理学療 法学 第
19
巻 第 1 号58〜
63
頁 (1992年 )報
告
肩 関 節 機 能 障 害 者
に
お け
る
Apley
Scratch
Test
と
自
動
的
可 動
域
の
関
連
*井
上 和
章
* *若
林 昌
司
天
野 幹
三要 旨
肩 関 節の疼 痛 及 び可 動 域 制 限 を有 する患 者41例 (52肩 ) を対 象に
,
肩 関 節 可動 域のス ク リー
ニ ングに使われるApley scratch test (AST )の有 用 性について検 討 を行っ た。 そ の結 果
,
AST は結髪様運 動に よ り外 転・
外 旋 結 帯 様 運 動に より内 転・
内 旋 を検 査 するとされてい るもの の,
前 者はむ しろ屈 曲と の相関が強く
,
肘の生理学 的 屈 曲な ど上 肢の運動が総合的に影響して い る の に対し, 後者では内旋の関 与が特に著 しい こと が わかっ た。 ま た
,
両テス トは実 際の 結髪・
結帯勁作を中心と し た 日常生活動作の状態を的確に反映してお り, 両動 作の難易度把握の指標と して の利用が可能であっ た。 な お
, AST
は手
・
手 指部の動きにあ ま り影響さ れ ないた め,
指 尖 部使 用によ る測 定で特に問題 は な か っ た。キ
ー
ワー
ド:Apley scratch test,
肩 関節可勤 域,
結髪・
結帯 動 作は じ め
i
こ 日常の臨床に おいて肩 関節疾患の治療や他の障 害に関 連 して肩関節 を取り扱 う機 会は非 常に多い。 治 療に先 立 っ て行わ れ る評価の際に は, 痛み・
筋 力・
動作分 析等 の検査 が実施さ れ る が,
これ ら と共に関 節 可 動 域 (以 下,
ROM
)測定は必須の項目と言え る。 ROM 測 定は原 則と して他 動 的 可 動 域に対 して実 施 す るもの と さ れて いる が,
痛み とROM の関 係か ら機 能1
璋 害を 明らかに し たりD,
実 際の ADL 場 而におい て使 用 可 能な機 能 的ROM を 把 握 する た めに は自動 的 可 動 域の 測 定が重 要 とな る。Apley scratch test (以下
,
AST )は肩 関 節の 自動 的 可動 域 を簡単に測 定 出来る便 利な方 法 として本邦にも紹 介されてお り2 }S ), 臨 床におい て もし ば し ば利 用さ れて いる
。
これに は検 査 側の手 を 頭 部 後 方へ 持っ て い くいわゆ’
TheRelationship bctween the Apley Scratch Test and
the Active Range of Mot 三〇n in Patients with Shoulder
Joint
DisabilitytS
庄 原 赤 十字 病 院理学診 療 課
Kazuaki Inoue
,
RPT,
ShQji Wakabayashi,
RPT,
KanzoAmano
,
MD :Dopar しrnent of Rehabi且itation,
ShobaraRed Cross Hosp正ta正
(受 付日 1991年2H16 凵/受理日 1991年4月15]二
D
る結 髪 様 運 動を行 わせ,
指 尖 部 と肩 甲骨三角部 〔注 :原 法では 上角 部と なっ て い るが,
触 診の容 易さか ら1
司部の 利 用と した) の距 離 を測 定 する テス ト (以 下,
テス ト 1 :図1)と,
手 指を伸 展・
外 転し た状 態で検 査 側の手 を背 中へ 回 す 結 帯様運 動 を行わ せ,
