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地盤調査結果に基づくコンクリートの硫酸塩劣化地盤の分類

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(1)土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. 地盤調査結果に基づく コンクリートの硫酸塩劣化地盤の分類 松下 1. 博通 1・佐川. 康貴 2・佐藤. 俊幸 3. 福岡建設専門学校 校長(〒812-0053 福岡市東区箱崎 6-15-34) E-mail: [email protected] 2 正会員 九州大学大学院准教授 工学研究院建設デザイン部門(〒810-0395 福岡市西区元岡 744) E-mail: [email protected] 3 正会員 (株)シーティーアイグランドプラニング(〒810-0041 福岡市中央区大名 2-4-12) E-mail: [email protected] フェロー会員. 九州大学名誉教授. 本研究では,地盤に含まれる硫酸イオンおよび硫酸塩によるコンクリートの硫酸塩劣化について取り上 げた.はじめに,旧産炭地域のぼたを用いた盛土地盤と新第三紀泥岩層の造成地盤における住宅基礎コン クリートの劣化既往事例を概説し,その原因が地盤に含まれる硫酸イオンおよび硫酸塩によるものである ことを示した.次に,黄鉄鉱を含む海成層による堆積地盤において,細菌の作用により黄鉄鉱が酸化され, 硫酸イオンが生じる過程を示した上で,日本各地の地盤中に含まれる硫酸イオン濃度について考察した. 最後に,地質と気象要因に基づき,日本全土におけるコンクリートの硫酸塩劣化の可能性を有する地盤を 「コンクリートの腐食程度の厳しさ」として提案した.. Key Words : coal waste, concrete, deterioration, hazard map, mudstone, pyrite, sulfate attack. 1.. はじめに. コンクリート構造物は,その置かれた環境でのい ろいろな要因によって劣化損傷が進行し,健全な機 能を失う 1).その劣化現象としては,主として内的 要因に起因するアルカリ骨材反応や,外的要因に起 因する中性化,塩害,化学的侵食などがあげられる. このうち,化学的侵食については,その一つに硫酸 塩による劣化が顕著に見受けられるが,その劣化機 構については,硫酸塩濃度や pH の大きさによって 異なることが多くの研究者により明らかにされてい る. 九州北西部を例とした産炭地域における「ぼた」 による造成地盤では,ぼたに含まれる硫酸イオンが 住宅床下の地盤表面に濃集し,コンクリート基礎表 面から侵入することによりコンクリートの変質や劣 化が生じている 2)~5).同じような硫酸塩劣化現象は, 黄鉄鉱を含む海成層である新第三紀泥岩層を切盛し た造成地においても報告されている 6)~9).このこと は,硫酸性地盤が温泉や鉱山という特別な地域に限 らず,もともと海底に堆積した泥土が圧密,脱水, 固結化の過程を経て今は陸地となっている新しい地. 507. 層についても硫酸性地盤となる条件を有することを 示している. 本研究では,まず,硫酸塩劣化による基礎コンク リートの崩壊事例を概説し,特殊土であるぼた地盤 における現象と堆積軟岩の造成地盤における現象を 示し,両者の劣化原因について考察した.次に,硫 酸イオンの起源となる黄鉄鉱を含む海成層に着目し, 黄鉄鉱の成因と常温酸化による硫酸イオンの生成メ カニズムについて示した.また,既往文献をもとに, 各地層の硫酸イオン濃度について整理し,全硫酸お よび水溶性硫酸イオン濃度について考察を行った. 最後に,日本における地質と気象を考慮し,硫酸イ オンによるコンクリートの地盤に対する腐食の厳し さに関する区分図として,「コンクリートの腐食程 度の厳しさ」に関する図を提示した.. 2.. 基礎コンクリートの硫酸塩劣化事例. (1) ぼた地盤における硫酸塩劣化 松下ら 2)によると,ぼたによる宅地造成後 3 ヶ月 を経て建築された家屋の事例では,建築から約 8 年.

(2) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. 後より床のきしみや傾きが発生したため,調査が行 われている.その結果,床下の束石や布基礎に白色 結晶が付着し,束石の一部はハンマーの軽打で容易 に崩れるほど被害を受けていることが観察された. また,化学分析試験の結果,基礎コンクリートの 劣化は次の二つの体積膨張現象によって生じている ことを明らかにしている.第一は,床下表面に濃集 した硫酸イオンがコンクリート中の化合物あるいは セメント組成鉱物と化学的に反応し,石膏あるいは エトリンガイトが生じていることである.第二は, 硫酸イオンと共存しているナトリウムやマグネシウ ムイオンが硫酸塩を生成していることである. また,松下・菅 4)および佐藤ら 5)によると,ぼた 山を切崩して造成した海岸に近い沖積低地に建築さ れた家屋の事例においても,建築から約 10 年後で不 具合が生じ,15 年ほどでいずれの基礎にも何らかの 劣化あるいは崩壊現象が発生したことが報告されて いる.これらの事例においても,前述の場合と同様 に,床下土は高含水比であり,ナトリウムおよび硫 酸イオンの濃集現象が確認されている.さらに,地 下水は温泉水あるいは海水に近い硫酸イオン濃度を 有することが明らかにされている.. 屋外の 地盤は イオンの 希釈. 雨水 蒸発. 屋内の 床下土は イオンの 濃集. まさ土 (覆土) 層厚0.5~1.1m. 毛細管現象 による 水分の上昇. 雨水の 希釈. 地下水位 GL-4~9m. ぼた (盛土) 層厚4.0~11m. 旧 地盤. 図-1. 土に接する住宅基礎コンクリートにおける 地中水の動きとイオンの濃集現象 10). えていると疑問視されたのが 1975 年であった.