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たくましい沖縄の「おばあ」に学ぶ

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Academic year: 2021

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特別講演

た くま しい沖 縄 の 「

お ば あ」 に学 ぶ

琉球大学教育学部教授

平良

一彦

沖縄 の長 寿 の 諸 要 因 最 近 の 統 計 が示 す ところ によると、本 県 女性 の平 均 寿命 は1位 を保 って い る もの の、男 性 の平均 寿 命 は26位 と大 き く後退 した こ とが示 され た。 しか し高 齢 者に 関す る種 々 の指標 (百歳 長寿 率 、 三大 生活 習 慣 病 に よ る死 亡率 な ど)は 依 然 と して 沖縄 は長 寿 県 で あ る こ と を示 してお り、今 こそ長 寿 の継 承 と健康 の質 的 向上 へ 向 け た組 織 的 な取 り組 み が 強 く望 ま れ る。 人 の寿命 や 健康 に は遺伝 要 因や 気 候 、空 気 、水 な どの環 境 要 因 、保 健 ・医療 ・福 祉 な ど 諸制 度 の 充実 条件 な ども影 響 を及 ぼす 大 き な要 因 で あ るが、 個 々人 の ライ フス タイ ル もそ れ に劣 らず極 めて重 要 な 要因 で あ る こ とが認 め られ て きた。長 寿 県 沖縄 の 高 齢 者 の健 康 も、 沖 縄 独特 の風 土 の 中 で の 日々の 暮 ら し方 にそ の 要 因 が あ る。 沖縄 の長 寿 を支 えて い る要 因 は多 岐 にわ た っ てお り、 それ ぞれ の因 子 が深 く関連 しあ い な が ら結 果 と して現 在 の長 寿 県 を支 えて い る と理 解 され る。 沖縄 の長 寿 を支 えて い る要 因 は多 岐 に わた っ てお り、それ ぞれ の因 子 が深 く関連 しあ い な が ら結 果 と して現 在 の長 寿 県 を支 えて い る と理解 され る。 1)沖 縄 の 自然 環 境 条 件 沖縄 の 亜熱 帯海 洋 性気 候 は 気温 の年 格 差 が 小 さ く、 そ のた め年 中温暖 で 活動 しや す い 。 気 温 の 年較 差 が12.3度 の沖 縄 で は本 土 と違 っ て一 年 を通 じて 野 外 で の活 動 を可能 に してい る。 この事 は冬 の 問屋 内 で静 か な生 活 を強 い られ る場 合 が多 い 本 土 の 自然 環 境 とは 格段 の違 い で あ る。 この よ うな環境 下で季 節 に 関係 な く、沖 縄 の高 齢 者 は 、高齢 に な って も体 が動 く限 りは 畑仕 事 を した り、 また 大宜 味 村 で は、村 の伝 統産 業 で あ る芭 蕉布 の糸 紡 ぎ をす るな ど、運 動や そ の他 の社 会 活 動 を続 けて い るの で あ る。 2)高 齢 者 の 食 生 活 の 特徴 長 寿 村 と して知 られ る大 宜 味村 の高齢 者 の健 康 像 を血液 生 化 学 値 でみ る と、ア ル ブ ミン、 ヘ モ グ ロ ビン、血清総 コレステ ロール値が東北秋 田地方 の農村の高齢者 に比べ ると、良好 な状 態 を維 持 して いた。 食 生 活 の面 で は 、秋 田地方 の農村 に比 べ 、 肉類(特 に豚 肉)の 摂 32 日本 助 産 学 会 誌 第16巻 第3号(2003.3)

