32°/O 259` (1人無回答) 算数が好 きと答 えた児童 は全体 の53%,数
学が好 きと答 えた生徒 は41%だ
った。中学校 のアンケ ー ト結果か らは,「前 は好 きだった」「好 きだったのに,嫌
いになった」 とい う意見 も見 られ る。 ど こかでつ まずいた り,苦
手意識 を持 っている生徒が小学生 に比べて多い。 小学校で算数が嫌い と答 えた児童の うち,半
数以上の子が計算 を苦手 としてお り,そ
れが直接, 算数嫌いの理由 となっている。中学校 に入 って も,分
数・ 小数計算 を苦手 としている生徒 はかな り 多い。 これ は,小
学校でや り残 した基本的な計算問題が理解で きないままになっていることが,原
因であると思われ る。 正比例,反
比例,関
数な ど,グ
ラフを苦手 とす る児童生徒 は,小
中学校 どち らにも多い。「パ ソコ ンを2次
関数で使 ってほしい」「パ ソコンでグラフをかけば,分
か りやすいので はないか」とい う意 見 も書かれてあった。 算数・数学が嫌い と答 えた生徒 の中には,「パ ソコンを使 つて授業 をすればよ く分かるのではない か」 あるいは「分か りやす くなるので はないか」 とい う期待感 を持 っている生徒がいる反面,パ
ソ コンを使 って も「今 まで と変わ らない」「分か らない」「 ます ます分か らな くなる」 と考 えている生 徒 もいる。パ ソコンが導入 されていないD中
学校で は,パ
ソコンを使 った ことがない生徒 とパ ソコ ンに興味 を持たない生徒の割合が他校 に比べて多い。児童生徒 に とって,パ
ソコンに触れ る機会 は, 学校が主流 となっていることが考 えられ る。 図形 を苦手 としている生徒が多い。 これ は,証
明問題 (合同,相
似)や
円,立
体 の体積や表面積 を求 める問題 も含 んでいる。 これ らの問題 は,じ
っ くり考 えて結論 を導 き出 した り,頭
の中で立体 を組 み立 てた り展開 した りとい う想像力や思考力 を必要 とす る。図形 は,想
像力があるか,な
いか で,差
がひ らく分野である。 自分で実際 に,立
体 を作 つた り,切
断 した りとい う,手
を使 った操作 が重視 される。 応用問題や文章問題が苦手 と答 える生徒が多かつた。中で も,時
間,距
離,速
度 の関係 を理解 し づ らい とい う意見が圧倒的に多い。文章 を読 み取 つてそれを式 に変 えて解答 を導 くとい う操作 は中 学校で学ぶ数学 の内容 のうちで は難 しい部類 に入 る。動 きのあるものは余計 に検討 しづ らいのか。 あるい は,公
式が うま く使 えないのか,と
考 えられ る。 「今 までに,学
んだ算数・ 数学 の中でぅ分か らない所があるか」 とい う質問に対 して,小
学校で は77%,中
学校で は93%の
児童生徒があると答 えた。また,算
数が好 きと答 えた児童の中で,「分か後藤和雄・ 三宅紀子 :算数・数学 におけるコンピュータの活用法 らない と思 う所があるけれ ども
,好
き」と答 えているのは,146人
中96人,これが,中
学生 になると, 162人中56人になる。 参観 した授業や,実
施 したアンケー トの結果か ら,授
業でパ ソコンを取 り入れ る上で,次
の こと に留意 しなければいけない。 ・ パ ソコンが児童生徒 の発達段階 に応 じ,理
解 を助 ける存在であること。 ・ 試行錯誤で きる内容 を取 り入れ,思
考力,創
造力 を養 うこと。 ・ パ ソコンに興味 を持 たない児童生徒 もいることか ら,パ
ソコンを使 うことが,負
担 と感 じない よう, 1人
ひ とりに適切 な指導 を行 うこと。 。あらゆる分野でパ ソコンを利用す るのではな く,パ
