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わが国における工業の立地動向-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

研究ノ『ト

わが国における工業の立地動向*

徳 岡 一 幸

I 都市化と工業化 都市化の進展に対して,工業化は密接な関係を有していた。欧米における都市化は, 産業革命による工業化社会への移行を契機として始まった。わが国民おいても,昭和 30年代にみられた東京,大阪など,いわゆる大都市への人口集中の背後に工業化の進 展があった。このような都市化と士業化の相互依存関係は,両者の引き金となる基本 的要因が,生彦における比較優位性の存在にあることに起因する。 しかし,これらの過程の進行の継続性は,そこに需要側の条件が加わることで初め て可能となる。すなわち,内部市場の拡大であり,それは,乗数過程を通して需要を 創出し,都市化と工業化の進展を支える。 ところで,内部市場の拡大とL、う需要側の条件は,見方を変えるならば r都市化の 経済」の発現に他ならなし、。そして r都市化の経済」が発揮されればされるほど都市 の産業構造は多様化し,全体としては第

3

次的産業への比重を高めることになる。 このような都市の産業構造の変化は,産業の立地パターンの変化の結果としてもた らされるものである。都市化の進展は,都市の有する立地条件を変化させる。そのー *本稿は, 日本交通政策研究会「地方都市と道路」研究プロジェクトにおける研究成果の一 部をとりまとめたものである。 ( 1) J M. Levy C 7 J pp..18-21, J HeilbrunC 2 J pp 10-13を参照。 (2 ) 正村公宏 C8 J 168-172ページを参照。 ( 3)

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2.. HirschC 3 J邦訳351-352ページ,および W Z.HirschC 4 J pp..22-26を参照。 ( 4)

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2.. Hirsch C 3 J邦訳352-354ページ,および W Z. Hirsch C 4 J pp 26-28を参照。 ( 5) ,都市化の経済」に関しては,山田浩之Cl5J 18-20ページを参照。

(2)

-172 第58巻 第4号 820 方で,立地パターンの変化による都市の産業構造の変化は,そこにおける都市化の進 展に影響を及ぼすことになる。この,都市化と産業構造の変化,あるいは産業の立地 パターンの変化, とのあいだにみられる相互依存関係は,都市化過程を分析するうえ での重要な研究課題である。ただし,都市をめぐる産業の立地パターンの変化を分析 するにあたっては,次のふたつの視点が存在する。 第 1の視点は,大都市圏域内というレベルでの変化をみることで,中心都市と郊外 とのあいだの産業立地の変化がとらえられなければならない。第2の視点は,全国的 なレベルでの変化をみることであり,大都市圏相互間,あるいは,大都市圏と非大都 市聞とのあいだの立地の変化がとらえられることになる。 工業の立地は,前述のように,人口集中という初期の都市化段階の進展と密接な関 係を有するものであったが,第2の視点からそのパターンの変化をみるなら,立地展 開の地域的分散化の傾向が指摘されている。その分散化とは,既存の工業集積がもっ とも大きく,人口集中の中心的地域であった大規模な大都市圏からその周辺地域, さ らにはより遠隔の地域への分散で町ある。 それでは, このような工業の立地パターンの変化は,都市化の全国的な進展とのあ いだでどのような関係を有することになるのであろうか。わが国の場合,かつての都 市化の中心であった東京,大阪大都市圏において,人口,雇用の成長の低下が明確に なりつつある一方で,これまで都市化の進展が遅れていた地域でその進展がめざまし いものとなった。第1表は,われわれがわが国の大都市圏として定義したSMEAに ついて, SMEAのなかでの雇用分布を地域別にみたものである。 1965年と 75年の2 (6) 第 lの視点から大都市圏における産業立地の変化を分析した研究成果については, A

J

Scott[14)において紹介されている。 (7) たとえば,0.Keeble [ 6 )やS.Fothergill and G.. Gudgin [ 1 )などは第2の視点から の分析と言えるであろう。 (8) 0..Keeble [6) pp. 15-21,三輪公夫 [10)を参照。 ( 9) 0.Keeble [ 6 )によれば,英国における工業の立地の分散は,London-Birminghamラ インからNorth, East Anglia, South West, Walesへの分散である。また,三輪公夫 [10)によれば,わが国の場合のそれは,関東臨海,近畿臨海から関東内陸,南東北等へ の分散となる。 (10) 山田浩之・徳岡一幸[17)を参照。 (11) SMEAの定義については山田・徳岡[16)を参照のこと。

(3)

821 わが国における工業の立地動向 -173ー 第1表 地域別SMEAの製造業における雇用日 (千人,%) 1965 1975 雇 用 製 造 業 雇 用 製 造 業 合 計 実 数 (シェア)') 合 計 実 数 (シェア)') 北 海 道 869 141 (162) 1,268 171 (13 5) (34)

c

1

7) (3 7)

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1

9) 北 東 北 374 49 (31) 473 58 02 3)

o

4) (06)

o

4) (06) 南 東 北 823 154 08 7) 1,161 207 ( 78) (3 2) (19) (3 4) (2 2) 関東内陸 849 238 (28 0) 1.067 287 (269) (33) (2 9) (3 2) (31) 関東臨海 9.024 3,101 (34 4) 11.483 3.235 (28 2) (34 8) (37 9) (339) (351)

