交換の貨幣的均衡への一考察-香川大学学術情報リポジトリ

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交換の貨幣的均衡への一考察1)

金 森 恒 利 Ⅰ.はしがき。ⅠⅠ.実物交換経済。ⅠⅠⅠ.貨幣交換経済。ⅠVl■ 貨 幣・信用交換経済。Ⅴ結び。 Ⅰ 貨幣が交換経済においていかなる役割を演ずるか,その中立性またほ.非中立 性をめぐって−,あるいほ貨幣の作用径路または作用根拠について,これまで多 くの論議がなされて−きた。ことに.,ラングに.始まりパティンキンによって完成 されたといわれる,いわゆる古典派の「2分法」に対する批判は,今日すでに一 般的承認を得たかの感がある。もちろん,これにはヒックマン,パルバニス, クラワ一等の批判があり,特に.われわれの主張はクラワ一に近い2)。しかしこ れらについて想起されるのほ.,すでに昭和18年に発表されたヒック.ス利子理論 批判における高田博士の卓見である。その主旨ほ次の如ぐである。 「−・般均衡紅おいて貨幣が充たしている条件にほ一・方授受の均等という意味 における需給の均等があると思われるが,他方また所望現金需給の均等があ る。前者は貨幣の創造がなき限り,貨幣の需給超過ほ零に等しいという表現の 形をとる。これに対して後者は虐接にか又は間接にか流通速度に関する規定を 含む。この点においてヒックスがこの中の一・方を他方と区別するこ.となく,何 れをも貨幣方程式(the moneyequation)と称していることほ.分析の不正確 を示していると思う。」3)と.れはヒックスに対する批判ではあるが,この博士の 1)本稿は,昭和賂牢2月,本学の近代経済学研究会において発表したものに加筆修正し たものである。会員の松枝,吉尾,宮臥 横井,大政,堀江,井原の諸氏から有益なコ メントを煩いた。宮田,堀江,および木村等氏には特別お世話になり,有益な助言と示 唆を頂いた。厚くお礼を申し上げる。もちろん,すべての誤謬は筆者の責任である。

2)R.W小Clower,“FoundatioI】S OfMozletary Theoy”in Monetar.y Theor.y.Selected Readings edited by R.WClower,PengirlBooks,1969,pp。202−211。

3)高田保馬「ヒックス利子理論についで」『経済論叢』京都大学,第57巻,第6号,1943,

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香川大学経済学部 研究年報11 − 2 −〟 ユー97J 主張は爾来脳裏を離れず,パティンキンに対してもまたあてはまるものと考え. つつ,今日に至った。古典派「2分法」の批判をめぐるパティンキンの貨幣理論 ほ,すでに.多くの学者によって論じつくされた感もあり,また特にその理論は 数学的に極めて\緻密で高度である。この点,私見ほこれらの最新の成果を充分 に.とり入れず,新味に乏しい事をおそ・れるものであるが,一・試論を述べて大方 のご教示を仰ぎたい。 私見の主張の骨子は前述の高田博士の主張と全く同じである。「貨幣需要関 数にほ二つある。いわゆる予算制約式または収支均等式における貨幣需要は.,期 末に対するものであって期のほじめに対するものでほ.ない。現金残高数愚説に. おける貨幣需要は一・時点に.おけるものであるが,それほ初期におけるものであ る」という一点紅つきる。したがって,たとえ期末に対する貨幣需要を決定して も,初期における貨幣需要が決定されなければ,貨幣の回転速度は決まらない。 いいかえると,前者のみでほ貨幣は半回転に終あり,貨幣を仲介とする間接交 換ほ完了しない場合もある。または回転速度は無限に自由に決められ,財の側 に従属する。こ.れは全く摩擦のない非現実的な世界である。いま,ある期間 をとって,初期の貨幣残高を几弟 期末の貨幣残高需要をエ,その期間の貨幣所 得をJ,貨幣支出を沼とすると,貨幣的収支均等式は〟十J=∽+エで示され

る。この両辺を〟で割れば,1+意=一芸+意が成射る。意=β,意

エ =α,一面=γと定義すると,貨幣的収支均等式は1+β=α+γで示される0

したがって,この式が成立するに.はα,β,γのいずれか二つを規定しなけれ ばならない。γを規定するのがいわゆる期末の貨幣残高需要エであり,αを 規定するのが流通速度またほその逆数であるマ−ジャルのゐである。もちろん α,βをきめれはγがきまりγ,βをきめればαが必然的に決定される。し たがって,貨幣交換経済においては少くともα,β,γのうち二つを規定する 二つの連立する制約式が必要となる。たとえば,ストック(エ=γ・凡才)とフ ロー(〟・α=研,または凡才・β=J)の両者の均衡条件である。従来の財の予 算制約式にいか紅貨幣残高需給の方程式を加えて貨幣イヒしたとしても,それだ けではいまだ物物交換の理論でほあっても,貨幣交換経済の真の−・般理論とい えないのでないか。パティンキンの試みほ,貨幣の価値貯蔵手段の機能に注目

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交換の貨幣的均衡への叫・考察 − β − し,異期間の交換紅おける交換手段としての貨幣の蔵極的作用を取入れている 点に.おいて,注目すべきものがあるが,初期における貨幣需要,すなわちαま たほβの分析ほ必ずしも充分とほ思われない。もし,γだけの規定で行うとす れば,それは明示的または晴々裡にα=1またはβ=0を仮定しているもと思 われる。しかし,パティンキンに対する批判ほ.本論の目的ではなく,それは 後日の検討にまらたい。われわれは,本論においてほ静態,すなわちγ=1お 革びα=βという厳しい仮定をたてている。その点では欠陥があろう。われわ れほ静態に‥おいても貨幣は存在し,そこでの貨幣の本質的機能と作用径路を求 めてここそ,真の貨幣理論が把揺されると信ずる。そして,その次に.静態から動 態に移るのが順序であろうと考える。 ⅠⅠ われわれは,貨幣交換経済における貨幣価格決定のメカニズムの基本的構造 を,明らかにしようとするものであるが,説明の便宜上,まず実物交換経済匿 おける交換価値決定のメカニズムを,簡単に説明することから始めよう。ま ず,前提を明らかにして−おく。われわれほ,3財,3人の経済主体間の交換経 済を取りあげる。ヒックス,パティソキンのモデルに従って,期間を各過にわ け,各週のほじめ,すなわち月曜日の朝に.,主体7,2,吉ほそれぞれ財1,2, 3を愛1,庖,。愛3還だけ,毎週外生的に与えられるものとする。さて−,各主体ほ −L般にこの月曜日の賦与塁でほ彼の効用の極大を達成しない。お互にその手許 の財を交換して,それぞれ効用の極大化を計るであろう。そのために,市場は 月曜日の午後に開かれる。これらの財はその過だけしか耐久性をもたず,その 週中紅すべて消費しつくされるものとする。すなわち,貯蓄,投資は行われな い。われわれは単純な交換経済の静態的均衡を解明しようとするもので,数週 間,たとえば一ケ月にわたって長期的紅効用関数の極大化を行うといった,動 態的問題ほとり上げない。したがって,その過に達成された均衡は,与件の変 化のない限り次週以後も同じ水準で繰り返されるであろう。それでほ,そのよ うな交換の静態的均衡はどのように達成されるであろうか。 まず,各主体の需給決定の過程をとりあげる。すなわち,経済主体1を例にと る。彼は消費者行動の原理にしたがって,予算制約式または収支均等式〔1.2〕