母指 尖端と反対側肩 甲骨F
角との距離を測 定 するテス ト (以 ド, テス ト2 : 図2
)の 2っ が あり,
それぞれ 外転・
外 旋,
内転・
内旋 の ス ク リー
ニ ングテス ト と さ れて いる。 し か し, 実際に 臨床場面で テス ト運動を実施さ せ る と,
上肢全体で の総 合 的な3
次 元 的 運 動と な る た め,
必 ずし も説 明さ れてい る様な内・
外 転に回 旋を交え た前 額 面 トで の運 動とはな り得ず,AST
使 用に際して い くっ かの疑問 点が生 じて き た。 そこ で,
今 同我々 は,AST
と肩 関 節 自動 的可 動 域の関 連を中心に,
以 下の点にっい て検 討を行っ た。
す な わ ち,
テ ス ト 正 は外 転・
外旋 テ ス ト2は内 転・
内旋の ス ク リー
ニ ン グテ ス トと さ れて い るが,
届 曲・
伸 展 運 動 は どの程度AST
に関与して い るのか,
肘 関 節の生理学 的ROM
は筋 肉の発 達度・
筋 緊 張 な どによ り変 化す る が,
この個 人差 がAST
に及ぼす 影 響は どの程度か,
AST は 指 尖部か らの距 離 を測定 す る が,
これに肩 関 節 機 能 障 害者に おける Apley Scratch Test と自動的可 動域の関連 59 表
1
対 象 症 例 数 側 齢 名 例 断 症 患 年 診 男17例 女24例 計41例 右28
肩 左24
肩 計52肩 (両 側 例ユ2
例を含む )24〜82
歳 平 均64.
1歳 肩関節周 囲 炎31
肩 腱 板 損 傷 9肩 骨 折 及び脱 臼7
肩 乳癌術後2
肩 そ の他7
庸 図 1AST (テ ス
’
ト 1 )測 定 法矢印問 (“
一
・
一)の距 離を測定する 図2
AST
(テス ト2
)測 定 法 矢 印間 (躰 ゆ)の距 離を測定 す る よ り手 関節・
手指 部での動 き が代 償 運 動 と して どの程 度 測定値に影響する のか,
AST は実 際の 日常 生 活にお ける結 髪・
結 帯 動 作 の状態 を反 映し,
その 可否 を判 断 するデー
タに どの程 度 な り得る のか,
の 4点である。 対象
症 例は 1989年6月から10月の聞に,
肩 関節の痛み及 びROM 制 限を主 訴として当 院 整 形 外 科を受 診 後,
当課 に紹 介された 41例52関 節で,
患側は右 28肩左 24肩で あっ た。 受 診 時 年 齢は24〜
82歳 〔平 均 64.
1± 12.
5歳 ) で あり,
診断 名は表 1の とお り であっ た。 な お,
脊柱 側 彎 及 び著 明な円 背のある者は脊 柱カー
ブ の変形に よりAST 値が変化する可能性が あ り, ま た, 肩 関節以外の 上肢 関 節に機能 障 害を有する者で は,
結 髪・
結 帯動作の可否が その障害部位に よっ て決定さ れ た り,
AST 値が影 響を受け る可能性 が あ る た め対 象か ら 除外した。 方 法 測 定 方 法につ いて :・
AST 測 定 測 定 肢 位は椅 座 位 と し,
同一
検 者 が行っ た。 測 定 部 位 は既に述べた様に,
テ ス ト 1が指尖と肩 甲 骨三角 部,
テ ス ト2が母 指 尖 端 と肩 甲 骨 卜角 との間の距 離である。 こ の際,
手 関節・
手 指 部の動 きが AST 値に与え る影響に つ い て検 討 するため,
手関 節・
手 指 部 を 含 ま ない橈骨茎 状 突起か ら三 角部及 び一
.
