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【 論 文 】

NPO マネジメントにおける組織ルーチンの視点

野 口 寛 樹

1. は じ め に  本論では,1998 年の特定非営利活動促進法よりその活動が注目される NPO のマネジメント,特 にその運営の継続性,組織としての活動の定着について,組織ルーチンの視角から議論することを 目的としている。  多くの社会問題が顕在化するようになった現代において,その社会問題の解決を目的に活動する NPOは,社会的にその存在が認知されつつあると言える。しかしそのマネジメントの現状は芳し くない。社会問題に気づいた個人が始めるその活動は,その個人(主に設立者)に依る活動がなさ れる傾向にあり,“組織” として活動を行うことが難しいのである。  本論では,NPO マネジメントをめぐる昨今の現状を示しつつ,多様なる利害関係者を抱え,さ らに自主的・自発的に NPO に参加をするメンバーを巻き込みながら活動をしなければならない NPOの継続的な活動,その組織運営に関わる活動の安定性について,組織ルーチンの視点から議 論を行っていきたい。 2. NPO をめぐる昨今の状況 (1) 伸び続ける NPO 法人の解散数  公益法人改革(2007 年 12 月に施行),特定非営利活動促進法改正(2011 年 4 月に施行)など, NPO法人(都道府県,政令指定都市また内閣府により認証された NPO のこと)を活性化し,社会 において有効に活用していこうという姿は多くの場所でみられる。また 2011 年 3 月 11 日に起こっ た東日本大震災の復興を考える場面でも多くの NPO(上記の NPO 法人を含む,広義の民間非営利 団体を指す。本論における定義については後述する。)の活動は報道されている。  内閣府が毎月更新をしている NPO 法人の認証数(図 1)は 1998 年の特定非営利活動促進法が施 行されてから一貫して増え続けている。NPO が活動を続ける現状を鑑みるに,その存在の重要性, 必要性も高まっていることが推察される。  しかし一方で,同じ内閣府が集めているデータに NPO 法人の解散数についてのものがある(図 2)。  図 2 でも明らかなように,認証数の増加とともに,解散数も増加をしている。NPO が各認証機 関で認証を受け,NPO 法人として活動を始めることはそう難しくない。解散数を見るに,やはり 活動を始めるに当たり考えなければならない,「なぜ NPO 法人を作るのか」というその NPO 法人

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設立の根幹の部分,またその運営に関してあまりにも曖昧,また安易な考えを持っている設立され たのではないだろうかと思わざるを得ない状況が見て取れる。  内閣府では解散に関して,その事由についてもデータを公表している。データが示す解散理由で 図 1 NPO 法人の認証数      内閣府 NPO ホームページ,NPO 法人ポータルサイトより筆者作成      (https://www.npo-homepage.go.jp/portalsite/syokatsutyobetsu_ninshou.html 12 月 9 日閲覧) 図 2 NPO 法人の解散数      内閣府 NPO ホームページ,NPO 法人ポータルサイトより筆者作成      (https://www.npo-homepage.go.jp/portalsite/syokatsutyobetsu_ninshou.html 12 月 9 日閲覧)

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一番多いものは「社員総会の決議」1である。ただこれでは本当の解散事由が分からない。NPO 法 人における解散事由については,事業継続意思がなくなった,会費も会員も思うように集まらない, 仲間同士の意見が対立した,理事長からの持ち出しばかりで組織の維持が難しい,理事長が死亡し た,又は他のメンバーが死去した,などが具体的な理由として指摘されている(野口 2012)。 (2) 本論における NPO の定義  NPO 自体の定義は多種多様であり一定に絞るのは非常に難しい。先行研究を考えるに,経済学 的な理解からすれば市場の失敗,政府の失敗からの補完的な存在として NPO は考えられ,社会学 的な理解からすれば,自由と多元価値を体現するものとして,また連帯,歴史的所産,市民社会の 成熟と市民の自立の希求,などによって NPO の存在を考察することができる(松本 2006)。また 活動のドメインは多岐にわたり,加えて創業段階の未熟ともいうべき集合から,官僚制的なシステ ムを備えた大規模組織にまで成熟したものもある。その出自が多様なため,定義が難しくなるので ある。しかし,ここで NPO の定義を検討しておきたいのは,組織として,既存の営利目的の組織 とは異なる点があるからである。  NPO はミッションを中心とした組織であり,その基本的な活動は契約によって縛られた権限に よりマネジメントがなされるわけではない。よってそのマネジメントは官僚制には馴染みにくく, 横のつながりを重視したマネジメントがなされるのである。加えてその活動は目の前にある社会問 題に対して行われるのであり,そのプロジェクトを管理するために組織に参加する者が少ない。そ してその社会問題解決のために参加する者は,必ずしもプロフェッショナルばかりではなく,その サービス提供なり問題解決に参加する者の能力に差があることは当たり前となる。  以上を前提に,松本(2006)は先行研究から NPO の出自を大きく二つに分けた。それは問題解 決型の NPO と存在重視型の NPO(存在すること自体に価値がある NPO を示す。例えば薬物依存 を考える,治療する NPO 等々である。)である。松本(2006)は問題解決型の NPO は組織化をし やすく,社会に対し解決せねばならない問題があるため,既存の営利組織である目的合理性をもつ 組織論との適合が可能であろうという結論をだしている。つまり存続重視型の NPO よりも問題解 決型の NPO は,社会問題を解決するため,組織としての活動,能力が必要となるのである。  よって本論では以上の NPO の特殊性を鑑みつつ,問題解決型の NPO を分析の対象とする。そ して,その NPO は,松本(2006)が定義した「法人格の有無に関わらず,また構成員の活動も無 償によるものか有償によるものかに関わらず,公益性のある民間の非営利団体」というものを考え, 議論の対象としたい。しかしながら,NPO とはいいつつも,本論が特に議論の対象として考える のは,1998 年の特定非営利活動促進法成立以降に設立が可能となった NPO,つまり NPO 法人で ある。法人設立という一定の組織化が行われている組織であり,まだ第 1 期の活動家が一線で活動 をしている組織である。だからこそ,今その組織について議論が必要だと思われるからである。 1 社員総会の決議は事由 1 であるが,他に,事由 2 : 定款で定めた解散事由の発生,事由 3 : 目的とする特定 非営利活動に係る事業の成功の不能,事由 : 4 社員の欠亡,事由 5 : 合併,事由 6 : 破産,事由 7 ; 設立の認 証の取消し,事由 8 : その他,である。