1

陵 649 191 (29 4) 952 265 (27 8) (2 5) (2.3) (28) (2 9) 東 海 32,124 1,154 (36.9) 42254 1,451 (34.1) (21) (141) (12 6) (15 7) 近 畿 5.787 2,151 (372) 7,169 2,239 (31 2) (22 3) (26 3) (21 2) (24 3) 山 陰 173 24 03 9) 245 43 (176) (0 7) (0 3) (0 7) (0 5) 山 陽 1.391 401 (28 8) 1.934 545 (28 2) (5 4) (4 9) (57) (59) 四 国 628 138 (22 0) 878 185 (21.1) (2 4) (1 7) (2 6) (2 0) 北 九 州 1,265 275 (217) 1,648 331 (201) (4 9) (3 4) (4 9) (3 6) 南 九 州 959 161 (68) I3,306 201 (154) (3 7) (2 0) (39) (2..2) 合 計 25.916 8.176 (31 5) 330,838 9.219 (272) 000 0) (100 0) 000 0) (100 0) 〔注) 1) 国勢調査の従業地における就業人口。 2) 雇用全体に占める製造業のシェア。 なお,地域区分については第2表を参照のこと。ただし,ここでは茨城県 は関東臨海に含められている。また,近畿は,近畿内陸と近畿臨海を合わせ た地域である。 〔資料〕 国勢調査報告 時 点 聞 の 地 域 別 シ ェ ア を 比 較 す る と , 雇 用 全 体 , 製 造 業 に お け る 雇 用 の い ず れ に つ い て も 地 域 的 分 散 化 の 傾 向 を 読 み と る こ と が で き る 。 そ し て , そ の 傾 向 は , 東 京SMEA が 属 す る 関 東 臨 海 と , 大 阪SMEAが 属 す る 近 畿 の2地 域 の み が 製 造 業 に お け る 雇 用

(4)

174- 第58巻 第4号 第2長 全 国 の 雇 用 L千人,

%

)

1965 1975 雇 用 うち製造業 (シェア) 雇 用 うち製造業 (シェア〉 SMEA 25,916 8,176 (31 5) 33.838 99,219 (27 2) (54 4) (70 0) (641) (69 8) 非SMEA 21,694 3.510 (16 2) 18.923 30,987 (211) (456) (30 0) (359) (30 2) 全 国 47,610 11.686 (24 5) 52.761 130,206 (25 0) (100 0) 000 0) (1000) (100 0) 〔注シェア〕は,雇用全体に占める製造業における雇用のシェア。 下 段 ( )内は,対全国シェア。 全国は沖縄県を除く。 〔資料〕 国勢調査報告 822 のシェアを低下させたことからもわかるように,製造業においてとくに顕著で、ある。 E.S Millsらは,アメリカ合衆国での 1950年から 70年にかけての都市化過程のな かで, SMSAの製造業における雇用の対全国シェアの変化にもとづき,工業の,大規模 なSMSAから小規模な SMSAへの著しいシフトがあったことを明らかにしてい宕 以上のような工業の分布の大都市圏聞における相対的変化は,都市化の全国的な進展 と工業の分散立地とのあいだの相互関係を示唆するものと言えるであろう。 ただし,工業の分散化は,都市化の進展の範閤を越えて,地域的にはより広い範囲 に及んでいる。第2表は,わが国を SMEAと非 SMEAとに分割したときのそれぞれ の雇用をみたものである。 1965年と 75年では,雇用全体としては非 SMEAでは減少 したにもかかわらず,製造業の雇用については増加を示す。 SMEAにおける雇用全体 に占める製造業のシェアの変化と非SMEAのそれとを比較しても,非 SMEAにおけ る製造業のウエイトの高まりがわかる。工業は,大規模なSMEAから小規模な SMEA へ,さらには非SMEAへと分散しつつあるわけである。 第l表および第 2表にみられる, SMEA内の雇用全体に占める製造業のシェアの低 下からもわかるように,都市化の進展は第3次的産業中心の産業構造へのシフトを伴 (12) E. S.. MilIs and B..

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Hamilton ( 9 ) pp..44-52を参照。

(5)

823 わが国における士業の立地動向 -175-う。その一方で,大規模な大都市圏からの工業の流出は,それらの大都市圏の停滞, さらには衰退と密接に関わっているのである。われわれの問題意識は,地域的分散化 という傾向を示す工業の立地パターンの変化が,都市化の進展に対してどのような影 響を及ぼすのか, という点にある。それを理解するための糸口として,最近の工業の 立地パターンについての要因分析を行うことが本稿の目的である。 II 工業の業種別・地域別立地動向 わが国における最近の工業の立地動向を,通商産業省立地公害局による『工場立地 動向調査』をもとにみることにしよう。この調査は,製造業および電気・ガス・水道・ 熱供給業に属する企業のなかで,工場の新設または拡張(増設〕のために 1,000m2 上の用地を取得した企業について,用地の取得時点で調査するもので,1967年以降毎 年実施されている。企業が工場用地を取得してから,そこで実際に操業を開始するま でにはかなりの年数を要する。したがって,そこに現れた立地件数の大小が,ただち にその地域に対して経済的影響を及ぼすものではない。むしろ,将来の工業活動の地 域的分布を予測する指標としての意味を有すると考えることができる。 『工場立地動向調査』の報告書では,第3表のように,全国を 14地域に分割して, それぞれの地域における立地(正確には工場用地の取得であるが,以後はこれを単に 立地という〉について,新設,増設の別に件数,取得した用地の総面積ー等の総括表を 作成している。われわれは,この総括表にもとづき,製造業における工場の新設を目 的とした立地件数を被説明変数として分析を行う。 なお,業種に関しては,産業中分類による業種をもとに,第4表のように4業穏グ ループに要約する。このようなグループ化は,理論的に十分な根拠があるわけで、はな いが,基礎資料が産業中分類によることを前提として,分析の効率化を図るために採 用するものである。 (13) S Fothergill and G. Gudgin C 1

J

pp 68-72を参照。 (14) 三輪公夫ClOJ を参照。 (15) 三輪公夫ClOJ を参照。 (16) この業種の要約は三輪公夫 OlJにおいて用いられたものをそのまま採用した。

(6)

