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全文

(1)

ダイヤモンド状カーボンの水素含有量と摩擦・摩耗特性

ダイヤモンド状カーボン(DLC)膜の摩擦・摩耗特性がDLCの種類によって変化する要因を調査す るため、本研究用に準備した基板に市販の各種ダイヤモンド状炭素(DLC)膜をコーティングし、 その水素含有量を若狭湾エネルギー研究センターのタンデム加速器からのHeイオンビームを用い てERDA法で測定した。これと同バッチで処理した試験片を用いて往復式のピンオンディスク試験 を行い、水素含有量と摩擦係数の関係を調べた。また、摩擦係数が変化する要因を調べるため、 摩擦により生成した摩耗粉のラマン分光分析を行った。さらに、圧縮された空気で純水と固体粒子 を混合させたスラリーをノズルから高速に噴射させ、 評価材料に衝突させて摩耗速度を調べるマイクロ スラリージェットエロージョン(MSE)法で各種DLCの摩耗速度を調べた。

研究概要

研究成果

まとめ

神田一隆(福井工業大学)、岩井善郎(福井大学)、橋本賢樹(福井県工業技術センター) 石神龍哉(若狭湾エネルギー研究センター) 研究名「ダイヤモンド状炭素(DLC)膜の組成と摩擦・摩耗特性に関する研究」 12種類のDLCについてERDA法で水素含有率を 測定したところ、図1のような結果が得られた。 水素含有量約4%のDLCは多層構造のため、これ を除外すると、H量は0%付近の水素フリーDLCと、 14~24%の範囲の水素含有DLCに分けられること がわかった。また、アンバランスマグネトロン スパッタ方式で製造した膜には約3%のArが含まれ ることが分かった。 図1 各試料の水素含有量 図2 水素含有量と摩擦係数の関係 水素含有量と摩擦係数の関係を往復式の摩擦試 験で調べた結果、空気中でのDLCと高速度工具鋼 SKH51間の摩擦係数は水素含有量とともに上昇す る傾向が見られた。 また、ラマン分光分析から、摩擦部周囲には熱影 響を受けたDLCの存在が認められ、これがDLCの 低摩擦係数を発現している可能性が示唆された。 0 5 10 15 20 25 30 10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 Hydrogen content, % w e a r ra te , m /m in UBMS PCVD TFAD AIP ① ②⑪ ⑦ ⑩ ⑥⑧ ③ ④ ⑨ ⑤ 図3 水素含有量と摩耗速度の関係 MSE試験の結果、図3に示したように、水素含有量 の増加とともに摩耗速度が上昇することが分かった。 水素含有量の増加とともに硬さが低下することから、 摩耗速度は硬さに逆比例するという結果でもある。 図3中の番号④の試料は硬軟2層構造であり、全 体の傾向からは外れる。また、番号⑦の試料は本試 験から膜の特性と考えられる摩耗の不安定さがある ことがわかった。これも全体の傾向から外れている。 DLC中の水素含有量と摩擦係数および摩耗の関係を調べ、一定の関係があることが分かった。しかし、 個々に比較すると、一定の関係を持つ中でも、優れた特性を示すDLCや逆の傾向を示すものまである。ま た、水素含有量が5~14%の範囲のデータが不足しており、その領域を充足が今後の課題として残った。

(2)

平成21年度

共同研究成果報告書

ダイヤモンド状炭素(

DLC)膜の組成と

摩擦・摩耗特性に関する研究

平成

22 年 3 月 12 日

研究責任者

神田

一隆

(福井工業大学)

共同研究者

石神

龍哉

(若狭湾エネルギー研究センター)

岩井

善郎

(福井大学)

橋本

賢樹

(福井県工業技術センター)

(3)

1.

はじめに

2.

DLC の種類と作成方法

2.1

DLC の種類

2.2

各種

DLC の特長

2.3

DLC の成膜方法

3.

試験方法

3.1

DLC 試料の作成

3.2

弾性反跳陽子検出(

ERDA)法による水素含有量の定量

3.3

往復式摩擦試験による

DLC の摩擦係数の測定

3.4

マイクルスラリージェットエロージョン(MSE)法による

DLC の摩耗率の測定

4.

試験結果

4.1

ERDA 法による水素含有量の定量結果

4.2

往復式摩擦試験による

DLC の摩擦係数

4.3

MSE 試験による DLC の摩耗率

5.

考察とまとめ

参考文献

(4)