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香川大学経済学部 研究年報11 ー ■ノ ーl ヱ97J の条件のもとにその効用関数〔1.1〕を極大にするものとしょう。 効用関数 〝1==鋸1(勘1,.ガ21,.方81) 予算制約式(.宕1−.ガ11)=汀2.方21+方8.恥1 〔1.1〕 〔1.2〕 ガ11,.方21,.翫1は主体1の財1,2,3に対する需要層,(一方1−.方1i)ほ供給患を 表わす,前の添字は財を,後のそれは各主体を示す,汀2,汀3はニュメレールと しての財1の単位で表わした財2,3の交換比率(相対価格)である。 ラグランジュの乗数を用いて解くことによっ七,彼の各財紅対する需要鼻が 決定される。これは,方2,方8の関数であるから次の需要関数が導き出される。 ガ11==ん(方2,方3);方21=ノ去1(方2,汀3);.恥1=ノ占1(方2,方3) 〔1.3〕 同様に.して,主体2,主体5についても需要関数が導き出されて,全体とし て次の9式の需要関数が成立する。 方り=./壱ブ(汀2,冗r8) (よ■=1,2,3;.グ=1,2,3) 〔1.4〕 さて,市場紅おいて財の需給の均衡が達成されねばならない。次の三つの需 給均等式が成立する。 ギグ=勘1+.ガタ2+勒 (ブ=1,2,3) 〔1.5〕 この三式のうち−・式は三つの予算制約式を集計することによって−,独立でな いこ.とが証明される。未知数(汀2,方3)と方程式の数とが−・致し,均衡解が得 られる。すなわち;月曜日の午後に市場において,模索(t飢Onnement)と再 契約(recontract)の過程が需給と価格の均衡が決定されるまで続くわけであ る。この様に.してニュメレールとしての財1で表わした均衡価格,汀2,汀3が決 定されると,苗場は閉じ,それぞれの均衡需給恩が決定され,売買契約がなさ れる。そして,火曜日から実際に財の受け渡しによって,契約の履行がなさ れ,それらの財は消費される。この様にして,次週もまた同様の過程が繰り返 されるであろう。 さて,ここに注目すべき点は,これらの交換は,相互の虐接的な実物的交換 のみによってほ達成されないことである。たとえば,主体1をとってみると, 全体として収支が均等して,方2∬21+方3∬31=.宕1一勘1=.方12+瑚ほ成立しても, 方12=方2.方21;∬13=汀8.方31が成立する必然性の保証はない。いわゆる直接的な物々 交換(ba工・teI)のみに.よって成立する交換比率は,裁定方程式を満足させず, また裁定方程式を満足させる交換比率,すなわち(均衡価格)では,直接的な

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交換の貨幣的均衡への一考察 5 ・ 物々交換によぅて−,「・般的にほ需給の−・致を達成することほ.できない。このよ うにして,実物交換経済は痘接交換ばかりでなく間接交換を伴うこと,否,一・般 的に間接交換経済となるであろう4)。この間接交換において柊,いずれの財も 交換手段として利用されることができる。ニ.★メレールがそれを兼ねることが 便利であるとしても,必ずしもその必要性ほない。むしろ,交換手段となる財 の単位がニュメレ−ルも兼ねるように.なるであうう。しかし,この実物交換経 済のモデルに.よると,その財が交換手段として用いられることは,すでに月曜 日の午後市場で決定された均衡価格と均衡需給崖に,全くいかなる影響も与え ないとされている。したがって,その交換手段として作用する財が何回回転し たかも不明であり,またその事自体価格形成と決定に・無関係とされている。も し,このニュメレールが交換手段としても作用しており,それが同時に・貨幣で あるというのであれば,この実物交換経済ほまた貨幣経済でもあることになっ てしまう。・そして貨幣価格はニュメレールが表わした相対価格と同一・となる。 これでは実物交換経済と貨幣交換経済の区別が全くつかないのでないか。ヒッ クス・パティンキンの貨幣経済ほ,なるはど形式的には貨幣が存在するが,あ えて実物交換経済といわれるのほ,方程式体系がかかる実物交換経済と本質的 に全く異ならないためであろう5)。なお,この実物交換経済に・おける価格形成 と需給還の決定が,模索過程と再契約との仮定に・よって,実際の財の取引と分 離する方法は,証券取引所等に若干の事例もあり,説明のためにも便利である が,実際の交換経済の価格形成とは,かなりかけ離れていて≡,問題が残されて いるように思われる。しかし,こ・こではわれわれはワルラス以来のこの伝統に 従う。 さて,この間接交換は,交換の相手が相互に−・致する必套を除くとともに, 交換の時点の同時化の必要をはぶぐであろう。しかし,反面,間接交換では, 交換の当事者(買手)は∴交換の柏手(売手)が欲する財を持つと共に,自分 が手離そうとしている財をも欲している轟三者を見出さねばならない,という 困難が伴ラ。もちろん,3人3財の場合にほこれは容易であろうが,多数財, 4)金森恒利「レ・ユナイタユ・rの交換の一顧均衡紅ついて」『香川大学経済論叢』第35巻第 2号,1962,pp17「22。 5)R.W.Clower,Op”Cit,p202。

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香川大学経済学部 研究年報11 J97J d −l 多数人となると,このようと間接交換は極めて多くの労力と時間の浪費を要す るであろう。この場合,いわゆる−・般的交換手段(−・般的受領性をもつもの) の存在ほ.,この間接交換のもつ複雑さと困難を克服するであろう。間接交換は 虐接交換の不便や困難と不利(裁定方程式を満たさない)とを克服したが,さ らに−・般的交換手段の発明に.よって,それがもつ不便と困難を取除き,間接交 換の範囲を拡大してます−ます交換経済の効率を高めて,人々の効用の極大化に 役立ったもぁと思われる。しかし,それでは実物交換経済から貨幣交換経済に どのようにして生成発展したか,その場合に.貨幣はいかなるものからなり,ど のように作られ,またそれによって実物交換経済はどのように変化してきたか 等について−ほ.なお議論の余地があろう,しかし,ここではそれにはこれ以上立 入らない。むしろ,すでに.−・般的交換手段が存在し,これを仲介として間接交 換行われて1、る,いわゆる貨幣交換経済に.分析を進めよう。 ⅠⅠⅠ 貨幣交換経済と実物交換経済との相違ほどこに.あるのか,われわれはこれを 前節の実物交換経済との対比に.よって明らかにしよう。したがって,前節の諸 前提ほそのまま保たれる。静態的貨幣交換経済の一・般均衡理論の樹立がわれわ れの当面の課題である。いまや,異なる点ほ,新しく一・般的交換手段として−の 貨幣が存在し,各経済主体ほこの貨幣を仲介として間接的交換を行うことであ る。また,貨幣はこの経済紅おける唯一・の耐久財であって,今週ばかりでなく 次週以後も使用される。この貨幣は他の崩のように財そのものとしての漬接的 効用をもたないとする。さしあたり,山片の紙幣,石片,貝殻であってよく, ただ−L般的受領性をもち,そのための必要な諸条件を備えていればよい。これ が何故に−・般的受領性をもつに至ったかについては,貨幣学説によって意見の 分れるところであるが,ここでそれ紅は立入らない。 さて,貨幣の単位が規定され,価格は貨幣単位で表わされる。パティンキン に従って,抽象的計界単位(たとえば円)と貨幣単位を区別し,貨幣単位ほ.討 界単位で表わして,計算価格をもつものとする。なお,計算単位と貨幣単位と を同じく1とする。すなわち,貝殻1個を1円と称するわけで,計算価格と貨 幣価格は同一・となる。この貨幣がこの経済軋どのようにして,供給されるかに