この 現象についての機構や対策はまだ研究されていなか ったが,1977 年より幾つかの対策工法を試行しなが ら調査研究を進めたところ,微生物の協調作用によ り硫酸イオンが作り出されることが報告されている.. (3) 地盤環境に起因する硫酸塩劣化の機構 (2) 新第三紀泥岩層における硫酸塩劣化 これまでに示した,ぼた地盤および新第三紀泥岩 新第三紀泥岩層における基礎コンクリートの劣化 層における基礎コンクリートの劣化現象は,いずれ 事例は,宮崎県および福島県で報告されている. も地盤表面に濃集した硫酸イオンあるいは硫酸塩に 小林 6)によれば,1980 年に宮崎市内の住宅団地の 起因するという点において共通しており,同じ劣化 家屋床下において,束石が崩壊しているのが発見さ 機構により生じたものと考えられる. れ話題となり,翌年には同様の被害を受けた住宅が 硫酸イオンの濃集機構は,図-1 に示すような模式 宮崎市周辺の多くの住宅団地にもあることが分かり, 図で説明される 10).すなわち,当初は硫酸イオン濃 重大な社会問題に発展したことを報告している.ま 度が低い地盤であったにもかかわらず,下位の地盤 7) た,高谷 によれば,以前より宮崎市郊外の日南海 に含まれる硫酸イオンが長期間にわたる毛細管現象 岸に分布する泥岩中から多量の塩類が溶出すること により地中水分と共に上昇し,蒸発の卓越する床下 が認められており,束石が崩壊した床下に集積して 表面に濃集した結果,高濃度の硫酸イオン含有地盤 いた塩類は,泥岩中に含有された塩類に起因した硫 となったと考えられる. 酸ナトリウムであることを明らかにしている.また, 床下土表層の塩類濃集と束石崩壊が土中の含水比に より決定されると述べている.さらに,中沢ら 8)に 3. 海成層に含まれる硫酸イオンの起源 よれば,配合推定の結果,劣化した束石コンクリー トは特に品質が悪いものではないこと,床下土の硫 2.において,地盤中の硫酸イオンが毛細管現象に 酸塩濃度が庭土のそれよりも極めて高いこと,さら より地盤表面に濃集し,コンクリートの劣化を生じ には,土壌表面の硫酸塩は条件次第によっては一般 させることについて述べた.本章では,硫酸イオン の環境よりも数倍~数十倍に達することなどを明ら の起源となる黄鉄鉱を含む海成層に着目し,黄鉄鉱 かにしている. およびその常温酸化により硫酸イオンが生成される 一方,宮崎市内と同様に新第三紀層が分布する福 過程について述べる. 9) 島県いわき市内の事例を生化学的に扱った陽田 に よると,1960 年代からの大型造成により出現した泥 (1) 黄鉄鉱の成因 岩が,風化と盤膨れ現象により住宅基礎に被害を与 海水中の硫酸イオンは,約 2,600mg/kg と多く含ま. 508.

(3) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. れている 11).この硫酸イオンは,陸域からの有機物 の供給を受ける内湾や潟において酸素の欠乏する還 元状態になると,硫酸を還元するバクテリア(硫酸 還元菌)の作用により硫黄イオン(S2-)に還元され る 12).この反応は,式(1)で表わされる. SO42- + 8H+ + 8e → S2- + 4H2O (1) 次に,硫黄イオンは,同じ還元条件下で生成した 第一鉄イオン(Fe2+)と反応して硫化鉄(FeS)を沈殿 する.これは,通常の下水・排水の停滞した底で腐 敗臭を出す黒泥と同じである. Fe2+ + S2- → FeS (2) 溶解した硫黄イオンの一部は,酸素や第二鉄イオン (Fe3+)で酸化され硫黄(S0)となる. S2- + 6H2O +3O2 + 4Fe3+ →S0 + 4Fe(OH)3 (3) さらに硫黄は,未酸化の硫化鉄(FeS)と反応して黄 鉄鉱(FeS2)を生成する. FeS + S0 → FeS2 (4) このように,海水を起源とする硫酸イオンから黄 鉄鉱が生成されるまでの過程は,図-2 のような模式 図で表される. 黄鉄鉱は海底では非常に安定しているため,海成 層中に卓越する硫化鉱物としてよく知られている 13). この黄鉄鉱の形状については,博多湾埋立地からの ボーリングにより得られたコア中の鉱物を電子線マ イクロアナライザー(EPMA)にて元素確認した後,走 査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果がある 14).写 真-1 に示すように,霜柱状の束が重なる全体像を有 し,個々は直径数 μm 大の小さな半球ドームから 5 ~30μm 程度のやや大きな半球ドームの様な形態を 有するフランボイダル型黄鉄鉱と,一辺が 100μm 程 度の明瞭な結晶面を有する自形型黄鉄鉱が観察され ている.前者は洪積固結粘土層の土砂試料から,後 者は新生代古第三紀の炭質頁岩の岩石試料から摘出 した鉱物である. 同様の分析結果として,北極圏のバレンツ海の沖. (a)洪積固結粘土中の黄鉄鉱全体像 写真-1. 積層に相当する堆泥中にフランボイダル型黄鉄鉱, 同海底下の中生代ジュラ紀の頁岩からは異なる結晶 形態を有す自形型黄鉄鉱が確認され,前者の黄鉄鉱 が後者から供給されたものではなく独自に生成した 結晶であることが報告されている 15). 固結度が高く地質年代の古い地層中の黄鉄鉱は, 容易に酸化されない平滑な結晶面を有す自形型黄鉄 鉱で,比較的固結度の低い新しい地層中の黄鉄鉱は, 結晶度の低い容易に酸化されやすい状態のフランボ イダル型黄鉄鉱である. (2) 黄鉄鉱の常温酸化による硫酸イオンの生成 自然界における黄鉄鉱は,地層中から分離され空 気中に曝露された環境に置かれると,次のような化 学式によって常温下で酸化されると説明される 16). FeS2 +7/2O2 +H2O→Fe2+ +2SO42-+2H+ (5) 2+ + 3+ 4Fe +O2+4H →4Fe +2H2O (6) 2- 3+ 2+ + FeS2+14Fe +8H2O→15Fe +2SO4 +16H (7) FeS2 + 2Fe3+ → 3Fe2+ + 2S (8) 2- + 2S+3O2 +2H2O→ 4H +2SO4 (9) まず,第一段階として式(5)のように,黄鉄鉱は空 気と水の共存する環境下で酸化され,第一鉄イオン. 海水. SO42-. 海底. S0 S2-. S2-. Fe 図-2. 2+. 酸化層. 黄鉄鉱. FeS. 還元層. FeS2. 海水起源の硫酸イオンによる黄鉄鉱の生成. (b)同左の近接像(フランボイダル型) (c)第三紀層頁岩中の黄鉄鉱(自形型). 黄鉄鉱の走査型電子顕微鏡像(スケールバーの長さ 100μm=0.1mm). 509.