-176ー 第58巻 第4号 824 野 長 潟 梨 奈 重 知 分 覧 一 新 山 神 三 ﹂ 高 大 一 刀 一 ' ' ' ' 山 ' ' 島 ト 一 回 鳥 居 内 乱 井 白 川 良 軌 口 肱 他 州 知 町 一 秩 福 群 東 福 愛 奈 和 山 愛 長 鹿 蛾一毛掛川木#品川山田州都鼠根色町川山究院 封 一 岩 山 栃 千 石 静 京 兵 島 広 香 佐 官 口 茂 一 一 向 森 坑 坑 玉 此 阜 究 院 恥 山 鼠 風 木 駅 一 北 宅 円 宮 茨 埼 富 岐 滋 大 日 目 目 自 問 道 北 北 陸 海 陸 海 陸 海 陰 陽 国 州 州 海 東 東 馴 輔 蜘 紬 九 九 北 北 南 関 関 北 東 近 近 山 山 四 北 南 第4表 業種グノレープ一覧 地方資源型業種│食料品,繊維,木材・木製品, 窯業・土石炭品 基礎資源製業種│パノレプ・紙・紙加工品,化学, 石油製品・石炭製品,鉄鋼,非 鉄金属 雑 貨 型 業 種 │ 衣 服 ・ そ の 他 の 繊 維 製 品 , 家 具 ・ 装備品,出版・印刷, ゴム製品, なめしかわ・同製品・毛皮,そ の他の製造業 金属加工組立型業種│金属製品,一般機械器具,電気 機械器具,輸送用機械器具,精 密機械器具,武器 1970年以降の立地件数の推移を全国についてみると,第1図のようになる。第1次 オイルシヨグク後の立地件数の急激な低下と,第2次オイルショックまでの期間にお ける低迷がまず指摘される。第2次オイルショック以後,立地件数は回復の兆しがみ られるが,その傾向は緩慢であり,かつ不安定である。いずれにせよ,工業の立地動 向が,景気の各局面に対して極めて敏感に反応することに注意しなければならない。 地域別には,後述のように,南東北,関東内陸,東海の

3

地域が常に上位;を占める。

(7)

825 4,000 3,000 2,000 1,000 わが国における工業の立地動向 4噌 , 7 ヴ 〆 (件) 一 一 一 一 全 国 ( 沖 縄 県 を 除 く ) 一ーーー南東北,関東内陸,東海の 3地域の合計 ( )内は全国に占めるシェア (416) R ( 3 8 5 ) / l

¥〆

(392):

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(34 8) (333) 、....'~(380) (33 0) A U 巧 t Q d l A H V 1975 1980 (年)7 第1図 工場立地件数の推移(全国,全業種) 1970~例年

(8)

826 ー 一 一 ー 地 方 資 源 型 業 種 第4号 第58巻 一 一 一 基 礎 資 源 型 業 種 平 重 一一一金属加工組立型業種 F J f

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-178-A l l i -1 1 ; t 1 1 I l l i -、 / ハ υ 中 十 ﹄ ハ υ / 乍 t F h d ( ' y t ム 1,000 500 (年) 1980 業種別工場立地件数の推移(全国) 1970~ 例年 1975 第2図 1970

これら3地域を合わせた立地件数とその対全国シェアが同時に示されて 第l図には, いるが,いずれの時点においても

30%

から

40%

余りまでがこれらの地域への立地と なっている。 全国の立地動向を業種グ、ループ別にみると,第2図にあるように, 1979年頃までは いずれのクーループもほほ。同様のトレンドを示す。立地件数は,地方資源型と金属加工 組立型の2業種グループが3分の l以上ずつを占め,両者を合わせると全体の70%以

(9)

827 わが国における工業の立地動向 -179ー 第5-1表地域別新設工場立地件数(1970-74年〉 (件,%) 地方資源型業種 基礎資源型業種 雑 貨 型 業 種 金属加工組主型業種 メロL 北 海 道 320 (45 6) 77 cll 0) 105 05 0) 200 (28 5) 702 cl

0) (5 8) (3 9) (3 7) (3 3) (43) 北 東 北 337 (42 6) 61 (77) 167 (211) 226 (28 6) 791 clωω (61) (31) (5 9) (3 7) (4 8) 南 東 北 655 (30.6) 196 (9 2) 362 06.9) 927 (43 3) 2,140 ClOO 0) cl19) (9 9) cl28) 05 3) (131) 関東内陸 435 (22 3) 275 (141) 317 (16 3) 921 (47 3) 1,948 clω0) (7.9) (13 9) (1l2) (15 2) cl19) 関東臨海 321 (201) 281 07 6) 232 (14 5) 762 (477J l9,596 (100 0) (5 8) (142) (8 2) (12 6) (9 7) 北 陸 491 (44 8) 116 (06) 158 (14 4) 330 (301) 1,095 (100 0) (8 9) (5.8) (56) (5 5) (6 7) 東 海 840 (36 4) 295 (12 8) 326 04 1) 847 (36 7) 2,308 clω0) 05 3) (14 9) (1l5) (14 0) (14.1) 近畿内陸 340 (38 7) 136 (15 5) 149 07 0) 254 (28 9) 879 clω0) (6 2) (6 9) (5.3) (4 2) (54) 近畿臨海 254 02 6) 143 08 4) 117 (15 0) 264 (33 9) 778 (100 0) (4 6) (7 2) (41) (44) (4 8) 山 陰 116 (34 5) 23 (68) 88 (26 2) 109 (32 4) 336 cl

0) (21) (12) (31) (18) (21) 山 陽 294 (27 4) 112 00 4) 238 (22 2) 428 (39 9) l6,O72 (100 0) (5 3) (5 6) (8 4) (71) (6 5) 四 閤 255 (41 2) 54 (87) 113 (18.3) 197 (31 8) 619 (100 0) (4 6) (2 7) (4 0) (3 3) (3.8) 北 九 州 397 (32 6) 136 cl12) 292 (24 0) 391 (32 2) 1,216 (1ω0) (7 2) (6 9) (10 3) (65) (7 4) 南 九 州 449 (50.4) 80 (9 0) 169 (19 0) 193 (21 7) 891 cl

0) (8 2) (4 0) (6 0) (3 2) (5 4) 全 国 5,504 03.6) 1,985 (121) 2,833 (173) 6,049 (36 9) 16,371 (1

0) (100 0) (100 0) 000 0) (100.0) (100 0) 〔注〕 全閣は沖縄県を除く。 上となる。 80年以降になると,金属加工組立型業種クソレープが,かなり明確な増加傾 向をみせ始めたのに対して,他の3業種グループは,減少ないしは停滞傾向にあり, トレンドに業種グループ聞の格差が現れる。その結果,全立地件数の約50%が金属加 工組立型の業種グループによって占められることになった。 つぎに,分析対象期聞を, 1970年から 74年までの第l期, 75年から 79年までの第 2期,80年から84年までの第