ド角まで の距離 測定を併せ て行っ た。・
肩及び肘 関節 可動域 測定 肩 関 節可動 域 (屈曲・
伸展・
外 転 ・外 旋 ・内旋 )及 び 肘関節屈 曲域は, 日本リハ ビ リテー
シ ョ ン医学会及び 日 本 整形 外科学会に おい て定めた方 法に準じて,
自動的 可 動域の測定を 行っ た。 この際 測定肢 位はAST と同様 に椅座 位で あ り, 同一
検者が行っ た。 な お回 旋に関 して は,
外 転45度の位 置に介 助 者が支 持し た状態で運 動 及び測定を行っ た。 これは第一
肢位で は内 旋の際,
前 腕が体 幹に ぶつ か るたあ最 終 域 まで の運60 理 学 療 法学 第
19
巻第1
号 動が困難であっ たり,
また,
第二肢位につ い ては その測 定肢位す な わ ち90度外転位その もの を取れ ない場 合が 生じ る と考えられ たため,
正常ROM
が内旋・
外 旋 共に 比較 的等 しい状態に な る4 〕と さ れて い る外 転45 度位を選 択し た。
・
結 髪・
結帯 動作の評 価判 定は 「可 能 」「困 難
1
「不 可能」の 3 段階で行っ
た。 評 価は結髪・
結 帯その もの の動 作に加え,
結髪では後 頭 部の洗 髪及 び髪を とく動 作,
結帯は腰部で ズボン又 はス カー
トにシ ャ ッを入れ る動 作 も対象と し,
頸 部や体 幹の 代償 運 動な しに片 手で楽に出来る ものを 「可 能 」,
代償 運 動を伴っ た り痛みのた め 速 や かに行え ない もの を 「困 難 」,
代 償 運 動 を行っ て も検査 側のみで は出 来 ない もの を 「不可能」 と して判 定し た。 検 討し た。 結 果1. AST
に対 する肩関 節可 動域,
及 び 肘 関 節 屈 曲 域の 影 響にっ い て (表 2 )テス ト1 (平 均
6.
5
± 5.
8cm
)はいずれの運動方 向と も相関を 認め た が,
最 も強 く相 関 を 示し た の は屈 曲(r
=−
0.
68
) (図3
)であり,
以 下 , 外転 (r=− O.
61),
外 旋 (r・
=− 0.
50
)の順であっ た (p<O.
01
)。 また,
肘 屈曲もr==
− 0.
49 (p〈 0.
Ol)と有意の 相 関 を 示 してお り
,
測定時には 全 例 と も肘最大屈 曲位を暴して いた。
テ ス ト2
(平均
10.
7
±9.
3
cm ) も同 様に,
運動を構 表2
肩
・
肘 関 節 可 動 域 値とAST 値の相関係数 検討方 法につ い て :1.
肩関 節 及び肘 関 節 運 動とAST
測 定 値の関 連 性にっ い てテ ス ト1は屈 曲
・
外転・
外旋の複 合 運 動に肘 屈曲が加 わっ た ものである た め,
これ らの運 動 方 向 とテ ス ト1
の 関 連につ い て Pearson の相 関 係 数 を 求め検 討 を行っ た。 これに対しテ ス ト2
は伸展・
内 転・
内 旋及 び肘 屈 曲の組 み合せ と考えられ るが,
今 回は内転 を除外し,
他の2
方 向と肘屈曲につ い て の み検 討 を行っ た。 これ は内 転とい う運 動 は あ くまで外 転に対 向する概念と して存 在 して お り,
純 粋な運 動 として は ありえ ない こど),
また,
下 垂 は重 力 を 利 用 する ため外転 状態で の拘 縮は非 常に起こ り に く く,
今回の対 象も全例が内転 0° 位 可 能であっ たこ とか ら,
テス ト2
と内転の関 連にっ いて は統 計 処理 を実 施し な かっ た。2.
手関 節・
手 指 部に見 られる正常な動き がAST
に与 え る影響につ い て3
群に分 類 した結 髪及 び結帯動作とAST
指 尖 値 (原 怯 )の関 係をKendall
の 順位相 関係数τ (タ ウ)を用い て表 わ し,
橈 骨 茎 状突起値の場合と比 較 した。
これに よ り特に差が認め ら れな け れ ば,
手 関 節・
手 指 部の AST に与える影 響は さ ほど問題に な ら ない ことにな る。
3.
