各種添加剤による温水用ポリエチレン管の耐久性への影響評価
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(2) 各種添加剤による温水用ポリエチレン管の耐久性への影響評価. チルフェニルポリシランで分子量の異なるものを 5 wt%. 2. 使用材料. づつ超高分子量ポリエチレンに添加した場合の引張弾性率 と引張破断伸びを調べている.低分子量のポリシランほど. ポリエチレン樹脂は日本ポリエチレン社製のパイプグ. 可塑化効果は大きく,未添加の超高分子量ポリエチレンに. レ ー ド HE121 を 使 用 し た. 主 な 基 本 物 性 は,MFR0.2. 比べて引張弾性率と引張破断伸びが低下しやすいことがわ. (g/10 min, 2.16 kg at 210 ℃), 密度 0.938 g/cm , 融点. かっている.低分子量のポリシランは 1.0 wt% よりも高濃. (DSC 法)127 ℃,引張降伏応力 19 MPa,引張破断伸び. 度で添加すると,可塑化効果と,室温でも時間が経つとブ. 400% 以上である.この樹脂から呼び径 10(内径 10 mm,. リードアウトすることがわかった.また,高分子量のポリ. 外径 13 mm,平均肉厚 1.5 mm)の管を温度 210℃にて押. シランは 0.3 wt% よりも添加量を増やすと,一部が混ざら. 出成形により試作した.添加剤として大阪ガスケミカル社. ずに析出したり,分散せず凝集するため添加量に限界があ. 製の Fig. 1 に示されるようなメチルフェニル基を有する. ることがわかった.上市を目的とした配合量の限度である. ポリシランで,低分子量ポリシラン(オグソール SI-10-40,. ポリエチレン樹脂に添加可能な低分子量ポリシランは. 3. 数平均分子量. n. : 610,重量平均分子量. w. : 680)1.0 wt%. 1.0 wt% および高分子量ポリシランは 0.3 wt% を選択した.. および高分子量ポリシラン(オグソール SI-10-10,数平均 分子量. n. : 2,100,重量平均分子量. w. : 12,700)0.3 wt%,. 3. 実験方法と分析方法. 並びに理研ビタミン社製の造核剤(CN-001)2.0 wt% を それぞれポリエチレン樹脂にドライブレンドして管を成形. 3. 1 熱間内圧クリープ試験. した.徳満ら は,ポリ各種分子構造のポリシランを各種. Fig. 2 に熱間内圧クリープ試験装置の外観写真を示す.. ポリエチレンフィルムの表面にコーティングして,熱融着. 既存の恒温槽内に水封されたポリエチレン管をヘッダーに. 後のフィルムのピール強度を測定している.高密度ポリエ. 複数本まとめて設置した.両端の継手は PPS 樹脂製のも. チレン,低密度ポリエチレン,超高分子量ポリエチレンの. のを用いた.温度は 110℃,暖房用の使用条件である内圧. いずれの組み合わせにおいても Fig. 1 に示される直鎖状. 250 kPa にて水封したポリエチレン管にエアーで常時加圧. のメチルフェニルポリシランが最もピール強度が高いこと. しながら,管の破断までの時間を測定した.試験本数は 5. 8). が示されている.また,徳満ら. 11). は,各種分子構造のポ. 本で,最初に破断した管の破断までの時間を代表値とした.. リシランと超高分子量ポリエチレンとの親和性を検討して いる.その中で,Fig. 1 に示される直鎖状のメチルフェ. 3. 2 連続温水循環試験. ニルポリシランが最も超高分子量ポリエチレン中に均一に. Fig. 3 に連続温水循環試験装置の外観写真と模式図を. 分散しやすいことを調べている.ただし,超高分子量ポリ. 示す.小型の温水ボイラーにて 90,100,110 ℃の温水を. エチレン中に直鎖状のメチルフェニルポリシランを. 作り,平均内圧 250 kPa,常時 2 L/min の流量で連続循環. 5 wt% 添加すると,添加していないものに比べて,引張破. させた.全長 2000 mm の直管と ISO 10508 に準じた 6D. 断伸びは低下しないが,降伏応力は 10% 以上低下するの. の曲げ管も併設して,熱間内圧クリープ試験と同様に. で,超高分子量ポリエチレンの可塑化の効果が認められ. PPS 樹脂製の継手で接続を行った.各サンプルを配置し. た.したがって,水圧がかかる温水用ポリエチレン管には,. た棚の上に漏水センサーを設置し,検出した時間を破断ま. 降伏応力が大きく低下しない 1 wt% 以下の添加量が,望. での時間とした.全長 2000 mm の直管と ISO 10508 に準. 9). ましいと考えられた.また,徳満ら は,同じ直鎖状のメ. じた 6D の曲げ管の最初の破断までの時間を代表値にし た.また,暖房回路の使用環境を想定して,1 回/week の頻度で循環している全量(約 10 L)を排水し,温水を 入れ替えて回路内の溶存酸素を試験開始時と同様になるよ うにした.. 3. 3 光学顕微鏡観察 ポリエチレン管の直管および曲げ管の破断部内表面を, Fig. 1 Molecular structure of polysilane (R : terminal group).. 76. 接写リングを付けた一眼レフカメラおよびキーエンス社製 のデジタルマイクロスコープ VHX-900(対物レンズ 20 マテリアルライフ学会誌 2017 年 10 月.