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取 量 が3倍 、大豆 に代表 され る豆類 の摂 取 量が1.5倍 、緑 黄色 野 菜 の 摂取 が3倍 も多 く、 食 塩 摂 取 量 で は秋 田 の13.8gに 比 べ9gと 極 めて 少 な い とい う特 徴 が見 られ た 。 健 康 を支 える 「食 の重 要 性」 は今 さ ら言 うまで もない。豚 肉や 豆 腐、緑 黄 色野 菜 、海 藻 類 の摂 取 量の 高 さや 食塩 摂 取 量 の低 さは全 国 との比 較 に於 い て現 在 もその 特徴 を留 め てい る。 3)老 人 の社 会 的活 動 性 の 高 さ 沖 縄 の温暖 な気 候 は一年 を通 じて屋 外 で の活動 を可能 に してい る。 東 北地 方 の老 人 が 冬 の期 間 、屋 内 で静 か に 日々 を送 ら ざるを え ない環 境 とは格 段 の違 いで あ る。 現在 大 宜 味村 の総 人 口はお よそ3.500人 で あ るが、90歳 を越 える長寿 者 が80人 もい る。特 に この村 の老 人 は"生 き てい る限 りは現役"と い う意識 が極 めて 強 く、 高齢 にな って も 体 が動 く限 りは畑 仕 事 を した り、 村 の伝 統産 業 で あ る芭 蕉布 の糸紡 ぎ を した りと何 らか の活 動 一 労働 、運 動 、 その他 の社 会活 動 を続 けてい る。 従 って 当然 の こ となが ら食 事, 服 の着 脱,入 浴,ト イ レな どの 日常生活 動 作能 力(ADL)も 高齢 にな るほ ど秋 田の老 人 と の 差 が大 き くな る傾 向 に あ った。 秋 田の某 農 村 と大 宜 味村 老人 達 の就 労 率 の比較 では 、 男女 共 に就 労 率 に大 きな違 い が あ り,特 に女性 で は格段 の 開 きが み られ る。 この村 で は 仕事 も生 き 甲斐 と感 じてい る老 人 が極 めて多 く、それ こそ プ ロダ クテ ィブ ェイ ジン グ(生 産 的加 齢)を 日々 の生 活 で実 践 して い るの で あ る。 また 大宜 味 村 で は、高齢 者の大 半 が独 居 また は老 人 夫婦 のみ の世 帯 で あ るが 、決 して 社会 か ら孤立 して寂 しく暮 ら してい る とい うこ とはな い。別 居 の 子や 孫達 、 隣 近所 の友 人 との交流 は驚 くほ ど広 く、 かつ 深 い。 特 に友 人 を 「一 番 頼 りに し、心や す らぐ相 手 」 として挙 げ る者 が 多 く、 この こ とが村 人 気質 とも相 ま って 老人 達 の生 活適 応性 を高 めて お り、 日々 の生 き 甲斐感,主 観 的健 康 感 を高 め,総 体 的 に老人 達 の健 康 に 良い結 果 を も た ら して い る こ とは 間違 い ない 。 4)高 齢 者 の 睡 眠 健 康 平成9年 度 の厚 生 白書 の なか で、 厚 生省 は 「健 康」 と 「生 活 の質 」 の向 上 のた め に 「生 活 習慣病」 の概 念 を新 しく提 案 してい る。 健康 増進 や 疾病 予 防 とい う、第 一次 予 防 の観 点 か らの提 案 で あ る。 この 生活 習慣 病 を予防 す るため の重 要 な柱 の なか に は、適 度 な運 動 を す る、 適 正 な 睡 眠 時 間 を とる な どの 睡 眠 習慣 と密 接 に 関連 した項 目が あげ られ て い る。 人 生 の1/3近 い時 間 を睡眠 に費 やす 我 々 人間 に とって疾 病 予 防、健 康 の保 持 、増進 のた めに 睡眠 が 大 きな 意味 を持 って い るで あ ろ うこ とは容 易 に理 解 され る し、長寿 県 沖縄 の高 齢 者 の睡 眠健 康 に も関心 の集 ま る ところだ 。 そ こで われ われ は 大宜 味村 を含 む 沖縄 と東 京 の 高齢 者 で睡眠 習 慣 と睡眠 健 康 の地 域比 較 を試 み た が、 両地 域 に大 きな差 異 がみ られ た。 就床 時 刻 に は有 意 差 はな い もの の 、起床 時刻 は沖縄 が早 く、睡 眠 時間 も短 い こ とが わ か っ た。 睡眠 負債 につ い ては 、沖 縄 は東 京 に比 べ て 半分以 下 と少 な く、睡 眠 時間 が 短い に も関 わ らず 、 沖縄 の高齢 者 は 良質 の 睡眠 を とって い る こ とが判 明 した。 また東 京 で は高齢 者の 9割 以 上 の人 が何 らかの 睡眠 愁訴 を訴 え るに も関わ らず 、 沖縄 の老 人 はお よそ1割 と極 め 日本 助 産 学 会 誌 第16巻 第3号(2003.3) 33