AST と結 髪・
結 帯 動作の 関連にっ い て 結 髪 及び結 帯 動 作に お げ る 「可能」「困 難 」 「不 可 能 」 の 3群 間の AST 値の差が明ら かで あれば,
AST が結 髪・
結 帯 動 作などの 日常 生活動作の可 否を反 映して いる ことになるた め,
3 群の AST 値にっ い て一
元 配 置 法に よ る分 散 分 析 を行い,
明ら か な有意差が ある か ど う か を 肩関節 肘関節 テス ト1
屈 曲一
〇.
68 * * 外 転一
〇,
61 * * 外旋一
〇.
50 * * 屈曲一
〇,
49
** テス ト2
イ申展一
〇.
45
* * 内旋一
〇.
78
* *一
〇.
26 2015
?e10
: K51 ト
0
● (* * p<0.
01
) y=
29.
56−
O.
17x
r=−
0768(p<0.
01) 30 宕20
.
Sl
望
区101 ト 0 se IOO 120 140 160 180 屈 曲 (deg) 図
3
肩 関 節 屈 曲 角 度と テス ト1測 定値 y=
3ZO8−
0.
36x ■ 20 30 40 50 60 70 80 90 10D 内 旋 (deg) 図4 肩 関 節 内旋角度とテ ス ト2
測定値肩 関節 機 能 障害者にお け る Apley Scratch
Test
と自動的可動域の関連 61 表3
指 尖値及び橈骨茎 状 突 起 値と結 髪・
結帯動 作 との関速 Kendall (τ) テ ス ト 1 テス ト2
指尖
値 vs 結 髪
0.
59 ** 橈骨 茎状突 起値 vs 結 髪0,
54
** 指 尖 値 vs 結 帯0.
67
* * 橈 骨茎 状 突 起 値vs 結
帯
0
.
63 * * (* *p<0
.
01 ) 成 する と考え られる伸 展 (r=− 0.
45
),
内旋 (r・
・−
0.
78
) (図4
) と の相関が確 認 さ れた が,
伸 展に比べ 内 旋の方が その傾「司は著し かっ た。 ま た,
肘 関 節は特に関 連を認 め な かっ た。以上の こ とか ら
,
テ ス ト1
は 屈曲,
テス ト2は内旋を 最 も反 映する検査 法であ ること が明ら か となっ た。 2.
手 関節・
手指部の動 きがAST
に与え る影響にっ い て (表3)テス ト 1
・2
における指尖 値及 び 橈 骨 茎 状 突 起値の差 異を 検 討 するた めに求め た Kendall の順位 相関係 数τ を表3
に示 す。
こ の結果,
指尖値 及び橈 骨 茎 状 突 起値と, 結髪又は結帯動 作の間に はいずれ も有意の相 関が確 認さ れ た (pくO.
01
)。 これ らの値 (τ)につ いて更に詳しく 検 討 する と, テス ト1 ・2
共に橈骨茎 状突起値に比べ 指 尖 値の方が関 連が強い傾 向が見ら れ は し たもの の,
いず れ も統 計 学的に有意 差 を認 め る程の もの では なく, テス ト実施 時にみ られる手関節・
手指 部の動き がAST
に与 え る影 響は わずかで あ ることが わ かっ た。3 .AST
と結 髪・
結 帯 動 作の 関連につ い て (図5)結髪及 び結 帯 動 作の 可否に よっ て 区 分 した
3
群のAST
値 (指 尖値 ) を,一
元 配置 法に よ る分 散 分 析に よっ て検 定し た ところ,
テス ト 1・2
共に3
群 問に有 意 差を認め た (p< O.
Ol)。 更に,
Scheffe
の方法を用い て 行っ た多重比 較の結果,
結 髪・
結帯動 作 共に 「可 能 」< 「困 難 」く「不 可能」の1
順に有意に大きな値と なっ て い た (p< D.
