• 検索結果がありません。

ブラジルの高齢化 -- 貧困高齢者をめぐる取組みと「高齢者の町」の一現実 (特集 新興諸国の高齢化と社会保障)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ブラジルの高齢化 -- 貧困高齢者をめぐる取組みと「高齢者の町」の一現実 (特集 新興諸国の高齢化と社会保障)"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ブラジルの高齢化 -- 貧困高齢者をめぐる取組みと

「高齢者の町」の一現実 (特集 新興諸国の高齢化

と社会保障)

著者

近田 亮平

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

188

ページ

20-23

発行年

2011-05

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004242

(2)

高齢化と

社会保障

高齢化と

社会保障

●はじめに

  近年、ブラジルでも高齢者人口 の増加やそれに起因する問題の顕 在化から、高齢化に対する関心が 高まっている。本稿では、ブラジ ルの高齢化について理解を深める ことを目的に、同国の高齢者の状 況 や 政 府 の 取 り 組 み を ま と め る。 そして貧困高齢者に焦点を当てな がら、最後に筆者の現地調査をも とに、高齢と人種間格差というひ とつの事例を紹介する。

一.ブラジルの高齢者の状況

  は じ め に 、 政 府 の 統 計 機 関 で あ る ブ ラ ジ ル 地 理 統 計 院 ︵ I B G E ︶ の デ ー タ を も と に 、 ブ ラ ジ ル の 高 齢 者 の 状 況 を 概 観 す る 。 同 国 が 基 本 的 に ﹁ 高 齢 者 ﹂ の 基 準 と する W H O ︵ 世 界 保 健 機 関 ︶ の ﹁ 途 上 国 の 場 合 六 〇 歳 以 上 ﹂ 人 口 を 見 る と 、 一 九 七 〇 年 に 総 人 口 の 五 ・ 一 % ︵ 四 七 六 万 人 ︶ で あ っ た が 、 二 〇 〇 〇 年 に 同 八 ・ 六 % ︵ 一 億 四 五 四 万 人 ︶、 二 〇 〇 九 年 に は 同 一 一 ・ 三 % ︵ 二 億 一 七 四 万 人 ︶ に ま で 増 加 して い る 。 ま た 、 主に 先 進 国 の 基 準 で あ る ﹁ 六 五 歳 以 上 ﹂ の 人 口 も 、 二〇 〇 九 年 に 同 七 ・ 九 % ︵ 一 億 五 〇 九 万 人 ︶ に 達 し た こ と に 加 え 、 近 年 は 八 〇 歳 以 上 の 人 口 増 加 率 が 高 く 後 期 高 齢 化 が 進 ん で い る 。 また ブ ラ ジ ル 社 会 全 体 で 見 ても 、 出 生 時 平 均 余 命 の 伸 長 ︵ 一 九 九 一 年 六 六 ・ 九 歳 、 二 〇 〇 八 年 七 三 ・ 〇 歳 ︶ や 合 計 特 殊 出 生 率 ︵ 同 二 ・ 七 人 、同 一 ・ 九 人 ︶ の 低 下 に よ り 、 一 五 ∼ 五 九 歳 人 口 に 対 す る 六 〇 歳 以 上人 口 の 割 合 で あ る 老 年 従 属 人 口 比 率 ︵ 同 一 二 ・ 六 % 、 同 一 五 ・ 五 % ︶ や 、 一 五 歳 未 満 一 〇 〇 人 に 対 す る 六 〇 歳 以 上 の 人 数 を 示 す 高 齢 化 指 数 ︵ 同 二 一 ・ 〇 人 、 同 三 七 ・ 九 人 ︶ が 上 昇 し て お り 、 ブ ラ ジ ル の 人口 形 態は 途 上 国 に特 徴 的 なも の か ら 次 第 に 先 進 国 化 し つ つ あ る 。   高齢者の所得に関して、高齢者 居住世帯の一人当たり平均月額を 見ると、政府が﹁貧困ライン﹂と 定める ﹁最低賃金の二分の一﹂ ︵二 〇一一年三月の最低賃金は五四五 レアル=約三二八 U S $ ︶以下の 割合が、一九九一年の一二・七 % から二〇〇八年の一一・〇 % へと 減少している。これに対し、最低 賃金額の二分の一より多く二倍以 下の割合が同五四・九 % から同五 九・九 % へと増加する一方、最低 賃 金 二 倍 よ り 多 い 割 合 は 同 二 八・ 七 % から同二四・二 % へと減少し ている。つまり近年、高齢者居住 世帯全体が経済的に底上げされた 一方、所得の伸びは頭打ちである ことがわかる。また居住形態につ いては、高齢者のみの世帯︵独居 または夫婦︶の割合が一九九七年 の三〇・四 % から二〇〇八年の三 七・五 % へと増えている。

二.

