History, Present, and Future of Diagnostic Imaging:
Magnetic Resonance Imaging (MRI)
Yutaka Imai, M.D. and Tomohiro Yamashita, M.D. Summary
MR imaging has become an indispensable imaging modality in clinical medi-cine. The history of MRI is not a short one, with the development of NMR be-ginning as a new method to analyze the spatial structure of solids. During the early 1930s, Isidor Isaac Rabi’s laboratory at Columbia University studied how to measure the nuclear magnetic moment, and Cornelis Jacobus Gorter first used the term “nuclear magnetic resonance” in a publication in 1942.
In 1946, after the Second World War, two scientists in the United States, Felix Bloch and Edward Mills Purcell, independently described a physicochemical
NICHIDOKU-IHO
Vol. 50 No. 1 40–51 (2005) Department of Radiology,
Tokai University School of Medicine
放射線診療の過去・現在・未来
放射線診療
1-2.画像診断の過去・現在・未来−MRI領域
東海大学医学部 基盤診療学系 画像診断学
今井 裕,山下 智裕
phenomenon that was based on the magnetic properties of certain nuclei. Bloch had reported the successful detec-tion of nuclear inducdetec-tion, and Purcell succeeded in determining the absorpdetec-tion of radiofrequency by protons in par-affin wax by magnetic resonance. During the next few decades, NMR developed in a wide range of applications. Raymond Damadien measured T1 and T2 relaxation times of excised normal and cancerous rat tissue, and found that tumorous tissue had longer relaxation times than normal tissue.
Paul C. Lauterbur of the State University of New York had the idea of applying magnetic field gradients in all three dimensions and applied the back-projection technique of computed tomography to creating NMR images in 1973. Lauterbur called his imaging technique “Zeugmatography.” Richard Ernst proposed the method of switched magnetic field gradients in the time domain, which is the basic reconstruction of current MRI phase and frequency encoding. This led to the 1975 publication by Ernst’s group, “NMR Fourier zeugmatography”.
Peter Mansfield at the University of Nottingham demonstrated a new method for the determination of spatial structures in solids that relies on the NMR “diffraction”effect. Alan Garroway and Mansfield published a paper about imaging formation by a selective irradiation process in 1974. Mansfield proposed a line technique that led to the first image of in vivo human finger in 1977, and the first abdominal imaging in 1978.
In the early 1980s, the sequence developments for the fast imaging of MRI began. Mansfield developed echo-planar imaging (EPI) in 1977. However, the first movie images could only be obtained by EPI in 1981, after the invention of shielded gradients. Jürgen Hennig of the University of Freiburg introduced the RARE sequence in 1986. This technique was extended to multi-shot RARE (the commercial names of fast or turbo spin-echo) by Nobuya Higuchi of Keio University in 1989. Another rapid imaging technique using the gradient-echo sequence, FLASH, was de-veloped by the group from the Max-Planck Institute, as was GRASS by Felix W. Wehrli in the 1980s.
The development of MRI has been achieved through combined knowledge from the fields of mathematics, chem-istry, physics, radiology, and computer science. The historical flow of MR imaging development continues, and is unlikely to slow in the future.