研究題目 ダイヤモンド状炭素(DLC)膜の組成と摩擦・摩耗特性に関する研究 1.はじめに 近年、環境問題への意識の高まりに伴って自動車、家電、製造業などの分野で省エネルギー、省資源、 有害物質の低減への取り組みが行なわれている。特に自動車業界では、排出ガスの削減や省エネルギー の観点から自動車の燃料消費量の低減が求められている。機器の効率を低下させる要因の一つは摩擦損 失であり、したがって、機器の摺動部の摩擦係数の低減がエネルギー消費の削減には効果的である。近 年、これらの分野では耐摩耗特性や潤滑特性に優れたダイヤモンドライクカーボン(DLC)が注目されて いる。DLC 膜は高硬度であり、無潤滑下でも耐摩耗性が高く低摩擦係数であることから切削工具、金型、 各種摺動部品など多彩な用途で実用化されている。また自動車部品への適用も始まっており、今後さら なる用途拡大が予想されている。しかしながら、DLC は製造法によって様々な形態のものが生成され、さ らに膜の種類によって耐摩耗性や摩擦係数が大きく異なるという特徴がある1,2) 水素含有量で DLC を分けると、①水素を含有する DLC と、②水素をほとんど含有しない水素フリーDLC、 および③それらに金属を含有させた DLC がある。従来の試験から、②と③は潤滑油中で良好な摩擦特性 を示し、①は無潤滑下で良好な摩擦特性を示すと言われている。しかし、無潤滑下で 0.1 以下の低摩擦 係数を示すと言われている水素含有 DLC でも種類によっては 0.3 程度を示すものがあり、その理由は明 らかではない。また、DLC は特異な弾性挙動を示すことから、摩耗形態にも特別な性質が現れる可能性が あるが十分に調べられていない。その状況を示す参考例として Fig. 1-1 に福井大学で得られたマイクロ スラリージェットエロージョン(MSE)法による各種 DLC 膜の摩耗率(Wear rate)を示す。

そこで、本研究では水素含有 DLC を用いてピンオンディスク法による摩擦試験とマイクロスラリージ ェットエロージョン法による摩耗試験を行ない、DLC の水素含有量と摩擦・摩耗特性との関係を明らかに する。

(5)

2. DLC の種類と成膜方法 2.1 DLC の種類 1971 年に Aisenberg と C:Habot3)によって、炭素イオンを加速して基板に堆積させると、硬質な炭素膜 が生成されることが見出された。同氏らはこれをi‐カーボンと呼んだ。以後、しばらくの間その名前 で呼ばれてきたが、その後様々な方法でiカーボンに相当する硬質な炭素膜が生成されることが明らか となった。また、それらの炭素膜は製造方法によって様々な形態をとることも判ってきた。そこで、そ れらの炭素膜を総称して「ダイヤモンドのような特徴を持った炭素」という意味の Diamond Like Carbon (DLC)と呼ぶようになった。 DLC は非晶質構造(=非結晶質構造=アモルファス構造ともいう)を持っている硬質炭素膜の総称であ る。最近は DLC の範囲が拡大され、必ずしも硬質ではない非晶質炭素膜も DLC と呼ぶようになっている。 炭素が主要構成元素であるが、生成方法によっては炭素中に水素が含有される。また、新たな特性を持 たせるために N(窒素)や W(タングステン)、Si(シリコン)、Cr(クロム)などの元素を含有させた DLC もある。 DLC 膜は物理蒸着法(PVD 法)およびプラズマ援用化学蒸着法(PCVD 法)で成膜される。PVD 法および CVD 法による成膜方法はさらに細分化され、それぞれ特有の DLC 膜が形成される。Fig. 2-1 には代表的 な炭素物質であるグラファイト、DLC、およびダイヤモンドの構造と特徴を示す。 Fig. 2-1 グラファイト、DLC、およびダイヤモンドの構造と特徴 【DLC の種類と呼び方】 (1)a‐C:H : 水素含有アモルファスカーボン(a はアモルファスを示す) C:H 膜とも呼ばれる。PVD と PCVD の両方法で成膜可能である。 (2)ta-C : テトラヘドラルアモルファスカーボン(四面体構造アモルファス炭素) PVD 法の一種であるアークイオンプレーティング法、またはフィルタードアーク イオンプレーティング法で成膜される。水素を含まない DLC。

(3)Me-DLC : 膜中に金属を含有する DLC。Me は金属を示し、W,Si,Cr などの

金属が該当する。PVD とPCVD の両方法で成膜可能である。 (4)水素フリーDLC: 水素を含有しない DLC の総称、スパッタイオンプレーティング法、 アークイオンレーティング法で作られる。

グラファイト

DLC

ダイヤモンド

グラファイト構造 アモルファス ダイヤモンド構造 C C+H C - 1000~8000HV 10000HV 構造 元素 硬さ

(6)

2.2 各種 DLC の特徴 【a-C:H, C:H】 a‐C:H、および C:H は炭素中に水素を含有する DLC である。DLC 成膜時に原料ガス中に炭化水素を添加 すると炭素と水素が結合し、水素含有 DLC 膜が生成される。基本的に全ての方法で成膜可能である。水 素が炭素と結合することでダングリングボンド(=未結合の手)が無くなり、その表面は安定である。 自由電子が無くなるので、電気的には絶縁膜となる。後述の水素を含まない ta-C に較べると硬さが低く、 水素含有量が多いほど軟らかくなる。 炭素が水素と結合しているので、表面が安定であり、他の物質との親和力が小さい。このため、他の 物質との摩擦係数が小さいという特徴がある。 【ta-C】 ta-C は主に物理蒸着法(PVD 法)の一種であるアークイオンプレーティング法で作られる。ダイヤモ ンドの硬さ(10000HV)に近い硬さ(約 5000HV)を発現する特徴がある。成膜したままの状態では、表面 が炭素のみから成るので活性である。このため、大気中で摩擦試験を行うと一般に高い摩擦係数を示す。 大気中に放置すると、表面に水分や空気を吸着して安定化するが、摩擦で表面の吸着物が除かれると活 性面が現れ、高い摩擦係数を示すようになる。 アークイオンプレーティング法で成膜した場合、膜表面が粗くなるので、表面の平滑さが要求される用 途に対しては Fig. 2-2 に示すフィルタードアークイオンプレーティング(FCVA)法4)が採用されている。 この方法では成膜速度が大幅に低下するが、硬質で平滑な表面を持った DLC 膜が得られる。 1970 年代に開発されたi‐カーボンも ta-C の分類に入ると考えられる。 Fig. 2-2 フィルタードアークイオンプレーティング法模式図 スパッタイオンプレーティング法で作られる水素フリーDLC は ta-C とは呼ばれないが、炭素のみから 成る膜であり、摩擦特性などは ta-C に似ている。最大硬さは ta-C より低く 3000HV 程度までである。こ の違いはアークイオンプレーティング法では蒸発元素のイオン化率が高いので、スパッタイオンプレー ティング法に較べ基板へ入射する炭素イオンの数が多いためと考えられている。アークイオンプレーテ ィング法より表面は平滑であるが、成膜速度がやや遅い。