組み

  つぎに高齢者への政府の取組み について、社会保障の普遍化との 関連から後に詳述する貧困高齢者 向けの年金を除き、年金と保健医 療の制度を中心に概観する。   現 在 の ブ ラ ジ ル の 年 金 制 度 は、 二本柱である政府の﹁一般社会保 障 制 度︵ R G P S ︶﹂ と﹁ 公 務 員 社会保障制度 ︵ RPPS ︶﹂ に加え、 民 間 の﹁ 補 足 社 会 保 障︵ P C ︶﹂ により構成されている。 RGPS は民間部門と公社など一部の公的 部門の正規労働者を対象とした強 制加入の制度で、主な受給最低条 サンパウロのサンタクルス病院の高齢者プログラム(筆者撮影)

高齢化

︱貧困高齢者

取組

        

﹁高齢者

町﹂

現実︱

(3)

件は、年齢が都市部六五歳/農村 部六〇歳︵女性は同六〇歳/五五 歳︶で保険料納入期間一五年、ま たは納付期間のみの場合で基本的 に三五年︵女性は三〇年︶となっ ている。 RPPS は公務員を対象 とした強制加入の制度で、主な受 給条件は、基本的に年齢と保険料 納 入 期 間 が 男 性 は 六 〇 歳 と 三 五 年、 女性は五五歳と三〇年である。 PC は民間企業や組合などが管理 運営する任意の制度で、 RGPS を補足するものである。これらの 制度は全て基本的に正規労働者を 対 象 と し た 拠 出 型 の 年 金 の た め、 非正規労働者の割合が高い貧困な 高齢者にとって、これら正規の年 金制度の利用はほぼ不可能だとい える。   高齢者が多く利用する保健医療 については、 一九九〇年制定の ﹁統 一 保 健 医 療 シ ス テ ム︵ S U S ︶﹂ に よ る 公 的 医 療 機 関 の 無 料 利 用、 有料の民間医療保険への加入、自 己資金に基づく医療機関との直接 契 約 と い う 三 つ の 方 法 に よ り、 サービスの享受が可能になってい る。全国民を対象とした無料の医 療制度の S U S が整備され、少な くとも理論的には貧困高齢者もそ の恩恵に与 れるようになった。し か し 現 実 的 に は、 S U S の 医 療 サービスは質量的な問題を多く抱 えており、社会的弱者であるほど 優良な保健医療サービスへのアク セスは依然困難である。政府はこ のような問題に対処すべく、一九 九九年実施の﹁国家高齢者健康政 策︵ P N S I ︶﹂ を は じ め 高 齢 者 の健康促進や疾病予防を試みてい る。また介護に関しては、公的な 老 人 介 護 制 度 は 整 備 さ れ て お ら ず、家族などのインフォーマルな 介護者、職業介護者、老人ホーム などへの支援や訓練を提供するに とどまっている。さらに政府は二 〇〇三年、高齢者に関する様々な 制度、法律、サービスなどを総括 し た﹁ 高 齢 者 法 令︵ Estatuto do Idoso ︶﹂ を 公 布 し、 重 要 性 を 増 す 高齢化問題に取り組んでいる。

三.