(3) 久德博文,井川一久,本間秀和,福西佐季子,阿部健明,山田和志,西村寛之. Fig. 2 Hydrostatic stress rupture test.. Fig. 3 Hot water circulation test.. 3. 5 EPMA 測定 連続温水循環試験後,FT-IR 測定と同様にポリエチレ ン管の直管および曲げ管の破断部を長手方向に切り出し た.日本電子社製電子線マイクロアナライザー(EPMA) Fig. 4 Test sample cut out from pipe for FT-IR measurement.. JX8500-F にて管内面の表層部(1000×1000 µm の領域) において炭素(C),酸素(O),ケイ素(Si),銅(Cu), 鉄(Fe)等の元素のマッピングを行い,ポリシランの管. 倍)を用い観察した.. の肉厚方向の分布状況や銅酸化物等の管内面への付着状況 を調べた.. 3. 4 FT-IR 測定 連続温水循環試験後,Fig. 4 のようにポリエチレン管 の直管および曲げ管の破断面部から厚さ 100 µm 薄片を切. 3. 6 酸化誘導時間(OIT : Oxidation Induction Time) 測定. り出した.Thermo Fisher Scientific 社製 FT-IR Nicolet. 測定サンプルは,ポリエチレン管の表面から 5 mg 程度. iN10MX にて,管内面のき裂生成部を選んで赤外分光透. を周方向に 4 箇所から切り出し,JIS K 7123(2012)に. 過法にてマッピング測定を行った.得られたスペクトルか. 準じて測定温度 200℃で酸化誘導時間(OIT)をティー・. らポリエチレンの酸化に起因するカルボニル基(1735∼. エイ・インスツルメンツ社製の走査型示差熱量計 Q2000. 1750 cm )やカルボキシ基(1700∼1710 cm )のピー. にて測定し,OIT の平均値を求めた10).. -1. -1. クを解析し,CH2 変角振動に対するピーク比を求めた.. Materiaru Raifu Gakkaishi, Vol.29, No.3. 77.
(4) 各種添加剤による温水用ポリエチレン管の耐久性への影響評価. もまだ管の破断に至っていない.直管と曲がり管に関して. 4. 実験結果と考察. は,内圧による円周応力と曲げ応力が複合している曲がり 管の方が破断までの時間が短い傾向があることがわかっ. 4. 1 熱間内圧クリープ試験および連続温水循環試験. た.また,低分子量ポリシラン 1.0 wt% および高分子量ポ. 熱間内圧クリープ試験および連続温水循環試験によるポ. リシラン 0.3 wt% を添加した管を比較すると,110℃では. リエチレン管の最初の破断までの時間を Table 1 および. 高分子量ポリシラン 0.3 wt% を添加した管の破断までの. Table 2 に示す.. 時間がやや長いが,100℃では顕著な差は認められなかっ. Table 1 の熱間内圧クリープ試験結果から,標準品に比. た.. べて低分子量ポリシラン 1.0 wt% および高分子量ポリシ ラン 0.3 wt% を添加した管が破断までの時間が長くなる. 4. 2 管内面および破断面観察. ことがわかった.また,造核剤 2.0 wt% を添加した管は破. Fig. 5 に温度 110℃にて熱間内圧クリープ試験後,破断. 断までの時間がやや長くなることがわかった.低分子量ポ. 部の管内面部の写真を示す.管内面部には局所的に変色し. リシラン 1.0 wt% と高分子量ポリシラン 0.3 wt% の比較. た領域が見られて,標準品や造核剤 2.0 wt% の場合,長手. では,高分子量ポリシラン 0.3 wt% を添加した管の破断ま. 方向に変色した領域が広く帯状に生成していた.ポリシラ. での時間がやや長くなることがわかった.. ンを添加した場合,変色した領域が小さく,点在している. Table 2 の連続温水循環試験結果からも,同様に標準品. ことがわかった.