3

期の

3

期間に区分して,それぞれの期間における立地 (17) このような,立地動向にみられる金属加工組立型の優越は,わが国における産業構造の 変化の立地展開への反映として認識されている。三輪公夫 [11)を参照。

(10)

-180- 第 58巻 第 4号 828 第5-2表地域別新設工場立地件数 (1975-79年〕 (件,%) 地方資源型業種 基礎資源裂業種 雑 貨 型 業 種 金属加工組立型業種 メ口ら、 北 海 道 216 (463) 55 cll8) 57 (12.2) 139 (29 8) 467

'

(

1

0) (8 8) (6 6) (5.4) (61) (70) 北 東 北 159 (521) 23 (7 5) 47 (54) 76 (24 9) 305 cl

ω (6 5) (2.8) (4 5) (3 3) (4 6) 南 東 北 247 (34 9) 55 (7 8) 115 (16.3) 290 (410) 707 (1

0) (100) (6 6) (10 9) (12 7) (10 7) 関東内陸 203 (23 2) 90 (10 3) 164 <18 7) 418 (478) 875 cl

0) (82) (10 8) (15.6) (18.3) (13 2) 関東臨海 171 (25 2) 127 (18 7) 95 (14 0) 286 (421) 679 (1

ω (6 9) (15 2) (9.0) (12 6) (10 2) 北 陸 105 (36 6) 36 (12 5) 47 (16 4) 99 (34 5) 287 (100 0) (4 3) (43) (4 5) (4 3) (4 3) 東 海 304 (39 3) 117 (151) 114 (14 7) 239 (30 9) 774

'

(

l

0) (12 3) (14 0) (10 8) (105) Cll.7) 近畿内陸 82 (376) 40 (18 3) 33 (151) 63 (28 9) 218 (1

0) (33) (4 8) (31) (28) (3 3) 近畿臨界 158 (35 2) 93 (20 7) 58 <12 9) 140 (31 2) 449 (1000) (6 4) (11.1) (5.5) (61) (68) 山 陰 78 (52.3)I 6 (4 0) 28 (18 8) 37 (24.8) 149 (1ω0) (3 2) (0..7) (2 7) (1 6) (2 2) 山 陽 153 (33 5) 58 (12 7) 87 (19 0) 159 (34.8) 457

1

'

(

0) (6 2) (6 9) (8.3) (7.0) (69) 四 国 129 (44 0) 37 (12 6) 65 (222) 62 (21 2) 293 (1ω0) (52) (4 4) (62) (2 7) (44) 北 九 州 230 (41 0) 62 (1L 1) 79 (141) 190 (33 9) 561 clω0) (93) (7 4) (7.5) (8 3) (8 5) 南 九 州 230 (561) 37 (90) 63 (15 4) 80 (195) 410

1

'

(

0) (9 3) (4 4) (6 0) (3 5) (62) 全 国 2,465 (37.2) 836 (12 6) 1,052 (15 9) 2,278 (34.4) 6,631 (1ωω (100..0) (100 0) (100 0) (100 0) (100 0) 〔注〕 全国は沖縄県を除く。 件数を,地域別,業種別に比較してみよう。ここでの期間区分は,前述の動向からみ れば,若干のずれが存在するが,後に行う回帰分析のためのデータの年次と合わせる ために採用した。各期間の地域別,業種グループ別の立地件数は,第5ー し 5 - 2,

5-3

表のとおりである。 全国の立地件数について,期間別の変化をみると,第l期に比べて,第2期には大 幅に件数が減少した。第

3

期には,その件数は増加するが,第

l

期と比較すれば,

53%

余りの水準にしか達していない。はじめにも述べたように,オイルショック後の立地 動向にみられる回復傾向は緩慢である。

(11)

829 わが国における工業の立地動向 -181ー 第5-3表地域別新設工場立地件数(1980-84年) 〔件,%) 地方資源型業種 基礎資源型業種 雑 貨 現 業 種 金属加工組立型業種 ム'"、 北 海 道 257 (515) 56 (11.2) 68 (136) 118 (23.6) 499 c1∞ω (11 4) (5 2) (5 2) (29) (5 7) 北 東 北 145 (27 3) 34 (6 4) 101 (19 0) 252 (47 4) 532 (1∞0) (6 4) (3D (7 8) (6 2) (61) 南 東 北 202 (19.2) 99 (9 4) 153 (14 5) 598 (56 8) 1,052 (1∞0) (8 9) (91) (11 8) (14 7) 02 1) 関東内陸 225 (164) 168 (12 2) 210 (15.3) 773 (56 2) 1,376 (1ω0) (10 0) (15 5) 06 2) (19 0) 05 8) 関東臨海 171 (18 7) 191 (20 9) 110 (12 0) 441 (48 3) 913 (11ωω (7 6) (17 7) (8 5) (10 8) (10.5) 北 陵 113 (27 2) 54 cl30) 58 (13 9) 191 (45 9) 416 (100 0) (50) (5 0) (4 5) (4 7) (4 8) 東 海 225 (23 4) 107 (111) 135 (14 0) 495 (51 5) 962 (100 0) 00.0) (9 9) (104) cl22) (11 0) 近畿内陸 71 (243) 49 (16 8) 53 (18 2) 119 (40 8) 292 (1∞0) (31) (4 5) (41) (2 9) (3 4) 近畿臨海 140 (25 2) 98 (177) 75 (135) 242 (43 6) 555 (100 0) (6 2) (91) (5.8) (5.9) (6 4) 山 陰 51 (35 2)I 8 (5.5) 29 (20 0) 57 (39 3) 145 (100 0) (23) (07) (2.2) (14) o 7) 山 陽 125 (26 9) 61 (131) 72 (15 5) 207 (44 6) 464 (1000) (5 5) (5.6) (55) (51) (5 3) 四 国 129 (31. 6) 55 cl35) 62 cl52) 162 (39 7) 408 (1ω0) (5 7) (51) (4 8) (4 0) (47) 北 九 州 195 (32 0) 66 (10 8) 97 (15 9) 252 (413) 610 (100 0) (8 6) (61) (7 5) (6 2) (7.0) 南 九 州 208 (42 8) 36 (74) 77 (158) 165 (340) 486 (1∞0) (92) (3 3) (5 9) (41) (5 6) 全 国 2,257 (25.9) 1,082 (12 4) 1.300 (14 9) 4,072 (468) 8,710 (110) 000 0) (100 0) (100.0) (100 0) (100 0) 〔注〕 全国は沖縄県を除く。 これを,業種グループ別にみると,第2期における立地件数の減少の割合がもっと も大きい業種クソレープは雑貨型で,金属加工組立型がそれに続く。これら2業種グルー フ。は,第2期の立地件数が第1期から62%余りも減少した。一方,第3期における立 地件数は,地方資源型を除けば,第2期よりも増加する。 第3期における回復傾向がもっとも著しい業種グループは金属加工組立型である が,それでも第l期の立地件数の約67%の水準にまで回復したのにすぎなし、。基礎資 源型と雑貨型の2業種グループの回復傾向は,比較的緩慢であり,第3期の立地件数 は,第1期の件数の,前者で約54%,後者では約46%の水準にとどまる。

