06
Key words: pressured pillow,prone position, stomach,anterior wall, remote control
【Abstract】
The double contrast gastrography in prone position is taken at head-down tilt with the maximum degree of 45. This degree not only has the danger of fall of examinees but also forces the great stress on them. Also there are cases that the double contrast images are difficult to be taken depending on the shapes of the stomach. We have developed the remote control pressured pillow and have examined the usefulness of it. The pillow consists of two bags that are made up with resinous films that are wrapped in solid clothes and can be inflated into two levels. The depiction ranges of double contrast gastrography in prone position taken with using the futon that is usually employed are compared to the ones with using the remote control pressured pillow. The angle of head-down tilt was set at the inverse angle of 20 degrees. The order of the use of futon and the pillow was changed reciprocally and there was no intentional action was taken such as lifting up the hips during the examination. As a result, the pillow suggested that the depiction range was large significantly. 【要旨】 腹臥位二重造影は,フトンを用いて最大45度まで頭低位にして撮影することになっている.この角度は転落の危険を伴うとともに,被 検者に大きなストレスを強いる.胃形によっては二重造影が困難というケースもある.われわれは,樹脂フィルムと布を材質にした,遠隔 操作で2段階に膨らませることができる遠隔圧迫枕を開発し,その有用性を検討した.通常使用しているフトンを使用した腹臥位頭低位 正面の画像と,遠隔圧迫枕を使用した同体位の画像について描出範囲を比較した.頭低位の角度は20度で一定とし,交互に使用順序を 変え,右腰を上げるなどの作為は一切行わなかった.その結果遠隔圧迫枕を使用した場合,描出範囲が広がることが示唆された.
学 術
Arts and Sciences
ノート
緒 言
胃がん検診にX線検査が果たしてきた歴史は長く, 今後とも精度の向上が望まれるが1),若手撮影者の感 想として,前壁撮影が難しいということが聞かれる. 胃前壁二重造影撮影は,被検者を最大45
度の頭低 位にして撮影される.その際,被検者の腹部と寝台の 間にタオルなどを丸めて作った腹臥位圧迫用フトン (以下,フトン)が挿入される2,3).また転落防止の ために肩当てが用いられている.フトンは胃を引き延 ばす役割を果たしていると考えられ,どの場所に挿入 するかは検査結果に大きな影響を与える.牛角胃のよ うに,胃形によってはフトンを使用した時でも,広い 二重造影域を得ることが困難なケースがあり,頭低位 の角度が大きくなると,肩当てがあっても転落の危険 があり,被検者に与える苦痛は小さくない. フトンについて,空気を内包した包装用クッション で作成したという村田らの報告がある.それによると, 胃形によりフトンを交換する必要がなく,牛角胃に対 しても有効であっと報告されている4).われわれは, 遠隔操作で,空気で2
段階に膨らむ遠隔圧迫枕を考案 した5).この遠隔圧迫枕は,通常用いているフトン程 度の大きさであるが,遠隔操作で45mm
,90mm
の 厚さに空気で膨らませることができる.腹臥位で全体 重が寝台にかかった状態で,中心から周囲に向かって 力が加わっていく.空気は圧縮により加圧されて一定 の高さを保ち,広範囲に圧迫できるため,これまでの フトン以上に効果があると考えられ,頭低位の角度を 小さくできると期待される.腹臥位水平位での圧迫も 期待でき,遠隔操作で空気を抜くことができ,圧縮さKoichi Shibuya1()36057)
,
Kazuyuki Sumi2()45258)Toshimitsu Watanabe2)(29275)
,
Shuichi Wakimoto3)
,
Koichi Suzumori3)Hisao Oka1)
1) Graduate School of Health Sciences, Okay-ama University
2) Kurashiki Medical Center
3) Graduate School of Natural Science and Technology Okayama University
腹臥位用遠隔圧迫枕の開発と有用性評価
Development and usefulness evaluation of a remote control pressured pillow for prone position
澁谷光一1)(
36057
) 鷲見和幸2)(45258
) 渡邉敏充2)(29275
)脇元修一3) 鈴森康一3) 岡久雄4)
1)岡山大学大学院保健学研究科 教員 診療放射線技師,2)一般財団法人倉敷成人病センター 診療放射線技師
ることから,術者が検査室に繰り返し立ち入り,フト ンの交換や位置の修正などの手間が軽減されることも 期待される.この遠隔圧迫枕を実際の臨床に応用した ところ,有益な結果が得られたので報告する.