ソコンを使 うことが効果的 と思われ る分野 で活用す ること。3.パ
ソ コ ンの 効 果 的 な使 い方3. 1
苦手分野での利用 を考 える アンケー トの結果か ら,小
学校で は計算,中
学校で は図形,を
苦手 としている児童生徒が多い こ とが分かった。そこで,児
童生徒が,苦
手 としている分野で,パ
ソコンを使 い,理
解度 を高 めるこ とがで きないか,と
い うことを考 えた。 小学校 では,小
数や分数な どの計算 を苦手 としてい る児童が多いが,こ
のような計算でパ ソコン を用いることは,望
まし くない。例 え,使
った として も,ほ
とん どの場合が ドリル形式である。パ ソコンは,解
の正誤 を判定す るだけである。中学校 の方程式や囚数分解で使 って も同 じである。児 童生徒が,ど
こでつ まずいているのか,な
ぜ間違 えたのか,
ということまで は,分
か らない。考 え 方の間違 いを修正す る指導が,個
々 にで きない。手で計算することが困難 と思われ るほ どの,膨
大 な量 の計算であれば,パ
ソコンは,威
力 を発揮す る。 しか し,小
学校,中
学校 で学ぶ,基
本的な計 算の解 き方 と理解 は,紙
と鉛筆で十分である。 ドリル様式でパ ソコンを用いるとして も,一
度,紙
面上で計算 して,出
て きた解 を入力す るであろう。わざわざ解 をパ ソコンに入力す る必要 はない。 正比例,反
'ヒ 例,関
数 を苦手 とす る児童生徒 は多い。(7)に
よれば,「関数 を苦手 とす る原因 と して,考
えられ るのは,グ
ラフが,紙
の上 に書かれた形式的な ものであ り,関
数本来 の,動
的イメ ージが表現 されていない」 とい うことである。「何かを入れると,そ
れに対応 して何かが出て くる」 とい う関数の根本のイメージが確立 されないまま,代
入,傾
き,切
片 といった言葉が使われている。 グラフを書 くうえで も,ど
んなグラフが書 けるのか, とい うことをイメージしない うちに,グ
ラフ の書 き方 を,た
たき込 まれている。 空間図形の展開,組
み立て,切
断や回転 といった操作 もパ ソコンを使 うと,効
果的 と思われ る。 このような操作 は,従
来 の模型や教具で は,非
常 に困難である。立体 を平面図で表現 し,児
童生徒 に提示 して も,イ
メージしづ らい。 また,自
分で,実
際 に箱の展開図 を書いてみた り,組
み立てた りした経験 のない,児
童生徒 もい ると思われ る。図形 を苦手 とす る,児
童生徒が,多
い理 由の一つ に,子
供 たちの遊 びの変化が挙 げ られ るが,それ以上 に,「二次元 の ものを,二
次元で表現 して きた」 ということに,問
題があるので はなか ろうか。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号
(1994) 17
多 くの児童生徒が,苦
手 とす る,グ
ラフ と図形で,パ
ソコンをどのように活用 していけばよいか, 検討 してい く。3. 2
グラフでの活用法 比例 。反比例 は,第
6学
年で取 り扱われている。小学校指導書 によると,第
6学
年で は,
これ ま でに,学
習 して きた数量関係 についての見方 をまとめる という立場で,特
に,比
例関係 にある数量 を中心 に考慮 し,関
数 の考 え方 を,一
層伸 ばす ことを,ね
らい としている。 児童生徒が,比
例・反比例,関
数 を苦手 とす る理 由の一つに,前
述 した とお り,「何か を入れ る と, それに対応 して,何
かが出て くる。」とい う,関
数 の根本 のイメージが,確
立 されない,
とい うこと が挙 げ られる。 対応 してい る値 の比 に,着
目す ることは,関
数 とい う立場か ら見て,二
つの数量が,比