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て少 な く、 睡眠 状 態 が 良好 に保 たれ て い るか とが 判 明 した。 さ らに睡 眠 健康 につ い て み て い くと、睡眠 維持 障 害 関連 因子(中 途 覚 醒 、熟 眠感 、夜 間頻 尿、早 朝 覚 醒疼)、 睡眠 随 伴症 状 関連 因子(寝 ぼけ 、金 絞 り、恐 怖性 入 眠 時幻 覚 、む ず むず 脚)、 起 床 困難 関連 因子(起 床 困難 、床 離 れ)、入 眠 障 害 関連 因子(入 民選 時 、睡 眠薬)な どの得 点 因 子 は いず れ も沖縄 の 老 人 が 良 好 で あ る こ とが確 認 され た 。 一 方 、高齢 者 の生 活 ス タイル 項 目につ い て 比較 して み る と、散歩 習 慣 や 昼 寝 習慣 を有 す る人 の割 合 が 沖縄 で は 多 く、運 動 量(一 週 間 当た りの体 を動 かす 仕 事 や 運動 の回 数)も 沖 縄 の 老人 が は るか に多 か った。 これ らの結 果 は 、沖 縄 にお け る高 齢者 の 睡眠 健 康 の維 持 に 生 活 ス タイル の良 さが重 要 な働 きを して い る こ とを示 唆 してお り、 そ の こ とが 沖縄 の長 寿 に も少 な か らぬ貢 献 を して い る も の と思 わ れ る。 これ らの結 果 を ま とめて み る と、 食 生 活 の 面 で は ① 肉 類(特 に豚 肉)を 過 不 足 な く食 べ る ② 豆類(特 に豆 腐)を よ く食 べ る ③ 野 菜 類(特 に緑 黄 色 野菜)を 多 く食 べ る ④ 海 草 類(特 に 昆布 ・もず く)を 多 く食 べ る ⑤ 食塩 摂 取 量 が少 な い 運 動 の 面 で は ① 生涯 現役 意識 が強 く、 高 齢 に な って も仕 事 を も って い る者 が 多 い ② 老 人会 の活 動 ・ボ ラ ンテ ィア 活 動 ・地域 の伝 統行 事 へ の参 加 率 が高 く、社会的活動 性が高い ③ 運 動(ス ポー ツ)・ 散 歩 の 習 慣 を持 っ者 が 多 い 休 養 の 面 では ① 昼 寝 の 習慣 を持 つ者 が 多 い ② 夜 の 睡 眠 の 質 が 良 い とい った 素 晴 ら しい特 徴 が指 摘 で き る。 5)精 神風 土-ス ロー ライ フ と"な ん く るな い さ"の 世 界 沖 縄 の 自然 と、そ こで生 活 を営 む人 間 社会 にお け る風 俗 ・習 慣 とが 織 りなす 複 雑 な つ な が りの な かで 、 沖縄 独特 の精神 風 土 が形 成 され た。 もの にあ ま りこだ わ らな いお お らか な心 を持 ち、 あ くせ くせず 、 自然 と共 に歩 み 、 生活 す る よ うな、のんび りした余裕 のある心の リ ズム を もち、情 緒 豊 かで 、人情 味 の あ る性 格 や 人 的 に も精神 的 に も近 隣所 と垣 根 の な い 、深 い 交流 の あ る生 活 を して い て、 共 同体 意識 が極 め て強 い。 そ こか らユイマール(相 互扶助) の精 神 や他 者 とも分 け隔 て な く付 き合 うイチ ャ リバ チ ョー デー の 県 民 性 が培 われ、心 身 を う 34 日本 助 産 学 会誌 第16巻 第3号(2003.3)