(7)

【Me‐DLC】 Me‐DLC は DLC 成膜中に金属を添加できれば基本的にどの方法でも成膜可能である。金属としては W、 Si、および Cr が多く用いられている。金属を添加することにより一般に DLC の硬さは低下し、摩擦係数 は増加する。W や Cr の添加によって DLC の硬さが低下するが、それに伴い柔軟性が付与され、したがっ て耐剥離性が改善される。Si の場合には硬さの低下は少ないが、耐熱性や油中での潤滑特性と耐摩耗特 性が改善されるという報告がある。水素を含有する DLC は表面が安定化しているので潤滑油中の極圧添 加剤との親和性が弱いが、金属を添加することでこれが改善されるとも言われている。 2.3 DLC の成膜方法 【プラズマ援用 CVD 法(PCVD 法)】 Fig. 2-3 のように基板にマイナス電圧を印加し、基板の周囲に放電プラズマを発生して炭化水素を含 む導入ガスをイオン化し、その中の炭化水素イオンを基板(ワーク)へ引きつけて DLC を成膜する。高 周波 PCVD(Fig. 2-4 参照)では、基板およびその対向電極に高周波(RF: Radio Frequency)を印加し、 放電により導入ガスをイオン化し、マイナスに帯電した基板へ引きつけて成膜する。

Fig. 2-3 PCVD 法模式図 Fig. 2-4 RF‐PCVD 法模式図

【PSII 法】

PSII 法(Plasma Source Ion Immersion 法)は基板の周囲に予め高周波やマイクロ波を使って導入ガ ス中に放電プラズマを生成し、その後基板に kV オーダーの負の高電圧を印加して基板にイオンを引きつ け、DLC を成膜する。(Fig. 2-5 参照) 炭化水素ガスを原料とするので、C:H 膜が成膜される。高電圧で基板へイオンを引きつけるので、基板 表層に基板材料と炭素のミキシング層が形成されるので、密着性の良い DLC が成膜される。 また、基板への電圧のかけかたを制御することで穴の中にもコーティングできるという特徴を持って いる。

ワーク

ガス 排気 電極

RF

ワーク

ガス 排気 電極

RF

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ワーク

ガス 排気 電極

RF

Pulse-DC

ワーク

ガス 排気 電極

RF

Pulse-DC Fig. 2-5 PSII 法模式図 【イオン化蒸着法】 ベンゼンなどの炭化水素をイオンガン内でイオン化し、そのイオンを加速して基板へ照射する。原料 ガスに炭化水素を用いるので成膜される DLC は C:H 膜である。高電圧で炭化水素イオンを加速して基板 へ入射させるので、基板表面に基板材料と炭素のミキシング層が形成され、室温で密着性が良く、比較 的硬さの高い DLC が成膜される。成膜面積が狭いという問題がある。(Fig. 2-6 参照)

ワーク

ガス 排気 イオン ガン イオン HV DC

ワーク

ガス 排気 イオン ガン イオン HV DC Fig. 2-6 イオン化蒸着法模式図 【スパッタ法】 蒸発源であるターゲットに黒鉛などの炭素材料を置き、これに負電圧または高周波電圧を印加するこ とによって、アルゴン(Ar)ガスをイオン化し、これをターゲットに引きつけてターゲットから炭素を 蒸発させ、負の電圧を印加した基板へ成膜する。(Fig.2-7 参照) 後述のアーク法に較べて成膜速度は

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遅いが平滑な膜が得られるという特長を持っている。導入ガスに水素や炭化水素を添加すると C:H 膜が 成膜され、添加しないと水素フリーDLC が成膜される。大量生産に適している。一般にはターゲットの背 面に磁石を配したマグネトロンスパッタ法が用いられる。

ガス 排気 Pulse-DC

C

DC スパッタ 原子 ターゲット

ガス 排気 Pulse-DC

C

DC スパッタ 原子 ターゲット Fig. 2-7 スパッタ法模式図 【アーク法】 アーク法では蒸発源であるターゲットに炭素材料を用い、これに負電圧を印加してターゲット表面に アーク放電を発生させ、ターゲット材料を蒸発させる。(Fig. 2-8 参照)マクロパーティクル(あるい はドロップレット)と呼ばれる大きな蒸発原子集団を生成しやすく、表面が粗くなる傾向がある。これ を防止するために蒸発源にL型またはT型の屈曲ダクトを取り付け、直進しやすい大型の粒子を基板方 面へ向わせないような構造とした装置がフィルタードアーク装置である。(Fig. 2-9 参照)後者は前者 に比べて成膜速度が遅いが大量生産に向いている。 Fig. 2-8 アーク法模式図 Fig. 2-9 フィルタードアーク法模式図