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交換の貨幣的均衡への一考察 一一 7−一 よって,経済紅与える効果は異なる。さしあたり,外部貨幣(outside money) の立場をとり,過の月曜日に.,他の財と共に廊,施,施の単位貨幣が,そ れぞれ各主体に.配給されたものとする。これほ今週のみで,次週からは貨幣の 配給ほなされない,したがって,主体1,2,5ほそれぞれ(.愛1,面),(庖,鹿), (為,鹿)をもって交換を開始する。 さて,古典派の人々ほ,貨幣の存在は実物交換経済のもつ間接交換に伴う諸 困難を克服し,ただ交換過程を円滑にするための瀾活油の如き作用を営むにす ぎないという。貨幣は全く中立的であり,貨幣の存在ほ経済の実質に・影響をあ′ たえない。貨幣数鼻は絶対価格の水準を規定するにすぎない。いわゆる貨幣ヴ ェ−ル観と貨幣数愚説が支配する。この古典派の貨幣理論に対して,ラング, パティンキンの批判があるが,われわれはパティンキンの古典派の2分法批判 には疑問をもつため,まず古典派の貨幣理論の検討から始める。 古典派の貨幣理論として,必ずしも一・般的に承認されたものがあるわけでほ ない。一応,われわれめ貨幣交換経済の均衡モデルを展開しながら,いわゆる 古典派の貨幣理論との比較検討を行い,種々モデルに修正を加えた「変型」を 考察することによって−,交換の貨幣的−・般均衡分析を模索しようとするのが, これからの課題である。 1.交換の貨幣的均衡 まず,前節と同じく,主体1の需要決定の過程を考察する。貨幣交換経済檻・ おいてほ,予算制約式ほ次の如く修正される。 兎+♪1(.だ1−.ガ11)=♪2.方21+♪3.ガ81+ム これをニュメレ−ルで表わすと次式となる。 +(・宕1一・方11)=方2物+汀動十 〔2.1〕 〔2、2〕 さて古典派において−ほセイの法則が仮定されるので,この予算制約式は次の 如く書き改められる。 (虎1−.方11)=方2.方21+恥方81 〔2.3〕

との予算制約式は実物交換経済と全く同じである。このセイの法則の仮定

ほ,反面ではん=面を仮定することであり,静態経済の仮定の当然の帰結で もある。次週も今週と同じ水準の経済活動を維持しようとする限り,期末の貸

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香川入学経済学部 研究年報11 ざ J97J 幣残高は初期のと同一・でなければならないとするのほ.合理的な決定と思われ る。このエ1=碑は事後的な恒等式でなく,各主体ほ期末に対する貨幣需要を 初期の貨幣残高に等しくするという行動式である。したがって,その反面と してセイの法則が適用される。各主体ほ.与えられた価格において,貨幣収入 (ん)と貨幣支出(沼1)とが等しくなるように,財の需給を決定するわけであ る。 古典派は貨幣を単に交換手段としてのみとらえ,貨幣保蔵の効用をみとめな い。したがって,さしあたり効用関数は.実物交換と同じであって,次のように 表わされるであろう。 〟1=〝1(方11,.方21,.方31) 〔2.4〕 古典派は貨幣交換経済とほあくまで朗の交換が目的であり,貨幣はただ交換 を仲介する手段にすぎないと解する。したがって,財の選択を決定するもの ほ,予算制約式と効用関数である。貨幣錯覚のない限り,財の需給の決定は, 実物交換の場合とこの点では全く変らない。すなわち,貨幣経済においても需 要関数は前節のそれと全く同じである。貨幣価格が変化しても,相対価格が変 らない限り,需要は変化しないとされる。ただ,新しい問題ほ,実物交換にお けると同じ需給量を貨幣を仲介として行う場合に.,どれだけの貨幣を必要とす るかという羊とである。これについて現金残高数還説の主張ほ傾聴に催する。 いま,主体1の予算制約式に注目しよう。エ1=面によって貨幣収入と貨幣 支出の累殻額ほその期末において相等しい。しかしり 火曜日から始まる取引に おいては.,常に収入と支出が同時化する保証ほない。間接交換はこのような同 時化の必要を克服するためであった。交換手段の存在ほノ,交換において交換相 手と交換時点の分離を可能にすることによって,実物交換のもつ諸困難を克服 し,経済的効率を高めてきた。そこ■で,いま,主体1は火曜日から土曜日まで の朋の購入と販売のパタ−ンを,第1図の如く計画し,決定したとしよう。明 らかに,期末の土曜日においてほ,収入と支出は等しいがその中間では収入と 支出は必ずしもつわに−・致していない,ある時は黒字であり,またある時は赤 字になる。このように週中に,収入と支出が時間的に同時化しない限り,契約 不履行の危険が生ずる。もちろん,相手の支払猶予または信用の利用も考えら れるが,これは仮定によって行われないとする。もしこれが全面的に可能であ

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交換の貨幣的均衡への一項察 ーー。9 −一】 幾1図 れほ貨幣の必要時なくなり,信用経 済となるであろう。したがって,予 想が確実であっでも,少くともその 週中に生ずる収入と支出の累積の帝 離の中の最大に等しい観を,その期 の初めの月曜日に準備として.手許に もって:おく必要がある。そうでない 剛 と,その過中に債務不履行の困難に

」♪

収人,.】∑1l トーー∑(R−E) _____」 綴字 0 1 2 陥ることになるであろう。さらに, 不確実性があれば,若干安全のため の貨幣も保有されるであろう。この ∑R=∑r 貨幣残高に対する需要は,そ・の実質 価値に.依存するものと解されるべき

1 ∑E である。したがって二,貨幣経済にお

支払軒 ∑E いてほ,支払間隔,支出パターン等が与えられると,主体7は少くとも実質需 要額の平均的な一・定割合,すなわち点1(方2.方21+方3.勘1)に.等しい実質貨幣残高を その期のはじめにもっていなけれはならないし,またもとうとする。(0<ゐ1≦1) そしてLこの実質貨幣残高に・対する需要が今週の初めにすでに.保有する実質貨 些 少1 幣鼠(

)に等しい時に,貨幣の側に均衡が成立するわけである。そうでない

と両者が等しくなるように,財にべ灯する需給の決定は変更され,それはまた価 格水準に影響を与えることになるであろう。こうして,貨幣経済においてほ, 次の実質残高式が初期において成立していなければならない。 =ゐ1(万物十方ど・芳31) 〔2・5〕 したがって,貨幣経済における消費者行動の原理は,各主体が予算制約式と 実質貨幣残高式の両者の制約条件のもとに効用の極大を計るものと解するのが 合理的であろう。 しかし,古典派でほ,このような方法を必ずしも取らなかった。すなわち, 予算制約式のみのもとで効用関数を極大にし,その極大満足の需給屈を,実質 貨幣残高式に代入することによって,それを満足する価格水準を決定するとい う方法をとった。したがって,しばらくこれらの古典派の手法に.従うこ.とにす