高齢者年金

  一九八〇年代に軍政から民政へ 移行したブラジルでは、政治的な 自由化の集大成として一九八八年 に新憲法が公布された。同憲法で は、社会保険、保健医療、社会扶 助の三つの基礎分野から成る社会 保 障︵ Seguridade So cial ︶ と い う 新たな概念が導入され、その全国 民への普遍的な充足の責務を政府 が有すると謳われている。また社 会保障の恩恵享受は、社会的に排 除されてきた人々を含む全ての国 民 の 権 利 で あ る と 明 記 さ れ て い る。つまり同憲法を礎にブラジル では、社会保障の普遍化が政府の 責務および国民の権利として追求 されるようになったのである。そ してこの理念にもとづき、前述の S U S に加え、正規の年金システ ムに包摂されない貧困な高齢者を 対象に、二つの年金制度が構築さ れることとなった。   ひとつは、六〇歳︵女性は五五 歳︶以上で基本的に一五年以上農 業等に従事していれば、保険料を 納付していなくても最低賃金額を 支給する非拠出型の年金制度であ る。農村労働者を対象とした年金 は、一九七一年の﹁農村労働者扶 助 プ ロ グ ラ ム︵ Pró-R ural ︶﹂ に よ り既に存在していたが、同プログ ラムは拠出型であることに加え対 象者が男性のみで、支給額も最低 賃 金 の 二 分 の 一 と 少 額 だ っ た た め、農牧業に従事した高齢者は非 常 に 劣 悪 な 状 況 に 置 か れ て い た。 それが一九八八年憲法の社会保障 の普遍化にもとづき、一九九二年 か ら 現 行 の か た ち へ と 改 善 さ れ た。ただし一部の例外を除き、こ の農村労働者年金は二〇一〇年末 で申請受付が終了し、現在は既存 分の支給のみとなっている。   もう一方は﹁高齢及び障害者扶 助︵ B P C ︶﹂ と 呼 ば れ、 制 度 的 に は 年 金 で は な く 社 会 扶 助 に 属 し、一人当たりの月額世帯所得が 最低賃金の四分の一未満で、勤労 が不可能な七〇歳以上の高齢者と 障害者に対し、最低賃金額を支給 するものである。 BPC は一九九 六年から開始されたが、受給年齢 が一九九八年に六七歳、二〇〇四 年に六五歳へと引き下げられたた め、受給高齢者にとって非拠出型 年金とほぼ同様の機能を持つ制度 となっている。貧困高齢者への年 金としては、最低賃金の二分の一 を支給する﹁終身所得扶助︵ RM V ︶﹂ が 一 九 七 四 年 か ら 既 に 存 在 し て い た。 R M V の 受 給 条 件 は、 年齢七〇歳以上、他の社会扶助を 受給していないこと、保険料を最 低一年納付しているか五年間の就 業 経 験︵ 賃 金 は R M V 受 給 額未 満 ︶ があることであった。しかし、一 九九六年の BPC 創設により RM V は廃止され、現在は当時の既存 分が継続支給されているのみであ る。   現在ブラジルで貧困高齢者が受 給可能な非拠出型および扶助型の 年金は、農村労働者年金と BPC の二つである︵以下、二つを合わ

ブラジルの高齢化

―貧困高齢者をめぐる取組みと「高齢者の町」の一現実―

(4)

金 ﹂ と 呼 ぶ ︶。 そ し て % となっている。そ ・ で 一 〇・ 八 % 上 昇 し、 % % へと一七 ・ 八〇 %

の 町 ︵ V

ila dos Idosos

︶﹂ 老 年 学︵ gerontolog y Lopes 氏 と 学 生 た。二〇〇七年八月に完成した同 集合住宅は、市政府と社会運動に よる共同プロジェクトで、貧困高 齢者のみを対象としている点にお いてブラジルで先駆的な試みとさ れ る。 ﹁ 高 齢 者 の 町 ﹂ は サ ン パ ウ ロ市の中心地近くに位置し、一四 五世帯一九〇名前後が居住可能で ある。入居条件は六〇歳以上、月 額 世 帯 所 得 が 最 低 賃 金 の 三 倍 未 満、市内在住四年以上の者で、独 身 ま た は 少 人 数 家 族 で あ っ た り、 移動が困難などの障害を有したり する場合は入居が優先される。本 調 査 で 聞 き 取 り が で き た 高 齢 者 は、男性四七名、女性五三名の合 計 一 〇 〇 名 で、 平 均 年 齢 は 七 二・ 八歳、最高齢は九二歳である。ま た 人 種︵ 自 己 申 告 ︶ に 関 し て は、 白人三四名、混血四四名、黒人二 〇名、 黄色人二名であった。なお、 この人種カテゴリーは、ブラジル 政府の統計調査で採用されている もの︵ ﹁人種・肌の色﹂ ︶である。