はじめに
現在、MRI(magnetic resonance imaging)は臨床現場 においてなくてはならない診断装置のひとつとなり、本 邦では既に何千台ものMRI装置が稼働している。私が初 めてMRI装置を知ったのは、Texas州のDallasで第66回 北米放射線学会(RSNA)が開催された1980年と記憶し ている。このときに人体が入る小さなトンネルを有する 大型トレーラーのような巨大な装置がスライドに投影さ れ、NMR(nuclear magnetic resonance)という文字が書 いてあったのをよく覚えている。頭部のNMR画像も提 示されたが、あまりにボヤッとした画像で臨床に使用で きるとはとても思えなかった。しかし、1988年に筆者 がPennsylvania大学に留学した際には、朝 7 時30分か ら深夜12時まで週 7 日間フル回転で毎日検査が行われ るまで進歩していた。しかも頭部、脊椎、上腹部、骨 盤、四肢など全身ほぼすべての領域で詳細なMR画像が 撮影されていた。また大学内には臨床で使用していた 2 台の装置のほかに研究用に数台のMRI装置が稼働してお り、手作りで作成された木製のMRI装置で撮影されたア リの卵の画像をみて大変に驚いたのを今でもよく記憶し ている。 このようにMRI技術は、世界中の研究施設や企業の研 究者の大変な努力により支えられ、臨床応用ができるま で極めて短時間に進歩した技術といえる。しかし、歴史 を紐解いてみるとその歴史は長く、古くはいわゆる化学 分析用のNMR法の発明と応用という黎明期であり、こ の領域において最も貢献したのがEdward Mills Purcell とFelix Blochであった。この 2 人は1952年にNMR現 象の発見者としてノーベル物理学賞を受賞している。こ れがMRI技術の基礎になっていることは間違いない。ま た現在でも化学分析に使用されている大切な技術であ り、臨床においてもMR spectroscopy(MRS)としてわれ われも日常診療に応用している。 次のステップは、NMR技術を利用して生体から情報 を抽出して画像化する発展期に移行するが、この技術の 発展に大きく貢献したのがPaul C. LauterburとPeter Mansfieldであり、2003年12月に 2 人がノーベル生理 学・医学賞を受賞したことはわれわれの記憶にまだ新し い。 最後のステップは、医療現場における臨床応用への模 索と普及を目指した時期であり、現在に至る。これには 多くのMRI技術の原理や理論の開発のほかにMRI装置 の改良や実際の臨床に応用するための手法をデザインす る必要があった。またMRI用の造影剤や機能画像などの 開発もこの領域における診断学の確立に重要な役割を果 たしたといえる。
化学分析のためのNMR法の誕生
1 9 3 0 年代に既に米国C o l u m b i a 大学の I s i d o r I s a a c Rabi’s laboratoryにおいて物質の核スピン運動に関する 研究が進められており、1937年からはオランダからや ってきたCornelis Jacobus Gorterが中心となり試行錯誤 を繰り返しながら精力的に研究に取り組み、1938年に は R a b i ら が“ A n e w m e t h o d o f m e a s u r i n g n u c l e a r magnetic moment”という論文1)を報告し、また1942年 に G o r t e r ら が 著 し た 論 文2 )の な か に 初 め て“ N u c l e a r Magnetic Resonance”という言葉が登場する。われわれ がよく使用するNMRの用語は、Gorterの論文に由来す るものと推察される。 その後、第二次世界大戦の終戦間もない1946年に米 国の 2 つのグループから独立してNMR現象に関する論 文がPhysical Review誌に掲載された。この論文を書い たのが、当時34歳であったHarvard大学のPurcellと、も う 1 人は41歳のStanford大学のBlochであった。 Edward Mills Purcellは、1912年米国生まれの物理学 者で、電話技術に関連する職に就いていた父の影響を受 けて若い頃から工学や科学に興味をもっており、特に家 に廃材として電気ケーブルや銅線などが常に置いてあっ たことも彼に大きな影響を与えた。またMIT Radiation Laboratoryでレーダーシステムの研究を続けるかたわ ら、Robert V. PoundとHenry C. Torreyという 2 人の 仲間と夜や週末の空いた時間に高周波radio frequency (RF)エネルギーの共鳴吸収現象の研究を行っていた。 そして、1946年に蛋白質を含む固体物としてパラフィ ンのプロトンの共鳴吸収信号を観測することができ、そ の現象をnuclear magnetic resonanceと名付けた。その 後、Harvard大学に戻りNMRの研究を続けると同時に 生物物理学や天文学においても多くの重要な研究成果を 上げ、さらに大学教師としても学生に大きな影響を与え た。 Felix Blochは、1905年スイス生まれの物理学者で、 ヨーロッパで教育を受けた後、1 9 3 4 年に米国に逃れStanford大学にて働き始めたが、第二次世界大戦中は Los Alamos National Laboratoryにて原子エネルギーの 仕事に従事した。戦後再びStanford大学に戻り、NMR の研究を続けた。彼は水のプロトンの核誘導の実験を行 い、共鳴の検出はスピン系に共鳴遷位を起こさせるのに 用いられる電磁気回路自体に起こる共鳴時の変化をもと にして行われる。