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香川大学経済学部 研究年報11 J9アJ −JO− る。各主体の効用関数,予算制約式,実質貨幣残高式ほ次表の如くである。 欝1表

主体1効用関数

予算制約式 実質貨幣残高式 主体2 効用関数 予算制約式 実質貨幣残高式

主体5 効用関数

予算制約式 実質貨幣残高式 〔2.6〕 〔2.7〕 〔2.8〕 〔2.9〕 〔2.10〕 〔2.11〕 〔2.12〕 〔ノ2.13〕 〔’2.14〕 捉1=〟1(.方11,.方21,侮1) (一元1−.方11)=汀2.芳21十和侮1 =ゑ1(方2物+瑚) 〟2=〝2(.光12,.方22,方∂2) 方2(庖−.ガ22)=.ガ12+方3.恥2 =抽12+方3・方32) 〝3=α3(.方13,方23,.方83) 方3(為−.方33)=・方13十方2.方23

=拍1汗肋)

さで,各主体は予算制約式の条件のもとに・効用を極大にする。これは明らか

に.実物交換経済の場合と全く同じである。したがって,もちろん貨幣価格,

れねかが呼ばれてあろうが,貨幣錯覚のないとの仮定より,前節と同様

に.需要関数が相対価格方2,方8の関数として導き出され,市場に・おいては財の

需給均等式によって,均衡価格汀2,汀3と均価需要扇が決定されるであろう。

需要関数 析′定プ(方2,汀3)

(.享≡壬;…;…〉〔2・15〕

財の需給均等式 宕ク=・勘1+ガタ2十方プ3 (.グ=1,2,3)〔2・16〕

次に,これらの均衡値を,それぞれ各主体の実質貨幣残高式に代入すること

によって,ニュ.メレ−ルの貨幣価格が決定される。しかし,社会的に・は,これ

らの各主体の実質貨幣残高式を満足させる九は,同一・でなければならない。

したがって,財市場と貨幣流通市場の均衡を同時に達成させるには,次の三つ

の連立実質貨幣残高式が成立しなければならない。

L_妙恥)=担32)_噂23)

〔2.17〕 ♪1 ノ吼 脇 ノ峨 このように貨幣交換の経済において,均衡が成立するためには財の需給均等 式の3式と実質貨幣残高式の3式の討6式が成立する必要がある。しかし,わ

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交換の貨幣的均衡への一・考察 −・1Jノ ・一 れわれはこの6式のうち独立の式ほ3式であることを知る。予算制約式,実質 貨幣残高式および財の需給均等式から,われわれほ次の6個の方程式を得る。 =汀2・方21」一醐1=・方1両13 ㌃ =・方12+恥方32=方2(姉・方23) −=侮巾2・方23=如31+・方32) 〔2.18〕 〔2.19〕 〔2.20〕 こノの6式のうち,独立の式は3式であることが証明される。したがって,た とえばわれわれは独立の式として.次の3式をえらぶことが出来る。 _些L=方2一方21+恥γ31=㍉彩12」一∬1∂ ♪1ゐ1 .ガ12+方3.方32=汀2(.方21+・鴛23) または 〔2.21〕

】堅L_=方2.方21十和方31

♪1ゐ1 方1−.方11=虻12+.ガ13 〔2.22〕 元一.方22=.方21−ト方23 〔2.22こ〕の右側の2式ほ財市場の需給均等式であり,先にわれわれはこれらの 2式から均衡相対価格と均衡需要還を導き出した。したがって,主体1の実質 貨幣残高式にそれを代入して,♪1が決定され,それを相対価格方2,方3に乗じ て,絶対価格すなわち貨幣価格九 ♪3を得ることになる。しかし,これには 一・つの重要な前提条件のあることに・注意しなけれはならない。 先の予算制約式と実質貨幣残高式の6式において,最初の2行の4式〔2. 18,2.19〕が成立すると,終りの1行の2式〔二2.20〕も成立する。このことは ゑ1,ゑ2の値を決めるとゐ3の値も確定することである。すなわち,われわれは, ほじめに各主体は,それぞれの計画にしたがって安全と便宜のため紅ゑⅠ,ゑ2, ゐ3を決定すると主張したが,この事は烏3の烏1,烏2への従属性によって否定さ れる。すなわら,鳥ユ,ゐ2,ゑ3のうち,さしあたり,少くとも一・つほ独立でない ことが分る。各主体が自主的判断で自由に決定する時,この連立貨幣残高式 〔二2.17.〕はたまたまノ晩,几処,肱の比がゑ1,烏2,点3の値に適した値をもつとい

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香川大学経済学部 研究年報11 −J2− ヱ.97J う遇然の場合以外には成立しえない。したがって,財市場と貨幣流通市場の均 衡は破れ,連立実質貨幣残高式を満足させようとすると,財市場匿おける需給 の均衡ほ成立せず,逆に財市場の均衡を達成しようとすると,貨幣流通市場は 不均衡となり,連立実質貨幣残高式ほ成立しない。この点をなお詳しく考察し よう。 われわれほ〔2.18,2.19,2.20〕の6式に・おいて,独立の式は3式であること を知っている。したがって,3つの連立実質貨幣残高式だけをとると,それら ほ独立である。いま,もう一度この〔2.17〕式をふり返ってみよう。すでに述べ たように・,財市場で均衡価格と均衡需給還が決定されているので,次の3式の 虎1,虎2,薮=は定数である。 (方2.方21+布方31)=あ (.方12十和方82)=あ (.ガi8+方2∬∂2)=あ したがって,〔2.17〕は次の如くに表わされる。 1 ゐ1虎1 ゐ2虎2 ゑ3虎8 〔二2.23〕 ♪1 雅 逓 朗呂 この式にを乗じて整理すると次の3式を得る0

旦=紬〔2・24〕;昔・老=意

〔2・25二〕;・宜

〔2・26〕 ♪1 これらの3式ほ,弧,施,肱の比ほ,ゑ1,ゑ2,ゐ3に・依存することを示してい る。面,鹿,鹿が初期に偲患に配分されるとすると,連立実質貨幣残高式は が適等

成立しないことになる0先述の如く,たまたま,老,老と莞

な関係にあるという特殊な場合にのみ成立する。したがって,貨幣流通市場な いし連立実質貨幣残高式と財市場の均衡が両立し難いことは,この点からも明

堀 弧

脇’鵜

らかであろう。ゐ1,ゑ2,烏3を自由紅各主体が決定しうるためにほ, ほ少くとも変数でなければならず,もし初期に所与であるとすれば,何らかの 調整メカニズムが内在していなけれぼならない。古典派の実物交換経済と貨幣 交換経済のいわゆる2分法ないし貨幣の中立性の意昧が,貨幣がない実物経済 に.おいて成立する相対価格体系が,貨幣が導入されることに.よって変化しない ということであるとすれば,古典派体系には,この矛盾を解決するシステムを