(4) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. (Fe2+)と硫酸イオン(SO42-)になる.2 価の第一鉄イオ ンは式(6)に示されるように酸化して第二鉄イオン となる(Fe3+).この反応過程が全体の律速段階である. 次からは式(7)のように,第二鉄イオンがすばやく黄 鉄鉱と反応し第一鉄イオンを再生する.これにより 硫黄化学種が-2 価から+6 価まで変化し,pH が低く なるほど式(8)の元素硫黄生成型が優勢となる.従っ て,式(6),(7),(8)の循環反応が起こると考えられて いる.さらに式(9)に示されるように,元素硫黄は酸 化を受け硫酸イオンを出し硫酸となる.このうち式 (5),(6)の反応は,好酸性の鉄酸化細菌(Thiobacillus ferrooxidans)17)によって,さらには,式(9)の反応に ついては,同細菌および同じ環境に生息する硫黄酸 化細菌(Thiobacillus thiooxidans)18)により加速され る. このように,実際の自然界における表流水は,炭 酸ガスの溶け込みが十分に行われた状態で最大 pH =5.6 ほどの弱酸性水となり,さらに酸性化の傾向が ある場合に微生物による酸化が考えられる.鉱山環 境に鉄酸化細菌がしばしば生息して反応を加速させ ている事実が報告されていることから,黄鉄鉱の酸 化で重要なものは,(a)水と酸素による化学的酸化と (b)鉄酸化細菌などの微生物触媒による酸化である といわれている 19).. 4.. 地盤に含まれる硫酸イオン濃度. 硫酸塩を含む地盤としては,主に古第三紀層に属 す石炭の採掘ずり(ぼた)による盛土地盤,新第三 紀泥岩層や第四紀洪積層の海成固結粘土あるいはシ ルトからなる丘陵地や台地の切取地盤そして第四紀 沖積層の粘土・シルト地盤が報告されている 20),21). 本章では,各地盤および地層に含まれる硫酸イオ ン濃度について述べる. (1) 硫酸イオン濃度の表記について 一般に,土の化学分析は,試料を水の浸潤試料と して溶出させる試験(溶出試験),酸処理して溶出さ せる酸可溶性成分試験(含有量試験)およびアルカ リ溶融法による総量分析より成る 22)が,本研究で取 り扱う水溶性硫酸(W-SO4)は溶出試験に相当し 23), 全硫酸(T-SO4)は総量分析に相当する.本研究にお いて既往文献から引用した水溶性硫酸のイオン濃度 は,分析実施時期の新旧や農学・理学および工学等 分野ごとの差あるいは分析の目的により試料調整方 法が異なるが,各データを同一の指標として取り扱 った.このため,後述するように,既往文献から引. 用した水溶性硫酸のイオン濃度データは,幅広い範 囲にばらつき,対応する全硫酸との相関も良くない が,各地盤における全体的な傾向は把握できると判 断した. なお,今後の溶出試験については,土の環境基準 への適合性も考慮し,環境庁告示第 46 号(公定法) に準拠した地盤工学会による試験方法を採用するの が望ましいと考える.この試験方法は,試料と水の 比率が 1:10 であり,6 時間の水平振とう器による 分散,20 分間の遠心分離器による分離後にろ過した 浸出液について JIS に規定された機器で分析する方 法である 24). 土あるいは岩に含まれる硫黄成分(本研究で取り 扱う全硫酸)は,(1)硫化鉱物として固定された成分, (2)酸可溶性成分および(3)水溶性成分(本研究で取り 扱う水溶性硫酸)の 3 つに大別される.なお,本論 文では,硫酸イオン濃度はすべて SO4 として換算し た百分率(%)表示とし,コンクリートに対する規 準において ppm 表示を併記した. (2) ぼた地盤の硫酸イオン濃度 日本に分布する主要な炭田は,北海道と九州北西 部および常磐地方にあり,九州北西部において表-1 に示すような硫酸イオン濃度の分析結果が得られて いる 14),20).表中の 1,2 は,基礎コンクリートが実 際に劣化損傷した分析値であり,水溶性硫酸イオン の高い濃集が認められる.表中の 3 は,浚渫土やぼ たによる海上埋立地からのボーリングコアより成り, ぼたや粉砕された石炭片混じりの粘性土試料である. 表中の 4 は,現況がぼた山からのボーリングによ る標準貫入試験試料のうち,ぼた主体の礫質土試料 であり,全硫酸の量からみて非常に低い水溶性硫酸 イオン濃度となっている.逆に,表中の 5 は,4 と 同様に現況がぼた盛土地からのボーリングによる標 準貫入試験試料であるが,浅い深度からの礫質土で あり,水溶性硫酸イオンの高い濃集が認められる. これら表中の 4 と 5 の違いは,前者が長い間の空気 中曝露によりぼた山表面から水溶性成分が流失した 結果と考えられる「風化ぼた」であり,後者が最近 の開発によりぼた山を切り崩した新しい面から水溶 性成分が溶出していると考えられる「未風化ぼた」 である. (3) 新第三紀泥岩層の硫酸イオン濃度 日本に分布する新第三紀層は,北海道から本州北 東部の広い範囲および本州南西部と九州の海岸沿い に点在して認められる.表-2 に示す硫酸イオン濃度 の分析結果は,農学あるいは地質学の分野における. 510.

