1-007 土木学会中部支部研究発表会 (2017.3)
地震発災後の初動点検時に用いる損傷度判定基準策定を目指した
根巻きコンクリートを有する矩形断面銅製橋脚の繰り返し載荷実験
愛知工業大学 学生会員
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鈴木洋平 愛知工業大学 正会員 嶋口儀之
愛知工業大学 正会員 鈴木森晶 愛知工業大学 正会員 宗 本 理
1
目的
道路橋示方書 ・耐震 設 計編の耐震性能の定義として“地震を受けた橋の性能“とある.また現行の道示で
は こ の 耐 震 性 能 を 耐 震 性 能 1,2, 3と 3段階に分けて定義しており,さらにそれぞれに安全性,供用性,修復
性についても触れられている 1)
しかし,耐震性 能 1,2, 3や安全性,供用性,修復性については非常に暖味な定義となっている.例えば耐
震 性 能3は“地震による損傷が致命的とならない性能"と定義づけられており,各事業者や地域により解釈が
異なることがある.さらに実際に地震動を受けた橋脚から耐震性能を特定するための指針が策定されていな
いことが現状である.
そこで本論文は簡便な手法で橋脚の耐震性能(損傷度)を推定する方法を目的として矩形断面構成橋脚の繰
り返し載荷実験を行し、損傷状態の整理を行う.
2
.
実験概要
実験供試体は実物橋脚の約1/3スケールで、再現した
単柱式矩形断面銅製橋脚である.なお,今回参考にし
た橋脚は昭和 49年に竣工され,後に平成 8年の道路
橋示方書の改訂後に耐震補強されたものである.補強
載荷方向 橋軸 橋軸直角
無補強部 │補強部 無補強部 │補強部
幅厚比パラメータ RR 0.398 0.530
幅厚比パラメータ RF 0.580 0.526
細長比パラメータ λ 0.358 0.311
軸力比 P/Py 0.078
降伏水平荷重 Hy (kN) 413 380
降伏水平変位 oy (mm) 20.7 16.5
方法は中詰めコンクリートの追加充填および縦リブ補強
である 2) 次に載荷方法は上部工重量である一定の鉛直
荷重を与え,地震時の上部構造の慣性力を想定した水
平繰り返し載荷を行った.載荷パターンは降伏水平変
位 1Oyを基準にした漸増繰り返し載荷と 4Oy繰り返し
載荷である.
表
-
1
供試体諸元
3
実験結果
× 載荷点
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縦補剛材補強部
コンクリート充填部
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供試体概要因
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図
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供試体断面図
漸増繰り返し載荷実験で得られた水平荷重水平変位の履歴曲線を図 3に示す.また 4oy繰り返し載荷実験
から得られた,各サイクルにおける水平荷重の包絡線を図-4に示す.なお,図-3および図 4の縦軸は降伏水平荷
重Hyで無次元化した水平荷重,横軸は降伏水平変位δyで無次元化した水平変位および載荷サイクルである.図
-3より-5.5δyのときに基部に亀裂が発生し急激な荷重の低下が見られた.図 4より 10回目の 4δy載荷時に 25%の
荷重の低下が確認でき 11回目の載荷時に基部に亀裂が発生し破壊に至った.
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土木学会中部支部研究発表会 (2017.3)
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載荷サイクル 円円
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水平荷重一載荷サイクル
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根 巻 き コ ン ク リ ー ト と 損 傷 に つ い て の 考 察
根巻きコンク リートと橋脚フランジ面に発生した隙間の進行状 況を
図 5に示す.なお図 5の隙間は載荷時の引張面天端に発生した隙間で
ある.図から漸増繰り返し載荷実験をした供試体で、は水平変位の増加と
ともに隙聞が大きく増加することがわかる.一方で4ay繰り返し載荷
実験の供試体では増加がゆるやかである.図 6には載荷点の残留水平
変位の値と除荷時における根巻きコンク リー トの圧縮面と引張面の隙
聞を合計した値を示す.図 6より根巻きコンク リートと橋脚フランジ
面の隙聞から橋脚が受けた地震動による変位の履歴を推定することが
4
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写真一
1
天 端 の 隙 間
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ーー・除荷時
ー ー載荷時
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載荷サイクル
(a)漸増繰り返し載荷
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繰り返し載荷
図
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根巻きコンクリートと橋脚パネル面の隙間の増加傾向
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根巻きコンクリートの隙間と残留水平変位の関係
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謝辞
本研究は一般社団法人日本鉄鋼連盟の研究助成 (鋼構造研究・教育助成事業),一般社団法人名古屋高速道路協
会の助成および愛知工業大学耐震実験センター研究経費を使用し愛知工業大学耐震実験センターにおいて実施し
た.ここに感謝の意を表す.
参考文献
1) (社)日本道路協会 .道路橋示方書 ・同解説 V耐震設計編,2014. 3.
2) 名古屋高速道路公社:名古屋高速道路耐震補強工事誌,2007. 8.
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