また,変色した領域の内部からき裂が生. に比べて低分子量ポリシラン 1.0 wt% および高分子量ポ. 成し,成長して,破断に至ることがわかった.低分子量ポ. リシラン 0.3 wt% を添加した管が破断までの時間が長く. リシラン 1.0 wt% と高分子量ポリシラン 0.3 wt% にて,変. なることがわかった.また,造核剤 2.0 wt% を添加した管. 色した領域の生成に大きな違いはなかったが,破断までの. は破断までの時間がやや長くなることがわかった.試験温. 時間は 110℃では高分子量ポリシラン 0.3 wt% の方がやや. 度の影響も大きく,100,110 ℃では試験開始後 1 年以内. 長かった.. にほぼ管が破断したが,90 ℃では 16,000 時間を経過して. 村瀬ら11) はポリエチレン管の EF 継手融着界面でのポ. Table 1 熱間内圧クリープ試験結果(110℃). Table 2 連続温水循環試験結果. 78. マテリアルライフ学会誌 2017 年 10 月.
(5) 久德博文,井川一久,本間秀和,福西佐季子,阿部健明,山田和志,西村寛之. リシランの拡散分布を調べている.融着界面に塗布したポ. 0.3 wt% は Table 1 に示すように初期 Si-Si 量は少ないが,. リシランは,温度の上昇とともに,融着界面付近の溶融し. 破断までの時間が高分子量ポリシラン 0.3 wt% の方がや. たポリエチレン層に拡散することが調べられている.高分. や長かったと考えられる.100℃で顕著な差異が見られな. 子量ポリシランと低分子量ポリシランの温度 110℃での正. かった理由は,低分子量ポリシランのポリエチレン中での. 確なポリエチレン中での拡散速度は求められていないが,. 移行が相対的に遅いためと思われる.. ポリエチレン樹脂中での移行が低分子量ポリシランの方が. Fig. 6 に温度 110℃にて連続温水循環試験後,直管の破. 早いと考えられる.これらの先行研究から,低分子量ポリ. 断部の管内面および長手方向に切り出した肉厚断面部のき. シランの可塑化効果およびポリエチレン中での早い移行に. 裂を示す.管内面部には局所的に変色した領域が見られ. より温水中へ溶出されるのに対し,高分子量ポリシラン. て,標準品や造核剤 2.0 wt% の場合,長手方向に変色した 領域が広く帯状に生成していた.管内面部の変色した領域 には微細なき裂が多数発生しており,一番大きなき裂が内 圧により徐々に成長し,管の破断に至ったものと推察され る.変色した領域には黄赤色の堆積物が存在しており,連 続循環している温水中の金属酸化物が堆積したと思われ る.ポリシランを添加した場合,特に高分子量ポリシラン. 0.3 wt% の場合には,変色した領域が小さく,点在してい ることがわかった.架橋を施さないポリエチレン管は均一 に劣化するのではなく,変色した領域からき裂が生成し成 長し破断に至るので,変色した領域の生成の違いが熱間内 圧クリープ試験や連続温水循環試験の破断までの時間に差 が生じる原因と考えられる. Fig. 7 に原料メーカにて添加剤の配合している標準品 のポリエチレン管の肉厚断面部の拡大写真を示す.管内面 の変色した領域からき裂が複数生成し,一部は合体しなが らオーバル状の大きなき裂になり,独自に管外面側に成長 していることがわかった.また,変色した領域は管内表面 Fig. 5 Inner surface and crack generation at failure part after hydrostatic stress rupture test at 110℃.. だけではなく,肉厚方向にも一定厚さ存在することがわ. Fig. 6 Inner surface and crack generation at failure part of straight pipe after hot water circulation test at 110℃.. Materiaru Raifu Gakkaishi, Vol.29, No.3. 79.