●調査結果

  まず、調査時点での個人所得の 収 入 源 に 関 し て は、 ﹁ 政 府 扶 助 ﹂ 九 ○ 名、 ﹁ 仕 事 ﹂ 六 名、 ﹁ そ の 他・ 不明﹂四名であった。人種別に各 項目の割合見ると、白人三四名で は﹁政府扶助﹂八五 ・ 三 % 、﹁仕事﹂ 一一 ・ 八 % 、﹁その他 ・ 不明﹂二 ・ 九 % 、混血四四名では同順に九〇 ・ 九 % 、四・五 % 、四・五 % 、黒人 二〇名では全員が﹁政府扶助﹂で あ っ た。 ﹁ そ の 他・ 不 明 ﹂ の 計 四 名は六五歳未満で扶助年金受給年 齢前のため無収入だが、配偶者が 政府扶助︵都市居住者のため BP C ︶を受給しているため、同制度 の受益者であることがわかる。そ し て 世 帯 の 月 平 均 所 得 に 関 し て は、 ﹁最低賃金以下﹂が六三名、 ﹁最 低賃金の三倍以下﹂が三六名、 ﹁最 低賃金の五倍以下﹂が一名であっ た。このうち、黒人における﹁最 低賃金額以下﹂ の割合が九〇 ・ 〇 % と、白人の五二・九 % と混血の五 九・一 % に比べ非常に高くなって いる。この要因として、黒人は前 述のように収入源が最低賃金と同 額の扶助年金のみで、就労者が皆 無であることが挙げられる。また 居住形態に関しても、独居の割合 が白人五五 ・ 九 % 、混血五四 ・ 五 % 、 黒人八五・〇 % の順番で高く、黒 人は同居者の所得をほとんど期待 できない状況となっている。した がって黒人の貧困高齢者は、収入 源を自身の扶助年金に頼らざるを 得ないことに加え独居の割合も高 いため、経済的により困難な状況 にあると考えられる。   つぎに対象者に対し、二〇∼七 ○歳代までを二〇年毎の三つの年 代 に 分 け、 ﹁ よ り 親 密 と 思 う 人 ﹂ に つ い て 質 問 を 行 っ た︵ 表 1︶ そ の 結 果、 ﹁ 同 居 の 家 族・ 親 族 ﹂ と答えた割合が、どの年代でも黒 人、混血、白人の順番で低く、特 に 六 〇 ∼ 七 〇 歳 代 の 黒 人 で は 一 五・〇 % と非常に低いという回答 を 得 た。 そ の 一 方、 ﹁ 友 人・ 地 域 コ ミ ュ ニ テ ィ﹂ と 答 え た 割 合 は、 どの年代でも黒人、混血、白人の 順番で高く、特に高齢期の黒人は 八〇・〇 % と最も高い。貧困な状 況での生存生活には、 家族や親族、 表1 より親密と思う人の人種別の推移   (単位:%) 年 代 人 種 同居の 家族・親族 非同居の 家族・親族 友人・地域 コミュニティ その他 不明 20-30歳代 白人(34人) 70.6 8.8 26.5 2.9 混血(44人) 61.4 9.1 50.0 0.0 黒人(20人) 35.0 10.0 60.0 0.0 40-50歳代 白人 58.8 2.9 47.0 2.9 混血 56.8 15.9 45.4 0.0 黒人 20.0 10.0 70.0 0.0 60-70歳代 白人 50.0 11.8 44.1 2.9 混血 34.1 20.5 65.9 2.3 黒人 15.0 20.0 80.0 5.0 (出所)筆者作成。

(5)