例関係 に あるか どうかを調べた り,式
で表 した りするうえで も,有
効である。 比例 の関係 を表すグラフは,原
点 を通 る直線 として,表
され る。 これ は,比
例 の関係 を,見
分 け た りす るときに用い られ る,重
要な性質である。 反比例 は,比
例 の場合 と違 って,双
曲線 にな り,児
童が正確 にか くことは,難
しい。反比例 の関 係 を満 たす点 を,い
くつか とって も,紙
面上で とれ る点 には,限
りがある。図4,図
5のような, グラフをか く児童 もでて くると思われ る。 関数本来の,「対応」とい うイメージを定着 させ るために,ブ
ラックボ ックスが適 している と思わ れる。 あ らか じめ,学
習す る関数 を,プ
ログラム しておいて,Xの
値 を入力す ると,そ
れに対応 す るyっ
値が出力 される。児童が入れてみたい数 は,ど
んな数 (小数,分
数,負
の数)で
も,設
定す ることがで きる。 しか し,対
応 というイメージ化 な しで,い
きな リパ ソコンでプラックボックスを 用いて も,何
をしているのか,理
解で きない児童がでて くると思われ る。パ ソコンを使 う前 に,い
くつか,数
を提示 して,各
自で,計
算 させてか ら,「対応 の定着」とい う形で活用す ることが望 まし Vゝ。y=mx,y=暑
(図4, 5, 6)の
グラフを,パ
ソコンを使 ってか くときの,最
大 の魅力 は,m
の値 を大 きくした り,限
りな く0に近づ けた りす ることがで きることである。 また,細
かい点 を と り,よ
り正確 なグラフをか くことがで きる。同 じ画面上 に,い
くつ ものグラフがかけ,グ
ラフの特 徴 をつかんだ り,規
則性 を見つけた りす ることは,グ
ラフの概観 をつかむための,重
要 な過程 とな る。後藤和雄・三宅紀子:算数・数学におけるコンピュータの活用法 (図4) (図3)
帷中
一⋮
⋮一
子︰
一〓
≡一
i
ユ一
¨〓
・〒
⋮≡
T︰
一一,
■
工■
, 二
・・
〓一
・・・・
キ ・
︰一
”・・︰
・・T
・・・,
一・・・・﹁
・工
・・・〓
工 一・
・,一
︰,
一〓
・・・一
・一 i . . . ゃ・一
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号
(1994) 19
3. 3
空間図形での活用法 空間図形 に限 らず,図
形問題 となると,式
の計算や方程式 に比べて,直
感 にたよる部分が大 きい。 そのため,図
形 とい うだけで,苦
手意識 をもつ児童生徒が,少
な くない と思われ る。 空間図形 は,頭
の中に,立
体 のイメージが,わ
く生徒 とわかない生徒 に分かれ,差
のつ く分野で ある。空間図形の指導 を,黒
板 とチ ョークで行 うことは,教
師 に とって も,教
えに くく,児
童生徒 に とって も,考
えに くい。 そこで,パ
ソコンを使 つて,立
体 の見 えない部分 を見せた り,回
転 させた りして,い
ろい ろな角 度か ら考 えてい こう, とい うわ けである。 しか し,児
童生徒が 自分で,実
際 に,立
体 を組み立てた り,展
開 した り,切
断 した り,
といった 経験 な しで,い
きな り,パ
ソコンの画面 を見せて も,「実際の立体 と,画
面の中の立体 は,全
く別の ものである」 と,提
える児童生徒がでて くるだろう。 児童生徒が,空
間図形での思考力 を高めるために,自
分 の手 を動か して,立
体 の概念 をつかむこ とが必要である。例 えば, ・ 方眼紙 を利用 して,立
体 をつ くる 。実際に,立
体 を切断す る 。一つの立体 を,い
ろい ろな角度か ら見て,図
に表 してみる このような,作