ガス 排気 DC

C

Pulse-DC 蒸発 原子 ターゲット

ガス 排気 DC

C

Pulse-DC 蒸発 原子 ターゲット

ターゲット 蒸発原子 ガス 排気 DC DC アーク放電

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3. 実験方法 3.1 DLC 試料の作製 DLC 膜をコーティングするために基板として、寸法が 6mmx6mmx65mm の高速度工具鋼 SKH57 製およびス テンレス鋼 SUS304 製の基板を準備した。その長手方向の 1 面は試験面として鏡面仕上げされている。そ の内、基板が SKH57 製の試験片は摩擦試験に用い、SUS304 製のものは MSE 試験 に用いた。 DLC コーティングは国内のコーティング受託加工業者 7 社へ依頼し、12 種類の DLC コーティング試験 片を作製した。それらの一覧を Table 3-1 に示す。それぞれの試料には成膜方法、組成、膜厚、硬さ、 および中間層の種類を各社から入手できる範囲のものを記載した。 Table 3-1 実験に用いた DLC 試験片に関するデータ 番号 方法 組成 膜厚 硬さ 中間層 ① UBMS C:H 1.5μm 1700HV Cr ② UBMS C:H 2000HV ③ UBMS C-10%H 高硬度 ④ UBMS C ⑤ AIP ta-C ⑥ PCVD C:H 2400HV ⑦ PCVD C:H:Si ⑧ PCVD C:H:Si ⑨ AIP ta-C ⑩ UBMS C:H 2000HV 金属 ⑪ UBMS C:H:Me 1700HV 金属 ⑫ MS C:H 1μm 2200HV Cr 3.2 弾性反跳陽子検出(ERDA)法による水素含有量の定量 DLC の水素含有量は若狭湾エネルギー研究センターのタンデム加速器を用いて弾性反跳陽子検出法 (ERDA 法)で評価した。ERDA 法の原理を Fig. 3-1 に示す。

ERDA 法では二価の He イオンを DLC 表面へ照射し、これにより前方へ反跳される水素原子核すなわち 陽子の数を半導体検出器でカウントし、DLC 内の水素原子数比率を求める。本研究では、2MeV の He イオ ンを試料面に対して 10°の角度で入射させ、前方 10°方向に反跳された P(=H の原子核)を検出した。 反跳陽子の数は入射 He イオン数に比例するので、これを知るためにファラデーカップを用いて二価の He イオンの電流値を測定した。ただし、ファラデーカップの測定値は反射二次電子の影響があるので、 参考値とした。 反跳陽子の角度依存微分散乱断面積は比較的精度よく求められているので、入射 He イオンの C:H 膜で のエネルギー減衰と散乱による減衰効果を考慮し、さらに反跳陽子の C:H 膜中でのエネルギー減衰と散 乱による減衰を考慮し、さらに検出機の前に置かれた Ti フィルターによる散乱と減衰の効果を考慮して、 反跳陽子のエネルギースペクトルを計算することができる。

(11)

反跳陽子の正確な数は、実際に得られた反跳陽子スペクトルと、計算で求められた反跳陽子スペクト ル(バックグラウンドを除いた後)を比較し、測定値に誤差が入らないエネルギー範囲で両者をフィッ ティングして求めた。 実際に求めたい値は C:H の比率であるので、C による反跳 He イオン数を入射 He イオンビーム方向に対 して 150°方向に置かれた検出器を用いてラザフォード後方散乱(RBS)法で測定し、C 数を測定した。こ の時、C と He の角度依存微分散乱断面積は正確に求められているので、これに ERDA と同様に He イオン の C:H 中でのエネルギー減衰と散乱の効果を計算で考慮して、反跳 He のエネルギースペクトルを求める ことができる。この計算値と実測値を用いて、反跳陽子数の決定と同様な手法で反跳 He 数を求めること ができる。 これにより求めた RBS による炭素数と ERDA による水素数の比から、C:H 比を求めることができる。 Fig. 3-1 ERDA の原理 3.3

往復式摩擦試験による DLC の摩擦係数の測定

【試験片】 本摩擦試験にはピンと DLC コーティングをした水素含有量の異なるプレート状の相手材試料を用いた。 ピンの材質は SKH51、寸法は直径 6mm、全長 15mm、先端半径 3mm である。また、DLC コーティング試験片 は 6mmx6mmx63mm である。それぞれの写真を Fig. 3-2 および Fig. 3-3 に示す。 Fig. 3-2 ピン試験片 Fig. 3-3 DLC 試験片