遠隔圧迫枕の概要
遠隔圧迫枕の概要を説明する.図1
に構造を示す. 薄い樹脂フィルムでできた袋を固い布で覆った構造を している.2
段重ねになっており,コンプレッサーと 管で結ばれ,コンプレッサーから送られる空気で2
段 階に膨らむ.図2
に,われわれが通常使用している二 種類のフトンと遠隔圧迫枕を比較した写真を示す.a
)mm
となる.フトンの大に相当する.圧力は任意に 設定できる.図3
に,遠隔圧迫枕の周辺機器を示す.a
)は遠隔圧迫枕に空気を送り込むコンプレッサーで,b
)はその圧力調整器である.ON
・OFF
の信号は鉛 ガラスを介して行うため,鉛ガラスの内外に赤外線の 送受信機を設置している.これがc
)である.d
)は スイッチであるが,操作卓上に置いている.スイッチ 部は2
個のスイッチからなり,一方をON
にすると1
段目が膨らみ,もう一方をON
にすると2
段目が膨ら む,またOFF
にするとそれぞれが縮むような仕組み になっている.この操作は術者が操作卓に向い,座っ たままで行える. 遠隔圧迫枕の膨らむ部分は,腹臥位半立位の状態で 図1. 遠隔圧迫枕の構造 薄い樹脂フィルムの二つの袋が固い布で覆われており,そ れぞれ膨らませることができる.Figure1. The structure of a remote control pres-sured pillow
Two bags consisting of thin resinous films are wrapped in two solid clothes. The two bag can be infl ated with air respectively.
図2. 遠隔圧迫枕とフトンの比較 a)一つの袋だけが膨らんでいる.遠隔圧迫枕の大きさは 115mm 130mm 45mmである.小さなフトンに相当 する.b)二つの袋が膨らんでいる.大きさは115mm 130mm 90mmで,大きな袋に相当する.圧力は自由に 設定できる
Figure 2. The comparison the remote control pressured pillow with the futon
a) One bag only was infl ated. The size of the remote control pillow is 115 mm 130 mm 45 mm. It equivalents to a small futon. b) Two bags were inflated. The size of the remote control constrictor is 115 mm 130 mm 90 mm. It equivalents to a big futon. Its pressure can be set freely.
a
ノート 腹臥位用遠隔圧迫枕の開発と有用性評価 学 術Arts and Sciences
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撮影台と被検者の腹部の間に挿入し,腹臥位水平位の 状態で膨らませる.フトンに比べて,水平位から腹部 に圧力が加えられること,圧迫高を2
段階に変えられ ること,空気を抜き,術者が撮影台の起倒で調整でき たり,被検者に協力してもらい,吸気と呼気を使い分 けることで圧迫位置をある程度変えられること,これ らが遠隔操作で行えるところに特徴がある.使用が終 わって足元に投げ出されても,強度上の問題はない.使用機材
手製のフトン,大小2
種類を使用した. 遠隔圧迫枕は1
段膨(45mm
高),または2
段膨 (90mm
高)を使用し,遠隔圧迫枕に加える空気圧は50kPa
とした.X線テレビ装置は日立製DR2000
を 使用した.硫酸バリウム懸濁液は濃度210W/V%
の ものを150m
ℓ使用した.発泡剤は5.0g
.副交感神 経遮断剤は臭化ブチルスコポラミンを使用した.対象と方法
対象は,一般財団法人倉敷成人病センターの職員 で,人間ドック受診者のうち,実験の承諾を得た56
人を対象とした.内訳は男性13
人,女性43
人,年齢 は34
歳から62
歳まで,平均45
歳であった.副交感 神経遮断剤の使用割合は5
割であった. 通常の健診であるため,基準撮影法の撮影手順にの っとって撮影したが1),腹臥位頭低位正面撮影のみ, 通常のフトンを用いたものに加え,遠隔圧迫枕を用い たものを1
枚余分に撮影した.フトン(小)に対して は遠隔圧迫枕1
段膨を,フトン(大)に対しては遠隔 圧迫枕2
段膨を対比させた.撮影は全て同一人の診療 放射線技師が行った.撮影台に角度計を取り付け,頭 低位角は20
度で一定とし,フトンと遠隔圧迫枕は交 互に使用順序を変えた.最初に,フトンまたは遠隔圧 迫枕は胃の小弯側に挿入したが,交換する際は被験者 に「同じ位置に入れる」よう指示するだけで,右腰を 上げず,また撮影台の再起倒や呼吸を加えるなどの撮 影者の作為となることは一切排除した. フトンと遠隔圧迫枕は,いずれも45
度の半立位で 挿入したが,遠隔圧迫袋の加圧は水平位から開始した. 評価は,描出範囲が広いものが優れているとして, 腹臥位頭低位正面像の描出範囲を点数化して比較し た.具体的には,図4
のように,前壁を前庭部から体 上部までと,それぞれを小弯側と大弯側の10
の区域 に分け,それぞれの区域に1
点ずつ配して,描出区域 を0
点から10
点まで点数化した.点数の高いものが, 描出範囲が広いと判定される.この点数化は4
人の診 療放射線技師がブラインドで行い,その結果を平均し た.点数化には,試料作成者・集計者,および撮影者 は加わっていない.統計学的検定
統計学的検討は,対応のあるt
検定を行い,p
<0.05
で統計的に有意と判断した.検定ソフトはMicrosoft Excel 2013
を使用した. 図4. 画像の点数化 前壁の画像が10区域に区分けされた.Figure 4. The score of a picture
The picture of the inferior wall was divided into 10 areas.