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(3) NPO におけるマネジメントの現状  そもそも,既存のアメリカから始まる経営学の成り立ちを考えるに,製造業に対する非常な関心, それも組み立て産業に対する偏向(特に自動車)があった。そのためサービス業がその研究対象と なることはなく,主にブルーカラー,現場の労働者を想定した理論というものが考えられてきた(日 置 2000)。営利企業に参加する者は,基本的には生活・給料というものにインセンティブを求め, 権限をもった上司に従いつつ,ある組織の特定の目的を満たすため,一般的に官僚制を基礎とする 組織に身を投じることとなる。しかし NPO における状況はかなり異なる。それは,サービスを中 心とした組織運営がなされ,いまだ生活に十分な給料を支払える組織は少なく,その参加の目的・ 意味はそれぞれの個人で異なるという点からも指摘できる。つまりその組織運営,NPO のマネジ メントは既存の経営学が議論の対象としてこなかった分野であり,その現状を考えるに,営利企業 よりもそのマネジメントには複雑さを伴うのである。  NPO マネジメントの複雑さはその組織参加者において端的に見ることができる(田尾 1999)。 NPO参加者は,主に 3 つのタイプに分けられる。1 学生,2 女性,3 高齢者であり,それぞれの参 加者にはそれぞれの特徴を有している。学生については,共通して時間的な制約がある(中学生, 高校生なら 3 年間,また大学生なら 4 年間である)。特に大学生は時間的な余裕はあるものの,前 述の時間的制約からクラブ活動的になってしまいがちであり,その活動は理想主義的である。一方 女性とは,主に 40 代後半の一定子育てが終了し,子供が手を離れた者を指している。NPO は再就 労先として選ばれる傾向もあるようだが,十分な給与が払われているとは言い難く,定着が問題と なる。  今現在,NPO において社会に望まれる参加者は高齢者である。60 才,65 才で退職を迎えた “人財” をそのまま地域に埋もれさせておく手はない。特に NPO 法人において,その設立分野 1,保健・ 福祉系2が多い中では,高齢者が高齢者を看ていくことは理想的だとも語られる。  加えて,上記示したような人材が NPO への参加を決めたとしても,またその組織に参加する形 態が各種存在する。専従者,無給でフルタイム,有給パートタイム,無給パートタイム,有給でイ ベントに参加,無給でイベントに参加等々,その組織への参加形態は多種多様である。一般的な参 加者は無給のボランティアであり,基本的にフルタイムではない。そのため,ピンポイントに組織 2 平成 24 年に特定非営利活動促進法が改正され 3 つの分野,(4)観光の振興を図る活動,(5)農山漁村又は 中山間地域の振興を図る活動,(20)前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例 で定める活動が増えている。現在,第 1 号保健,医療又は福祉の増進を図る活動,第 2 号社会教育の推進を 図る活動,第 3 号まちづくりの推進を図る活動第,4 号観光の振興を図る活動,第 5 号農山漁村又は中山間 地域の振興を図る活動,6 号学術,文化,芸術又はスポーツの振興を図る活動,第 7 号環境の保全を図る活動, 第 8 号災害救援活動,第 9 号地域安全活動,第 10 号人権の擁護又は平和の推進を図る活動,第 11 号国際協 力の活動,第 12 号男女共同参画社会の形成の促進を図る活動,第 13 号子どもの健全育成を図る活動,第 14 号情報化社会の発展を図る活動,第 15 号科学技術の振興を図る活動,第 16 号経済活動の活性化を図る活動, 第 17 号職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動,第 18 号消費者の保護を図る活動,第 19 号 前 各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡,助言又は援助の活動,第 20 号前各号で掲げる 活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動,である。1998 年の法施行より一貫して その活動分野数が 1 番多いのが保健・福祉といわれる第 1 号分野である。