(12)

830 第4号 第58巻 182-地域別シェアをみると,いずれの期間においても 全業種合計の立地件数について, 関東臨海がそれらに続く。以上の4 南東北,関東内陸,東海の3地域が上位を占め, その後,期を経るご 地域のなかでは,東海は第1期に最大のシェアを占めていたが, とにシェアを低下させた。反対に,関東内陸はシェアを上昇させ続けており,第2期, 第3期には最大のシェアを有することになった。関東臨海についてもシェアの上昇が みられる。南東北では,第2期にシヱアの低下があったものの,第3期には上昇して, 工業の立地は関東臨海をとり囲む周 関東内陸に次ぐシェアを占める。いずれにせよ, 東高西低型の立地展開と言えるであろう。 辺の地域を中心に展開されており, とくに商日本の各地域においては,多くの地域で,第2期において その他の地域, シェアが上昇したものの,第3期にはいると再び低下してしまう。西日本のなかで, わ シェアを一貫して増加させた地域は四国のみであった。また,関東臨海とともに, が国でもっとも工業が集積し,都市化が進んだ地域である近畿臨海の立地件数のシエ アが比較的低いことが注目される。内陸部を含め,近畿への立地の水準の低さが,東 高西低型の立地展開とし、う傾向をより強いものにしている。 このような工業立地の地域的展開の特徴からみる限りにおいては,工業の分散化は, もちろん,北 その進展の速度を緩めているようである。 オイルシヨググをはさんで, わが国の工業の既存の集積中心である地域か 南九州のような, 四国, 海道,北東北, らみれば遠隔地域といえる地域での立地のシェアの上昇からもわかるように,分散化 関東臨海とその周辺の

3

地域を合わ その一方では, は確実に進行している。しかし, せたシェアが第3期においてもっとも高くなり,また,近畿臨海のシェアについても, わが国の経済が低成長経済 オイルショック後の上昇が大きい。オイノレシヨグク以後, 企業の立地行動は慎重になった。それ その一方で,集中という 分散化を進めながらも, (18) 工業の集中といえば,関東臨海と近畿臨海を中心に,いわゆる太平洋ベルト地帯への集 中を意味していた。しかし,工業の立地動向からみた立地の集中地域は,関東臨海とその 周辺地域であり,これに近畿臨海を含めるとしても,従来認識されていた集中地域とのあ いだには地域的ずれがあることに注意しなければならない。工業立地の集中地域は,既存 の工業集積地域よりも,地域的には東へ‘ンフトしているのである。 同時に不確実性が強まるなかで, はり。 開

ω

る 展 あ 的 で 域 の 地 る の せ 地 み 立 に 時 間 J も を 向 門 傾 へと移行し, にともない,

(13)

831 わが国における工業の立地動向 -183-それは,立地の中心的地域である南東北,関東内陸における生産基盤,生活基盤の 両国にわたる立地条件の整備の結果であろう。それとともに,企業の立地行動が,将 来の低成長,不確実性に対して,危険回避的な行動としての側面を強め,それが既存 集積への求心力を高めた結果でもあるとみることができるであろう。こうして,分散 と集中という相反するふたつの力の対立のなかで,当面の工業立地は展開していくの ではないだろうか。 つぎに,業種グループごとに立地動向の地域的差異をみておこう。いずれの業種グ ループに関しても,関東臨海とその周辺地域,すなわち,南東北,関東内陸,東海が 立地展開の中心となっている。そのなかで,地方資源型は, これら4地域‘への立地の シェアがもっとも低く,立地件数の地域間格差が小さい。他の業種グループとの比較 でみるなら, この業種クーループは,むしろ,北海道や九州への立地が相対的に多し、。 また,各地域における立地件数について,その業種別シェアを比較すると,地方資源 型の占めるシェアは,立地の中心的地域である関東内陸などの4地域では低く,既存 の工業集積が小さく,士業に関しては後進的と考えられる地域ほど高くなるという傾 向も示す。 基礎資源型業種グ、ループについては,立地中心の4地域に,さらに近畿臨海を加え た地域への集中傾向がみられる。各地域における業種別のシェアによっても,これら の地域において,この業種グループの立地のウエイトが高い。一般に,資源、型の業種 は,立地が原料指向型であり,地域的に特化する傾向がある。地方資源型と基礎資源 型とのあいだの利用される原料の違いにより,前者が既存の工業集積が小さい地域に おける立地展開のなかで相対的に高いウエイトを有するのに対し,後者は,それとは 対照的な立地展開の地域的特性を有することになるわけである。 雑貨型業種グ、ループは,関東内陸などの立地の中心的地域の占めるシェアが40%台 で,地方資源型についでこれらの地域への集中度が低く,立地件数の地域間格差が比 較的小さい。ただし,期聞を経るごとに,わずかずつで、はあるが,これらの地域のシェ アは上昇している。各地域の立地件数に占める業種別シェアをみると,雑貨型のシェ アは,西日本のほうが高いという傾向を示すが,第

3

期にはその差は小さくなり,い ずれの地域においても,立地展開のなかでほぼ同じようなウエイトを有することにな

(14)