(5) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. 表-1. 古第三紀層炭田のぼたによる地盤の硫酸イオン濃度(( 全硫酸 SO4(%) 9.23~16.9 (14.1). 地層名 1. 粕屋層群. 2. 姪浜層群. 3. 姪浜層群. 4. 志免層群. 5. 杵島層群. 表-2. 分析値なし. 1. 島尻層群. 2. 宮崎層群. 3. 掛川層群. 4 上総層群中下部層 5. 寺泊層・椎谷層. 6. 湯長谷層群. 7. 船川層・女川層. 8. 稚内層・袋地層. 全硫酸 SO4(%) 0.78~7.86 (3.00) 0.27~1.77 (0.90) 分析値なし 0.08~3.31 (1.35) 1.14~4.84 (2.31) 0.78~2.82 (1.76) 0.18~5.67 (2.25) 0.093~4.09 (1.45). 水溶性硫酸 SO4(%) 分析値なし 0.008~0.067 (0.03) 0.48~0.60 (0.52) 0.01~0.33 (0.05) 分析値なし 0.006~0.38 (0.14) 0.006~0.18 (0.10) 分析値なし. 1. 国頭礫層. 2. 大阪層群. 3. 上総層群上部層. 4. 灰爪層. 全硫酸 SO4(%) 3.92~5.36 (4.64) 1.14~5.16 (2.49) 0.075~1.56 (0.65) 0.12~2.85 (1.01). 水溶性硫酸 SO4(%) 分析値なし 分析値なし 0.006~0.049 (0.018) 0.01~0.15 (0.038). 参考 文献. 分析の目的 基礎コンクリートの 劣化崩壊 基礎コンクリートの 劣化崩壊 計画されたコンクリート構 造物の対策 計画されたコンクリート構 造物の対策 計画されたコンクリート構 造物の対策. 20) 20) 20) 14) 20) 20). )内の数値は,平均値を表す.). 分析試料の 採取状況 地表露岩から 青灰色泥岩 切取法面から 青灰色部 深さ 20~40cm の開 墾土 地表露岩から 青灰色部 地表露岩から 青灰色部 切取法面から 青灰~褐色部 地表露岩から 青灰色部 川沿い露岩 ボーリングコア. 第四紀洪積固結粘土層による地盤の硫酸イオン濃度(( 地層名. )内の数値は,平均値を表す.). 分析試料の 採取状態 深さ 50cm 以内の 床下土中のぼた 深さ 60~80cm の 床下土下のぼた 海上埋立されたぼた のボーリングコア ぼた山からの ボーリングコア ぼた山からの ボーリングコア. 新第三紀泥岩層による地盤の硫酸イオン濃度((. 地層名. 表-3. 0.85~2.35 (1.54) 1.33~2.01 (1.61) 2.45~4.96 (3.06). 水溶性硫酸 SO4(%) 0.30~1.17 (0.60) 0.009~1.32 (0.71) 0.12~0.40 (0.23) 0.02~0.07 (0.05) 0.42~0.82 (0.65). 分析の目的. 参考 文献. 酸性硫酸塩土壌. 25). 腐食対策. 26). 酸性硫酸塩土壌. 27). 堆積環境の推定. 28). 堆積環境の推定. 29). 腐食対策. 26). 酸性硫酸塩土壌. 30). 堆積環境 の推定. 31)32)33). )内の数値は,平均値を表す.). 分析試料の 採取状況 深さ 20~40cm の 開墾土 地表露岩の 青灰色部 地表露岩の 青灰色部 ボーリングコア 深度 50m 迄. 分析の目的. 参考 文献. 酸性硫酸塩 土壌. 25). 堆積環境の推定. 34). 堆積環境の推定. 35). 化学的風化の検討. 36). 研究報告からの引用である.表中の 1 が沖縄の久米 島と本島北部での水田の天地返しや客土に島尻層群 の泥岩が混じった事例 25),表中の 3 が静岡の掛川層 群で造成された茶畑での樹木枯死の事例 27),表中の 7 が岩手の花泉町の事例 30)など,丘陵地の機械掘削 による容易な露出に起因した急激な酸性化地盤であ る.表中 4 の千葉県 28),5 の新潟県 29)および 8 の 北海道 31)~33)など数%に達する全硫酸が確認されて いる.表中 2 の宮崎層群 26)と 6 のいわき市内の湯長 谷層群 26)は,パイプ腐食対策のために事前調査され たものである.. の後背台地に認められ,一般に問題となるのは黄鉄 鉱を多く含む海成層の固結粘土である.このうち硫 酸塩による被害が報告されているのは,表-3 に示す ように,沖縄の本島北部での台地造成畑地に局部的 に分布する炭化木混じりの黒灰色泥土で,pH が 2.0 以下という強酸性を示し耕作土とならない事例があ る 25).これは,まさしく黄鉄鉱の生成していた環境 がそのまま陸地化した状態と考えられ,開墾するこ とにより急激な常温酸化が進行したと想定される. また,地質的堆積環境の推定などとして分析された 研究報告がある 34)~36).. (4) 第四紀洪積固結粘土層の硫酸イオン濃度 日本に分布する第四紀洪積層は,主要な平野周辺. (5) 第四紀沖積粘性土層の硫酸イオン濃度 日本に分布する第四紀沖積層は,主要な平野およ. 511.

(6) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. 表-4. 第四紀沖積粘土層による地盤の硫酸イオン濃度((. 地域名 1. 八代湾. 2. 波根湖. 3. 中海・宍道湖. 4. 児島湾. 5. 八郎潟. 6. 筑紫平野. 7. 広島平野. 全硫酸 SO4(%) 0.24~1.33 (0.64) 0.72~6.63 (2.24) 0.43~4.59 (1.89) 0.16~3.02 (1.46) 分析値なし 0.60~2.31 (1.04) 0.02~2.01 (1.28). 表-5 地盤名 ぼた地盤 新第三紀泥岩層 第四紀洪積固結粘土層 第四紀沖積粘土層. 水溶性硫酸 SO4(%) 0.14~1.29 (0.51) 0.09~2.40 (0.71) 0.41~2.06 (1.14) 0.02~0.66 (0.27) 0.21~0.97 (0.59) 0.09~0.42 (0.14) 分析値なし. )内の数値は,平均値を表す.). 分析試料の 採取状況. 分析の目的. 参考 文献. 干拓地土壌. 酸性硫酸塩土壌. 37). 干拓地土壌. 酸性硫酸塩土壌. 38). 干拓地土壌 ボーリングコア. 硫酸塩土壌 堆積環境. 39)40). 干拓地土壌. 酸性硫酸塩土壌. 41). 干拓地土壌. 酸性硫酸塩土壌. 42). 水路底質土. 排出処理対策. 43). ボーリングコア. 堆積環境の推定. 44). 各地盤における硫酸イオン濃度の平均値の幅および水溶性化率 *. 全硫酸 T-SO4(%). 水溶性硫酸 W-SO4(%). 水溶性化率 W-SO4/ T-SO4(%). 試料数. 1.54~14.1 0.90~3.00 0.65~4.64 0.64~2.24. 0.05~0.71 0.03~0.52 0.018~0.038 0.14~1.14. 7.8 2.6 3.5 34.0. 52 94 40 55. *. :水溶性化率は図-5〜8 から水溶性硫酸の全硫酸に対する百分率として求めた.. 有機質土を除く)45).固相成分のうち,水溶性塩類 は,塩化物・硫酸塩・炭酸塩の順に易溶性を呈すが, 日本のような湿潤気候下の土壌中ではほぼ恒常的に 保湿状態にあるため,難溶性である炭酸塩の一部を 除けば可溶性成分として移動あるいは流失している と考えられ,硫化物は,酸化して硫酸となり岩石鉱 物の組織を分解し土壌成分を生成する 46). このため,前述したように,地盤中の硫黄(全硫 酸)は,既に土中間隙水に溶けている水溶性硫酸態 硫黄(水溶性硫酸)と酸可溶性硫黄および硫化鉱物 中に固定された状態で賦存している硫黄がある.コ ンクリートに直接影響を与える硫黄は,水溶性硫酸 態硫黄(水溶性硫酸)である. 各地盤の全硫酸と水溶性硫酸のイオン濃度は,図 -3,4 に示すように,その濃度分布範囲に 100 倍前 後の大きな幅があるものの全分析値の平均値からみ ると,ぼた地盤を別にした全硫酸は,ほぼ 0.6~3.0% の範囲に入り,新第三紀泥岩層,沖積粘土層そして 洪積固結粘土層の順に多い.同様に,水溶性硫酸は 0.02~1.1%程度を示し,沖積粘土層,新第三紀泥岩 層そして洪積固結粘土層の順に多い.なお,各地盤 における各地層・地域別の平均値をまとめると,表 -5 に示す通りである. 各地盤の全硫酸と水溶性硫酸の関係を図示すると 図-5~8 に示す通りである.ここに,全硫酸に対す. び河川沿いに認められ,一般に問題となるのは黄鉄 鉱を多く含む海成層の粘性土である.表-4 に示すよ うに,典型的な例は干拓地における土壌の強酸性化 であり,海に面した内湾や湖沼の底土が干上がるこ とにより空気に触れ,好気的な条件になり黄鉄鉱が 酸化し,硫酸イオンや水素イオンが多量に生成し, pH も 7 から 4 あるいは 3 以下と極端な低下を生じる ことが報告されている 37)~42).新設した水田内の用 水路に堆積した底質泥土が,渇水中の空気接触によ り酸性化し酸性水を発生するようになったことが報 告されている 43).また,堆積環境の推定として分析 された研究報告もある 44).. 5.. 硫酸イオン濃度に関する考察. 本章では,4.で示した地盤中の硫酸イオン濃度に ついて,特に,全硫酸イオン濃度と水溶性硫酸イオ ン濃度との関係から考察を行った. (1) 全硫酸イオン濃度と可溶性硫酸イオン濃度の関 係 一般に,地盤表層に相当する土壌は,全成分の乾 燥重量 20~90%が固相成分から成り,そのうちの 90%が岩石鉱物および粘土鉱物からなる(一部の高. 512.

