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地域再生と社会的企業の可能性

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Academic year: 2021

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地域再生と社会的企業の可能性

著者

山本 隆

雑誌名

人間福祉学研究 = Japanese Journal of Human

Welfare Studies

4

1

ページ

5-6

発行年

2011-10-31

URL

http://hdl.handle.net/10236/9877

(2)

特集山本様.mcd Page 1 11/10/26 15:54 v4.21

特 集

地域再生と社会的企業の可能性

関西学院大学人間福祉学部社会起業学科

山本 隆

メディアで,社会的企業やソーシャルビジネス という言葉を本当に良く目にする.社会的企業 は,貧困や地球環境問題などの解決を目指す事業 を展開するが,従来の NPO との違いが分かりに くい.一般に言われているのが,世界の貧困や地 球温暖化など社会問題を‘ビジネスの手法’によっ て解決していくという説明がなされる.それで も,社会問題の解決と市場原理の活用がどのよう に両立するのか判然としない.その謎解きを今回 の特集論文で各執筆者に扱ってもらう. 英国では,公共サービスを担う NPO が商業化 して,Social Enterprise として活躍している.8 月に英国都市において暴動が起きたが,その原因 として昨年に政権交代を果たした新政府が地域再 生プロジェクトの費用を削減したことが一部にあ る.地域再生の目玉は若者のサポートプログラム である.そして,この地域再生の受け皿が社会的 企業であった.一方,米国ではソーシャルベン チャーや社会起業家育成コースがハーバード大学 やスタンフォード大学の大学院レベルで設置され るなど関心を集めている.私の知り合いである が,スタンフォード大学院ビジネススクールで研 鑽を積んでいる日本人学生は医師出身である.将 来医療の社会起業家を目指している.そして日本 において,社会的企業は若者の雇用の受け皿とし て大きな期待を受けている. 今から1年前の話になるが,ムハマド・ユヌス 氏が関西学院大学で名誉博士号を授与された.ユ ヌス氏は,バングラデシュでマイクロファイナン スを行っているグラミン銀行の創業者である.こ の銀行は貧困層の女性に少額の事業資金を低利, 無担保で融資し,女性の経済的自立を手助けする 活動を展開してきた.ユヌス氏の事業は,慈善事 業ではなく,‘ビジネス’として展開しているのが 特徴である.彼が 2006 年にノーベル平和賞を受 賞したことで,社会的企業は広く知られるように なった. 今回の特集では,言葉の整理も必要である.社 会的「起業」ではなく,なぜ社会的「企業」なの か.社会起業家(social entrepreneur),社会起業 (social entrepreneurship),社 会 的 企 業(Social Enterprise)という用語が同じような形で使われ てきたため,現場と教育の場で混乱を生じている. 簡単に説明すれば,「社会起業は社会起業家また は個人が社会的企業を作り出すプロセスである」 (ドゥフルニ(Defourny)とニッセン(Nyssens)). また社会起業を組織化するとなれば,NPO や 地域自治組織から,革新的なソーシャルベン チャーや社会的目標を掲げるビジネスベンチャー (例えばホームレスの人たちのシェルターの運営) へと発展し,さらに企業的なハイブリッドにまで 展開していく.社会起業家と社会的企業の実践に は大きな幅がある. 最近,地域再生に関する関心が高まっている. 人間福祉学研究 第4巻第1号 2011. 10 5

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特集山本様.mcd Page 2 11/10/26 15:54 v4.21 地域を再生する上で,社会的企業と国家との関係 という視点から,2つのアプローチがある.1つ は,サービスを提供する上で社会的企業の役割を 重視するものである.もう1つは,サービスの利 用者や地域住民がサービス提供システムに意見を 出し,その意思決定に参画するというものである. 社会的企業はソーシャルキャピタル(社会関係資 本)の量や種類を増やし,シティズンシップ(市 民の権利)を獲得する機会を提供するものとして 期待されている.このソーシャルキャピタルを創 り出すという社会的企業の能力が非常に重要であ る.ソーシャルキャピタルは,さまざまな要素か ら成り立っており,例えば,ボランティアの活用, サービス利用者や労働者の参加,生活や労働の場 におけるスキルや知識,地域社会にある資源の開 発,協調,協働,団結,信頼の強化といったもの である.社会的企業は,どの社会的な組織よりも ソーシャルキャピタルを創り出すのにふさわしい 組織である.今回の特集「地域再生と社会的企業 の可能性」で,4人の若手研究者による本格的な 論文を構成してみた.橋本論文は,経営学の理論 枠組みから社会的企業を捉えて,社会的企業論の 今日的意義を明らかにしている.「企業とは何か」 という経営学の基本的な問いから書かれた重量感 のある論文になっている.社会的企業の事業組 織,社会的企業の概念を慎重な姿勢で考察してい る点が特色で,社会起業原論のエッセンスにも触 れる内容で興味深い.岩満論文は,これも社会的 企業の所有という基本テーマを扱っている.地域 再生における社会的企業の研究動向が,理論動向, 組織論,サービス提供論に集中する傾向があるが, 組織の所有のあり方は十分な議論をしてこなかっ た.このことから,社会的企業の所有論を独自の 視点で展開している.八木橋論文は,英国におけ る社会的企業の実際と政府による育成策を紹介 し,社会的企業の主たる活動領域である地域再生 について,英国政府の最終報告書から緻密な分析 を行っている.大村論文は,社会的企業のガバナ ンスのあり方を検討し,社会的企業がボランタ リー(非営利)セクターの「限界」を克服してい るかを問うている.これも興味深いテーマを扱っ ている.いずれも大変な意欲作で,読者の方々の 感想やコメントを楽しみにしている. 6

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