01)。
これ はAST
値が結髪・
結帯 動 作の難 易 度 を 的 確に反 映 してい ること を示 すも のである。 考 絮 * 一*
串*
寧 一 厂一
一 * * w’
”
’
一
”
T *串 ** 一 一 12 ト ト ス ス テ テ O ●察
30 25 20§
15 ζ 1025 0
−
5 釧王
趾 総 脳 丁 σ ⊥ ± 4王
± 鎚王
王
2‘’
6±5’
4 15.
8±3.
2土
3.
2±5.
7 王:m巳an±SD・
粹 :PくO.
Ol 可 能 困難不 可能 可能 困 難不可能 (rF25Xn 司4)(rF=
1SU (n=
=
2の (肝 1の(尸 1 結 髪 動 作 結 帯 動 作 図5
AST
(指 尖 値 )と結 髪・
結 帯 動 作の 関 連肩関節 機能評価におい て ROM テ ス トは基本的検査項 目の
一
っ で ある。
矢 崎4> はROM
測定時に,
機能 的評価 肢 位で あ る座位。
立位での複 合 運 動 (動 作 )に よ る可動 域評価 も行 うべ きで あ る と し,
嶋田6)もPT 協会会員等 を対象にしたア ンケー
ト結果か ら, 結髪・
結帯 動 作 な ど のADL
と結びつ いた測 定 法の必 要性を示 唆して い る。
ま た,
Kapandji ’) も 同 様に肩の総 合 的機 能 評 価に必 要 な運 動と して, 髪を といた り手 を 頸 部の後ろに持っ て い く動 作を第一
運 動,
上 着や コー
トを着る動 作を第二運動 と して これ らの勳 作の検査 を勧め てい る。 し か し,
い ず れ もそ の具 体 的 測 定 基 準につ いて は触 れて いない。
AST はこれ ら結 髪
・
結帯 様の複合運 動 を一
定の基準 で測 定し, 外 転・
外 旋 (テ ス ト1
), 内転・
内旋 (テス ト2
)のス ク リー
= ング を行う もの と されて い る。
しか し, テス ト運動を行 う際に は肩 関 節の屈曲・
伸展や他関 節で の動き も同時に 見 ら れ,
前 述の運 動要素のみの ス ク リー
ニ ングで は な く,
上 肢の総 合 的な機 能 評 価と して利 用す る方が妥 当で は ないか と考え られる ため,
AST 値 に影 響 を 及ぼすと思わ れ る因子にっ い て検 討 を加え た。 まず,
テス ト 1は表2
の結果か ら も明ら かな様に屈 曲 が最も強く関 与して い る こと が判明した。 これは肩 関 節 障 害時に は屈曲よ り も外 転の方が制 限をうけ やすいS> た め,
テス ト1の よ う な運動を純粋な前 額 面で行うの は非 常に困難で あ り,
scapular plane に近い状 態で の挙上 運 動になり易い た め と考え られる。 また,
外 転 制 限が強 度の場 合に は,
矢状面に近い状態で の上 肢 挙 上と肘 屈 曲 によ りテス ト運 動を行う症例も見られ, テス ト1にお け る屈 曲の重 要 性を示 すもの であっ た。 ま た,
テ ス ト1は 測 定の際,
肘関節が必ず最大屈 曲 位 と な る た めこ の影 響 も考 慮 する必要が あ る。 これ は肘 関 節に外 傷 等の既 往のない症 例を対 象と し た今回の場 合で も, 筋 肉の発 達 度 等の個 人 差に より生理学 的 ROM が120
°〜
155Q (平 均 139°
±7,
5e)と幅広く分布して いた た め, こ の個 人 差 が 測 定 値に影 響 したもの と思わ れ る。 た だ し,
同一
症 例に おい て肩 関 節 治 療の経過を観 察する場 合に は,
テス ト エに対 す る肘 関 節の影響は問題と な らず,62 理 学 療 法 学 第 19巻 第 1号 肩の スク リ
ー
ニ ングテス トと しての有 用性 を否定 する も の で は ない。 次にテス ト2
につ い てみ る と,
その測 定 値 は 内転・
内 旋を示 すと さ れて い る もの の実 際に は伸展・
内旋 複 合 運 動であり,
特に内旋の関 与が著 しかっ た。 これは,
内 旋 の テ ス ト2に対する寄 与率 (r2)が O.