この現象はfree induction decay(FID) (図 1)といわれ、RF coilで検出される信号は、生体組 織により異なる時定数で変化することを証明した。これ はまさにNMRの原理における最も重要な発見であった といえる。 また1950年にはErwin L. Hahnは、2 つの高周波パル スを照射すると 2 つのFID信号のみならずに第 3 の信 号が得られることを突き止め、これをs p i n e c h o(SE) と名付けた3)。また彼はBlochの方程式に基づいて信号 を解析し、T1値およびT2値の計測を行っている。この 発見によりこれまでのcontinuous wave法からpulse法、 Fourier法のNMRと進むことになる。実際に生体から NMR spectroscopyのデータを得たのは、1974年のOx-fordのグループであったとされている。 そのほかの注目される仕事としてNMRによる血流測 定が挙げられ、1959年頃にJay Singerらは生体から血流 を測定する方法を研究4)しており、実際にこれが臨床に 応用されたのは1980年代中頃であった。しかし、血流 測定に関する特許はAlexander Ganssenが1967年に取得 している。また1960年には、Hahnによってphaseの違 いによる速度計測の基本概念が示されている。
画像化への挑戦
1970年代は、まさに生体からNMR信号を収集して画 像化する挑戦が始まった時代といえる。実は1971年に NMRの画像化を最も強く推進する研究報告がある人物 によりなされた。これがNew York州立大学のRaymond Damadienであり、ネズミの腫瘍(癌組織)は正常組織に 比べて緩和時間が長いことを証明し報告した。この発見 が与えたインパクトは大変に大きく、これまでとは全く 異なる原理で悪性腫瘍を診断できる可能性を示した。そ してDamadienらは全身型超伝導マグネットを用いた N M R 装 置 に よ り 生 体 か ら の 画 像 撮 像 を 試 み 、 “Apparatus and method for detecting cancer in tissue”として1972年 3 月17日に特許を出願、1974年 2 月 5 日 に米国特許を取得している。しかし、残念ながら彼の特 許にはNMR技術を用いた具体的な方法に関する記載は なく、彼が最初に考案した装置では画像を得ることはで きなかった。この時にFONAR社で開発され使用された 装置は、現在でもスミソニアン博物館に収蔵されてお り、私たちも直接目にすることができる。そして現在広 く使用されている磁気共鳴映像法(MRI)のMRの文字を 最初に作り出したのも、DamadienならびにFONAR社 で あ っ た 。 ち な み に F O N A R 社 の 社 名 を つ け た の も Damadienであり、FONARの意味するfield focusing nuclear magnetic resonanceにも「局所緩和時間の測定 によってtissue chemistryを評価できる」といった強い Damadienの信念を感じることができる。 1 9 7 3 年の同じ頃に日本人のA b e らが、“a t a r g e t e d NMR scanner”(磁場焦点法)として1973年 2 月 2 日に 米国、英国、ドイツ、フランス、ソ連を含めた国際特許 を取得5)し、1974年に出版された論文、“Fundamental investigations(in vitro)for a non-invasive method of tumor detection by nuclear magnetic resonance”6)にて、 その具体的な方法について報告している。このような先 駆的な仕事が日本でも行われていたことは、記憶にとど めておかなければならない。また注目すべき仕事として はJean Jeenerが1971年 9 月にユーゴスラビアのセミナ ーで「NMRの多次元化」の講演を行った。このインパク トは極めて大きく、これがやがて画像化に結びつくこと になる。 1.0 0.5 0.0 −0.5 −1.0 0.00 0.02 0.04 0.06 Time(seconds) Signal amplitude 0.08 0.10
画像化の実現
NMR現象の画像化には、生体からのNMR信号に空間 的な位置情報を加味して収集しなければならない。断面 像による人体の画像化に関しては、やはり1979年にノ ーベル生理学・医学賞を受賞したGodfrey N. Hounsfield とAllan M. Cormackにより開発されたCTの原理がNMR の画像化においても重要な意味をもっている。 NMR現象の画像化という明確な意識をもって研究を 行ったのは、New York州立大学のLauterburである。 1973年に彼は、Nature誌に“Imaging formation by in-duced local interactions : examples employing nuclear magnetic resonance”という論文7)を掲載している。彼は 1971年の 9 月初旬のCTの原理がまだよく知られていな かった頃に、NMRの画像化に 4 × 4 列、あるいは 8 × 8 列の空間に線形勾配磁場を加えることにより特定の位 置の一次元のデータが収集され、これを45˚、90˚さらに 135˚の位置で同様に収集するCTのback-projection tech-niqueを応用している。Nature誌には水の入ったチュー ブを画像化した原理が掲載されており、1974年にはマ ウスの胸部の画像も撮像されている。