-184ー 第58巻 第4号 832 る。このような特性は,この業種が,いわゆる地方的産業

(

l

o

c

a

li

n

d

u

s

t

r

y

)

としての性 質をもっていることによるものと言えるであろう。 金属加工組立型は,立地中心の 4地域への集中がもっとも著しい業種グループであ る。第2期を別とすれば,金属加工組立型の立地件数の約57%が4地域での立地によ り占められる。各地域における立地件数の業種別シェアからも,立地中心の4地域に おける立地展開のなかで,この業種グループの有するウェイトの高さがわかる。しか も,そのウェイトは,第 3期になると一層高まり,南東北,関東内陸では全立地件数 の56%以上のシェアを占めることになる。 このように,金属加工組立型は,関東内陸などの立地の中心的地域、への集中度が高 く,したがって,中心4地域と他の地域とのあいだの地域間格差も大きい。しかし, 第3期になると 4地域への集中とL、う全体的構図は変わらないものの,北東北をは じめ,近畿臨海,四国,南九州、│という地域で,立地件数の著しい回復がみられるよう になる。近畿臨海を別にすれば,いずれも遠隔地域である。これら遠隔地のシェアの 上昇は,金属加工組立型業種グループの立地展開が,集中,分散というふたつの立地 行動のパターンの混在のうえに進んでいることを示唆する。 以上のような地域的特性を有する金属加工組立型の立地展開であるが,同時に,い ずれの地域においても,立地に占めるウエイトを確実に高めている。各地域の立地件 数の業種別のシェアのなかで, この業種グノレープのシェアは,北海道を除くと,第

3

期における上昇が顕著であり,立地中心の4地域にまでは及ばないものの, 40%以上 のシェアを有する地域が多くなる。金属加工組立型が,産業構造の変化を反映して, 立地展開のなかで主導的立場を果たしているとし、う状況が,地域的な動向においても 認められるのである。 III 工業立地の要因分析 前章における,わが国の工業立地動向に関する実態把握をふまえて,工業の立地が (19) 三輪公夫Cll

J

は,企業において生産工程の分業イヒカ漣み,部品生産部門は地方へ分散 させ,完成品の組立部門は大都市周辺に立地させる傾向がみられる,と指摘する。金属加 工組立型業種グループの立地展開における集中一分散の混在は,このような指摘に対応 する現象と言えるであろう。

(15)

833 わが国における工業の立地動向 -185-どのような要因によって説明されるのかについて検討してみよう。生産要素聞の代替 を前提とする一般的な立地理論に従うなら,企業は,与えられた価格条件のもとで, ある産出水準を達成するための費用を最小にする生産要素の組み合'わせを選択するこ とのできる地点に工場を立地させる。生産要素の価格条件や企業の費用関数は,生産 要素の供給量,交通条件,集積の経済という,企業にとっ:ては外的な要因により影響 を受ける。したがって,企業は,生産要素の利用可能性,交通の利便性,集積の経済 の享受可能性の観点から,生産に関する所与の技術的条件のもとでもっとも有利な地 域を,立地点として選択するとみることができるであろう。 そこで,本主きでは,各地域の有する工業の立地条件として,生産要素の利用可能性, 交通の利便性,集積の存在をとりあげる。そして,これらに関する条件の違いが,地 域の立地件数をどの程度説明することができるかを,回帰分析を行うことによってみ ることにする。それぞれの立地条件を表す説明変数としては,次のような変数を採用 した。 生産要素の利用可能性に関しては,各地域における労働力と土地の賦存量を用いる。 ただし,労働力は第1次産業就業人口で,土地は人口集中地区以外の可住地面積で代 表させる。生産要素に関して労働力と土地をとりあげたのは,データの利用可能性に よるが,生産要素の移動可能性という点からみれば,これらは,その賦存量;の違いに おいて,地域的な特性をよく表すと言える。 交通の利便性については,自動車交通の利便性のみをとりあげ,地域内の高速道路 のインターチェンジへの近接性と,各地域から東京までの自動車による平均所要時間 により表わす。インターチェンジへの近接性は,インターチェンジl件当たりがカバー する地域の面積で代表させる。東京への近接性をとくに問題としたのは,企業におい て管理機能と生産機能の分化が進み,前者は東京への集中が著しい, とし、う認識によ るものである。 企業の生産活動にとり外部効果として働く集積の条件は,供給側の集積を表す既存 (20) H.. 0 N ourse[13Jpp..11-15(邦訳12-16ページ〉を参照。 (21) その意味では,より正確な分析のためには,航空機,新幹線の利用可能性をも考慮する 必要がある。

(16)

-186ー 第58巻 第4号 834 の工業集積と,需要側の集積を表す人口の集積に分けられる。前者については既存の 工場総数で,後者は人口密度で代表させることにした。ところで,人口の集積は,都 市化の指標でもあり,工業立地に及ぼす都市化の影響を説明できることが期待される。 分析のなかで用いられる説明変数の名称とその内容についての詳細は以下のとおり である。

AGRI=

1

次産業就業人口(常住ベース) (千人)

LAND=

可住地面積一人口集中地区面積

(km

2 ) 地域の総面積

INTER =

一耳石

i

(km

2 /件) 当該地域に存在する高速道路のインターチェンJ (インターチェンジがまったく存在しない場合は,地域の総面積をその値と する〕

TIME=

地 域 内 の 各 県 庁 所 在 都 市 か ら 東 京 ま で の 自 動 車 に よ る 所 要 時 間 の 加 重平均(時間〉 (加重平均を算出する際のウエイトとしては,各県の面積の地域内シェアを 用いた) (28)

FIRM

=従業者

2

0

人以上の製造業事業所総数〔件〉 (29)

DENS=

人口 (人

/km

2) 可住地面積 回帰分析は,前章で示した各地域の期間別の工場立地件数を被説明変数に,上述の

(

2

2

)