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【摩擦試験装置】 本研究では摩擦試験に HEiDon 社製の往復式摩擦試験装置トライボギアを用い、摩擦による出力電圧を キーエンス社製のデータ取り込み装置を経由してデスクトップパソコンへ取り込んだ。Fig. 3-4 に摩擦 試験装置および試験部の拡大写真を示す。 (a)トライボギア全体 (b)トライボギアの摩擦試験部 Fig. 3-4 摩擦試験装置トライボギアの写真 トライボギアは、往復式の摩擦試験機で往復台に相手材試験片を取り付け、その上から荷重をかけた ピンを押しつけて摩擦試験を行う。ピンは 45°傾斜してホルダーに取り付けられ、ピンを回転すること で、1個の試料で複数回の試験を行うことができる。装置左にひずみゲージがあり実験時にはこれを接 触させることで摩擦力の計測を行う。トライボギアからの摩擦力はキーエンス社製の計測ソフト Wave Logger を使ってPCに取り込まれる。実験条件はトライボギアの操作パネルおよび Wave Logger から設 定され、本実験ではそれらを Table 3-2 のように設定した。 Table 3-2 実験条件表 荷重 200gf 雰囲気 大気 摺動速度 1200mm/min 摩擦ストローク 10.0mm サンプリング周波数 10Hz 【摩擦試験の実験手順】 (1) 超音波洗浄器を用いてピンとプレートをアセトンとメタノールの混合液で洗浄する。 (2) ピンとプレートをトライボギアに取り付ける。2 回目以降は、摩擦した面が重ならないように位 置を変える。ピンは回転して摩擦位置を変え、プレートは取り付け位置を平行移動する。 (3) 上下ハンドルを操作し、ピンをプレートに接触させ、おもりを載せた後、ピンとひずみゲージを つなぐ軸が水平になるようにバランスをとる。 (4) Wave Logger を起動し収集条件(入力レンジ、サンプリング周波数、他)を設定する。 (5) トライボギアを起動し、操作パネルから実験条件(摺動速度と摩擦ストローク)を入力する。 (6) 往復台を初期位置に移動させる。

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(7) ひずみゲージをセットして、ひずみゲージの出力を適切な出力に合わせる。 (本研究では出力電圧 2.5V 付近とする) (8) Wave Logger をスタート後、トライボギアをスタートし、所定の時間に達したら両方を停止する。 【レーザー顕微鏡】 摩擦試験の後、ピンおよびプレートの摩擦部およびその周囲を観察した。観察にはキーエンス社製の レーザー顕微鏡(VF-7500)を用いた。レーザー顕微鏡は単色光を用いるので、通常の光学顕微鏡より分 解能が高く、焦点深度が深いという特徴がある。Fig. 3-5 にに本実験に使用した装置を示す。 Fig. 3-5 レーザー顕微鏡 【ラマン分光分析装置】 ラマン分光では物質に単色レーザー光を照射し、ラマン散乱された光のスペクトルを分光器で観測す る。得られたスペクトルより物質の評価や不純物の同定を行うことができる。ラマン分光分析は DLC や ダイヤモンドの評価にしばしば用いられ、DLC については、炭素の SP2結合と SP3結合の比率を調べる目 的で用いられている。SP2結合は G バンドとして 1550cm-1付近にブロードなピークを形成し、SP3結合は D バンドとして、1330cm-1付近にブロードなピークを形成する。この比率 G/D は製法または膜質によって変 化し、熱影響を受けた場合も変化する。よって、摩擦試験においては、摩擦部や摩耗粉が熱影響を受け たかどうかを知ることができる。 本研究では摩擦試験前後の DLC の変化や熱影響、ならびに付着物を特定するため、摩擦試験後のピン およびプレートの摩擦部およびその周囲の付着物をラマン分光分析で調査した。分析には Jobin Yvon 社 製のラマン分光分析装置を用い、照射光は Ar レーザー(波長 514nm)とした。レーザー出力は DLC の劣化 を防止するため、最小とした。Fig. 3-6 に実験に使用した装置を示す。

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Fig. 3-6 レーザーラマン分光分析装置写真 3.4 マイクロスラリージェットエロージョン(MSE)法による摩耗試験 現在膜の機械的特性を評価するには様々な方法が提案されている。 例えば、 超微小押し込み硬さ測 定試験や摩擦摩耗試験やボールオンディスク試験などが良く利用されているが、 基材の影響を受けずに 膜のみの性質を評価することは非常に困難である。 その中で マイクロスラリージェットエロージョン (MSE)試験5)は基材の影響を受けずに薄膜(DLC 膜)の摩耗特性評価ができることから、注目されつつある。 そこで、本研究では DLC 膜の水素含有率が膜特性におよぼす影響を調べるため、MSE 試験による DLC 膜の摩耗率、超微小押し込み硬さ試験機による DLC 膜の硬さ測定を行い、DLC 膜の水素含有率との関係を 調べた。 【MSE 試験装置】 本研究に使用した MSE 試験機は、 圧縮された空気で純水と固体粒子を混合させたスラリーをノズルか ら高速に噴射させ、 評価材料に衝突させて摩耗させる。そして、二次元触針式粗さ測定機を用いて最大 深さを測り、単位時間内の摩耗深さ(摩耗率)で試験材料の摩耗特性を評価する。今回の試験では Fig. 3-7 に示す粒径 1.2μm の不定型アルミナ固体粒子を 3mass%の濃度で含有するスラリーを投射距離 10mm、投 射圧力 0.4MPa、投射角度 90°の条件で噴射して摩耗率を調査した。本研究に使用した MSE 試験装置の構 成図を Fig. 3-8 に示す。 Fig. 3-7 MSE 試験に使用した 不定形アルミナ粒子 の電子顕微鏡写真 2.5µm