またL a u t e r b u r は、この方法を“NMR zeugmatography”と呼んでおり、 これは主磁場と線形勾配磁場を結びつけるという意味を 込めた名前であると考えられる。このようにLauterbur がNature誌に書いた論文は、MRIの歴史の誕生である と認識する研究者も多く、画像化においては革命的な仕 事であったといえる。またLauterburは、彼の仕事を 1974年の 1 月にInternational Society of Magnetic Reso-nance(ISMRM)で、同年 4 月にはスイス人であるRich-ard Ernstに招待された学会で講演を行っている。そし て、これは翌年の1975年には、彼を招待したErnstと彼 の同僚のAnil KumarやDieter Weltiにより時間的に傾斜 磁場を変更する“NMR Fourier zeugmatography”につな がった。これはまさに現在のMRIにおけるphaseおよび frequency encodingとFourier transformの応用の始まり であった。NMR現象の画像化においてもう 1 人の重要な人物 は、やはりNottingham大学のMansfieldらである。彼ら のグループは、もともと過ヨウ素酸誘導体の結晶などに ついて研究していたが、1974年にAlan Garrowayおよび Mansfieldは、NMRの画像化について“Image formation in NMR by a selective irradiative process”という論文8)
を掲載し、いわゆる選択励起法を考案し、同時に特許も 取得している。また彼らは1975年には“line technique” を完成し、1977年に生体の指の断面像を、さらに 1 年 後の1978年には、最初の腹部の画像も発表している。 彼らの仕事はk-spaceの概念とNMR技術を結びつけた新 しい概念を確立した画期的研究であったといえる。その ほかにも1977年にPaul Bottomleyらが人体の手関節、 Damadianらが人体の胸の断面像の撮像に成功してい る 。 ま た 1 9 7 8 年 に は 、 E M I 社 に 所 属 し て い た H u g h ClowとIan R. Youngは、初めて人体の頭部の横断像を 撮像し、2 年後にWilliam Mooreらが頭部の最初の冠状 断像と矢状断像を報告した。またAberdeen大学のJohn MallardのグループであったJim HutchisonおよびBill Edelsteinらは、“spin-warp technique”と呼ばれる実用 的な2D Fourier transformを開発し、1980年には、Ab-erdeen大学に設置されたprototype MR equipmentにて 人体のMR画像の撮像に成功している。 その後、1982年にはRobert N. Mullerら9)がいわゆる “ o f f - r e s o n a n c e i m a g i n g ”、 す な わ ち 現 在 “magnetization-transfer imaging”として知られている 技術を開発している。もうひとつ注目すべき仕事は、 MR angiography(MRA)であり、動き回る血流のspinの 画像化として、既に1951年にG. Suryanによってtime of flightとして報告されている。また1960年にHahnにより 考え出されたphaseの違いを利用した血流計測法は、 1 9 8 7 年以降になってC h a r l e s D u m o u l i n によりp h a s e contrast angiographyへと発展し、time of flightと同様 に 全 世 界 に 普 及 し て い る 。 現 在 は G d - D T P A 製 剤 (Magnevist®)を用いたMRAが主流となりつつあり、末 梢の細かい血管まで明瞭に描出され、さらに腹部では門 脈のみを描出した選択的な画像も可能である(図 2)。
高速撮像による臨床応用への実用化
1980年代は、MRI撮像の高速化への挑戦の時代でも あった。最も有名な方法はMansfieldとIan Pykettによ り提唱されたecho-planar imaging(EPI)であったが、ハ ードウエアの改良がなされ実用化できるまで、さらに数 年を要している。1986年にはドイツのFreiburg大学の Jü rgen HennigがEPIと似たRARE(rapid acquisition with relaxation enhancement)を開発した。しかし、本 法はエコー時間が長いために水ばかりを示す画像であったため、当初はあまり注目されなかった。しかし、 RAREの改良を考えていたHarvard大学のグループのな かに日本から留学していた押尾晃一と樋口伸也がいた。 そして1989年に留学から戻った樋口は 1 人で慶應大学 のMRI室で毎日深夜までRAREをマルチショット化して 改良し、臨床で求められるエコー時間まで短縮する試み をしていた。彼は書いたプログラムを毎日修正し、ファ ントムを用いて撮像、さらにプログラムを修正するとい った作業を毎晩数カ月繰り返していた。当時私たちが求 めていたのは、呼吸停止下でのT2強調画像の撮像であ った。それがある晩に完成し、その場に一緒にいた百島 祐貴と筆者が被写体となり、さっそく息止めのT2強調 画像で上腹部の撮像を行ったのを今でもよく覚えてい る。それは16エコーの設定で約26秒もの息止めであっ たが、これまで見たことのない十分なT2コントラスト を有する、動きによるアーチファクトの少ないT2強調 画像であった。この撮像方法は、最初にFSE(fast spin echo)としてGE社を通して広がり、その後、他のメーカ ーもTSE(turbo spin echo)等として 1 年以内に世界中 に普及した(図 3)。