業 を通 じて,児
童生徒 に,考
える時間を十分 に与 えることが,大
切である。例 えば, 家庭科の調理実習の時間に,大
根やエ ンジン,豆
腐な どを包丁で切 った とき,切
り回はどうなって いるか,な
ど,数
学の学習 も踏 まえて進 めてい くと,お
もしろい し,後
で食べ られて,む
だにな ら ない。 中学校1年
で,「平面図形 を回転 させ ると,回
転体がで きる」 とい うことを,学
習す る。我々 は, ただ,長
方形や三角形 を見せ られ,教
師がその図形 を,一
回転 させ,「円柱がで きました」「円錐が で きました」 といった,授
業 を受 けたので はなか ろうか。実際 に,平
面図形 を回転 させて も,立
体 が形 として残 らないため,ど
んな立体がで きるか は,想
像力 に委ねることになる。 そ こで,棒
に長方形や三角形 をはりつけ,棒
を くる くると回 してみる。残像効果で,平
面図形が 回転す るとどうなるか,目
で実際の ものを見て,頭
の中に立体 のイメージをうえつけてお く。 その後で,パ
ソコンを使 つて,回
転体 をか くと,平
面図形が,実
際 に回転 して,回
転体がで きて い く過程 を見 ることがで きる。 生徒 に,平
面図形か ら,
どんな立体がで きるかを想像 させた後で,確
認 として,パ
ソコンを使 っ て,回
転体がで きる過程 を提示す ると,理
解度が高 まると思われ る。 「立体 の切 り口」 を学習す る ときも,パ
ソコンを使 うと,効
果的であると思 う。立方体 を切断す るとき, 3点
での切断 は,士ヒ較的考 えやすいが, 4点
, 5点
,そ
れ以上 となると,頭
を抱 えて しま う。勿論,自
分で立方体 を作 り,実
際に切 ってみる,
とい う手作業 も必要である。パ ソコンを使 っ て,立
方体 の切断面が,ど
んな図形 になっているかを確認 した り,自
分で好 きな点 を選 び,切
断 し て,表
示 された断面図 を見 ることによって,思
考力,想
像力 を高 めてい くことがで きる。 しか し,パ
ソコンの画面 にでて くる立体 は,
どんなに立体的 に見 えて も,二
次元 の物体 を,二
次 元 に表 した ものである。車 の設計 をする ときな どは,立
体 を画面 に表 し,い
ろいろな角度か ら見て, イメージをつかむ,
とい う使 い方が されているが,最
終的には,実
物 を見 なければな らない。パ ソ コンを使 って空間図形のイメージを捉 えるときも,常
に実物 と照 らし合 わせ る,と
い う過程 を抜 き20
後藤和雄・三宅紀子 :算数 ,数 学におけるコンピュータの活用法 に して,授
業 を進 めて はな らない と思 う。4.最
後 に パ ソコンは,児
童生徒が,今
まで気づかなかった ことを気づかせた り,自
分で予想 した ことを確 認 した り,解
けなかった問題が解 けるようになるための道具である。決 して,単
なる興味づ けのた めの箱であった り,正
誤 を判定す る ドリルであった りしてはな らない。 一つの画面の中に,何
本 ものグラフをかいて,そ
の画面か ら,共
通点 を読 み取 つた り,実
験する ことが不可能な確率の分野で,シ
ミュレーションを使 って,実
際 に提示す ることによって,数
学的 な考 え方や数学 に大切 な概念 を,学
んでい くことが,算
数・ 数学 におけるパ ソコンの役割である, と考 える。 コンピュータは,今
日の産業や,日
常生活のあ らゆる分野で活用 され,我
々の 日常生活 の中にも 浸透 している。 このような情報化時代 をむか え,教
育 において も,「情報化への対応」とい うことが取 り上 げられ, 教育 システム も,そ
れに向けて,改
善 され る必要がある。 情報化社会 は,今