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Air compressor Solenoid valve Regulator Pressure switch Timer

Nozzle

Table

Specimen

Tank

Suction hole

Mixer

Air compressor

Solenoid valve Regulator Pressure switch Timer Air compressor Solenoid valve Regulator Pressure switch Timer Air compressor Solenoid valve Regulator Pressure switch Timer

Nozzle

Table

Specimen

Tank

Suction hole

Mixer

Fig. 3-8 MSE 試験装置の構成図 【超微小押し込み硬さ試験機】 DLC 膜の硬さ測定には Fig. 3-9 に示す超微小押し込み硬さ試験機を用いた。この試験機では、設定し た荷重まで負荷した後、保持時間だけ押し込み荷重を保持した後除荷し、塑性変形と弾性変形を評価す る。今回の試験では各試験片ごとに 7 回ずつ測定を行い、上下 2 点を除く 5 点の平均から硬さを求めた。 超微小押し込み硬さ試験から得られた負荷-除荷試験を Fig. 3-10 に示す。硬さは式(1)により計算さ れる。 2 max 4 1 10 717 . 3 h P H    (1) Fig.3-9 超微小硬さ試験装機原理図 Fig. 3-10 硬さ試験による負荷‐除荷曲線

Specimen

Indenter

Electrostatic

actuator

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4. 実験結果 4.1 ERDA 法による水素含有量の定量結果 DLC 膜中の水素含有量(H/(C+H))は 3.1 章で述べた ERDA 法で測定した。この方法では、Fig. 4-1 に示 すような反跳陽子のスペクトルが得られる。(試料 1 のスペクトル)図中の実線は計算値を示し、これ と実験値を高エネルギー領域で一致させるようにフィッティングし、反跳陽子の数(=水素原子数に比 例)を求める。 Fig. 4-2 には RBS 法で測定された試料1の反跳 He イオンのスペクトルを示す。エネルギーの高い領域 (0.6~1.4MeV)に見られるカウントは膜中に含まれていた Ar によるものである。図中の実線は Ar と C により He イオンが 150°方向に散乱された時の計算値である。この実験値と計算値を C による He イオン の散乱スペクトルの高エネルギー部分(0.4~0.55MeV)が合致するようにフィッティングし、C 原子数を 計算した。 ERDA と RBS の結果から C と H の比率が計算され、Ar を含む膜についてはその比率も計算される。 各 DLC について得られた結果を Table 4-1 に示す。 Fig. 4-1 ERDA 法で得られた試料 1 の反跳陽子のエネルギースペクトル 点は実験値、実線は計算値

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Fig. 4-2 RBR 法で得られた試料 1 の散乱 He イオンのエネルギースペクトル 点は実験値、実線は計算値 Table 4-1 ERDA 法で得られた DLC 膜の水素含有率 試料 No. C H Ar H/(C+H)*100 1 97 29.4 3 23.3 2 97 24.4 3 20.1 3 97 16.7 3 14.7 4 97 4 3 4.0 5 100 0 0 0.0 6 100 17 0 14.5 7 100 23 0 18.7 8 100 16.7 0 14.3 9 100 0.48 0 0.5 10 100 20 0 16.7 11 97 27.6 3 22.2 13 100 24.1 0 19.4

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4.2 往復式摩擦試験による DLC の摩擦係数 4.2.1 摩擦係数の導出方法 往復式摩擦試験では摩擦力が往側と復側で方向が逆転する。このため、摩擦係数の導出には若干の計 算が必要である。Fig. 4-3 は往復式摩擦試験の出力電圧信号を示す。実験装置の構造により、ひずみゲ ージの出力を負側に出力することができないので、常に出力が正になるようにバイアスして測定してい る。得られたデータから、半周期隣のデータどうしの引き算をすることによって、往側と復側の摩擦係 数の差すなわち片側の摩擦係数の約 2 倍の摩擦係数を得ることができる。その結果を Fig. 4-4 に示す。 この結果から、10 秒毎のデータ付近で最大の摩擦力を選び、これを2で除し、さらに別の実験で求め た校正常数を用いて摩擦係数を求めた。 試料 1 についての結果を Fig. 4-5 に示す。この図には試験終了時のピンおよびプレートの摩擦痕のレ ーザー顕微鏡写真を付してある。 Fig. 4-3 往復式摩擦試験で得られた摩擦力のチャート Fig. 4-4 摩擦力の測定データ(Fig.4-3)の演算から得られた摩擦力 (往側と復側の 2 倍の摩擦力に相当する)

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Fig. 4-5 試料 1 の摩擦係数の変化 ピンの摩擦痕(右)およびプレートの摩擦痕(左)を添付 4.2.2 摩擦部および付着物のラマン分光分析 摩擦試験終了後にピンおよびプレートの摩耗部および付着物のラマン分光分析を行った。試料1のピ ンの摩耗部の分析結果を Fig. 4-6 に示す。この図から、ピンの中心部は酸化した鉄と思われるスペクト ルのみであるが、摩耗部の周辺部には DLC をコーティングしたプレートから移着した DLC の存在が確認 された。ただし、この DLC は熱影響を受けて柔らかくなっている DLC と推定される。 Fig. 4-6 試料 1 のピンの摩耗痕の中心部と周辺部のラマン分光分析結果

(20)