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ま くコ ン トロール し、 豊 かな 人 間性 が培 われ る。 地域 で 人 と人 との深 い かか わ りの 中で役 割 を持 ち、将来 をポ ジテ ィブ に展 望す る 「な ん くるない さ」。この よ うな 生 き方 が健 康 に も良い 影 響 を及 ぼ して い る もの と思 わ れ る し、沖 縄 の持 つ 癒 しの 力 の本 態 は ま さに こ こ にあ る。 6)「 揺 ら ぐ沖 縄 の長 寿」-お ば あ に学 べ! 中年 以 下 の ライ フス タイ ル の乱 れ と健 康像 の悪 化に よ り、男性 の平均 寿 命 は全 国26位 に まで 大 き く順 位 を 下 げ て しま った 。 そ の要 因 の大 半 は生 活習慣 、 中で も食 生活 の大 き な変容 にあ る と思 われ る。 この こ とは 、 沖 縄 の長 寿 に 関 して は遺伝 的 素 因 よ りもライ フ ス タイ ノレや食 文化 の社会 的 な継 承 が何 よ りも 大 事 な事 を示 唆 してい る とい え よ う。 昨年 行 われ た新 百歳 を対象 に した調 査 で も食 の変容 が 強 く指 摘 され てい た。 この沖 縄 の健 康像 の変化 を どの よ うに受 け止 め て 、今後 の健 康 づ く り を進 め るか が、今 問わ れ てい る。 キー ワー ドは逞 しい 「沖 縄 のお ば あ」 た ち の生 き方 であ ろ う。 県 内百歳 以 上 の長 寿者 五 百数 十 人 の9割 を 占め る 「お ば あ」 た ち。 沖縄 の長 寿 を考 察 す る時 、高 齢者 、な か で も 「お ば あ」 た ち の精 神 世界 の豊 か さこそが それ を支 え る屋 台骨 で は なか ったの だ ろ うか。 多 くのお ば あた ち は した たか に明 る く、 おお らか な 性格 の持 ち主 が 多 い。 そ して 地域 社会 や 家庭 内で の役 割 、多 くの友 人 との深 く、 かつ広 い交流 、伝統 文 化 の継 承 力 な ど、「お ば あ」た ちの た くま し さが沖 縄 で生 きる うえ で相応 しい健 全 な ライ フス タイル の形 成 と継 承 に 大 き く貢献 してい る。 長 寿 の 再 生-ジ ェ ロ ン トピア(Gerontopia)沖 縄-の 建 設 をめ ざ して 「長 寿県 沖縄 」 の座 を守 り、迫 りつ つ あ る超 高齢 社 会 にお い て も保 健 ・福 祉 の 分 野 で リー ダー シ ップ を発揮 してい くた め、高齢 者のQOLの 向 上 をめ ざ した種 々 の取 り組 み を 展開 して い く必要 が あ る。 め ざす 目標 は 「福 寿 」 で あ り、福 寿 とは健 康 で、 しか も幸せ で生 き生 き と した長 寿 の こ とで あ り、沖縄 の 「お ば あ」 た ちの 生 き方 か ら学 び 、高齢 にな って も元気 で 生 き 甲斐 の あ る生 活 が楽 しめ る沖縄(ジ ェロ ン トピア沖 縄)の 実 現 をめ ざす 取 り組 み を本 県 は 積 極 的 に推進 して い く必 要 が あ る。 日本 助産 学 会 誌 第16巻 第3号(2003.3) 35

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