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交換の貨幣的均衡への劇考感 ーJβ−・ 内在せしめていなけれぼならない。次に,こ.れらの点に.論を進めよう。 2.財市場不均衡モデル さて.,外部貨幣の世界において,財市場の均衡と貨幣流通市場ないし連立実 質貨幣残高式との両者間に/不均衡が生じた時の,一一つの解決策ほ,財市場の需 姶均等式を不等式紅変えることであろう。すなわら次のように改められる。 寧グ≧・叛+・方プ2+.#ブ8 これによって,貨幣流通市場との矛眉ほ解決されるかもしれない。連立実質 貨幣残高式を満足する方2,方3において一極大満足を得る釣行は上記の需給の均等 式を満足しないであろう。需要は供給を越えることほ出来ないが,供給ほ必ず しもすべて需要される必要はなく,−■榎の「不完全満足均衡」が成立するであ ろう。・寧プ財の一・部は消費されないで放棄されることになる。ケインズは「人々 は月を求めるが故に失業が生ずる」と述べたが,「人々ほ黄金を求めてパンを 溝紅すてる」ということになる。 3.貨幣市場不均衡モデル しかし,このような考は,古典派の人々の脳裏匿ほなかったのでないか。貨幣 ほ単なる交換手段であって−,それ自体価値をもたないとすれば,棄てるべきは 黄金でこそあれバンであるはずほない。われわれは次のことを強調したい。 「金がなければ物は買えない」。しかし,「金があっても必ず買うとほ限らない」0 現金残高数意説紅よると「金があれば必ず物を買う」ということになる。ここ に,従来の現金残高数鼠説の欠点が見られる。そこ∴で,これらの点を考慮し て−,われわれは,実質貨幣残高式を,次のように不等式をふくむ式に修正しょ う。 ≧ゐ1(汀2・方21十方勒);≧ゐ2(・紳3・恥2);≧‰(翔+肋) 〔2.27〕 またほ (卜β1)昔=ゑ1(方2射的);(トβ2)晋=ゐ2(・方12廟32); (卜β3)=抽1汗肋)(1>∂ブ≧0) 〔2・28〕

(14)

香川大学経済学 部研究年報11 ーJ4・−− ユタ7J したがって,〔2.23′〕式も次の如くになる。 1 ゐ1虎1 ゑ2(豆2  ̄ 烏3∂8 少1 ̄(1−β1)廊√(卜β2)砲(1一朗)砲 〔、2.29〕

βグほ貨幣の保蔵またほ不活動実質貨幣残高を示し,予備的実質貨幣残高

である。勘ほそ・の保蔵率を示すであろう。このように,新しく変数を加えること によって.,ゐ1,ゑ2,ゐ3と二瓶,鹿,鹿の矛盾を克服することになるであろうか。 さて,〔2.29:】の3式に.対して,未知数として九 β1,β2,β3の四つがある。いず れか一つを外生的に決めないとこの体系は不決定となるであろう。これの対策 として,二.つの事が考えられる。(1)ほ久を固定することであり,(2)はβブの−・ つを0ないし,固定することであろう。まず,(1)から論じよう。動すなわち, ニュメレールの貨幣価格を固定し,しかも常にその価格を維持するようなシス テムを作る最も簡単な方法ほ,ニコ.メレールと貨幣とを同一・の財とすることで あろう。たとえばニュメレ」−ルに金・銀を選び貨幣とすることである。この場 合,ニュメレ−ルの単位は貨幣の単位でもあり,九は1である。1ポンド貨 幣はまた金1ポンドであった。あるいは,停虜収容所におけるタバコ貨幣もこ の一例であろう。いずれにせよ,この場合は,βプが,財市場で決定された虎1, ∂2,虎3に適応するように決定されることになる。すなわち,貨幣の不満動化ま たほ活動化による流通速度の自動的調節作用によって,財の市場と貨幣の流通 市場の間の均衡ほ保たれることに・なり,貨幣はいわゆる中立的であり,実物交 換において形成された相対価格と需給景は貨幣経済においても存続する,貨幣 ほグェ−ルであるが貨幣数愚説ほ支配しない。決定されるのは流通速度であっ て,貨幣数鼠の増減ほ価格水準に全く影響しない。純粋の金属本位制ないし商 品貨幣の世界ほこのような体系であったのであろうか。要するに,貨幣価値ほ 財の側か らの原因のない限りつねに安定する。 しかし,この体系においても一つの困難が生ずる。0の性質から鋸ほ.零と1 の範囲に・なければならない。それゆえ,貨幣の絶対的欠乏が,任意のβプが零 にまで低下したにもかかわらず,なお存続する時,貨幣的不均衡が発生し,ニ ュメレ−ルの貨幣価格♪1を下落させる他ほなく,デフレ現象を生ずる。しか し,貨幣とニュメレ−ルと区別のない商品貨幣において−は,♪1=1であって,

(15)

−J5 一 交換の貨幣的均衡への−・考察

これを行うことは不可能である。こ.こに,貨幣と貨幣商品と分離の必要が生

じ,鋳貨の改悪による彿の増加が試みられねばならなくなり,♪1の変動が始

まったと解してよいであろうか。生産性の上昇または貨幣交換の普及に′よる

虎1,∂2,∂3の増大は,商品ないし純粋金属貨幣からの貨幣の解放を必要とし

た。それは定位貨幣(token coins)ないし,名目貨幣またほ信用貨幣の生成

発展と動の上昇の歴史を物語るものであろうか。

しかし,この少1のニュメレールからの拘束の解放は,少1をして,β1,β2,鮎

の自由な変動と作用し合って不安定に.する。しかし,それほ下方に・対してほ不

安定であっても,上方に対してほ安定的である。すなわち,〃メの数鼠が一定

である限り,いずれか一・つのβブが零になる点で,♪1ほその他の♂プととも紅決

定されるであろう。とれが勘=0に.おける九の決定の場合セある。この際ほ,

いわゆる貨幣の流通速度と価格水準(A)とが,同時に決定される。このよう

に,九を自由にすると,九の安定するのは少1の天井における特別な場合にと

どまるであろう。あるいほ,βと♪1との間に何らかの関数関係,たとえば♪1の

上昇が鋸を低下させるといった,何らかのもう−・つの制約条件が内在してい

る場合にのみ動は安定に.なるものと.思われる。 上記のβと♪1との関 係を第2図に∴参考まで に示して−おこう。縦軸

ほ÷を,横軸は(1−

のをとる。横軸の′AB 線は,β=0すなわち (1−・β)=1の点におけ る垂直線である。 〔2.29:〕式の関係か

ら,(卜β)と÷の直

角双曲線を措くことが できる。いま,かりに

>>

(16)

・−J6− 香川大学経済学部 研究年報11 J97J と仮定しよう。第2図から明らかなように,動ほ動以上には.上昇できない が,下方へほ伸縮可能であって,任意の値をとりうる。♪1*と定めると,β1*, β㌔,β∂*が定まり,貨幣の流通速度は確定する。もちろん,動*は♪1より高

く定めることはできない。少1*を♪1より低く決めると,♪1*と♪1との間で自

由に・変動することも考えられる。また,αを−・定に.して昭を増加させると双

曲線は原点の方向に移動し,♪1は上昇するであろう。しかし,〟の増加とβゎ

♪1の変動の方向は,動学的な仮定を設けないと,この図表からも明らかなよ うに,簡単に・絵詞を求めることほできないであろう。 さて,上述のモデルではβ1,β2,鮎ほノ全く崩市場の均衡に.貨幣流通市場の 均衡が適応するように・受動的に決定されるシステムであった。貨幣側における 不均衡モデルであって,βプはいわげ,事後的にきまる調整要因である。しか し,この不活動貨幣の存在ほ全く人々に効用をもたらさないのであろうや、。人 々は取引の便宜のために,勘を決定するが,上述のよう,に予想は決して確実 でほない。これに・対して,不活動貨幣は,予備的貨幣として何らかの安全性を 与えるであろう。それは何らかの意味で人々に.効用を与えるのでなかろうか。 そして,ただ受動的に手許に不活動貨幣が歩留まるのでなく,安全と便宜との 配慮から,必要だから持っていると解すべきでなかろうか。この意味におい て,われわれは,これを効用関数にふくめるべきであろう。 4.古典派の貨幣需給均等式 しかし,効用関数への貨幣導入の問題に入る前略,これまで述べてきた事を 若干反省しておこう。列部貨幣からなる静態的交換経済においては,ゑプを各々