同様に Fig. 4-7 には摩擦試験後の試料 1 のプレートの摩擦痕およびその周囲の付着物のラマン分光分 析結果を示す。摩擦痕の外側のラマンスペクトルはコーティングしたままの状態を示している。摩擦痕 の左端部にも黒い付着物が見られるが、それを透過して下地の DLC を観察していると考えられる。左下 部の黒い付着物には明らかに元の DLC とは異なる種類の DLC が観察されている。これは先にピンの摩耗 痕の外周に付着していた物質と同様に熱影響を受けて変質した DLC と摩耗後に酸化した鉄が付着したも のと考えられる。 これらのことから、DLC の低摩擦係数は軟化した DLC が摩擦面に付着して引き起こされているもの考え られる。 Fig. 4-7 試料 1 のプレートの摩耗痕とその周囲の付着物のラマン分光分析結果 4.2.3 各 DLC の水素含有量と摩擦係数の関係 これまでに試料 1 を例として、水素含有量の測定方法、摩擦係数の導出方法について述べてきた。同 様にして得られた全 DLC の摩擦係数と水素含有量の関係を Fig. 4-8 に示す。なお、摩擦係数は表面粗さ の影響が大きい摩擦試験開始直後ではなく、1000 秒間の摩擦試験の終盤の値をとった。 この結果から、DLC 中の水素含有量が増加するとともに、摩擦係数が増加する傾向があることが分かる。 ただし、水素含有量が約 4%の DLC(試料番号 4)は膜内で水素含有量が変化する硬軟二層構造をとっており、 水素含有量が正しく反映されていない。また、市販の DLC には試料番号 4 を除いて 1~14%の範囲の水素 含有量を持つ DLC が存在しないこともわかり、興味深い結果となった。

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Table 4-2 DLC の水素含有量と摩擦係数の関係 試料番号 水素含有量(%) 摩擦係数 ① 23.3 0.106 ② 20.1 0.115 ③ 14.7 0.083 ④ 3.96 0.102 ⑤ 0.00 0.072 ⑥ 14.5 0.092 ⑦ 18.7 0.103 ⑧ 14.3 0.104 ⑨ 0.48 0.064 ⑩ 16. 7 0.101 ⑪ 22.2 0.140 ⑫ 19.4 0.158 Fig. 4-8 DLC の水素含有量と摩擦係数の関係 MS : マグネトロンスパッタリング AIP: アークイオンプレーティング PCVD: プラズマ CVD

(22)

4.3 MSE 試験による DLC の摩耗率

MSE 試験からは、スラリー投射時間(Erosion time)と摩耗深さ(Wear depth)の関係すなわち摩耗曲線が 得られる。本研究で得られた摩耗曲線を Fig. 4-9 に示す。摩擦試験に使われた試料番号 13 は試料数が 不足していたので、MSE 試験を行っていない。 本研究では、11 種類の DLC の MSE 試験によって DLC 膜と基材を区別して摩耗率を測ることができた。 また、DLC 膜と基材の摩耗率が異なることから、膜厚も正確に測定することができた。これにより得られ た MSE 試験の結果(摩耗率)および硬さを Table. 3-2 に示す。同表には極微小押し込み硬さ測定装置を用 いて測定した各 DLC の硬さも示した。 15 30 45 60 2 4 6 8 0

Erosion time, min

W e a r d e p th , m DLC-1 ---30 60 90 120 1 2 3 4 5 6 7 8 0 W e a r d e p th , m

Erosion time, min DLC-2 ---30 60 90 120 150 180 1 2 3 4 5 6 7 8 0 W e a r d e p th , m

Erosion time, min DLC-3 ---2 4 6 8 1 2 3 4 5 6 7 8 0 W e a r d e p th , m

Erosion time, min DLC-4 ---基材 中間層 膜 60 120 180 240 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0

Erosion time, min

W e a r d e p th , m DLC-5 ---60 120 180 240 300 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0

Erosion time, min

W e a r d e p th , m DLC-6 ---90 180 270 360 450 0.5 1.0 1.5 2.0 0

Erosion time, min

W e a r d e p th , m DLC-7 ---90 180 270 360 450 0.5 1.0 1.5 2.0 0

Erosion time, min

W e a r d e p th , m DLC-8 ---40 80 120 160 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0

Erosion time, min

W e a r d e p th , m DLC-9 ---120 240 360 480 600 720 0.5 1 1.5 2 0

Erosion time, min

W e a r d e p th , m DLC-10 ---10 20 30 40 0.5 1 1.5 2 0

Erosion time, min

W e a r d e p th , m DLC-11 ---Fig. 4-9 各種 DLC の MSE 試験による摩耗曲線 (試料番号は各図中に記載)

(23)