(7) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. 図-3. 各地盤の硫酸イオン濃度(全硫酸). 図-4. 各地盤の硫酸イオン濃度(水溶性硫酸). 0.5. 2.0 y=0.1x. ぼた地盤 . 第四紀洪積固結粘土層. 劣化崩壊事例の試料 劣化損傷検討の試料. 酸性硫酸塩土壌試料 堆積環境の推定試料. 0.4 水溶性硫酸(%). 水溶性硫酸(%). 1.5. 1.0 y=0.078x (n=52, r=0.431). y=0.1x. 0.3 (n=40, r=0.789). 0.2. y=0.035x. 0.5. 0.1. 0.0. 0.0 0.0. 図-5. 5.0. 10.0 15.0 全硫酸(%). 20.0. 0.0. 古第三紀炭田地域におけるぼた地盤の. 図-7. 1.0. 2.0 3.0 全硫酸(%). 4.0. 5.0. 第四紀洪積固結粘土層の硫酸イオン濃度. 硫酸イオン濃度 5.0. 第四紀沖積粘土層 用水路の底質試料 干拓地の土壌試料 堆積環境の推定試料. 4.0 水溶性硫酸(%). y=x. 3.0 (n=55, r=0.730). 2.0 y =0. 34x 1.0. 0.0 0.0. 図-6. 図-8. 新第三紀泥岩中の硫酸イオン濃度. 1.0. 2.0 3.0 全硫酸(%). 4.0. 5.0. 第四紀沖積粘性土層の硫酸イオン濃度. 2.6%(図-6),第四紀洪積固結粘土層の水溶性化率 が 3.5%(図-7)および第四紀沖積粘土層の水溶性化 率が 34%(図-8)と集計された.この結果,第四紀. る水溶性硫酸の割合を「水溶性化率」として表現す ると,古第三紀炭田地域におけるぼた地盤の水溶性 化率が 7.8%(図-5),新第三紀泥岩の水溶性化率が. 513.

(8) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. 0.015~0.04%(150~400ppm)程度以下の場合は, コンクリートへの影響を考慮する必要がないことを 示している. そこで,概略,0.02%(200ppm)をコンクリート に影響を与える硫酸イオン濃度の一般的な下限の指 標として参考にした場合,表-5 に提示した各地盤の 水溶性硫酸イオン濃度の下限値に対比させると,第 四紀洪積固結粘土層が 0.018%(180ppm),新第三紀 泥岩層が 0.030%(300ppm)および第四紀沖積粘土 層が 0.14%(1400ppm)となることから,コンクリ ートへの影響を考慮する必要がある地盤と想定され る.同様に,水中に含まれる硫酸イオン濃度が 0.2 ~1.0%(2,000~10,000ppm)程度以上の場合は,コ ンクリートにとって非常に厳しい影響を与えること を示している.この濃度については,概略,0.2% (2,000ppm)を一般的な指標として参考にした場合,. 沖積粘性土層の水溶性化率は,他の地盤や地層およ び岩石に比較して非常に高いことが判明した 47). (2) 硫酸塩から可溶性硫酸イオンへの変化について 地盤中の硫化鉱物中に固定化されている硫黄は, 地盤表層の掘削や搬出工事などの人為的な撹乱や乾 燥および地下水位低下による地盤環境の酸性化によ って,水溶性硫酸となり,当初の分析値よりも増え ることが予想される. ここに水溶性硫酸の増加に関するデータがある. これは,海上埋め立てされたぼた地盤からのボーリ ング試料のデータで,採取直後の分析の後,そのま ま 2 ヶ月間放置していた残試料について追加試験を 行ったものである 47).図-9 に示すように,当初のデ ータでは,全硫酸が 1.7~5.7%,水溶性硫酸が 0.1~ 0.4%の水溶性化率 7%と前述したぼたの水溶性化率 と同程度であったが,約 2 ヶ月の空気中放置後は, 水溶性硫酸が 0.2~0.9%の水溶性化率 18%と 1.5〜3 倍に増加していることが確認された. よって,可溶性硫酸イオン濃度の低い地盤であっ ても,造成などに伴う地形改変や,掘削などによる 環境変化により,硫酸イオンが溶出し,コンクリー トに硫酸塩劣化を引き起こす可能性がある.. 1.0 ■ 試料採取2ヶ月後の分析値 y=0.18x. 水溶性硫酸(%). (3) 各国機関による規準類について コンクリート構造物の設計・施工に関する内外の 規準・指針および委員会報告では,化学的な腐食環 境区分についての定量的指標として硫酸塩が広く認 識されており,対策についても具体的な規定を設定 している規準類が多い 48).これら規準類のうち水中 に含まれる硫酸イオン濃度についてまとめると図 -10 に示す通りである.これによれば,いずれの規 準 に お い て も 水 中 に 含 ま れ る 硫 酸 イ オ ン 濃 度が. 図-10. y=0.1x. 0.8. y=0.07x. 0.6. 0.4. 0.2. □ 試料採取直後の分析値. 0.0 0. 図-9. 2. 4 6 全硫酸(%). 10. 2 ヶ月放置後に増大した水溶性硫酸の イオン濃度. 各国規準類からみた化学的腐食作用の厳しさ(文献 48)を元に作成). 514. 8.