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に参加する者の役割,仕事・役割のアーキテクチャーが不明確,不透明な場合,その仕事の代替が 担当者以外,余人をもってできなくなってしまう。加えて,ピンポイントの参加者を考えるに,当 然参加者間で共有できる時間・情報等は少なくなるため,ICT が発達している現代とはいえ,仕事 における他メンバーとの協働,協力が減る。よってある特定の人(コア)と周辺メンバー(ピンポ イント,また常に組織にいない人材)にわかれ,どうしても常に仕事を見ているコアメンバーがコ ントロール,コーディネートをしなければならなくなり,コアメンバーに仕事が集中してしまう。  表 1 は内閣府(2013)が調査をしている NPO 法人の職員数の現状である。全国の NPO 法人(認 定法人を含む。)43,993 法人(平成 23 年 11 月末)を対象としたものである(回収率 19%)。ここ ではボランティアを対象としたものではなく,そのコアメンバーと思われる参加者が調査対象と なっている。全体の職員数は中央値が 4 人となっているが,有給職員になると中央値は 1 人,そし て常勤で有給職員の中央値は 0 人となる。つまり継続的に組織運営に関わる人材(コアメンバー) は皆無であり,上記議論からすれば,その活動を担保する人材が少ないのではないかという指摘が 行える。  この人数の中で,コアメンバーによる権限の使用を前提とするような,官僚制を志向する組織に なっていれば,まだ仕事の振りよう,コントロールの可能性も存在する。しかし,前述してきたよ うな多様な参加者を抱える NPO では,個々人のレベルにおいて,どの程度組織に対するコミット メントが存在するかにより,その仕事のやりようが決まってくる。結果,どうしても単純に雇用を されている,もしくは長期間活動をしているコアメンバーはその NPO を良く知っていることとな り,その組織運営を担う必要がでてくる。  しかし,何らかの理由で長期間活動するメンバー,有給職員はまだしも,組織参加者において難 しいのは,そのマネジメントに対するインセンティブのなさである。長期的に組織に関わる,関わっ ているコアメンバーは組織のマネジメントに関する必要性を感じる一方,その組織設立前から考え るに,組織参加者には,社会問題は解決したくとも,そもそも(社会問題解決のために組織が必要 とは思えども)組織のマネジメントをするために NPO を立ち上げたわけではない,また組織のマ ネジメントをするため活動に参加をしたわけではない,というものが付いて回る。加えて,その周 辺メンバー,特にピンポイントで活動に参加をするような参加者達がどうしてマネジメントに興味 をもてようか。  そもそも NPO 参加者に関して,その参加動機は営利企業とは異なる。一般的に言われるものは, 利他的動機であるものの,現在はその複数動機が語られている(Clary 1996, 1998)。組織参加のイ ンセンティブを考えるに,直接的な行動への誘因の提供は考えやすいが,マネジメントに対しイン 表 1 NPO 法人の職員数・有給職員数・常勤有給職員数 NPO法人 職員数 有給職員数 常勤有給職員数 中央 平均 最少 最大 中央 平均 最少 最大 中央 平均 最少 最大 7,290 4 9 0 1,005 1 5 0 854 0 2 0 190 内閣府,平成 23 年度 特定非営利活動法人の実態及び認定特定非営利活動法人制度の利用状況に関する調査  より筆者作成(小数点以下切り捨て)

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センティブを誘導することは考える必要があり,加えて参加者に対する金銭的な誘因が少ない NPOで,いかに組織としてその誘因を提供していくのかは重要となる。  ただ,いかにマネジメントに参加を望むコアメンバーがいようとも,Pearce (1993)が指摘して いるように,NPO の参加者(そのメインとなるのはボランティアではあるが)における組織内活 動の役割について,不明確な部分が多いという問題も存在する。そもそも,目に見えている,また 潜在的にある社会問題に気付いた人が,現場レベルで始める仕事が多い NPO である。現場レベル でも善意の押し売り的な行動,つまり供給者のエゴ的な行動が指摘される場面もあり,どのような 仕事をしたらよいのかについて,不明確,不透明である所が多いのである。  そのような中,実際の活動においてどこの誰が,いつ,どのように,どの場所に来ても活動でき るように組織を設えるということは,今後の経営課題として考えていくべきことである。そこで必 要とされる議論は,あらゆる組織の活動の基礎となる,組織ルーチンなのである。 3. NPO 研究における経営学的知見の欠落  NPO 研究が日本で本格化したのはたかだかここ 10 年に過ぎない。日本 NPO 学会が発足し,全 国大会が開催されたのは 1999 年であり,学会誌『ノンプロフィット・レビュー』が発行されたの は 2001 年である。現在までの経てきた時間は,日本において「NPO」という組織を研究対象とし て確立させてきた歴史ともいえるだろう。それは「NPO」という用語が世界的にはそれほど使わ れていないにも関わらず,日本では繰り返し使われているという現実に見ることができる。  日本の経営分野における NPO の論考に注目をするのであれば,アソシエーションとビュロクラ シーの狭間にいる NPO(田尾 1998),社会的使命を軸とした NPO の把握(藤井 1999),問題解決 型 NPO と存在重視型 NPO(松本 2006)などといった,NPO はどのような存在なのかという理念 的な視点(Dimaggio and Anheier 1990),が多くを占めていた。NPO は組織として成り立っている のか,そして既存の経営学を適応してもよいのかというものであった。澤村(2006)は日本におけ る NPO について,経営学的な視点を提供する論文のレビューを行っているが,その歴史はまだま だ浅く,NPO における経営学的視点の提供はこれからとなるだろうという指摘をしている。  1998 年の特定非営利活動促進法から注目を浴びた NPO,NPO 法人ではあるが,当初その性格(効 率的なボランティア運営,そのコーディネーションをいかに行うのか)により,実務的なインプリ ケーションを考える論考が多かった。資金調達をどうするのか等,記述分野を絞り,その資源依存 関係からの指摘を行う研究である(坂本 2004,Oster 1995 など)。  田中(1999)では多様なステイクホルダーの関係を取引費用コストから考え,いかに資金提供者 と NPO とのミスマッチをなくせるか,インターミディアリー(中間支援組織)の重要性を説明し ている。Kohm and Piana (2003)は NPO 間におけるバックオフィスなどの資源の統合からその効 率性に言及し,コラボレーション,アライアンス,インテグレーション,最終的には M&A にまで 議論を広げ,組織として NPO はどうしていくかべきかに注目をしている。