国勢調査報告による。 (23) 朝日新聞社 r民力』による。 (24) 国勢調査報告による。 (25) 国勢調査報告による。 (26) 建設省『高速道路便覧~1984年による。なお,インターチェンジ数には首都高速道路と 阪神高速道路のインターチェンジは含まれていない。 (27) ただし,関東臨海についてはこの値を1とする。また,所要時間の算出は,建設省監修 『道路時刻表』第2版, 1985年,を用い,対象となる年次においてもっとも←般的と考え られるノレートを想定して行った。 なお,ノレート想定の前提となる高速道路の供用状況については,香川大学経済学部井原 健雄教授の研究室が行った高速道路の年次別展開状況に関する調査の結果を利用させて いただいた。この調査結果は, T.Ihara and H. Shishido ( 5

J

においてふれられている。 (28) 工業統計表による。 (29)人口は,国勢調査報告による。

(17)

835 わが国における工業の立地動向

187-6

変数を説明変数として行われる。なお,説明変数については,各期の最初の年次, すなわち第1期では1970年,第2期では75年,第3期では80年,における値をそれ ぞれの期の値として用いる。また,回帰式の推定は,業種グループ別に行う。期聞に 関しては,第1期については独立に行うが,第 2期と第 3期については雨期聞を統合 して推定する。これは,第1期と第2期以降とのあいだで,立地行動に大きな変化が あったと考えられることによる。 推定される回帰モデルの基本式は,説明変数,被説明変数とも対数変換を行し、,次 のような線型回帰式として示される。

U

=

so+s

fnAGRI

+

βzfnLAND

+ふんINTER

+

β.

f

n

TIME

+βsfnFIRM

+

β

6f

n

DENSr

+

ε3

(

r

は地域, d土業種グループを表す〉 第6表立地要因に関する回帰分析結果 AGRI LAND 地 方 資 源 型 1970-74

o

2823' (1385) 75-84

o

3104

o

5171 (3 104) (5 656) 基 礎 資 源 型 1970-74

o

2070 (1496) 75-84

o

4290 (5 496) 雑 貨 型 1970-74

o

8764 0.4389 (3 526) (一1585) 75-84

o

6258

o

1471 (5 033) (1424) 金属加工組立型 1970-74

o

7350 -0 3940' (2 824) (一1359) 75-84

o

4888

o

3249 (1931) (1691) 〔注〕 下段()内はt-値。 *印は,有意水準10%で有意でないもの。 たは,自由度修正済の決定係数。 INTER TIME FIRM -0 2161 02812

o

6110 (-1 793) (2 036) (3 386) -0 0579

o

1687 ( -1664) (3 789)

o

8734 (7 826)

o

1617

o

8080 (1797) (9 910)

o

3512 (1 930) -0 1744 (-4 610)

o

8149 (4 277)

o

2370

o

2149 (-2 120) (1409) DENS 定 数 項 R' -0 7299 3 9736

o

693 (-3 117)

o

2499 -2 9757

o

886 (3 045) -0 3813 -3098

o

932 (-2 635) -8 5810

o

887 -0 3875

2 3592 0.704 (一1347)

o

5891

o

781 -0.6582

o

5250

o

850 (21854) 一10697

o

675 (30) 期間を統合した場合の推定においては,両期間の変数をプーノレする方法で行ったb した がって, この場合のサンプノレ数はおとなる。

(18)

-188- 第

5

8

巻 第

4

号 836 ただし,実際の計算は,ステップワイズ方式で,逐次説明変数を追加する方法で行い, 分析にあっては,係数の{直が統計的に有意となる説明変数ができる限り多くなる段階 の回帰式を採用した。したがって,結果として得られた回帰式は,上記の基本式から いくつかの説明変数が脱落したかたちになる。 ステップワイズ方式を採用したのは,業種グゃループ聞の立地行動の違い,および, 第1期と第2期以降とのあいだの立地行動の変化を明らかにすることを意図したから である。こうして,第6表に示されるような 8本の回帰式が推定された。決定係数 の値によれば,いずれも,十分説明力のある推定結果が得られている。 説明変数では,AGRIがもっとも多くの推定式のなかに取り込まれている。説明変数 として現れなかったのは,基礎資源型の第2

3期においてのみである。係数の符号は すべてプラスであり,工業立地のうえで,労働力,それも安価な労働力の利用可能性 が,依然重要な立地条件であることがわかる。 LANDは, 6本の推定式に現れるが,第2

3期については,すべての業種グループ において説明変数として入っている。その係数の符号は,第 1期についての推定式で はマイナスであるのに対し,第2

3期の場合はいずれもプラスとなる。地価の上昇が 続くなかで,企業が安価な土地に対する選好を高めるという傾向が,すべての業種グ ループに共通して読みとることができる。 ところで,以上のふたつの生産要素に関する説明変数を比較すると,土地について の上述のような変化に対し,労働力の場合の第l期から第2

3期への変化は,地方資 源型以外はすべて,係数の値の減少として現れる。説明変数の係数は,回帰モデルの 基本式からわかるように,その変数が代表する立地条件に関する立地の弾力性である。 労働力についての弾力性の低下と土地についての蝉力性の上昇は,労働集約的な生産 技術から資本集約的な生産技術への変化を通して,生産要素の代替を強めつつあるこ とを反映していると言えるであろう。 交通条件を代表する変数では,INTERが,地方資源型において雨期間の推定式に説 明変数として取り込まれるほかは,雑貨型と金属加工組立型の第

2

3

期においてのみ 現れる。係数の符号はすべてマイナスであり,インターチェンジへの近接性が工場の 立地を促すことを示す。高速道路の立地に果たす役割の高まりを意味すると考えられ

(19)

837 (31) る。 わが国における工業の立地動向 -189-一方, TIMEに関しては,地方資源型の雨期間と,基礎資源型の第2・3期とにおい て,説明変数として入るにすぎない。東京への近接性が重視されるなら,符号はマイ ナスとなるべきであるが,反対の結果となっている。いずれにせよ,地方資源型グルー プ以外ではほとんど意味のある説明変数にはなっておらず,この変数から立地行動を 説明することは困難である。ただし,工業の立地にとって,東京に代表される管理機 能からの物理的近接性(ここでは時間距離で測られている〕は,その決定要因になら ないとは言えるかもしれない。 FIRMは,第1期にはすべての業種グ、ループで説明変数となるが,第2・3期になる と,基礎資源、型と金属加工組立型の推定式のなかにのみ現れる。係数の符号はすべて プラスであり,工業集積の立地条件としての意義が認められる。しかし,金属加工組 立型についても,第2・3期の係数の値は小さくなり,その t一値も十分に大きいとは言 えない。したがって,基礎資源型を別にすれば,工業集積の立地に対する効果は,急 速に弱まりつつある。