(6) 各種添加剤による温水用ポリエチレン管の耐久性への影響評価. かった.D. E. Duvall らが指摘している水道管の破断形態. 剤 2.0 wt% 添加品では,4,000 時間前後で変色した領域の. と類似であると言える12).き裂は内圧がドラインビング. 生成,大きな堆積物,き裂の生成と成長による管破断が見. フォースとなり,クリープにより一定速度ではなく,断続. られたが,2 つのポリシラン添加品では管内面部に薄く堆. 的に成長したと思われる.. 積物が存在するが,4,000 時間までは部分的に変色した領. Fig. 8 に温度 110℃にて連続温水循環試験後 4,000 時間. 域の生成やき裂の生成は見られていない13)-15).. で 20 cm ほどのポリエチレン管を回収し,低分子量ポリ シラン 1.0 wt% および高分子量ポリシラン 0.3 wt% を添. 4. 3 FT-IR 測定結果. 加したポリエチレン管の内面部を観察した写真を示す.連. 温度 110℃にて連続温水循環試験後,破断したポリエチ. 続温水循環試験中のポリエチレン管全長の管内面を観察し. レン管のき裂の生成と成長部のカルボニル基とカルボキシ. たのではないが,Fig. 6 に示されるように標準品や造核. 基の断面マッピングを行った結果を Fig. 9 に示す.鋭い き裂が管内面部から管の肉厚中央部に進行していることが わかった.管内面にポリエチレンの酸化官能基であるカル ボニル基が広く分布していることから,Fig. 6 の光学顕 微鏡観察で見られた変色した領域が酸化劣化層と考えられ. Fig. 7 Magnification of failure surface of polyethylene pipe without additives.. る.この酸化劣化層の厚みは,破断部断面の写真から数十 µm であった.また,き裂の先端付近にもカルボニル基が. Fig. 8 Inner surface of straight pipe after hot water circulation test at 110℃.. Fig. 9 Observation of cross sectional area and FT-IR imaging profile at crack tip part after hot water circulation test at 110℃.. 80. マテリアルライフ学会誌 2017 年 10 月.
(7) 久德博文,井川一久,本間秀和,福西佐季子,阿部健明,山田和志,西村寛之. Fig. 10 Observation of cross sectional area and FT-IR imaging profile at crack tip part after hot water circulation test at 100℃.. 存在することから,き裂の成長と共に,き裂内部の温水に. 4. 4 EPMA 測定結果. 接触した部位も酸化劣化が進行していることが推測され. 低分子量ポリシラン 1.0 wt% および高分子量ポリシラ. る.更に,き裂の先端付近にはカルボニル基と同様に,カ. ン 0.3 wt% 添加したポリエチレン管を温水循環試験の開. ルボキシ基も存在することから,き裂内部で酸化劣化が進. 始前後に,EPMA により管内面の表層部のケイ素(Si),. 行し,金属イオンとエステル結合物が形成されている可能. 銅(Cu)等の元素マッピングを行い,ポリシランのポリ. 性もあることがわかった.連続温水循環試機の温水通路部. エチレン管の肉厚方向の分布状況や銅酸化物等の管内面へ. には,ポリエチレン管の接合には樹脂継手が使用された. の付着状況を調べた結果を Fig. 11 および Fig. 12 に示. が,銅,亜鉛,鉛,ステンレス鋼等の金属部材が含まれて. す.Fig. 11 の温水循環試験を開始する前では,ポリシラ. いる.一般的には 2 mg/L 程度の金属イオンが溶出してい. ンがポリエチレン管の肉厚方向に均等に存在しており,銅. るので,これらの一部とポリエチレンの酸化官能基と化学. (Cu)はポリエチレン管の肉厚方向や管内面の表層部には. 的に結合して塩が生成していることも考えられる.このよ. 存在していない.一方,温水循環試験後,ポリエチレン管. うな金属イオンの存在が酸化劣化層の生成やき裂の成長を. が破断した部位の近傍を調べると,ポリシランのケイ素. 早めている.標準品と 2 種類のポリシラン添加品を比較し. (Si)成分はポリエチレン管の肉厚方向にほとんど存在し. たところ,破断までの時間はポリシラン添加により長くな. ておらずに,管内面部に存在することがわかった.