が自主粧決定しうるとの仮定から生ずる意,麓の可変性の必要と外部貨

幣そのこと紅伴う非可変性との間に矛盾が存在するというのが,われわれのこ れまでの一応の帰結であった。しかし,ここに用いた説明は,古典派とほいい ながら−・般に古典派モデルにおいて説くところと,かなり異なることを指摘し なければならない。 通説ほ,貨幣価格の決定を,次の如く説明する。財市場において決定した相 対価格と数豊を,貨幣で交換するにはどれだけの貨幣を必要とするか。そ・れほ 実質貨幣残高式によって,次の如ぐである。 肱d=♪1・烏1(方2一光21+和ガ81);馳d=少1・烏2(.完12十方3芳・32); 凡才3d=♪1・ゑ3(.先・13+方2.方2=5) 〔2.30〕

(17)

交換の貨幣的均衡への一考察 −−j7・− この個々の主体の貨幣需要関数を社会的に集計して,次の総貨幣需要関数を 得る。 〟d=肱d十脇d+肱d 〔2.31〕 他方,社会の貨幣の総供給景は藤である。貨幣市瘍は,この総貨幣需要と総 貨幣供給の均等するところで均衡するすなわち,次の均衡条件(脾=詔) が加えられ,次式を得る。 ♪1・‡烏1(方2.先・21+方3方31)十ゐ2(.方12+汀3.方32)+烏3(方13+方2ぬ)‡=詔 〔’2.32〕 方2,方3および.方21….方28ほすでに,朗市場で均衡値が決定されるので,貨幣 市場において,貨幣価格を決める九が決定される。 これが一・般に.いわれる現金残高数量説の主張するところである。このいゎゆ る古典派の貨幣需給均等式とわれわれのそれとの相違は,社会的に需給が均等 するのみならず,各々の主体に.おいても需給の均等を必要とする事にある。そ の意味でほ,われわれのはより厳しい条件をもっている。われわれの場合に ほ,もちろん社会的な総貨幣需給均等式が成立することはいうまでもない。し たがって−,古典派の要求する貨幣需給均等の条件を満たしている。しかし,こ の逆は必ずしもいえ.ないであろう。したがって,総貨幣需給均等式が成立して も,個々の主体の貨幣需給均等式が成立しているとほ限らない。こ.の点,古典 派の貨幣需給均等式はいずれを主張しているのか必ずしも明らかでない。むし ろ,貨幣の供給は,われわれのモデルの如く,最初にほ所与でなく,貨幣当局 が−・托して総貨幣:凱 凡才=A動+几鶴+脆を保有し,火曜日の朝,契約履行の開 始前に,貨幣市場を開き,そこで貨幣の需給の調整を行い,動と貨幣の配分, 循,脆,脇とを決定し,それを無償で与えるシステムを仮定してたのでなか ろうか。もちろん,これは勝手な推測であって実際に検証したわけではない が。したがって,このシステムでほ,ゐ1,ゑ2,ゑ3によって規定される適切な

意,篇の比で貨幣が配分されることになり,上述のもつ矛盾と困難は解消

するであろう。そして,土曜日の週末に,これらの貨幣を貨幣当局に返還し, 次週はまた新しく貨幣市場を再開して,適切な初期の貨幣残高で交換を続ける ことができるであろう。これは,いうまでもなく,内部貨幣のシステムであ り,Banking Principleないし典型的貨幣創出論者の構想する世界であろう。

(18)

香川大学経済学部 研究年報11 J97」 ーJヌ ー− そこ.紅は,外部貨幣のもつ諸困難の克服へ発想がみられるよう紅思われる。こ の外部貨幣と内部貨幣の優劣ほ興味深い問題であるが,われわれは外部貨幣の 経済に戻る前にもう一点反省しておこう。 財の市場払おいて,常に相対価格を叫び,均衡相対価格の成立を求め,その 後その結果を実質貨幣残高式に.代入して,絶対価格を求めるという上述の方法 ほ..,貨幣の中滋性を明らか紅する方法として便利ではあっても,貨幣価格形成 の説明として非現実的といわれねばならない。財市場と貨幣流通市場とは相互 に・関連があり,相対価格と絶対価格あるいほ流通速度ほ同時に決定されるべき 性質のものであろう。あるいは相対価格は.同一・であっても,絶対価格が異なれ ば需給は変化するのでないかとの疑問が生ずるかもしれない。しかし,上述の モデルにおいて,たとえば,予算制約式と実質貨幣残高の二つの条件で効用の極

大を求めるという手続によって,舶需給関数やβメ普を求めても,βメ告が

効用関数に.ふくまれていない限り,それらはすべて相対価格の関数となり,♪1 かβ7のいずれかを外生的に決めない限り,体系ほ不確定になってしまうのであ る。そこで,次に貨幣を効用関数に.導入することによって,上述の不確定な体 系が確定イヒするであろかという問題に移ろう。 5.貨幣と効用関数 これまでの古典派モデルに.おいては,各経済主体の効用関数に.貨幣はふくま れていなかった。それでほ.どうして貨幣をふくめるのか。この問題ほ極めて困 難な多くの問題をもち,われわれはなお未解決の点が多いが,以下試論を述べ てみよう。 例の如く,経済主体1を例にとって,彼の行動分析から始めよう。先述の如 く,彼ほ.月曜日の朝市場において財の購入と販売を計画する紅当って,その期 間中の需給の絶景のみでなく,火曜日以後における個々の財の受け渡しの屋や そのタイミング等も計画し,最も適当とみなすゑ1を決定するであろう。一・方, 彼ほこのゑ1は必ずしも確実に・実現するとは期待できないことも知っているで あろう。それほ,烏1は先述のように,交換の相手のゐクによって影響をうけざ るをえないからである。お互に,現在の貨幣残高とCOnSistentなkjを協議し て決定しうるとほ考えられない。また,実際に予め何から何まで総べてを決あ ておくことは不可能であろう。したがって,彼は安全性のためにイ可らかの予備

(19)