62で あり,
テ ス ト2
の値が内 旋によっ て6
割 以 上 説 明 され るとい うことか ら明 らかで ある。
肘 関節の影 響につ い て は,
テス ト2で は特に認められ なか っ た。 た だ し, 測定 時の状態を観 察する と, 肘 屈曲 角 度が増 す程テス ト2
の値が小さ く な る た め,
両者の 聞 に は関 連がある様に考え られ が ち だ が,
これ は あくまで 見掛けE
の もので あ り,
実際は肩 関 節 可 動 域 (特に内 旋)に より肘 関節の屈 曲可能な範囲が決定さ れており,
その 結果と して テス ト2
の 測定 値が変 化して いる と考え る方が妥当であ る。 よっ て,
テ ス ト2
で はテ ス ト1と異 なり,
肘 関 節の影 響を考 慮 する必 要は ない と考え る。
次に,
指尖値 及び橈 骨 茎 状 突 起 値の差 異を結it
e 結 帯 動 作 との関 連か ら比 較 検 討 した結 果,
両 者の間に特に有 意 差は な く,
手 関節・
手 指 部の関節 運 動が AST 値に与 え る影 響は さほ ど問 題 と な らないとい うことが わかっ た。
AST はス ク リー
ニ ングテス トと して の意味合いが大き いた め,
測定は出来る だ け素早く簡単に実施で き ること が望ま しく,
測定の容 易な指尖部の 利 用で問題ない とい う結果は,
臨床で の使用に際して都 合の い い もの であ る と言え る。 最 後に,AST
が実 際のADL
における結 髪・
結 帯 動 作の状態を反映して い る か否かにつ い て は,
図5
より明 ら か な関 連 性が確 認さ れ た。 これに よりAST
の測定 値 か ら結 髪・
結 帯 動 作の難 易 度を把 握 し,
動 作 遂 行に必 要 なROM 獲 得のた めの指標と して利用することが可 能 と 患わ れ る。
すな わち,
測 定 値の各 群 平 均 及 び標 準 偏 差か ら結 髪・
結 帯 動 作の 「可 能 」 及 び 「不 可 能 」の境 界 を推 測 すると,
テス ト1 :7cm 以 下・
テ ス ト2 ;9cm 以 下であれば各動 作が可能であり,
逆に テス ト1 :12cm 以 上・
テス ト2 :19crn以上の場 合には不 可 能と判 断 す るこ とがで きる。 ま た,
これ らの 動 作 を獲 得 するため に は,
前 述の AST に対 する影 響 因 子の検 討か ら,
結髪は 屈 曲,
結 帯 は内 旋の ROM 獲 得が最 も重 要で あると考え られる。 以 上の こ と か ら,
AST は上 肢の総 合 的な動 き を通 し て肩 関 節 可 動 域の ス ク リー
ニ ング を行い,
実際の結 髪・
結 帯 動 作の難 易 度 も把 握 することの で きる簡 単で便 利な 方 法であ り,
治 療 計 画の立 案や訓 練 効 果の把 握に有 益 な 情 報をもた らすテス ト であると思わ れる。
ま と め 肩 関 節の痛み及 びROM 制 限 を有する41
例52
関 節 を 対象として, AST に関する検討を行い,
以下の結 論を 得た。 1.
テス ト1は外 転・
外 旋,
テス ト2
は内転・
内 旋の スクリー
ニ ングテ ス トと さ れて いる が,
実 際に は テ ス ト1
は屈曲との相 関が最も強 く,
肩 関 節を申 心とした上 肢 の総 合 的な運 動が影 響して い る の に対 し,
テス ト2で は 内 旋 運 動の関与が著しい。 2.