 また NPO の運営については,ステイクホルダーが多いため資源依存関係を考えることは難解と なる。そのような中,日本において,NPO における資源依存関係と環境の不確実性について定量

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調査を行い,NPO はどのような戦略をとるかについての研究を行った小島(1998)は,経営学的 視点による研究の嚆矢となるのではなかろうか。

 以上から言えるのは,その NPO の活動の特殊性はあるものの,NPO 内部,また組織としての活 動に関する研究が少ないのではないかということである。上記資源依存関係からくる小島(1998) の研究では資源というのは分析上,その資金に焦点を絞っており,厳密に組織間関係というわけで はない。そして田中(1999)や Kohm and Piana(2003)の研究も,その焦点が,完全に組織内部 にあるわけではない。加えて内閣府が行っている実態調査3で示しているのも,そもそも組織とし て活動をしていけるのか,それ自体に興味が占められていた感が否めない。つまり NPO において、 組織として活動するということへの考察はまだまだ少ないということである。 4. NPO の継続的な運営を考える∼組織ルーチンの視点∼ (1) 組織ルーチンの概要  前述してきたように,現在の NPO を取り巻く現状から,組織内部,そして,組織としての運営 確立をいかに行うのかという点において議論が少ないことは指摘される。ただ以上を検討するにあ たり忘れてはならないのが,社会問題解決を目的とする NPO において,その行動には必ずしも経 済合理的な基準を持たない活動があるということである。しかし一方で組織活動という点を考えれ ば,一定の合理性の基準に従い,物事を処理することの必要性は存在する。つまり NPO は,そのミッ ションという合理性とはかけ離れた可能性もある目的の達成を志向する組織ではあるが,その内面 的には,当然ながら一定の合理性を持つ必要があることは指摘されるのである。  ただ合理性を考えるにしても,NPO 活動においてはそのパフォーマンスを考える直接の因果関 係を考えることの難しさがある一方で,その活動の目的については漠然とした望ましさの基準が存 在してしまう。そのような中では,一定の合理性,ここで指摘されるべきは,手段合理的な活動を いかに行うのかを考える必要がある組織,つまり,NPO はその活動において手段合理的な活動と いうものが志向されてなくてはならない。  NPO に参加を望む組織メンバーは,己の問題意識を持ち,その解決のため組織に参加をしている。 よって,その問題意識に基づく仕事以外(特に組織運営関わる仕事)をいかに行ってもらうかは大 変重要である。そのためには手段合理的な活動を行うための仕事の明確化,役割の明確化が必要と なり,それは仕事のシステム化,プログラム化を必要とする。つまり最終的には,仕事のシステム 化,プログラム化を意味する組織ルーチンをいかに作りこむかの問題が重要となるのである。  組織ルーチンは効率性の問題,複雑性の削減,環境圧力を避けるなどの視角を提供できることか 3 内閣府は平成 12 年より「市民活動団体等基本調査」を行っており,それ以降何かしらの調査を NPO(また NPO法人)に対して行っている(平成 21 年まで)。内容としてはその活動内容,その運営面について見るこ とに焦点が置かれている。一方平成 20 年度からは,「特定非営利活動法人の実態及び認定特定非営利活動法 人制度の利用状況に関する調査」が新しく行われはじめた。ここでは NPO 法人の現状についてのデータは 集めているものの,政策的な視点(行政との協働度合等々)に基づいた調査が行われている。