(9) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. され,表-6 のようにまとめられる. 黄鉄鉱起源の硫酸イオンによりコンクリート腐食 性地盤となる地形・地質要因は,対象となる地盤が 山地よりも低平地に位置し,新第三紀以降の海成層 に相当する泥・粘土・泥岩の分布する地点ほど危険 度が高いと言える.このため,対象となる地盤表層 の土に含まれる水溶性硫酸イオン濃度を分析し,そ の濃度により強い,中位,低いの 3 段階の危険度に 分類したコンクリートの対策を考慮しなければなら ない.気温や地盤環境要因は,当初の地盤が有す特 徴を把握し,開発による変化を低減させる工法に役 立てなければならない.なお,温泉地帯あるいは石 炭を含む地層や鉱山のある地域では通常の地盤より も硫化鉱物を多く含むため,当初の硫酸イオン濃度 よりも掘削等の施工条件によっては増大し,危険度 が高くなるため注意を要する.. 本研究により提示した各地盤の水溶性硫酸イオン濃 度は,コンクリートへの影響を考慮する必要がある 地盤と想定され,第四紀沖積粘土層や第三紀泥岩層 はコンクリートにとって非常に厳しい地盤となり得 る危険度に相当すると判断された.. 6.. コンクリートの硫酸塩劣化に及ぼす影響の 定量化. (1) 地盤中の硫酸塩に起因するコンクリートの劣化 における影響要因 本論文におけるこれまでの考察の結果より,「コ ンクリート腐食性地盤」を, 「沖積粘性土層の分布す る埋立地や低地,洪積固結粘土層や新第三紀泥岩層 の分布する台地から丘陵地を主体とする範囲内で, もともと海底に堆積した泥土が圧密,脱水,固結化 の過程を経て今は陸地となっている地層に相当する 地盤が,周辺環境や地形改変等により,含まれる黄 鉄鉱が化学的な反応と鉄酸化細菌の働きによって硫 酸イオンを溶出し,基礎コンクリートに硫酸塩劣化 を引き起こす可能性のある地盤」と定義する. 「コンクリート腐食性地盤」となる要因のうち, 環境に関する項目は,地形・地質・地盤環境に大別. 表-6. 黄鉄鉱起源の硫酸イオンによる硫酸性地盤となる環境要因一覧. 危険度. 高 い *1. 水溶性硫酸 SO4 地 形*2. 地 質*3. 標高 位置 地層名 岩種 堆積環境 (識別化石). 気 温*4 含水比 地下水位 地盤環境*5. (2) コンクリートの腐食確率図の提案 表-6 に示した要因を元に,硫酸性地盤となる危険 度の高い地盤を図示しランク付けを行うと,図-11 のように表現される.この図を「コンクリートの腐 食確率図」として提案する. この図は,100 万分の 1 日本地質図 49)をもとに沖 積層と洪積層および新第三紀層の各地層の分布範囲. |. 中 位. 0.2%以上. 0.2~0.02%. 2,000ppm 以上. 2,000~200ppm. |. 低 い 0.02%未満 200ppm 未満. 0 ~ 5m 5 ~ 50m 50 ~ 200m 200m~ 埋立地 低地 台地 丘陵地 山地 沖積層 洪積層 新第三紀層 古第三紀層 泥・粘土・泥岩 砂・砂岩 砂礫・礫岩 海成層 汽水成層 淡水成層 (貝化石含む) (貝化石と植物化石の混在) (植物化石含む) 高い (20℃) 低い 高い (25%) 低い 浅い・変動する 深い・変動しない. 吸水性. 高い. 透水性. 小さい. 低い (透水係数 10-7m/s). 大きい. 含有物 腐植物多い・微生物多い 腐植物少ない・微生物少ない 土の pH 強酸性(5.6 未満) ~ 弱酸性 ~ 中性(7.0) *1 ;対象となる地盤表層の土に含まれる水溶性硫酸イオン濃度を指す.試験方法は地盤工学会(JGS 0241-2000) による土:水を 1:10 に混合・分散・ろ過した溶液の分析による値とする. *2; 開発対象となる地盤の標高と地形的分類を指す. *3 ;地形図・地質図・既往資料および現地踏査により開発対象となる地盤に分布する地質を把握する.なお, 温泉地帯あるいはや石炭を含む地層や鉱山のある地域では危険度が高くなる *4 ;対象地の月別平年気温等の資料を参考にする. *5 ;当要因は地盤調査等により把握する.なお,土の pH は水溶性硫酸イオン濃度の調整試料による.. 515.

(10) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. 【注】 (1) 実際の地盤表層は,土の緩衝能や降雨による溶脱 のため中和され,対応する地盤のすべてがコンク リートの硫酸塩劣化を起こすとは限らない. (2) 沖積粘土層については,地中での攪拌作業や地表 への掘削土砂の排出により空気中に乱された状 態に置かれた粘土が強酸性土砂となる. (3) 洪積固結粘土層と新第三紀泥岩層については,造 成や切取等により新たに生じた切土面や掘削ず りが強酸性土砂へと変化する.. 図-11. 硫酸イオンによるコンクリートの腐食程度の厳しさ. を網羅している.なお,要因のうち気温の指標には, 都道府県庁所在地における月別平年気温 20℃を越 す月数 50)を用い,都道府県を単位として南北に長い 日本列島を 20℃を越す月数が 4 ヶ月以上と 4 ヶ月未 満となるよう二分した.4 ヶ月未満となる都道府県 は,茨城県,福島県,新潟県,長野県以北となった. 表-7 に示すようにコンクリート腐食に対する確 率を「非常に厳しい」, 「厳しい」 ,「弱い」の 3 段階 で表した.ただし,明らかに海成層の場合には,厳 しさの段階を引き上げる必要がある. 粘土や固結粘土あるいは泥岩に限らずすべての岩. 表-7. 地層と気温の組み合わせによる腐食の厳しさ* 20℃を越す月数. 地層 *. 4 ヶ月以上. 4 ヶ月未満. 沖積層. A(非常に厳しい). B(強い). 新第三紀層. B(強い). C(弱い). 洪積層. C(弱い). ―(無し). :明らかに海成層の場合には,厳しさの段階を引き上げ る必要がある.. 516.