また、もうひとつの高速撮像法がAxel Hasse、Jens Frahm、Dieter Matthaei、Wolfgang Hä nickeおよび Dietmar K. Merboldtにより開発されたgradient-echo (GR)sequenceであるFLASH(fast low angle shot)で、
Siemens社が採用した。またスイス人であるFelix W. W e h r l i も G R s e q u e n c e に よ る 高 速 撮 像 法 と し て 、 GRASS(gradient recalled acquisition in the steady state)を開発した。これらはいずれもRAREよりも高速 で、呼吸停止下での撮像には最も優れており、同時に血 流も描出できる利点を有していた。またGR sequence は、flip angleを変更することによりT1強調に近い画像 やT2強調画像に似た画像などコントラストを調整する ことができる点も臨床において有用性を示した。その後 もGR sequenceとspin echoを組み合わせたような高速 撮像法が開発され、次第にMRIの臨床応用の範囲が拡大 した。 Mansfieldにより最初に考え出されたEPIは、MRIの ハードウエアの改良が達成されるようになった1987年 になって初めて実用化され、心拍周期によるcine mode での心臓画像が得られた。また心臓画像に関しては、近 年 で は T r u e F I S P( f a s t i m a g i n g w i t h s t e a d y precession)、あるいはb-FFE(balanced fast field echo) と呼ばれる高速撮像法の誕生と造影剤の投与による心筋 の評価、さらに冠動脈の描出などにより、MRIが循環器 領域の臨床の場において大変重要な役割を担っている (図 4)。
高速撮像法の新しい応用として挙げられるのが、 shingle shot FSE、あるいはhalf Fourier法を組み合わ
図 2 肝硬変症例におけるMRAの有用性によ る食道静脈瘤の描出 A 正面像でみた門脈相における食道静脈瘤 (矢印) B 同症例の側面像 A B
G slice RF G read G phase 図 3 FSE(multi-shot RARE) A 1 9 8 9 年 に 樋 口 が 手 掛 け た m u l t i s h o t R A R E の s e -quence design
B Conventional spin echoによるT2強調画像(撮像時間 9 分50秒) C FSEで撮像したT2強調画像(撮像時間 4 分05秒) A B C D 図 4 心臓MRI(心筋梗塞症例) A b-TFEにより撮影されたcine image B 遅延造影による心筋viabilityの評価(短軸像) C 同症例(水平長軸像) D Soap-bubble MIPにて表示した冠動脈MRA A B C D
せたHASTE(half Fourier shingle shot TSE)技術であ り、1 回の90˚RF pulseの後に長いエコー列を用いて撮 像するため極めて短時間のうちにT2強調画像を得るこ とができる。ただし、横緩和により信号の減衰も著しい ため、MRCP(MR cholangio-pancreatography)やMR u r o g r a p h y などの水の描出(hydrography)に使用され る。現在、本法は非侵襲的な胆管膵管撮像として、日常 の診療において不可欠な撮像法のひとつになっている (図 5)。
ハードウエアの開発
MRIのハードウエアの開発は、1974年頃にEMI社で 全身用のMRI 装置が開発され、その後Picker社(後の Marconi社、現在のPhilips社)が、次いで1977年には 図 5 MRCPとvirtual endoscopy A 呼吸同期で撮影されたMRCP B 同データから作成した膵管胆管合流部のvirtual endoscopy C 同症例の左右肝管の分岐部の内腔表示 Siemens社も開発を始めている。しかし、市販される MRI装置の本格的な開発は、GE社も含めておそらく北 米放射線学会で初めて発表された1980年以降と考えて いる。日本においては、1982年 7 月に古瀬和寛らの大 変な努力により中津川市民病院にFONAR QED 80-al-p h a が導入されている。本装置にはa n a t o m y m o d e と chemistry modeの 2 つのmodeがあったが、anatomy modeの映像はchemistry modeでのT1値計測のための位 置決めが目的であったとされている10)。 マグネット自体も低磁場の永久磁石のものから、高磁 場用の超伝導マグネットが使用されるようになり、海外 では既に3Tや7TのMRI装置が臨床機として用いられて いる。また当初採用されていた装置ではroom-shieldが 必要であったが、装置自体で遮蔽するself-shieldとな り、安全性も向上すると同時に装置の導入も容易となっ A B C Dた。またgradient coilによるパルス状の磁場によりもた らされる渦電流もM R A や高速撮像において問題とな り、この対策としてactively shielded gradient coilが開 発され、さらにgradient coil自体の性能も向上し、各メ ーカーとも時間的、空間的に厳しい条件下での撮像に対 応できるような強力なgradient coil systemへの改良が 行われた。 