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ら意義深く,注目をされており,コストの最小化,経営的な機動力を確保,組織の正当性を最大化 するためのものである。よって,組織運営を考えるに当たっては,そうそう変更はしたくないもの であり,組織の存続と発展を考えるにおいてはその基礎となる役割を果たす。Becker (2004)によ ると今までの組織ルーチン論は 8 つの特徴と 6 つの組織への影響にまとめられるとしている4  ただ,組織ルーチンの定義は非常に複雑であり,論者によって,また分析レベルによりそれぞれ 異なる。分析レベルは主に個人単位,グループ単位,組織単位が存在する。そしてそれぞれのレベ ルで上記 8 つの特徴が含まれることとなる。定義については 8 つの特徴を持ちつつも,どの特徴に 注目をするのかでその立場が分かれる。ただ現在の多くの論考がある Nelson and Winter (1982)の 流れをくむ進化系理論では組織ルーチンが安定的であることは基礎となっている。

 そもそも組織ルーチンの当初の概念では,定義された刺激に反応して,固定された個々の行動パ ターンをとることが強調されており,刺激と反応によってできるのが組織ルーチンであるとされた (March and Simon 1958)。ただ Pentland and Rueter (1994)は先行研究の批判として探索(search)

というものが抜けている,と指摘している。Feldman and Pentland (2003)は,そもそも規範として 存在する組織ルーチンとそこから生み出される行為の違いを,組織ルーチンの 2 つの側面を考える ことで定式化している。そこでは規範として存在する組織ルーチンと,行為者の実践により規定さ れる組織ルーチンの循環によって組織ルーチンが説明される。彼女らはこの点を見落とせば,現実 にある多様な行為を,単一ないしは少数の活動パターンであると考えてしまう可能性があるとし, 先行研究の多くがこの過ちを犯していると指摘している(Pentland and Feldman 2005)。

 探索の欠如,また組織ルーチンを単一のパターンと認識してしまうのは,Becker (2004)のルー チンの特徴の 4 番目,意識せずできるものと,努力して達成したもの,に関係する事柄である。以 上のような欠如は,意識せずできるものとしての組織ルーチン理解が主となってしまっているから である(March and Simon 1958)。しかし Pentland and Rueter (1994)はルーチンを相互関係から与 えられたもの,あらかじめ計画されたものではなく,可能性の中から達成されたものと理解するこ とにより,自動化されたもの,意識せずできるものというよりも,努力して達成されたものという 理解ができるとしている。近年では組織ルーチンの変革についての議論が多く,解釈パラダイムに 依った議論が展開されている5 (2) 自主的な組織ルーチン生成の難しさ  NPO ではミッションを中心とする組織運営が行われ,個々人はミッションに関わる活動行うた め自主的に組織へ参加をする。よって個人の自主性・自発性が非常に重視され,自分の意に沿わぬ ことがあれば組織を退出することが自由にできる。自分の目的とする活動が明確にあり,それ以外 4 1 集合的な行動などのパターン,2 繰り返し,再現性がある,3 集合の現象である,4 意識せずできるものと, 努力して達成したもの,5 過程をさすもの,6 組織や構造に埋め込まれているか,状況に特定的なのもの,7 経路依存するもの,8 二者間の相互関係,また外部から影響を受け変化するもの,としている。一方,そのルー チンの組織への影響は,1 調整と管理,2 休戦状態を作る,3 非ルーチン作業ができるように,認識できる潜 在能力を高める,4 不確実性を減らす,5 安定性,6 知識の貯蔵庫,であるとしている。

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の活動を行わせることが難しい。つまり一般的に組織としての運営がなされるために必要な一定の ノウハウ,知識,ルーチンなどを組織が持つこと自体,自主的・自発的にされなければならないと いうことである。  ミッション重視である NPO では,参加者は特定の参加目的がありその組織のメンバーとなる。 参加目的に合致する活動をするにあたっては何の強制もなく,自分がしたいからするのである。し かしながら,組織の運営上,どうしても参加者にとって個人の参加動機とは異なる組織運営への貢 献が求められる場合がある。つまり NPO では,メンバーが自主的に非営利的な活動を行うことを 主目的として参加するため,組織を運営するノウハウについての組織ルーチンの生成,組織的な学 習を行いづらいというジレンマを抱えているのである。活動においてボランティアで参加するメン バーは数いれど,組織運営にボランティアとして貢献するメンバーは少ないのである。  NPO ではきちんとした組織化もされていないため上司としての権限は行使しにくく,目的と合 致しない行動を他者から強いられた場合,組織から退出する確率が非常に高い。現実的な問題とし て,組織運営を行うためにはメンバーを組織から退出させず,当初の参加動機と異なる活動を自主 的・自発的に行ってもらう必要がある。そのために,組織運営の根幹となる組織ルーチンをして, メンバーに対しなんらかのコントロールを行うことは望ましいと考えられる。それは組織ルーチン におけるガバナンス効果という面で議論がなされている。 5. NPO における組織活動の定着と組織ルーチンの役割