Table.4-3 DLC 膜の硬さと摩耗率の関係 No Film thickness μm Wear rate μm/min Hardness GPa ① 0.8 0.0169 21.5 ② 0.8 0.0101 43.4 ③ 0.8 0.0048 47.4 ④ 0.5 0.315 10.2 ⑤ 0.2 0.0012 75.0 ⑥ 1 0.0029 34.3 ⑦ 0.3 0.0005 19.4 ⑧ 1.7 0.0031 43.8 ⑨ 0.18 0.0014 62.8 ⑩ 1.8 0.0029 34.3 ⑪ 0.6 0.0175 21.8 Fig.4-10 には DLC 膜の摩耗率と水素含有率との関係を示す。各プロットには DLC 膜の番号を付けてあ る。これから、DLC 膜は水素の含有率の増加により摩耗率が高くなるという結果が得られた。DLC 膜の 水素含有率が増加することにより SP3結合の割合が増加して耐摩耗性が高くなるのではないかと思われ るが、SP3結合が多いほど DLC 膜の内部応力も大きくなるので、外力による衝撃を受けやすくなるので、 摩耗率が大きくなったことも考えられる。一方、試料番号 4 の DLC は膜内で水素含有率が内側に少なく (約 4%)、外側に多く(約 10~15%)なるように作られており、摩耗曲線がそのことを明確に表してい るが、摩耗率は全体の傾向からは外れている。

0

5

10

15

20

25

30

10

-4

10

-3

10

-2

10

-1

10

0

10

1

Hydrogen content, %

w

e

a

r

ra

te

,

m

/m

in

UBMS

PCVD

TFAD

AIP

⑥⑧

Fig. 4-10 DLC 膜の水素含有量と摩耗率の関係

(24)

DLC 膜の水素含有率と硬さの関係を Fig. 4-11 に示す。これから、DLC 膜の硬さは水素含有率の増加と ともに減少することがわかる。前述の水素含有量と摩耗率の関係と同様に試料番号 4 の試料は全体の傾 向から外れている。この結果から、DLC の特性を向上させるためには、水素を含まない SP3結合炭素の比 率を高める必要があることがわかる。

5

10

15

20

25

30

20

40

60

80

100

0

H

a

rd

n

e

s

s

,

G

P

a

Hydrogen content, %

UBMS

PCVD

TFAD

AIP

Fig.4-11 DLC 膜の水素含有量と硬さの関係

(25)

5. 考察とまとめ 本研究では、DLC 種類による摩擦と摩耗の関係を調べるため、若狭湾エネルギー研究センターのタンデ ム加速器からの He イオンビームを用いて各種 DLC の水素含有量を ERDA 法で測定した。また、これらの DLC について、往復式摩擦試験により DLC と高速度工具鋼との摩擦係数を測定し、DLC の水素含有量と摩 擦係数の関係を求めた。また、各 DLC のマイクロスラリージェットエロージョン(MSE)法による摩耗率の 測定と、極微小押し込み硬さ試験機による DLC 膜の硬さ測定を行い、DLC 膜の水素含有量と摩耗率の関係、 および摩耗率と硬さの関係を測定した。これらから、以下の結論が得られた。 (1)DLC 膜中の水素含有量の増加とともに、摩擦係数が増加する。(摩擦試験より) (2)DLC 膜中の水素含有量の増加とともに、摩耗率が増加する。(MSE 試験より) (3)DLC 膜の硬さは水素含有量の増加とともに低下する。(極微小押し込み硬さ試験より) 一般に、水素含有率が増加すると DLC 中のダングリングボンド(未結合手)が減少して摩擦係数が減 少するとも言われているが、本研究の実験から、必ずしもその傾向が当てはまるわけではないことがわ かった。 MSE 試験の結果からは水素含有量の増加とともに摩耗率が低下する傾向が見られた。DLC は他の材料と は異なり、弾性回復量が多いことが知られており、そのため従来の同程度の硬質薄膜と比較すると摩耗 率が小さいことが期待され、また DLC 膜中の水素量の増加とともに膜が軟化し、摩耗率が小さくなる可 能性も考えられた。Fig. 4-10 と Fig. 4-11 の比較から、そのような傾向もみられるが、水素含有量が 20%を超える領域では硬さの低下による摩耗率の増大傾向の方が勝った結果となっている。 水素含有量と摩擦係数の関係、ならびに摩耗率の関係は大きな傾向は把握されたものの、個々に見る と同じ水素含有量でも大きな違いを示しているデータがある。なぜこのような違いが表れるか、その理 由は依然として不明である。その違いを明らかにすることでより良い機械的特性を示す DLC の開発につ ながることが期待される。 本研究で調査した DLC の水素含有量は 4~14%の範囲が抜けており、これが偶然であるのか、その領域 の DLC が生成されないのか、あるいは機械的特性が良好ではないために選択されていないのか不明であ る。この領域についてのデータを測定し、特性を明らかにすることで、DLC についての正しい理解と特性 の改善につながることが期待される。 参考文献 1) 神田一隆、真柄宏之、橋本賢樹、青山幸太、白崎信介、古田真一; 水素フリーおよび水素 含有 DLC 膜の摩擦特性、福井工業大学紀要、第 39 号 (2009) p.123-130. 2) 大竹尚登;名古屋大学 「DLC の成膜とその応用」HP 版 ver1.1.

3) S. Aisenberg and R. Chabot; J. Appl. Phys., Vol.42,(1971) p.2953.

4) 瀧 真、長谷川祐史、石川剛史、滝川浩史、安井治之;硬質 DLC(AC-X)被覆工具の開発、表面技術、

第 58 巻、第 10 号 (2007) p.589-592.

5) 松原 亨、平井雄一、春日井直正、岩井善郎;硬質薄膜の摩耗特性評価のためのマイクロ

スラリージェットエロージョン(MSE)試験法とその装置の開発、日本機械学会論文集(C 編)、 74 巻、739 号(2008) p.710-716.

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参照

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