また,. るが,酸化劣化層の生成やき裂の成長には大きな違いはな. 銅(Cu)や鉄(Fe)成分が管内面部に存在していること. いことがわかった.. から,循環水中の銅イオンや鉄イオンが酸素と結合して,. 温度 100℃にて連続温水循環試験後,破断したポリエチ. 金属酸化物を生成し,低分子量ポリシランと共存している. レン管のき裂の生成と成長部のカルボニル基とカルボキシ. と考えられる.Fig. 6 に見られる黄赤色の堆積物は,銅. 基の断面マッピングを行った結果を Fig. 10 に示す.鋭い. (Cu)や鉄(Fe)などの金属酸化物と思われる.また,. き裂が管内面部から管の肉厚中央部に進行していることが. き裂の先端付近にも銅(Cu)成分が存在することから,. わかった.管内面にポリエチレンの酸化官能基であるカル. Fig. 9 で指摘したようにポリエチレンが銅イオンと化学. ボニル基が広く分布していることから,110℃と同様に変. 的に結合して塩を生成していることも考えられる.更に,. 色した領域が酸化劣化層と考えられる.しかしながら,き. このポリシランの管内部から管内表面への物質移動がポリ. 裂の先端付近にカルボニル基やカルボキシ基の高い領域が. エチレン管の破断までの時間に関係していると考えられ. 110℃と比較して見られないことから,酸化劣化よりも内. る.つまり,ポリシランが管内表面に移行することにより,. 圧によるクリープき裂成長が律速であると思われる.ISO. ポリエチレンと温水の直接接触を防止したり,銅イオンの. 24033 で定義されている非架橋型ポリエチレン管の活性化. 樹脂内拡散が抑制された結果,管内面での Fig. 6 に見ら. エネルギー 110 kJ/mol に基づく温度依存性を満足してい. れる黄赤色の堆積物や変色した領域の生成を遅延させてい. 16). る .. Materiaru Raifu Gakkaishi, Vol.29, No.3. ると考えられる.. 81.
(8) 各種添加剤による温水用ポリエチレン管の耐久性への影響評価. Fig. 11 Observation of cross sectional area and element imaging profile with EPMA at inner surface of polyethylene pipe with low molecular weight polysilane 1.0 wt% for 0, 4,000 and 5,313 hours after hot water circulation test at 110℃.. 低分子量ポリシラン 1.0 wt% および高分子量ポリシラ. 間および高分子量ポリシラン 0.3 wt% で 5,695 時間経過し. ン 0.3 wt% 添加したポリエチレン管を温水循環試験の開. た破断時の管内面には,100 µm 近くのケイ素(Si)や銅. 始後 4,000 時間で回収し,EPMA により管内面の表層部. (Cu)から構成される化合物が存在するので,ポリエチレ. のケイ素(Si),銅(Cu)等の元素マッピングを行い,ポ. ン管内部から溶出したポリシラン,温水に元来含まれてい. リシランのポリエチレン管の肉厚方向の分布状況や銅酸化. るケイ素(Si)が化合物として,き裂が発生している変色. 物等の管内面への付着状況を調べた結果も Fig. 11 および. した酸化劣化領域に堆積したと考えられる.ポリシランが. Fig. 12 に示す.Fig. 8 にて管内面部に薄く堆積物が見ら. 内表面に析出し存在することで,温水中の銅等の金属酸化. れたが,ケイ素(Si)や銅(Cu)から構成される化合物. 物を固定化できるため樹脂内への銅イオンの侵入が抑制さ. が管内面に存在することがわかった.また,4,000 時間経. れ,部分的な変色劣化層の生成,微細なき裂の生成や成長. 過する時点でも,低分子量ポリシラン 1.0 wt% および高分. が遅延することがわかった14).また,低分子量ポリシラン. 子量ポリシラン 0.3 wt% 添加したポリエチレン管のポリ. 1.0 wt% を添加した場合,5,313 時間の破断品では,ポリ. シランのケイ素(Si)成分は管の肉厚方向にかなり存在し. シランのケイ素(Si)成分は管内面部に集中しているが,. ており,一部が温水中に溶出あるいは管内面に化合物とし. ポリエチレン管の肉厚方向にもほとんど存在していないこ. て存在していた.低分子量ポリシラン 1.0 wt% で 5,313 時. とがわかった.一方,高分子量ポリシラン 0.3 wt% を添加. 82. マテリアルライフ学会誌 2017 年 10 月.