 Coriat and Dosi (1998), Dosi et al. (2008)は組織ルーチンの持つガバナンスという機能を重視し ている。Becker(2004)の組織ルーチンにおけるレビューでも触れられている,組織ルーチンが与 える影響,「休戦状態を作る」という視点である。つまり一定のパターン,何を考えることもなく 組織ルーチンが実行されていく状態を作りだすための仕組みについての議論である。  ただ,その仕組み作りを考えるには,まず NPO における組織ルーチンのルール,そもそもの譲 れないものは何かを理解する必要があることは大前提である。多くはそのミッションと関連した事 項である。例えば 100 万円の報酬が見込める仕事と 10 万円の報酬が見込める仕事,どちらを取る のかということである。  NPO の場合,その組織のミッションと合致しない仕事はすべきではない。たとえ報酬が高かろ うとも,そのミッションと合致しない意思決定はすべきではない。これが意味するところは,組織 ルーチンが構築される過程において,そしてその組織ルーチンが成立するために,その組織ルーチ ンを行う,また行わざるを得ない,何らかのインセンティブについて議論する必要があることを示 している。つまりその組織ルーチンを行うには,ただその行動をとっているわけではなく,何らか のインセンティブがあるからその行動をとるのである。それにより繰り返し行動,組織ルーチン化 が行われるのである。それが NPO の場合,ミッションによる組織のガバナンス(インセンティブ の付加)が行われ,組織ルーチンの生成が促され,その定着(組織ルーチン化)がはかられるので ある。  異なる個々人の想いに支配される NPO が効率的に運営されるには,組織ルーチンのガバナンス

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面に注目をし,組織ルーチンに想いを入れ,作りこむことにより,組織活動の安定性について,可 能性を検討していくことが必要となるのである。  そこで重要な働きを果たすのがコアメンバー(管理者層)の役割となる。NPO ではその設立者, 設立メンバーを指すことが多い。自発的な参加者を募る NPO ではあるが,こと組織ルーチンの生 成に関してはその自発的な役割を期待することは難しい。前述したように,活動をすることが目的 であり,マネジメント側に関わる意思は当初持ち得ないからである。それは主に活動を期待される メンバー,つまりボランティアが固定化していないということにも関連する。加えて,そもそも自 主的に参加する,自らの都合の良いときに参加をしたい(であろう)ボランティアに自主的な組織 ルーチンの生成を願うことは,大変難しいと考える。その場合,組織に長時間いるようなメンバー が先導し組織ルーチンを生成,インセンティブを示しながら,繰り返し行動をさせ,組織ルーチン 化を促すことは,至極当然である。  そもそも実践が先行し,組織の安定的な成長を考えることが足りていない組織が NPO である。 それはミッション志向の組織であることとも関係するが,そもそも NPO は,ミッションの達成が 行われるのであれば,組織が存続・継続する必要がなく,またその創業者や設立者の思いが残れば, それでいいとの考え方が散見される組織でもある。よって,いかに現場で行われている実践的な活 動で,今後の NPO の運営に必要な活動が組織ルーチン化されるかは非常に重要なのである。  組織が,現段階で,安定的に運営される 1 つの合理的な形は官僚制ではあるものの,NPO にお いて,その内実としては実践が重要であり,管理等々については必要とはされていない現状がある。 活動を安定的に行うためのミクロな視点,NPO の組織ルーチンをまず生成,そして維持,定着さ せていくことが問題なのである。その中で,NPO におけるミッションの体現者としての管理者,リー ダー等,長期的に組織内部にいる組織ルーチン生成を先導する者が重要なアクターとなることに間 違いはない(大月 2004, 2007)6

 では,この組織ルーチンのガバナンス面に注目した Coriat and Dosi (1998), Dosi et al. (2008)の 議論,組織ルーチンにおける問題解決機能とガバナンス機能,というものを考えてみたい7。まず彼 らの組織感としては,組織とは問題解決を行うシステムであるということが前提として挙げられる。 そして,その問題解決を行うために存在するのは,互いの異なる興味関心を持つ個人であり,組織 における仕事とは基本的にその階層によってルーチン化されている。上位階層は下位階層の何をす るのかを決める意思決定を行い,下位階層はその活動の実践とその調整を行っている。そして階層 は権限の行使という意味も含まれている。 6 従来組織ルーチンは,組織ルーチンそのものの特性や組織能力との関連で議論がなされてきた。しかし近年 の議論では,その変革についての論考は多く,変革を組織内部者にもとめる議論は多い。その変化や,また その変化の途中にある組織ルーチンがどのように定着するかについての研究はその途についたばかりなので ある。

7 Dosi (2008)は Cohen et al. (1996)のルーチンの定義を一般的なものとして採用し,「選択の圧力に反応する

中,組織によって学ばれたコンテクストにおいて,繰り返し結果を生み出すため実行可能な組織能力である」 としている。ここでの組織能力は行動のパターンであり,それは局所的に蓄えられたもの,もしくは組織内 で行われているものを生み出す能力を指している,としている。そしてその実践の積み重ねが組織ルーチン となるとしている。