(11) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. 種を対象としているため,硫酸性地盤と関係のない 地層も含まれているが,この図に示したように,日 本列島の人口密集地である平野や台地のほとんどは, これら地層の分布域に包括され,硫酸塩劣化に対し て注意しなければならない地盤である. しかし実際の地盤表層は,土の緩衝能や降雨によ る溶脱のため中和され,対応する地盤のすべてがコ ンクリートの硫酸塩劣化を起こすとは限らない.沖 積粘土層については,一般に,地下水位が浅い地下 の還元環境に分布していることや透水係数が小さい ため間隙水中の動きが緩慢でイオンの流出が少ない. このため,地中での攪拌作業や地表への掘削土砂の 排出により空気中に乱された状態に置かれた粘土は, 大量の水溶性硫酸イオンが急激に溶出するとともに, 新規に露出した硫化物からも硫酸イオンが溶出して 硫酸を生成し,強酸性土砂となる. 洪積固結粘土層と新第三紀泥岩層は,一般に,台 地や丘陵地を構成する地層で,前述したように表土 となった地盤表層は特に問題とはならない.しかし, 造成や切取等により新たに生じた切土面や掘削ずり となった固結粘土や泥岩は,含まれていた水溶性硫 酸イオンが溶出し,粘土と同様にさらに,新規に露 出した硫化物からも硫酸イオンが溶出して硫酸を生 成し,自らの固結物質を分解して強酸性土砂へと変 化する. このように,現状の地盤は,人為的な改変により 酸化環境を加えることにより硫酸イオンが増大する コンクリート腐食性地盤となる危険性を高めている と考えられる.. に曝露された環境に置かれると,常温で酸化し, 硫酸イオンが生成されることを化学式および細 菌により反応から示した. (3)日本で硫酸塩を含む地盤について,文献調査等に より全硫酸の濃度を調査した結果,ほぼ 0.6~ 3.0%の範囲に入ることが明らかとなった. (4)コンクリートの硫酸塩劣化を引き起こす水溶性 硫酸の濃度は,全硫酸に対する比率として表現す ると,沖積粘土層で 34%と最も高く,ぼた地盤で 7.8%,そして新第三紀泥岩層と洪積固結粘土層が 2.6~3.5%と低い水溶性化率であることが明らか となった. (5) 「コンクリート腐食性地盤」を, 「沖積粘性土層 の分布する埋立地や低地,洪積固結粘土層や新第 三紀泥岩層の分布する台地から丘陵地を主体と する範囲内で,もともと海底に堆積した泥土が圧 密,脱水,固結化の過程を経て今は陸地となって いる地層に相当する地盤が,周辺環境や地形改変 等により,含まれる黄鉄鉱が化学的な反応と鉄酸 化細菌の働きによって硫酸イオンを溶出し,基礎 コンクリート周辺に硫酸塩劣化を引き起こす可 能性がある地盤」と定義した. (6)「コンクリート腐食性地盤」となる危険性を「コ ンクリートの腐食確率図」として提示した.これ により,コンクリートに硫酸塩劣化を引き起こす 可能性を 3 段階の危険度に区分した. 参考文献 1) 2). 7.. まとめ 3). 本研究では,ぼた地盤や新第三紀泥岩層における 住宅基礎コンクリートの劣化を事例として取り上げ, 地盤に含まれる硫酸イオンの起源について明らかに するとともに,地形・地質・環境を要因としたコン クリート腐食確率図を提示した.以下に,本研究に よる結論を示す. (1)ぼた地盤および新第三紀層の造成地盤における コンクリート劣化事例では,地盤中の硫酸イオン が硫酸塩として床下に濃集し,エトリンガイトの 生成や硫酸ナトリウムの結晶圧によりコンクリ ートが劣化した点で共通しており,地盤中に含ま れる硫酸イオンや硫酸塩がコンクリートの劣化 に影響を及ぼしていることが明らかとなった. (2)地盤中の硫酸イオンの起源は黄鉄鉱にあり,黄鉄 鉱が海底に堆積した泥土である海成層が空気中. 517. 4). 5). 6). 7). 8). 9). 水上国男:コンクリート構造物の耐久性シリーズ 化 学的腐食,pp.1-4,技報堂出版,1986. 松下博通,浜田秀則,牧角龍憲:硫酸塩を含む土壌に おけるコンクリートの劣化,第 8 回コンクリート工学 年次講演会論文集,pp.225-228,1986. 落合英俊,松下博通,林重徳:硫酸イオンを含む地盤 における住宅基礎,土と基礎,Vol.34,No.6,pp.45-50, 1986. 松下博通,菅伊三男:硫酸イオンを含む地盤における 住宅コンクリート基礎の劣化崩壊について,自然環境 とコンクリート性能に関するシンポジウム論文集, pp.159-166,1993. 佐藤俊幸,松下博通,徳永雄司:ぼた造成地における 住宅コンクリート基礎の劣化崩壊について,コンクリ ート工学年次論文集,Vol.23,No.2,pp.673-678,2001. 小林嵩:日向平野に分布する新第三紀地層(宮崎層群) の土壌の特性と束石の崩壊について,南九州大学園芸 学部研究報告,No.12,pp.41-50,1982. 高谷精二:束石崩壊の発生した地域にみられる塩類集 積現象について,土と基礎,Vol.31,No.1,pp.101-104, 1983. 中沢隆雄,松田豪紀,田口司:土壌中の硫酸塩の高濃 度化によるコンクリートの劣化について,セメント・ コンクリート論文集,No.44,pp.494-499,1990. 陽田秀道:新第三紀層泥岩の生化学的風化現象と被害,.