空間分解能の改善に関して頭部の画像では、当初より bird-cageと呼ばれる頭部専用のRF coilが使用され、高 い空間分解能を有する画像が得られていた。しかし、躯 幹部や四肢においては高速撮像法が開発されても部位に よっては臨床の要求に応じられる空間分解能ではなかっ た。1980年代中頃より関節などの部位によってはsur-face coilが使用され、さらに 2 枚のsurた。1980年代中頃より関節などの部位によってはsur-face coilで被写 体を挟むsaddle coilも使用された。その後、位相を90˚ 変化させるquadrature coilが開発され、脊椎用コイルと してsignal-to-noise ratio(SNR)の高い画像が得られる ようになった。さらに1988年頃にはPennsylvania大学 のグループにより前立腺疾患を対象としたendorectal surface coilの開発が行われ11)、生体から病理組織像に 匹敵するような詳細なMR画像が得られるようになった (図 6)。これは外科医から前立腺被膜の浸潤の有無を問 われた際に、MR画像の空間分解能をさらに向上させる 必要性を知り、これがendorectal surface coil開発のき っかけとなった。さらに表在臓器を対象としたRF coil としてPhilips社からmicroscopy coilも市販されてお り、詳細な病理所見も描出するMR画像を得られるよう になった。
一方、SNRを保ちながら広い感度領域を得る方法と して、GE社は数枚のsurface coilを連結したphased ar-ray coilを開発し、それぞれのcoilを多数の受信アンプ に接続する多チャンネル化が進み、躯幹部の画質は飛躍 的に向上した(図 7)。現在では、Siemens社から全身を 小さなsurface coilで覆うTotal imaging matrix(Tim)と 呼ばれる全身スキャンを目的としたRF coilも開発され ている。 新しいハードウエアとしてはopen magnetのMRIが挙 げられ、現在はPhilips社から1.0Tの超伝導のopen mag-n e t を搭載する装置も既に海外では市販されている。 open magnetを搭載したMRIは、IVRの領域ではMRガ イド下での手技や関節の運動を観察するkinematic study などに利用されている。
Functional MRIの誕生
筆者が最初に脳機能を可視化するfunctional MRIを目 にしたのは、1994年のSociety of Magnetic Resonance in Medicine(SMRM)の会場で、Harvard大学のグルー プから発表された“A multi-stage statistical technique to identify cortical activation using functional MRI” であり、MRIで脳機能も知ることができるようになった こ と に 驚 い た 。 現 在 、 一 般 的 に は 局 所 脳 血 流 量 (regional cerebral blood flow)と局所脳血液量(regional cerebral blood volume)を対象としたものを脳賦活試験 と認識されている。MRIでは最初はガドリニウム製剤を 用いた脳機能評価の報告があったが、1990年にOgawa らは、“Oxygenation-sensitive contrast in magnetic r e s o n a n c e i m a g e o f r o d e n t b r a i n a t h i g h m a g n e t i c fields”により脳賦活前後でのMRI信号強度が変化する ことを捉えて報告し12)、Ogawaらによって提唱された BOLD(blood oxygenation level dependent)contrastの 言葉は広く知られるようになった。現在は日常の臨床に おいても施行されるようになり、これまでの画像検査で は知ることのできなかった脳賦活の状態が解析されつつ ある(図 8)。 最近では超急性期の脳梗塞の診断に拡散強調画像の有 用性が確認され、既に日常の診療に応用されている。し かし、diffusionに由来する信号変化についての記載は 古く、ランダムな分子運動、すなわちdiffusionに対す る信号変化については、既に1950年のHahnの論文のな かにも記載されており、実際にdiffusionの解析を行っ たのはCarrとPurcellであった。現在では、拡散現象の 計測の応用であるMR diffusion tensor imagingが注目 されており、これにより得られる脳神経線維の描出はこ れまでとは異なるアプローチによる脳機能の評価が期待 されている(図 9)。また最近では、躯幹部においても拡 散強調画像の有用性に関する検討が盛んに行われてお り、今後の臨床的有用性が期待されている(図10)。おわりに
MRIの歴史は、Heraklitosが“Everything flows and nothing stays”と述べているように、特にここが歴史の 出発点であるという時はなく、多くの分野において発展 してきた学問とそれを支えてきた先駆者達の努力により
図 6 P e n n s y l v a n i a 大 学 の グ ル ー プ が 開 発 し た endorectal surface coil