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 彼らが主張する組織ルーチンにおける管理行動のガバナンス効果とは,個々の利得を追う行動を ガバナンスする機能である。Nelson and Winter (1982)は,その機能を休戦状態(truces)として 表現している。このガバナンス機能は,問題解決を行う上での組織ルーチンが持つ,補完的な機能 であったが,進化論的な組織ルーチンの理解が主流となる今では,それが看過されてきたのである (Coriat and Dosi 1998, Dosi et al. 2008)。

 ある人物が組織に入った時,他のメンバーが行っている行動に驚くことはない。それはメンバー 間で,コンフリクトをもたらすような不一致がないからである。ただ組織内部での階層を考えるの であれば,強い管理機能が効いている場合,またそのような場合がない時もある。加えて,階層か らの管理という議論以外にも,その現象を説明するものとして,ルール等,制度による説明は存在 する。しかしながら,階層からの管理・指示について,それが組織を動かす力である,と強く言え ないのは,契約で縛れば人が簡単に動くという事でもないからである。しかし,制度からの逸脱と いう現象,また,ただ制度に従うという行動は良い結果をもたらさない場合も存在する。そのため, 管理の部分はあるものの,それを単純化することには危険性を伴い,どうしても管理という言葉に 拒否反応が出てしまう。そのため,行動するところと,その行動を指示する部分の間でのバランス, バーゲニングゾーンを考える必要がある。その一定のバランスを維持し(組織ルーチン化の過程), 提供するものが組織ルーチンなのである。Becker (2004)は,バーナードはそれを “無関心圏” と して定義をしている,としている。  組織ルーチンを考えるに,一旦それが成立すると,それにおいては権威者が指示を出す必要も, メンバーがそれに疑問を感じることもなく,その指示は受託される。多くの活動は,相互関係によっ て行われる修正に対して何の要望もなく行われていく。そのバランスされたところが休戦状態 (truce)と呼ばれる地点,つまり組織ルーチンが定着した部分なのである。

 さらに Coriat and Dosi (1998), Dosi et al. (2008)では組織ルーチンのガバナンス機能について具 体的な説明をテイラーの科学的管理法とトヨタ生産方式の例を挙げ説明している。  まず科学的管理法からの説明である。そもそも科学的管理法を志向する組織を考えるに,科学的 管理法を導入するということは,それ以前の,個々人が仕事を請け負っていた現状から,執行と計 画の分離よろしく,その仕事の仕方自体を変化させていることを意味する。それはつまり組織内に おける知識の扱いが変わったことを意味する。特に生産について考えるのであれば,作業研究がも たらしたものは,個々人が抱えていた暗黙知,スキルを可視化し,ルーチン,また一定の方法への 昇華であった。そうして成文化されたものは,既存の知識体系を変える。それは,出来高給や誰で も理解できる指導などのガバナンスメカニズムも伴って,なのである。この点が重要である。  そして一方,トヨタ生産方式からの説明である。トヨタ生産方式は規模の経済をこえる生産性を 実現した 1 つのシステムである。労働者は決められた活動をこなすのではなく,個々人の判断の元, そのラインを止めることができ,また車の完成までをイメージしながら生産を行うという事が求め られる。ここで重要なのは,個人の能力と同僚との調整,またコミュニケーションスキルを考える こと,つまりユニットで物事を考えることが重要であり,人事評価における昇進などが 1 つのガバ ナンスメカニズムとなることである。  両者が示すのはルーチン,ルール,情報の流れ等がそれぞれ,知識と指示,調整によって説明さ

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れる現象へ変化したという事であり,加えて,新しい組織ルーチンを導入するという事は,新しい インセンティブを伴うガバナンスの形態に適応した結果ということである。よって組織ルーチンと は,問題解決と組織内で調整をしなければならない利害のドメインの中で,適応と探索のプロセス の準安定的結果として理解されるものなのである。この理解は,NPO の組織ルーチン生成,ルー チン化を促すところに多大な貢献をしている。 6. NPO における組織ルーチンの必要性  田尾(1998, 1999, 2004)が指摘するように,NPO は想いを持って活動する組織であり,そもそ も雇用契約をすることにより組織のメンバーを固定化させようという組織ではないため,その組織 運営において一定の方式,簡単に言えば,官僚制との不適合をもたらす。加えてその参加者の多様 性,不安定性,加えて利害関係者が多く,環境圧力が強い組織である点は,組織ルーチン生成に多 くの困難をもたらす。しかし,NPO の活動は,緊急性はあるが誰も取り組めない分野で取り組み を行う時にこそ,輝きをみせるのである。その運営は社会からの課題に合わせつつも,効率,組織 存続を考えつつ,組織独自にその組織ルーチンを生成する必要がある。それは NPO における組織 ルーチンが,外部環境(特に社会問題の認識において)に対して変化できる,機能的な社会性を持 つこと,またその生成された組織ルーチンは内容的に社会性を持つこと(つまり利益主導のための 組織ルーチンの存在の否定),この 2 つを意味しているのである。  機能的な社会性,それは,Miner et al. (2008)の議論から理解するならば,既存の社会課題の枠 組みにあわせた組織ルーチンの再構築・再構成を行うのか(ルーチンミックスの変化),その社会 課題に合わせた新たなルーチンをつくるのか(ルーチンそのものの変化)を考える必要があること を示している。そして,その組織ルーチンの存在は,メンバーに休戦状態を作り出し,コンフリク トをもたらすことなく,活動の遂行をもたらすのである。  しかし,加えて述べるのであれば,内容的な社会性をもち生成された組織ルーチンは,社会的な 存在として存続圧力がかかるからといって,それにあわせ組織ルーチンの再構築・再構成をすれば よいという話ではない。つまり存続自体が目的となってしまうという問題である8。ゴールオリエン テッド,つまりミッションに沿う形で活動をするのでなければ,それこそ NPO の存在意義が問わ れかねない。以上のバランスを考える上では,どうしても NPO は,その組織ルーチンのガバナン ス面も考慮する必要があり,それが機能することにより NPO の組織ルーチン化は図られるのであ る。  そもそも利害関係者が多い NPO は,そのアクター,利害関係者,そしてさらに言えば,自主的・ 自発的に NPO に参加をしているメンバー自体を巻き込む組織ルーチンの構築をしなければならな い。そして自発的参加者に支えられる参加者主体の組織,つまり意に沿わない活動に対して,組織 の退出を持って表現する参加者たちの組織における組織ルーチンは,より強いガバナンス効果が求