(9) 久德博文,井川一久,本間秀和,福西佐季子,阿部健明,山田和志,西村寛之. Fig. 12 Observation of cross sectional area and element imaging profile with EPMA at inner surface of polyethylene pipe with high molecular weight polysilane 0.3 wt% for 0, 4,000 and 5,695 hours after hot water circulation test at 110℃.. した場合,5,695 時間の破断品ではポリシランのケイ素. 4. 5 酸化誘導時間(OIT)測定結果. (Si)成分は管内面部に集中しているが,ポリエチレン管. ポリエチレン管は長時間使用することによって,高温環. の肉厚方向にもまだ十分存在していることがわかった.. 境下,外面は空気中の酸素で,内面は温水中の酸素で劣化. また,高分子量ポリシランの場合には,変色した領域が. が進む.このため,一般にポリエチレン樹脂中の酸化劣化. 小さく,点在していることは分っているがメカニズムまで. を防ぐため各種の酸化防止剤が添加されている. この添. は 解 明 で き て い な い. た だ し, 低 分 子 量 ポ リ シ ラ ン. 加剤効果を DSC により酸化誘導時間(OIT)を測定する. 1.0 wt% 添加と高分子量ポリシラン 0.3 wt% 添加で,破断. ことで,評価することができる.Table 3 に 200℃で測定. までの時間が高分子量ポリシラン 0.3 wt% 添加の方がや. された OIT の測定結果を示す.標準品に添加されている. や長くなるのは,ポリシランのケイ素(Si)成分の管内部. 酸化防止剤の量は公開されていないが,こちらの独自の分. での残留性が関係しており,添加量から高分子量ポリシラ. 析にて,Irganox 1330 が 0.05 wt%,Irganox 1010 が 0.01. ンは低分子量ポリシランより耐酸化性効果が高いことが分. wt%,Irgafos 168 が 0.03 wt% 程度添加されていると推. かった.. 定される.このため,標準品の OIT は測定温度 200 ℃に て 67.5 min であった.標準品に比較して,低分子量ポリ. Materiaru Raifu Gakkaishi, Vol.29, No.3. 83.
(10) 各種添加剤による温水用ポリエチレン管の耐久性への影響評価. Table 3 酸化誘導時間の測定結果(200℃). シラン 1.0 wt% では 1.3 倍ほど長くなり,高分子量ポリシ ラン 0.3 wt% ではほぼ同じ値で,造核剤 2.0 wt% では 1.1 倍になった.それらの要因として低分子量ポリシランや造. (2007) sistance polyethylene(PE-RT). 5)西村寛之,本間秀和 : マテリアルライフ学会誌,24 [2],51-55(2012). 核剤は,溶融状態の樹脂表面に析出して酸素の接触や樹脂. 6)平林秀雄,井口昭則,山田和志,西村寛之,井川一久 :. 内部への拡散が抑えられていると考えられる.ポリシラン. マテリアルライフ学会誌,25[2], 42-50(2013). に明確な酸化防止機能があることは報告されていないの. 7)Hirabayashi, H., Iguchi, A., Yamada, K., Nishimura,. で,各種添加剤の添加量により,OIT 測定中での酸素との. H., Ikawa, K., Honma, H. :. 接触状態が異なったためと思われる.OIT 測定時には 5. , 4[9],497-503(2013). mg 程度のサンプルをポリエチレン管の表面から削り取る.. 8)Tokumitsu, K., Yamada, M., Nakamura, M., Kobori,. 一般にはサンプル中に酸化しにくいポリシランや増核剤の. K. :. 添加量が多い方が,OIT が長くなると考えられる. E194(2012). 15),17),18). .. , 126 E188-. 9)Tokumitsu, K., Iguchi, A., Nakamura, S., Yamada, M.,. 5. 結 言. Nakamura, M., Kobori, K. : , 126, E403-E409(2012). 本研究では,2 種類のポリシランと造核剤を添加したポ. 10)JIS K 7123,プラスチックの比熱容量測定方法(2012). リエチレン管を試作し,熱間内圧クリープ試験や連続通湯. 11)Murase, H., Kawasaki, S., Kitaoka, T., Furukawa, J.,. 試験を実施した.その結果,無添加のポリエチレン管と比. Ueda, H., Nishimura, H., Yamada, K. :. 較して,2 種類のポリシランを添加したポリエチレン管は. 2 つの試験にて共に,破断までの時間が長くなることがわ かった.また,結晶核剤を添加したポリエチレン管は無添. , 6[4],322-331(2015) 12)Duvall, D. E., Edwards, D. B. : SPE-ANTEC2011, PENG-11-2010-0315(2011). 加の破断までの時間と同等であった.破断部位の詳細な観. 13)井川一久,本間秀和,福西佐季子,山田和志,西村寛. 察により,ポリシランを添加すると,同じ経過時間で管内. 之 : マテリアルライフ学会誌,27[3],63-69(2015). 面の変色劣化層の大きさが小さいことがわかった.また,. 14)Igawa, K., Honma, H., Yamada, K., Nishimura, H. :. FT-IR や EPMA の分析結果から,添加したポリシランが. 10th International Symposium on Weatherability. 管内面に析出して存在することで,温水中の銅等の金属酸 化物を固定化できるため樹脂内への銅イオンの侵入が抑制 され ,部分的な変色劣化層の生成,微細なき裂の生成や 成長が遅延することがわかった.. (10th ISW)July 2-3, 65-69(2015). 15)井川一久,本間秀和,山田和志,西村寛之 : マテリア ルライフ学会誌,27[3],70-76(2015). 