(12) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12 土木学会論文集,No.617/III-46,pp.213-224,1999. 10) 松下博通,佐藤俊幸:硫酸イオンを含む地盤における コンクリートの劣化過程について,土木学会論文集 E, Vol. 65,No. 2,pp.149-160,2009. 11) 半谷高久,小倉紀雄:水質調査法,pp.74,丸善,1995. 12) 田中明 編:酸性土壌とその農業利用,pp.101-108,博 友社,1984. 13) 湊 正雄:地層学,岩波書店,1953. 14) 佐藤俊幸,松下博通:地質的要因からみたコンクリー ト腐食性地盤の分布と性状,九州大学工学集報,Vol.74, No.4,pp.299-306,2001. 15) Elverhoi, A.: Origin of framboidal pyrite in clayey Holocene sediments and in Jurassic black shale in the northwestern part of the Barents Sea, Sedimentology, No.24, pp.591-595, 1977. 16) Singer, P. C. and Stumm, W.: Acid mine drainage: The rate-determining step, Science, No.167, pp.1121-1123, 1970. 17) Silverman, M. P.: Mechanism of bacterial pyrite oxidation, Journal of Bacteriology, Vol.94, No.4, pp.1046-1051, 1967. 18) Buchanan, R. E. and Gibbons, N. E. (eds.): Berge’s Manual of Determinative Bacteriology, 8th Edition, Baltimore, Williams & Wilkins, pp.458-461, 1974. 19) 笹木圭子:黄鉄鉱の常温酸化溶解に関する実験地球化 学的研究,鉱物学雑誌,Vol.27,No.2,pp.93-103,1998. 20) 菅伊三男,松下博通:我が国における硫酸塩地盤の分 布について,自然環境とコンクリート性能に関するシ ンポジウム論文集,pp.147-154,1993. 21) 佐藤俊幸,松下博通,楳本真,鶴田浩章:造成による 硫酸塩地盤の出現について,土木学会西部支部研究発 表会,pp.718-719,1999. 22) 日本化学会編:化学便覧基礎編改訂二版,丸善,1980. 23) 土質工学会編:土質試験法(第 2 回改訂版),1979. 24) 地盤工学会編:土質試験の方法と解説(第 1 回改訂版), 2000. 25) 川崎弘,銘刈敏夫:沖縄における酸性硫酸塩土壌,九 州農業試験場報告, Vol.19,No.4,pp.383-403,1978. 26) (株)クボタ:海成粘土層と硫化物,アーバンクボタ, No.23,pp.1-56,1984. 27) 平峯重郎,池ヶ谷賢次郎:静岡県掛川市の茶園開墾地 に露出した第三紀層掛川累下部の青灰色砂泥岩層(大 日層)の硫酸塩,茶業技術研究,No.39,pp.32-40,1970. 28) 狛武,鈴木尉元,小玉喜三郎:房総半島における上総 層群泥質岩中の硫黄・炭素・塩素・鉄の形態・組成と 堆積環境,地質調査所月報,Vol.34,No.4,pp.191-206, 1983. 29) 狛武:油田第三系における泥質岩の化学組成,地質調 査所報告, Vol.25,No.2,pp.221-225,1972. 30) 佐々木信夫:新第三系強酸性硫酸塩土壌に関する研究, 岩手県農業試験場研究報告,Vol.20,pp.23-54,1977.. 518. 31) 狛武,伊藤聡,横田節哉,上島宏:北西北海道築別付 近における新第三系泥質岩類の化学組成,石油技術協 会誌,Vol.39,No.2,pp.17-27,1974. 32) 伊藤聡,狛武,根本隆文,横田節哉,木村亨:北海道 北部地域における第三紀泥質岩の化学組成,地質調査 所月報,Vol.28,No.2,pp.57-67,1976. 33) 狛武:第三紀堆積岩の硫黄含量と堆積環境-北海道中 央部芦別川流域,石油技術協会誌,Vol.43,No.3, pp.10-18,1978. 34) 市原実,市原優子:大阪層群の海成粘土と淡水粘土に ついて,竹原平一教授記念論文集,pp.173-181,1971. 35) 狛武,坂本亨,安藤厚:茨城県中部地域における上部 新生界堆積岩の全硫黄量と堆積環境,地質調査所月報, Vol.34,No.6,pp.279-293,1983. 36) 千木良雅弘:泥岩の化学的風化-新潟県更新統灰爪層 の例,地質学雑誌,Vol.94,No.6,pp.419-431,1988. 37) 日嶽義満,古閑孝彦:八代干拓地土壌の性状,九州農 業研究,No.18,pp.1-5,1956. 38) 小林嵩:開拓地の不良土壌に関する研究(第 5 報)- 島根県波根湖干拓地の土壌について,日本土壌肥料学 雑誌,Vol.22,No.4,pp.37-40,1952. 39) 村上英行:中海・宍道湖地域における酸性硫酸塩土壌 の分布とその特性,日本土壌肥料学雑誌,Vol.38,No.4, pp.112-116,1967. 40) 亀井健史,徳岡隆夫,三瓶良和,石原廣和:松江平野 の完新世堆積物の堆積環境と地盤工学的性質,応用地 質,Vol.38,No.5,pp.280-295,1997. 41) 米田茂男:干拓地土壌に関する研究,岡山大学農学部 学術報告,No.17,pp.39-46,1961. 42) 三浦昌司:八郎潟干拓地土壌の理化学的特性と作物生 育に関する研究,秋田県農業試験場研究報告,Vol.26, pp.85-111,1984. 43) 川崎弘:筑後川下流域水田地帯の新設クリークの底質 土,九州農業試験場報告,Vol.25,No.1,pp.77-93,1988. 44) 白神宏:FeS2 含有量からみた広島平野沖積層の堆積構 造,地理学評論,Vol.58,No.10,pp.631-644,1985. 45) 川口桂三郎ほか:改訂新版土壌学,pp.7-9,朝倉書店, 1974. 46) 浅井輝男,茅野充男 訳:環境無機化学,pp.55-71,博 友社,1986. 47) 佐藤俊幸,松下博通:コンクリート腐食性地盤におけ る硫酸イオン濃度,九州大学工学集報,Vol.74,No.6, pp.635-643,2001. 48) 九州橋梁・構造工学研究会:厳しい腐食性地下埋設コ ンクリート構造物の耐久性に関する設計ガイドライ ン,1995. 49) 地質調査所:100 万分の 1 日本地質図,日本地質アト ラス,1982. 50) 国立天文台編:理科年表(平成 12 年版),丸善,2000. (2010. 1. 22 受付).

(13) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,507-519,2010.12. CLASSIFICATION OF PROBABILITY OF DETERIORATION OF CONCRETE BY SULFATE ATTACK BASED ON INVESTIGATION RESULTS OF SULFATE CONTENT OF GROUND Hiromichi MATSUSHITA, Yasutaka SAGAWA and Toshiyuki SATO In this paper, deterioration of concrete structures due to sulfate or sulfate ion which are contained in ground were discussed. First, examples of collapse due to deterioration of concrete housing foundations on land developed with coal waste in an old coal-mining area was explained. Damage occurred on the land developed with mudstones of Neogene formations was also explained. These deterioration and damage were caused by sulfate or sulfate ion which are contained in soil. The process that pyrite was oxidized by bacteria and sulfate ion was formed in deposited layer was examined. Moreover, the review on sulfate ion content in ground in Japan was carried out. As the results, hazard map of deterioration due to sulfate attack concerning was geological and meteorological factors was proposed.. 519.

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