後 も,い
やお うな しに発展 してい く。 この情報化社会 に対応で きる人 とで きな い人 の間 には,大
きな差が生 じる。 しか し,学
校教育 においてのコンピュータ教育 は,使
い方 を完全 にマスター した り,プ
ログラム が組 めるようにした りす る段階 まで,も
ってい く必要 はない。 コンピュータの使 い方 を,学
校 で学 んでいない人 の中で も,コ
ンピュータに対 して,興
味 を持 っている人 たちや,コ
ンピュータを使 う ことを,必
要 としている人 たちは,状
況 に応 じて,コ
ンピュータを上手 く活用 している。 学校 でコンピュータ教育 を進 めてい く上で,日
標 とすることは,コ
ンピュータに対 するアレルギ ー,恐
怖心 を取 り除 き,児
童生徒が,コ
ンピュータの性質 と利便性 を学ぶ ことである。 教育 は,常
に,「社会か らの要請」に応 えてい く。情報化社会への対応 にして も,偏
差値輪切 り状 態の改善 にして も,社
会が要求す る人間を養成す るために行われている。学習指導要領 の改訂 に伴 い,「新 しい学力観」「自ら学ぶ子 どもを育てる」 という言葉が,教
育 のキーワー ドとして,用
い ら れている。知識詰 め込み型 の教育か ら,主
体的体験的教育への変革である。 今 までの知識詰 め込 み型 の教育 は,「すばらしい労働者の育成」とい う社会的要請 に見事 に応 えて きた。小学校,中
学校時代 に,言
われた通 り,物
事 をこな して きた人 たちだ。言われた通 りに,で
きなかった子 どもには,残
りの人生 の どこかで,頑
張 らな くては,「すば らしい労働者」に追 いつ く ことがで きない,と
い うハ ンデイーが回って きた。 「 この教育 は,高
等学校,大
学,そ
して,社
会人 になって も,影
響 を及 ぼす。 きれいな解 き方 を, 誰かに教 えて もらうことが学問だ,と 信 じきつている。自分で考 えるとい うことを知 らない」 “ち「 自 ら学ぶ子 どもを育てる」で はな く,「どうい う大人 に育てるか」が問題である。 「新 しい学力観」では,こ
れ までのペーパーテス トによる,画
一的な評価 をやめて,「意欲,興
味 。 関心」 も学力 と考 え,点
数化 されている。問題解決 に取 り組 む姿勢 として,「意欲,興
味・関心」 も 大切 な評価か もしれない。 しか し,も
っ と大切 な ことは,「努力 した過程」である。 子 どもの興味・ 関心のあることをさせて,「自ら学ぶ」姿勢へ もってい こうとしている。確かに, 子 どものや りたい ことをや らせ る時間 も必要だ。創造性や可能性 を伸 ば してい く。 しか し,児
童生鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第186巻 第 1,号
Cl"4) 21
徒が,そ
こから学ぶこ―とは,「努力する」 ことではなかろうか。児童生徒が,興
味・関心 を持 ってい ることだけでなく,も
っと広い範囲の中で,「努力する才能」を育てなければいけないのではなか ろ)か
。「―
どうい
,大
人に育てるか」
「努力する才能を育てる」ということが
,教
育の
1日標であると考える。
参考文献
は)小
学校指導書 算数編,文
部省子平成元年 121 現代用語の基礎知識1994.自 由国民社0)数
学科のキーワー ド コンピュータ等を活用した指導,正
田 賃=明
治1図書,1989 に)教
育委員会月報,5.B.,第■法規出版― (5)山陰中央新報,1993.10.91 に)学
校貌育とコンピュータ,赤
堀且司ュ日本放送出版協会―ィ1993 ●)教
育科学,数
学教育,つ 3.`月号手明治図書イ(3)1日経ビジネス1993年12月 o日i― 特集「技術大国の不安」o.13,日 経