交換の貨幣的均衡への一・考察 ーJ9 − 的貨幣残高を初期に.持つことを必要とするであろう。このように・して,彼は.取 引のための便宜以外に,安全の動機から自己の主観的判断に基づいて,予備的 貨幣残の保蔵率βをも決定すると解してよいであろう。βを高めることは, 九を−・定とすれば,それだけ取引貨幣残帝の減少を生じ,その結果財の購入 β1 から得られる安全感と,それ を制限せざるをえなくなる。それゆえに, を得るために犠牲にせざるえない崩の効用の喪失との選択に迫られることにな るであろう。ここに,選択関数に.よる意思決定が必要とされるわけである。こ の意味に・おいてβ1告を彼の効用関数に含めることほあながち鱒な仮定とほ 思われない。ただ,これをどのような形で導入するかが問題である。貨幣のも つこの効用は,他の財とは特別であって,他の財と分離して効用関数に含める ことが,貨幣の中立性の証明の条件として用し1られるが,問題は中立性より も,分離しなければ,貨幣交換経済における貨幣の本質的機能を最も充分に説 明できないかどうかであろう。われわれ自身も,予備的貨幣と財との選択は, 個々の朗との代替よりもー・托した財群との選択関係に重点があるように思える ので,分離して取扱うべきと思うが,なおわれわれ自身に未解決の問題もあっ て,これらの問題の分析は,次の機会を倹らたい。さしあたり,以下の議論で ほ分離しないで,財と同じレベルで効用関数に含めることにする。なお,期末 に.対する貨幣需要エをも効用関数に.含めるべきであるが,現在のモデルでは定 数であるので省略した。 静態に.おいては,予見ほ確実であるから,安全性の動機はないのでないかと の批判もあろうが,われわれは,静態紅おいてもある程度の安全のための動機 ほ存在するものと考える。また,取引貨幣残高には効用を認めないのかとの疑 問に対しては,もちろん認めるものであるが,ただここでの問題はβの決定で あって,一・方が決まれば他方の効用も決まるものと考える。なお,厳密にいえ からのサL− ば効用関数において∬‖,.勉1,∬∂1と選択の対象に.なるのは,

ビスであって,ぴ1(飢告)として含めるべきであろうが,簡粧,β葦として

含めることにする。

(20)

香川大学経済学部 研究年報11 ・−一ヱ0−− J.97J 主体1の効用関数は,次の如く表わされる。

主体1の効用関数〝1=〝1(・ガ11,∬21,舶1)

〔2・33〕 予算制約式 (.雇一利1)==刀悠.勉1+汀8.鵜1 〔2.34〕

実質貨幣残高式(卜飢)=柚方21+醐1)

〔2・35〕 さて,予算制約式〔2.34〕と実質貨幣残高式の〔2.35〕の制約条件のもとで, 主体1ほ効用の極大を計るものとしよう。しかし,この効用関数はラグラン汐 ユ乗数を用いるこれまでの方法によってほ,効用極大点を必ずしも求めること】 はできない。そのためにほ.効用関数に.特別の仮定を必要とするであろう。同次 性の仮定や,貨幣の分離もー・つの方法であろう。しかし,この間題ほ先述の如 く今後の分析にまちたい。さて,彼ほこの条件のもとでも,いわば次善的な状 態において,彼の効用を極大に近づけるように財に対する需要の決定を行う であろう。もちろん,この場合,実物交換において達成された効用極大の条件 ほ求められないであろう,しかし,とにかく,このようにして,彼ほ〔2.34〕と 〔2.35〕の二つの条件のもとで,彼の効月]を極大にするように,各財の需要を決 およびについ 汀3および告の関数 定するものとすると,これまでと同様に,・方11,馳1,・侮1, て,次の需要関数を得るであろう。こ.れは,もほや,方2, であって−,相対価格,花2,方8のみの関数でほない。

主体1粕=¢11(方2,方㍉);・ガ21=¢21(花・2,汀3,)

雛¢31(汀2,方3,);♂=¢机1(方2,方3,)

〔2.36〕 同様に.して,主体2,5についても同様の需要関数を導き出すことができる。

主体2れ2=如(醐,);・ガ22=¢22(方2,汀㍉);

一光32=如2(方2,方3,);β2=¢仇2(岬) 〔2.37〕

(21)

交換の貨幣的均衡への−】・考察 −ごノ 一

主体弓・竺1画13(方2,方3,豊);・方28=¢23(醐,普)

榔軸(方2,方3,);=毎(醐,晋)〔2・謂〕

したがって,市場に.おける財の需給均等の条件の3式と実質貨幣残高式の3 式から均衡価格,♪1,蛮,如が決定されるであろう。 ゑ=れ1+∬ほ十侮;庖=.方21十.ガ22+方23;為=・恥1+欄∂2十.ぬ3 〔2.39〕 (…1)=ゐ1(方2如郡31);(…2)=ゐ2(∬12廟32) (卜鮎)=頼13+方2・方23) 〔2・40〕 この〔2.39〕と〔2.40〕の6式のうち,独立の式は3式であった。 〔2.39〕の2式と〔2.40:〕のほ.じめの1式をとって,これまでと比較してみよ う。財の満場でほ.,もほや,相対価格は決定できない。それらほ方2,方3,

の関数であるから。(鹿,施,施の比が一億であるので,鹿,施ほ.虎で代

表させることができる。)そこで,〔2.40〕の実質貨幣残高式の1式を追加するこ

とに・よって,花2,方3,告が決定される0実質貨幣残高式ほ断財市場での均

衡相対価格を絶対価格するに・とどまるものでない。いまや,貨幣はいわゆる単 なるベールではない。また,♪1とβメもこの場合,同時に均衡値が決定され, 不均衡モデルの如く,外生的に♪1またほβノの一・つを決める必要ほ.ない。た だ,問題点ほ,ここに・決定された均衡価格と均衡需給景に.おいて−は,いわゆる ラグランクエ∴乗数の解での意味の効用の極大化は達成されてほ.いないことであ る。その意味では,あくまでも「不完全満足均衡」とも称してよいであろう か。こ.の様な「不完全満足」の状態からの脱出の方法はないだろうか,次に, われわれは,信用すなわち,ファイナンスの問題をとりあげよう。 ⅠⅤ

さて,昔,芸の比がβプで適正な値に諏腰する方法にも,βの制限範閉のた

(22)

香川大学経済学部 研究年報11 w・22−鵬 J97J め紅限界があり,またこれのみが唯一・の禍整方法でほない。次に.述べる信用の 利用がその一つである。月曜日の午後市場紅おいて,財市場の均衡と連立実質 貨幣残高式の均衡との両者が同時に.達成されない時,絶対的過不足の状態の時 は別として,通常そこには貨幣残高の過剰と不足の経済主体のグループが存在 するであろう。この過不足は,この貨幣の貸借紅よって,調整されることがで きる。そこで,われわれは短期証券市場が,月曜日の午後にも開かれるものと して,信用をふくむ貨幣交換経済の一・般均衡を考察しよう。 例の如く,主体1の需要関数の導出から始めよう。まず,予算制約式は次の ように修正される。 貨幣的予錮約式 兎+・長一ゐ1ざ」一夕1(宕1一触)=擁1+擁1+裾十ム ただし,み1g=∂1d;ル㍗=㍉L 〔.3.1〕 これほ次の如く実質予算制約式に簡単化される。

実質予算制約式(・免−方11)=鵬1+柚十(丁㌃)寺ニ、〔3・2〕

∂1ざ(∂1g>0とす)は短期証券の発行高で,貨幣挙位で表わされる。負の場合 は貸しを意味し,証券の引受高,需要量を示す。∂1S=∂1αの仮定は,土曜日の 午後に借り手はその証券を買戻して,返済することを意味する。短期とは一:週