16)ISO 24033, Polyethylene of raised temperature resistance(PERT)pipes ‒ Effect of time and tem-. 引用文献. perature on the expected strength(2009) 17)阿部健明,山田和志,西村寛之,辻井哲也,井川一. 1)JIS K6774,ガス用ポリエチレン管(2013) 2)JIS K6769,架橋ポリエチレン管(1999). 久 : 成形加工シンポジア’ 16,F208(2016). 18)Murase, H., Sugimoto, M., Nishimura, H., Yamada,. 3)西村寛之 : 成形加工,20[11],790-796(2008). K. :. 4)ISO 24033, Pipes made of raised temperature re-. 590(2015). 84. ,576, 6[6]. マテリアルライフ学会誌 2017 年 10 月.
(11) 久德博文,井川一久,本間秀和,福西佐季子,阿部健明,山田和志,西村寛之. Effect Evaluation of Various Additives to Durability of Polyethylene Pipes for Hot Water Application Hirofumi KYUTOKU ※*1, Kazuhisa IGAWA*1, Hidekazu HONMA*2, Sakiko FUKUNISHI*3, Takeaki ABE*4, Kazushi YAMADA*4, Hiroyuki NISHIMURA*4 Osaka Gas Co., Ltd., Osaka, Japan (4-1-2, Hiranomachi, Chuo-ku, Osaka 541-0046, Japan) *2 Analysis Research Center, KRI Inc., Ltd., Osaka, Japan (6-19-9, Torishima, Konohana-ku, Osaka 554-0051, Japan) *3 Frontier Materials Laboratories, Osaka Gas Chemicals Co., Ltd., Osaka, Japan (6-11-61, Torishima, Konohana-ku, Osaka 554-0051, Japan) *4 Advanced Fibro-Science, Kyoto Institute of Technology, Kyoto, Japan (Gosyokaidocyo, Matsugasaki, Sakyo-ku, Kyoto 606-8585, Japan) *1. ※Corresponding author. Abstract There are mainly two grades of polyethylene pipes for hot water supply and heating. The excellent molecular structure polyethylene resins having resistance to stress crack growth are used because hot water is flowed for a long time in both polyethylene pipes. Furthermore, various additives are mixed to prevent the thermal degradation of polyethylene pipes at the elevated temperature. In this study, the stress rupture test and the continuous hot water circulation test were con ducted using extruded polyethylene pipes mixed two kind of polysilane and a nucleating agent. As a test results, the time to failure of polyethylene pipes mixed two kind of polysilane was longer than that of a polyethylene pipe without additives. The time to failure of polyethylene pipes mixed a nucleating agent is similar to that of a poly ethylene pipe without additives. According to precise observation at the failure part, it was found that there was a small degraded colored layer at the inner surface of polyethylene pipes mixed two kind of polysilane compared with polyethylene pipes without additives. In addition, it was found that the generation and the growth of degraded colored layer and small cracks was delayed due to diffusion of polysilane to the inner surface and to protection of adhesion of metal oxides such as copper oxide and iron oxide. Keywords : Polyethylene pipes, Additives, Polysilane, Hydrostatic stress rupture test, Hot water circulation test [Materiaru Raifu Gakkaishi, 29[3],75-85(Oct. 2017)]. Materiaru Raifu Gakkaishi, Vol.29, No.3. 85.
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