DENS

については,地方資源型で雨期間の推定式に入る以外は,すべて第

l

期にの み現れる。そして,第l期の推定式のなかでは,いずれの業種グループにおいても, 係数の符号はマイナスである。少なくともオイルショック以前においては,都市化の 進展は,工業の分散立地を促す役割を果たしたとみることができるであろう。 業種グ、ループごとに立地要因の変化をみると,地方資源型は,安価な生産要素の利 用可能性が立地条件としての意義を強めている。その一方で,

DENS

の係数の符号が 7イナスからプラスに転じたことからみて,市場指向型の立地傾向が現れてきている ようである。したがって,労働力と土地が安価で入手可能ならば,都市周辺に立地す ることになる。そして,その傾向は東京からみて遠隔地であるほど強くなる。 基礎資源型については,労働力の入手可能性が説明力を失い,ますます資本集約的 になってきたと言える。高速道路への近接性に代表される交通条件はまったく説明力 (31) 中村松夫・西川了一(12)は, (財〉高速道路調査会「インターチェンジ周辺地域の工場 立地パターンに関する調査報告書」の内容を紹介するなかで,高速道路が工場立地を促進 する効果をもつことを示している。

(20)

-190ー 第58巻 第 4号 838 をもたないが,これは,この業種グループがもともと臨海立地型であることによる。 既存の工業集積の立地条件としての役割はまだ大きいが,土地の入手可能性によって は,遠隔地への分散立地の可能性もある。ただし,基礎資源型が立地展開に占めるウ エイトは低く,今後はそれが一層低くなると考えられる。したがって,この業種グルー プに分散的立地傾向が強まったとしても,それにより全体としての立地の地域的動向 が変化することはないであろう。 雑貨型と金属加工組立型は,いずれも労働から資本への代替を強め,資本集約度を 高めていること,高速道路への近接性が立地条件として重要になったこと,既存の工 業集積が立地条件としての意味を失いつつあること,という共通点を有する。ただし, 資本集約化,高速道路への依存については,金属加工組立型のほうに,その傾向が強 く現れている。 安価な労働力や土地の入手可能性が十分な説明力を有すること,既存の工業集積に 対する立地の自由度の増大という回帰分析の結果は,いずれも,分散的な立地展開が 立地行動の基本的パターンとなっていることを意味する。そして,このような基本的 パターンに対して補完的に作用するのが,高速道路への近接性に代表される交通条件 である。しかも,立地展開の中心である金属加工組立型業種クゃループは,交通条件に 対する反応、がもっとも敏感である。したがって,今後交通条件が整備されていくなら, 工業の分散的立地震聞は促進されることになる。 それでは,このような基本的パターンにのって分散立地する工場は, どのような性 質を有する工場であろうか。工場の立地により,前方連関効果や後方連関効果が働き, 人口の集中を期待できるのであろうか。労働力についての立地の弾力性の低下や既存 の工業集積からの立地の自由度の増大は,分散立地するのは,部品生産部門が中心で ある,という三輪公夫(l1

J

の指摘に対応する。したがって,それは同時に,人口集中 の引き金としての効果については,多くを期待できないことを示唆するものである。 われわれは,以上の工業立地に関する要因分析を通して,分散的立地展開が,立地 行動の基本的パターンであることを確認した。そして,分散立地する工場の特徴から みれば,都市化の誘因とはなりにくいことも示唆された。ここで確認された立地の基 本的パターンが,都市化にどのような影響を与えるのか,あるいは,都市化の進展が

(21)

839 わが国における工業の立地動向 -191-この基本的パターンにどのような影響を及ぼすのか, という点については,断片的な 示唆が与えられたにすぎなし、。ただ,工業の分散的立地が,初期の都市化段階にみら れたような,ダイナミッグな都市化をもたらすことは決してあり得ない, ということ だけは言えるであろう。 参 考 文 献

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Hamilton, Ur伽1Economic,s:3rd ed, Scott, Foresman and Company, Glenview, Illinois, 1984

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J

三輪公夫 「工業の地域構造はどのように変化したか」 今井賢一・中村秀一郎編 『地 域からの産業論』 筑摩書房, 1980年,所収, 45-66ベージ。

0

1J 一一一 「構造変化と企業立地一一必要な新しい対応とその課題一一」 日本立地セン ター 『研究生F報』第10号, 1983年3月, 3-26ページ。 02J 中村松・西川了一 「インターチェンジ周辺地域の工場立地パターンに関する調査Jr高 速道路と自動車』第26巻第1考, 1983年1月, 47-51ページ。 03J H.0..Nourse, Regional Economics - A Study in the Economic Structure, Stability, and Gγ.owth of Regionsー, McGraw-Hill, 1968(笹田友三郎訳 『地域経済学一一地 域の経済構造・安定および成長の研究一一ー』 好学社, 1971年).

04J A.J Scott

Locational Pattems and Dynamics of lndustrial Activity in the Modem Metropolis,"Urban Studies, VoL 19, No 2, 1982, pp..1l1-142

05J 山閏浩之 『都市の経済分析』 東洋経済新報社, 1980年。

(22)

-192ー 第58巻 第4号 840 における大都市圏の分析(2)一 一J I経済論叢』第132巻第3・4号, 1983年9・10月, 145-173ベ}ジ。 (17) 一一一・一一一ー 「戦後の日本における都市化の分析一一「標準大都市雇用圏」による アプローチ一一ーJ 地域学研究』 第14巻, 1984年12月, 199ー217ページ。 本稿脱稿後に,次の関連論文が公表された。わが国の工業立地の動向を知るうえで,当 然参照されるべき論文である。

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1

8J三輪公夫「都市と工業立地に関するマクロ的観察ノートJ I地域学研究,J第15巻, 1985 年12月, 31-47ページ。

参照

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