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大学生の自閉スペクトラム症傾向,社会的スキル,援助要請スタイルが学校への適応感に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-67 254

-大学生の自閉スペクトラム症傾向,社会的スキル,援助要請スタイルが

学校への適応感に及ぼす影響

○前田 由貴子1,2)、金山 裕望3,4)、田邊 雅子1)、佐藤 寛1) 1 )関西学院大学文学部 、 2 )関西大学心理学研究科、 3 )関西学院大学文学研究科、 4 )日本学術振興会 【目的】 日本学生支援機構(2017)の調査では,全国の大学 に在籍する障害学生のうち,約 9 %が高機能自閉症等 (アスペルガー症候群を含む)の自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder,以下ASD)に含まれる学 生であるとされている。特にASDの特徴を持つ学生 は,周囲とのコミュニケーションの問題によって不適 応を抱えやすく(近藤,2012),就職活動停滞や二次 障害により社会進出が困難になる。そのため,ASD傾 向の大学生への支援が果たす役割は極めて重要であ り,大きな意義を持つ。 従 来 か らASD者 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 問 題 に は, ソーシャルスキルトレーニング(以下SST)の有効性 が示されている。たとえば中島ら(2015)は,ASDの 大学生を対象にSSTを実践し,ソーシャルスキルの自 己評定や他者評定が改善したことを報告している。ま た山本ら(2013)は,ASDの基準を満たす19歳から27 歳までの青年に対してSSTを行い,ソーシャルスキル のほとんどの評価得点が上昇したことを示している。 しかしながら,ASD者が生活上必要とされる全ての ソーシャルスキルをSSTによって補うことは困難であ るため,周囲から援助を受けて環境に適応していくス キルも重要である。斎藤ら(2010)は,ASDを含む発 達障害大学生への心理教育の目標として,自己理解に 基 づ く 援 助 要 請 ス キ ル の 獲 得 を 挙 げ て お り, 高 橋 (2012)も,支援を要請するスキルの重要性を指摘し ている。 そこで本研究では,ソーシャルスキルと援助要請ス タイルが学校への適応感に及ぼす影響について,ASD 傾向の高低によって異なる影響がみられるのかを検討 することを目的とした。 【方法】 1 .調査対象者 大学生362名(男性83名,女性278 名,不明 1 名,平均年齢19.98±1.41)を対象者とし た。 2 .質問紙( 1 )援助要請スタイル尺度:永井 (2013)( 2 )社会的スキル尺度:菊池(2004)( 3 ) 学校への適応感尺度:大久保(2004)( 4 )自閉症ス ペ ク ト ラ ム 指 数16項 目 短 縮 版(Autism spectrum Quotient Japanese Version ; AQ- J -16)栗田ら (2004) 3 .分析方法 ASD低群とASD高群に分け,各 群で社会的スキルと援助要請スタイルが学校への適応 感に及ぼす影響を検討するため,共分散構造モデルの 多母集団同時分析を実施した。最初に等値制約を置か ないモデル(モデル 1 )を検討し,次に各群間で有意 な差がなかったパスと共分散に等値制約を置くモデル (モデル 2 )を検討し,最後に全てのパスと共分散に 等値制約を置くモデル(モデル 3 )を検討した。 4 . 倫理的配慮 本研究は大阪国際大学の研究倫理委員会 による承認を受けた(2017年 5 月 1 日,承認番号: 17-02)。 【結果】 各モデルの適合度をTable 1に示す。AICの値はモデ ル 2 が最も低い値を示しており,その他の指標も十分 な値を示していたため,モデル 2 を採用した(Figure 1)。Figure 1には,観測変数,標準化係数を記載して おり,誤差変数間の共変関係は省略している。 まず,社会的スキルから援助要請スタイルへのパス をみると,ASD低群では,援助要請過剰型(以下過剰 型)(β=.16, p <.01)援助要請自立型(以下自立型) (β=.22, p <.001)に有意な正のパスがみられ,援 助要請回避型(以下回避型)(β=-.16, p <.01)に 有意な負のパスがみられた。ASD高群では,自立型(β =.27, p <.001)に有意な正のパスがみられた。 次に,社会的スキルから学校への適応感へのパスを みると,ASD低群では,居心地の良さの感覚に有意な 正のパス(β=.55, p <.001),課題・目的の存在に 有意な正のパス(β=.46, p <.001),被信頼感・受 容感に有意な正のパス(β=.61, p <.001),劣等感 の無さに有意な正のパス(β=.38, p <.001)がみら れた。ASD高群では,居心地の良さの感覚に有意な正 のパス(β=.73, p <.001),課題・目的の存在に有 意な正のパス(β=.54, p <.001),被信頼感・受容 感に有意な正のパス(β=.73, p <.001)がみられた。 さらに,援助要請スタイルから学校への適応感への パスをみると,ASD低群では,過剰型から劣等感の無 さに有意な負のパス(β=-.34, p <.001),回避型か ら居心地の良さの感覚に有意な負のパス(β=-.17, p <.001),回避型から劣等感の無さに有意な負のパス (β=-.29, p <.001)がみられた。ASD高群では,過 剰型から劣等感の無さに有意な負のパス(β=-.32, p <.001),回避型から居心地の良さの感覚に有意な負 のパス(β=-.16, p <.001),自立型から居心地の良 さの感覚に有意な負のパス(β=-.24, p <.001)が みられた。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-67 255 -【考察】 ASD低群,ASD高群ともに,社会的スキルは学校への 適 応 感 と 正 の 関 連 が み ら れ た。 先 行 研 究( 武 蔵, 2012)と同様に,社会的スキルを向上させることは, 学校適応感を高めることが示唆された。またこの傾向 は,ASD高群で特に顕著に示された。 援助要請スタイルは,ASD低群,ASD高群ともに,過 剰型から劣等感の無さに負の関連がみられ,回避型か ら居心地の良さの感覚に負の関連がみられた。肥田ら (2015)は,援助要請を過剰に行うことや回避するこ とが,ストレス反応を高め,友人満足感を低減させる ことを指摘している。適切な援助要請スタイルが適応 感の向上につながることが予想される。 一方で,ASD高群において,自立型から居心地の良 さの感覚に負の関連がみられたことから,ASD傾向が 高い学生は,適切な援助要請を行っても適応感が高ま ることがない可能性が示唆された。今後は,縦断的な データを用いて検討を行うとともに,ASD傾向が高い 学生の援助要請行動と学校適応感の関連について,更 なる検討が必要である。

参照