間の今週だけの貸借をさす0相利子・率で,了与は短期証券の貨幣単位当り

の割引発行価格である。これほ利子の前払を意味する。このように.して,貸借

の方法に.よって−,たとい,㌫=廠であっても,予算制約式は実物経済のそれと

異なる。利子が前払いであるため,借り手はそれだけ実質所得は減少し,貸手 ほ逆に実質所得が初期賦与還より増加することに.なる。 それでほ,短期証券の発行高の決定はどのように行われるか。われわれは, 先述の如く,主体1は月曜日の(.嘉1−.尤11),.芳21,.鵜1の販売と購入を決定する際, 火曜日以後の励の受渡しの日時や取引量も討画し,点1を決定すると仮定した。 この事は,汀2,方3の所与のもと■で,取引のための実質貨幣残高の需要を決定 する。他方,彼は.また安全性の動機から,γを所与とすると予備的貨幣残高率 β1をも決定して,取引のための実質貨幣残高の供給をきめる。そして,この取 引のための貨幣残高の需要と供給に差額を生じた時,彼ほ短期証券の発行また

(23)

交換の貨幣的均衡への一考察 −2β− ほ購入に.よって,その差額を調整するものとする。これが次の実質短期券発行 式の示す意味である。

実質短期証券発行式(了k)告=抽方21+抽ト(…1)

〔3.3〕

さて,主体1ほ,〔3.2〕と〔3.3〕の制約条件のもとで,彼の効用を極大に・する

ものとする。われわれは,効用関数に財ばかりでなく,予備的実質貨幣残高

飢豊をもふくめる0効用関数ほ次の如く輯される0

主体1の効用関数 α1=仇(伽,馳,勘)

〔3噌4〕 われわれは,ラグランジュの乗数を用いて−効用極大の条件を求めよう。それ

は,〔3.5〕の◎関数を,それぞれの変数で偏微分することによって求められ

る。

◎=〟1(町・ガ21,・醐苦ト・入1〈方2・方21・抽十(了㍍)意−(丸一触))

一入2t抽射朝1)−(卜β1)昔−(話す)告〉〔3・5〕 (1〝ブ1=) 1〟11一入1=0 1〝21一入17Z2一入2ゐ1汀2=0 1〟al一入17r3一入2ゑ17r3=0 1〟仇1一入2=0 〔3.6〕 (1〝仇1=) 一入1

+入2=0

一 これらから,次の加重された限界効用均等式がえられる。 〟肌1 〝21 〝31 〔3.7〕 〝11=−== 7・ ̄汀2(1十タ・ゐ1) ̄方3(1+γゑ1)

紬=【旦竺Lの意味は,予備的実質貨幣残高(実質保蔵貨幣残高)の限界効用 γ−

(24)

香川大学経済学部 研究年報11 J97。7 l一一ユJl・ は,それを貸出せばえられたであろう利子収入のニュメレ」−ルで測った限界効 用に.等しいことを意味する。利子ほ流動性を手離すことに対する報酬とみられ るであろう。さて,〔3・2、,〔3・3〕およぴ〔3・7二〕とによって,町・方21て粕, 飢

,およびが方2,方3,笑の関数として導出することができる0この

ことほ,主体2,主体5についても同様である,したがって,以下の9式の

諾わの需要関数と3式の予備的実質貨幣残高需要関数および3式の実質短期証 券供給関数をえる。

財の需要関数・方り=…汀2,方3,昔)(を≡壬;…;喜〉

〔3・由

予備的実質貨幣残高需要瀾数 堵†′ふグ(岬,昔)〔3・9〕

実質短期証券傭船関数 告=ん(方2,方∂,票)

〔3・10〕 財苗場における均衡条件は,次の3式である。 ガ1=れ1十.方12+方13; 庖=.鴛21+.方22+.先23; 為=鵜1+∴方32+・完38 〔3・11〕 短期証券市場は,次の需給均等式の1式である。 ∂1ぎ+∂2g+あ8旨=0 〔3.12〕 次に,予備的実質貨幣残高の需給均等式の1式が必要となる。 ゐ1(方2.方21+れ沼31)十烏2(方12+方3・方82)+ゑ3(鋤十方2ガ23) 〔3・13〕 =(…1)票一卜(1−β2)禁十(…) カ層式の数ほ財市場の3式とともに5式あるが,その弓−tl式ほ独立ではな

い。したがって一,」程式と未知数とは一肌,均衡解岬,,タをえる。

したがって,貨幣価格か,か,少3も決定される。以上が,財と貨幣の初期保 有墨を所与とした場合の,貨幣・信用交換経済の静態的一・般均衡モデルを示す ものである。初期の財の不均衡な配分ほノ,交換を通して再配分された。また, そのために必蟄な貨幣の初期における不適当な配分は,貨幣の保蔵と信用の両

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交換の貨幣的均衡への戚考察 ▼▲−−ご5 老のプロセスに.よって最適に配分されて交換が完了した。しかし,この世界に ほ,すでに利子が存在し,いわゆる実物交換経済と貨幣・信用交換経済の2分 法ほ存在しないであろう。またゥ財に対する需要瀾数ほ方晒,,㌢の関数 となり,価格について零次同次の性質を失う。また,廠,鹿,鹿の配分比率を ⊥定にして,初期貨幣保有長の配分を2倍にすれば,価格水準もー備に.2倍に なるであろう。パ・デインキンのいう2分法が成立し,貨幣数鼠説が妥当する。 初期の貨幣残高の不均衡を期末の貨幣需要で調整することは当然考えられる が,しかしそれほ次週の初期に役立っても,今週の問題の解決嘔ならないであ ろう。われわれはファイナンスほあくまで事前に行うべきものと考え.る。 なお,このモデルに・おいて,貨幣がただ一人の主体に配分されたとすると, どのような結果になるか興味ある問題である。それほ今日の中央銀行による内 部貨幣の世界であり,銀行主義の構想の世界でもあろう。われわれのモデルは 通貨主義と銀行主義の論争に興味ある解答を与えてくれるように思われる占 Ⅴ 以_L.で,われわれは3主体,3財というきわめて単純なモデルを用いて,貨 幣的交換経済における−・般均衡的分析を試みた。手法ほ極めて古く,解の存在 の証明等,最近の成果はとり入れず,多くの問題があろう。また,貨幣を効用 関数に導入するについては詳細な検討を留保した。その点,貨幣交換経済に‥お ける貨幣の最も茎葉な局面の取扱いれ十分に検討されていないという重大な 欠陥をもつことを断らねばならない。したがって,信用のない純粋の貨幣的交 換の一・般均衡についてはなお未解決匿とどまって−いる。しかし,これらの課題 は今後の研究に・まちたい。われわれの見出したことは,外部貨幣経済・に.おける 貨幣の適切でない配分は,貨幣交換経済において財市場と貨幣流通市場の均衡 を挽乱し,貨幣交換経済の円滑な運行を妨げる。それではその矛眉の解決策は どこにあるかを求め,流通速度の受動的調整による解決策にほ限界があり,貨 幣・信用経済においてそれが解決されることを指摘した。もちろん,それは− つの解決策にすぎず,他に種々の代案が構想されるであろう。それはエ=〟の 仮定をほずすことである。利子の存在は所得の再分配を可能にする。人々ほ次

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香川大学経済学部 研究年報11 J97ヱ ・−26− 週のために今週の消費を節約してエ>面をはかるであろう。われわれはエを実 質的に効用関数に、入れることによ.って貨幣蓄積の運動を分析しなけれほならな い。しかしそれほもはや静態でなく動態の世界である。 そして正面からほ取り上げえなかったが,貨幣需要関数に・は二つあることを 指摘し,往々にして実質貨幣残高需要は初期におけるものにかからず,これを 期末のそれと混同した議論が多く,この両者ほ.決して混同してほならないとい うのが,小論の強調したかった点である。 参 考 文 献

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