テ ス ト1にっ い て は肘 関 節の生 理 学 的 ROM の個 人 差 も測 定 値に影 響 す る点 を考 慮 する必 要 が ある。
3.
手 関 節・
手 指 部の動 きがAST 値に与え る影響は あま り問 題と な ら ず,
ス ク リー
ニ ン グテ ス トと しての簡 便 性 等 を考 慮 す れ ば, 指尖部使用に よ る測定で差し支え な い。
4.
AST は 日常生 活で行う結 髪・
結帯動 作の状 態を 的確に反映しており,
その 難易 度を把握 するデー
タ と な り得る。 本論 文の要 旨は,
第 25回日本理学 療法士 学 会におい て発 表し た。 参 考 文 献 1)宮本重範:肩関節のモ ビ ライゼー
ショ ンー
特に五十 肩に対 する治 療につ い て.
理学療 法 学,
13:正87−
190,
1986.
2)Hoppenfeld S:「図解 四 肢 と脊椎の診 か た」 野 島 元 雄 (監 訳 ),
医 歯 薬 出 版,
東 京,
1984,
pp 19・
.
23.
3)11te田智 明,
金子 翼.
:「関節可 動 障害.
一
その評 価 と 理 学 療 法。
作業療 法 」メディカル プレ ス,
東 京,
1990,
ppll4・
ll5.
4)矢 崎 潔:肩 関 節・∫動城測定における留 意点.
理・
作・
療 法,
18:609−・
616,
1984.
5)信原 克哉 :「肩一
その機能と臨床」医学 書院 東 京,
1979,
pp 52 70.
6) 嶋田智 明:肩の ROM 測 定の問題点に関する一
考察一
ア ン ケー
ト調査 より.
理・
作・
療 法,
14; 571−・
580,
1980.
7)Kapandji IA :「カパ ンディ関節の生 理学1 (上肢 )」荻 島秀 男 (監 訳),
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東京,
1986,
pp 2−
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8) 池田 均,
信 原克 哉 :「肩 診 療マ ニュ
ァ ル」医歯 薬 出版,
東 京,
1987,
pp 69−
135.
E
ma
pm
ec
tsE]ee
ee.,
g
lcts
eS6Apley
Scratch
Test
t
EsttsorsttyOceg
63<Abstract>
The Relationship Between the Apley Scratch Test and the Active Range of Motion
in
Patients
withShoulder
Joint
Disability
Kazuaki INOUE, RPT, ShojiWAKABAYASHI, RPT, Kanzo AMANO, MD
Department
ofRehabilitation,
Shobara RedCross
HbspitalWe applied the
Apley
scratch test{AST)
topatientswith shoulderjoint
disability(52
sho-ulders intotaDtodetermane itsusefulness as a clinicaE measurement,1. Inthe firsttestthe patient was asked toreach
behind
his
head and touch theflattened
triangulararea of the opposite scapula. This isregarded as a screening examination of
ab-duction
and external rotation. The most significant correlation observed was between this firsttest and fiexion
(r=-O.68,
p<O.Ol), and a significant correlation was also observed betweenthis
first
testand elbow flexion.So we must take intoaccount thatthisfirsttestisaffectedby
synthetic movement of
the
upper extremity.
2,
Inthe second test,todetermine
the range of internalrotation and adduction, thepa-tientwas asked toreach
behind
his
back
and touch theinferior
angle of the opposite scapula.A significant correlation was observed between this second testand
internal
rotation(r=
-
O
.78,
p< O.Ol),
but
not observedfor
adduction.3. As the AST refiected not only the active range of motion but also thestate of what we call the"keppat$u"
and
"kettai"
motions of dailyIife,we were able touse the AST as an indexof
the
difficulty
ofthese
motions.4. The AST was littleaffected by wrist or finger