A Prototypeのendorectal surface coil B Aを用いて最初に撮像されたグレープフルーツ C 初めて生体から撮像された精NのT2強調画像 D F D A の 承 認 が 得 ら れ 最 初 に 市 販 さ れ た
endorectal surface coil
E 承認後のprobeで撮影された前立腺癌(矢印)の T2強調画像
A B C D E D
Phased array coil 1 2 4 3 4 RF Amp. Body デジタル レシーバー デジタル レシーバー デジタル レシーバー デジタル レシーバー デ ー タ の 合 成 合成画像 図 7 1990年にGE社が開発したphased array coil
A 骨盤用のphased array coil B Phased array coilの構造
図 8 Functional MRI(Bonn大学 の3T MRIで撮影) A
図 9 拡散テンソルにより作成された神経線維の画像(tracto-graphy)
完成されてきたといえる。例えば数学者であったJean-Baptiste-Joseph-Fourierが考え出したFourier transform なしにはMRIの誕生はなかったといえる。このように MRIの歴史は調べれば調べるほど多くの分野で活躍する 人物が登場するフィールドの広い学問で、現在でもMRI の歴史の流れは止まることなく延々と続いている。 謝 辞 稿を終えるにあたって、これまでMRI医学の基礎を教えて頂 いた現Harvard 大学Kressel 教授ならびにLenkinski教授、良き 友人でもあるPennsylvania大学のSchnall教授、いつも私たちを 励まして下さった故Pollack教授に深謝致します。また3.0Tの装 置で撮影したfunctional MRIの画像を快く提供してくださった Bonn大学放射線科の先生方ならびにPhilips Medical Systems社 のCauteren博士に深謝致します。
【参考文献】
1)Rabi II, Zacharias JR, Millman S, et al: A new method of measuring nuclear magnetic moment. Phys Rev 53: 318, 1938
2)Gorter CJ, Broer LJF: Negative result of an attempt to observe nuclear magnetic resonance in solids. Physica (The Hague) 9: 591, 1942
3)Hahn EL: Spin Echoes. Phys Rev 80: 580–594, 1950 4)Singer RJ: Blood-flow rates by NMR measurements.
Sci-ence 130: 1652–1653, 1959
5)Abe Z, Tanaka K, Hotta M, et al: [Patent] Application. Measurement method from the outside (to obtain) infor-mation in the inside applying nuclear magnetic resonance. Japanese patent application. 48-13508, 1973
6)Tanaka K, Yamada Y, Shimizu T, et al: Fundamental in-vestigations (in vitro) for a non-invasive method of tumor detection by nuclear magnetic resonance. Biotelemetry 1: 337–350, 1974
7)L a u t e r b u r P C : I m a g e f o r m a t i o n b y i n d u c e d l o c a l interactions: examples employing nuclear magnetic reso-nance. Nature 242: 190–191, 1973
8)Garroway AN, Grannell PK, Mansfield P: Image formation in NMR by a selective irradiative process. J Phys C: Solid State Phys 7: L457–L462, 1974
9)Muller RN, Marsh MJ, Bernardo ML, et al: True 3-D im-aging of limbs by NMR zeugmatography with off-resonance irradiation. Europ J Radiol 3: 286–290, 1983
10)古瀬和寛,井澤 章:NMR臨床応用の初動期と生体緩和
時間研究の歩み.日磁医誌 11:251–267,1991
11)Schnall MD, Lenkinski RE, Pollack HM, et al: Prostate: MR imaging with an endorectal surface coil. Radiology 172: 570–574, 1989
12)Ogawa S, Lee TM, Nayak AS, et al: Oxygenation-sensi-tive contrast in magnetic resonance image of rodent brain at high magnetic fields. Magn Reson Med 14: 68–78, 1990