特に同居する者とのネットワーク が イ ン フ ォ ー マ ル な セ ー フ テ ィ・ ネットとして機能すると考えられ るため、その存在の有無は非常に 重要だといえる。しかし本調査で は、ブラジルでもより貧困だとさ れ る 黒 人 の 場 合、 同 居 す る 家 族・ 親 族 へ の 親 密 感 が 相 対 的 に 低 く、 高齢者であるほどこの傾向が顕著 であるという結果となった。この ことは、黒人の貧困高齢者が前述 のように経済的により困難で独居 率も高いことから、様々なリスク に対する脆弱性が高い状況にある という現実を端的に表していると いえよう。   最後に、 同様の形式で行った ﹁高 齢 者 を ケ ア し て く れ る と 思 う 存 在﹂についての質問では︵表 2︶ 全体的な傾向として年代を追うご とに﹁政府﹂の割合が高くなる一 方、 ﹁ 家 族 ﹂ の 割 合 が 低 く な る と いう結果となった。 このことから、 以前は家族が高齢者の介護をより 担っており、調査対象者も将来的 な自身の介護を家族に期待してい たが、実際に高齢者となった現状 は異なっていたと推測でき、家族 の形態や役割の変化を表している といえよう。また人種別では、 ﹁政 府﹂と答えた割合がどの年代でも 黒人が白人と混血より高く、特に 六 〇 ∼ 七 〇 歳 代 の 黒 人 は 五 五・ 〇 % と半数以上に上っている。そ の一方で ﹁家族﹂ と答えた割合は、 どの年代でも黒人が白人と混血よ り低くなっている。また、表 1で は﹁友人・地域コミュニティ﹂に 親 近 感 を 抱 く 黒 人 が 相 対 的 に 多 かったが、本回答では全人種で非 常に低くなっている。これらのこ とから、黒人は家族や親族より友 人や地域コミュニティに親近感を 抱くが、高齢者ケアに関してそれ は当てはまらず、政府によるケア を期待する傾向がある点を見て取 ることができる。また人種に関係 なく、高齢者ケアは友人や地域コ ミュニティではなく、家族や政府 が担うものとする認識の強い点が 推考できよう。   以上の本調査の結果では、貧困 高齢者のなかでも黒人は、相対的 に低い収入を政府の扶助年金に依 存し、高い独居率や低い家族への 親近感のため、頼ることのできる 支援の選択肢が少なく、自身のケ アを政府に多く期待している、と い う 一 現 実 が 浮 き 彫 り に な っ た。 また、扶助年金を介した家族との 同居や関係親密化の傾向が指摘さ れ て い る が︵ 参 考 文 献 ︶、 本 調 査 の貧困な黒人高齢者にそのような 点はあまり見られない。リスクの より高い生存生活を公的な扶助年 金 に 支 え ら れ て い る こ と も あ り、 貧困高齢者である彼らの期待や依 存は政府に比重が多く置かれてい る可能性が考えられる。

●おわりに

  本稿では、ブラジルの高齢者の 状況と貧困高齢者も対象とした政 府の取り組みをまとめ、貧困高齢 者の置かれた一現実について人種 を論点に紹介した。不平等性の高 い社会であるブラジルでは、近年 その進行が注目される高齢化に対 し、一九八八年憲法が掲げた社会 保障の普遍化の理念をもとに扶助 的な非拠出型年金が整備されてき た。その結果、貧困な高齢者の状 況は以前より改善し、最近のブラ ジルにおける経済的な格差是正の 一因になったと考えられよう。し かし、最低賃金と同額の扶助年金 を受給する貧困高齢者と、正規の 年金制度の恩恵を受けられる高齢 者の間には、依然大きな格差が存 在する。さらにまた本稿で提示し た事例から、貧困高齢者の間でも 状況は人種により一様ではないこ とが推測される。社会保障の普遍 化では改善に限界のあるこれらの 点が、ブラジルの高齢化における 今後の課題として指摘できよう。 ︵ こ ん た   り ょ う へ い / ア ジ ア 経 済 研 究 所   ラ テ ン ア メ リ カ 研 究 グ ル ー プ︶ ︽参考文献︾ ● Camarano, Ana A. ed. [2004] , Rio de Janeiro: IPEA. 表2 高齢者をケアしてくれると思う存在の人種別の推移   (単位:%) 年 代 人 種 政 府 家 族 友人 地域コミュ ニティ 会社組織 介護人 宗教 NGO等 本人 他に誰も なし 意識せず その他 20-30歳代 白人(34人) 11.8 70.6 0.0 0.0 5.9 8.8 2.9 混血(44人) 9.1 59.1 6.8 9.1 0.0 11.4 6.8 黒人(20人) 20.0 55.0 0.0 0.0 0.0 5.0 10.0 40-50歳代 白人 23.5 50.0 5.8 5.8 2.9 11.8 5.9 混血 18.2 54.5 6.8 6.8 2.3 11.4 4.5 黒人 30.0 30.0 0.0 5.0 5.0 5.0 10.0 60-70歳代 白人 38.2 38.2 2.9 2.9 5.8 11.8 0.0 混血 31.8 45.5 6.8 6.8 4.5 13.6 0.0 黒人 55.0 20.0 10.0 10.0 10.0 5.0 0.0 (出所)筆者作成。

ブラジルの高齢化

―貧困高齢者をめぐる取組みと「高齢者の町」の一現実―

参照

関連したドキュメント

[r]

2 前項の規定は、地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 252 条の 19 第1項の指定都 市及び同法第 252 条の

[r]

海に携わる事業者の高齢化と一般家庭の核家族化の進行により、子育て世代との

重点 再掲

購読層を 50以上に依存するようになった。「演説会参加」は,参加層自体 を 30.3%から

c マルチ レスポンス(多項目選択質問)集計 勤労者本人が自分の定年退職にそなえて行うべきも