8 Oster (1995)が述べるまでもなく,有名な例とすれば,YMCA がある。当初の宗教的教義は今現在の YMCA

からすれば,必要なことではない。しかし,当初の設立目的を考えれば,今現在の YMCA の状況は議論する 必要があるかもしれない。

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められる。

 一定の活動をする中では,何かを変化させることはコンフリクトを生み,コストを生み出す。し かも一定の成果が出ているのであれば,その変化に伴うコストは計り知れない。しかし変化を生み 出す状況も必要である。よって問題解決をする中では、その問題を認知する面とそのコントロール を考える面が重要となる。再述するが,Coriat and Dosi (1998), Dosi et al. (2008)の議論からすれば, 組織ルーチンは,問題解決と組織内で調整をしなければならない利害のドメインの中で,適応と探 索のプロセスの準安定的結果として理解される。そして以上が恒常的に行えるのであれば,その組 織は他組織に対してアドバンテージを持ち,また組織内での知識の再生産,蓄積に効果を与えるこ ととなる。  しかしながら,上述してきたようにそのような組織ルーチンを自発的参加者,つまり特定の活動 だけを行いたいボランティアに期待することは難しく,その活動を行うためのインセンティブ,ま た組織ルーチンの元となる強いミッションの構築には,設立者なりその活動を支えるリーダーの存 在は欠かせない。理想を語るのであれば,組織レベルでのルーチンしかり,社会に新たなシステム, 社会に対しても新たなルーチンを作れることも NPO には求められている。本論ではそこまでの議 論に立ち入ることはないものの,NPO に期待される活動は以上のようなものもある。  基本的な NPO 運営に関わる組織ルーチン(NPO 法人であれば,年度の初めから事業報告書提出 までの一連の流れ),つまりそれ自体は現場での社会問題解決を考える自発的に組織に参加をした 個人が望まない組織ルーチンを意味している。それを行うためのコアメンバー外のメンバーのイン センティブは皆無に等しいため,以上のような活動をいかに,理事長,事務局長等組織の設立メン バー,コアメンバーなどほぼ数人で生成,また定着をさせていくのか(つまりコアメンバーが自ら 進んで,補完機能としてのガバナンスが機能する組織ルーチンをいかに構築するのか),というこ とが,現在の NPO マネジメントを考える上では重要なのである。 7. 結   び  本論では NPO のマネジメントについて,その運営の継続性,組織としての活動の安定性について, 組織ルーチンの視角から議論してきた。  ミッション重視の活動が行われる NPO において,当初の参加動機と異なる活動,つまり組織運 営に関わる活動を自主的・自発的に行ってもらうことは非常に難しい。しかしながら,その NPO としての活動を継続的,安定的に行うのであれば,そのマネジメントに関わる活動も,その多様な るメンバーに行ってもらう必要がある。そのために,本論では組織運営の根幹となる組織ルーチン をして,メンバーに対しなんらかのコントロールをすることを考えてきた。  本論では,組織ルーチンがもつ補完的な機能である,ガバナンス効果,つまり個々の利得を追う 行動をガバナンスする機能に特に注目をした(Coriat and Dosi 1998, Dosi et al. 2008)。そして, NPOにおける組織ルーチンは,外部環境に対して変化できる機能的な社会性を持つこと,またそ の生成された組織ルーチンは内容的に社会性を持つことの重要性を指摘した。

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また組織ルーチンの元となる強いミッションを提供する,設立者なりその活動を支えるリーダーの 存在が欠かせない。今後も増えるであろう NPO 法人の解散数を考えるに,NPO における継続的な 活動,またその活動を安定的に行うためには,NPO のリーダーは第一線で活動をすることも必要 であるが,その引き際,事業継承も考え,その組織ルーチン生成を考える必要あるのではないだろ うか。 参考文献

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