図3.周辺機器
a)コンプレッサー,b)圧力調整器,c)赤外線送受信機,
d)スイッチ
Figure 3. Related equipment
a) The compressor. b) The regulator. c) The infrared transmitter and the receiver. d) The switch.
a
c
b
結 果
遠隔圧迫枕は,画像上に陰影を残さず,読影の妨げ にはならなかった. 図5
は,フトン(大)と遠隔圧迫枕(2
段膨90mm
高)を比較したものである.評価の平均値と標準偏差 は,フトン(大)で2.3
±2.4
であり,遠隔圧迫枕(2
段膨90mm
高)は2.1
±1.8
であった.両者とも評価 が低く,また有意差は確認できなかった(p=0.495
). 図6
は,フトン(大)と遠隔圧迫枕(2
段膨90mm
高), およびフトン(小)と遠隔圧迫枕(1
段膨45mm
高) を併せて総合的に評価したものである.評価の平均値 と標準偏差はフトンが2.6
±2.0
であり,遠隔圧迫枕 は3.5
±2.1
であった.同様のt
検定を行ったところ, 両者間には有意差が見られた(p=0.022
).考 察
遠隔圧迫枕の利点は,空気の注入によって,腹臥位 の状態から周囲に圧力が伝わっていくことである.そ のために胃の前後方向のねじれが矯正され,上下方向 に引き伸ばされ,その結果描出範囲が拡大されると考 えられる.一方,遠隔圧迫枕でも,これを挿入するた めに撮影室に一度は立ち入る手間がかかることはフ トンと同様である.しかし,遠隔操作で2
段階に圧迫 の程度を変えることができ,またスイッチは手元でOFF
できるため,圧迫枕を縮めた状態で撮影台の起 倒を行うことや,被検者に吸気や呼気を行ってもらう ことの組み合わせなどで,圧迫位置をある程度変える ことも可能であると考える.前壁の撮影が終わって足 元に落としても,耐久性も問題はないことが確認でき た.少なくとも,フトンと同様の描出範囲を確保でき, 術者が繰り返し撮影室に入る手間を減らすことが可能 である.また病変を発見した時の腹臥位水平位圧迫へ の応用も期待され,その際圧力の加減ができることか ら,質的診断にも貢献する可能性がある. 今回の臨床応用で問題になることは,第一に,フト ンと遠隔圧迫枕を交換する際,二度目に入れる位置を 被験者に任せたことである.これは撮影者の作為を排 除することが目的であったが,胃に対するそれぞれの 位置が異なるケースがあった.術者が位置を意識的に 修正しても良かったかもしれない. 第二の問題として,今回の結果は,通常のフトンを 用いた前壁撮影に比べて,フトンと遠隔圧迫枕のいず れも成績が良くなかったことである.フトン(大)と 遠隔圧迫枕(2
段膨90mm
高)の両者は有意差が出 なかった.これは頭低位角度を20
度と厳しくしたこ とが原因だと考えられる.頭低位角度を大きくすると さらにはっきりとした差が見られたかもしれない.し かし,総合的に見ると,20
度の頭低位角度でも臨床 的に有意差を認めたことは,遠隔操作枕を使用した場 合,従来の方法よりも頭低位角度を小さくして,被検 者へのストレスを軽減できる可能性があると考えられ る. 第三の問題として,遠隔圧迫枕は,フトンとは違っ て,腹臥位の状態から膨らませたことである.フトン と同様に半立位で膨らませた場合には,胃がバリウム の重みで伸展する要素が加わるため,さらに描出範囲 図5. フトン(大)と遠隔圧迫枕(90mm高)の比較 有意差は確認できなかった.n=15Figure 5. The comparison futon(big) with the remote control pressured pillow(RCPP) (90mm height)
There is no signifi cant difference. n=15
図6. フトンと遠隔枕の比較
有意差が確認された.n=56
Figure 6. The comparison the futon with the remote control pressured pillow(RCPP)
There is a signifi cant difference. n=56
ノート 腹臥位用遠隔圧迫枕の開発と有用性評価 学 術Arts and Sciences